1 :
名無しさんだよもん:
2 :
名無しさんだよもん:03/03/31 11:46 ID:3HnxiLif
保守
(7/22)
晴子「あんた、ぶっきらぼうやけど、ほんまは根のいいやつやと思うわ」
往人「あんたも酒さえ飲まなければ、いいひとだと思うぞ」
晴子「む…」
晴子「あんた結構、テク使うやっちゃなぁ…うち、今のセリフできゅうんときてしもた」
(晴子の好感度により分岐)
晴子「…なぁ居候」
往人「ん?」
晴子「結婚せえへん?」
往人「…はぁ?」
晴子「うち、あんたのこと気に入ってん。どや?」
往人「そらまた、唐突な話だな…」
酔っ払いの戯言だと思った。
だが何を言っても酒の席の冗談として片付けられる。
たまには冗談に乗ってやるのも面白いかもしれない。
(選択肢 | 観鈴と/晴子と)
(晴子と)
往人「結婚って、おまえとか?」
晴子「…はぁ?」
今度は晴子が呆れる番だった。
晴子「こぶつきで、こない気の強い女、もろてくれるいうんか」
往人「ああ。今すぐにでも結婚したいぞ」
晴子「…観鈴はどないすんねん」
往人「俺たちの娘ということになるな」
晴子「あ、そか。それなら問題ないな…」
うんうんと納得しかけて、ぶんぶん首を振る。
晴子「ってアホ!観鈴の気持ちはどないすんねん」
往人「気持ち?俺たちが結婚することに反対なのか?」
晴子「…はぁっ」
これみよがしにため息をつかれた。
晴子「あんた、鈍感すぎや」
往人「晴子ほどじゃないぞ」
晴子「なんでうちが鈍感なん」
往人「俺の気持ちに気付いてなかったじゃないか」
晴子「…せやったな」
じっと見つめてやると、思案するような視線を向けてくる。
晴子「あんた、やる時はやるしなー。観鈴のことも大事にしてくれそうやし」
往人「もちろんだ」
晴子「じゃ結婚しよか」
往人「ああ」
こうして、冗談みたいなノリで俺たちは結ばれた。
観鈴は最初こそ驚いていたが、
観鈴「これでずっと、往人さんと一緒にいられるね」
といって幸せそうにはしゃいでいた。
俺たちは観鈴を養子に迎え、名実ともに親子になった。
観鈴が激しい発作に襲われたとき、俺は母の言葉を思い出して人形に祈った。
対処が早かったということなのだろうか、それ以来、癇癪の発作を起こすこともなくなった。
あの不思議な空の夢も見なくなったという。
新しくできた弟の世話で手一杯だからかもしれない。
幸せそうな観鈴たちを見て、俺たちも微笑みあう。
あの頃の神尾家に漂っていた疲れきった空気は、今はもう影もない。
声が聞こえる。
それは、ずっと昔から。
そして、今、この時も。
だが俺には関係のないことだ。
大切な人たちの笑顔。
目の前の幸せ以上に大事なものなどないのだから。
(スタッフロール)
7 :
1/9:03/03/31 15:24 ID:9JKa4Twl
浩平がいなくなった…。あの人がいなくなった同じあの空き地で…。
世界は浩平の存在を完全に消していた。
そして…私は待つことしか出来なかった…。
ザーーーー
強い雨が降っていた。
今日も私はあの空き地でピンクの傘をさして浩平を待っている。
浩平自身が止めてくれた行為を今度は浩平のために…。
馬鹿げているとわかっていても私にはこれしか出来なかった。
無意味な時間だけがただ流れている。
雨音だけが時間の流れを示してくれる。
そろそろ学校に行かなければいけない…。
私は空き地を後にする。
「あ、里村さん」
ふと声をかけられた。慌てて後ろを振り向く。
「長森さん…」
そこに立っていたのは長森さんだった。
彼女は浩平の幼馴染だった人だ。
「なにしてるの?こんなところで…」
「いえ、なんでもないです…」
「そう。そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ」
「そうですね。行きましょう」
「うん」
8 :
2/9:03/03/31 15:25 ID:9JKa4Twl
長森さんと登校するのは浩平がいなくなってから初めてだった。
やはり彼女と一緒にいるのは躊躇ってしまっていた。
彼女は自分以外に浩平を一番覚えている可能性のある人だったから…
しかし浩平のことを問うとやはり答えは同じだった。
