葉鍵サバイバル 10日目

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1名無しさんだよもん
リアルリアリティを求め、暴走を続ける超先生。
その一方で参加者の魂と魔力を集めようとする天使、ユンナの目的とは?
様々な思惑と迫り来るモンスターの中、果たして島に残された彼等は無事脱出する事ができるのか?
ジュ○シックパーク 各種漂流モノを元ネタとした葉鍵キャラによるリレー小説。
本編は未だ1日目から抜け出せていない気もするが、第10スレに突入!

・書き手のマナー
* これはリレー小説です。特に、キャラの死を扱う際は1人で殺さず上手くストーリーを誘導しましょう。
* また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
* 同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず全面的に禁止します。
* マイナーモンスター、武器を登場させる場合は話の中か後に簡単な説明をなるべくつけて下さい
* 投稿の最後に、【】で簡潔にキャラクターの現状を簡単にまとめて下さい。
* 初心者の方は作品を上げる前に誤字脱字や文法の間違いが無いか確認しましょう。
 
・読み手のマナー
* キャラの死に不満がある時は、あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
* 頻繁にNGを唱えたり、苛烈な書き手叩きをする事は控えましょう。

編集サイト
http://www23.tok2.com/home/hakasaba/
葉鍵リレー小説総合スレッド 第6巻
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1049041815/
2名無しさんだよもん:03/04/17 23:50 ID:a1aFikGF
2げと
3名無しさんだよもん:03/04/17 23:51 ID:WwO40rPQ
4名無しさんだよもん:03/04/17 23:52 ID:ZdzjWgb0
編集サイト復活キボン
5名無しさんだよもん:03/04/18 00:44 ID:4NknoUmf
さあ!立ったからには>>1が需要を感じたんだろ
>>1がネタを出すぞ!ワクワク
6名無しさんだよもん:03/04/18 02:26 ID:7eRToYV4
一応即死回避書き込み。
7名無しさんだよもん:03/04/18 15:08 ID:v5h7Erew
このペースだと即死する。確実に。
風邪引いて熱が凄くて節々がギリギリ痛んで挙句下痢が止まらない、
本当なら寝てなきゃならない俺が言うんだから間違いない。
8DECIDE:03/04/18 15:37 ID:32UcMesT
決断しなければならない。
選択肢は二つに一つ、どちらを選ぶにしても、それは残酷な選択肢。
目の前に広がる道。何処へ続いているのかわからない。
決断者に分かることは一つ。

・・・・・・・・・ ・・・・・・・・
この道から逃げれば、命は確実に助かること。

「お嬢ちゃん、逃げなさい……ッ」
心なしか、おじいさんのこえはさっきよりも弱くなっているように感じた。


背後を振り向く。後ろには誰もいない。いるようには見えない。
こんなとき、みんなが生きていたら? 広瀬は、どうしただろう?
髪を結っているリボンを握り締める。それは、周りの暑さとは違う、異質な熱を持っているよう。


顔を上げて、決断者は心を決めた。


「……ごめんなさい」
誰に当てた言葉かは分からない。最後にそう呟いて、「道」に彼女は姿を消した。
生き延びる。彼女が下した決断だった。
9DECIDE:03/04/18 15:37 ID:32UcMesT
「どきなさいッ! どけぇぇぇッ!!」
狐は、そのさまをじっと見ていた。見ていることしか出来なかった。
その体を、トレントの枝葉がしっかりと捉えていたからである。
『そういうわけにもいかんでな……嬢ちゃんのため、わしのためにももう少しお前さんには付き合ってもらうよ』
めらめらと燃える枝葉を使い、狐の体を拘束したまま、トレントは言う。
『わしの力でも……この命果てるまでお前さんの妖力を閉じ込めることくらいはできるのでな』
「なんでよッ! 何で人間なんかの味方をするのよ!」
『わしは……お前さんのほんの1000倍ほどは……多くの人間を知っておるよ』
『お前さんの憎むような人間のことも知っておる……だが……』


『お前さんがまだであったことのないような……優しい人間だって……少なからず、存在しているものなのじゃ、よ……』


ばさりと枝が崩壊して、トレントは沈黙した。もう、その優しげな口から叡智あふれる言葉を聴くことは二度とないだろう。
すぐさま狐はみちるを追いかけようとするが、すぐにやめた。この広い森では、アイツが何処に出たか知るのは骨が折れる作業のはずだ。
「……」
狐はそこを飛び立った。次なる獲物を探して。獲物? 否、「人間」を探すため。


あとには、生きているのか死んでいるのかさえ分からない人影だけが残された。


【倉田佐祐理 生死不明】
【トレント 死亡】
【みちる、逃亡を決断 出先は不明】
【妖狐、その場を離れる】
10名無しさんだよもん:03/04/18 18:04 ID:MonSrWBR
  _、_    ほほぅ、鯖の新作か・・・
( ,_ノ` )     
     ζ
    [ ̄]'E
      ̄
  _、     思いの他早くあがったな・・・
( ,_ノ` )     
  [ ̄]'E ズズ
    ̄

  _、_     どれどれ、一体何の話だ・・・
(  ◎E

 、 .  _、_ . , '  ブシャァッーーー!! 
(・: ◎E.・;'∴   
 :・ ' ゙ :`、

   _, ._   まだ佐祐理の生死引っ張ってたのか!!
Σ(;゚Д゚)
      
    Σ[ ̄]'E
..    カン ̄
11名無しさんだよもん:03/04/18 18:48 ID:XlAtBVsu
可哀想だから早く逝かせてあげなよ。
12名無しさんだよもん:03/04/18 21:53 ID:l2TcR0Y5
かわいそうだから早くスレを逝かせてあげなよ
13名無しさんだよもん:03/04/18 23:08 ID:K+w05JBt
即死判定は何レスまでだっけ?
14名無しさんだよもん:03/04/18 23:26 ID:lKN76t2n
知らんけど、こんくらいで良くなかったか?
15名無しさんだよもん:03/04/19 00:44 ID:fIBaKzMl
あと10
16名無しさんだよもん:03/04/19 01:36 ID:Ub5jEIwO
んじゃ後9ね。
あ、新作乙。
17Black-Red:03/04/19 21:24 ID:oddwXb3U
「……」
昼時の太陽が、じりじりと肌を焼いている。
今週一週間は、この地方の天気はもう派手に崩れることはないはずだ。天気予報ではそう言っていた……気がする。
「……」
足を止めるわけにはいかない。ふらつく足に鞭打って、少年は帰路を歩いていた。


(運がいいのか、悪いのか)
足がもつれて、思い切り転ぶ。また立ち上がる。その繰り返し。
(……ここに来てから死にぞこなうのがもう三回目か)
服や皮膚はところどころ擦り切れて、頬の傷口を日光が焼き。
(……死ぬわけには、いかないよな)
それでも、彼は歩いていた。


彼が、瓦礫の中で目を覚ましたのがほんの十数分前。
そこから這い出るのに約五分。
そして、ある少女の体を掘り出すのにまた五分。
生きているかもしれない、と期待した少女は、体こそ目立った傷はなかったものの、やはり既に息絶えていた。
彼は少しの間涙を流し、それから、彼女の遺体を埋葬し、帰路についていた。
(やっぱり、俺のせいだよな)
ワイン倉など探さずに、ナンバーディスプレイの数字をでたらめに入力してみるのもよかったかもしれない。
例えば……そう「5963」とか。
(……馬鹿か俺は)
というような思考が頭の中でぐるぐるぐるぐる、丁度それが6週目に差し掛かったころ……
18Black-Red:03/04/19 21:26 ID:oddwXb3U
「ギャアァァァッ!」
「!?」
頭上で何かの鳴き声。風を切る音。矢島はとっさに身を伏せた。
その頭上数センチ、髪の毛の先を掠めて、黒い塊が飛んでいく。
「か……鴉……?」
空中に静止した「塊」がこちらを向く。間違いない、鴉。通常の鴉をふたまわりほど大きくして、不気味な紅い瞳を持った鴉!
鴉が無く。吼える、といっても良いかも知れない金切り声。突進。
「うわ!」
見てから矢島は横っ飛びに避ける。膝の辺りをすり抜けて、鴉は空を突き抜けていった。
矢島は地面に倒れこむ。彼はすぐに身構えたが、その首筋には冷や汗が浮かんでいた。
銃の弾はあと二発。あとの武器は、鈍く光るコンバットナイフ。
(か……勝てるのか? こんな奴に……)


【矢島 崩壊した施設より脱出し病院へ戻る途中鴉に遭遇】
【香奈子の遺体は埋葬】
19名無しさんだよもん:03/04/19 23:56 ID:fIBaKzMl
防止
20名無しさんだよもん:03/04/20 00:28 ID:wRvWTbit
帽子
21名無しさんだよもん:03/04/20 01:40 ID:WdLMtYM4
ちゃんとみんな話を把握できてるの?心配だなぁ。

編集サイト復活してクレー
22名無しさんだよもん:03/04/20 01:48 ID:hzTbfzNH
どうでもいいけど、みちるとかトレントとかの話って、読み手連中に無茶苦茶に叩かれた上、
最終的には書き手さんがNG宣言してた気がするんだけど(俺の記憶がたしかなら)普通にそれの続き書いてていいのか?

あ……編集サイトに載っちゃってるからNG宣言は無かったことになってるわけか。
23名無しさんだよもん:03/04/20 03:11 ID:Eu9kuqGd
期待待ち
24名無しさんだよもん:03/04/20 05:30 ID:qM3gg0mX
25名無しさんだよもん:03/04/20 06:45 ID:JLLbH33d
避妊1
26名無しさんだよもん:03/04/20 18:26 ID:GBecR0Qj
すげee
http://shesgota.com/miotakaba/
過激eroアニメの洪水をハケーン

27名無しさんだよもん:03/04/20 18:29 ID:6sEsydOi
すげee
http://shesgota.com/miotakaba/
過激eroアニメの洪水をハケーン

28RTO:03/04/20 18:32 ID:ZYtW5t53
生還いたしました。
今のところまだ身の回りがバタバタしてますがもう少しでサイト再開です。

>>22
ちょっと確認してみます……
29RTO:03/04/20 18:40 ID:ZYtW5t53
第7スレの560あたりですな。
申し訳ない、完全にスレの流れを見落としておりました。
該当する話に関しては帰宅次第サイトから消させていただきます。

>>"DECIDE"作者殿
おそらく当方のサイトを見てこの話を書かれたと思われますので不手際をお詫びいたします。
多分この話は連鎖NGになってしまいます。本当に申し訳ないです。
30名無しさんだよもん:03/04/21 00:13 ID:qTgWoDl5
>>29 RTO氏お帰りなさい!復活楽しみにしてます♪
あと葉鍵サバイバルも紙媒体化してほしいと思ってるのは僕だけでしょうか?
31名無しさんだよもん:03/04/21 00:30 ID:l6ezz5Np
君だけだな。
32名無しさんだよもん:03/04/21 18:59 ID:QvtWn4yT
そうかなぁ・・・すごく(・∀・)イイと思うんだけど・・・
33名無しさんだよもん:03/04/21 22:43 ID:4NFr7i0V
今更ではあるが、真・超先生はやりすぎたな……

朝鮮製の処分によってシナリオをすっきりさせようという意図があったんだと思うが、
逆に朝鮮製が破壊される「二日目午後」以前のパーティで、朝鮮製を使えなくなってしまった。
下手に使うとリミットが来て唐突に破壊されるし、
真の方は最も先行してる御堂の所に行ったもんだから、それ以前の時間帯で身動きとれなくなっちまった。
34名無しさんだよもん:03/04/21 23:29 ID:8N5yOqJ1
確かに遅れてる話は深刻ですよね・・・ムムム

仕方ない、今から遅れてる組の話書くか・・・
35メフィストフェレス(1):03/04/22 00:54 ID:p7ouHkWH

「はっ、はっ、はっ……!」
 絞り出すような荒い呼吸が、喉の奥から漏れ落ちる。
 どこをどう走って逃げたのか、浩之にはもうほとんどわからなかった。
 日頃の運動不足が祟って、くたくたになった浩之は木の幹に背中を預ける。
 だがそれは、浩之に手を引かれて走っていたあかりも同じだ。
 いや、むしろあかりの方が疲労の度合いは健著だった。
「あ、かり、大丈夫か!?」
「はぁ、はぁ、う、うん」
 あかりは浩之の足元に座り込んだまま、掠れた声で返事をする。
 浩之はぐっしょりと濡れた額を拭うと、ぐるりと周囲を見まわした。
「はぐれちまったな……」
「うん……」
 ティリアやウィルは言うに及ばず、一番か弱そうなエリアでさえ、基礎体力の面では現代人を遥かに凌駕する。
 なにせ車も自転車も無い世界で、徒歩で大陸を移動するという、過酷な旅を経験してきたのだから。
 足の早さひとつとっても、ぐーたら高校生の比ではない。
 しかもどうやら浩之たちは、彼女らとは別の方向に逃げてきてしまったらしい。
「祐介の奴、大丈夫かな……」
 たったひとりで黒服と対峙していた、線の細い少年の事を思い出し、浩之は溜息を漏らした。
 今更ながら、彼を犠牲に逃げてきてしまった事に、罪悪感を覚える。
「浩之ちゃん、これからどうしよう……」
 心細げに呟くあかりに、浩之は内心の不安を押し殺し、どんと自分の胸を叩いた。
「心配するな。俺が何とかする。そして、ふたりでこの島を脱出するんだ」
「浩之ちゃん……」
 あかりは無理に笑顔を浮かべ、土を払いながら立ちあがる。
 その時だった。
36メフィストフェレス(2):03/04/22 00:55 ID:p7ouHkWH

 ごぼり、と地面が泡立ち、揺らいだ大地が浩之たちの足を掬う。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
 思わず手をついたふたりの前で、地面が爆発的に弾けとんだ。
 周囲に撒き散らされた土砂をまともに被り、ふたりは苦悶の声をあげる。
「ぐぅっ……な、なんだぁっ!?」
『奇蹟を求めるには代償が必要だ。それが何にしてもな』
 淡々とした機械的な少女の声に、浩之ははっと身体を強張らせた。
 突然土砂の奥から出てきた代物に、浩之とあかりは言葉を失う。
 一言で言えば、それは巨大なスライムだった。
 だが、流線型の体躯はゼリーというよりは、透明なゴムかシリコンを彷彿とさせる。
 中身は半透明で、球状の内蔵にあたる代物が浮かんでいた。
 その中のひとつに、ひとりの少女……いや、メイドロボが収められていた。
「……マルチ……!?」
「え……マルチちゃん!?」
 動揺のうめきを漏らす浩之に、あかりは困惑の目を向ける。
 だが、浩之はすぐさま己の呟きを否定した。
 あれは、マルチではありえない。
 それが証拠に、来ている服は白衣であるし、何より浩之達をさげずむような瞳は、マルチの…いや、メイドロボのものではありえない。
『初めまして……と言うべきか。私はこの島のオーナーにして支配者、朝鮮製というものだ』
「な……!」
 朝鮮製と告げたメイドロボは、土だらけではいつくばる浩之たちに、憐憫の視線を投げかけた。
『藤田浩之、そして神岸あかり。君達の事は、ずっと観察させてもらった』
「………」
37メフィストフェレス(3):03/04/22 00:55 ID:p7ouHkWH

 朝鮮製といえば、このテーマパークを作りだし、地獄のような状況を作った張本人である。
『この島から脱出したいと言ったね。その願いを叶えてやらないでもない』
「ふ、ふざけるな!」
 朝鮮製の言い草に、浩之は思わず叫んだ。
「貴様が勝手に俺達を招待して、こんな島に放り出して罠にかけたんだろうが!」
『……誤解があるようだが、それは少し違うよ』
 朝鮮製はシニカルな笑みを浮かべ、スライムの中でゆるゆると首を振る。
『内訳はこうだ。私達のオリジナル、つまり超先生はすでに死んでいる。
だが、私は私の死後、自らの記憶と人格をコピーし、カスタマイズしたメイドロボにダウンロードするようにしていた。
ハードの違いは問題ではない。ようはソフトが優秀であれば、目的の達成は可能だからな。
私は超先生の記憶をコピーし、その目的を実行するべく行動する朝鮮製だ』
「な……!」
 あまりにもあっさりと内情を教えられ、浩之は絶句した。
『だが、複数作られた朝鮮製は、必ずしも同じ人格、同じ行動目的を持っているわけではない。
超先生は、それぞれのメイドロボに対して人為的に、ダウンロードする人格に差異を設けた。
これにより、同じ問題に対してもそれぞれ違った解答を選出できる』
「だから…何だって言うんだ」
 あかりを背後に回し、警戒する浩之に、朝鮮製は愉快そうに唇の端を吊り上げた。
『私達の最終目的はリアルリアリティの追求だが、その方法は必ずしもひとつではない。
暴力の中で生じるものだけでなく、より高級な舞台を準備した上で、より高度な演出をもって実現するリアルリアリティもあるはずだ。
……それを藤田浩之、君に求めたい』
「なんだと!?」
『報酬は……神岸あかりと共に、この島から脱出すること』
 浩之は、ごくりと唾を飲み込んだ。
38メフィストフェレス(4):03/04/22 00:56 ID:p7ouHkWH


「そんな事……信用できるか」
『信じる、信じないは別だよ。だが言っただろう。奇蹟を起こすには代償が必要だと』
「浩之ちゃん……」
 ぎゅっ、と自分の服の袖を握るあかりに、浩之は意を決した。
 この島はあまりに危険すぎる。
 自分はともかく、あかりがこの島で、救助が来るまで生きていられる可能性は、あまりに低い。
「………わかった」
「浩之ちゃん!」
 苦しげに頷く浩之に、朝鮮製は満足げに笑った。
『そう、それでいい。懸命な判断だ』
「……で、何をしろって言うんだ、この俺に」
 立ちあがった浩之は、鋭い目で朝鮮製を睨み付ける。
『そう、君には、人間をひとり、殺してもらいたい』
「――――――――!!」
 瞬間、浩之とあかりは絶句した。
「そ、そんな事が……!」
『君はYESと言ったのだよ、藤田浩之。残念ながら、その瞬間から君には責任が生じる』
 ぱちりと……音はしなかったが、朝鮮製が指を鳴らす動作をする。
 それと同時に、浩之とあかりが立っていた足元が吹き飛んだ。
「ぐわあああっ!!」
 もんどりうって転がった浩之は、樹の根元にぶつかってようやく停止する。
「っ……あ、あかりは!?」
 顔を上げた浩之が見たものは、信じられない光景だった。
39メフィストフェレス(5):03/04/22 00:57 ID:p7ouHkWH

 2匹目のスライムが現れたかと思うと、瞬く間にその内側にあかりを取り込んでいく。
「あ……あかりっ!! あかりっ!!!」
 泡を食った浩之がスライムに取り付くが、その表面はまるでゴムタイヤのように硬く弾力性があった。
『ゼラチナス・プランターと、そう呼んでいる。安心したまえ、中は空気もあって快適だ』
 朝鮮製の言葉に、浩之はスライムを叩く手を止める。
 確かに、中に閉じ込められたあかりは恐慌状態に陥っているものの、呼吸もできるようだし、命に別状は無さそうだった。
 だが、これでは人質をとられたも同然だ。
「くそっ……汚ねぇぞ!」
『人質ではないよ。言わば担保だ。私達の契約の、ね』
 ゼラチナス・プランターの向こう側で、朝鮮製は微笑を返す。
「………わかった。誰を殺せばいいんだ!」
『話が早くて助かるよ』
 朝鮮製が再び指を鳴らすと、浩之の後ろに再びゼラチナス・プランターが出現した。
『乗りたまえ。ソレに乗って地中の施設に移動する』
 言われるまま、浩之はタイヤの感触のするスライムに触れる。
 その瞬間、まるで飲み込まれるように身体が包み込まれた。
「―――――っ!」
『……藤田浩之、君に殺してもらいたい者については、地下施設でじっくり説明させてもらうよ』
 ずずず、とずり下がるように、ゼラチナス・プランターが地面の中に潜り込んでいく。
 そんな中でも、朝鮮製は草むらで日向ぼっこをしているような調子で続けた。
『私が殺してもらいたい人間は……そうだね、一言で言うならば』
 ちらり、と意味ありげな視線を最後に、朝鮮製は完全に地面の奥に姿を消す。

『私の娘と呼べる存在さ』
40名無しさんだよもん:03/04/22 00:58 ID:p7ouHkWH

【浩之・あかり 朝鮮製に拉致され、地下施設へ】
【朝鮮製 浩之に殺しを提示。報酬は島からの脱出】

ちなみにゼラチナスプランターは、ロマサガ2に出てきたアレです。
41名無しさんだよもん:03/04/22 01:49 ID:g6khEctF
>>新作
新作乙。

しかし浩之が最後に登場したのが編集サイト333話。
そこからじゃこの話、まったく繋がらないと思うのだが。

これまたRTO氏のミスなんだけどな(333話の登場人物欄に浩之の名前が無い)
どうする? 書き直しで埋まるかどうか分からん問題だが……
4240:03/04/22 12:17 ID:p7ouHkWH
Σ(;゚д゚)
43名無しさんだよもん:03/04/22 16:44 ID:hE6Xo7lC
>>40凄く(・∀・)イイ!!期待してます。

>>41Σ(゚д゚)
 

  ど う す れ ば い い ん だ 


44名無しさんだよもん:03/04/22 20:05 ID:VDcUUrWN
>>新作
藻付かれ〜。いいんでないっすか。

そしてRTO氏おかえり。
個人的にはサバは続いて(最後まで)ほしいので、がんがって下さい。
俺も久振りに続きでも書こうと思ってます。4月中は無理ですけど…。
45名無しさんだよもん:03/04/22 20:28 ID:EFpxk3Zt
・゚・(ノД`)・゚・
46憎悪の残り火:03/04/22 22:38 ID:p7ouHkWH

「祐介!! 沙織!!」
 戦いのあった部屋に飛び込んで来た浩之たちは、その光景に言葉を失った。
 血だまりの中で、折り重なるようにして倒れている祐介と沙織。
 そしてその脇では、あの天界の男が、完全に事切れていた。
「エリア、治療呪文を!」
「は、はいっ」
 ティリアに急かされ、エリアは慌てて倒れている二人の元に駆け寄る。
 覆い被さるようにして気を失っていた沙織を退かすと、傷の深さにエリアは顔を歪めた。
「傷が深い……心臓の真上を傷付けてるみたいです」
「そんな!」
「けど、出血はだいぶ止まっているみたいです」
 エリアはそう言って、ふと複雑な目で、沙織の血塗れの胸元を見た。
「……どうしたんだ?」
 まだ余韻が残っているのか、軽く頭を振りながら、ウィルが訊ねる。
「いえ……」
 エリアは言葉を濁して、自分の限りなく平らな胸を見下ろした。

 祐介の出血が収まったのは、傷口を強く圧迫されたからである。
 いったい、何で圧迫されたのか。
 柔らかくて適度な弾力性を持ち、尚且つ傷口にフィットして血を止める、という好都合極まりない代物。

「………沙織の巨乳か!!」
 思わず手を叩いて叫んだ浩之に、女性陣の冷たい視線が突き刺さった。
47憎悪の残り火:03/04/22 22:38 ID:p7ouHkWH

 エリアはわざとらしくせき込んで、祐介の傷の上に手を当てる。
「ごほんっ……まぁ、確かに沙織さんの乳房が適度な圧迫となって出血を塞いだのは認めますが」
「胸……」
 隣では何故かあかりが落ち込んでいたりしたが、全員気付かないフリをした。
「なんとかなるか、エリア」
「……魔法で傷は防げますが、失われた血は戻せません。何とかして血を補充しないと、数日中に……」
 ナイフによって抉れた傷は塞がったものの、祐介の肌は紙の様に白い。
「……輸血か……それで、沙織は」
「こちらは、電波を至近距離から大量に浴びたみたいで……」
 下手をすれば廃人になっているかもしれない、とエリアは苦しげに呟いた。
「ともかく、どこか医療設備が揃っている場所に行こう。輸血用のバックアップがあるかもしれない」
 厳しい表情で言うウィルに、全員が頷いた。
「じゃあ俺が祐介を担ぐから、エリアが沙織を背負ってくれ」
「俺達は……」
「なにもするな。怪我人を担いだ素人ほど、やっかいなものはない」
 浩之は釈然としないまま、それでも口をつぐんだ。
 確かにウィルの言う通り、自分たちは自分の身を守るだけで精一杯である。
 エリアなら沙織を背負っていても呪文が使えるし、浩之よりもよほど身が軽い。
「よし、じゃあ……」
(……ニ・ガ・サ・ン………)
 瞬間、全員が硬直する。
 弾かれたように振りかえったウィルとティリアは、最悪の光景を目にした。
 操り主を失い、糸の切れたマリオネットのように崩れていたゴーレムが。
 操る手の無いまま、自らの意思で立ちあがっていた。
48憎悪の残り火:03/04/22 22:42 ID:p7ouHkWH

「馬鹿な……!」
「ウィル、あれを!」
 ティリアが歯噛みしながら、ゴーレムの一角を指差す。
 天界の男の首から溢れ出た血が、ゴーレムの頭部をべったりと汚していた。
 その血が、あたかも文様のごとく、ゴーレムを覆っている。
「あの野郎……こんな真似まで!」
「ど、どういうことだよ!?」
「死の間際に、自分の血を媒介にして、あのゴーレムに己の魂を移植したんだ!!」
 ウィルの悲痛な絶叫と同時に、ゴーレムがその豪腕を振り下ろした。
 とっさにウィルが浩之を、ティリアがあかりを突き飛ばし、その反動で腕から逃れる。
(……ニ・ガ・サ・ン……ミナゴロシ・ダ)
「くっ、今度こそ本当に弱点が無くなったわよ!」
 剣を構え、ゴーレムを牽制しながら、ティリアがやけっぱちのように叫んだ。
「いや、確かに弱点は無いが、呪文はそんなに長時間効果を及ぼさん」
「というと?」
「5分だ。急場のあの呪文で、現世に魂を焼き付けておけるのは、せいぜい5分が限度だ」
 だが、ウィルの言葉にも、ティリアは悲痛な表情を崩さなかった。
「……って事は、この化物と5分も鬼ごっこを続けなきゃ駄目なのね」
 言って、ティリアとウィルは申し合わせたように浩之とあかりに目をやる。
 自分たちだけなら、5分の間ゴーレムから逃げ続ける事は充分可能だ。
 だが、もし浩之達が狙われたのなら、対処の仕様がない。
 ただでさえ荷物を抱えている状態で、他者にまで回す余裕などあるはずがなかった。
「ちっ………浩之! あかりを連れてお前らだけ逃げろ!」
「時間は私達が稼ぐ!」
 ウィルとティリアの言葉に反応したのか、ゴーレムがふたりを掴まえるべくその腕を伸ばす。
49憎悪の残り火:03/04/22 22:42 ID:p7ouHkWH

 かなりの速度で振り回される腕をなんとか掻い潜り、ティリアは片手をゴーレムに突き出した。
 瞬間、その手から束ねた雷撃が放出され、ゴーレムをまともに直撃する。
「……駄目ね」
 傷ひとつ負ってないゴーレムを見て、ティリアは舌打ちした。
「浩之! あかり! 早く!」
「っ……!」
 紙のように白い顔をした祐介、そして彼を背負うウィル。
 気を失った沙織と、彼女を背負いながら杖を構えているエリア。
 そして、ひとりゴーレムに戦いを挑むティリア。
 彼女らを見まわし、浩之は血が滲むほど強く唇を噛んだ。
 自分たちは邪魔だ。
 ここに居ればいるほど、彼女らの足を引っ張るだけだろう。
「あかりっ!! 逃げるぞ!!」
 浩之はやけくそ気味に怒鳴って、あかりの腕を掴むと外に駆け出した。
 その動きに反応して、ゴーレムがふたりの後を追う。
「させませんっ!」
 エリアが不自由な体勢から杖を突き出した。
 呪文に応えて、氷の塊が次々とゴーレムを直撃し、その進路を妨害する。
 その隙に、浩之とあかりが、博物館の外に飛び出した。
「エリア、お前もふたりの後を追え! 俺達はコイツを出来る限り引き付けておく!」
「………わかりましたっ!」
 沙織を背負い直し、エリアは頷いた。
「……ホテルで合流しよう」
「はい」
 ウィルのその言葉を最後に、エリアはありったけの呪文をゴーレムに叩きつけ、彼らに背を向けた。
5040:03/04/22 22:46 ID:p7ouHkWH
【ティリア&ウィル(祐介背負い中) ゴーレムを引き付ける】
【浩之&あかり 彼らだけ外に逃走】
【エリア 浩之達の後を追う】


えっと、前回の間に入る部分などを書いてみました。
今度こそ辻褄は合ってる……と思いたい。
どうでしょ。
“メフィストフェレス”の細かい修正はもうちょっと待ってて下さいませ。
51名無しさんだよもん:03/04/22 23:56 ID:xRSzO7vb
結局「DECIDE」は以前と合わせて連鎖NGでファイナルアンサー?
そこんとこはっきりさせといてほしいんだが。
52名無しさんだよもん:03/04/23 01:03 ID:YR8avYtI
>>メフィストフェレス
なんか超先生が初めに言ってたRRとは違った方向になってきた気がする。
人格に多少違いをつけたと言えば、別につじつまが合うけど
作品そのものの原点を忘れてるような気がする。
この島で超先生(&朝鮮製)は参加者からしてみれば雲の上の存在なんだから
その超先生があんまり関与するというのも考えものだ。
超先生って今回のようなことでRRを求めていたんじゃないと思うんだけど、
檻のないモンスターを目の前にした参加者たちが心身ともに
リアルな体験をするっていうが目的じゃなかったっけ。
まあ、けどだからなんだっていう感想なんだけどね
作品そのものは結構、緊迫感ができそうでなかなか面白かった。
浩之は雅史の件もあるし、祐介たちもいるし、そこらへんの人間関係が楽しみだ。
生きていればだけどね。

長くてスマソ
53名無しさんだよもん:03/04/23 01:12 ID:lKkv7U43
>DECIDE云々
ぶっちゃけた話し、続きが出て、それがうけいれられてるならば、前の話もわざわざNGにする必要ない気がするんだが。
七日目を見返してみたけど、あの時期の読み手はわがまま放題で一部のレスに至っては単に書き手つぶししてただけに思えるしさ。

>メフィストフェレス
朝鮮生の言う『私の娘と呼べる存在』ってだれ?
こういう風にぼかした説明みたいなものって、物語としてはそういうのはひっぱっておいた方が面白いんだろうが、書き手同志のリレーとしては勝手に適当な伏線作って逃げただけにも思える。
54Eagle and Crow:03/04/23 02:13 ID:CvEUUwXW
鴉・烏(からす)スズメ目カラス科
日本には留鳥のハシブトガラス・ハシボソガラス・大陸から冬鳥として
九州地方を中心とする西日本に渡来するミヤマガラスの3種類が生息する。
雑食性で、果実・種子・昆虫・鳥の卵や雛鳥・残飯・動物の死骸など
何でも食べる。
特にハシブトガラスは動物性の餌を好む傾向がある。

「マジか…」
呟かずにはいられない。
たった今危うく躱した黒い突風の正体。
黒一色の羽根と特徴のある嘴の形状は間違いなく鴉のそれだ。
だが、矢島が家の近所でよく見かけた鴉と比較して、明らかに大きい。
それに、紅玉をはめ込んだような深紅の双眸。
こいつは、違う。
少なくとも、俺が知っている鴉ではない。
そして、こいつは俺を殺すつもりだ。
鴉の言葉など分からないし、まして鴉の表情が読める筈も無いが
矢島の直感はそう告げ、そして矢島にこう囁いた。
『戦え』と。

見えない敵と戦った。理不尽な謎解きと戦った。
大事な仲間を失った。仲間は自分に願いを託した。
矢島は鴉を睨付ける。

矢島が懐のナイフを抜く。
上空を旋回していた鴉が矢島の立つ場所へ向きを変える。
矢島がベルトに挟んでいたデザートイーグルを右手に持つ。
鴉はどんどん速度を増して、突っ込んでくる。

「ヒッチコックじゃあるまいし…こんなところで死ねるかよ!!」
「ギャア!ギャア!!」
55Eagle and Crow:03/04/23 02:17 ID:CvEUUwXW
鴉は矢の様に矢島に突進を続ける。
矢島は左手でナイフを逆手に持ち、デザートイーグルを構えた右手を
左手首の上に乗せた。
ギリギリまで鴉を引きつけ、ナイフで牽制し、銃で止めを刺す。
だが、そのプランには2つの落とし穴があった。
1つ目は、デザートイーグルの重量である。
50口径AE弾を使用するデザートイーグルの重量は約1.5kg。
一般的な護身用拳銃と比べると2倍近い重さだ。
しかもグリップに弾倉を内蔵するオートマチック方式であるため、
弾丸が大きい分グリップも大きく、握りにくいことこの上ない。
鴉が軌道を微妙に変える度に、女性用のダンベルくらいの
重さがある銃身を振らなければならない。

そしてもう一つは、デザートイーグルの威力だ。
世界に数多く存在する拳銃の中でもケタ違いの破壊力を持ち、
自動車のエンジンすら撃ち抜けると言われるデザートイーグル。
だが、その威力は標的だけでなく射手にも容赦なく襲いかかる。
リコイル(反動)が凄まじいのだ。
両手でしっかりグリップしていても、上半身の構え方が悪いと
肘や肩を脱臼することさえある。
拳銃としては余りにも性能がピーキーなのである。

汗で滑るグリップに往生しながら、矢島は鴉を引きつけた。
鴉は矢島の喉笛目がけて一直線に飛ぶ。
だが、引鉄を引く寸前、鴉が矢島の右側にスライドした。
「な……!!」
意表をつかれた矢島は慌てて銃を右に向けようとするが、その銃口は
明らかに鴉に遅れていた。
56Eagle and Crow:03/04/23 02:27 ID:CvEUUwXW
ドゴォン!!
鴉を狙った筈の弾丸はまるで見当違いの方向に飛んで行った。
デザートイーグルの強烈なリコイルが襲いかかり、矢島はまるで
アクション映画のやられ役のように錐揉み状に吹っ飛んだ。
だが、それが鴉の的確な攻撃から矢島を救った。
すんでの所で、右目を嘴で抉られるのを免れたのである。
「ガァ!ガァ!」
さすがに至近距離での銃声に驚いたのか、鴉は大慌てで急旋回して
矢島の元を離れた。
「ってて……」
矢島は顔をしかめ、無事な左手で右肩をさする。
鋭い痛みが肩から腕にかけて走るが、脱臼していないのは僥倖と
言わねばなるまい。
「晴香さん、こんな銃を使ってたのかよ…」
矢島の心に、鈍く、重い痛みが蘇る。
「晴香さん…」
矢島は思い出す。
あれは狙っていたのか、無意識だったのか。
忌わの際に自分を助けてくれた晴香。
晴香のお陰で生き永らえた自分。
晴香の生命を引き継いだ自分。

「負けるもんか…」
脇に転がっていたデザートイーグルとナイフを取り、矢島は
獰猛な視線を空に走らせながら再び立ち上がった。


【矢島 鴉と戦闘中  弾丸残り1発】
57名無しさんだよもん:03/04/23 03:40 ID:/8MZUSZq
新作乙。
おいおい、何か矢島が格好良いなw
あんまイメージ湧かなかったけど鯖だけで判断すると惚れそうだw
58名無しさんだよもん:03/04/23 17:46 ID:uJxRynrl
コテハン叩きのかいあって名無し書き手のみになりましたか?
59名無しさんだよもん:03/04/23 18:11 ID:PdcpZTF/
んなこたぁない。
60String of life:03/04/24 00:59 ID:F13F0NYE
銃を警戒する鴉は、矢島の頭上をゆっくり旋回しながら隙を窺っている。
残弾が一発しかないのはどうにも心もとないが、対策を考える時間を
稼げたと言う意味では、それなりに効果のある攻撃だったとも言える。
(さてと…どうする?)
矢島は視界の片隅に鴉を捉え続けながら考える。

