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jo:
心地よい風が、開かれた窓から部屋の中へと入り込む。
つい先ほどまで激しく愛しあっていた耕一と楓は、ぐったりと肌を重ね合いベットに横たわっていた。
汗まみれになり火照った体を冷やすには、ちょうど良い涼風だった。
「ねぇ、耕一さん」
楓は子猫が鳴くような小さな声で耕一に問いかけた。
「どうして私の名前、『楓』という字は『木』に『風』と書くのでしょうか」
「ん、そういえば、どうしてだろう」
耕一の大きな手が、楓の髪を優しくなで上げる。
「誰かの心みたいに、少しの風ですぐに揺れるからかな」
「その言葉、原因の風さんが言ってはいけません」
猫が爪を立てるように、楓は耕一の胸をかりかり引っ掻いた。
「昨日の夜、どうして初音の部屋にいたのですか?」
「いや、あれは、リネット……じゃなくて、つい前世の記憶が……」
「今日の朝、千鶴姉さんと何をしていました?」
「え? 朝って何の事……」
「忘れ物があって、家に帰って来た時に見ました」
「いや、その、あ、あれはたまたま……」
「一昨日なんて、梓姉さん私の顔を見た瞬間、真っ赤になって逃げだしましたけど」
胸を引っ掻く力が、徐々に強くなっていく。
「耕一さんを独り占めしたい……そうすれば、心も揺れなくてすむのに」
「一番好きなのは楓ちゃんだよ」
「誰にでもそう言っているんじゃないですか……きゃっ!」
耕一は楓の腕を掴むと、胸の上から布団の上へ降ろし、自分が上になった。
「じゃあ、行動で示せばいいのかな」
突然、乾ききっていない楓の陰部に耕一の指が差し込まれる。
「きゃ! …………あん………」
楓の葉の如く体が紅潮するまでに、さして時間はかからなかった。