彼女でさえ浩平のことを覚えていないのだ。
しかしよく考えたらわかっていたことだった
詩子だってあの人のことを忘れてしまったのだから…
いつの間にか雨はあがっていた……
学校では私はもとに戻っていた。
人を拒み一人でいることが多かった。
今日も一人で昼食をとろうと思い中庭へと向かう。
「里村さ〜ん」
そんな私を呼び止める声がした。
声の主は今朝と同じだった。
「これからお昼ご飯食べるの?」
「はい」
「どこ行くの?」
「中庭です……」
「一緒に行っていいかな?」
「……………」
「嫌ならいいんだけど…」
「そんなことないです」
9 :
3/9:03/03/31 15:25 ID:9JKa4Twl
「じゃあ行こっか」
「はい」
私と長森さんは中庭で二人きりの昼食をとった。
といってもお互いに何も話さない。
ただゆっくりとお弁当を食べるだけだった。
唐突に長森さんがしゃべりだした。
「里村さん。今日一緒に帰らない?」
「え…」
「里村さんと話したいことがあるんだよ。どうしてもね」
「……」
「嫌ならいいんだよ。また今度にするから」
「いえ…」
「じゃあ放課後にね」
「はい」
そう言うと長森さんは立ち上がり教室へと戻っていった。
ただその表情はひどく強張っていたような気がした。
午後の授業はほとんど集中出来なかった。
なぜか長森さんの話したいことという言葉がずっと引っかかっていた。
あの後の表情を見てしまったからなのだろうか…。
「里村さん、帰ろ」
長森さんが声をかけてきた。
こういう時、彼女は本当に裏表の無い人だと思う。
10 :
4/9:03/03/31 15:26 ID:9JKa4Twl
「はい」
「とりあえず公園にでも行こっか?」
「はい」
長森さんと私は二人で公園に向かう。
公園に向かう途中彼女は色々な話をした。
私は相槌を打つことしか出来なかった。
暫くすると公園が見えてきた。そこは浩平と昔来たあの場所だった。
「とりあえず座ろっか?」
「はい」
私と長森さんは向かい合うように座る。
「それでお昼休みに言ってたことなんだけどね…」
「はい」
彼女の表情がはいつになく真剣なような気がした。
意を決したように彼女が口を開き言葉を続けた。
「少し前に里村さんが私に聞いたことがあったよね」
「……」
「浩平って人のこと」
「……」
「あの時私不思議に思ったんだよ。なんで里村さんがそんなこと聞くんだろうって」
「え?」
「私、その時その人誰?って答えたでしょ」
「……はい」
11 :
5/9:03/03/31 15:26 ID:9JKa4Twl
「あれ、本当は嘘なんだよ」
「………」
「嘘ついちゃったんだよ。私…。ごめんね…」
「どうして…」
「自分でもわからなかったんだよ。でもその人誰?ってのは冗談のつもりだったんだよ」
「……」
「でもそれが冗談じゃなかったんだよ。みんなが浩平のこと本当に忘れていて、
私浩平の…由紀子さんの家に行ったんだよ。そしたら…」
長森さんは一度そこまで言って俯いてしまった。
しかし顔をあげて続きを話してくれた。
「家の前に…。浩平の部屋にあったものが山積みにされていて…」
「………」
「由紀子さんにも聞こうと思ったんだけど会えなくて…」
彼女は今にも泣き出しそうだった。涙を必死に堪えて彼女は話し続けた。
「浩平を探そうと思ったんだけどどこにもいなくて…。それで里村さんなら浩平のいる場所を知ってるかもしれないって思って…」
「…………」
私はその後に全てを話した。
浩平が消えた最期の時のこと、そしてあいつのことも…。
「そうだったんだ…」
「はい」
「だからあの空き地で浩平を待ってるんだね」
「はい…」
12 :
6/9:03/03/31 15:28 ID:9JKa4Twl
「里村さん。もう一個話したいことがあるけどいいかな…」
「はい」
「こんなこと言わないほうが変かも知れないけどね…」
「はい」
「私…多分浩平のこと好きなんだよ。だから覚えていられたんだと思う」
「………」
「浩平のことを想う気持ちが強かったから、浩平のこと覚えていられんだと思うんだよ。
多分、里村さんには敵わないだろうけどね…」
「え?」