まず逃げるのは論外だ。
見渡す限り、矢島が身を隠せそうな場所は見当たらない。
おそらく鴉は矢島の頭上を飛びながら、体力を消耗するのを待ち、
矢島が疲れたと見るや一気に襲いかかるだろう。
銃は警戒するにしても、残りはたった一発。
弾切れの拳銃など、只の鉄の塊でしかない。
同時に、ここから鴉を狙撃すると言う考えも捨てた。
拳銃の有効射程はかなりの熟練者でもせいぜい50メートル、それも
止まった的を撃つ場合の話であり、矢島は射撃に関しては全くの素人だ。
縦横無尽に飛び回る標的をワン・ショットで撃墜すると言うのは
決まれば格好いいが、外した場合のリスクが大きすぎる。
おまけに自分が持っているのは、下手をすれば撃った本人が
怪我をしかねない怪銃・デザートイーグルである。
「一番いいのは…ナイフで仕留める事か」
そう、それが出来れば言う事は無い。
怪我の心配も無く弾丸も温存出来る上に、銃声で新たなモンスターを
呼び寄せる懸念もない。
問題は、どうやってナイフで仕留めるかなのだが…
(…あれ?)
いつの間にか鴉が視界から消えている。
考え込んでいる内に、鴉を目で追う事を忘れていたのだ。
右、左と首を振るが鴉は何処にも居ない。
(どこだ……?)
61String of life:03/04/24 01:00 ID:F13F0NYE
ぞわり。
全身の毛穴が開くような殺気を感じた次の瞬間、矢島の背後で
禍々しい羽音が聞こえた。
(後ろ!!)
振り向いた瞬間、矢島の視界を鴉が覆い尽くした。
鴉は背後から、極力羽ばたかずにグライダーのように滑空して
矢島に近づいていたのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ギャア!ギャア!ギャア!」
矢島はもんどり打って地面に倒れる。
鴉の嘴が頬の傷口を掠め、熱い痛みが思考を奪う。
後頭部、耳、手、首筋と鴉の嘴と爪が容赦なく矢島を苛む。
「くそ、くそ、くそおおっ!」
矢島は出鱈目にナイフを振り回し、何とか態勢を立て直した。
しかし鴉はナイフなど眼中に無いかのように羽ばたきながら
向かってくる。
「この野郎っ!!」
矢島がデザートイーグルに手を伸ばした瞬間、鴉はひらりと翻って
矢島が狙っても当てられない距離へ飛び去った。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
汗がどっと吹き出し、血の滲む頬の傷口を濡らす。
「痛って……」
矢島はナイフを握ったままの左手の甲で頬の汗を拭おうとした。
逆手持ちのナイフのグリップエンドが視界に入る。
その瞬間、矢島の頭に疑問が浮かんだ。
62String of life:03/04/24 01:02 ID:F13F0NYE
「何だ…?」
ナイフのグリップエンドが、少々不自然な角度で本体に付いている。
その隙間からは、ネジ溝が顔を覗かせていた。
グリップエンドを捻ると、それは瓶のフタのように外れ、裏側には
方位磁石が収められていた。
(こんなもんがあったのか…)
コンバットナイフの中には、ハンドルと呼ばれる柄の中を空洞にして
様々なサバイバルツールを収められる設計になっているものがある。
中に何が入っているのか、矢島はナイフをひっくり返して確かめてみた。
マッチ、絆創膏、棒ヤスリ、キャラメル1個、それにテグスと釣り針。
(…相手が魚なら良かったんだけどな)
一瞬、鴉を倒せるアイテムでも無いかと期待したが、空振りだった。
(……糸?)
改めてテグスを見る。ナイロン製らしいそれは非常に細く、遠目には
何もないようにしか見えない。長さは20メートルほどか。
この細さでは大物はとても釣れそうにない。相手が魚であるならば。

矢島は、老いた獣が倒れるのを待つ禿鷲の如く頭上を廻る鴉に目をやり、
デザートイーグルとナイフを放り出した。
「……さあて……」
手には、テグスの端を結んだ輪っかひとつ。
これで、あの化け物を止められるのだろうか。
矢島の頭を、晴香と香奈子の面影が一瞬だけ掠めた。
63String of life:03/04/24 01:04 ID:F13F0NYE
眼下の人間が武器を投げ捨てて片膝をついたのを、鴉はじっと見ていた。
あの厄介な筒と銀色の爪が無くなった、丸腰の人間。
道具が無ければ地を這い回る事しか出来ない、愚かで哀れな獲物。
鴉の仮初めの本能が、偽りの野性が宣告する。
『殺せ、そして喰らえ』と。

鴉は身を翻し、一直線に人間に向かう。
鷹や鷲などの猛禽類と違い、鴉の嘴は突き立てついばむことは得意だが、
皮を裂き肉を千切る用途には向いていない。
それ故、突くだけで簡単に相手が身動き出来なくなる目を狙うのだ。
そこが、どんな動物でも鍛えようの無い急所だと言う事を鴉は知っている。
獲物は手を擦り合わせるような奇妙な動きをしていたが、そんな事は
どうでもいい。
紅い瞳に、妖しい光を湛えて、鴉の突進は止まらない。
「ギャアアアアアアア!!」
鴉の勝利を確信した叫びが響き渡る。
その瞬間、矢島は両手を肩の高さに上げて腕を伸ばした。
矢島と鴉のシルエットが重なった。

矢島が掲げた両手の間には、不規則なパターンでテグスが幾重にも
交差していた。
綾取りのように輪にしたテグスを指に通して何度も何度も引っ掛けた、
この即席の霞網を高速で飛来する鴉の目前に突き出したのである。
鴉の首はテグスの間を抜けたが、広げた翼と脚がテグスに絡み付き、
鴉は前に進むことも、後ろに引き返すことも出来ない。
「うらあああああああっ!」
矢島はテグスから逃れようと必死にもがく鴉の首を引っ掴んでナイフの元に走る。
ナイフを握り、鴉を地面に力づくで押え付け、矢島は鴉の体にタングステン鋼の
殺意を狂ったように叩き込んだ。
64String of life:03/04/24 01:08 ID:F13F0NYE
何十回とメッタ刺しにされ、鴉が血と羽根に塗れた肉塊と化したあたりで
矢島はようやく息をついた。
「ぜえ…ぜえ…ぜえ…」
ふと自分の手を見る。
血と、羽根と、土でドロドロに汚れ、テグスが絡み付いた手。
その手で、頬の傷をそっと撫でた。
ちょうど香奈子の頬の傷を鏡で写したような、左頬の痕。
ずきん。
頬と心が同時に痛む。
そう、それでいい。
頬の痛みが、生きていることを実感させてくれる。
心の痛みが、伝えなければならない言葉を思い出させてくれる。
頬だけでなく体の至る所が痛み、晴香と香奈子の帰りを待つ者達の事に想いを
馳せる程に足取りは重くなる。しかし。
(…でも、行かなくちゃ)
ナイフを懐に納め、デザートイーグルを拾い上げ、矢島は歩き出した。

昼時の太陽が、じりじりと肌を焼いている。
今週一週間は、この地方の天気はもう派手に崩れることはないはずだ。
天気予報ではそう言っていた……気がする。
炎天下を、少年は歩く。
今は亡き仲間達の願いと、想いと、約束を胸に。


【矢島 鴉との戦いに勝利 弾丸残り1発】
65String of life(追記):03/04/24 01:19 ID:F13F0NYE
>>17-18「Black-Red」作者様、
誠に勝手ながら一部文章を引用させていただきました。
どうかお許し頂けますようお願い申し上げます。
66String of life(追記2):03/04/24 01:23 ID:F13F0NYE
編集サイト24話「人間規格外」作者様にも、
一部文章の引用をさせて頂きました。
どうかお許しを。

67名無しさんだよもん:03/04/24 18:44 ID:HctFS52P
>>66
乙。おもしろかったです。
このまま最期までクソ作者が出ないようにいのっとります
68RTO:03/04/24 20:01 ID:RKopJ7dI
どもRTOです。
まとまった時間が取れましたのでこれから修正作業に入ります。

"DECIDE"は……どうしましょ?
69名無しさんだよもん:03/04/24 23:18 ID:TcnwVZiD
サバ終わったとか思ってたけどまだまだいけるじゃないか。
がんばれ
70名無しさんだよもん:03/04/24 23:45 ID:Jb6DE7o9
ここにも期待してる人間がいます。
がんばっす。
71名無しさんだよもん:03/04/25 01:22 ID:JrJA63Wv
DECIDEはなんかこのままでもいい気がする。
別に今の時点で文句も出て無いんだし。
というか、鯖はそうやすやすNGを出していられるほど余裕ないだろ?
あの頃はディー関係のいざこざもあって一時的に読み手・書き手のNGに対する敷き居が低くなってただけで。
72名無しさんだよもん:03/04/25 19:51 ID:JJse39rW
>>71禿同。DECIDEはこのままでもいいと思う。

>>68編集ガンバ。応援くらいしかできないけど
73とりとめのないこと:03/04/26 15:45 ID:jYP9y5wP
 照りつける太陽の熱が、じりじりと大地を焼いていく。
 それは、その大地に立っている俺の体も例外ではない。


 足元がおぼつかない。ぐるぐるバットを10回繰り返したときのように。
 顔が熱い。時代錯誤の物理教師に廊下に立たされたときのように。
 頭がくらくらする。体温40度オーバーの夏風邪にうなされていた去年の今時分のように。
 地面に倒れこむ。デンプシーを全弾まともに食らった……
 あれ、あいつの名前なんだっけ……


 気がつくと俺はうつぶせになって、地面に無様に倒れていた。
 まずいことに酷く眠い。今眠り込んでも死ぬわけじゃなさそうだが、その間にまたあの鴉みたいなのが現れないとも限 らない。
 ……もしかしたらあいつ、昨日俺が燃やしてやった鴉達のリーダーだったのかもな。
 死んでいった仲間のために、か。確かにそれは大儀だが、今の俺だって身軽な気持ちで生きているわけじゃない。
 命を背負って、約束を背負っているんだ。それなのに……
「……カッコ悪すぎるじゃねえか、これじゃ」
 目の前を蟻が歩いていく。おお蟻よ、まさかお前は人を襲ったり、目が紅かったりということはあるまいな。
 蟻は、別に俺に手を出すことも無く脇の茂みに消えていく。
74とりとめのないこと:03/04/26 15:45 ID:jYP9y5wP
 俺はそのとき、自分がやたらと緊張していたことに気づいた。相手は蟻。今の俺でもまさに指先一つでも命を奪える、あの蟻だ。
 だが、それは相手が正真正銘"ただの蟻"ならばの話。あの蟻が「ただの蟻」である保証は何処にも無い。
 それどころか昔テレビで見た地球ですらも軽々持ち上げる強化蟻かもしれない。
 鴉みたいに素早い動きで相手を翻弄、その牙で相手ののどもとを……いやいや実は口からビームが……


 ……くだらないことを考えて睡魔を追い払う作戦はどうにか成功したようだ。
 それに、蟻ごときに身構える勢いだった俺の心理状態もかなり危ういのかもしれない。
 危ういと言えば俺の体。未だに力が入らない。
 疲労と怪我で、俺の体はもうへとへとだ。またまぶたが100tの錘をつけたように重くなってきた。
 頼むよ……あと少しで病院じゃないか……もちこたえてくれ……俺の……


 ……


 …
75とりとめのないこと:03/04/26 15:45 ID:jYP9y5wP
「頼むっつってんだろ!」
「わ!」
 飛び起きた俺の頭に、ごちんと何か硬いものが当たった。
「おお兄ちゃん! 復活したか!!」
「あ……れ、晴子さん? それに観鈴ちゃん……」
 晴子さんが俺を揺さぶっている。観鈴ちゃんは、額を押さえて涙目だ。
「顔を近づけすぎるからやで、ちゅー でもするきやったんか? わはは」
「もう……お母さん!」
 状況がよく飲み込めない俺を尻目に、目の前の二人は漫才を始める。なんか昨日にもこんなことが……
「なんや兄ちゃん、とぼけた顔して」
「え? え、え〜と」
「ま、ええわ。ところでもう一人の……太田の姉ちゃんはどないした?」
「香奈子さんは……」
 俺は顔を伏せる。多分俺は今、絶対に他人に見せられない顔をしているだろうから。
「香奈子さんは……俺を……生き延びさせるために……俺を……香奈子さんが……約束を……」
 言葉がうまくまとまらない。言わなきゃいけないはずなのに。香奈子さんは死んだんだ、と。
「……無理せんでええよ。兄ちゃんだけでも無事でよかったわ。見た目、ズタボロやしな」
「……お恥ずかしい限りで。ところで、晴子さんたちはどうしてここに?」
「うちらは……」
 晴子さんが一瞬詰まった。俺は顔を上げる。晴子さんと観鈴ちゃんが、神妙な面持ちで互いの表情を読みあっている。
 そのうち、晴子さんがにやりと笑って言った。観念したような笑みにも見えた。


「兄ちゃんを迎えに来たにきまっとるがな。ほれ観鈴、兄ちゃんのそっちの肩持ち。お母さんはこっちを持つからな」
76By RTO:03/04/26 15:47 ID:jYP9y5wP
【矢島 神尾母子と合流】
【三人は病院に引き返す】


全然動いてませんで。申し訳ない。
77名無しさんだよもん:03/04/26 20:21 ID:WS540v1G
名スレハケーン。
78名無しさんだよもん:03/04/27 19:07 ID:AdEceqVx
保守。
79名無しさんだよもん:03/04/28 00:46 ID:Sh1PPmQ0
保守&浮上
80名無しさんだよもん:03/04/28 11:57 ID:J1df53h8
RTO氏はもう書き込むのを止めた方がいいんじゃないか?
氏が書き込むたびにスレが止まるか墜落するというジンクスが育ちつつあるし
とりあえず活動をサイト一本に絞った方が良いと思うが。

とりあえず新作乙。
81名無しさんだよもん:03/04/29 01:09 ID:I1SyZ+n2
むちゃくちゃ言ってるなー
82名無しさんだよもん:03/04/29 13:37 ID:G+QSkofm
全くだ。書き込みたい人が書き込んでいくのを否定するのはおかしいだろ?
83名無しさんだよもん:03/04/29 16:25 ID:0532TUmK
そんなジンクスがあったのか!知らなかった。
と、80の書き込みをギャグとして読んでいた俺はなんなんだろう。
いや、たぶんギャグだろうし、
80も含めて皆さんがRTO氏には現役でいて欲しいと思ってるよ。
俺はそれ前提で読んでいたし
84名無しさんだよもん:03/04/29 23:49 ID:G+QSkofm
とにかく書き手さんガンバレ!
85冥約:03/04/30 17:58 ID:qP6xIefI
あるじの立ち去った屋敷内で、人影がごそりとうごめいた。
「ふう、ふう、ふう……」
息を荒げ、全身に汗を浮かべて、人影はゆっくりと立ち上がる。
あたりをきょろきょろと見渡して何かを探す。探し物はすぐに見つかった。
割れたガラスの破片。彼はそれを覗き込む。首筋を隠す髪をかきあげて、「鏡」に見立てたガラスに晒す。


孔が、ふたつ。


ふっ、と彼は息をはく。落胆したような、あるいは思考が諦観に達したか、そんな表情。
カーテンの隙間から、真昼の日差しが差し込んでいる。試しに、彼は指先を掲げてみた。
日光に触れた指先は、じゅっといういやな音とともに、焼けるような激痛を彼にもたらした。

彼は自分のおかれた立場を完全に理解し、同時に主人である吸血鬼、シュベストが彼に刻み付けた「命令」が頭の中に浮かんだ。
浮かんではいるが、彼の体はそのようには働かない。まだ、体の主導権を吸血鬼の本能に乗っ取られてはいないようだ。
もしも魂の主導権をその恐るべき本能に喰われてしまったなら、彼が今こうして自分の意思で考え、動くこともできないはずなのである。
彼の意思、思考、人の記憶、それらをすべて吹き飛ばし永遠に吸血主に従わせる……それがシュベストが彼に行った地の儀式の内容なのだから。

「儀式」はすべてを吹き飛ばす……たとえば彼「七瀬彰」の人としての魂……
86冥約:03/04/30 18:00 ID:qP6xIefI
 甘い香りが、彼の鼻をくすぐった。
 禁断の腐った果実のように、甘ったるく、魅惑的で、すべてを奪い去る芳香。
 彼はその香りに引き寄せられるように、ふらふらと、奥の部屋に向かった。

 【丘の上の屋敷】その主の部屋。
 おそらく価値のあるものなのだろう骨董品や絵画が、嫌味にならない程度の配置で並べられている。
 ……だが彰の目には、それはただの背景に過ぎなかった。
 部屋の中心のベッドで眠る、瑞々しい肌をたたえた少女の、背景に過ぎなかったのである。


 一歩ごとにきつくなる、その香りはまるで死臭のように忌まわしく、そしてとても魅惑的。
 足を進めるごとに、その香りは彼にまとわりつき、ねっとりとその理性を奪っていく。
 荒ぐ息を必死に抑えながら、彼は、その肌にそっと触れる。
 引き締まったからだと、はりのある肌。この中に詰まっているのは、きっととてつもない極上酒なんだ……
(……え?)

(僕は……今、何を考えていた?)
 喉が焼ききれそうなくらいに切実な渇き。少しづつ、自分の中の吸血鬼に喰われていく[七瀬彰]……
(血が飲みたい……葵ちゃんの血……)
 離れなければ。一刻も早く、ここから離れるんだ。でなければ―――
 自分が恐ろしくなり、彰は早々に部屋を立ち去ろうとする。振り返って、足早にロビーに戻った彼の目に―――
87冥約:03/04/30 18:00 ID:qP6xIefI
「彰! 無事だったかッ!」
「……冬、弥……?」

 彼の目に映ったのは、愛すべき親友の姿。
「彰! 助けを呼んできたぞ!」
 そういう親友の脇には、なにやら不思議な雰囲気をまとった人物が顔をのぞかせている。
 助け。助けというとなんだろう。吸血鬼と闘う力を持った何者か、それとも単なる頭数。
「彰!」
 反応のない彰に不安を覚え、冬弥が彼に駆け寄ってくる。
 近づいてくる冬弥。強くなる血の臭い。渇き。
「冬弥、来るな! 近づかないでくれ! 葵ちゃんは無事だ、この奥にいる! だから早く……彼女を連れて逃げてくれ!」
自分でも信じられないくらいに大きな声。冬弥の体がびくっとして止まる。
「……彰?」
「忘れたのかい冬弥……僕は[噛まれて]いるんだ……」
 彰は首筋をさらす。生々しい刻印が二つ。冬弥はあらためて彰を見る。そういえば、どことなくその瞳が赤みがかって……
「今はあの吸血鬼はいないみたいだ……はやく、葵ちゃんを……」
「あ、彰は、お前はどうするんだ……どうするんだよ!」
「そうだなあ……日光浴でもするってのはどうだろう」
「お前……ッ!」
「……それじゃ駄目だ」
 口を挟んだのは、エビルだった。
88By RTO:03/04/30 18:01 ID:qP6xIefI
「吸血されてから吸血鬼のしもべと成り果てるには少し時間がある……完全に吸血鬼と化さない限り日光で灰になることはない。
……それ相応の激痛は味わえるらしいが」
「完全に……というと?」
「少なくともお前が自分の名前を言えるうちは吸血鬼になりきれていないということだ。真に吸血鬼のしもべとなれば、
 祖である吸血主に心から従うようになり[自分]が何であったかなどどうでもよくなるらしいからな」
「詳しいですね」
「……死神の端くれだからな」
 なるほど、と言って彰はうつむく。
「……じゃあ、今ここで僕が首を掻き切れば死ぬことになるのだろうか」
「駄目だ。体中の血が流れ出るより早く、吸血鬼の細胞がその傷口をふさぐ。
 ……お前に残された道は二つ。数刻ほどでやってくる吸血鬼としての生活に身をゆだねるか、それとも」
 エビルは芳晴にめくばせする。
「……ここにいる聖職者の手にかかって死ぬか……決めるべきはお前だ」


 助け。彼女や彼、冬弥は僕の……「七瀬 彰」の……助けと……救いとなるだろうか……


【冬弥 彰のもとに芳晴一行を連れてくる】
【彰 時間の問題】


相変わらず進みませんで。
89String of life:03/04/30 21:54 ID:2MIgx95A
新作乙です。
人として死ぬか、死徒として生きるか、あるいは…?って
なんか某大殲みたいでアレですが。いやアレはアレで
大好きなんですがそれはどうでもよくって。
このシチュエーション、舞台としては結構おいしい部分だと思うので
他の書き手さんにもがんがって頂きたいです。
90間抜けな89:03/04/30 21:57 ID:2MIgx95A
ぐわ、クッキー残ってた…吊ってきます
91名無しさんだよもん:03/05/01 14:15 ID:ZCtiPW7T
また彰は人外変貌か。
ハカロワと被るから個人的にはあんまり好きではないな。
92名無しさんだよもん:03/05/03 02:33 ID:A/HMITgM
新作期待保守。
93男とサバイバルの必需品:03/05/03 17:59 ID:Yaeibjpt
「刀を失ったか…」
 光岡はそういうとこの島の状況を整理し直す。現在、この島には安全ロックを解除されたモンスターが
 はびこっているが、その数、種類、強さにおいては完全に明らかではない。スタッフである光岡でも
 この先何が起こるかが予想できないその理由は全てあの狩猟者の存在にあった。他にもどんな
 凶悪なモンスターが存在するかわからないこの状況で、今ある武器といえば北川のSPASとベレッタ。
 強力ではあるが、弾数に制限がある限りむやみに使うことはできない。
「北川、銃の他にも何かないか?別に武器じゃなくてもいいが」
「何かって…財布くらいしか持ってないけど」
 北川は財布を出そうと、ズボンのポケットに右手をのばす。そして、もう片方の手は
 他のポケットに何かないか探し始めた。するとその時、北川の左手に何かが当たる感触があった。
 その瞬間、北川はその手に当たった存在を思い出した。
94男とサバイバルの必需品:03/05/03 18:00 ID:Yaeibjpt
――サバイバル開始前(ジープにて)
「祐一〜、残りの2人はどんなやつかな?」
 後部座席に寝転がっている北川が間延びした口調で話し出す。
「さあな、全く見当つかね―や」
 一方、祐一はというと誰と一緒に乗るということよりもジープについて興味を示しているようだ。
「そうか、とにかくもう野郎は勘弁だな。何でここまで来て野郎と一緒に周らなきゃいけないんだ」
「ああ、そうだな。けど、それは大丈夫だと思うぜ。なんか女性参加者の比率がやけに高いからな」
「気づいていたか、さすが俺の見こんだ男。なかなかの洞察力だ」
 北川はそう言うと上体を起こし、祐一の方を見る。
「ところで俺が見こんだ男よ。これはちゃんと持っているか?」
 北川は左ポケットからなにやら取り出し、それを祐一の方に見せる。祐一の目の前にさしだされたのは
 コンドームの箱(10個入り、Lサイズ、ウス型)だった。
「お前…何考えてんだ」
「ふふふ、まだまだつめが甘いな。南国にこれば自然と人の心は開放的になる。そして、そこからうまれる
 アバンチュール…」
 北川はドアに腕をのせ、あさっての方を見ていた。が、すぐに祐一の方に向き直る。
「祐一、しょうがねぇからやるよ。…1個だけ」
 北川はなぜか男前の顔でコンドームを1つ差し出した。しかし、そんな北川に対しての祐一の反応は
 意外なものだった。
「……いらねぇーよ、そんなもの」
 その言葉に北川の顔が急変する。
「いらないってどういうことだ? 祐一、お前もしかして中に…」
 北川の手が震えだす。だがすぐに我に返り、
「そんなことはお父さん許さんぞ! お前はまだ高校生だ。ご利用は計画的にしなければいかん。
 幸せ家族計画を大切に。」
 北川は手のものを無理矢理祐一のポケットにねじこんだ――
95男とサバイバルの必需品:03/05/03 18:01 ID:Yaeibjpt
(さて、これはどうしよう。)
 回想を終えた北川は左手に箱を持って考えこむ。
「いいものを持っているじゃないか」
 突然の光岡の発言にびっくりする北川。
「え、これが!」
 思わずポケットからコンドームを取り出す。
「ん? なんだ、それは。俺は腰のベルトこと言ったんだが」
「…なんだ、ベルトのことか」
「ところでその手に持っているものはなんだ?」
 そう言うと光岡は北川の持っている箱に目をやる。
「いや、これはだね」
 光岡は北川の言うことはお構いなしといった感じで箱の文字を読む。
「これは…また便利なものを持っていたな。よし、北川ベルトを外せ」
「え、なんで?」
「こいつの使い方を教えてやる」

「使い方を教える」「ベルトを外せ」なんだかえらく意味深な言葉並んでるなと思いつつも
 北川は恐る恐るベルトを外す。光岡はそれを北川からもらうと、金具とベルトの革の部分を分解して、
 革を止めていた金具の鋭い部分で革の先をこすり切る。
 次に切った革の部分を剥がし、金具で両端に穴をあけ、その両穴にコンドームを1つずつ結びつける。
 それが終わると光岡は木に登り枝を折る。その折った『Y』の字の枝にコンドームと革で作ったものを
 枝の先端に結びつけた。完成したそれは北川にも見覚えのあるものだった。
「それはまさか…ぱちんこ(カタパルト)」
「そのとおりだ」
 光岡はぱちんこを引っ張って空打ちをしてみる。
「ぱちんこはサバイバルにとって重要な武器になる。銃などと比べれば殺傷能力は格段に落ちるが、なんでも
 弾にできるという利点がある。まず、そこらへんに落ちてるもの、例えば石とかが弾になる。
 さらにもっと色んなものが手に入れば毒薬を何かにつめて飛ばすこともできる。プロテクターで
 身を包んでいるモンスターなんかには顔面にそれをぶつけてもいいわけだ。」
96男とサバイバルの必需品:03/05/03 18:02 ID:Yaeibjpt
「あ、なるほど。例え銃の弾丸を跳ね返しても毒だったら効くかもしれないもんな。
 ということは小ビンに砂を入れて、目つぶしていうのもありか」
「そうだ。破壊力を重視した銃とは異なり、ぱちんこは変化に富んでいる」
 すると、光岡は1つの小枝を手にとると、ぱちんこでその小枝を地面に放ち、地面に突き刺して見せる。
「技術を上げれば弾をまっすぐに飛ばすことができるようになる。今は小枝であったが、これがガラスや
 ナイフの片割れだったら殺傷力は格段に上がる」
「すげぇ、そんなこともできるのか」
「もちろん、お前にもこれができるようになってもらう」
「え、まじで。それってけっこう難しいんじゃないの」
「かなりの練習が必要だ。だが、できた方が生存率は上がるからな。何が何でも短期間でマスターしてもらう」
「まさかとは思うけど、スパルタとか」
「短期間だからな」
「いやー! 俺は厳しいのは駄目なんだ―!」
「そんなムンクの叫びみたいな顔するな」
 光岡はどこか聞いたようなセリフを北川に言う。

「それと北川。SPASとベレッタの予備の弾倉(マガジン)をかせ」
 そう言われ、北川は元気なく弾倉を渡す。光岡はそれらをもらうとその2つをコンドーム1枚1枚の中にしまい
 入り口を結ぶ。
「確かお前の仲間たちは川に落ちたと言ったな。ということはそいつらの弾倉はもう使えないということになるな。」
 その言葉に北川は真剣な顔になる。今まで祐一たちのことを安心していたのは銃を持っていたからだ。
 けど、さっきの光岡の言ったことを理解した時、ひどく不安になった。
「じゃあ、相沢たちは丸腰ってことか…」
「そうなのか? 一応、どっちらかが俺の刀を持っているから完全に丸腰ではないんじゃないか。だがその点、
 俺たちは心配いらない。こうやって、包んでおけば少なくともこの弾倉は使える。
 それに今はまだ川沿いを歩いているが、いつ川から離れるとも限らん。そうなったら水が必要だからな。
 その場合もこれに入れていけばいい。知ってるか? コンドームは最大30cmまで伸びる。蛇口の場合、
 水を入れれば約1・5リットルは入るんだ。」
97男とサバイバルの必需品:03/05/03 18:03 ID:Yaeibjpt
「え、30cmも! 日本製なのに!」
「…いっている意味がよく分からんが、これにはゴムとして伸縮性を利用するのと包むという利用法がある。
 もちろん、他にも応用性はあると思うがな」
「言われてみれば応用性は高いな。……あ、使い方ってそういうことか」
 ここでいうコンドームの使い方をやっと理解した北川だった。
「一通り説明が終わったところで練習開始だ。できるようになるまで歩いていようが何をしてようが
 常に練習する」
 北川はその言葉に溜め息をついた。


【北川 コンドーム所持(そのうち4つ使用。1つ祐一が所持。残り5つ)】
【ぱちんこ作製】
【SPAS、ベレッタの予備弾倉コンドームで防水】
【北川のベルト 少し短くなる】

98まかろー:03/05/03 18:04 ID:Yaeibjpt
もとからある武器を使うんじゃなく自分たちで作ることと、
日常で使っているものがサバイバルではこう役立つという点を書いてみました。
別にシモがやりたかったわけじゃないんです。
……いや、本当ですよ!信じてくれー(←一応いいわけ
最後に誤字、脱字、矛盾点があれば指摘よろしくお願いします。
99名無しさんだよもん:03/05/04 00:03 ID:+VCx4JsI
すげー。そんなの思いつきもしなかった。面白い作品だと思います。
100名無しさんだよもん:03/05/04 00:17 ID:pieVDWI3
百。
101名無しさんだよもん:03/05/04 18:19 ID:G2SNTZLj
新作乙。(・∀・)イイ!!
102名無しさんだよもん:03/05/05 04:00 ID:v5r5dJw0
サバイバルしてるなー面白ー
103名無しさんだよもん:03/05/07 03:18 ID:YwmaaHeT
保守
104名無しさんだよもん:03/05/08 15:27 ID:BQQjwZ1h
新作期待保守
105名無しさんだよもん:03/05/08 23:58 ID:xq7uHGdy
保守上げ
106press out:03/05/10 00:22 ID:Tk7/O2Um
「うおおおおッ!」
化け物の一瞬の隙をつき、高槻は目的の部屋の中に滑り込んだ。
「3分でいい! 耐えてろよ!」
少年に向かって叫ぶと部屋の中に一目散。そして、必死に「それ」を探す。
ドアの横、冷蔵庫の上、ベッドの横、枕元―――あった―――!
喜ぶのはまだ早い。「それ」はまだ使えるかどうか……
高槻はその……受話器を乱暴に持ち上げた。耳元に発信音が聞こえる。
「よし……!」
モニタールームにいた時に覚えた番号を叩く。#0075。
プルルルル、プルルルル……
「出ろ、出ろ、はやく出ろ……!」
107press out:03/05/10 00:23 ID:Tk7/O2Um
 ピリリリリッ、と電子音が響く。
 それまで必死でモニターを見つめていた源五郎と敬介だったが、その音でふと我に帰った。
「僕が出ましょう」
 敬介が受話器を手に取る。
「もしもし……」
『高槻だ! そこはモニタールームだな!?』
「……!」
 自分たちが先ほどから探していた人物。
『今俺は307号室の電話からこいつをかけてる! そこからこの部屋の前の隔壁が操作できるかどうか調べてくれ!』
「隔壁? わ、わかった……長瀬さん、3」
「聞こえてたよ。隔壁だな? ちょっと待ってくれよ……!」
 源五郎の指が、忙しくキーボードを跳ね回る。
「火災用の隔壁がある。重さ分厚さともにティラノザウルスクラスだな」
『そいつを今からきっかり10秒後に降ろしてほしい! できるか? 俺が電話を切って10秒後だ!』
「……」
 源五郎はそこで、高槻の目論見を了解した。
「OKだ。最速設定で隔壁を降ろすよ」
『頼むぞ!』
 ガチャン、と高槻は電話を切った。
108press out:03/05/10 00:23 ID:Tk7/O2Um
「生きてるか!」
 電話を切った高槻は、廊下に戻って声を上げる。
「そろそろ厳しいかもしれないね……」
 少年はなんとか、と言う様子で怪物の足を止めている。それも、もう限界のようだった。
「いいか! 俺が合図したらそこから離れろ!」
「なんだって?」
 高槻は天井を指差す。そこには、いかにも壁が降りてきますという感じの枠が。
「いいな! ……7……8……今だ!」
 少年は力の干渉をやめ、すぐに後ろに飛び下がる。つぶされては流石に元も子も……


 そこで、少年は見た。
 怪物の目。再生した怪物の目。そして、鋭いつめの奔る軌跡……



 目を覚ました彼女は、思い切り飛び起きる。
「郁未さん、まだ起きてはいけません!」
 誰かの声が聞こえる。背中が痛い。口の中が血の味でいっぱいだ。
 だが……そんなことはどうでもいい。そんなことは……
 喪失感。心の一部が失われてしまったような、あっさりと、絶望的な喪失感。これは……
「まさか……あんた……?」
109press out:03/05/10 00:24 ID:Tk7/O2Um
【高槻 隔壁圧死作戦決行】


誤字脱字修正ありましたら。
110名無しさんだよもん:03/05/10 03:42 ID:EvAd5RfM
新作乙!!
111あの子を想い…:03/05/10 06:44 ID:d7p9uwVz
 無言でジープを走らせる。先程まで感じていた恐怖は今はない。
 それも全てはあの二人の御陰。
 
 ―――長瀬源三郎と橘雄蔵
 
 人の身でありながら太古の王に挑んだ勇敢な者達。例えあの二人が名の知れた強者だと
しても相手が悪い。これから先、生きて会う事はもうないだろう。まだ礼も言っていない
のに。
 ハンドルを握る掌からはまだ汗が滲んでくる。今でも後ろにT-REXがいるかと錯覚してし
まう。それ程のインパクトがあった。
 時々視線をルームミラーにやりながら秋子は考える。
 
 (私はあの二人みたいに命を賭けて誰かを救おうと行動に起こせるのか?)