「浩平は最期に里村さんに逢いに行ったんだから、それが浩平の答えだよ」
「………」
「ちょっと悔しいけど…、でも浩平自身が選んだ人だから…。って思ってるんだ」
「………」
「幼馴染だったから、ちょっと遅かったのかな。でも今は浩平と幼馴染でいられて良かったと思うよ」
「その気持ちはわかります。私もそうでしたから…」
「そっか」
「はい」
そう言うと彼女はポケットから何かを取り出し、それを私に手渡した。
それは小さな鍵だった。
「これは…?」
「由紀子さんの…浩平の家の合鍵。私が由紀子さんからもらったものなんだ」
13 :
7/9:03/03/31 15:29 ID:9JKa4Twl
「どうして…?」
「もう私が持つ必要も無いよ。里村さんがいるんだから。バトンタッチかな」
「そんな…」
「いいんだよ…私は。それより里村さんもあまり浩平を甘やかしちゃダメだよ」
私は鍵をもったままどうすることも出来なかった。
「ずっと昔から思ってたんだよ。この鍵を渡す浩平の彼女ってどんな人なんだろうって。
私がずっと持ち続けていられたらいいなって思ったこともあるけどね…」
「長森さん……。私がこれ受け取っていいんでしょうか?」
「いいんだよ。里村さんなら文句なしだよ」
「ありがとうございます」
「でも浩平もひどいね。可愛い彼女を放ってどっか行っちゃうなんて」
「そんなことないです」
「照れてるの里村さん?」
「そんなことないです…」
さっきより声が小さくなっていた。その様子を見てた長森さんが笑っていた。
私も笑っていた…。浩平がいなくなってから笑ったのは初めてのような気がした。
「里村さん。私、浩平はきっと還って来ると思うよ」
「……」
「いつかはわからないけど必ず…。だから空き地にいる必要はもう無いと思うよ。
8年間一緒だった私が言うんだから間違いないよ」
「でも…」
「そうだったね。空き地は里村さんの大事な場所だもんね。そこを奪うつもりはないんだよ」
14 :
8/9:03/03/31 15:29 ID:9JKa4Twl
「はい…。
それにしても…。浩平はひどい人です。こんな可愛い幼馴染を放って行くなんて」
「あはは…。そんなこと言っても何もでないよ」
「いえ、本当にそう思います」
「ありがとう」
彼女はそう言って微笑んでいた。本当に可愛い人だと思う。
「そろそろ帰ろうか」
「はい」
私たちは再び道を戻っていった。
そして別れる道まで一緒に歩いた。
「今日はありがとうございます」
「よかったよ。里村さんが少し元気になってくれて」
「はい」
「里村さんには私みたくなって欲しくなかったから…」
「え?」
「最期に私、里村さんと仲良くなれて良かったと思う、本当に」
「どういうこと…ですか?」
「浩平のこと任せたよ。里村さん」
「長森さん…?」
サァーーッ
一際強い風が辺りに吹いた。砂埃が舞い上がり私は目を開けていられなかった。
そして再び目を開けたとき…。
15 :
9/9:03/03/31 15:30 ID:9JKa4Twl
そこにはもう…。誰の姿も無かった…。
「長森さん…?」
「嘘ですよね…」
返事は無かった…。辺りはただ沈黙…。
「あなたも私を置いて行ってしまうんですか…?」
悲痛な叫びをあげていた…。
私は道路に座り込んでいた…。
ただ一人、この悲しさを共有できる人だったのに…。
ただ…、いい人だったのに…。
「なんで…」
だが今思えばそれの予兆ともいえるものが明らかにあった。
普段は明るく誰とでも話しているハズの長森さんが、
ここ最近は一人でいることが多く、数人の生徒から懐疑の目で見られていたことも…。
自分が愚かだった。気がついたところでどうしようもないことはわかっていた。
それでもなぜそれに気がつけなかったのだろうか。
そして長森さんのあの行為は…あの言葉は……。
彼女は自分の運命を全て悟っていたのだ。
そしてそれを知った上で全てを私に託してくれたのだ…。
涙が溢れ出してきた……。
私はただ泣くことしか出来なかった。
手にはずっと受け取った鍵を握り締めていた…。
復活age とか
>1
おつかれです。
こういう気軽に書き込める所は必要だと思います故、支援カキコ!