 隣に座る芹香の横顔を盗み見、一人思案する。
 彼女は何を思っているのだろうか? 自分の身の回りの世話をしてくれた執事に助けられ
て、ただジープの揺れに身を任せている。その横顔からは何も感じさせない。
 恐怖も、悲しみも、不安も――――

「………………」
「あれ? …木が、燃えている? いや、燃えてはいない?」

 芹香が前方を指差すので見てみると、煙こそ上がっていないが、今正に燃えていました
といった感じの木々が見えてくる。

「おかしいわね……これだけ派手に燃えた後があるのに全然煙が出ていない」
「………」
「え?」
112あの子を想い…:03/05/10 06:44 ID:d7p9uwVz

 芹香が急に止めてと言ったので慌ててジープを止める。結構スピードが出ていたので思
わず前につんのめってしまうが怪我はない。
 秋子が理由を聞く前に芹香はジープを降り、燃えた後と思われる木々の中に入っていっ
てしまった。今まで見た事の無い俊敏な動作に多少驚きつつも秋子は芹香の後を追う。幸
い遠くに行かず、数メートル先の所で何やらうずくまっているのですぐに追いつく事がで
きた。
 最初は芹香が車に酔っただけだと思ったのだがそれは違った。彼女の俯くその場所には
女の子が横たわっていた。焼けた匂いを漂わせながら。

「………倉田さん!?」
「…………(コクリ)」

 既に死んでいると思われるその人物は、以前祐一に紹介された事のある人間だった。
 笑顔が印象的な女性。その笑みには異性同性問わず好感が持てた。しかし今は見る影も
無い。
 皮膚は焼け爛れて…いない。
 不自然だ。それはこの周りの木にも言える。焼けた匂いは漂っているのにどこか嘘を感
じさせるのはこの事だったのだ。
 だがそれに気付いたからといってどうにかなる訳でもない。目の前の少女はどう見ても
息絶えているのだ。

 ―――――――――――――ピクッ

 微かに、動いた。
 凝視していなければ気付かない程の僅かな動き。それを見逃さなかった。

「今、動いたわよね!?」
113あの子を想い…:03/05/10 06:45 ID:d7p9uwVz

 芹香の返事を聞くまでもなく秋子はジープに向かい走り出していた。そして乱暴にリュッ
クを漁るとペットボトルを抱え芹香の元へ戻る。
 ボトルのキャップを外して佐祐理に浴びせようかと思うがふと留まり、その肌にそっと
触れる。見た感じ赤く火傷の症状は見られるが爛れてはいない。肌から伝わる温度も尋常
でない程高温だったが、水をかけて悪化する類のものではないだろう。
 秋子は独断と偏見で佐祐理の全身に水を浴びせる。水が無くなると次のボトルのキャッ
プを開けて再び空になるまで水をかける。

「倉田さん! 倉田さん! しっかりしなさい!」

 懸命に呼び掛けつつ、ペットボトルは最後の一つへ。
 やがてそれも無くなろうとしていた時、芹香がある事を言った。

 ―――血があればもしかしたら治せるかもしれない。

「それは本当なの!?」

 秋子は芹香に詰め寄る。どうしてもこの子を助けたかった。手段を問わず。
 何でここまで他人なのに必死になれるのだろうと自分でも疑問に思うが、答えは出てい
た。
 
 目の前にある命を救えない者が、どうやって他の命を救う事ができるのか―――。

 自分は名雪を絶対に助けなければいけない。死なせてはいけない。だからこそ目の前の
人間を粗末に扱う事はできないのだ。命の重さに上下などない。好き勝手に命を左右する
なんてもっての他だ。
 それにこの子を助ける事ができればきっと名雪も助ける事ができる。そんな確信が秋子
の心の中に強く根付いていた。
114あの子を想い…:03/05/10 06:46 ID:d7p9uwVz

 芹香は説明をする。秋子の血に含まれている栄養、抗体を佐祐理に与えるというのだ。
 それをどうやってやるのか説明を聞いたが思わず絶句した。

 ―――黒魔法――

 オカルトだ。信憑性も何もあったものではない。普通ならば笑って聞き流す所だが秋子
は信じられた。身の回りに起こった奇跡の奔流。それを言い換えるのなら様々な言葉が当
てはまるだろう。その中に魔法があっても不思議ではない。
 具体的な方法を聞くとその真偽を疑ってしまうが、この際そうも言っていられない。
 秋子はサバイバルナイフを自分の左手首に当てると大きく息を吐き、一閃。
 戸惑い、躊躇、不安、希望―――様々な感情を共にしてその手首からは血が流れ出す。
 芹香はその血を掬い取り、佐祐理の全身に紋様を描きつつ塗り伸ばしてゆく。途中、衣
類が邪魔だったが流れる様な手際で脱がして作業を続ける。その顔に戸惑いは無い。
 
 どれだけ血が流れたのだろう。芹香がもういい、と言って自分の腕を止血してくれるま
で秋子の思考はどこか遠くへ飛んでいた。
 やがて芹香の口からは聞いた事の無い言葉が紡ぎだされていく。日本語でも英語でもな
い。これがいわゆる呪文の詠唱というものだろうか? どこか頭の中を通り過ぎる言葉の
羅列を聞きながら思う。
 
 一分位してからだろうか。不思議な事が起こった。
 佐祐理の体に描かれた血の紋様が赤く鈍い輝きを帯びてきたのだ。それは映画等で使わ
れる特殊効果のように―――だが、自然に。
 
 どれほどその様子を眺めていただろうか。気が付くと紋様は輝きを失い、芹香は詠唱を
止めていた。その様子は血を抜いた秋子よりもどこか疲れた感じがする。

「……終ったの?」
115M.O.E:03/05/10 06:52 ID:d7p9uwVz

 コクリ、と芹香は頷くと木に寄りかかり目を閉じてしまう。後から聞いた話だが血を抜
いた方は肉体的に負荷がかかり、その呪文を詠唱した方は精神的に負荷がかかるそうだ。
 自分だけでそれをする事も可能だが、肉体的に強くはない芹香がそれをすると命に関る
ので秋子に頼んだという事だ。

 だが今は佐祐理の生死が気になる。ここまでやって助からない可能性もあるのだ。いや、
むしろ助かる可能性の方が低いだろう。
 もう秋子は願うしかなかった。佐祐理が名雪に重なる。どうしても救いたい。一心に願
う。
 
 奇跡よ――――――――――――起これ。


【ペットボトルの水全て空に】
【秋子、体力消耗。貧血状態】
【芹香、精神力消耗。暫く行動不能】
【佐祐理、生死今だ不明】


個人的には佐祐理は生かしておこうと思います。狐火は普通の火とは違い精神的なモノが強く左右
すると自分は考えるので、この様な形をとってみました。
結局佐祐理の生死についてはうやむやにしてしまいましたが、次の書き手さんにお任せします。
116名無しさんだよもん:03/05/10 12:26 ID:9UnctERe
乙です。
ま、ここまで引っ張ったんだし生きててもいいでしょうなんて、俺は別に考えていません。

ところで豪快に名前間違えてます。
「長瀬源三郎と橘雄蔵」→「長瀬源四郎と立川雄三」
117名無しさんだよもん:03/05/10 13:50 ID:KVAp8Vls
新作乙。 でも豪快な名前間違いだなw 漏れとしては佐祐理に生き延びてほしい。 つっても次の書き手に委ねられてるみたいだが。 ここまで延ばす位ならいっその事決めるとこまで書いても良かったかも。
118名無しさんだよもん:03/05/10 16:27 ID:AQOUnugZ
先輩の魔力はとうとう死者蘇生を果たす地平にまで達したのか。

素晴らしい。Coolだね。ため息が出る。

このぶんなら指先一つで豪雨を降らすことすら出来そうだな。
119名無しさんだよもん:03/05/10 17:05 ID:AmSpGYGs
正直萎え
120名無しさんだよもん:03/05/10 17:09 ID:/UQS1sfR
>>118 死者じゃないでしょ?まだ微かに生きていて魔術で治癒させたと思うんだけど。 違うのかな?
121名無しさんだよもん:03/05/10 17:53 ID:RaZEZxzv
キャラ殺しを推奨したいわけでは決してないが佐祐里はいい加減殺しとけよ。
はっきりいって見苦しすぎる。
122名無しさんだよもん:03/05/10 18:04 ID:GvnKjlAj
愚作
123名無しさんだよもん:03/05/10 18:44 ID:g7050A0M
はっきり言って佐祐理厨ウザ過ぎるわ。

当初丸焼け人間松明だった佐祐理さんを良くぞここまで…
とうとう外傷無しだってよ。

精神的?
だったら何で木が燃えるんじゃボケ。
だいたいトレントを持ち出した事ですらアレなのに…何処までやりやがりますか。

サバイバルは皆殺しゲームじゃない。
だがしかしご都合主義でお気に入りキャラ生かそうって馬鹿展開はどうよ。
124名無しさんだよもん:03/05/10 19:27 ID:vN693fDc
これは俺もNGにした方がいいと思うな。
書いた奴には悪いが。
125The Last Miracle:03/05/10 20:59 ID:haYzpmJw
無明の視界が、突然眩い光に包まれる。
長いトンネルを抜けた直後のような眩しさに、思わず目を覆う。
眉間に皺を寄せ、強く目を瞑っても、光はおかまいなしに
容赦無く瞼を突き抜けて網膜を刺激する。
佐祐理は光を遮る事を諦め、少しずつ目を開く。

前後も、左右も、上下すらも分からない、白一面の世界。
「はえー……」
辺りを見渡し、耳をそばだてる。
何も見えない。
何も聞こえない。
「え?」
いや、何か聞こえる。
幽かに、密やかに。
しかし確かに、聞こえたのは。
どこからともなく、聞こえてきたのは。

それは、声。
華やかで無邪気な、声。
子供のはしゃぐ、声。
126The Last Miracle:03/05/10 21:03 ID:haYzpmJw
佐祐理は立ち上がる。
つい先程まで 怪我をしていた筈なのに、それが嘘のように体が軽い。
腕を大きく振って、髪を振り乱して、佐祐理は声のする方へ駆けた。

「あー、お姉ちゃん!」
懐かしい声。
忘れようの無い声。
佐祐理は立ち尽くす。
「あ……」

ひとしずくの、涙。
そこから先は、もう佐祐理にも止められなかった。
「か…ず…」
長い間、佐祐理の心を縛り付けていた、
重く硬い感情の鎖が引き裂かれた。

「うわああああああああああああああああああああああん!!」
愛しい弟を抱きしめて、佐祐理は思い切り泣いた。
「お姉ちゃん、大丈夫だよ」
弟は、優しい笑顔で佐祐理の頭を何度も撫でた。
127The Last Miracle:03/05/10 21:04 ID:haYzpmJw
あの日から。
ずっと悔やんでいた。
ずっと嘆いていた。
ずっと苦しんでいた。
そして苦しみを押し潰すように、笑い続けていた。
それが自らの「罪」に対する「罰」だと、信じていた。
それは一弥に対する贖罪だと思っていた。

だけど。
自分を何も言わず慕う、寡黙だが優しく誠実な友がいた。
自分とは違う、偽りの無い笑顔を向ける、明るく元気な後輩がいた。
彼女と、彼と居る時だけは、苦しみの裏返しではない、本当の
笑顔でいられた気がする。

自分でも気付かない内に、自分は沢山の宝物を貰っていた。
そしてこんなギリギリのタイミングで、もうひとつ。
それも、とびきりのプレゼント。
それが誰の差し金なのか、それは佐祐理にはどうでも良かった。
自分の一生が、自分が想像していたよりもずっと短いものだったことも、
不思議なくらいあっさりと受け入れる事が出来た。

眩しく、白い闇が晴れていく。
その後に拡がるのは、空を越えて星の世界まで覗けそうなほどの、蒼空。
一陣の風が、佐祐理の頬を撫でて駆け抜けていく。

ありえなかった筈の再会。
最後の最後で、こんな事があるなんて。
佐祐理は何度もしゃくり上げ、泣きながら笑って、呟いた。
「奇跡って、起きるものなんですね…」
128The Last Miracle:03/05/10 21:06 ID:haYzpmJw
「お姉ちゃん」
「うん」
姉弟は、手を取って歩き出…さない。
佐祐理は後ろを振り返り、残された者に想いを馳せる。
静かな外見とは裏腹に、燃えるような熱い心を持つ舞。
おちゃらけた口調とは裏腹に、実は一本気で意外に男らしい祐一。
彼らには、まだこっちに来て欲しくない。
自分が出来なかったことを、彼らにはやって貰いたい。
そして自分の分まで、長く生きて欲しいと想う。
「佐祐理は大丈夫ですから…待つのは全然平気ですから…」

だから…

「!!!」
秋子が、目を見開いて佐祐理の顔を覗き込む。
芹香も、閉じていた目を開いて佐祐理を見た。
かすかに、佐祐理の唇が動いていた。
唇は、言葉を紡いでいた。
「ま…い……ゆ…うい…ち……」
秋子は急いで佐祐理の口元に耳を近付ける。
「…い……き…て………ね」
そして、安らかな笑顔を浮かべ。

それっきり、佐祐理の体は二度と動かなかった。
129The Last Miracle:03/05/10 21:08 ID:haYzpmJw
秋子は、あと少しだけ泣こうと決めた。
そして、泣きやんだら立ち上がろうと決めた。
「生きてね」と言う、佐祐理の最期の言葉。
それは、今この瞬間もこの島のどこかで生きる者へ、
生還への闘いを続ける全ての者へのメッセージ。
秋子にはそう聞こえた。
「倉田さん…あなたの言葉を無駄にはしません」
秋子は呟き、そして誓った。
名雪が生きている限り、どんな事があっても
絶望だけは、しないと。

芹香は木にもたれ掛かったまま、無言で空を見ていた。
涙を流れるに任せ、蒼穹の更に彼方を見るような遠い眼差しには
それまで無かった強い光が宿っていた。
結果的に彼女を死の縁から救い上げる事が出来なかった
自分自身への失望、無力感はある。
しかし、佐祐理の言葉は、芹香の胸にも確かに響いていた。
(…綾香……わたしを見ていてね)
誰にも聞こえない小さな声で、芹香は亡き妹に語りかけた。

【倉田佐祐理、死亡】
【秋子、体力消耗。貧血状態】
【芹香、精神力消耗。暫く行動不能】
130名無しさんだよもん:03/05/10 21:16 ID:uccvNe4r
>>125-129
…いやぁ、この状態からよくもここまで綺麗に締められましたなぁ。

お見事。
131名無しさんだよもん:03/05/10 21:21 ID:glY3g5O0
フォロー自体は悪くないと思うけどたまにはNG出してもいいんじゃないかなあと思ったり
>>123みたいな矛盾を通して読むと感じそうだし。
今回はまあこれでいいと思うけど。
132The Last Miracle(追記):03/05/10 21:28 ID:haYzpmJw
前のお話に関する議論が出ていたにも関わらず、勝手に話を
進めてしまった事を御詫びいたします>スレ住人の皆様

ただ個人的には、前のお話を読んで「佐祐理奇跡の生還」と言うよりも
「佐祐理の最期へのプロローグ」と言うイメージを持ちました。
この辺りの、物語を進める上でのイメージのズレと言うのはリレー小説では
ありがちな事ですし、むしろそれが一種の魅力でもあると思います。
その辺を汲み取っていただければ幸いです。
133名無しさんだよもん:03/05/10 21:32 ID:l0uH3kYV
くみ取れるか!ボケェ!ドアホ!勝手に進めるな!




と言いたいだけ言ってスッキリしたので通しでいいよ
134名無しさんだよもん:03/05/10 21:40 ID:9UnctERe
綺麗に終わったね。乙。
135名無しさんだよもん:03/05/10 22:13 ID:8Ydkdd4u
ちっ。魔術の失敗で佐祐理をゾンビ化してやろうと思ったが……出遅れたか(w
136Frail Limb Nursery:03/05/10 22:50 ID:Ln1j1PKa
「恐怖」。
 人の持ちうる感情の中でも最も原始的なものの一つ。
「恐怖」。
 すなわち、
「恐れ」と「怖れ」。

 人は何を恐れるのか。
 心根に刻まれた「恐」「怖」の二文字は何を以て鎌首をもたげるのか。
 それは……
 
「む、マイシスター瑞希!? それに詠美! 大丈夫か!?」
 気絶した詠美を抱えて坂道を駆け上がることしばし。瑞希は向こう側から走ってくる九品仏大志の姿を発見した。
「あ、た……大志……」
 ほんの少し前まで一緒であったのに、永遠だったような時の壁。
 薄くて長い星霜を経て、親友2人は再会を果たす。
 その顔を見て少し気が抜けたのか、瑞希はその場に両の膝をついた。
「しっかりしろ!」
 慌てて九品仏はその肩を掴む。
 見るまでもなく、瑞希の顔は憔悴しきっていた。こみパ直前の徹夜続きの状態など、比べるまでもないほどに。
「体力」だけでなく「生気」。そんなものが抜けきったような。そんな顔をしていた。
「あ、あたし……あたし、たちは……」
 今の今まで自分たちに起きたことを説明しようとする瑞希。だが
「喋るな! 大方の予想はつく!」
 瑞希の様子。詠美の様子。そして……詠美の手に握られた南の……
「南女史……ッ……!」
 ……生首。
 完全に気を失っている詠美の手は引きつけでも起こしたかのように固く握られており、そこに絡まった南の髪はほどけそうにない。
 出来ることならば丁重に弔ってやりたいところではあるが、生憎今そんな時間は、ない。
 大志は可及的速やかに最優先事項を選び抜く。すなわち、それは
「川澄は! 川澄舞はどうした!?」
「か、彼女、は……あたしたちを襲った……鎧の……化け物、を……一人、で……」
 やはりか!
137Frail Limb Nursery:03/05/10 22:50 ID:Ln1j1PKa
 大志は心の中で叫ぶ。
 そして次に……
「瑞希! 詠美を抱えて、まだ歩けるか!?」
 半ば命令に近い確認をぶつける。
「この上に同士和樹が待っている! そこまで歩けるか!?」
 正直かなりグロッキーではあるが、この状況、そんなことは言っていられない。
 瑞希は力無く、しかし確かに、首を縦に振った。
「え、ええ……」
「よし! ならば吾輩は川澄の応援に向かう! 詠美のことは頼んだぞ!」
 吐き捨てると同時に、大志は坂を下って駆け出した。その後ろ姿がたちまち小さくなっていく。
 ダメだ。行かないでほしい。ここにいてほしい。自分たちを守ってほしい……
 そんな感情を込めた右腕を、虚空に力無く差し出す。
 だが、そんなことを言ってはダメだ。
 今の自分にはやるべきこととやれることがある。そして、大志にもやるべきことがある。
 ならば、それを成すべきだ。己の弱さに頼ることは楽だが、それでは事態は何も進まない。
「あ……」
 助けを求めようとした言葉を飲み込み、代わりに瑞希は叫ぶ。
「……気をつけなさいよ大志! 怪我したって知らないんだからね!」
「はーははははははははは! マイシスター瑞樹よ! 貴様誰にものを言っていると思っているのだ! 吾輩の名は九品仏大志! いずれ世界を制する男!
 こんなところで朽ちる命など持ち合わせて……ぐほっ!?」
 ……おそらく最後の「ぐほっ」はどっかの木にぶつかるか転ぶかしたのだろう。
 一瞬だが、一瞬だけだが、いつものノリ。
 その僅かな日常の残り香に、瑞希は苦笑した。
138Frail Limb Nursery:03/05/10 22:51 ID:Ln1j1PKa

 しかし、日常に混じった恐怖は確かに、その枝葉を徐々に伸ばしていた。
 そして……その、犠牲となる者も。
「っ…………」
 九品仏と別れた数分後。瑞希の肩に支えられながら、詠美は小さな呻き声を漏らした。
「……詠美?」
 その小さな声こ聞きつけた瑞希は、近くの木陰に詠美を座らせる。
「……大丈夫?」
 薄汚れきったその顔を覗き込む。
「う……あ……?」
 反応があった。小さく唇が動く。
「詠美……しっかりして」
 肩を掴み、軽く揺さぶる。
「う……あ……あ……ああ……?」
「詠美……」
 声だけではない。その瞼が僅かに開いた。
 その隙間からつぶらな瞳が顔を覗かせる。
「しっかりして……もう、大丈夫だから……。もうあいつからは、逃げ切ったから……」
 右手を詠美の頬に添え、ほつれ毛を整える。
 
 ガリッ!
 
 にぶい音だ。にぶく、低く、くぐもった音。
 わずかな衝撃を伴いつつ、右手から聞こえた。
「え……?」
 瑞希は、目の前の光景が信じられなかった。
 自分の右手から伸びたモノが、消えたのだ。
 すなわちそれは、彼女の指。細くしなやかな、テニスラケットと、ペンで現れた、白魚のような指。
 その中の薬指と小指が、真ん中あたりから消え失せていた。
 
 ズキン!
139Frail Limb Nursery:03/05/10 22:52 ID:Ln1j1PKa
 瑞希の脳が状態を把握するより早く、痛みと、それを伴った出血がほとばしる。
 飛び出た血は詠美の口元を赤く濡らした。いや……元より詠美の口は、赤かった。
 彼女が口にくわえる、二本の指によって。
 
「ヒハ……はは……はヒ……」

 詠美の声だ。声が聞こえた。
 だが、詠美の声ではない。
 先ほどまでの、詠美の、彼女の、大庭詠美の、声ではない。
 声帯は同じものを使っているのだろうが、その口を動かしているのは、別人としか思えない……それほどまでに変貌した詠美の声だった。
 
「え、えいみ……?」
 崩れるように、詠美に躙り寄る瑞希。
「あアあアアアアアア!!!?!??」
 が、彼女を迎えたのは優しい抱擁ではなく、鼻っ面に食い込む詠美の拳だった。
 大した力はない、少なくとも瑞希よりは非力なはずのその筋力ではあったが、まるで今は何かのタガでも外れたかのような、無遠慮の一撃が、瑞希の鼻を折る。

「ばが……っ!」
 鼻血をまき散らしつつ後ろに倒れる瑞希。だが詠美の狂気は止まらない。
「あくクゥハハハ……ひひハ、くは……アハァ、は、は、ハハハ……………………」
 小さな笑い声とともに、詠美はゆっくりと立ち上がる。
「ヒハ……くぅは……ハハハハハハ……はヒハ、は、は、ははははは……………」

『恐怖』は何によってもたらされるのか。
 それは、『未知』だ。
 人は己のあずかり知らぬものにこそ『恐怖』を覚える。
 ならば、人にとって永遠の『未知』とは何か。
 宇宙の彼方か。
 深海の果てか。
 はたまた遺伝子の境地か。
 否、否、否、いずれも否。
140Frail Limb Nursery:03/05/10 22:52 ID:Ln1j1PKa
 人にとって永遠の『未知』。
 それはすなわち、人の『心』。
 いうなれば、『他者』。
『己』ならざるものども。
 己でなきは全て未知。
 つまりは……
 
『己』以外は、全て、『恐怖』!

「はヒハフはヘはあヒャヒハは………………」
 濁りきった詠美の目は、もはや世界を正しく認識することを許してはくれなかった。
 ただただそれがもたらすのは、『他者』という名の『恐怖』。
 ここに至り、詠美は見るもの聞くもの感じるもの全てが恐怖の対象でしかなりえなかった。
 目の前に倒れるかつての親友も、また然り。
 一つ皮をめくれば何を考えているのかわかったものではない。
 人など、所詮弱いモノ。信用などできぬモノ。……知ることのできぬモノ、すなわちそれは『恐怖』であり『不快』であり『敵』である。
 目の前にあってはいけないモノである。
 
 ならば、
 ならば、
 ならば、
 
 排除する!
 
「あ・は・は・は・は!!!!」
 詠美は高笑いしつつ、南の生首を振りかぶった。
「え……み……! やめ……!」
 哀れな瑞希の命乞いなど全く意に介せず、遠心力をつけた南の頭部を瑞希に叩きつける。
 すでにもの言わなくなった南の顔と、瑞希の顔がどんどんと互いの血で染まっていく。
「あはははぁ! はははははぁ! ひゃははははぁ! あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」

 そして、詠美の手にはいつの間にか手頃な石が握られていた。
141Frail Limb Nursery:03/05/10 22:53 ID:Ln1j1PKa

「あはは……」
「やめ……」
「あはははははははは……」
「おねが……」
「あははははははははははははは……」
「もう、かんべん……」
「あはははははははははははははははははははははは……」
 
 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
 
142by R.E.D.:03/05/10 22:54 ID:Ln1j1PKa

「あはは……っ」
 どのくらい時間が経ったのだろうか。
 瑞希の頭部の形が変わりきったころ、ようやく詠美は上下動を繰り返していた両手を止めた。
 右手に、石。
 左手に、南の首。
 共に真っ赤に染め上げられている。
 
「あはははははは……ははははは……はははははははは……」

 自分の真っ赤になった両手を見て、再度乾いた笑い声を漏らす。
 
「あははは……はははははは……ははははははははは……」

 そして、詠美は歩き出した。
 
 どこかへと。
 
【高瀬瑞希 死亡】
【大庭詠美 狂う。どこかへと歩き出す】
【詠美の装備 石、南の首】
【九品仏大志 舞のもとへ】
143名無しさんだよもん:03/05/10 23:04 ID:t2yzdecb
>>135
俺も似たようなこと考えてたよ。
てか勢い余って秋子さん達も手にかけるとこだった。
あっぶねーw

しかし今日は新作ラッシュやね。
144名無しさんだよもん:03/05/10 23:10 ID:rSBo36/T
相変わらず容赦なし…
145名無しさんだよもん:03/05/10 23:50 ID:TTkQKNF2
瑞希ハカロワに続いて酷い死に方。
ご冥福をお祈りします。
146111-115:03/05/11 00:46 ID:64kfoxWT
物議を醸し出してしまった作品を書いた者です。

名前に関しては全面的にこちらのミスです。すいません。管理人様、名前の修正をお願いしたい
です。
佐祐理の生死に関して、一応私が思った事をやらせて頂いたのですが、結果については次の方に
任せたので、>>125-129を書いた方の綺麗な締めに感謝します。

否定的、肯定的な意見の割合が否定の方に一方的になってしまい本当に申し訳ありませんでした。
次回は今回の教訓を踏まえた上で書きたいと思います。
私の書いた文で不満を持たせてしまった皆様、すいませんでした。
147名無しさんだよもん:03/05/11 00:51 ID:NNwhVXEP
>>146
その前向きな姿勢や好し!

がんばってくだせぇ。
148名無しさんだよもん:03/05/11 01:15 ID:SKvUL/Bi
>>146
貴方の話が一つのきっかけになったことは事実です。乙。
149125-129:03/05/11 01:48 ID:mn4qYTJP
新作乙です。
詠美発狂と言う凄絶な展開のこれからに期待しております。

>>146
148氏の言われる通り、あなたのネタフリがあったからこそ
ああ言う話を書く事が出来たのです。
書いた本人が言うんだから間違いありません。
こちらこそ、深く感謝。
150名無しさんだよもん:03/05/11 23:27 ID:Evh1Gfa+
新作乙です。
これを良作と思える自分は相当に病んでいるのか正常なのか。
151Face:03/05/12 01:35 ID:FTJsLesV
 四階廊下を歩いている間、高槻はずっと愚痴っていた。
「そもそもだ、どうして俺がこんな映画みたいな目にあわなければいけないのか?
 無論あの朝鮮製とか抜かす野郎のせいなわけだが……しかし……この島へのモニター招待チラシに釣られ……
 のこのことこの島に……あまつさえあのクソガキを連れて来てしまったのは……ええい、腹が立つ!」
 なぜか高槻の頭の中には、次々と少年のことが浮かんでは消えた。しかし高槻は別段、それを不思議とは思わなかった。
 ぶつぶつと文句をたれながら、隔壁で遮断されてしまった少年と落ち合うため、高槻は四階廊下を歩いていた。


 三階に下りた高槻がまず目にしたのは、うずくまってごそごそと何事かしている少年の姿だった。
 仕留め切れなかったか―――!? 高槻は駆け足で少年の元へと向かう。
 案の定、肩から上だけプレスを免れた怪物の体が、少年の足を喰いちぎろうとしている。
「ちィッ!」
 軽く飛び上がって足に勢いをつけ、おもいきりやつの頭を踏み潰す!
 肉と、骨格の擂り潰される奇妙な音がして、今度こそ怪物は完全に生命活動を停止した。
 踏み潰した足から、ぶすぶすと何かのこげる臭いがする。高槻はあわてて足を離した。ただでは死なないってやつか。クソッタレ。
「梃子摺らせやがって……」
「やあ高槻、助かったよ」
「ふん、別に貴様を助けるためにこいつを倒したわけじゃ……」
152Face:03/05/12 01:35 ID:FTJsLesV
 高槻は見た。
 少年の腹部に刻まれた、生々しい引き裂かれた傷を。
「お前……ッ!」
「さっき飛びのくときに、ちょっと傷が痛んでね……このざまだよ」
「くそ!」
 すぐさま高槻は少年の体を抱えあげる。この傷では、背負ったりしては取り返しがつかないことになる。
「服が汚れるよ、高槻」
「やかましい!」
 この状況でまだ減らず口を叩く少年は、高槻の焦りに火をつける。
「高子たちのところへ行くぞ」
 言って、高槻は走り出す。
「こんなところで貴様を死なせたのでは俺が天沢郁未に粉々にされてしまう」
 高槻は走る。
「それに、ヤツも貴様も俺の手駒だ。勝手に死ぬことは許さんぞ」
 高槻は走る。
「大体貴様はいつも……」
「FARGOは」
153Face:03/05/12 01:35 ID:FTJsLesV
 高槻の言葉を、少年の言葉がさえぎった。
「ひどいところだったし、君自身もずいぶんひどいやつだったけど……なんだか楽しかったよね」
 こんなときになにを……高槻は思ったが、口が動かない。
「君がFARGOの外では随分とわきまえた人間だってのも驚いたけど」
「ふん……俺は堅気には手をださんのだ」
「アミにかかった人間には容赦しないけど、そういうところはFARGOでも徹底してたよね……知ってるよ」
 ごほ、と少年は咳き込んだ。わずかに、血の赤が混じった咳を。
「しゃべるな。しゃべったら傷が……」
 いや。喋っていてくれ。それが途切れたときは、つまりお前が……
「郁未は……怒るかな」
「ふん。どうあれ先に怒鳴られるのは俺のほうだ」
「悪いね。苦労かけて」
「貴様に煮え湯を飲まされるのはいつものことだろうが」
「僕のほうは、そうは思ってないさ……ねえ高槻。君は、僕のことが嫌いだろう?」
「当たり前だろう。その落ち着き払った態度、スカした言動、常にこっちの裏をかく行動理念! 
 おまえも、天沢郁未も嫌いなヤツの筆頭候補だ」
「そうだと思ったよ。それでこそ高槻だ。ちなみに僕はね高槻」
154Face:03/05/12 01:36 ID:FTJsLesV
 高槻の腕をつかんでいた腕が、ゆっくりと力を失い、少年の体の脇でゆらゆらと揺れる。
 垂れ下がったその腕が次第に動きを止めていく様は、ねじの切れた時計がその役目を終えていくかのようだった。
「……貴様は……なんだ」
 高子たちのいるはずの部屋まで、あと数メートル。
「まさか好きだったとか言うわけじゃないだろう」
 俺もお前も、そんな言葉は口が裂けたっていえないよな。
「答えやがれ……せめて、その先の言葉くらい喋ってから……」
 喋って……喋って、それから……
「そうすりゃ、間に合ったかも知れねえだろうが……!」

155By RTO:03/05/12 01:37 ID:FTJsLesV
「そうね」
 突然の自分以外の声に、高槻は顔を上げた。
「天沢郁未……」
「高槻、あんたも知ってるでしょ? こいつはいっつも自分勝手なんだから」
 つかつかと郁未は歩み寄ってくる。
「何よこの顔……殴りつけたら"おはよう"とか喋ってきそうだとおもわない?」
 少年の顔をそっとなでながら、郁未は独り言のようにつぶやいている。
 その向こうには、どうしていいのかわからずにおろおろと成り行きを見つめる高子の姿。
「……どうしてよ」
 それは、俺に対する問いかけか。俺は、なんと答えればいい?
「どうして、どうしてなのよ! よりによって、あんたが!」
 郁未は高槻につかみかかる。
「高槻のくせに……あんたのくせに、どうして!」


「どうしてあんたが、そんな顔をしてるのよ……!」


 そのうち、郁未が傷の痛みと疲労に耐えかねて気絶してしまうまで、高槻は、何も言わなかった。


【少年 死亡】
【キメラ撃破 高槻一行ホテル制圧】
156名無しさんだよもん:03/05/12 02:25 ID:yyutMD3W
や、やべえ。久しぶりに感動した。
あのタイミングで死ぬのは反則だろう。
てか、高槻が良いキャラになったなあ…。
普通に格好良い。

あんまり序列つけるのは良くないんだろうけど
俺的には今のところ鯖内トップの話だ。
157名無しさんだよもん:03/05/12 02:38 ID:oIyJp/fe
ラスト三行にやられた。脱帽。
上と同じように序列をつけるのは良くありませんが、
あのロワの人気がある死に様と比較しても、遜色無いと思います。
158名無しさんだよもん:03/05/12 09:39 ID:Iwssi8Zo
新作乙。
ところでサイトの更新はまだやらないんですか? かなり放置してるみたいですが。
あとキャラ事の現在位置とかも知りたいです。前スレかどっかにまとめがあったかもしれないけど…。
159心境:03/05/12 12:11 ID:bN8XgLgn
 もうセスナは見えない。この激しい雨の中をどこへ飛んで行くのだろう。
 そして誰が乗っていたのか?
 駄目元で格納庫を調べつつ葉子はそんな事を考えていた。
 スパナやフラッグ、工具入れ等は簡単に見つけられたが、肝心の飛行機はどこにも見当た
らなかった。見れば一目瞭然。
「ないですね」
 無言で頷く葉子。
 多少なりとも希望を持っていたのだがあっさりと裏切られてしまった。
 セスナ機一機を整備する為だけにあるような格納庫。まるで隠し飛行場みたいだ。それを
裏付けるように周りは森で覆われていて、エンジン音が聞こえなかったら素通りしてしまっ
ていただろう。もしかしたらこの場所を発見できたのは幸運かもしれない。

 セスナ機が離陸してから暫く格納庫の中を調べていたのだが、重要な手掛かり等はまるで
見当たらなかった。非常用の電話も沈黙を守ったままでウンともスンとも言わない。
「駄目。ろくな物がないわ。必要最低限の備えしかしてないみたい」
 溜息を吐きつつ友里は言う。彼女もどこか希望を持っていたのだろう。少なからず落胆の
色を見せる。
 雨に打たれ、泥を弾いた結果がこれでは確かに仕方がないかもしれない。それに雨はまだ
止む気配を見せず、格納庫を打つ雨音は激しさを増したようにも感じられる。この中を移動
するのは得策とは思えない。幸い雨漏り等はしていないみたいだしこの場所で雨宿りをする
のも悪くはないだろう。
「友里さん、雨が止むまで暫くここにいましょう」
「……そうね」
 どこか納得がいかない表情で頷く。その理由としては葉子も察しがついた。
 離れてしまった大切な人。
 口にこそ出さないが友里は由依の事が心配なのだろう。テーマパークと銘打ってはいるが
今となっては得体の知れない孤島に過ぎない。そんな場所に自分の大切な家族が居るとなれ
ば少なからず心配するであろう。
160心境:03/05/12 12:11 ID:bN8XgLgn
 不可視の力を持つ葉子としてもその不安はある。郁未と少年。この二人は色々な意味で葉
子にとっての大切な存在。もし今この場に居てくれたのならどれだけ心強かっただろうか。
何が来ても恐れる事などない。そう思わせてくれる。
 それと、高槻。悪知恵にかけては他の追随を許さない。この状況で彼の弾き出す戦略等は
正直伺いたいものがある。さぞ驚かしてくれるだろう。

「……」
 ふと見ると友里が葉子をジッと見ていた。何か私の顔に付いているのだろうか? 片手で
自分の顔に触れるが特に何も無いように感じられる。あるのは鼻、口、目。特に追加された
パーツは見当たらない。
「…ふふ」
「?」
 それを見た友里の口からは笑みが漏れていた。葉子は訳もわからず無言で友里を凝視する。
 するとそれが更にうけたのか、あはは、と声を出して笑い始めた。
 葉子にとっては失礼極まりない。人の顔を見て笑うなんてもっての他だ。
「あはは、ご、ごめんごめん」
「………」
「そんな顔で見ないでよ。ただ、葉子さん結構表情が変わるんだなーと思って見てただけだ
 から」
 それを聞いた葉子は素直に驚いた。自分でも表情の変化に乏しい事には気付いていたのだ
が、他人にこんな指摘を受けたのは初めてだった。
「ほら、今もちょっと驚いてるって感じの顔してる」
 友里は優しく笑い葉子を見つめる。その顔を直視できずに別の場所へ視線を移す。どうし
てだろう。友里だって不安なはずなのに、こうして笑いかけてくれる。場を和ませてくれる。
 それはとてもありがたい。でも…
161M.O.E:03/05/12 12:12 ID:bN8XgLgn
「郁未さんや由依さん、無事だといいですね…」
「…そうね」
 口から出た言葉はこんなものだ。いくら励ましあっても根本が解決しない限りは不安が残っ
てしまう。
「もう…寝ましょうか」
 葉子は格納庫の隅に置いてあった大きめの布を引っ張ってきて、大きく広げた。こんな物
でも何か掛けないよりはマシだろう。
「雨が上がったらすぐに出発しましょう」
「…うん」
 友里も布の中へ体を滑り込ませて、リュックを頭の下に敷き眠る体勢をとる。
 
 雨と雷の音は二人が眠りに入るまで鳴り止む事はなかった。


【葉子・友里 格納庫で睡眠】
162RTO:03/05/12 15:04 ID:FTJsLesV
新作乙でございます。今度こそ全員二日目ですかね。

>>編集サイト
更新したいのはやまやまなんですが出張中の間のログがまるごとないんです。申し訳ない。
ギコナビのログでもあればなんとかなるんですが……
163名無しさんだよもん:03/05/12 15:48 ID:ogvj2olh
8日目から抜き出しましたけど

○1日目雨前チーム
 犬飼俊伐他(本州某所)

○雨中チーム
 氷上シュン他(休憩所)

てまだ2日目に入ってませんよね?多分これらの2チームが1日目のラストかと。
164名無しさんだよもん:03/05/14 04:22 ID:eP3pO3Zy
保守
165名無しさんだよもん:03/05/16 00:46 ID:sCkbOTyr
166名無しさんだよもん:03/05/16 19:20 ID:F7+1mJWN
167名無しさんだよもん:03/05/16 22:30 ID:WzZcKTnU
168Think:03/05/17 04:19 ID:tAo21cL2
ソフィアが体の変調を訴えて、森に面した土産物屋に腰を下ろしてから15分になる。
彼女は、およそ人間とは思えぬほどの体温を発しながら職員用のソファで横になっていた。


雅史はその傍らについてやりながら、この少女についていろいろと考えをめぐらせた。
そもそも、彼女は人間ではない。森の民、緑のエルフと彼女は言った。
実際に雅史はその魔力で彼らの森の住処に拉致され、そこで彼らなりのもてなしを受けた。この件に関しては信用に値する。

しかしどうにも、雅史には彼女が自分に同行する真の理由を読むことができない。
表向き、彼女は自分に惚れた、などといっているが本当にそうなのだろうか?
彼女がそういっているときの顔はうそをついている顔とは思えない。もしかしたら、それはそれで本当のことなのかもしれない。
だが、それだけでこの危険な島でともに行動する気になるものだろうか?
彼女だって、この島の異変に気づいていないわけではないだろう。実際彼女とであったきっかけは狂ったゴブリンから彼女を救い出したことだし、
エルフの森を出てから2度ほど怪物に襲われた。一回は倒して、もう一回は二人で逃げた。
彼女は――――――
169Think:03/05/17 04:19 ID:tAo21cL2
「ごめんね、雅史」
いつのまに意識を取り戻していたのか、ソフィアが目を開いてこちらを見ている。
「いや、昨日の事とで帳消しだよ。……起きられるかい?」
「まだちょっと無理そう……いいよ雅史。あたしを置いて行っても」


置いて行く。彼女と行動をともにしてから、どういうわけか一度も考えることのなかった可能性。
彼女の性格上、おそらく今ここで自分が彼女を置き去りにしていったとしても、おそらく彼女は自分を責めることはないだろう。
……だがしかし、それは……


「しないさ、そんなこと」
言って雅史は、店の棚から持ち出してきたミネラルウォーターをソフィアに差し出した。
そして言ってしまってから思う。自分のこの言葉に、どれほどの信憑性があるだろうか、と。
昨日お前は見殺しにしてきたじゃないか―――? そのうえで、彼女を置き去りにしないなどと言える立場にあると思っている―――?
「……ありがと」
雅史の言葉にか、差し出された水に対してかはわからないが、そのソフィアの言葉で雅史は考えるのをやめた。

そうだ、彼女は最後の一線だ。もしも彼女を置き去りにしたり見殺しにしたりすることがあれば……
……今度こそ、自分は浩之たちに合わせる顔がなくなってしまう。いや、それよりもっと―――自分が何か、モンスターと同じになってしまうようで―――
昨日はそれでもよかった。どれだけ他人を見捨てようと、自分が生きて浩之たちと合えればそれでいいと思っていた。
今は、それが怖かった。いわば間接的に人を殺す自分が、この上なく恐ろしかった。
170Think:03/05/17 04:20 ID:tAo21cL2
がさり、と木の葉の揺れる音がした。ソフィアの顔がわずかにこわばる。
「見てくるよ」
音の下方向に向かって雅史は歩き出す。音の正体が何なのかはわからなかったが、今の雅史にはありがたかった。
どんどん沈んでいく自分の思考を、とりあえず打ち消すことができたからだ。

音の正体は、小さな女の子だった。
女の子が、茂みの近くで倒れている。全身煤だらけで、服もところどころ焦げているようだった。
胸がかすかに上下しているところを見るに、死んではいないらしい。雅史は少しだけ安心すると、その体を抱えあげた。


【みちる、トレントの抜け道の出口は雅史&ソフィアのもと】
【雅史&ソフィアは森の近くの土産物屋】
171名無しさんだよもん:03/05/18 10:42 ID:JvZSjFmb
新作乙。ログとってないからなぁ。。。誰かいない?
172名無しさんだよもん:03/05/18 13:27 ID:SBfzbQZr
てゆーかそろそろ編集サイトの更新をして欲しいと思う今日この頃。
173RTO:03/05/18 17:12 ID:8h2yGHH4
html化されていたので前スレ分までサイト更新しました。
174名無しさんだよもん:03/05/18 23:24 ID:6eQFKL6v
175Dirty Request:03/05/20 23:16 ID:W4srAVjJ
 スライムに身を包まれて地面の中に沈んでいく途中で見た光景は、なんだかとても奇妙なものだった。


「地下施設へようこそ、浩之君」
 いかにも、といった感じの怪しげな施設に、そのスライムは浩之を連行した。
 浩之は身を起こす。それと同時にスライムは融けるように浩之の体を離れ、ゆるゆると地面にしみこんでいった。
 くんくんと浩之は自分の体の臭いをかぐ。体に水っぽさはないし、特に変なにおいがついているわけでもないようだ。
「写真を渡しておこう、彼女の」
 朝鮮製はそういって一枚のポロライド写真を差し出した。浩之はそれをもぎ取ると、写真の女性に視線を移す。
「……な」
 綺麗だ。掛け値なしに浩之はそう思った。淡い色の和服が、そのはかなげな顔立ちと線の細い雰囲気に良く似合っている。
 背景に移っているのはどこかの神社だろうか、鳥居が見える。
「……ん? すまない浩之君。それは母親のほうだ。本当の対象はこちらだよ」
 そして別の写真を浩之に見せる。そこに写っていたのは少女。直感的に浩之は感じた。
 この女の子は、さっきの女の人の子供なんだな。それとなく顔立ちが似ているし、写真から感じる雰囲気がが似ていた。
「それは、彼女らが人間のときの写真だ」
「……なんだって?」
176Dirty Request:03/05/20 23:16 ID:W4srAVjJ
「率直に言おう。彼女たちは性格には人間ではない、我々で言うお狐様というやつかな」
「狐……? まさか」
 浩之は再び二枚の写真に目を落とした。そこに写っている二人の女性の、そのどちらからもそんな事実は微塵も感じられない。
 尻尾が生えているわけでもない、ひげが生えているわけでもない。頭の上に葉っぱも乗せていない。これが……狐だって?
「いまさら驚くことでもないだろう。君はそれを超える怪異をこの島でいくつも見てきたはずだ」
「……」

「この女の子のほうを、殺せって言うのか?」
「いかにも」
 朝鮮製は笑う。幾分か下卑た意味合いを込めた笑みであることが伺えたが、浩之は無視した。
「もともとその二人はこの島のモンスターを作るうえでのサンプルとして捕獲してきたものだ」
 朝鮮製は浩之に背を向け、ごそごそとなにごとかしながら話を続けた。
「妖力の抽出というものをやろうとしていたんだな。そこで我々はその親子を引き離したのだよ。
……いくらなんでも浅はかだったと思ったのは、母親のほうが予想外の力を発揮てからだがね。
我々はあわてて母親を封印した。興味があればその地図でいう5-Cの位置にいってみればいい。地下施設で母親が眠っている。
……人口冬眠状態になって、だがね」
 どこにしまったかな、朝鮮製はどうやら何かを探しているようだった
「そこで研究対象を娘のほうに向けたわけなのだが……まあ、子供だと思って甘く見たのが災いしたのかな。
我々の施した処置の何が引き金になったかはわからない。頭にさした電極がいけなかったのか、幾種類も調合した薬品がいけなかったのか」
 そっちの棚かな。朝鮮製は場所を移す。
「彼女は母親以上の力を発揮するに至った。至ってしまった、というべきかな。彼女は母親が死んだものと思い、施設を脱出した。
有り余る妖力を背負ってね……そこで君にクエスチョンだ。この世にたった一人の母親を人間に殺された……
親孝行な化け狐が次に考える思考は何だと思うね?」
177Dirty Request:03/05/20 23:17 ID:W4srAVjJ
 ……そんなこと、かんがえるまでもないじゃないか。
「復讐……だろ」
「ビンゴだ。彼女は人間への復讐を考え、施設の研究員のほとんどを殺害し島に飛び出した。
……彼女はまだつかまっていないのだよ」
 あった。朝鮮製は何かを手に持って浩之の前に戻ってくる。
「君に依頼する任務は、手段を問わず彼女を殺害することだ。報酬は君とあかりくんの島からの脱出」
「俺が受けるかどうかの返事をする前に俺からも聞きたいことがある……たとえば俺が依頼を受けたとして、だ。
……俺が死ぬことになったりしたら。あかりをどうする気だ?」
 朝鮮製は片眉を吊り上げた。おやおや、とでも言いたげだ。
「生存する気はないのかね? 君は」
「あんたがそれを口にする権利はないだろう……もとよりこの島では命の保証なんてないだろ」
 押し殺した声には、浩之の怒りがにじんでいた。朝鮮製に対して、狐の母子を使ってばかげた研究をしていたこの島の連中に対して、そして……
「OK、いいだろう。君が生存しようとしまいとあかりくんの命と脱出は私が保証するよ。君に対する危険手当ってわけだ」
「……わかった」
……結局、この依頼を受けざるをえない自分に対して。
178By RTO:03/05/20 23:19 ID:W4srAVjJ
「これをもっていきたまえ。餞別だよ」
 立ち去り際、朝鮮製は何か紙包みを投げてよこした。なにやらずしりと重い物が入っているようだ。
「特別製の銃だよ。大抵のモンスターならそれで倒すことができるはずだ。多分君なら扱うことができるだろう。
さっき私が計算したところでは、現在彼女は地図で言うD-9……トレントの森付近に現れたようだ」
「……」
「君が他の序を始末した暁には彼女を即座に君の元に送り届けよう。それでは健闘を」
「……」
 何も言わずに、浩之は地下施設を出る階段を上っていく。ドアの前で、一度だけ振り返った。
 相変わらずスライムに包まれたまま、あかりが不安げな表情でこちらを見つめている。
 浩之は無理に笑顔を作り、明かりを安心させようとする。心配するな、必ず二人で脱出するんだ……


 ドアに向き直り、ノブを回す。太陽光がやたらにまぶしく感じられた。


【浩之 朝鮮製の「殺人」契約成立 餞別として特別製銃入手】

NG覚悟で。
179名無しさんだよもん:03/05/20 23:42 ID:kLXd4fx0
もう何が何だか。
180名無しさんだよもん:03/05/21 00:01 ID:B2IcrmDZ
妖狐と超先生のつながりってそういえばちゃんと出てなかったもんな。いいんじゃ?
ここでユンナと妖狐(娘)の関係が語られてないのは朝鮮製が知らないだけか、あるいか隠してたのかってところがイイ意味で気になるけど。
181名無しさんだよもん:03/05/21 04:00 ID:RnC2Xzhe
いい!!
182名無しさんだよもん:03/05/22 01:08 ID:knXtSih2
つーか娘は琴音と志保だと勝手に思ってた俺は…
いや、だって琴音に対して愛娘って言ってたからさ
別にいいんだけどね
183名無しさんだよもん:03/05/22 21:54 ID:qVjwjqDk
そう言えばそんな事言ってたな……

まぁ超の娘と言えばその辺りになりそうではあるが…
184名無しさんだよもん:03/05/24 13:14 ID:VNxG7e9L
185名無しさんだよもん:03/05/24 17:38 ID:hkIwhJ7L
186Doll's Confession:03/05/24 21:29 ID:30LQlhLm
ぱちん、と朝鮮製が指を鳴らした。同時に、まとわりついていたスライムがゆるりと体から離れていく。
ひくひくとあかりは鼻を鳴らした。スライムもそうだったが、とくに臭いなどはついていないようだった。
「似てるね、君たちは」
朝鮮製が愉快そうにこちらを見ている。悪意のない笑みではあったが、あかりは警戒心を解かなかった。
「スプランターの中に食事を放り込むわけにもいかないのでね」
朝鮮製はトレイに乗った食事を差し出してきた。パンとサラダ、それにココアと質素なものではあったが、
今朝方からコーヒーしか口に入れていないあかりには魅力的な食事に思えた。今日は朝からいろいろありすぎた。
「安心したまえ、毒などは入れていないよ」
あかりは、その言葉をとりあえず信じることにした。

「……ところで、君は何か私に尋ねたいことがあるのではないかな」
食事の途中(食べているのはあかりだけだが)、朝鮮製は不意に話を切り出してきた。
「君も退屈だろうからね。質問に答えようじゃないか」
ごくり、とあかりが喉を鳴らす。何を聞けばいいのだろう。聞きたいことが多すぎる。とりあえず―――
「……どうして、こんなことをするんですか?」
朝鮮製は眉を持ち上げた。
「こんなこと、とはこの島での出来事を言うのかね? それとも藤田君に与えた使命のことかな」
「あ……」
あかりは返答に詰まる。それを見て朝鮮製はまた笑った。
「リアル・リアリティという言葉を知っているかな。私の造語だが。ああ答えなくてもいいよ。
 ……リアル・リアリティ。それは"現実"だ。我々の前に立ちはだかる、大いなる、どうしようもない"現実"だ」
187Doll's Confession:03/05/24 21:30 ID:30LQlhLm
 朝鮮製が顔を上げる。明かりを見ているようでその瞳は、どこか……もっと遠くを見ているように思われた。
「思わないかね? 毎日繰り返す日常、半ば死んだ様な意識のまま繰り返される日常などくだらないものだと。
 そんな日々はただ限りある青春を無駄にする時間に過ぎないと、そう思ったことは?」
 あかりは答えない。
「……私の娘にはね、決してそんなことはなかったよ。……他人と、少し違っていたんだな、娘は。
 娘は世間の奇異の目にさらされた。私の娘は人にはない力を持っていたんだな。……それは想いが、感情が
 "強大な力"というカタチに具現化されるという力だった。それに気づいた娘は少しづつ自分の心を、自分の世界を閉ざしていった。
 そうすれば、力で誰も傷つけずにすむ。自分がこの孤独に耐えていられればそれでいい。やがてその孤独も、自分の閉じた感情に遮られて感じなくなっていく―――
 ……私の娘は、そういう人間だったんだ」
 人間、という言葉にあかりは首をかしげた。朝鮮製はそれを予測していたらしく、こう付け加えた。
「順を追って説明するよ」

「不公平だとは思わないか? 一方では半ば眠ったような意識でなんら現実を感じることなく日常を繰り返す若者がいるのに、その一方で
 周囲の視線や好奇心、そして自分の特異な力となにより自分の感情に振り回されて、明日が来ることを何より恐れる人間がいる。
 私の娘にとっては毎日が現実だった。毎日違う形で、違うところから恐怖が襲ってくる。それは自分に対してのものかもしれないし、他人に対してのものかもしれない。
 "現実"とは何者の上にも平等に降り注がなければならないはずだ。それなのにこの不公平が漫然と存在する。
 ……まして脅える者の存在すら、怠惰な者にとってはそれも退屈な日常の一部分でしかなかったんだ」
188Doll's Confession:03/05/24 21:30 ID:30LQlhLm
「……」
「私は全身全霊をかけてこの島と、ここに巣食うモンスターを作り上げた。あるものは遺伝子配列からやり直したし、あるものは人間と多生物を融合させたし、
 あるものは個々とは違う別の次元から召還した。……ありとあらゆる天に唾する行為というやつをやってのけたよ。
 彼に殺害を依頼した狐は、私の最高傑作なのだ。間違いなく歪んではいたが、私は狐に対して並々ならぬ愛情を注いできた。
 だから、私がアレを娘と呼ぶのは決して誤りではない」
 朝鮮製は自嘲気味に笑った。
「復讐のつもりだった。いつしか現実、ひいては日常に対する敬意すらも忘却してしまった連中に対する、復讐のつもりだったのだよ。この島の存在は。
 ……それがわが娘の命を奪うことになろうとは思ってもみなかったがね。しかも私の娘を殺したのは、、ほかならぬその狐だったのだよ。……皮肉だろう? 笑える話じゃないか」
「……」
「だから私は見てみたい。生前の私は娘を救えなかった。娘が心を閉ざしていく様を目の当たりにしておきながら、私は娘を救えなかった。
 ……それで彼女は死んだ。彼女を殺したのは、親を想う思念の権化のような存在だった。私は見てみたい。
 あの狐に負けない思いを背おった人間の狐がぶつかったらどちらが勝つのか?
 私が言うのもなんだが、人間は心一つでいくらでも強くなることができる。はじめから強さのランクが決められた動物やモンスターとの決定的な違いはそこだ。
 その想い一つで人間はいくらでも弱くなるし、いくらでも強くなる。だから、根本的なところでこの島のモンスターは人間に勝てないんだ。私はそれを知っている。
 だから私は見てみたい。お互いに退けない理由がある想い同士がぶつかったら、どちらが生き残るのか?
 その"結果"に到達するまでにどのような困難があり、またそれをどのように克服しえるのか?
 死につながる絶対的な現実を彼らは何度感じるだろう? そう、それこそがリアル・リアリティだ。
 ……それこそが、私の目指した場所なのだよ」
189By RTO:03/05/24 21:33 ID:30LQlhLm
「……」
あかりは何もいえなかった。目の前にいる人物は狂っている。そう、確かに狂ってはいる。
しかし……その狂気は誰がもたらしたものなのか? 少なくとも、彼一人の資質がそうであったというばかりではないだろう。
でも…それでも、言っておきたかった。
「でも……わたしは楽しかった」
「……」
「友達がいて、浩之ちゃんがいて、学校があって……毎日に感謝していました」
「うむ、そうだろうね」
「え……?」
朝鮮製は、大きく息を吸った。
「君たちに出会ってから、少し私の娘は明るくなっていたようだった。そのころ私はこの視まで研究に没頭していたのだがね」
「……」
あかりの頭にある予想がよぎる。やがてそれは確信に変わったが、どうしてもそれを口に出すことができないでいた。
「……感謝していたよ。私の娘、琴音は」


地下施設に、沈黙が落ちた。

【以上 某地価施設内におけるある研究者の告白】

フォローってわけでもないですが。これもNG覚悟です。
190名無しさんだよもん:03/05/24 22:38 ID:2dPpLw4g
そういえば、志保の方はどうなんだろ?
伏線っぽいような話があった気がするが。
191名無しさんだよもん:03/05/24 23:09 ID:PZtKHxPp
( ̄ー ̄)y━・~~~
192名無しさんだよもん:03/05/24 23:29 ID:ngXpcaFa
まぁ、鯖はすでに話としては崩壊しているからね。
とにかくどんな手を使っても終わらせなければならない。
193名無しさんだよもん:03/05/24 23:46 ID:TMfRqZme
>>192

おーい、たまにはこっちに’降りて来い’よ。
そんなところから何言っても聞こえやしない。
194The Heretic Anthem:03/05/25 00:26 ID:xpSnwPJP

 ガタンッ。
 
 音が聞こえた。
 何かが動くような、音が。
(……なんだ?)
 最初にそれに気付いたのは、巳間良祐だった。
 診療所入り口近くの部屋。その中で休息を取っていた良祐は、音を聞いた。
 
 ギギギ……
 
 ……ゆっくりと扉が開くような、音を。
 
「……?」

 僅かな違和感。
 扉の開閉自体は珍しいことでもない。
 ここには彼以外にも幾人かの少女が詰めており、何度か外に出ることもある。
 ……が、開く扉の音、空気の揺らぎ、足音の感覚。
 そんな、言うなれば『雰囲気』とでも表すべき僅かな差異。
 良祐の脳は、その違いを感じ取った。
「……誰だ?」
 違う。
 今のは違う。
 少なくとも、今入ってきた人間は今までここにいた人間ではない。
 すると、矢島達が帰ってきたのか。
 それとも――――――
 
「…………………………」
 良祐は拳銃を取り出すと、マガジンを確かめ、右手に握りしめた。
 嫌が応にも高ぶる呼吸と鼓動を落ち着かせながら、ゆっくりとノブへと手を掛ける。
 この扉を開ければ、そこは直線の廊下。
195The Heretic Anthem:03/05/25 00:27 ID:xpSnwPJP
 右手に入り口が見え、左手を奥に進めば診察室……茜たちがいる、その部屋に繋がる。
 ここを開けば、侵入してきた者の姿を見ることができるはずだ。
 矢島たちならばそれでよし。暖かく歓迎してやろう。
 だが、もし――――
「………………………………」
 チキッ、と銃の撃鉄を起こし、
 
 バン!
 
 扉を、蹴り開ける。
 
 
「………………な、お前は!?」
 廊下に出た良祐が見たもの。
 それは、
「……初めまして。人間よ」
 人とは思えぬほど青い顔をした、一人の紳士と……
「……杜若君!?」
 その胸に抱かれた、杜若きよみの姿。
「……君に用はない。ここにエクソシストがいるだろう? 隠すとためにならない。その者に会わせてもら――――」
 言葉の終わりを待つことなく、
「きさまァッ!!!」
 良祐は引き金を引いた。迷いはなかった。目の前の存在は『殺すべき存在』。良祐はそう判断したのだから。
 乾いた音が二つ、狭い廊下に響き、そのうち一発が見事シュベストの右目を打ち抜く。
 衝撃によりガクン、とシュベストの首が後ろに折れた。
 
「……………?」
 が、それだけだ。倒れない。常人ならば、確実に致命傷のはずなのに。
「……そうか」
 それどころか、何事もなかったかのように言葉を紡ぐ。
「そんなに、死にたいのか」
 ガクン、ともう一度首が元の位置に戻る。
196The Heretic Anthem:03/05/25 00:28 ID:xpSnwPJP
「な……!」
「悪いが、私は男には容赦はしないぞ。人間」
 一瞬前自分が銃弾を撃ち込んだ目は、完璧に復元されていた。
 

「い、今のは……!?」
「銃声……!?」
 ワクチンを与えられ、静かな寝息を立てる瑞穂とあゆ。
 その横でまどろんでいた智子たち3人は、突然の銃声に我に返った。
 さらに続けて、数回。乾いた音。
 そして……
 
「逃げろ! みんな逃げるんだ!」
 転がるように良祐が部屋に飛び込んでくる。
「な……良祐さん!?」
「一体なにが……!?」
「化け物だ! 化け物が! 杜若君が……ぐがぁっ!!!」
 が、良祐の言葉はそこで中断された。
 廊下の暗がりから伸びた来た手が、良祐の頭をひっ掴んだのだ。
「おやおや、これはみなさんおそろいで」
 そして手から繋がった身体、さらにその上に備わる顔が部屋の中に侵入してくる。
 智子は、わかった。
 なぜかはわからないが、直感的にわかった。
 目の前に現れた、その男は……
「あんた……吸血鬼やな!」
「そう。その通りだ。なかなか聡明なお嬢さんだな」
 嬉しそうに微笑んだシュベストは、掴んだ良祐の頭を高々と掲げながら宣告する。
「ここにエクソシストがいるはずだ。出してもらおう」
「な……!?」
197by R.E.D.:03/05/25 00:29 ID:xpSnwPJP
「君たちの後ろに寝かされている我が眷属。その者らに不愉快な術をかけてくれた、エクソシストがな」
 一行の視線が眠っている2人に一斉に向く。
「……即刻私に引き渡せ。さもなくば……」
 ギリギリとシュベストの手に力がこもる。
「な……が……あああ……!」
 その呻きが、良祐の断末魔となった。
 
「こうだ」


 ぱしゃぁっ!


【巳間良祐 死亡】
【吸血鬼シュベスト 診療所内、診察室に侵入。エクソシストを出せ】
【杜若きよみ(白) シュベストの腕の中で眠っている】
【里村茜、保科智子、上月澪 室内】
【藍原瑞穂、月宮あゆ 昏睡中】
198母の想い:03/05/25 03:23 ID:Qr7RgG/t
 名雪。

 私が今思うのは、あの子の無事、あの子の幸せ、ただそれだけなはずだ。
 母親として、自分のお腹を痛めて産んだ一人娘を、名雪のことだけを、考えているはずだ。

 なのに。

 私の心の中に浮かぶ、幸せな名雪は。
 私が望む、愛する娘の未来の姿は。
 祐一さんと、あゆちゃんと、そして……真琴と。
 全員が等しく、幸せそうに、笑いあってる姿しかなくて。

『名雪といって、私とあの人との間にできた一人だけの子供です。私にとって、この世で何よりも大事な娘。祐一さんよりも、あゆちゃんよりも、真琴よりも…』

 この言葉は嘘じゃない。
 これは、一人の母として誓える。私は、名雪を一番大切にしている。
 だけど、私は……やはりそれでも、こんな島の中でも。
 祐一さんを、あゆちゃんを。

 そして……あの子のことを。

 愛しているのだろう……。


199母の想い:03/05/25 03:25 ID:Qr7RgG/t
「……芹香さんには、話しておかないといけないことがあるんですけれど、聞いてくれますか?」
 私は、ジープを運転したまま、助手席の少女に声をかける。
 よかった。自分でも驚くほど冷静に、言葉を紡ぎ出せた。

 芹香さんは、微かに頷くだけだが、聞いてくれているらしい。
 彼女はおそらく、私が話そうとしていることを、なんとなくでも……勘付いているんだろうと思う。
 それだけ、わたしはあの姿を見て動揺していたのだから。
 私の『娘』の姿をした、殺人鬼に……。
 真琴と同じ顔、同じ声、同じ空気をもった、殺人鬼に……。


200母の想い:03/05/25 03:26 ID:Qr7RgG/t
 ホテルへの道のりの間、私は語った。
 ただ事実だけを。私の家に転がり込んできた、不思議な少女の話を。
 それはもしかしたら、芹香さんの恨みの鉾先が、自分に向くだけかもしれないことだけれど。
 黙っているわけには、いかなかったから……。

 でも。

「……そして、その子……真琴は、今では私の二人目の娘として、私の家に暮らしているんですよ」

 話しを続けていって、分かったことがある。

「……妖狐と、呼ばれる存在かもしれないけれど、私の娘なんですよ……」

 私は、芹香さんに伝えたかったのではなくて。

「あの子は……真琴はね、芹香さん」

 私は、自分に言い聞かせて、信じたかっただけなのだ。

「私の……娘の真琴は…あんなこと……できるはずが……ないん……です……よ?」

 あれは、真琴ではないんだ、と。


201母の想い:03/05/25 03:27 ID:Qr7RgG/t
「………………」
 助手席の芹香さんは、表情を変えることもなく、私の話を聞いてくれた。
 そして、私に、言ってくれた。

『信じます』

 と。

 もしかしたら、そう言いつつも彼女は私を疑っているかもしれない。
 もしかしたら、彼女は私に微笑みかけてくれていたのかもしれない。
 でも、目の前がゆがんでばかりで、彼女の表情は、私にはわからなかった。
 ただ、嘘だとしても。
 私の真琴が、あんなことをするはずがないと。
 信じてくれるだけで、嬉しかった。

 ねえ、真琴。
 あれは、あなたのお姉さん? それとも……妹さんだったかしら?

 お母さん、信じてるからね。

 だから……。

 少しでもあなたを疑ったお母さんを、許してちょうだいね……。

 ね? 真琴……。
202名無しさんだよもん:03/05/25 03:29 ID:Qr7RgG/t
【秋子、芹香、順調にホテルへと向かい車を走らせる】
203名無しさんだよもん:03/05/25 03:39 ID:Qr7RgG/t
ああごめん。NG。
上の話を見逃してた。
204名無しさんだよもん:03/05/25 03:50 ID:tn0oTpwA
しかたないけど正直もったいないですね(w

名雪一筋のロワ風秋子さんとはまた別なイメージが出せてるだけに、残念。
205名無しさんだよもん:03/05/25 14:08 ID:fmBgjlff
ふと思ったけど、NGにしないでも、場所をジープから木の根本に修正して再ウプすれば……?
206名無しさんだよもん:03/05/25 15:58 ID:r9gQQHKE
サバも結構名雪一筋な話あったような。
琴音達が死ぬあたりで。
207名無しさんだよもん:03/05/25 16:09 ID:Ey3MH0Ag
その方向性でキャラ固まる前にこういう話をわざわざ書いたんでしょ。
208名無しさんだよもん:03/05/27 14:47 ID:IrcIl4ya
保守   
209名無しさんだよもん:03/05/28 16:58 ID:+njwR5hD
保守がてら雑談なんだが、皆はサバの『テーマ』ってどんな風なイメージある?
漏れ的には、家族の絆・仲間との絆、みたいな……頃し合いが強制だったロワじゃ表せなかった部分が重要な気がするんだが。

一部の書き手は未だにやっぱり狂気とか殺し合いとかそういうのに目がいってるみたいだけど、どうなんだろうね。
210名無しさんだよもん:03/05/28 21:11 ID:uLCtUsMw
とりあえず終わってほしい。
211名無しさんだよもん:03/05/28 21:37 ID:NPcBeTs1
>>209 同じく俺も同意見。上手く言えないが、他人との助け合いが凄く大切な気がする。
212名無しさんだよもん:03/05/28 22:31 ID:5oji7KIA
現段階で全員脱出となると、かなり大味になる恐れ

なおかつ死者数が中途半端なため、ある意味悲惨
(ハカロワのように生き残りにスポットを当てるには生存者が多すぎる
かと言って生き返らせて無かった事にするには多く死にすぎた)

どうしよう?

俺:このままいけるとこまで行けばいい。見守ってる。話は書けないけど。
  ただ一部のキャラ(某男)の扱いには細心の注意を払ってくださいって事で。
213名無しさんだよもん:03/05/29 00:29 ID:PiZGfBm2
某男というのは某雫ですかといってみるテスト。


鯖のテーマに関しては「極限状態の恐怖と狂気」ととらえている書き手と
「未知の恐怖の中でほの光る絆」ととらえている書き手が半々ってとこだと思う。
生存者に関してはまだバリバリ死ぬっしょ。物語的にもいろいろ話をリンクさせて
まとまりを持たせようとしている人もいるし、期待。漏れはね。
214名無しさんだよもん:03/05/29 00:41 ID:RRsPcAc1
実際問題スレの体力を考えるとまだ人数は多すぎると思う。
残りは何人だっけ。百人は切ったか?
215名無しさんだよもん:03/05/29 00:41 ID:KCbtVuwa
RRと生へのいろんな見方。
一瞬先が予測不可能という状態で人間がどういう行動をとるか。
また、どんな心理状態に陥るかがテーマだと思う。
その中に助け合いというのも含まれているんだけど。
後は大前提として全滅エンドで超先生の勝ちというところかな。
この大前提をどうにかしてひっくり返すのが面白いのであって、
なんの犠牲もなしに簡単にひっくり返していたらつまらん
216名無しさんだよもん:03/05/29 00:42 ID:RRsPcAc1
うぉ、超先生だ。
217名無しさんだよもん:03/05/29 01:16 ID:C/LPCtsJ
キャラが死ぬのはいいとしても、山も谷もなくとりあえず殺しておく、みたいな話を連発されるとたまらんが。
まあそれは物語性っていうか、書き手の文章力頼りな面のほうがでかいけど。
218名無しさんだよもん:03/05/29 22:12 ID:qN89a6GA
ネタはあるのだが、そこまで持ってくのが凄い大変なんだよなぁ……
219名無しさんだよもん:03/05/29 23:01 ID:YZ+7qgeS
書いて大変だと言うのはわかるが書かずに言ってるんだとしたら大笑いだな。
220名無しさんだよもん:03/05/30 06:28 ID:PWRVVYPq
>>219
( ´∀`)
221名無しさんだよもん:03/05/31 22:21 ID:y95+rYbO
新作期待保守
222名無しさんだよもん:03/06/03 02:27 ID:L5lnTLZv
そろそろ保守。
223名無しさんだよもん:03/06/03 23:31 ID:eOZQP2YE
かり……かり……かり。

「……うるせーなぁ、誰だ? 歯軋りか?」

かり…かり…かりりっ。

「白蟻でもいるでござるか?」

かり……かり…………

「ドアの外になにかいるみたいなんだな……?」

かりっ。

「よし……僕が見てこよう」

午前八時か。起きるにはいい時間かもしれない。英二はそんなことを考えながら、注意深くドアを開けた。

かちゃ……


ズシュッ!


「!」
224名無しさんだよもん:03/06/03 23:31 ID:eOZQP2YE
「おっさん!? おいデブ! ドア閉めろ早く!!」
「わ、わかってるんだな!」
音を立ててドアが閉まる。ついでにかちりと鍵をかける。
ドンドンとドアを叩く音が聞こえるが、気づかなかったことにした。
「英二殿!」
縦が英二に声をかける。
「いや大丈夫、額の辺りをツメが掠めただけだよ」
言って英二はにやりと笑う。たしかに血こそ出ているものの傷はごく浅いようだ。
「それより気をつけたほうがいい。どうやら壁に穴を開けようとしているようだ」
耳を澄ます。かり…かり…という音が、全員の耳に届いた。
「サルを凶悪にしたような奴だった。体は小さいようだったが……なにせすぐに襲われたからね」
「でもどうすんだよ、外に出れば叩かれるんだろ? この部屋に窓はないぜ」
「同じことをしてやればいいと思うんだな」
「……待ち伏せ……でござるか」
225名無しさんだよもん:03/06/03 23:31 ID:eOZQP2YE
かり……かりかり……がりッ

(穴が開いたぜ……)

かりかりかりっ かっ かっ かっ

(もうすぐ顔を出してくるでござる)

かつん……ぴょこ

(……今だなッ!)

「だなッ!」
拳骨一閃、穴から覗いた茶色い物体を横の逞しい拳が捉える!
ボスッ! という音が部屋に響いた。
「……!」
手ごたえがない。いや、毛皮特有のふさふさした手触りは確かに感じたが、まるで暖簾を押したかのような……
「バカ、尻尾だそりゃ!」
イビルが注意したときにはもう遅い、虚をつかれたオタク横は、あっさりと敵の侵入を許してしまった。
「きゃぁっ!」
侵入者は、もとより狭い室内を縦横無尽に飛び回る!
そしてその双眸は理緒の首筋を狙い……
「させないんだな!」
汚名返上と言わんばかりにオタク横が進入角に腕を突き出す。反射的に、敵はその腕に噛み付いた。
「だなッ!」
そのまま横は腕ごと敵を側面の壁に叩きつける!
「ギィッ!」
"敵"が、声を上げた。
226名無しさんだよもん:03/06/03 23:32 ID:eOZQP2YE
「死んだの?」
"敵"を見下ろしながら理緒がつぶやく。
「気絶しているだけでござる。とはいえ、此処はもう引き払ったほうがいいでござるな」
そういって縦は身支度を始めた。
「えー、もうちょっとゆっくりしようぜオレまだ眠みーよ」
「ふむ、それならばイビルくんは置いて行くとするか」
「じょ、冗談だよ……なんにせよ食いもんは持ってくぜ。おいレミィ、そっちのやつ持てるだけ持ってけよ」
「判ったネ」


部屋の外に出た彼らを待っていたのは……
「しまった……すでに仲間を呼んでいたのか……」
「めんどっちぃな……頭数ばかり多いってのは……」

彼らが室内で倒した"敵"の仲間たちだった。


【緒方英二一行包囲網】
【英二 額に怪我 軽症。横 腕に"敵"の噛まれ傷 浅そう】


題名を忘れてました。「BAT MONKEY」でお願いします
227名無しさんだよもん:03/06/04 02:17 ID:AdnYSdsX
新作乙〜
横、なにげに強いなw
228destination :03/06/06 01:01 ID:MUReUuFe
美人に介抱してもらう、と言うのは男にとってロマンの一つだ。
傷付いた騎士を介抱する見目麗しき姫君、窓辺の花、冷たいタオルの感触、
仄かに漂う香水、見つめあう二人、淡い接吻。
しかし。

「頑張りや兄ちゃん、もうじきに病院やからな!」
「お母さん、お、重い…」
「観鈴、しっかりせな!女のド根性の見せ所やで!」
「が、がお…」
「……申し訳ない」

美女&美少女に引き摺られるように診療所へ運ばれている
俺の現状はどうだ。
ロマンもへったくれもあったもんじゃない。
カッコ悪いにも程がある。
果てしなく情けなく、救い難いほど恥ずかしい。
さりとてそれを拒めば野垂れ死に確定と言う不甲斐なさ。
ガッデム俺。シット俺。

「はは…両手に花って感じですね」
「お、兄ちゃん結構余裕あるやないか。その調子や!」
「お母さん、『りょうてにはな』って何?」
「べっぴんに囲まれて嬉しいっちゅー意味や」
「そうなの?」
「あはは…まあね」
なのにどうして、こうも軽い台詞が口をついて出てくるのか。
不気味なまでの自分の回復力に驚くやら、呆れるやら。
「にはは、観鈴ちんもべっぴん?」
「そらそうや、うちの娘やしな!
って兄ちゃん、さりげなく観鈴を口説く気か?」
「いやいや、晴子さんかもしれませんよ?」
「アホか兄ちゃん、ウチを口説くやて10年早いわ!」
229destination :03/06/06 01:03 ID:MUReUuFe
他愛もない会話をしている内に、だいぶ歩いていたらしい。
「よっしゃ、着いたで!」
晴子さんの言葉に、顔を上げる。
目の前には、見覚えのある建物。
ただそれだけの風景が、泣きたくなるほど美しく、愛おしい。
体中痛いところだらけだ、喉も渇いたし腹も減った。
全身は汗と脂と血でベトベト、おまけに自分で歩くのも難儀なくらい
体は疲れ切っている。
だけど、ここまで来れば。
とりあえず、休める…
「急患やでー!」
晴子さんが扉を開けようとした瞬間。

全身の毛が逆立つほどの恐怖が背骨を貫いた。

疲れも渇きも空腹も痛みも、全て根こそぎ消し飛ばす
本能的な危機感。
ナイフを喉元に突き付けられるような、フルスピードの新幹線が
目の前を通過するような、高層ビルから下を覗き込んだ時のような、
理屈抜きの純粋な戦慄。

「ちょっと待った!!」

「ど、どうしたの?矢島さん…」
大声に驚いた観鈴ちゃんが、俺を恐る恐る覗き込む。
「どないしたんや?急に大声出して」
晴子さんが俺を怪訝な顔で一瞥して、再びドアに向かう。
「…誰か居る」
「そらおるわな。みんな待ってる筈やで」
「そうじゃなくて…何か、ヤバいもんが居ます」
230destination :03/06/06 01:06 ID:MUReUuFe
理屈じゃ説明できない。俺自身、何故そこまで確信できるのか
良く分かってない。
でも、俺はこの先に、何かとんでもない危険があるのを『知って』いる。
そして、俺は今から、この危険に真正面から殴り込みに行く事を『知って』いる。
「晴子さん…観鈴ちゃんを連れて、どこかに隠れて下さい」

俺ってこんな奴だったかな?
俺が知ってる俺は、もっとやる気がなくて、そのくせ結構姑息で、
おおむね品行方正だけどたまにちょっとした悪いこともやって…
そんな、何処にでも居る、ごく普通の高校生なんだけどな。
俺がここまでやる必要があるのかな?
下心?見栄?それとも只の自己満足?
いやいや、そのどれを取ってみても、死にそうな思いを何度もしてまで
満たすようなもんじゃない。実際、本当に死にかけた訳だし。
友情?愛情?それとも美しい自己犠牲?
自分で言うのも何だが、そんなガラじゃない。
自己犠牲なんて…それは俺じゃなくて、むしろ…

晴香さんとか、香奈子さんとか…

そうか。
俺は今まで、誰かが目の前で死ぬのを見た事が無かったんだ。

そうだ。
俺は、俺の目の前で、誰かが死ぬのを見たくないんだ。
もう二度と、見たくないんだ。
231destination :03/06/06 01:08 ID:MUReUuFe
俺は観鈴ちゃんと晴子さんの肩から腕を抜き、ドアの前に立つ。
世界が、俺とドアだけに収束していく。
(今ならまだ間に合う)
(逃げるなら今の内だ)
俺の中で誰かが囁く。
この扉を開けたが最後、もう後戻りは出来ない。
この中に居る何か、そいつとの闘いは避けられない。
勝てばそれでよし、負ければ…まず間違いなく死ぬだろう。
だけど。