観鈴「往人さん、帰ってきてくれたんだよね」
観鈴「そらは往人さんのこと見た?」
観鈴「よく覚えてないんだ、わたし」
観鈴「苦しくて、辛くて、せっかく往人さんが帰ってきてくれたのに目も開けていられなくて」
観鈴「手を握り返すので精一杯だった」
観鈴「往人さん、人形を動かしてくれてたみたいだったけど」
観鈴「わたし見てあげられなくて」
観鈴「気がついたら往人さん、もうどこにもいなかった」
観鈴「枕もとに人形だけが残ってて…」
観鈴「ね、そら」
観鈴「往人さんが人形を動かしてくれてたの、見てたんだよね?」
観鈴「だからわたしを元気づけようとして、人形劇をやってくれたんだよね?」
観鈴「往人さんがそうしてくれたように」
そら「……」
観鈴「おかしいよね、そら」
観鈴「そらといると、往人さんと一緒にいるみたい」
観鈴「二人ともまっくろだからかな、にはは」
観鈴「往人さんもぶっきらぼうだったしね」
そら「……」
観鈴「往人さん、どこ行っちゃったんだろうね」
観鈴「荷物もクツも人形も、みんな置きっぱなし」
観鈴「ハダシ、だよね…」
観鈴「人形ないとお金稼げない」
観鈴「往人さん、お腹すかせて倒れちゃう」
観鈴「大丈夫かな」
そら「……」
観鈴「お母さん、わたしが寝てる間に探してくれてるんだって」
観鈴「迷惑かけたくないけど、観鈴ちん足が動かないから…」
観鈴「バスにも乗ってないって。運転手さんに聞いてくれたって」
観鈴「あ、でも往人さん、バスに乗るお金持ってないか。にはは…」
そら「……」
観鈴「もしかして線路ぞいに歩いていっちゃったのかも」
観鈴「テレビでそんな映画やってた」
観鈴「往人さん、旅人さんだもんね」
観鈴「うーん、線路だとお母さんも追いかけられない」
観鈴「線路の先の町、二つあるし」
観鈴「両方さがすのはムリかなー」
観鈴「往人さんに電話番号のメモとか、渡しておけばよかったね」
観鈴「あ…わたし電話に出られない」
観鈴「もし今かかってきたら、どうしよう」
観鈴「うーん」
観鈴「そら、代わりに出てね」
観鈴「往人さん、そらのこと知ってるから」
観鈴「しゃべれなくても、そらだってわかってくれるよね」
観鈴「そのあいだにがんばって取りにいく」
観鈴「うん。観鈴ちん、ナイスアイデア」
そら「……」
>>19-20 原作をそのまま読んでるような雰囲気に囚われた。
ただただ、凄い。としか
泣けてくる
観鈴ちん…・゚・(ノД`)・゚・