「……けど……もし、もし……私を助けたいっていうのなら……私の言葉を……伝えて……ほしい……」
「月島……月島拓也という人に会ったら……伝えてほしい……『大馬鹿野郎!』って……」
「そして……そして、瑞穂が……もし、瑞穂が助かったのなら……」
「『ごめんね』って……」

今俺が生きているのは、香奈子さんの言葉を伝えるため。
香奈子さんの言葉を、香奈子さんが命と引き換えにしてでも残したかった言葉を
伝えると約束したから、俺は今ここにいる。
それが今の俺に出来る唯一の、香奈子さんを『助ける』方法。

ベルトに挟んだデザートイーグルを見る。
あの時、晴香さんが見えない犬をこいつで撃ってくれなかったら、
今頃俺はあの犬の昼飯に成り果てていただろう。
晴香さんは何も言わずに逝ってしまったけど、晴香さんの形見になった
この銃を渡せば、良祐さんはきっと感じ取ってくれる筈だ。
晴香さんは、最後まで皆で生きて帰る為に頑張った、と。
そう言えばこの銃を最初に持っていたのは里村さんだった。
保科さんと上月さんもまだ此処にいるかも知れない。
里村さんが無事に戻って首尾良くワクチンが出来上がっていれば
それを打たれているだろう月宮さん、そして藍沢さんも。
232destination :03/06/06 01:10 ID:MUReUuFe
「…兄ちゃん、あんたホンマにアホやな」
「……自分でも、そう思います」
「救い難いアホや、超音速のアホや…」
「……観鈴ちゃんを、頼みます」
「…よっしゃ。その代わり約束してや」
「約束?」
「必ず、生きてここを出るんやで。生きて帰ってくるんやで…
そしたら一杯奢ったるわ」
「俺、未成年ですよ」
「ああ、そう言えばそうやったな。ほな御褒美は観鈴のチューでどや?」
「お、お母さん!」
俺はそんな漫才を笑って見る。
「がお…矢島さん…」
「大丈夫」
観鈴ちゃんの頭を軽く撫で、その手を掲げて晴子さんを見る。
晴子さんも手を掲げる。
ぱあん!
乾いたハイタッチの音が鳴る。
「往ってきます」
「気を付けてね…」
「また後でな兄ちゃん!観鈴、行くで」
こんな状況で、「また後で」なんて言える晴子さんを頼もしく思いながら
俺は懐のサバイバルナイフを抜き、扉を開いた。

死んでやるもんか。
死なせてたまるもんか。


【矢島 診療所に入る 弾丸残り1発+サバイバルナイフ装備】
【神尾晴子・神尾観鈴 診療所付近で待機】
233destination (追記):03/06/06 01:15 ID:MUReUuFe
>R.E.D.様
編集サイト347話「InterLopter」から一部文章を
引用させていただきました。
どうか御容赦下さい。
234destination(訂正):03/06/06 01:37 ID:MUReUuFe
>>231
×→保科さんと上月さんもまだ此処にいるかも知れない。
○→保科さんと上月さん、それに杜若さんもまだ此処にいるかも知れない。

きよみの存在を失念していました…
235名無しさんだよもん:03/06/06 08:38 ID:YE2Bweyz
新作乙!
矢島かっこよすぎ……惚れた。
236名無しさんだよもん:03/06/06 12:33 ID:brqJzvM5
新作(・∀・)イイ!
でも揚げ足を取るようで悪いが「藍沢」って瑞穂ですよね。
なら苗字は「藍原」でつ。重箱隅ご容赦。
237destination(陳謝):03/06/06 19:15 ID:V1c31+2F
>>236
御指摘有難うございました。完全に当方のミスです。
みずぴーファンの皆様に深くお詫び申し上げます。
ある意味誤爆よりヒドイ…(´;ω;`)
238名無しさんだよもん:03/06/06 23:47 ID:EqIugZdt
>>237
矢島カッコよすぎ!!!
久しぶりに面白かったです。
239238:03/06/06 23:50 ID:EqIugZdt
てか、正直ナイト雀鬼入ってるのが萎え
240名無しさんだよもん:03/06/07 17:58 ID:dKZJGfmT
 もはや通常の生物ではありえない速度で、狩猟者と化した超先生が一気に間合いを詰めてくる。
「チッ!」
 恐ろしい速度で薙いできた鬼の爪を何とか後ろに下がって回避する。
「ははは! どうしたのだね御堂君!? 君の力とやらを早く見せてくれ!」
 口調は穏やかだが、繰り返される攻撃は止まない。
(考えろ……そう俺があいつに勝つ方法……目玉に綺麗に銃弾を打ち込めば…綺麗に頭蓋骨をすり抜けて脳味噌に弾をブチ込める)
 だが、事実上それは不可能に近い。まず的が非常に小さい。もちろん、止まっている的だったらそれくらい小さくても100%命中させる自信があった。それに、相手方だの人間なら多少動き回っていても行動を読んで命中させる自信があった。
(だが…相手は奴だ)
 そう、相手は恐ろしいほどの速度で動き回っている。その姿を目で追うのがやっとの状況で、行動を読み、目玉に狙いをつけ命中させる自信は流石になかった。
「どうしたのだね御堂君? 降参かね?」
 爪がわき腹を軽く掠める。それでも、御堂は考えることをやめない。
(考えろ…俺が奴より勝っていること。第一…俺は冷静だ。奴は興奮している。第二……俺は)
 考えがまとまった瞬間、御堂は行動を開始する。狩猟者の足元にフルオートでライフルを発射する。
「っとっ!」
 とっさの判断で、後ろに下がって回避する。その瞬間に、御堂は思いっきりふんばって近くに生えていた背の低い木に飛び移る。そして、隣に生えて居た背の高い木に飛び移る。それを繰り返し、超先生から離れていく。
「…御堂君。逃げる気かい? 全く、幻滅させないで欲しい」
 腰に手を当てて、やれやれとでも言いたげにため息をつく。
(俺が奴より勝っている点、第二…)
 超先生から離れること100メートル。高さ8メートルほどの木の上に御堂は身を隠している。ライフルの残弾を確認して、息を整える。
(超先生よぉ、テメェは素人だ。戦いを知らない)
 御堂はそう考えながら今まで経験してきた戦いを思い出し、奇襲案を練り始めた。

【御堂 超先生から100メートル離れた木の上。奇襲して目玉を狙う予定】
【超先生 まだ御堂を捕らえていない】
241名無しさんだよもん:03/06/08 16:28 ID:aDvmTM/C
♥♥♥♥♥
242名無しさんだよもん:03/06/09 09:09 ID:UbdCV7sK
ホシュ
243名無しさんだよもん:03/06/09 22:59 ID:KXdaHV/4
新作キボン
244プチ登場人物紹介:03/06/10 00:37 ID:4KZ823WX
真・超先生(このテーマパークをつくりだした張本人。
一度は肉体的に死ぬが、エルクゥと仙命樹を掛け合わせた最強の存在『真・超先生』としてよみがえる。
目的はRRの追求)

朝鮮製(超先生が、自分の不在の間の支配者として作り出した、セリオタイプのロボ達。
頭脳はやはり超先生のそれだが、二日目午後の時点で真・超先生に破壊される。破壊から逃れた一体だけが残るのみ)

超セリオ(超先生直属のメイドロボ)

ユンナ(恋に狂った天使。目的のため、超先生に協力していた。
彼女の目的は、この島の地下に眠る冥界の門を天界と直結し、天界に混乱を招くこと。
それには多数の贄が必要であり、RRに便乗する形で参加者たちの皆殺しを目論む。
が、愛するウィルまでもがこの島に来ていることは知らない)

サトリ(ユンナ直属の部下。相手の心を読むことができる。ユンナに忠誠を誓うが、浩平に、ユンナを止めるようにと情報を与える)

妖弧(ユンナ直属の部下であり沢渡真琴の妹。超先生の下で実験動物として扱われていたが、ユンナに見初められ、部下としての力を与えられた……ものだと思われる。
真琴や祐一を含め、人間を激しく憎悪しており、殺戮を繰り返す)

ウィル(天界の記者であり、ユンナの恋人。天界上層部の汚職事件(?)の証拠をユンナに届けるために、追っ手に追われつつ島へ。)

ラミア(超先生に捕らえられていたモンスターの一人。自分のいた研究所の所員を皆殺しにして、自由の身に)

妖弧・母(妖弧姉妹の母。超先生に捕らえられていたが、実験の末、あまりに危険ということでコールドスリープされている。
なお、娘たちは母の生存は知らない模様)
その瞬間…
前に進むか、それとも倒れたままか……


みちるをソフィアと同じく寝かせた後、雅史は今後役に立ちそうなものを物色することにした。Tシャツ、キーホルダー、クッキー、
テーマパーク土産物屋なんてものは決まってどこもこんな感じだ。そんなことを考えながら、葉鍵アイランドのロゴがついた
黒いTシャツと黒いズボンに着替える。
「飲み物はいいとして、食べ物は栄養が偏ってるな」
偏っているというよりも実際は菓子ばかりでまともな食事などなかった。武器になりそうなものはというと
キーホルダー、ポスター、置物などあったが、どれも有効的なものはではなかった。
「ちょっと期待してたけど土産物屋だな。武器になりそうなものはほとんどない」
そう言いながらも雅史はライターと時計を持ち外に出て行く。一応、雅史は荷物にならないように持ち物を選んだつもりだった。
その結果、役に立ちそうなものがライターと時計(ロゴ付き)の2つだった。時計をはめ、『感感俺俺』などという意味不明の言葉が
つづられているライター(超先生ライター)をポケットに入れる。外に出ると、日が落ち始めており、時計を見ると5時半頃だった。
「店には食べるものが全然ない。しかし、ちゃんと食事をして体力は保たなきゃいけないしなぁ。……しょうがない、狩りでもするかな」
そう言って雅史は森の中へと入っていった。

森の中に入ると木々の陰で急に暗くなったような気がする。じめじめとした感じは昨日まで雨が降っていたことを頭によみがえらせる。
そして、その湿った地面を踏む独特の音が聞こえてくる。獲物を探すため周りに注意をはらっている分、余計に聞こえてくる
自分以外の足音。森に入るとほぼ同時に聞こえてきた。どうやら、自分はすでにターゲットにされていたらしい。
しかも、この森に入る前から。
(これはちょうどいい。獲物を探す手間が省けたな)
雅史はそのまま後ろに向き直り茂みを見る。間違いなくそこから気配が感じとれた。
ただ、相手が何かもわからないうちは不用意に飛び込むことは危険だった。雅史は後ろに一歩下がり茂みに石でも投げて
様子を見ようとし、足元にある石を拾ろう。瞬間、それは動いた。
鋭い目にとがった爪、自分より二回りは大きな体。雅史はこのモンスターを知っていた。
「ハンターか!」
かがんだことにより隙が生じると思ったハンターだが、予想以上の間合いの遠さに雅史が戦闘態勢に
はいるのを許してしまった。そのまま両者とも相手を睨んだまま構えている。すると、雅史の右腕が上がり、
さっき拾った石をハンターの顔に投げつける。それをハンターは手で叩き落とすが、雅史が石を投げたのは
当てるためではなく、ハンターの注意を自分からそらすためだった。一気に間合いをつめた雅史はハンターの脚に
蹴りをいれようとする。しかし、間合いをつめるために前に進んだその数秒間がハンターに避ける余裕を
与えていた。ハンターはそのまま雅史の頭上を飛び越えて後ろにまわりこむ。
まんまと後ろを取られた雅史はハンターが次に何をしてくるのか見ることができない。
だが、だからといって振り向いていたら確実にその間にやられる。雅史は相手が自分の首に攻撃してくると判断し、
姿勢を低くしながら左へ横っ飛びをし、すぐさまハンターの方に向く。ハンターはというと、
雅史の予想通り爪で首を切ろうとしていた。

素早い展開の後、両者とも再び様子を見る状態になる。雅史の頭からはすでにさっきハンターの攻撃を避けた
得意げな感情はなく、それよりもハンターの驚異的なジャンプ力と素早さについて考えていた。
(何とかして足を止めたいな。……よし、アレをやってみよう!)
雅史は少しずつハンターとの距離をつめ、自分の攻撃範囲内に入る。そして、素早く一歩差し込み左の拳を
ハンターの顔面めがけて突き出す。しかし、ハンターは半歩後ろに下がり、拳のとどかない位置に移動する。
雅史は反撃する間も与えないようにすぐさま右の拳をハンターの顔に突き出す。
ハンターは後ろに下がっている最中のため、二発目は体をのけぞって拳のとどかないところに頭を置く。
(かかった!)
ハンターをうまく術中にはめた雅史はみぞおちに蹴りを叩きこむ。雅史の作戦は相手をのけぞらせることにあった。
のけぞることにより、頭が移動し体重が後ろにかかる。そうなると、相手は足を使ってよけるということは困難になる。
雅史は一撃目で相手を後ろに下がらせ、その最中に二撃目を撃ちのけぞらせることに成功した
(初めの二連撃はあくまでのけぞらせるためのフェイクであり、スピードさえあれば威力がなくてもよい)。
そうすれば後は得意の蹴りをくらわすというだけだ。さらにのけぞることにより腹をくの字になることを封じ、
みぞおちを剥き出しにさせ、より効果的なダメージを与えることができ、
二回、顔面を狙うということはガードを顔面に集中させる効果もあり、ボディをきめやすくしていた。
以上のようなことが学校にいる時に読んでいた格闘雑誌(エクストリームの雑誌)に書かれており、
雅史はそれを思い出し今ここで再現したのだ。
(後はこのひるんだ隙に頭部に蹴りをいれれば終わりだ!)
しかし、雅史とハンターの目が合う。
予想に反して頑強なハンターの腹部にはその攻撃は対してダメージになっておらず、ハンターは反撃として
雅史の首を狙って爪を横にスライドしてくる。雅史はそれを間一髪、後ろにのけぞり避ける。その瞬間、
雅史の腹部に激痛が走り、雅史の体は宙に浮いた。
「おえぇぇぇ…げほげほっ」
嘔吐する雅史にそれを楽しげに見るハンター。雅史は一体何が起こったのかわからなかった。敵の攻撃を避けたら、
急に体を吹っ飛ばされていた。その後、腹が痛くなり吐き気が…。そこまで状況を把握すると、雅史は自分が
何をされたか気づく。
「僕と同じことをしたのか」
一回見ただけで、その原理と効果を理解する本能。そして、それを即座に再現できる身体能力。
これが狩りを主とするモンスターの格闘センス。
(…勝てるのか?)
頭によぎる不安。心臓の音が聞こえる。どうやら、ここにきて初めて雅史は死に対する恐怖を知る。
(逃げるか!? でもどこへ?あいつなら僕の足の速さについてこれる)
だが、今の状況で足の速さなどは関係なかった。いつの間にか雅史の体は恐怖によりまともに
動かせるような状態ではなかった。それでも、ちょっとでも逃げなくてはと腰に力が入らない状態で
手足を動かし後退する。しかし、それも無駄な努力。進んでいるのは数センチという微々たるものだった。
『死』という単語がここまでリアルに感じることは今だかつてなかった。
雅史の意識はまだかろうじて正常だが、今のこの状況はどうにも対象しようがない。
(まずは落ち着け。冷静になるんだ!)
「ふう〜」
雅史は一回深呼吸をする。
(恐怖に反発するな……恐怖を認めろ。自分が今恐怖していることが理解できるということは
冷静に状況を判断しているということだ。恐怖は生の源。恐怖を感じれば感じるほど生への執着がわく。
だから、今は生きることだけを考えればいい。どんなことしても生き延びろ。
生きれば前に進める、死ねばそこで終わり。生きることを簡単にはあきらめるな。そして……。
そして、今からこの島で起こることを全て前向きに考えよう。今ここで恐怖したのはむしろ幸運。
この島にいれば誰もが体験することを僕は早めに体験でき、その対象法を身につけることができた。)
自己暗示をかけるように雅史は自分に言い聞かせるとすっと立ち上がる。
「前に進むか……。ソフィアに言われたことがあったな」
心臓の音はまだ聞こえる。それでも、腰に力は入るようになったらしい。
雅史はハンターに背を向け、土産物屋の方に走り出す。ハンターもそれを追いかける。雅史はひときわ木々が
多い茂っているところで立ち止まりハンターの方に構えをとる。そして、同じく立ちどまり構えをとっている
ハンターに突っ込み右目めがけて左人差し指を突き出す。
ハンターはその攻撃に対してのけぞらずに大きく後方に移動しようとするが、気づいた時には雅史の指は
直前までにきていた。あせったハンターは反射的にのけぞろうとするが、それさえも間に合わず、
雅史の指はハンターの目につき刺さる。激痛が走り苦しむハンターに次の瞬間、雅史はハンターの頭部に
蹴りをいれていた。
「こっちの作戦はうまくいったね。もっとも君を狩ったところで食べたいとは思わないけど」
雅史がなぜ木々の覆い茂った暗い場所を選んだか。それは雅史の服の色にあった。暗いところで
黒のものは見えにくい。格闘においてそれがどう作用するかというと、相手が攻撃する際に
必ず体の一部が動く(モーションという)。それを見て相手の攻撃してくるタイミングと、どこで攻撃してくるか
予想がつく。しかし、雅史のようにくらい場所で攻撃するとその動きが極端に見にくくなり勘が鈍る。
すると相手はいきなり目の前に拳がくるように見える。雅史はこれに付け加え黒い衣類で
さらに見えにくくしたのだ。
(超人的な身体能力がなくても、格闘センスがなくても、精神力さえあればいくらでも生き延びる方法はある)

雅史はハンターを殺し終えると、すぐに土産物屋の方に走る。前の戦闘の時にハンターは強いものをひきつけて、
その隙に弱いものを狩るというパターンをしていたような気がしたからだ。土産物屋から目をつけていたとしたら
すでに狙われている可能性は高い。
(ソフィアたちが心配だ。僕の足で行けば二分くらいで着く。それなら、間に合う! 前向きに考えよう。
……今なら、聖さんの気持ちがわかるかな)



【雅史 土産物屋に全力疾走。腹部ちょっと痛みが残ってる。ハンター撃破】
【雅史 黒の服に着替える。時計&ライター所持】
【時刻は5時半ごろ】
【ソフィアたち 土産物屋にいる】
250まかろー:03/06/10 01:38 ID:uy2aoXhV
誤字・脱字、
暇があれば厳しくてもなんでもいいので感想よろしくお願いします。
251名無しさんだよもん:03/06/10 01:43 ID:N3dqgxB7
まかろー氏おひさし。
そして新作乙〜。

感想だけど、とりあえず最初に思ったのは、改行少なすぎるなぁ……みたいな。
文字が詰め込みすぎって感があるんで、文章として読みにくく、ただでさえ説明文の多い文体(ここはアクションシーンだからしかたないとして)なのが、より一層説明くさく感じるから。

内容のほうは、さほどは問題はなさそ。
252名無しさんだよもん:03/06/10 02:01 ID:fBUd9bPu
新作乙!
かなり(・∀・)イイ!んだけど、ちょっと説明口調が強すぎるかな?
アクションと雅史の心理描写、この二つのメリハリを聞かせると
もっともっと良くなると思うよ。
確かに251が言うように改行が少ないせいでそう思えるのかも
知れないけど。

あと「感感俺俺」ライターにワロタ。
253名無しさんだよもん:03/06/10 02:05 ID:jaQYZFtL
…………おそらく頭の中で設定した格闘をそのまま説明したんだろうけど、
そのせいで、なんというか、あの、逆に何が何だかわからなくなってしまっている。
254名無しさんだよもん:03/06/10 02:12 ID:N3dqgxB7
ところで、このテーマパークの名称『葉鍵アイランド』って初出? それともガイシュツ?
どっちにしろ、あまりにストレートな名称にワロタ
255名無しさんだよもん:03/06/10 22:39 ID:fQ6l3xRW
新作期待
256名無しさんだよもん:03/06/10 22:43 ID:R2ceePMk

美少女のつるつるタテスジ
http://sexyurls.com/shoojo
禁断ガゾー?

257護る:03/06/10 23:10 ID:v2fXRZZl
「ねぇ、住井君? 栞、大丈夫かしら?」
「…あぁ」
 曖昧な返事を返して住井は歩みを進める。腰には蝉丸から預かったH&Kがホルスターに収まっている。不安の表れか、時々それに手を伸ばして触れる。
「聞いてるの? 本当に大丈夫かしら…」
 本当に心配そうにため息をつく。その姿に、心が痛む。だが、その考えを首を振って忘れる。
(今俺がしっかりしなくてどうする。取り合えず、港に向かわないと…)
 辺りは高い木が生い茂っている。日光は殆ど差し込んでこず、気分を陰気にさせる。
「それにしても雰囲気の悪い森ね。気分が悪くなってくるわ」
 香里の口数が先ほどから妙に多いのは、やはり精神が混乱しているからか? と住井は考える。
(そうだ。頭は常に冷静に。パニックになるな)
 何度も、言い聞かせる。その時、ふと頭に浮かんだものがある。高校の友人たちだ。
(七瀬さん、長森さん、折原…みんな無事か? 特に折原、お前にはこの前無理矢理ラーメン奢らされたんだから勝手に死ぬなよ)
 そう考える。少し、心に余裕が出てきた感じがした。
「……? 住井君、何か聞こえない?」
 その時、香里が口を開いた。
「え?」
 歩みを止めて、耳を澄ます。
『……べす……、…べ……そ………、…ィ……』
 何処からか、確かに声が聞こえる。だが、その声は小さくて聞こえない。
「…なんだ?」
 腰の拳銃に手を伸ばす。辺りを見回すが、怪しい影は見当たらない。
『……つる………』
 声が、だんだん大きくなってくる。辺りを注意深く見回すが、やはり何も見当たらない。
『夜なべすんだか、釣瓶おとそか、ギイギイ』
 その声が、聞こえたときにはもう遅かった。
258護る:03/06/10 23:24 ID:v2fXRZZl
「!」
 声の聞こえてきた方向、頭上を見上げる。すると、何かがこちらに降りてくる。
「え?」
 状況を把握し切れていない香里は、反応が遅れた。
「きゃあ!」
 突然、目の前にひげもじゃの男の顔が降って来て香里は悲鳴を上げる。頭しかなく、胴体は存在しない。頭頂部には何かゴムのようなものがついていた。
(釣瓶落とし!?)
 住井は、昔やってたアニメに登場してきたその妖怪の名前をぴたりと言い当てた。つるべ落としは、口をくわっと開けて香里に噛み付きにかかる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
 とっさにのけぞって、それをかわす。まったく持って幸運だったが、右腕を軽く噛まれたようで血が噴出す。
「この野郎!」
 住井は、とっさに銃を構え発砲する。タァン、と乾いた音が森に響き渡った。
「ギェェェェェェェ!」
 思いがけない銃の反動に狙いが大きくそれた。額部分を狙ったはずの銃弾は男の頭頂部に生えているゴムのようなものに命中した。それは、銃弾によって吹き飛ばされて生首状態になった頭が地面にごろんと転がる。
(…どうやら、この紐が切れちまうと死んじまうみたいだな)
 地面に転がったままのつるべ落としを見て心の中で思った。
「香里さん、逃げるぞ!」
 香里のほうに視線を向ける。だが、その姿に息を呑んだ。
「いやぁぁぁ! やめて! 痛い! 痛いの! 栞、栞ィィィィ!」
 泣き崩れて正気を失っている香里の姿に、住井は立ち尽くす。だが、そうしていられるのも一瞬だった。
『夜なべすんだか、釣瓶おとそか、ギイギイ』
 先ほどと同じ声。だが、先ほどとは声の大きさが違う。住井は上を見上げた。
「…マジかよ」
 そこには、何十と言う生首が木からぶら下がっている。全員口をそろえて同じ言葉を口にしている。
「香里さん! 逃げるぞ!」
 無理矢理手を掴む。すると香里はその手を振り払った。
「いやっ! いやいやいやいや!」
 香里は殆ど聞く耳を持っていた無い。住井は、唇をかみ締めて香里の頬を打った。
259護る:03/06/10 23:29 ID:v2fXRZZl
「!」
 パァン、と言う小気味よい音が再び森に響いた。香里は、ぽかんと住井を見つめる。
「俺がアンタを護ってやる! だから……逃げるぞ!」
 手を掴んで、住井は走り出した。香里は、今度は殆ど抵抗せずにされるがままにされた。
(そう、絶対にだ…!)

【住井護、美坂香里 現在、釣瓶落としの森から逃亡中】
【美坂香里 右腕を軽く負傷】
【釣瓶落とし 現在住井たちの頭上に数十体】
【釣瓶落とし……木に寄生する妖怪。腹が減ると『夜なべすんだか、釣瓶おとそか、ギイギイ』と言いながら木から垂れ下がり人を食らう』 
260まかろー:03/06/11 01:31 ID:NW7kRNa1
どうもたくさんの感想ありがとうございます。
感想のほうは全て読みましたが、
どの感想にも「説明くさい」というのが目につきました。
実を言うとこの説明くささにはわけがありまして、
私今までで読んできた本やゲーム(格ゲー等は除きます)の戦闘シーンに関しては
「これだ!」というものがなく、自分でもどう表現すればいいのかいまいちわからなかったんですよ。
だから、自分なりに考えて細かく説明すれば良いんではないかと思ってだしたところ
読み手の方には、253さんのいう
何が何だかわからなくなってしまっている作品になっていたようです。
まだ全然なんだな〜と実感することができました。
そこで一つ、皆さんがこのハカサバで読んでて面白かった戦闘シーンを
参考までに紹介してもらえないでしょうか?
気が向いたらお願いします。
改行につきましては、一種の癖みたいなもので
どうしても文章をつめすぎてしまって…がんばってなおすようにします。
葉鍵アイランドに関しては既出です。
編集サイトの247話に出てきてます
261名無しさんだよもん:03/06/11 20:46 ID:rqFXh6kL
鶴瓶おとし萌え
262名無しさんだよもん:03/06/11 20:48 ID:Fe8KVxe8
263名無しさんだよもん:03/06/12 00:01 ID:P5ost1pt
>>257-259
住井よ。その名に恥じぬようにな。
264238:03/06/12 16:50 ID:jW1yTXnK
つるべハァハァ
265名無しさんだよもん:03/06/12 17:04 ID:Z1Pl/0uD
506 名前:名無しさんだよもん 投稿日:03/06/11 01:13 ID:zmWE7mQK
というか、鯖が本筋を進めれないのはその「本筋」自体の正体がいまだ掴めてないからだと思う。
わからないから書きようがない。書きようがないものは書けない。
遠慮してる面もあるといえばあるんだろうけど、伏線が入り乱れすぎてて正直どこから手をつけていいのかまったくわからない。
下手をするとあちらを立てるとこちらが立たず、みたいな状態になりかねないし。

やっぱりドラえもん方式しかないんじゃないかねぇ。
RTO氏が中心になって主要コテを集めてどっかの掲示板なりチャットを利用して伏線や背景、キャラの動かし方を相談して取り決めてそれに沿って書いていく。
キャラを殺す場合は殺していい人リストと殺しちゃいけない人リストを作ってしっかりとコントロールする。
半分くらいリレーではないけどこれくらいしなきゃ終われない気が。


だ、そうだ。
ところでいまだに一日目ってのは実際誰だ?
266マクラガエシ:03/06/12 20:16 ID:65MZgRV6
>>265
ざっと見直してみたところ、

犬飼俊伐他(本州某所・一日目、雨前)
最後に登場:編集サイト58話

氷上シュン&天野美汐(休憩所・一日目、雨中)
最後に登場:編集サイト172話
#但し、このスレの>>85-88「冥約」(2日目昼)で
芳晴・コリン・エビルに同行している可能性あり。

鹿島葉子&名倉友里(飛行場・一日目深夜、雨中)
最後に登場:このスレの>>159-161

犬飼組はマジモンの鬼札になりかねないので
(犬飼・下川も含めれば32名の完全武装集団だからなぁ)
使いどころが難しそうですが。
267マクラガエシ:03/06/12 20:21 ID:65MZgRV6
あ、ちなみに清水(以下略)は勘定に入れておりません。
念の為。
268名無しさんだよもん:03/06/13 00:10 ID:9lGIcbnc
でも、今一番グループ入り乱れてわけわからんのはVS吸血鬼の連中だろうな……。
薬やら半吸血鬼やらグールやら天使銃やら。
まだユンナ関係のが話少なくまとまってて分かりやすいんだがなぁ。
269Gift:03/06/13 01:42 ID:SZ4+dDPp
―――体が熱い。細胞の一つ一つが唸りを上げているかのように。
―――高揚感。これほど興奮するのはここ1000年ほど記憶に無い。
―――そう、いうまでも無く私は人間をグチャグチャにする力を越えた力を持つ魔物、吸血鬼なのだ―――

「聞こえなかったかな?」
ふむ、と吸血鬼はつぶやく。それは余裕。王者の、勝者の余裕だ。
「ここにエクソシストが……聖職者がいるだろう。そいつを差し出すのだ」
「……何を言っとるのかわからんな……ここにおるのはただの人間や」
「二名ほど私の部下候補、一名は私の妃だがね」
ぎり、と智子は歯を鳴らす。もっと、もっと寄って来い。そうすれば……


―――体内の唸り。それは、細胞の悲鳴だった。
―――先ほど吸血鬼が飲み込んだ異物。仙命樹と呼ばれるそれは、彼の体を"蝕んで"いく。
―――彼の中の"吸血鬼"は、異物によって少しづつ駆逐されていった―――

「……」
シュベストとて馬鹿ではない。この状況で、エクソシストを差し出さないわけが無い。
そもそも聖職者という人種は、吸血鬼である自分を倒すためならばその未が滅びようともかまわないという度し難い者が殆どだ。
それが目の前で一人殺されていながらにして出てこないなどありえない。とすると、ここにはいない……
「ふむ」
そうなれば、この目の前にあるご馳走を頂かずして帰る術はあるまい。あの男―――彰と言ったか―――が
完全に下僕と化すにはまだいささかの余地があろう。その間、この美酒に酔っているというのも悪くない。
シュベストの唇がつりあがる。
270Gift:03/06/13 01:43 ID:SZ4+dDPp

「……(保科さん)」
「……(大丈夫……たぶんな)」
かつん、かつんとシュベストが近づいてくる。智子は右手を握りこんだ。黒いマントと、白い牙のコントラストが映える。
「それでは仕方が無い、せめて君たちを頂いてから帰るとしようか」
言うがはやいか、シュベストは智子の首筋めがけて飛び掛って来た。すさまじい力とスピードでその手は智子を拘束し、
その牙は乱暴に智子の首筋へと……

カシャアッ!

智子は、その右手を全力で引いた。それを合図に、いっせいに部屋のブラインドが上がる。差し込む日光。それは神の熱。
「!?ッ!」
驚いたように、シュベストはその身を一歩退く。しかしその程度さがったところで、日光は容赦なく彼の体を……
「小娘ッ! 味な真似を!」
シュベストはマントで身を隠す、しかし彼はこのときすでに死を覚悟していた。遅かれ早かれ、日の光は彼を焼くだろう。
彼を、彼のみを文字通り灰燼と帰すまで、ただ無慈悲に焼き続けることだろう。


―――仙命樹は吸血鬼を食い尽くした。
―――彼の吸血鬼としての命は終わり、新たな命が与えられたのだ。
―――もはや、日の光は彼の恐れるところではない――
271Gift:03/06/13 01:43 ID:SZ4+dDPp
「……ククク、そうかそうか」
智子は慄然とした。そんなはずは無い、吸血鬼なら日の光で灰になってしかるべきなのに。
「我が妃は、陽と言う天敵を排除してくれたか」
吸血鬼は、いまだその腕の中で眠るきよみをいとおしげに見つめた。
「(ええか……あんたらはあゆたち連れて逃げ。あいつはまっさきにウチに来るはずや)」
「(……)」澪はふるふると首を振る。
「(……いいんですか?)」
「(かめへんよ……矢島君太田さんも命張ってワクチン持ってきたやろ。留守番がそれに習わんでどないするねん)」
言って、智子はにやりと笑った。
「ほう、まだそのような意を残すか……我輩はそういう女性が嫌いではない。さぞかしその血は美味なのであろう」
「もう手の内が仕舞いなんや……せめて眼ぇ開けて死んだろやないか」
「……ふむ、その意気や良し」
また先ほどと同じように、一歩、また一歩とシュベストが距離を詰めてくる。悔しいが、本当に手の内は無い。
せめて、矢島や香奈子が命をかけて救った二人を生きて逃がしてやることができれば。


「ピギャッ!」
「ぬわっ…く!」
シュベストに向かって、何か小さいものが突っ込んでいった。それはシュベストの腕に喰らいつき、噛み千切らんと必死である。
それは、澪が連れてきた子供のドラゴンだった。
「畜生ごときが……離せッ!」
子ドラゴンは引き剥がされ、そのまま床に叩きつけられた。骨の折れるような鈍い音。あれは……死んだかもしれない。
「ええい、とんだ邪魔が……」
腕をさすりながら、シュベストは智子に向き直る。
二人の距離が詰まる。シュベストは目の前の智子に集中していた。智子の首筋、ただその一点に。
両脇の二人が、ゆっくりと逃走の準備をしているのにも気づかないほどに、集中していた。
そして……智子の眼が、シュベストではない、その背後の何かに向けられていることにも気づかなかいほどに、集中していたのだ。
272Gift:03/06/13 01:45 ID:SZ4+dDPp
……ドンッ


―――吸血鬼としての生を終えた彼に与えられたもの
―――それは人としての生と、そのための体だったのだ
―――運命をつかさどる神が、どのような意図でそれを授けたかは判らない
―――なにより彼はそのことに気づかなかったし、おそらく自分が死んだことにさえ―――


【シュベスト 死亡】
【子ドラゴン 瀕死】
273Gift作者:03/06/13 01:49 ID:SZ4+dDPp
「遅いやないか、伊達男」
「何…?」

……ドン


―――吸血鬼としての生を終えた彼に与えられたもの
―――それは人としての生と、そのための体だったのだ
―――運命をつかさどる神が、どのような意図でそれを授けたかは判らない
―――なにより彼はそのことに気づかなかったし、おそらく自分が死んだことにさえ―――

-----------------------------------------------------------
ミス発覚。すいませんが272の文をこれと差し替えてください。失礼しました。
状況表示は変わりません。
274名無しさんだよもん:03/06/13 02:00 ID:Ozo8+paX
そして加速する敵のヘタレ化……
275名無しさんだよもん:03/06/13 02:26 ID:KH3ZMSKR
しまった
病院先に書かれた
276名無しさんだよもん:03/06/13 03:58 ID:uShiwy83
あれだけ色んなチームを巻き込んでおいて、結局は仙命樹で終了かよ……。
というか、それ以前にヘタレすぎて、今までの話が全部ダイナシ。

申し訳ないけど、本音で言わせてもらう。


いくらなんでも酷い。
277作者:03/06/13 05:09 ID:Lg/UWVsp
釣れた!
278名無しさんだよもん:03/06/13 06:32 ID:w6jMMSMx
ツマンナイね、悪いけど本気で書いてるんなら才能ないよ。ガンバレ。
279名無しさんだよもん:03/06/13 09:08 ID:HMXzkFbc
つーか、仙命樹が吸血鬼に何をしたんだ?正直よくワカラン。
ただひたすらに屁理屈こねて吸血鬼を殺したかったとしか見えんよ。
280名無しさんだよもん:03/06/13 14:19 ID:SEuVG8ZD
こういう展開が一番やる気無くなる。
あんだけカツカツやってきたのが一発で終わりかよ。
しかも銃で死んだんだろ?
良祐は何だったんだ。
281名無しさんだよもん:03/06/13 15:17 ID:PcMlAJ2K
この速さなら言える!

実は俺はけっこうシュベスト先生が好きだった。
282名無しさんだよもん:03/06/13 17:19 ID:fXZU8/LD
なんかよくわからんが仙命樹と吸血鬼の因子が食いあって普通の人になったって事?
だったら強化兵が吸血鬼に噛まれたりしたらやっぱ人に戻るのかね。
まぁアホな話だ。
283名無しさんだよもん:03/06/13 17:45 ID:luHD7TIn
駄作。
284Gift作者:03/06/13 18:30 ID:SZ4+dDPp
ではNGで。
駄作を貼り、スレが荒れる原因を作ったことを深くお詫びいたします。
285名無しさんだよもん:03/06/13 18:43 ID:vMbVPI6K
そうか。NGか。それはよかった。
だがな、アンタにとってもそんな簡単に折れる程度の価値しかない話をそもそも上げないでくれ。
286名無しさんだよもん:03/06/13 19:04 ID:bG/9eMwK
>>284
いや、潔く認めた点は評価するよ。
ただ駄作には変わりないのでレベルアップしてからまたきて下され。
287名無しさんだよもん:03/06/13 22:54 ID:rfOaZ2m4
最後、シュペストあぼーんまで書かず、伊達男で終わってたら良かった。

だから>>284、その辺の度合い(というか具合?程度?)を考え直してから、もう一度頑張れ。
288名無しさんだよもん:03/06/14 01:02 ID:sG/SVg8e
>>284
一層の精進に期待する
289名無しさんだよもん:03/06/14 07:34 ID:0usijTrC
>>284
がんがれ
>>285
死ね
290煽りにマジレスかもしれないが:03/06/14 10:31 ID:8os6fa3Q
>>285
最初から叩かれる、NGになると思って作品を上げる人はいないだろう。
NGになる危険性のある作品なら上げた時にNG覚悟です、とか書き記しておくだろうし。

あと簡単に折れるも何も、最初からNGになると自分で思っていたら
それこそ作品をこのスレに載せないだろう。自分で思ってないからこそ載せるんだ。
自分の書いた話の非や矛盾を認めるのって簡単だけどなかなかいないしね。
291名無しさんだよもん:03/06/14 11:08 ID:J7FjHn0L
>そんな簡単に折れる程度の価値しかない話を上げないでくれ
ならばアンタは駄作を書いて折れないで
悪あがきする作者を望むのかと小一時間・・・矛盾してるぞその意見
292名無しさんだよもん:03/06/14 11:11 ID:CTILm9pb
叩かれるかどうかなんて上げてみねーとわからねーしな。
293interview with vampire:03/06/14 21:43 ID:Eupp56W1
ぐわっしゃん!
頭蓋を握り潰された良祐の亡骸を、シュベストが無造作に放り投げる。
亡骸は壁の薬品棚にぶつかり、棚戸のガラスを打ち砕いて床に落ちた。
その音と床に染み拡がる血の赤に、澪は身を竦ませて茜の腕に縋り付き、
茜も強ばった表情で良祐の遺体から目を逸らした。
智子が、シュベストを改めて睨み付ける。
「あんた、あんたやな……藍原さんと月宮さんを咬んだんは!」
シュベストは智子の詰問など意にも介さず、部屋の中を睥睨する。
「殺風景な部屋だ……だが清潔ではある」
シュベストが一歩進む。智子が一歩後ずさる。
「とりあえず……我が召使い達は無事に確保されているようだな」
シュベストが更に一歩前へ。
智子と、その後ろにいた茜と澪も押されるように一歩後ろへ。
「不愉快な術をかけられた事を除いてな」
抱えていたきよみを診療台に横たえ、ベッドで眠り続けるあゆと瑞穂を一瞥した後、
シュベストは3人に向かい、宣告した。
「もう一度言おう、忌々しいエクソシストの居場所を教えるのだ。
素直に答えるなら、礼として我が眷族に迎え入れよう。
答えぬなら……その男のように、無様な屍を晒す事になる」

びくり。
ガラスの割れる音と何かが叩き付けられる音と床を通じて伝わる振動で
矢島は身構えた。
続けて遠くから声が聞こえる。
(あれは…保科さんの声?保科さんは無事なのか?)
安堵しかけた刹那、聞き覚えの無い声と、廊下の向こうから幽かに鼻を突く
血の匂いで、矢島のテンションは再びレッドゾーンまで上がる。
(みんな…無事で居てくれ…)
ネコ科の猛獣を思わせる静かな、滑らかな動きで矢島は奥に進んだ。
294interview with vampire:03/06/14 21:44 ID:Eupp56W1
診療室に向かう途中、矢島は廊下に一丁の拳銃が転がっているのを見つけた。
拳銃のスライドは後退したままになっており、薬室内部が垣間見える。弾切れだ。
壁には弾痕が残っており、ここでこの銃が使われたことを物語っていた。
(これは……確か良祐さんの銃?……と言う事は)
矢島の脳裏に最悪の事態がよぎる。
(銃でも使わないとどうにもならない……化け物がここにいる)
矢島は更に慎重に、奥に進む。
声は次第に鮮明になり、意味を孕んだ『会話』として聞こえてきた。

「エクソシスト……悪魔払い?」
「そうとも言う。
我ら夜の貴族に仇なす者。闇を恐れ、闇を呪い、闇を払う者ども…」
「それがこの子らとどう言う関係があるっちゅーねん!」
「言っただろう、私が眷族に施した刻印を掻き消した。
まったく不愉快だ。八つ裂きにしてやらねば気が済まん」
「ふざけんといて!アンタさっきから聞いてたら何様のつもりや!
だいたい……」
「その前にこちらからも質問があります」
「…何?」
「茜さん?」
亜麻色の流れるような長い髪を三つ編みにまとめた少女が歩み出た。
「はは……これはまた。
何とも美しいお嬢さんじゃないかね。いいとも」
上機嫌でシュベストは答える。
茜は少しだけ目を細めて智子を見た。
(……時間を稼ぎます、その間に)
(何とか打つ手を考えろ、と……またキッツい問題やな……)
295interview with vampire:03/06/14 21:46 ID:Eupp56W1
診療室の扉の横で、突っ込むタイミングを測っていた矢島は、
茜の突然の発言に一瞬肝を潰した。
(何考えてんだ、里村さんは…)
心の中で毒づきながら、ふと手元を見る。
右手に握られたナイフの切っ先が、震えていた。
(駄目だろ、こんなんじゃ…落ち着け、落ち着け…)
壁にもたれ掛かり、静かに矢島は呼吸を整えた。

「まず最初に聞きたい事は……」
一呼吸置いて、茜が話を続ける。
「何故、貴方はここに居るのですか?この離れ小島に」
吸血鬼は流れる川や海、湖畔を渡れない。
橋・船・航空機といった手段に関わらず、姿身のまま無理に踏破しようとすれば
一瞬で塵に還ってしまう。
絶海の孤島であるこの島に吸血鬼が存在する事自体、冷静に考えてみれば
不思議な話ではある。
「ふむ……それは私が聞きたいくらいなのだが」
考えられる手段は、只一つ。
「私が眠っている間に、人間どもが柩ごと私を運び出したのだろう」
生まれた土地の土を敷いた棺桶の中で眠っている間なら、塵に還る事もなく
海を渡ることが出来る。また吸血鬼の眠りは仮死状態と言ってもいいほど深い。
そう考えれば一応、辻褄は合う。
「そうですか、それでは次に…」
茜は表情一つ変えずに吸血鬼との対話を続ける。
智子や澪、部屋の外で様子を窺う矢島にとってみれば冷や汗をかくどころでは無い
極限状態なのだが、茜は身じろぎ一つせず立っている。
(大したもんや…)
(先輩、凄いの…)
(いい度胸してるよ、全く…)
「あなたが最後に眠ったのはどれくらい前ですか?」
296interview with vampire:03/06/14 21:48 ID:Eupp56W1
「…そんな事を聞いて何になるというのかね」
「覚えていないのですか?」
「……」
シュベストは沈黙する。
遠い過去の記憶はある。
人間達が恭しく処女を生贄として自分に差し出していた時代。
十字架を掲げた愚かな軍勢を屠り、配下の化け物達と凱歌を上げた時代。
「魔女」の濡衣を着せられ人里を追われた者達を集めて食屍鬼に仕立て、
一つの町を丸ごと焼き尽くし、喰らい尽くした時代。
それなのに、つい数日前に目覚める少し前の事柄が思い出せない。
(私は…何処で……何時……?)

(白木の杭、十字架、銀の弾丸か刃物、日の光、ニンニク、聖水に聖餅…)
智子は思い付く限りの吸血鬼の弱点を思い浮かべる。
それも、この部屋で、出来るだけ速く調達出来て、効果が高いと思われるもの。
だが白木の杭など無い。
十字架もない。
銃は良祐が使っていたものと、晴香が持っていったデザートイーグル、
澪が持っていた銃は晴子が持ち去ってしまった。
刃物は……メスに鋏にカッターナイフ程度、しかも材質は全てステンレス。
ニンニクが効果が無いのはあゆと瑞穂で実験済み。
聖水や聖餅などが、現代医療の場にあるとも考えにくい。
唯一、日光だけは売るほど外に溢れ返っている筈だが、窓に目を転じれば
分厚いカーテンに阻まれ、御丁寧にガムテープで目張りまでしてある。
(まずいな…こら本気で手詰まりや…)
頭から煙を吹きそうなくらい考えても、妙案は浮かばない。
(血ぃ吸われるより先に知恵熱で死んでまいそうや…って、
オマエは考え過ぎで体温上がるんかい!)
関西人特有の一人ボケツッコミに現実逃避しかけた智子だが
(体温を、計る……?)
そのボケツッコミで、智子の思考に閃きの灯が点った。
297interview with vampire:03/06/14 21:50 ID:Eupp56W1
「どうしました?」
「……」
シュベストは答えない、いや、答えられない。
偽りの記憶、作られた記憶、神でも魔神でもない人間に捏造された記憶には
そこまで詳細な情報は植え付けられていなかった。
「……もういいだろう、こちらの質問への答えは?」
シュベストは一方的に質問を打ち切り、茜に返答を迫った。
有無を言わせない、と言うシュベストの苛立ちが智子にも伝わってくる。
(あかん…せっかくええアイデア思い付いたのに……時間切れや)
うなだれかかる智子の視線の先に、泥に汚れたバスケットシューズが見えた。

「……結論から先に言えば、ここに聖職者は居ません」
「ならば、何処に居ると言うのだ、私の術を解除した者は!」
「あなたの術を解く事が出来るのは、何も聖職者だけじゃありません」
「何!?」
「正直言って、上手く行くかどうか分かりませんでしたが……
あなたがそう言うのなら、本当に術は解けたのでしょうね」
「……貴様は、一体……?」
茜が一歩後ろに下がった、その瞬間。
シュベストの脳裏に怒りと疑問が綯い交ぜになった感情が湧き出た次の瞬間。

どしゅっ。
脇腹を抉り肋を削られる衝撃がシュベストを襲った。
「むぅ……!!」
反射的に鍵爪を横薙ぎに払ったときには、刃の持ち主は既にシュベストの脇を
すり抜け、窓際まで辿り着いていた。
「ふっっっ!」
目の前のカーテンをサバイバルナイフで切り裂き、振り向いた顔は赤く日に焼け、
左頬の痛々しい傷が目立つ。
手にしたナイフに負けない、鋭利な眼光がシュベストを捉えた。
298interview with vampire:03/06/14 21:52 ID:Eupp56W1
「……どこまで私を愚弄する気だ、人間」
「そりゃこっちの台詞だ、化け物野郎」


【矢島 診療室に突入 弾丸残り一発+サバイバルナイフ装備】
【吸血鬼シュベスト 脇腹にダメージ(吸血鬼的には軽傷)】
【杜若きよみ(白) 診療台で眠っている】
【里村茜・保科智子・上月澪 室内】
【藍原瑞穂・月宮あゆ 昏睡中】
【部屋のカーテン 一枚切り裂かれる 外は快晴】
299名無しさんだよもん:03/06/14 22:02 ID:HlawTmfq
おお、なんか良い。この後どっちに転んでもおかしくないし。
300名無しさんだよもん:03/06/14 22:49 ID:yWnTHaYH
日光作戦でなんとか芳晴チームが来るまで耐えられるかどうか、ってところか?
できれば、関連チームは全員ちゃんと使って欲しいって気もするんで、続きの書き手に期待。
301名無しさんだよもん:03/06/15 11:28 ID:44HpLLt8
良作。
302名無しさんだよもん:03/06/16 23:40 ID:dxALcyDQ
紙媒体化しないかなぁ
303名無しさんだよもん:03/06/17 00:09 ID:NIy6FB4Y
反対はしないがリスクは全てかぶってくれよ。
304名無しさんだよもん:03/06/17 20:31 ID:GO7qO02S
>>303了解。完結したら瀬戸氏にならって紙媒体化したいと思う。
305名無しさんだよもん:03/06/17 22:16 ID:eTLCTu/x
完結するのか?
306名無しさんだよもん:03/06/17 23:48 ID:8ePAkxdN
すると思う。…多分。
307名無しさんだよもん:03/06/17 23:59 ID:MT6Bj312
職人さん達に委ねるしかないってことで。
308名無しさんだよもん:03/06/18 00:18 ID:DzWHJvb4
職人を追い出したのは読み手連中なわけだが。
309マクラガエシ:03/06/18 01:45 ID:+RofiiQr
全然関係ないけど、書き手の人で島の地図とか
作ってる人、います?
ストーリーや設定の確認用にあると便利なんじゃないかと
思うんだけど…
310名無しさんだよもん:03/06/18 11:38 ID:gBXka+4j
鬼ごっこスレではあまり細かい地図があるとかえって不便、
つーか矛盾点が増えるだろうし確認も面倒と言うことで流した。
多分今出ている情報を元に描いてみたら、滅茶苦茶になるであろう。
小さい島のはずだけどそれなりに立派な川があるのは見逃せ。
311名無しさんだよもん:03/06/18 11:38 ID:gBXka+4j
あ、ごめん。リレー小説総合スレと間違えた……スマソ
312AIRPORT 200X:03/06/18 13:09 ID:cM55XX8x
「ん……」
 光が瞼を叩く。
 ごわごわした枕代わりのリュックとキャンバスシートの感触。
 ひたすら硬いコンクリートの床。
 鼻を突くマシンオイルとエンジンオイルの匂い。
 目を開けば、がらんとしたトタン屋根のプレハブ小屋の中。
 ふかふかの枕も、ぱりっと糊の利いたシーツと程よい弾力のベッドも、
珈琲のアロマもトロピカルフルーツの芳香も無い。
 ホテルの窓から見下ろす森と海の絶景も無い。
 出発前に読んだパンフレットと同じなのは、天窓から差し込む太陽の光だけ。
 葉子はキャンバスシートから抜け出し、体を伸ばしてみた。
 コンクリートの床に寝たせいか、体の節々が痛む。
 首を左右に振る。こきっと言う小気味よい音が鳴った。
 肩を回す。バリバリと言う音が体の中から聞こえる。
「むゆ……あ、あれ?葉子さん?あれ?」
「おはようございます、友里さん」

「……結局、朝まで寝ちゃったわね」
「そうですね」
 結局、あのセスナは返ってこなかった。
 あれは一体何だったのだろう。
 異変を知ったここの職員か、あるいは自分たちと同じく此処に招待された
ゲストの中に、 飛行機を操縦できる者がいたのだろうか。
 彼、もしくは彼女は無事にここを脱出できたのだろうか。
 それとも、何か別の目的があったのだろうか……。
 あまりにも不確定要素が多すぎて、結論など出せるはずもない。
 葉子は溜息をついて思考を止めた。

「ちょ、ちょっと!葉子さん!」
 葉子が思考に沈んでいる間に格納庫の外に出ていた友里が、普段よりも
1オクターブは高い声で叫んだ。
313AIRPORT 200X:03/06/18 13:10 ID:cM55XX8x
 友里はぽかんと口を開けたまま凍り付いていた。
 丘陵地帯を切り崩した平地に、はるか彼方まで伸びる滑走路。
 滑走路に沿って、ずらりと並んだソーラーパネルの群れ。
 その向こう側には、ターミナルビルとおぼしき立派な建物と、テレビで見る
ジェット機でも入りそうな大型の格納庫が控えている。
 そのターミナルと格納庫の屋根にもソーラーパネルがずらりと並んでいる。
 どうやら太陽光で電力を賄っているらしい。
「これ……空港?」
「そうですね」
「こんなのあるって……葉子さん知ってた?」
「はい」
「……何で?」
「案内パンフレットに載ってました」
この旅を、おそらく誰にも負けないほど楽しみにしていた葉子は、それこそ
穴が開くほど案内パンフレットを繰り返し読み返していた。
「新世代高速ターボプロップ機・ボンバルディアDASH8-Q400で本土まで1時間、
平日の仕事の疲れを引きずることなく南国での週末をお楽しみ戴けます。
空港ターミナルでは……」
「い、いや分かったわ。もういいから」
 放っておくとそのままパンフレットの内容を最後まで暗誦されるような気がして
友里は慌てて葉子を制した。
「そっか……昨夜は雨だったから見えなかったけど」
「はい」
「って、ちょっと待って。それじゃこのちっこい格納庫は何なのよ?」
 葉子は小首を傾げて少し考えていたが
「遊覧飛行に使うセスナ機の格納庫じゃないでしょうか」
「……それも、パンフに書いてあった?」
「空から眺める葉鍵アイランド!島内一周・約50分の空中散歩です。
料金は大人が……」
「も、もういいから」
314AIRPORT 200X:03/06/18 13:13 ID:cM55XX8x
 友里の頭に、しごく素朴な疑問が浮かぶ。
「空港があるのに、何で私たち船でここまで来た訳?」
 友里にとって初めての船旅は、あまりいい記憶を残していなかった。
 何せ乗船中の半分近くは、船酔いで郁未・由依と揃ってトイレに篭りっ切り
だったのだから。
 島に着いてからも暫くの間は地面が揺れているような錯覚がしていた事を
思い出し、友里は顔を顰める。
(そう言えば葉子さんは平気だったけど……何で?)
「どうかしましたか?」
「あ、いや何でもない。あはは」
葉子は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、やがてターミナルを見ながら答えた。
「使えるなら、使ったんじゃないですか?」
「まだ未完成、か」
 グランド・オープンを直前に控えて、外側は完成しているようにしか見えないが
内部の配線や配管がまだと言う事だろう。
 そう言えば、昨夜ここに来たときには建物の非常灯も滑走路の誘導灯も
点っていなかった。だから目の前の格納庫にしか気付かなかったのだ。
 改めて空港ターミナルを見渡す。
「うん、行ってみよう!」
「はい」

(帰り道をちゃんと作らなくっちゃ!由依の為にも……)


【名倉友里・鹿島葉子 空港ターミナルへ】
【空港は一部が内装工事中】
315名無しさんだよもん:03/06/19 02:35 ID:3gVP3mSh
友里さん…その肝心の由依はもう…(つД`)
316名無しさんだよもん:03/06/21 03:02 ID:zHXBKJmd
ツアー参加者ではなく化け物退治
一見人殺しというハードルが低くなったように見えて、
だがしかしってな感じでどうなることやら
後、何気に朝鮮製がトリッキーで小気味よい
317名無しさんだよもん:03/06/22 01:01 ID:/aUzCVRo
↑は、Dirty Requestの感想です
318名無しさんだよもん:03/06/24 01:09 ID:ENWA8aXB
捕手
319名無しさんだよもん:03/06/24 03:41 ID:N4YJzo6q
そろそろRTO氏戻ってきてくれないかな。
某RPGにはもう見切りをつけていただいて。
320名無しさんだよもん:03/06/25 02:13 ID:FKVUtFzo
321名無しさんだよもん:03/06/26 16:49 ID:ITTE167I
新作待ち保守
322名無しさんだよもん:03/06/27 01:05 ID:+kcOdtTW
果たしてもう終わりなのか?
323名無しさんだよもん:03/06/28 00:35 ID:sETyDy3y
書きたい話はあるんだけどさ……。
現実問題、これ以上書いても意味無いってわかるから気力でないやね。
書き手がいない、感想もない、そこに自分一人書いたとこで……って。
結構みんなそうなんじゃない?
324名無しさんだよもん:03/06/28 01:52 ID:ERMDyUdI
そうか、それでも俺は待つぞ。
325名無しさんだよもん:03/06/28 20:31 ID:CbGp6HYe
完結するまで、保守し続ける
326Time to count-down:03/06/28 23:22 ID:kJO3GLe7
 真一文字に切り裂かれたカーテン。
「おりゃあ!」
 更に、気合いを込めてナイフを振り下ろす。
 通気の為、少し開けておいた窓から風が吹き込んでくる。
 風を孕んだカーテンの裂け目が拡がり、暗い部屋を十文字の光が照らした。
「ぐおおおおっ!」
 シュベストがマントで顔を覆いながら扉の前まで飛び退り、廊下の陰に逃れる。
(!!……そんな手があったんか)
 日光と十字架と言う吸血鬼の弱点2つを組み合わせ、最弱にして最強のバリケードを
ナイフ1本で作った矢島に、智子は声を上げそうになった。
 更に矢島は切られていないもう一枚のカーテンを力任せに引き剥がし、窓を開けた。
「早く外へ!」
 太陽の日差しが診療室に充満し、薄暗い部屋に慣れていた目を刺す。
 まず澪、続いて茜が窓から外に脱出し、つづいて眠ったままの瑞穂・あゆ・きよみの
3人を矢島と智子が抱え上げ、茜と澪が窓の外で受け止めた。
「ここが1階で助かったわ……よっしゃ、コッチも早よ逃げるで」
「そのことなんだけどさ」
 矢島が智子に耳打ちする。 

(ちょ、ちょっと!本気か!?)
(日が暮れたらあいつはまた動き出す。そうなったらもう止められない。
こっちには病人もいる。今しかないんだ)
(ヘタ打ったら死ぬで。冗談やなしに、ホンマに死ぬで!)
(ヘタを打たなきゃ死なずに済むんだろ?)
(それは……)
(頼むよ……あいつがいなけりゃ、少なくともこんな事にはならなかった。
晴香さんも、香奈子さんも、良祐さんだって死ぬ事は無かった。
それにこのまま放っておけば、いずれ俺達以外のゲストも……もう沢山だ)
 困惑と憤り、哀しみ、そして絶望を断固拒否する意志を漲らせた矢島の表情に
智子は溜息をついた後、真剣な面持ちで真正面から矢島を見据えた。
(……ヤマが外れても恨みっこ無しやで。ほな、そこの体温計取って!)
327Time to count-down:03/06/28 23:23 ID:kJO3GLe7
快晴の空の下、吸血鬼が外に出るなど自殺行為以外の何物でもない。
(貴族が人間相手に後れを取るなど……どうしたと言うのだ、私は!)
 シュベストは廊下で屈辱に拳を震わせるが、天候ばかりはどうにもならない。
(あの娘の血も未だ体に馴染まぬ。幾ら日中とは言え……)

 一種のホムンクルス(人工生命体)であるシュベストを吸血鬼たらしめるD-V因子は、
仙命樹の解析が完了している部分だけを抜き出したものである。
 結果、腕の一振りで人間を紙人形のように弾き飛ばし頭蓋を握り潰す身体能力は
オリジナルに迫るものになり、常識外れの再生能力はオリジナルをも凌駕した。
コウモリなどに姿を変える変身能力も付加された。
 しかし仙命樹は未だ未解析の部分が多く、言わばそのデッドコピーであるD-V因子は
長所以上に多くの問題を抱えており、人間への移植実験を見送られた「失敗作」だった。

 まず、御堂や岩切の仙命樹に見られた「水に弱い」「日光に弱い」と言う欠点を同時に、
しかも御堂や岩切以上に極端な形で抱える事になってしまった。
 次に、宿主の血に触れた異性を発情させ、性行為によって自らを伝播させようとする
仙命樹の繁殖本能が、歪んだ形……神経系の侵蝕、感染者の吸血衝動と上位宿主への
帰属意識と言う形で発現した。まるで小説の吸血鬼のように。
 結果的には、それはテーマパークのアトラクション・モンスター「吸血鬼シュベスト」の
思考・記憶プログラム作成に都合が良かったのだが。

 もう一つの問題は、オリジナルの仙命樹を異物として排除する拒絶反応である。
 無論、生命力の旺盛な仙命樹も排除されるがままではいない。血中に於て戦争が起きる。
 仙命樹の亜種であるD-V因子が自らのオリジナルと食い合うアレルギー反応は激しく、
実験に使われた動物がことごとく死んでしまい、そして遂に解決することは無かった。
 更に言えばシュベストが啜ったきよみの血中にある仙命樹は、戦時中に唯一実用化の目処を
立てられた完成体……坂上蝉丸のそれと同種。
 血が馴染まないのではない、馴染み始めている事が問題なのだ。
 先程絶命寸前だったシュベストを救ったきよみの血は、今や「食事」の仮面をかなぐり捨て
強力な「毒」となって捕食者に牙を剥き始めていた。
328Time to count-down:03/06/28 23:24 ID:kJO3GLe7
「う……」
「彰!?」
 頭を押さえて屈み込む彰に冬弥が駆け寄る。
「来ちゃだめだ……少し頭が痛いだけだよ」
 その言葉を無視するように、厳しい面持ちで芳晴が歩み寄る。
(ああ、もう無理なんだな……

「目を見せて」
「……」
 彰は呆然とした顔で、芳晴を見た。
 芳晴は彰の目を覗き込む。
「うん……ちょっと、その指も見せて」
「一体、これが何の意味があるんだい……」
「とても大事な事なんだ。手を見せて」
 彰は訳も分からないまま、ついさっき日光で焼け爛れた指を見せた。
 傷口はもう殆ど瘡蓋になっている。
「おかしいな」
エビルが横から彰の指を覗き込んだ。
「確かに妙だな」
「なぁ、さっきから何言ってるんだよ?彰は一体……」
 焦れた冬弥を手で制して、芳晴が言った。
「おかしいんだ。ここまで吸血鬼化が進んでいるのに、傷の治りが遅すぎる」
エビルがそれに続く。
「吸血鬼に咬まれた場合、精神よりも先に肉体の変質が顕著に現れる。
確かこの男が咬まれたのは今朝早くと言っていたな?」
「あ、ああ……」
「それだけ時間が経っていれば、肉体はほぼ完全に吸血鬼の資質を受け継いでいる。つまり」
エビルが彰を指さし、言葉を続けた。
「日光によるダメージとは言え、この程度の傷なら瞬時に治っている筈だ」
329Time to count-down:03/06/28 23:27 ID:kJO3GLe7
 この島に来てから、あの放送があったときから、残酷でやるせない現実を
何度も何度も見せられて、後悔する事ばかりが増えていく。
 まるで、人生は苦痛と恐怖にのたうち回る為にある、とでも言うように。
 泣き叫びながら突っ伏してしまえたら楽になれる?
 狂気に引き篭もってしまえば全てを忘れられる?
 でも目の前の状況が、それを許さない。
 今、廊下にいるあいつは『敵』だ。
 あいつは、俺を殺すつもりだ。
 俺だけじゃない、ここに居る全員を……外で隠れている晴子さんと観鈴ちゃんも含めて……
殺すつもりだ。
 そしてあいつは良祐さんを殺した……殺した。
 頬が鈍く疼く。
 心が熱く疼く。
 ナイフの重みを感じる。
 良祐さんの骸が網膜に焼き付く。
 血の匂いが鼻腔を刺す。
 俺の中で猛り荒ぶる何かが疲れ切った総身に檄を飛ばす。
 
 覚悟は、決まった。

 俺は弾かれるように、開けっ放しの診療室の扉に走り出した。
 廊下に出るまで3歩…2歩…1歩。
「せいっ!」
「馬鹿がっ!!」
 扉のすぐ横から、あいつの爪が飛び出して来た。
 だが、その爪は扉をスライディングで滑り抜けた俺の頭上を空しく通過した。
 壁に足が着き、俺は壁を斜めに思いきり蹴飛ばし、転がりざまに立ち上がる。
 扉から差し込む日差しを挟んで、俺は化け物と睨み合った。
 ベルトには、診療室のハンガーに掛けられていたウェストバッグ。
 保科さんが考えた『秘策』を忍ばせたバッグ。
330Time to count-down:03/06/28 23:29 ID:kJO3GLe7
「七瀬君、君を咬んだ吸血鬼は何かの理由で弱っていると思う」
「……だったら、どうなんだい?」
「今ならまだ間に合うかもしれん、と言う事だ」
「間に合う……って、彰は助かるのか!?」
「分からない、でもその可能性はある。
コリン、魔力とか妖力とか、何でもいい。この近くで人間以外の大きな波動が出ている
場所を地図に書いてくれ。多分そう遠くには行っていない」
「あいよっ、ダウジングペン、カモーン!」

「どこまで傲慢になれば気が済むのだ、人間!
……素直に従うならば眷族にとも思ったが気が変わった。
全員生きたまま串刺しにしてくれる!まずは貴様からだ!!」
(脇の傷は癒えたか……しかし、昼間がこれほど厳しいとは。
ここで闘いを長引かせるのは上策ではない。
早々に切り上げて、早く夜まで眠る必要があるな……)

「ふざけんじゃねえぞ、化け物野郎!
そっちこそ、バーベキューにしてやらぁ!!」
(もう体がガタガタだな……あと何分動けるんだか。
今の内に……体がまだ動く内にこいつを何とかしなくちゃ。
死んでたまるか……俺には……守らなきゃいけない約束があるんだ!!)

芳晴・矢島・シュベスト。
出自も立場も状況も全く異なる彼らは、全く違う理由で同じ事を考えていた。

『急がなければ』
331Time to count-down:03/06/28 23:32 ID:kJO3GLe7
【矢島・シュベスト 診療所廊下で対峙】
【矢島 体力的にかなりいっぱいいっぱい
弾丸残り一発+サバイバルナイフ+智子の秘策?入りウェストバッグ装備】
【吸血鬼シュベスト 脇腹の傷は完治 仙命樹の拒絶反応が発動】
【里村茜・上月澪・藍原瑞穂・月宮あゆ・杜若きよみ(白) 室外へ脱出】
(藍原瑞穂・月宮あゆ・杜若きよみ(白)は昏睡中)
【城戸芳晴・エビル・コリン 行動開始】
【七瀬彰 一時的に吸血鬼化が遅れている?】
332名無しさんだよもん:03/06/29 20:20 ID:mrsvhNkd
新作(・∀・)イイ!!
333名無しさんだよもん:03/06/30 00:06 ID:+F3Prm1N
久しぶりの新作だな。またこのスレが活性化することを願う。
334名無しさんだよもん:03/06/30 00:25 ID:sw3OUQdp
良作age
335名無しさんだよもん:03/06/30 00:26 ID:4BjGF9NR
336名無しさんだよもん:03/06/30 04:27 ID:hSD9iSXl
しかしこれで、いよいよシュンたちが宙ぶらりんになってしまったわけだが。
337名無しさんだよもん:03/06/30 04:28 ID:hSD9iSXl
それと「秘策」とかで書き逃げるのは正直やめたほうが……
338名無しさんだよもん:03/06/30 19:33 ID:FkSnT80E
次の書き手はどうすればいいかわからないからな
339名無しさんだよもん:03/06/30 21:54 ID:eA0U6a5O
水銀入りの注射器と予想>秘策
340名無しさんだよもん:03/06/30 22:27 ID:LE+d0cBO
>>339体温計だけに、な。お前なかなか頭いいぜ
341名無しさんだよもん:03/07/01 01:54 ID:/iiWOX8N
個人的には矢島がグランドクルスする展開になったら面白いと冗談言ってみる
342名無しさんだよもん:03/07/02 00:26 ID:QPDwkv2d
編集サイト見てここにきたんですが、何か危なげな雰囲気・・・
とりあえず質問があるんですけど、ティリアとかエリアとかサラっていったいどの作品のキャラなんですか?
浩之と知りあいらしいしわけがわからないんですが、後イビルとかも。
343名無しさんだよもん:03/07/02 07:00 ID:iIhSRFg4
>>342
ググれ
344名無しさんだよもん:03/07/02 18:10 ID:IYvdpVyy
>>342
どっちもLeaf最初期の作品、麻雀ゲーのナイト雀鬼とRPGのフィルスノーンのキャラ。
ちなみにもう廃盤。
345名無しさんだよもん:03/07/05 00:56 ID:/5IhjrqD
保守しつつネタを考える……
346Garage Talk:03/07/05 03:07 ID:Am8g79XG
 非情でなければならない。悪人でなければならない。躊躇い無く引き金を引けなければならない。
 ……そうでなくては、生き延びることができない。


 最上部まで上り詰めた太陽は、ちりちりと久瀬の肌を焼いている。
 肌といっても、迷彩服に身を包んだ彼がさらしている素肌といえば、もっぱら顔の部分である。
 重装備の上に、この暑さはそれなりにこたえる。手にしたM16を汗で何度かすべり落としそうになった。
 久瀬はまた手元の地図に目を落とした。赤い印。彼の、生き延びるための目標地点。
(遠いな……通り道にあるホテルで休憩してもいいかもしれない)
 流れる汗とまぶしい日差しにうんざりしながら、久瀬はまだ見ぬ関門目指して、ひたすら歩く。


(……?)
 音が聞こえる。何の音かはわからない。ノイズのような音。地響き。
(車……ジープか?)
 思考を結論付けると同時に、道の向こうにジープが見えた。なるほど確かに、こちらに向かってきているようではある ……が。
「なんだ……あれは」
 蛇行運転。いやそんな言葉では生ぬるいくらいに乱暴な、不可解な、奇妙な走行ラインを描きながらジープはこちらに近づいて……
 右に。左に。いや次はターンだ。おっとドリフト。意味無くクラクション。なぜか点滅するブレーキランプ。これでジャンプでもすれば金メダルなのだが。
 まずいことにジープはこちらに間違いなく向かってきているらしい。あんな運転をするのはおそらく人間じゃない。
 かといってジープの動きが読めない。動きが読めなければ回避が出来ない。それは轢死を意味する。
「じょ……冗談じゃない!」
347Garage Talk:03/07/05 03:07 ID:Am8g79XG
 けたたましい事甚だしいブレーキ音を撒き散らし、ジープはその場に停止した。
「そんなところを歩いてるんじゃねー! 跳ね飛ばしちゃうだろ!」
 ジープの中から男の声が聞こえた。いや、それはこの際問題ではない。問題なのはその内容である。
「な……な、なんだとぉぉぉっ!」
 それは、この島ではじめてみせる、久瀬の心からの憤慨だった。
「ふざけるな! 僕は交通法規にのっとって道の端を歩いていたじゃないか!」
「でも実際、おまえは俺の運転するジープに轢かれそうになっている! これは何を意味しているのか?
 俺の運転技術の欠落か? 否!! それはお前が妙な場所を歩いていた証明に他ならない!」
「貴様ッ! 自分の操縦技術の無さを棚に上げるばかりかこの僕を愚弄したな!」
「愚弄されて減る命でも頭でもないだろ! いいからそこどけって!」
 すでに会話がかみ合っておらず、二人ともそのことに気づく気配すらないのはお互いにやけに高まっていた
 緊張とテンションのなせる業だろうか。
348Garage Talk:03/07/05 03:08 ID:Am8g79XG
 怒りのあまりジープ内に踏み込んだ久瀬が見たものは、眼を真っ赤にして運転席にかじりつく少年の姿と、後部座席に横たわる
 二人の女性の姿だった。
「……まさかあの運転に乗り込む人物がいたとはな……どう説明するんだ!? 二人とも思い切りうなされているぞ!」
「よほど悪い夢を見ているんだろう。大丈夫。二人とも俺が守る」
「どの口がそんなことを言うんだ! 守るどころかお前がまさに殺そうとしているじゃないか!」
「何をバカな! 今日俺が事故るはずは無いんだ! 昨日一回事故ってるからな!」
「きさ……! ど、どこを目指しているんだ! その運転で!」
「ホテルに行きたいんだがな。なにせ雨で時図がふやけちまってよく見えないんだ。ほれ、この」
「ああ、僕のがあるから差し出さなくてもいいよまったく……ホテルだって? い、行き過ぎているぞとっくに! どんな方向感覚をしているんだ!」
「そうなのか。すると来た道を戻ればいいわけだな。よし」
「……まさか、今からホテルに行く気か?」
「いかんのか?」
「その運転で、ここからホテルに向かうというのか?」
「みてろ、俺のドラテク」
「……代われッ! 貴様はそこをどけッ!!」
「あッ おまえ何を……いていていて、止めろ離せそこはっ そこはぁ」
「何を気味の悪い声を出しているッ! 貴様一人だけならともかく、他人までその運転の道連れにさせてたまるか!」


「お前、人のこと言えるのか?」
「……ッ!?」
「大体なんだよその物騒なテッポーは……お前、"生きるためなら自分以外を犠牲にしたって構わない"って考えじゃねーか? そんな眼だぞ、お前」
「……何故、そう思う?」
「なんかな、そんな気がする。うん、それだけだな。どうあれ、そんな奴にハンドル預けられるかよ」
349Garage Talk:03/07/05 03:08 ID:Am8g79XG
「……じゃあ、こういうのはどうだ」
「うん?」
「つまるところお前は僕が君たちのために僕の貴重な時間を無償で割くような人間だとは思えない、とこういうわけだ。
 ……じゃあ、こうしよう。君たちを無事ホテルに送り届ける代わりに、このジープを僕に寄越せ。
 君たちはホテルにいける。僕は僕でやらなきゃいけないことがあるからその遂行上重要な移動手段を手に入れられる。
 これで、たがいにそれなりの利益を見込めることになる。君が断る理由は無いと思うけどね」

 少年は、久瀬の顔をじっと見詰めた。よくみると眼の下のくまが痛々しいその表情は、やがてにやりとした笑みに変わった。
「いいだろ。商談成立だな」
 俺も人を見る眼はあると思ったんだが。少年はそんなことをつぶやきながら、運転席を久瀬に譲った。

「お前、運転できるのか……?」
「少なくとも気味の"どらてく"とやらよりは人前に出せる運転が出来るだろうね……おい、聞いてるのか?」
 久瀬が振り向いたときには、少年はもう、眠りについていた。
(……そういえば、名前も聞いてないな)
 考えてみればおかしな話だ。名前も知らない三人の他人を、僕がハンドルを握ってエスコートすることになるなんて。
 ……いやいや、それはジープという移動手段を手に入れるためだ。決して、そう、決して……"それ"はない。
 多分。

「こーへー……もう、くるま、とめ………」
 アクセルを踏み込む際に、後部座席からそんな呻き声を聞いた気がしたが、久瀬は別に気にしなかった。
350by RTO:03/07/05 03:10 ID:Am8g79XG
【久瀬 浩平たちのホテルへのエスコートを引き受ける】
【瑞香&なつみ "何故か"気絶中】


実は浩平組の描写は自信が無かったり。瑞香となつみしかいなかったと思うんですが。
351名無しさんだよもん:03/07/05 03:18 ID:PEwWkVhz
(・∀・)イイ!!
352名無しさんだよもん:03/07/05 13:23 ID:r8AA41VG
しかし久瀬もめまぐるしく考え方が変わるな。ちょっと不満。
353名無しさんだよもん:03/07/05 14:16 ID:k0iswlkq
変えやすいキャラだからな。いいんじゃねーの?

>>350駄作。大人しく編集してろ
354名無しさんだよもん:03/07/05 14:34 ID:vuBf3lgA
355名無しさんだよもん:03/07/05 14:35 ID:vuBf3lgA
356名無しさんだよもん:03/07/06 04:46 ID:iuAwkCOA
>>353 言い過ぎw
357名無しさんだよもん:03/07/06 07:25 ID:DPB6ih6D
瑞香?

>>353
ならお前が(ry
358名無しさんだよもん:03/07/06 17:08 ID:0/ciKtu/
このスレは全部NGでよくね?
359名無しさんだよもん:03/07/06 19:52 ID:HyNaRmYs
360名無しさんだよもん:03/07/06 23:49 ID:X5x/+ZqA
>>358 よくねーよアホ。死ね、失せろ。

と、釣られてみる。
361名無しさんだよもん:03/07/09 01:09 ID:mw9EHuOf
保守る
362名無しさんだよもん:03/07/10 04:12 ID:edeK7LMK
>>352
いや、割とこんなのもありだと俺は思う
久瀬、見た目は平静を装ってるけど結構ギリギリな精神状態だと
下手すると詠美みたいに狂っちまうタイプ
状況がコロコロと変わるのでまだ心理的に救われてると
スイッチが入ったり切れたりしてるみたいに
で、自分が生き残る為に非情になろうして成りきれない、割り切れない
状況に振り回されている
363名無しさんだよもん:03/07/10 04:17 ID:Cy2E4r+g
簡単に言えば、狂わせたい書き手と狂わせたくない書き手の攻防の影響なわけだが。
364名無しさんだよもん:03/07/10 10:01 ID:1R/OFnHy
なんでだ
なんでいつも、リレーSSスレで問題になるのは久瀬とか祐一、Kanonキャラばかりなんだ
365名無しさんだよもん:03/07/10 20:10 ID:JWoZyzhl
>>364それは、カノ好きに厨が、おおいからだよ
366名無しさんだよもん:03/07/10 20:17 ID:QQ3xYvxD
ヒーローにだろうがマッドだろうがどちらでもいいからさっさと話を進めてくれ。
367名無しさんだよもん:03/07/11 04:16 ID:d4jD/W8I
>>363
へー久瀬の書き手でそんな攻防があったのか知らなんだ
単に危うい綱渡りしてる状態の久瀬って感想だったんだが

ある場面からの倉田佐祐理の扱いで書き手が
もういいだろ。と、いやまだだ。の攻防は傍目から見てもよくわかったけど
あの一連の話は何だかんだ言いつつ綺麗に終わったと思うな
竜の話同様に一気にダァーッと(最後の話だけは)書ききってお見事一本ってな感じだった
この二つは全体的に停滞してたせいか、結構印象に残ってる
368名無しさんだよもん:03/07/11 05:05 ID:/hUbOUqB
佐祐理の一連の話も、最初はあまりの叩きに(荒らしが便乗してたんだけど)書き手が潰れてNG宣言してたんだけどねえ。
でも偶然というのかどうか、それを見過ごして結局ああいう風に進んでいって、最終的にはそれなりに綺麗に終わってる。
それを考えると、あんなに叩く必要もなけりゃ、NGにする必要だってなかったんだよな……。
叩いて叩いて、コテハン一人無駄に去っただけ。

寂しい話だ。
369名無しさんだよもん:03/07/11 08:25 ID:1Sr+3lST
時系列に沿って考えると妖狐って今までどういう行動をとってるの?
370Time to count-down:03/07/11 19:09 ID:yjxWLtx7
>>369
軽く読み返しただけですが、大体以下のような感じかと。

一日目・雨中
編集サイト219話で初登場、来栖川綾香を殺害。
同249話で姫川琴音を殺害。
水瀬秋子と来栖川芹香を取り逃がす。

二日目(早朝?)
同300〜301話、当スレ>>8-9「DECIDE」で
倉田佐祐理とトレントを殺害、みちるを取り逃がす。
その後、新たな人間を探して何処かに移動中。

※倉田佐祐理は、倒れていたところを偶然発見した水瀬秋子と
来栖川芹香によって蘇生が試みられた(当スレ>>110-115)が
結局死亡(当スレ>>125-129
371370:03/07/11 19:15 ID:yjxWLtx7
またやっちまった…
吊ってきます。
372名無しさんだよもん:03/07/11 20:35 ID:ZsqetfPV
主軸両ストーリー(ユンナ関係、超先生関係)、サブストーリー(妖狐一家)、そして人数減らしすべてをかねる。
ある意味鯖の英雄だな。
373名無しさんだよもん:03/07/11 21:04 ID:KDW5eS+/
書きやすい奴らの話だけを進めるからズレが出るんだよ
374名無しさんだよもん:03/07/11 21:45 ID:efe/05kZ
>>373
そういう誰でも言えそうな安っぽい批評は、せめてまともな作品なり感想なりを自分で投(ry
375名無しさんだよもん:03/07/13 00:26 ID:46afv5Sb
保守
376夜明け前:03/07/13 23:45 ID:SRhfHjUc
 コリンの消灯の合図(?)以降、美汐はシュンの肩を借りて自分の部屋に戻り、
寝袋に潜り込んだ。
 しかし足がじんじんと痛み、南国特有のねっとりとした湿り気を帯びた空気が
寝袋に篭り、美汐に安眠を許さない。
 眼を瞑ったまま何度も寝袋の中で寝返りを打って睡魔の到来を待っていても、
眠気はやって来る気配すら無かった。

 目を閉じていると色々な顔が思い浮かぶ。
 同じジープに乗っていた宮田さん、牧部さん、塚本さん。
 ジープから振り落とされ、気絶していた自分を助けてくれた氷上さん。
 夜になってやって来た城戸さん、コリンさん、エビルさん。
 家族。
 同級生。
 真琴。
 そして……

 ここから出られるのだろうか。
 助けは来るのだろうか。
 自分は、ここに居る皆はこれからどうなるのだろうか。
 どんなに考えてたところで答が出る筈も無く、かと言って考える事を
止める事も出来ず、しかも考えれば考える程に不安はつのる。
 そんな不安を、風と雨がガラス窓を叩く音が煽り立てる。
(あれ……?)
 両の頬に染みる冷たさで、美汐は自分が泣いていることに気が付いた。

(顔、洗ってこよう……)
 美汐は寝袋のジッパーを下ろすとのろのろと起き上がり、足を引き摺るように
先程まで皆がいた広間に向かった。
377夜明け前:03/07/13 23:46 ID:SRhfHjUc
 雨のせいで月明かりも無く、窓の外も果てしなく暗い。
 美汐は電気のスイッチを探そうと手を伸ばしかけたところで、この休憩所には
電気が通っていないことを思い出した。
 街中では、停電でもないかぎり本当の意味での暗闇に晒される事は無い。
 そして、闇の中に居るとどれだけ心細くなるかと言う事もまた。
「……誰?」
 闇の中から唐突に、おそらくは自分に向けられた声に美汐はびくりと
体を震わせ、恐る恐る声のする方へ視線を向けた。
 窓際、僅かに見えた人影がゆらりと動く。
 美汐は、動かない。いや、動けない。
 人影が闇に溶け、かちゃかちゃと言う軽い金属音が響く。
 シュッと言う音と共に小さな炎が瞬き、続いてランプの柔らかい光が
人影をぼんやりと照らす。
 ランプの傍には、シュンが立っていた。

「はいこれ」
「ありがとうございます」
 シュンからペットボトルの日本茶を受け取り、美汐は軽く会釈した。
「眠れない?」
「そうですね……氷上さんも、ですか?」
「そうだね。眠れないと言うか、眠るのが勿体ないと言うか」
「どう言う意味ですか?」
「さあ……どう言う意味だろうね」
 シュンは優しく曖昧な微笑を浮かべて、コーラを呷る。
 美汐はシュンの言葉と表情の意味を計りかねていたが、思い直した様に
手元のペットボトルを見つめ、沈黙で応じた。

 永遠を知る少年と奇跡を知る少女、二人は無言のままソファに並んで座っている。
 ランプの光が時折ゆらりと揺れる度に二人の影法師も揺らぎ、風と雨の音が
少しずつ遠く、弱くなっていく。
 美汐はそんな静謐な空気が決して嫌いではなかった。
378夜明け前:03/07/13 23:49 ID:SRhfHjUc
「足の具合はどう?」
 シュンが美汐の方に向き直り、尋ねた。
「……まだ痛みが引きません。治るにはかなり時間がかかりそうです」
 美汐は自分の足を見て、まるで他人事のように淡々と事実を述べる。
「そう……」
 落胆するでもなく、励ますでもなく、淡泊な相槌を打つとシュンは立ち上がり、
広間の隅に放り投げるように置かれていた鞄から小さな箱を取り出し、再び美汐の
元に歩み寄った。
「これ、付けてみて」
 シュンの手には、部屋の明りを艶やかに弾き返す銀色の指輪があった。
「指輪、ですか?」
「うん」
「これが何か?」
「いいから」
 シュンに促され、訳も分からないまま美汐は指輪を手に取る。
「……どの指にすればいいのでしょう?」
「ぴったり合う指なら、どれでもいいよ」
 その指輪は内径が少々大きめで親指以外だと簡単に抜けてしまう為、美汐は
左手の親指に指輪を付けた。
 シュンは箱に残っていたもう一つの指輪を取り出し、左手の人さし指に付ける。
「親指を出して」
 右手を差し出すシュンの意図が読めず、美汐はシュンの顔と差し出された手を
交互に見やる。
 シュンはそれにおかまいなく美汐の左手を恭しく取った。
(あ……)
 同年代の男子とは手を繋ぐどころか、祐一を除けば殆どまともに話をした
こともない美汐の頬に、驚きと不安と美汐自身にも良く解らない感情が紅を差す。
 しかし、シュンの指輪と美汐の指輪が触れ合った瞬間。
「……っっっ!!!」
 指輪を通して、親指から何かが美汐の体に流れ込んできた。
379夜明け前:03/07/13 23:51 ID:SRhfHjUc
 痛みではなく、熱さや冷たさとも違う、しかし明らかに自分のものではない
何かが体内に入って来る形容し難い違和感に美汐は総毛立った。
 その上、自分の体がそれを当然の様に受け入れ、取り込み、咀嚼して
糧としている事が感じ取れる。
 細胞の一つ一つが新しい御馳走を得て、歓び勇んではしゃいでいるのが
自分でも分かる。
(あ、ああ……)
 そんな自分の体が恐ろしくもあり、何故か浅ましいとも思い……震える美汐の
双眸から、先刻とは全く意味の異なる涙が零れた。
 流れ込んでくるものの正体が何なのか、美汐には解らない。
 ただ、それは怖気立つほど透明で、哀しくなるほど虚ろで、それでいて
あくまで穏やかだった。
 そう、まるで目の前に居るこの人のような……

 それはほんの数秒だったかもしれないし、数分だったかも知れない。
「ふう……」
 シュンは美汐の手を放すと、深い溜息をついてソファにもたれ掛かった。
 心なしか、さっきまでよりも疲れているように見える。
「あの……今のは、なんだったのですか?」
 まだ動悸が収まらない中、呼吸を整えるように美汐がいつもよりも更に
ゆっくりとした口調で尋ねる。
「足の具合はどう?」
 ソファに体を預けたままシュンが聞き返す。
「足のことは、さっき……え?」
 とてもまともに歩けなかった筈なのに、足の痛みが消えている。
 思わず立ち上がる。足の痛みは、片足に体重を預けた時に多少疼く
程度までトーンを落としていた。
「よかった」
 シュンはソファから身を起こし、にっこりと笑った。
380夜明け前:03/07/13 23:54 ID:SRhfHjUc
「シェア・リング……?」
「美汐ちゃんが部屋に戻った後も、僕らはここで少し話をしていてね。
その時にきみの怪我のことを話したら、城戸くんが貸してくれたんだ」
 人を動かす生命の力をコップの水に例えると、シェア・リングは水門にあたる。
 水が満タンのコップと水が殆ど入っていないコップを水門で直結すれば、
水は高いところから低いところに流れ、やがて二つのコップは同じ水位になる。
 病気や怪我そのものを直す訳ではないが、本格的な治療を行うまでの繋ぎと
してなら充分役に立つし、軽傷であればその場で治癒が完了してしまうのだと言う。
 実際には芳晴はもっと難しい言い回しで説明していたのだが、シュンは美汐にも
分かりやすいようにシェア・リングの事を話した。
「……たかだか捻挫で、ここまで疲れるとは思わなかったけどね」
 そう言うと、シュンは背もたれに沿ってぱたりと横に倒れ込んだ。
「氷上さん、大丈夫ですか!?」
 美汐が慌ててシュンを抱き起こそうとする。
 美汐の感覚は間違っていなかった。
 あの時、指輪から自分の中に流れ込んできたのは、シュンの生命の一部。
 シュンは、自分を助けようとしたのだ。己の生命を削り取られる事になど構いもせず。
 自分の怪我が軽くなったそのツケを、何の見返りも求めずに淡々と支払ったのだ。
「何故……ですか?」
「さあ、何故だろうね」
 優しく曖昧な笑みを美汐に向けると、ひとつ深呼吸をしてシュンは目を閉じる。
 美汐は一瞬身を強張らせたが、シュンの口元から規則正しい寝息が聞こえて
きた事に安堵した。
 自分の部屋から予備の毛布を持ち出してシュンの体に掛けた後、美汐は
シュンの寝顔を暫くの間見つめていた。


【天野美汐 足の怪我はほぼ完治、普通に歩く分には問題なし】
【氷上シュン 疲れて眠る】
381名無しさんだよもん:03/07/14 16:39 ID:l+FfqqDr
乙です
382名無しさんだよもん:03/07/14 17:25 ID:YUQxKvso
美汐&氷上っていい組み合わせだなぁ、と心底思った。
儚げなところがまたいい。
383名無しさんだよもん:03/07/14 19:26 ID:Et+nKkUT
目立たないけど、このパーティはかなりキー?
超先生と氷上につながりがあることを考えると、真・超先生、ユンナ、妖狐(母)の三強と少なからず接点があるわけだ……。
古いゲームだからキャラを把握できる書き手が少ないのが残念。
384夜明け前(訂正&追記):03/07/14 21:19 ID:5HP0eiEu
>>376
×:どんなに考えてたところで
○:どんなに考えたところで

>>383
PS版のみの登場、シナリオは決して悪くないが結構難解、そのPS版は
未だに高値安定と言う、ある意味悲運のキャラではあるのですが。
でも確か、シュンルートでのみ浩平はエイエソに行かずに済むんですよね。
動かし方次第ですが、かなり面白いキャラではないかと思います。
385To End:03/07/14 21:38 ID:AWgbRBHX
 きぃぃぃぃ……………ん。
「ああん?」
 超先生への奇襲のタイミングを計っていた御堂の耳に、空気を切り裂くような音が聞こえてきた。
「む?」
 超先生も怪訝な反応を示す。どうやら彼もあずかり知らぬことらしい。
「なんだ?」
「あれは…?」
 2人が同時に音の聞こえた方向、空の彼方を見上げる。するとそこには
「ゲーック!? なんだと!?」
「あれは!?」
 そして同じような反応を示す。2人の見たそこには一つの光弾。唸りをあげて迫るミサイルがあった。
「超先生! ありゃなんだ!?」
「私の知ったことか!」
 間抜けな台詞をかわす2人。だがミサイルの勢いは微塵も衰えず、そのまま島に着弾する。

「ゲーーーーーーーッ!!!!!」
 強烈な熱風と衝撃波が島の表面を洗い、あらゆる形あるものを薙ぎ倒していく。
「どこの…どいつだ!? こんな真似を!」
 御堂も超先生も、その衝撃の中ではなにも出来ず、ただその場にしがみつくことしかできない。
「クソッ……なんだってんだ……!」

 しばらくして、御堂は目を覚ました。
「つっ…?」
 起きあがるとまずは体中を確認する。どうやら大した怪我はないようだ。あったとしても仙命樹なら問題にならない程度だろう。
 だがそれよりも重要なことがある。周囲の情景だ。まさに廃墟ということばがふさわしく、ほとんど更地と同然となっていた。
「こりゃあ……すげえな」
 思わずため息を漏らす。どうやら超先生はとっくの昔に逃げてしまったようだ。一撃を叩き込めなかったのは残念だが、この状態では自分の命があるだけめっけものだろう。
「それにしても……これからどうなるのかねぇ」
 ライフルを担ぎ直し、御堂は初音たちが拘束さてているはずの方向へ向かった。
 もっとも、そこにあったものは全て消滅していたのだが。
386名無しさんだよもん:03/07/14 21:38 ID:AWgbRBHX
【超先生VS御堂:ミサイル着弾により水入り】
【島にミサイル着弾。被害甚大。地表の建造物はほぼ崩壊】
【死亡者リスト:
 氷上シュン・天野美汐・鹿沼葉子・名倉友里・長瀬主任・橘敬介・マルチ・水瀬名雪・霧島佳乃・桑島高子
 緒方英二・月島拓也・宮内レミィ・雛山理緒・イビル・縦王子鶴彦・横蔵院蔕麿・住井護・美坂香里
 ティリア・ウィル・エリア・長瀬祐介・新城沙織・九品仏大志・大庭詠美・川澄舞・千堂和樹・みちる・アレイ
 矢島・保科智子・月宮あゆ・杜若きよみ(白)・里村茜・上月澪・藍原瑞穂・巳間良祐・子ドラゴン・神尾観鈴・神尾晴子・長岡志保・柏木初音・杜若きよみ(黒)
 岩切花枝・御影すばる・霧島聖・坂神蝉丸・セバスチャン・立川雄三・水瀬秋子・来栖川芹香
 藤井冬弥・たま・城戸芳晴・コリン・エビル・川名みさき・篠塚弥生・澤倉美咲・国崎往人・塚本千紗・牧部なつみ
 江藤結花・柚木詩子・佐藤雅史・ソフィア・ヨゼフ・柏木楓・月島瑠璃子・観月マナ】
387名無しさんだよもん:03/07/14 21:46 ID:/vVKrJor
こりゃいいや。
あははははっ。
終われ終われ。
388名無しさんだよもん:03/07/14 22:22 ID:vxjR8vV/
( ゚Д゚)ポカーン
389名無しさんだよもん:03/07/14 23:35 ID:VCP1yER4
つまんないからNG。
390名無しさんだよもん:03/07/14 23:53 ID:RYUKnMPe
NG。
391名無しさんだよもん:03/07/14 23:58 ID:mAt8DK2D
>>385-386
                      ,.. -───‐- 、
               /    , ', -─‐- 、.._  _,.-.\
      |二l二    /       i l  ‐#- 、゙ヽ. ̄   ,r`ゝ-
-─- 、  |二|二 バ (        | L_ u v   \`ー-‐''/ ヽ
 _,ノ  ハヽヽ亅   ヽ      | r‐、} ヽ ̄`ヽヽ,, ,//´7;|   なんだっ・・!
      ┌┴─      >   | |ト、|l u ` ー゚イ u vl.゚ー'  | この作品はっ・・・・・・・・!
 o    | 土土l カ  /    | ヽ_|! u'_,ノ {  u'  }じ v |
      ノ 上 匕    (    /|  /! r'',ニニ=`==='=ニヽ!  ネタ・・・!
 o     l       \__/  |. / :| | |ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー' l‖ まるでネタじゃねえかっ・・・・!
       ニ|二       ,ゝ   |/  :| l lーiーiーiーiーiーiーi‐rl ||
 o      ヽ_ノ    / |    iヽ.  ヽヽニニニニニニニンノ
                /   !    | ヽ   ` ー-- ニ二二~-‐'\   通るかっ・・・・!
 o      |      ヽ  |   |  ゙i      ::::::::::::/ :|\. \  こんなもん・・!
         |       \|     !   !       //   |   \
 r:、      /       > /\  !ヽ..__,//\  |
 |/      /-、     /! /   oヽ |::::::::::::::/ __   \. |
 o     /  し'   (  "       |:::::::::::/      `


392名無しさんだよもん:03/07/15 01:03 ID:esHI6Y7M
問答無用でNG。
393名無しさんだよもん:03/07/15 07:58 ID:MtMAEora
* 頻繁にNGを唱えたり、苛烈な書き手叩きをする事は控えましょう。
394名無しさんだよもん:03/07/15 10:17 ID:bUirAYNd
つまんね
395名無しさんだよもん:03/07/15 10:23 ID:9N1oXKE0
あのねぇ…
あからさまに変なのにはNGって言わなくてもいいんだよ。
396名無しさんだよもん:03/07/15 11:45 ID:WhotOxqm
ま、これだけ反応してやったし、本人も満足してるだろう。
397名無しさんだよもん:03/07/17 22:55 ID:dJr7HNKH
新作待ち
398名無しさんだよもん:03/07/19 03:52 ID:JPbxLdPo
399名無しさんだよもん:03/07/20 02:41 ID:BtC2rqq/
保守
400名無しさんだよもん:03/07/21 00:20 ID:Gd7CmCT8
400ゲト
401名無しさんだよもん:03/07/21 04:48 ID:ilj1eVWn
お目。
402名無しさんだよもん:03/07/22 16:23 ID:xEKL4NVL
いつか…きっと皆帰ってきてくれる…

RTO氏はまだ某戦車系RPG事件から立ち直れてないのかな…
403名無しさんだよもん:03/07/23 01:50 ID:+PGCJMtw
>>402
詳細きぼん。
404名無しさんだよもん:03/07/23 19:23 ID:Gpy0WKgT
保守するくらいなら自分で書かないの?
405名無しさんだよもん:03/07/23 21:47 ID:YPrG5BhX
保守
406名無しさんだよもん:03/07/24 22:10 ID:Oo2YDEka
>>404 ならお前が(ry
407名無しさんだよもん:03/07/24 22:33 ID:PZvc1Bcg
>>406
漏れは鯖はもう落ちても構わないと思っているのですがなにか?
408名無しさんだよもん:03/07/24 23:49 ID:GgSJ5T+J
>>407
じゃ見なければいいだろ。
409名無しさんだよもん:03/07/25 01:44 ID:pxbrI0gu
きっとまた活気が戻っ…。
410名無しさんだよもん:03/07/25 01:44 ID:pxbrI0gu
きっとまた活気が戻っ…。
411Noar's Ark:03/07/25 02:13 ID:ReL97WAt
(1st day,20:00,本土某所)

 薄暗い室内を、幾つものモニタが控えめに照らす。
 部屋の壁面中央の一際大きなモニタに映し出される、葉鍵アイランドの精密地図。 
 その地図上に灯る幾つかの赤い光点が「disconnected」のアラートメッセージと
交互に点滅している。
 その部屋のほぼ中央に、一人の男が椅子に埋もれるように座っている。
 彼は、数時間前の会話を反芻していた。

「どう言う事か、説明してもらおうか」
「説明も何も、今言った事が全てですが?他に何か?」
「職員・研究者だけでは無い!あの島には民間人が100人以上取り残されているんだぞ!
一刻も早く救助しなければ、ひとたまりも無い……」
「俺もそう思いますね」
「ならば何故ヘリの用意が出来ない!何故空中給油機の手配が出来ない!
いざと言う時には最優先で自衛隊の協力が得られるんじゃなかったのか!
待機だと!?その間に全員殺されるぞ!」
「どっちも『現在メンテナンス中』の一点張りですよ。取りつく島もありませんな」
「折戸ぉ!!」
「犬飼さん、落ち着いて下さい!……折戸、一体何があった?」
「すまんね、下川……ああ、ちょっと独り言が言いたい気分なんで失礼しますよ。
あくまで独り言ですからね、意味なんてありませんからね?
……涼元、そして麻枝」
「涼元に、麻枝……財務次官と防衛大臣に、何の関係がある?」
「さあ?独り言ですからね」
412Noar's Ark:03/07/25 02:15 ID:ReL97WAt
「……今回の一件が公になれば、当然ここの存在もクローズアップされます。
国防予算を細工して捻り出したブラック・バジェットで生まれた、ブラック・
エージェンシーの存在が、です。
考えてもみて下さい?戦前に行われていた強化兵計画が今もなお生きていて、
それに国民の税金が湯水の如く注ぎ込まれている、その上人体実験に参加した
人間は今も健在……しかも当時と全く変わらない風貌でね」
「政権がひっくり返る程度じゃ済まんだろうな……世界のパワーバランスさえ変わり得る」
「国際条約で禁止されている遺伝子実験を、政府が率先してやっていた事が
バレるのも気にしていましたねぇ、何処かの誰かさんは」
「まさか、あの島を廃棄するつもりか!」
「金を使うだけ使って成果も挙げずに捨ててしまうほど連中は太っ腹じゃないさ」
「ほとぼりが冷めるのを待って、データだけを回収する気か……」
「連中はそんなに気長でもありませんよ。犬飼さん、パシフィック・アビスと
言う言葉をご存知で?」
「む?確か海上自衛隊とアメリカ海軍の合同軍事演習……まさか、折戸!!」
「明後日からの『演習』が、急遽あの島の沖合に変更されたんですよ。
行方不明の民間人についても、既にカバーストーリーを考えてるようです」
「万事休すか……くそっ!」
「さてと、そろそろ俺は帰ります……あ、そうそう、これにサインしといて下さい」
「何だこれは?」
「……ヘリコプター輸送艦『しずく』?運航計画書……って、おい?」
「おいおい下川、その年でもうボケたか?『葉鍵アイランドにおける生物災害事故を
想定した救助訓練』に使うって言ってただろうが」
「俺はそんな事……折戸、お前」
「じゃあな、ここから先は現場組のお手並みを拝見させて貰うぜ」
「……ああ、背広組がここまでやったんだ。上手くやるさ」
「折戸……すまんな」
「いいんですよ、俺の出向先じゃ、あの程度は挨拶みたいなもんです。
何せ、防衛大臣殿は部下を怒鳴り散らすのが趣味ですからね」
413Noar's Ark:03/07/25 02:16 ID:ReL97WAt
 男は椅子に埋もれるように座っている。
(折戸……お前は昔から素直じゃないな)
 一瞬頬を緩めた後に男はやおら背を伸ばし、目の前に置かれていた冷めたコーヒーを
一気に飲み干すと、傍に居たオペレーターに声をかける。
「準備は?」
「あと1時間も有れば出航できます」
「ヘリは?」
「3機中、2機はすぐにでもいけます。1機は航海中に調整して予備に回します」
「観測班、目的地の状況は?」
「葉鍵アイランドの天候は雨、気温27℃、湿度85%、南の風、風速4.5m。
波の高さは2.5m、雨は今夜中に上がり、明日以降は夕方のスコールを除けば
快晴でしょう」
「レーダー、衛星からの情報は?」
「受信感度良好、全システム異常なし」
「よし、最終点検が済んだ部署の整備スタッフは速やかに退艦しろ!
機関室、エンジン始動、アイドリングで待機!」
「機関室了解、エンジン始動します!」

(到着は明日の午後か……きよみ、待っていろ!)


【犬飼俊伐、間も無く島へ出発 到着予定時刻は2日目午後】
414名無しさんだよもん:03/07/25 02:40 ID:p2HuKjLg
まあ、題材が題材なだけに、中の人間だけではどうしても終わらないかもね。
415名無しさんだよもん:03/07/25 03:22 ID:4I5p9d2s
新作いいです。最高です。
またこのスレが活性化することを願ってます。
416名無しさんだよもん:03/07/25 10:30 ID:mxUfSnJ+
「三日目」が鬼門になってしまったな…
このままの流れだと二日目午後には犬飼到着、その後
自衛隊云々の話が控えているとなると…ガクブルですな。
417名無しさんだよもん:03/07/25 15:19 ID:5nkHGURq
だいじょうぶ、誰も書かないから。
418ジョジョネタ(w:03/07/25 18:46 ID:UXbnR7I+
完結までの距離が半分になると投稿速度が1/2になる…
さらに半分近づくと速度は1/4になる…

1/8…1/16…1/32…1/64…!!
果たしてサバイバルは完結に到達できるのか?

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
俺は永遠に到達できないと思う。
419名無しさんだよもん:03/07/26 12:17 ID:ry3lTJo4
 今までこのスレをROMっていたんだが、書きたくなってきた。
 ただ、携帯からしか書き込めない、前スレを見ていない、等の問題がある。
 30人くらいでかたまってる奴らをヤりたいんだけど、誰か、人名、各武装、時間帯、場所を教えて下ちい。
42098388:03/07/26 12:35 ID:NCNyh1Je
421名無しさんだよもん:03/07/26 14:17 ID:aq/ONdxq
>>419
前スレ(公開9日目)はこちら↓
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1048/10482/1048256570.html
ただ、ここに書かれてる話は既に編集サイトに収録されてるので
可能であればそちらを見た方がいいと思われ。

>>30人くらいでかたまってる奴ら
そんな大所帯いたっけか?
ホテル組も大分人数が減ったと思うし、隔壁で
複数のエリアに分断されていた様な気がする。

久しぶりに読み直してみるか…
422名無しさんだよもん:03/07/26 15:33 ID:TT79z9hR
てめぇ等クソ凡人のクソジャリがヲタクを馬鹿にする権利なんて微塵も無いんだよ、このボケがァ!!!つーかな、
お前等氏ね。今すぐ逝け。逝ってよし。
あのな、ヲタクってのはな普通の人と違うからヲタクっていうんだよ。解かるか?
テメェ等クソ凡人のクソジャリが踏み入っていい領域じゃねーんだよこのアホがぁ!
なんの谷間も困難も無く、裕福に育った平和ボケのお子様が出る幕じゃねーんだよタコ!
時代を支えてるのは結局のところヲタクなんだよ。解かるか?ランクが違うんだ。テメェ等がヲタクを「キモイ」だと?
勘違いすんじゃねーよ馬鹿。俺たちから見ればお前等の方が数億倍キモイんだよアホが。だいたいな、
その言葉を平気で発言するな。ヲタクの前で。失礼だ。ハッキリ言って。ヲタク相手だからって何でも言っていいのか?
なめんなよ。お前等クソジャリがヲタクに言葉を申す時はまず一礼してからデコを犬が糞した跡の地面に擦り付けてから言え。
ボケが。しかも敬語でな。つーかクツなめろ、オラァ。だいたいよ、お前等ゴミは中途半端なプライドを持ちすぎなんだよ
ボケがぁ。捨てろ、この星に捨てていけ。自分でそんな価値のある人間だと思っているのか?アホか、
テメェなんざ死んだって慰謝料1円で十分だこの歪んだ肉細工が!昼と夜の間で朽ち果てろ!つーか、1円でも勿体無い。
むしろ、こっちが何か貰うべきだ。汚い死体を見せられたからなぁ。目が腐ったらどうする気じゃこのボケェ!
1億円払えクソがぁ。払えなかったら俺ン家で床掃除でもしてろ。ただし全部口で掃除しろクソジャリ。便器もなぁ。
汚いとかヌカすと刺すぞコラ。テメェのツラの方が数兆倍汚いんだよハゲ!鏡見ろボケ。鏡が腐りそうだぜ。
嫌なら死んだっていいぜ。その方が地球にとってありがたい。消滅しろ。バニシュ・デスや。二度とそのツラ見せるな。
もし生まれ変わってもヲタク見たら真っ先に公衆トイレにでも鍵掛けてガクガクしながら隠れとけボケが。





423沢渡 真琴:03/07/26 17:09 ID:P7cBhp0a
                                                        
(大白蓮華 昭和31年4月号) 
「国立戒壇の建立こそ、悠遠六百七十有余年来の日蓮正宗の宿願であり、また創価学会の唯一の大目的なのであります」

(大白蓮華、昭和34年6月号)
「大聖人様の至上命令である国立戒壇建立のためには、関所ともいうべき、
どうしても通らなければならないのが、創価学会の選挙なのでございます」

ttp://society.2ch.net/test/read.cgi/koumei/1057065225/

「与党が来て…ずっと与党だったらいいのに」
424名無しさんだよもん:03/07/26 19:32 ID:nrwIfAp5
425名無しさんだよもん:03/07/26 20:58 ID:2XyqHVW7
>421
 このスレ?を読んでいたときに、

 30人くらいでかたまってるのどうする?

 などとあったのですよ。

 さっき親のパソを無理言って借りて見たら、前スレは見てました。8日目以前を見ていないので書けませんた。

 変わりに別の話を投下したいのですが、この島の発電施設は何でしょうか?
426名無しさんだよもん:03/07/27 01:33 ID:l7NsUWuV
http://www23.tok2.com/home/hakasaba/

ここで8日目前までの話が見れる。
発電施設は分からない。ごめん。
427名無しさんだよもん:03/07/27 02:07 ID:nBDMxvAZ
>>425
島全体の発電施設に関する描写は無かった。
ただ、>>312-314で大量のソーラーパネルが並んでいたので、
太陽電池や波力発電が一部で使われていると思われ。
火力発電は燃料の輸送コストがかかり過ぎるだろうし、
水力発電に必要なダムも出ていないのでこの二つは
考えから排除していいかと。
原発は……研究所の地下辺りにあっても不思議じゃないが、
曲がりなりにもテーマパークだからなぁ、この島。
428名無しさんだよもん:03/07/27 02:12 ID:rSIKxe6s
海底火山による地熱発電とかもあったりして、と適当にほざいてみる。
429419:03/07/27 02:45 ID:iRXgYOWs
>426 サンクス、勉強してきます。

>427 詳しい話、ありがトン。

>428 私が考えてたのがそれ。
 というか、これを使うと元ネタのジュラパから大きく逸脱するかもしれない…。
430Dancin' on the edge:03/07/27 05:21 ID:I/f14LT/
昨夜の雨で泥濘んだ土が弾け飛ぶ。
 地面を蹴り、長い髪をなびかせる影。
  その手に一振りの剣を携え、アレイを視界に捉える舞。
 その目はあくまで凛々しく。
  唇から、仄かに殺気を孕んだ吐息が漏れる。

 「……ふう」

 皆は無事に逃げおおせただろうか。
 別の魔物に襲われていないだろうか。
 ひどく心が弱っていたあの娘……詠美は、大丈夫だろうか。
 佐祐理はどうしているだろうか。
 どうか挫けないで欲しい。どうか無事で居て欲しい。
 もう少しだけ、待ってて……すぐに追い付くから。

 一瞬の空白の後、舞が立っていた場所に大人の身の丈はあろうかと言う鉄塊が
深々と突き刺さる。
 鉄塊はずるりと泥から抜け出し、再び舞の後を追う。
 それを振るう、鎧に身を固めた隻眼のアレイ。
 しかしその眼には、何も映らず。
 唇から、呪詛の様なうわ言が漏れる。

「たましい……にんげんの、たましい……たりない、もっと、もっと……」

  たくさん、たくさん、にんげんをころせば。
  るみらさまは、かえってくる。
  がんばろう、がんばって、がんばって、がんばって、ころそう。
  たくさん、たくさん、たくさん、たましいを、あつめよう。
  るみらさま、るみらさま、まっていてください。
  わたしは、がんばって、あつめて、たましいを、ころします。
431Dancin' on the edge:03/07/27 05:22 ID:I/f14LT/
 アレイのクレイモアが下草を薙ぎ払い、舞は垂直に飛んでそれを避ける。
 死の振子が自分の目の前を離れ、もう一度襲いかかるまでの刹那、舞は一直線に
アレイの懐に飛び込んで渾身の斬撃を胴に叩き込む。
 しかし、その一撃は特殊強化プラスチックの鎧を前に、荒々しい打撃音を
辺りに響かせるだけに終わった。
 攻撃が徒労に終わったと悟るより疾く、舞は猫のように身を躍らせてアレイの
返しの一撃をかわし、間合いを取り直そうとする。
 が、着地の直後、体重をかけた右足が泥から抜けず、舞は踏鞴を踏んだ。
(……まずい!)
 アレイの大剣が唸りを上げて、自分に向かって斜め袈裟に打ち降ろされようとしている。
 上体を逸らして避けようにも、このままでは泥に埋まった右足が断ち斬られる。
 舞は瞬時に右足を支点にして上半身を右に捻り、姿勢を低くしながらクレイモアを
受け流す構えを取った。
 剣と剣がぶつかる瞬間、オレンジ色の火花と凄まじい衝突音が起こり、舞の両腕を
今まで経験した事の無い巨大な衝撃が襲う。
 浅い角度で当たった大剣は、雷光のような火花と身の毛のよだつ金属音を撒き散らしながら
舞が構えた剣の刃に沿って駆け抜け、土と泥を爆ぜ飛ばしてようやく止まった。
 それを見るが早いか、舞は全体重を掛けて左足を突っ張り、力任せに右足を泥から引き抜く。
 勢い余ってひっくり返るように後ろに飛んだ舞の眼前を鋼の暴風が掠め、前髪が数本宙に舞った。

 生きていた時ならともかく、死霊化して本能の赴くままに得物を振るうだけのアレイは
剣技に限って言えば舞の敵ではない。
 しかしアレイが振り回すクレイモアは、舞の剣に比べて長さも重量も2倍以上はある。
 その上、今のアレイは魂が完全に消滅するか物理的に体が「壊れる」まで、疲労にも痛みにも
支配されずに自身の背よりも高い大剣を縦横無尽に振り回せる。
 直撃すれば無論の事、真正面からあの一撃を受け止めても、剣ごと真っ二つにされる。
 ならば、勝ち目は無い?否。
(……かわすか、受け流すか)
 瞬きする間も無いほどの刹那に、生死の境界線が引かれている。
 ならば、そこを全速で踏破するだけ。
432Dancin' on the edge:03/07/27 05:23 ID:I/f14LT/
 とは言え。
 クレイモアが巻き起こす死の旋風をかい潜って懐に飛び込んでも、あの鎧をどうするのか。
 相手を鎧ごと断ち割るのが不可能な事は先の一撃で実証済みだ。
(……どうしよう)
 舞の表情に焦りの色が浮かびかけたその時。
「……ぃぃぃ」

(?)
 声が聞こえる。
「……のぅわぁぁぁ……か……みぃぃぃ」
 確かに聞こえる。
「きこ……はぅあぁぁぁぁああああ」
 聞き覚えのある声が近付いてくる。
 この声の主は。
「返事をし、ごはぁ!」
 間違いない。
「川澄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、ぐほぉっ!?」
 絶叫と共に、茂みの間から九品仏大志が飛び出してきた……いや、転がり落ちてきた。
「ぐおぉ……お、おお川澄、無事であったか!」
 舞とアレイが対峙する、丁度真ん中に。
「後ろ!!」
「にんげん……ころす……たましい……」
「何、後ろ?後ろがどうしのぅわぁああああああああ!!!!」
 舞が叫ぶのと、アレイがクレイモアを大上段に振りかぶるのと、俯せのまま後ろを振り返った
大志がアレイのクレイモアに驚愕の叫びを上げたのはほぼ同時だった。
 大志は反射的に四つん這いのままアレイの方へ突進する。
 一瞬、地面が揺れたかと錯覚するほどの衝撃を自分のすぐ後ろに感じながら、大志は鎧の構造上
閉じる事が出来ないアレイの股間をくぐり抜けて反対側へ脱出した。
433Dancin' on the edge:03/07/27 05:24 ID:I/f14LT/
 四つん這いのままで大志が叫ぶ。
「な、何をする貴様!危うく死ぬところだったでは無いか!」
「……殺すつもりだった、こいつ」
 しれっとした顔で舞は言い放つ。
「悪い冗談はよせ!南蛮鎧武者に面識も殺されねばならん心当たりも無いわ!
大体何だこいつは!」
「……魔物」
「!!」
 舞の返事に、大志の表情が瞬時に凍り付く。
「……こいつが、南女史を……」
 舞は黙って頷く。
「……そうか」
 大志の顔から表情が消える。まるで氷の能面のような表情。

 大志はすっと起き上がるとアレイが振り返るよりも早く、クレイモアが届かない間合を
大きく回り込んで舞の傍に寄ると、舞の肩を掴んだ。
「よし川澄、ここは一端退くぞ」
「……ぽんぽこたぬきさん」
「馬鹿者、現在の我々の装備では……」
 舞は大志の手を振り払おうとして、
「奴を殺し切れんではないか」
 憎悪と殺意で妖しく鈍い光を放つ大志の眼鏡と、その向こうの横顔に息を飲んだ。
「奴から逃げるのではない、奴を誘き寄せるのだ……地獄の底へな」


【舞vsアレイ 交戦中】
【九品仏大志 舞に合流 ゲリラ戦を提案】
434名無しさんだよもん:03/07/27 16:17 ID:gt0CGtdY
いつまで単発の戦闘を繰り返すんだか。
どうせ2人の協力プレイで勝つか逃げるかして終了だろ?
誰も話を進めようとはしない。こんなんで終わるんかね?
435名無しさんだよもん:03/07/27 16:34 ID:9lioQiYT
新作(・∀・)イイ!
436名無しさんだよもん:03/07/27 16:53 ID:KVpqSnp1
書いても文句くるだけだし誰も喜ばないって理解しようぜ。
437名無しさんだよもん:03/07/27 21:54 ID:yj/FHSLn
書き手さん。言わなくてもわかってると思うが、気にするな。
438名無しさんだよもん:03/07/27 23:30 ID:E0/hHgdL

~`゙`''‐--、_ `~"`''‐-、    /|   ,,-‐''"::::::::::::`''‐-、,,,_
‐-、::::::::::::::::゙"''''-、:::::::\ / ノ  /:::::::::::::::::___:::::::::::  ~"''-、__,,
  ヤ''‐-v''‐--、___:::::::::::Y /|_/::_,,-‐''" ̄    ̄ ̄~~""''''‐-‐''
‐-、>ζゝ‐-、____,,`,v‐、|/ /,,,,-へ、
r''~  ス,,,,__,,,二-‐'''''`'ヽ  ̄\   |
|      ,''"''ヽ,      ‐=、‐、/
|==‐-、_イ_0_  !    ,--、 ヽ \
ゝ、      : ̄:''‐-、_ゝイ0  i ヽ `i
\ `ヽ、._   :. :     ̄''、=y、  V~
::::::::`ゝ、`'''‐、:__:_    /`ノ-、/新作だ゙━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ゝr"`Λ~"''‐‐、__"''‐、/ /| : :ヽ、
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::::  |        `~ヽ、_''=-`r--''
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__,ゝ\_ _,,,/;;/ .|
 \  ~‐--''" /
439名無しさんだよもん:03/07/28 16:20 ID:xsbSOhob
しかし、>>434は総合の受け売りを語るにはもう少し知能をあげてからでないといけないな。夏休みの宿題早めにやれよ?
440名無しさんだよもん:03/07/28 17:25 ID:Pdb8oXpo
新作イイ!!作者さんありがとう
441名無しさんだよもん:03/07/28 18:01 ID:4IdfcTLu
最高です!この調子でどんどん!
442CROSS:03/07/29 21:41 ID:JvyfW4VN
 集中。体内の魔力を収束させて、敵に向かって一気に放つ。
 魔力の束を正面から受けたその敵は、だがしかし一瞬たりともひるむことなく。


「魔力の無駄だ! それより攻撃の回避に専念しろ!」
「……ッ!!」
 横からウィルに諭されて、エリアは第二撃の準備をやめる。たしかにこれ以上はどうあっても無駄のようだ。
 鬼ごっこのタイムリミットは時間にしてあと4分くらいだろうか。だが正直それは―――きつい。
「ヴアアアアッ!!」
 部屋全体が振動する奇声を上げ、ゴーレムは渾身の右ストレート。狙い過たずその拳は、ティリアの顔面をぴたりと細く。
(速い…!)
 体全体を跳躍させて何とかティリアはそれをかわした。その頬を冷や汗が伝い落ちていく。
「……ちっと、覚悟を決めたほうがいいかもしれないか」
 舌打ちしながらウィルが呟く。いつの間にか、口にはタバコがくわえられていた。
「あ、あんたねぇ……!」
 死ぬ前の一服、だと言うのならいささか冗談が過ぎる。
 そんな様子のティリアを見てウィルは一瞬唇の端を持ち上げた。考えがあるんだよ―――とでも言いたげな表情。
「グウウウウ! コロス! コロス! コロス!!」
ティリアには、ゴーレムの双眸がぎらりと光ったように見えた。竦みそうになる足を、必死で奮い立たせている。
「30秒だ。いや20秒でいい。何とか耐えろ」
 真剣な声でウィルが話しかける。
「わかった……あんたは?」
「ライターを探す」
「……ッ!」
 考えの読めないこの男に何かもう一言言ってやりたかったが、敵はそれを許してくれないようだった。
443CROSS:03/07/29 21:42 ID:JvyfW4VN
 岩の拳が風を切る。標的を捉えそこなったそれは、壁を、床を壊していく。
「コロス! ミナゴロシ! シネ! シネ!!」
 怨嗟の声と圧倒的暴力を撒き散らしながら、岩の王は暴れ続ける。
 ―――その拳は、例外なく、すべてを壊す。
 その周りを、跳ね回るようにして逃げをうつ影がひとつ。
「はっ、はっ、はっ……」
 膝がいうことを利かなくなってきた。体力には自信があるつもりであったが何せ今日は朝から強行軍だ。そろそろ…
「きゃっ!」
 ほら、やっぱり。穴の開いた床に足を取られて……
 身を起こそうとするティリアの目に、ゴーレムの巨大な足の裏がうつる。
「あ……」
 自分が身を起こして飛び退くのが速いか、ゴーレムが無造作に足を落とすのが速いか……考えるまでもないことだった。
(沙織、ごめん……!)
 文字通り命を背負っていた少女に詫びながら、ティリアはぎゅっと目を瞑った。
444CROSS:03/07/29 21:42 ID:JvyfW4VN
 サァァァァ…………
 水の流れる音が聞こえる。
(……ええと、これは、つまり)
 目を開ければ、きれいな川とお花畑が……?
(ああ……きっと向こう側にはサラが待ってるんだ……どうしよう)
 どうしよう、といってもどうにもならないのは明白だったが。

「おい、おーい 目開けろ目」
「え?」
 聞き覚えのある声がして、ティリアは恐る恐る目を開けた。ずぶぬれになったウィルが自分を見下ろしている。
「生きてる……? やっぱり生きてる……」
「当たり前だ。そうそう天使の目の前で誰か死なせてたまるか」
 言って、ウィルはゴーレムを蹴りつける。ゴーレムの目は光を失い、今はぴくりとも動かない。
「どうして……? まだ時間には早かったはず」
「ん? ああ」
ウィルは天井を見るように促した。天井の中心に、水道の蛇口を小さくしたようなものが。
「血を媒介にしてゴーレムに魂を焼き付けたって言ったろ? 裏を返せばその血を洗い流してやりさえすれば
 ゴーレムは動かなくなるわけだ。ゴーレムに乗り移ったんじゃなくて、あくまでゴーレムについた血と、それに焼きついた
 魂がゴーレムを動かしてるだけなんだからな」
「ひょっとして、スプリンクラーで?」
「ライターの火とタバコの煙でちょっと、な」
「はあ……あ……くしゅんっ」
 安堵すると同時に、ティリアの口からくしゃみがひとつ。ずぶぬれなのはウィルだけではないようだった。
「いこうぜ。祐介と沙織も心配だが俺たちが風邪を引いちまう……それにしても」
 ウィルの口調が少し変わった。
「ティリア……おまえけっこういい体しt」
 ティリア渾身の右ストレートが、ウィルのこめかみを完璧に捉えた。

【ゴーレム、完全沈黙】
【ウィル× -ゴールデンライト- ○ティリア】
445名無しさんだよもん:03/07/30 00:14 ID:koE56Tes
新作いいね。こんな感じでどんどん頼む。
446名無しさんだよもん:03/07/30 21:43 ID:xTvFWsnu
何様?
447名無しさんだよもん:03/07/31 08:07 ID:O0PR56DG
誤字
エリア→ティリア
細く→補足

新作イイでつね!完結まで300話はかかりそうだけどみなさんにも頑張って欲しいです。
僕も今書いているので・・・ヽ(`Д´)ノ
448名無しさんだよもん:03/07/31 08:21 ID:O0PR56DG
誤字の誤字
補足→捕捉

スマソ・・・・・(´・ω・`)ショボーン
449名無しさんだよもん:03/07/31 16:33 ID:FN/bbxxh
「イイ」ですませる読み手。
450名無しさんだよもん:03/08/01 00:00 ID:MTOU/tLI
>>447
横槍スマソ。
「完結まで300話」って、何で分かるんだ?
いや煽りじゃなくて、何か話の尺を計る基準みたいなものが
あるのかなと言う素朴な疑問なんだが。
451名無しさんだよもん:03/08/01 04:02 ID:Hd4K/7k5
なんとなくじゃないの?
452名無しさんだよもん:03/08/01 19:39 ID:AFmXF6tU
453フェイント:03/08/02 00:59 ID:vVnS7/MO
 自分と同じくらいの身長、つり上がった真っ赤な目、とがった耳、口から出ている牙。
 本で読むのと同じ容姿の吸血鬼。そいつが今殺気に満ちた目で俺を睨みつけている。
 そんな空気が鼓動を加速させる中、睨み合って様子をうかがっている今が実に静かだ。

「そこまで威勢のいい理由はその鞄の中身か?」
 シュベストが矢島のバッグに目をやる。
 それに対して、矢島は何も言わない。
「まあいい、それが何であろうと私にはさほど差しつかえないだろうからな。
 よく聞け人間。何もおまえだけがいいカードを持っているとは限らん。
 私はお前以上の好カードを持っているぞ」
 シュベストの両耳がピクピクッと動いたかと思うと、今度は口を緩ませて笑みを浮かべる。
「いた…」
 その言葉と同時にシュベストはものすごいスピードで奥の薬剤室へと入っていった。

「この薬です。これを杜若さんに飲ませてください」
 茜そう言って、薬を一定、智子に渡す。
 智子はその薬をきよみに飲まそうとするがなかなか飲んでくれない。
「だめや、全然飲んでくれへん」
「じゃあ、この水と一緒に飲ませてください」
 キュッという蛇口をひねる音がした後に茜は水の入ったコップを智子に渡す。
 智子は指示通りにきよみに水を飲ませた。
 横で澪が心配そうに見ている。
「けほっけほっ!」
 きよみはむせかえるが、薬はちゃんと飲んだらしい。
「これでもう大丈夫です。早くここから逃げましょう。外に寝かせているあゆさんたちも心配ですし…」
454フェイント:03/08/02 01:01 ID:vVnS7/MO
 バキャッ!!

 突然、音ともにドアが破壊される。
 全員が一瞬にしてその方向を見ると、そこから見えたものは先ほどの吸血鬼。
「やはりな。第一に必ず仲間の吸血鬼化を解くと思ったよ」
 シュベストは茜の手に持っている瓶を見る。
「しかし、まさか薬で解いていたとは予想外だったよ」
 シュベストは笑みを浮かべながら、近づいてくる。それにちょっと遅れて矢島もドアから入ってきた
「な、みんながどうしてここに!?」
 そう言いながら、矢島が全員を見る。
(上月さんがいて…保科さんがきよみさんを抱えて、里村さんの持っているものはワクチン…)
 そこで矢島はようやく理解できた。
「そういうことか…早く逃げろ!」
 矢島の声に智子がきよみ抱え走り、他の二人も走り出す。
 室内は吸血鬼化したあゆたちのために暗幕をひいたままだった。
 窓は三つ同じ場所に並んでいる。それぞれが一つ一つの窓に向かう。
「吸血鬼さんよ、おまえの相手はこの俺だ」
 矢島はシュベストの注意を自分のほうに向けようと話しかけたが、シュベストは矢島のほうを見向きもしない。
 すると、シュベストが瓶を一つ取り、それを澪の向かっている暗幕のフックに投げつける。
 瓶はフックに命中し、暗幕は地面に落ちた。そして、二つの窓の暗幕にも同じ事をする。
 部屋には日光が入って、その面積は部屋の半分にもなった。
 意外な行動に走っていた三人はその場に立ち止まり、シュベストのほうを振りかえる。
「エクソシストがいない以上、ただ殺したのではつまらん。貴様らに絶対的力の差を見せつけるとしよう」
 すると、シュベストに異変が起きる。頭からシュベストの体はどんどんと消えていき、最後にはいなくなってしまった。
「…え? 何が起こったんや」
 智子が疑問を投げかける。
 すると、その場を凝視していた茜の目に何かが入ってきた。
「……霧?」
455フェイント:03/08/02 01:03 ID:vVnS7/MO
 突然、澪の近くにあった暗幕が浮かび上がる。そして、その暗幕の中にいたのはシュベスト。
 シュベストは素早く澪の首をつかみ、宙ぶらりにし、日のあたらない場所へ移動する。
 澪は足をバタつかせ必死に抵抗していた。
「おい、小僧。おまえは私に化け物といったが、化け物とは私にとって誉め言葉でしかない。
 お前ら人間はどうしようもない敵に対してその言葉使うからな。例えば…」
 シュベストは自分の腕を澪の胸に貫通させる。
「こんな力を持った相手にだ」
 周りに澪の鮮血が飛び散る。そして、その血の勢いは矢島にも到達した。
「てめぇ!」
 矢島が一歩出るが、シュベストはおかまいなしといった感じで話をする。
「おや、このお嬢さんは悲鳴を上げないんだね。悲鳴を聞きたいがためにわざと即死させなかったんだが、
 とんだ駄作だったようだ」
 不快な音ともに澪の頭がつぶされた。

「ふざけんなぁー!」
 矢島がシュベストに猛ダッシュで近づき、ナイフでシュベストの目を突く。
 しかし、ナイフは予想と反してシュベストの手のひらによってさえぎられた。
 さらにシュベストはナイフを最後まで刺しきると、刺さったままの状態で矢島の右手を握り締める。
「馬鹿め!」
 その言葉ともにシュベストは手に力を入れる。
 グチャリという音ともに矢島の絶叫が聞こえる。
「ぁぁぁあああああああああああああっっ!!」
「矢島さん!」
 茜が矢島に呼びかけるが、その声は届かず、当の矢島はただうずくまって痛みに耐えていた。
 茜はその矢島を見て腕を強引につかみ、光の当たるほうへ引きずり寄せる。
 そうでもしないと矢島はたちまち殺されてしまう。
「お嬢さん、あなたはわかってない。そんなことは無意味なんですよ」
 シュベストはナイフをひきぬき、その手でシュベストは薬の置いてある棚を片手で持ち上げ、振りかぶる。 
456フェイント:03/08/02 01:04 ID:vVnS7/MO
 それを見た一同は全員が同じ発想をし、地面に伏せる。
 次の瞬間には、ガラスの割れる音がし、その破片が飛び散ってきた。
 数秒待ち、破片がもう降ってこないことを確認した茜はすぐさま目を開けると、少し違和感があることに気づいた。
(自分の周りの床が暗い……影ができてる!)
 しかし、気づいた時には、茜はシュベストに自分の体が押さえつけられた。
「さっきの攻撃を全員が避けるとは大したものですね。ですが、棚を投げたのは攻撃だけにあらず」
 茜の向きでは見ることはできないが、シュベストが投げた棚は半分は外の側にはみ出て、窓に突き刺さっていた。
 その棚のおかげで窓からくる日光はさえぎられ、シュベストは茜のいるところまで移動できたのだ。
「くくく、お嬢さんはなかなかきれいな体をしている。この体を少しづつ削ぎとっていくとしよう」
 口を横に開き、汚い笑みを浮かべながら、シュベストは優しく茜の太ももに手を乗せる。
「っ!」
 茜が表情がこわばる。
「それだ、その顔を待っていたんだ!これこそが私にとって最高の喜びと…ガボガボッ」
 シュベストの言葉がおかしくなる。
 起き上がった矢島がナイフを取り、それをシュベストの喉の奥まで押しこめいたからだ
「少しは黙れ…」
 矢島はさらにナイフを押しこもうとするが、シュベストがその前に歯でナイフを折り、
 続けざまシュベストは口に残ったナイフの刃を勢いよく飛ばし、矢島の左肩に命中させる。
 あまりの勢いにナイフは矢島の左肩を貫通し、矢島もその勢いに押され数歩後ずさりした。
「はぁ…はぁ……」
 矢島の呼吸はだんだんと深く早いものとなっていく。
「顔色が悪いぞ。さっきの威勢はどうした?」
 シュベストは矢島を挑発し、暗幕を脱ぐ。
 シュベストのほうも体はかなりつらくなってきているが、それを悟らせてはいけない。
 シュベストは服の乱れを整える。
「ここからが本番。世界を震撼させた恐怖の始まりだ」

【シュベスト、矢島、茜、智子、きよみ 現在薬剤室に】
【あゆ、瑞穂 外に寝かせている】
【矢島 デザートイーグル(残り一発)とウェストバッグ(秘策入り)所持】
【茜 捕まっている】
【上月澪 死亡】
457まかろー:03/08/02 01:06 ID:vVnS7/MO
誤字、脱字、矛盾点よろしくお願いします
458まかろー:03/08/02 01:17 ID:vVnS7/MO
すいません。つけたしで

【矢島 右手潰れる。左肩に傷】

お願いします
459名無しさんだよもん:03/08/02 01:30 ID:qcetPuAP
>>まかろー氏
新作乙!
診療所組、ボルテージ上がってるなあ。
芳晴達が来る前に全滅の線も濃厚だけど、どうなるのやら。

あと申し訳ないんだけど、編集サイト308話「離反者達の葛藤」より

>ワクチンは三つの薬品を組み合わせて処方する。
>正式名称……は長ったらしいので割愛するが、「液剤」「錠剤」「粉末剤」の
>三つであると考えてもらう。
>まず錠剤を感染者に飲ませ、続けて粉末剤と液剤を1:3の比率で混合し、それ
を煮沸消毒した水で2倍に薄めたものを飲む。
>以上の手順により、ワクチン使用後参時間以内にD-Vは感染者の体内から完全消滅するものとする。

と言う訳で錠剤だけでは不十分で、液剤も飲まないと「大丈夫」ではないと
思われ。
重箱スマソ。
460名無しさんだよもん:03/08/02 07:10 ID:wrKbrSqw
461名無しさんだよもん:03/08/02 12:10 ID:YB0+BJgC
矢島が光ってるね。

死にかけだけど
462名無しさんだよもん:03/08/02 12:31 ID:8tSBPx2I
463名無しさんだよもん:03/08/02 23:08 ID:oXEfefeM
464まかろー:03/08/03 01:02 ID:E1iodmsE
459さん、指摘ありがとうございます。
そして、こちらミスについてお詫び申し上げます。
2〜3話前までは読んでいたのですが、そこまでは戻って読んでいなかった。
記憶というのはあいまいだな〜

本文の第3パラグラフから修正したいと思います。

修正文

「この薬です。これを杜若さんに飲ませてください」
 茜そう言って、薬を一定、智子に渡す。
 智子はその薬をきよみに飲まそうとするがなかなか飲んでくれない。
「だめや、全然飲んでくれへん」
「じゃあ、これと一緒に飲ませてください」
 茜はポットを手にとってその中身をコップに注ぎ、智子に渡す。
 ポットの中に入っていたのはあゆたちの時に使った粉末剤と液剤を混合して 作ったワクチンだった。
 智子は指示通りにきよみにワクチンを飲ませた。
 横で澪が心配そうに見ている。
「けほっけほっ!」
 きよみはむせかえるが、薬はちゃんと飲んだらしい。
「これでもう大丈夫です。早くここから逃げましょう。外に寝かせているあゆさんたちも心配ですし…」
465名無しさんだよもん:03/08/03 07:44 ID:KyHDET2X
466名無しさんだよもん:03/08/03 12:42 ID:owXYVZbK
467名無しさんだよもん:03/08/03 17:21 ID:P5VFbSA7
468名無しさんだよもん:03/08/03 17:21 ID:pVtDEw8b
池田はですね   

(大白蓮華 昭和31年4月号)
「国立戒壇の建立こそ、悠遠六百七十有余年来の日蓮正宗の宿願であり、また

     創 価 学 会 の 唯 一 の 大 目 的 

なのであります」

(大白蓮華、昭和34年6月号)
「大聖人様の至上命令である

     国  立  戒  壇  建  立  の  た  め  

には、関所ともいうべき、どうしても通らなければならないのが、

     創 価 学 会 の 選 挙 

なのでございます」

といってますが、これはどういうことなんですか?

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469名無しさんだよもん:03/08/04 00:57 ID:0nmC3fE2
470名無しさんだよもん:03/08/04 08:24 ID:819jhJ0q
471名無しさんだよもん:03/08/04 11:05 ID:819jhJ0q
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536一時の安らぎすら許されず(1):03/08/24 21:36 ID:Cq1YNb59

 釜風呂がある、と聞いて思わず期待した美咲だったが、肝心な問題が残されていた。
「……水道、ありませんね」
「……はい」
 どうやら完全な展示用らしく、戦国時代をそのまま再現した風呂釜は、どこからも水を通していなかった。
 ぬか喜びしてしまった美咲は、がっくりとその場に座り込む。
「ごめんなさい、早とちりしてしまって……」
「いえ、いいですよ。それにいくらなんでも、こんな場所でお風呂に入れるほど神経太くないですし……」
 どこか諦め混じりに呟いて、美咲は周囲を見まわした。
 確かに、忍者の人形がポーズを決めてる隣で、お風呂に入るのは、なかなか勇気が要りそうではある。
「それじゃあお風呂は諦めて、お昼ご飯にしましょうか」
「良かった、私もうお腹ぺこぺこだよ」
 くぅ、と鳴るお腹を押さえ、みさきが本当に嬉しそうに言ったので、美咲も弥生も思わず笑ってしまった。
 座敷童も交え、展示場の囲炉裏を囲んで昼食を取る。
 と言っても、食べるのは乾燥した携帯食に、自販機から仕入れたコーンポタージュぐらいなのだが。
 座敷童も美咲の手からビスケットを貰い、それにかじり付いていた。
 食事が終わり、一息ついた美咲は、思わず出そうになったあくびを噛み殺す。
 一方のみさきの方も、座敷童を膝の上に乗せたまま、うつらうつらしていた。
「川名さん、大丈夫?」
「あ……はい」
 弥生に声をかけられ、みさきははっと顔を上げる。
 その様子を見て、弥生は少しだけ不憫に感じた。
 この島での遭難は、きっと目の見えないみさきにとっては、自分達以上に神経をすり減らしていたに違いないのだ。
「どうしましょうか……まだ早いですけれど、今日はここで一泊して、明日行動しますか?」
 美咲の提案に、弥生はしばし思案する。
537一時の安らぎすら許されず(2):03/08/24 21:37 ID:Cq1YNb59

 実際、美咲にしてもみさきにしても、体力の限界が近かったし、弥生も大分疲労が溜まっていた。
 慣れない森の中の移動は、緊張感も合間って、ごっそりと体力を奪う。
 足や腰の関節は軋むような痛みを発するし、筋肉痛はそれこそ全身に及んでいる。
 自分自身の疲労も考え、弥生が賛成しようと口を開きかけた時だった。
 急に座敷童がみさきの膝を離れ、美咲に跳び付いたのだ。
 驚く美咲に構わず、座敷童がみさきの足を指差す。
 その靴下が血でじっとり染まっているのを見て、美咲は思わず小さな悲鳴を上げた。
「川名さん、靴下が血だらけじゃないの……!」
「!!」
 美咲の声に、慌てて弥生はみさきの足に視線を向ける。
 確かに、みさきの靴下は踵の辺りがじっとりと血に染まり、黄色い体液と混じって斑になっていた。
 今まで靴を脱ぐ機会が無かった事に加え、疲労がふたりから注意力を奪っていた為に、みさきの異変に気付かなかったのだ。
 座敷童は美咲の服の袖をしっかりと握り締めながら、心配そうにみさきの足を見詰めている。
「川名さん、どうしてもっと早く言わないんですか!!」
「う、うん……きっと澤倉さんも弥生さんも大変だろうから、心配かけたくなかったんだよ……」
 歯切れ悪く呟くみさきに、何故もっと早く気付けなかったのか、と弥生は自分を責めた。
 この中では、自分が真っ先に気付いてやらなければならないのに。
 そっと靴下を脱がすと、下から覗いたその有様に、弥生も美咲も言葉を失った
 酷い靴擦れだった。
 べろりと完全に剥がれた皮は、下の肉を無残に露出させ、今も血を滲ませている。
 何度も何度も水脹れを潰し、皮が引き裂けるまで我慢を重ねた結果だった。
 こんな状態では、僅かに歩くだけで凄まじい苦痛が襲うに違いない。
 それを、みさきは呻き声ひとつあげずに、じっと耐えていたのだ。
「あなたって子は……どうして……」
 自分の不甲斐無さに怒りすら込み上げながら、弥生はここで見付けた消毒薬を取り出す。
538一時の安らぎすら許されず(3):03/08/24 21:39 ID:Cq1YNb59

「消毒液かけるから……沁みるかもしれないけど我慢してね」
 みさきが僅かに怯むのにも構わず、弥生はオキシドールと書かれた小瓶の中身を、傷の上に滴らせた。
「―っ!」
 ビクンっ、とみさきが苦痛に身体を痙攣させる。
 普通に考えれば、盲目のみさきが、知らない森の中を何時間も歩き続ける事自体に、無理があったのだ。
 日頃の運動量にしても、慣れにしても、一番辛いのは間違いなくみさきである。
 普段から特に歩き慣れてないみさきにとっては、一日中見知らぬ森の中を歩く事は、文字通り拷問に近かったに違いない。
「川名さん。我慢もほどほどにしないと、身体を壊してからでは遅いんですよ」
「……ごめんなさい」
 小さな声で謝るみさきに、弥生はぎゅっと唇の端を引き結んだ。
 違う。
 本当に謝りたいのは自分の方だ。
 こんなにまで無理させていたのに、気付けなかった自分が、全て悪い。
 けれどもその想いは言葉にならず、弥生は強張った表情のまま淡々とみさきの足に包帯を巻きつけた。
「澤倉さん、あなたの方はどうなんですか?」
「あ、はい……靴擦れは出来ちゃってますけど、そんなに酷くないです」
「それでも、治療しておいた方がいいわね」
 有無を言わせぬ弥生の言葉に、美咲も大人しく足を差し出す。
 そちらは流石にみさきほど酷くはなく、バンソウコウを貼るにとどまった。
「あ、あの、弥生さん……それで、今日は……」
「ここで休みましょう。こんな足では、まともに歩く事もできないでしょうから」
 きっぱりと言った弥生に、美咲はほっと胸を撫で下ろす。
 美咲自身、疲労が酷かったし、ここで休憩できるのはありがたかったのだ。
 だが、そんな美咲の思考を、耳障りな音が遮った。
539一時の安らぎすら許されず(4):03/08/24 21:41 ID:Cq1YNb59

 ―――――――ギシリ
「!?」
 はっきりと響いた軋み音に、3人と座敷童は硬直する。
 この施設には、自分達以外には誰もいない……それは、とっくに確認済みだった。

 ―――ギシリ、ギシリ―――ギシリ、ギシリ
 何者かが、板の間を歩く音。
 ―――ひそひそ、ひそひそ―――けらけら、ぺちゃぺちゃ
 何者かが、囁き、あざ笑い、何かを啜る音。

 弥生たちは本能的に、しっかりとお互いを抱きしめ合う。
 なんの姿も見えず、ただ声と気配だけが、彼女らの周りを取り囲んでいた。
 背中から染み込んでくるかのような悪寒にとらわれ、美咲は生唾を飲み込んだ。
 その横では、みさきは座敷童を胸に抱いたまま、凍り付いたように弥生の腕にしがみ付いている。
 恐怖に慄きながらも、しっかりと目を見開き、周囲を見回していた弥生の視線が、フロアの角で止まった。
「―――――――!!」
 ごろり、と無造作に転がっている、逆さになった女の生首。
 それと、目が合った。
「弥生さん……!?」
 弥生の目を追った美咲の視線もまた、その場所で凍りつく。

 女の生首の口が、耳まで裂ける。

 その瞬間、全てが一度に起こった。
540一時の安らぎすら許されず(5):03/08/24 21:41 ID:Cq1YNb59

 まるでダムが決壊したかのように、フロアのありとあらゆる陰から、ありとあらゆる妖怪が飛び出した。
 悲鳴と共に、弥生と美咲、そしてみさきが駆け出すはとほぼ同時。
 生首、髑髏、ロクロ首、獣、鬼………まさしく、妖怪の集大成が彼女らに襲い掛かる。
「百鬼夜行………!!」
 悲鳴混じりの弥生の叫びに合わせて、妖怪どもが歓喜の雄叫びを上げる。

 みさき達が踏み入れた場所は、日本妖怪の巣だったのだ。

 考えてみれば、最初に出会った“口裂け女”にしろ、“忍者屋敷”にしろ、日本の歪な模写であった。
 ならば、日本妖怪の巣に迷い込んでしまった事も、あながち偶然では無かったのかもしれない。
 しかし、必死で屋敷から逃げようとする3人にとっては、今更な話であった。
 迷路のように入り組んだ忍者屋敷は、中に入る者よりも、外へ逃げようとする者を惑わせる。
「でっ、出口、出口は……!」
 息を切らし、へとへとになりながら、美咲がうめいた。
 その横では、みさきは一言もしゃべれず、ただ荒い呼吸を繰り返すだけだ。
 そんな2人の手を取って、弥生はがむしゃらに足を動かしていた。
 入りくねった忍者屋敷の見取り図を必死で思い浮かべ、いくつもの角を曲がる。
 彼女らのすぐ後ろには、百鬼夜行が歓声と共に追いすがっていた。
「もうすぐ……もうすぐだからっ」
 足がもつれ、痛みと疲労に押し潰されそうになる頃、ようやく彼女らは出口を見つけだした。
 うっそうと茂る森に戻る事に、一瞬躊躇いを感じたが、それも後ろから追ってくる妖怪に比べればましに思えた。
 みさきの痛々しい足が脳裏をよぎり、弥生は立ち止まる。
「川名さん、しっかり…」
 そう叫んでふりかえった瞬間、弥生は凄まじい力で跳ね飛ばされた。
541一時の安らぎすら許されず(6):03/08/24 21:43 ID:Cq1YNb59

「きゃあぁっ!」
 美咲とみさきの悲鳴を聞きながら、弥生は地面を転がった。
 その上を、おぞましい生首が行き過ぎる。
 ざんばらの髪に、土気色の肌をした、ぎょろ目の空飛ぶ生首……飛頭蛮。
(待ち伏せされてた………っ!?)
 飛頭蛮はゲラゲラと笑いながら、転んだ弥生達の周囲をぐるぐると回り狂う。
 弥生は痛む全身に鞭打って立ち上がると、転んだままのみさきを背負い、美咲の腕を掴んで無理やり立たせた。
「や、弥生さんっ、どっちに逃げたらいんですかぁっ!?」
「屋敷に戻れるわけないでしょう!」
 悲鳴混じりの美咲の叫びに、弥生もヒステリックに怒鳴り返す。
 背中に乗せた瞬間、ずっしりと足にみさきの体重がかかり、悲鳴が喉の奥で弾けた。
 だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。
 美咲を引き摺るようにして、弥生は再び駆け出す。
 幸い、飛頭蛮は猫がネズミをいたぶるように、すぐに獲物を殺すつもりはないらしかった。
 ぐるぐると3人の周りを回りながら、時折体当りをしかけ、弥生たち地面に転がす
「だめですよぉっ、逃げられませんっ!」
「っ…」
 弥生が口を開こうとした瞬間、再び飛頭蛮が弥生を叩き伏せた。
 泥の中にまともに倒れ込み、口の中に血と汚泥の味が広がる。
「う……ぇっ」
 吐き気を必死に堪えながら顔を上げた弥生が見たものは、飛頭蛮に咥えられ、空高く宙吊りにされた、みさきの姿だった。


【弥生 みさき 美咲 妖怪に追われ、屋敷から逃げ出す】
【みさき 飛頭蛮に咥えられ宙吊り】
542名無しさんだよもん:03/08/24 21:44 ID:Cq1YNb59
長らく放置されてたみさき組を進めてみました。
というか、鯖自体放置されてたわけですが……


これを機にまた持ち直してくれるといいなぁ。
543名無しさんだよもん:03/08/24 23:11 ID:FKJmkgzG
あら、鯖復活してたんだ・・・
とりあえず(つ・∀・)つガンバレー
544名無しさんだよもん:03/08/25 13:33 ID:/39b3El4
新作お疲れです。
なんかこの三人も死にそうでいい感じですね!
545名無しさんだよもん:03/08/27 14:35 ID:ySXK1sti
死にそうでいい感じってのもアレな表現だな
546名無しさんだよもん:03/08/29 18:32 ID:nnejllHq
だが、それが現実
547544:03/08/29 19:11 ID:1semOcBJ
早く人が死ねば話もまとめやすくなる、という意味ダス
548名無しさんだよもん:03/08/29 23:26 ID:iieqSWXS
ピーチピチギャル
☆ロリロリだよ☆
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549名無しさんだよもん:03/09/01 17:56 ID:57C/eaIJ
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550544:03/09/01 23:11 ID:hiTaI9Id
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551544:03/09/05 11:33 ID:9Tc4Cuo/
新作期待上げ
552名無しさんだよもん
保守