どちらかというと…
精神的疾患患ってるのは蝉の方だな(´Д`;)
時刻は朝。
場所は森。
息を切らしながら走る一人の女性。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
それも限界。ゆっくりと足を止めると、静かに、木陰に腰を下ろす。
「ふぅ……」
日陰になっている部分で息を整え、タオルで汗を拭う。
元来運動が得意ではないうえ、ゲームが始まってから、ずっと動き回っていたため、
既に体力の限界は遥かに超えていた。
もともと、彼女……梶原夕菜に、ゲームに参加しようという意思は無かった。
ある日突然届いた1通の手紙。
差出人は那須宗一。入っていたのは新しくオープンする予定があると聞いたことのある、リゾートアイランドの入場チケット。
元々は、いろいろと夕菜に対し後ろめたい気持ちを抱いている宗一が、
このくらいならいいだろう、とこしらえた、いわば特別観戦チケット。
自分が参加者として優勝するのを見せ、元気でやっているということを遠まわしに知らせるための。
が、宗一は肝心なミスを犯した。夕菜に詳しく説明するための、手紙を入れ忘れたのだ。
当然、宗一の意図したとおりに夕菜は捉えることができず、
(そうちゃんが旅行に誘ってくれた……)
単純に、そう考えた。
そうと決まればと、夕菜は張り切った。当日の為に綿密に準備をし、特製のレモネードを水筒一杯に作り、お弁当をこしらえ、
意気揚々と島に乗り込み……
そこでやっと、島で行われるゲームのことに気付いた。
あとは流されるまま。いつの間にか参加者の列に並んでいて、いつの間にか参加者が集まるホールに通され、
いつの間にか、参加者としてゲームに参加していた。
そんな訳のわからない状況の中、夕菜にとって唯一幸いだったのは、このゲームに宗一も参加しているということ。
最初のホールで、ほんの一瞬、ちらっとだが、確かに夕菜は宗一の姿を見た。
そんなこんなで、開始直後から夕菜は、延々宗一を探して動き回っていたのだ。
(そうちゃん、どこにいるのかな……)
探しても探しても見つからないことに落胆を覚えつつ、空を見上げようとする。
だが、それを覆うように聳え立つ木々が、陽射しと青い空を隠す。
「……あっ」
瞬間、閃いた。
(そうだ!)
この島にひとつだけある丘。そして、そのてっぺんに一本だけ立つ巨木。
あの木の上からなら、もしかしたら見つけられるかもしれない。
しばらく登ってないけど、きっと大丈夫なはず。
疲れはいっぺんに吹き飛んだ。
「そうちゃんに会うためだもんね……がんばらなきゃ」
土埃を払い、夕菜は力強く、丘への道を歩き出した。
――未だ、弟の身に降り注いだ重大な不幸を知らずに。
【梶原夕菜 丘へ向かう】
リスト投下します。
例によって少々時間がかかると思いますが勘弁して下さい
なお、今回のリストに載っているキャラで参加者は確定となります
理緒は仲間を捜していた。
とにかく一人ではどうにもならないからだ。
廃屋と化した家の中で、何故かずたぼろになっていた同じ学校の生徒二人を捕まえることはできたけれど(その二人が去っていったときの、恐るべき形相がいまだに目の前にちらついている)
そんな僥倖がそうそう起こるはずがない。
鬼として、戦績を掲げるためには、仲間が絶対に必要だった。
家族のため……弟のために。
空腹にむち打って、森の中を歩いているのはそれが理由だった。
「うにゅー」
突然声がした。
びくりと体を震わせた後、自分は鬼、怖がることはないと、声のした方を振り向く。と。
「……うわぁ」
青く長い髪をした少女が、木に吊された網に閉じこめられていた。
鬼のたすきをかけている。残念。二度目の幸運とはいかなかった。
「助けてー」
自力で出られないらしい。
「助けて、って言われても……」
手が届く高さではない。木に登って、網をほどくしかない。
「えーと、それじゃ、わたしと一緒にきてくれますか?」
「鬼同士だから、いいよ。それより助けて欲しいよ」
「はいっ」
木登りに挑戦しようとする理緒。
しかし。
「あーーーーーーーーー」
「……残念だよ」
理緒も、網に絡め取られて宙吊りになってしまった。
「そうか……あの二人が、ぼろぼろになっていたのは」
こういう罠に、ひっかかったからだったんだ。
全ては手遅れだった。
【理緒・名雪、宙吊り】
【同棲の二人はさてどうなったやら】
現時点(前スレ
>>720及び現スレ
>>55)までの参加者一覧
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
()でくくられたキャラは参加確定ながら未出キャラ、『』でくくられたキャラはショップ屋担当
レス番は最終行動及び存在確認、()ありレス番は前スレ、無いキャラは前回(前スレ
>>618-624)から変動無しです
fils:ティリア・フレイ、サラ・フリート、【エリア・ノース】
雫:長瀬祐介、月島瑠璃子、藍原瑞穂、太田香奈子、【新城沙織】、【月島拓也】
痕:柏木耕一
>>15-17、柏木梓、柏木楓(
>>643)、柏木初音(
>>694)、柳川祐也(
>>660-661)、日吉かおり、相田響子、
小出由美子、阿部貴之
>>43、ダリエリ
>>15-17、【柏木千鶴:10】(
>>629-632)
ものすごいご苦労様でした。
>>リスト作成者だよもん氏
乙
批判感想はNG?
「…ん? もう朝か」
柔らかな日差しと小鳥のさえずりが目覚まし代わり。
起きぬけの一呼吸は、清涼な空気。
早朝の丘の上は、実に心地よい。
「・…っ、」
背伸びを一回。不自然な格好のまま眠ってしまったためか、全身に妙なこわば
りを感じる。一瞬だけ顔をしかめるが、すぐに元の顔に戻る。あの掴み所のない、
物事を斜め見したような表情に。
「ま、万事うまくいくとは限らないさ」
そう吐き捨てて、緒方英二はどこかに歩いていった。一体どこに向かうのか。そ
れは誰にも分からない。
【緒方英二 起床】
「人間が起きた後にすることといったら一つしかないだろ?」
【……緒方英二 小便】
やっぱりご法度かな。
最初の方の一通り感想書いて見たけど、傷つく人が居るかもしれないからやめとくよ。
ゆっくりと、夜が白んでいく。
海風が運んできた朝靄を胸いっぱいに吸い込んで、
「んん〜〜っ!」
響子は今日も一日が素晴らしいものである事を祈った。
欠伸をした向こうの空は、昇りかけの朝日が自分に手を振っているようだった。春はもう、すぐそこまで来ている。
「よしっ、今日もやるわよ!」
「大きな声を出すのは感心できません」
彼女の背後から美しい声が聞こえた。テレビのアナウンサーのような、癖の無い声。
「鬼に見つかる恐れがありますので」
その割に周囲をはばかる所がまったく見えない調子で、弥生は響子を諌めた。
彼女としては別に鬼を恐れる必要など無いのだが、
響子への配慮から敢えて鬼の興味を引くような行為は慎んでいたのであった。
それに夜中に感じたいくつかの気配のうち、由綺を感じさせるものは一つとして無かった。
「ま、いいじゃないですか、篠塚さん。鬼はこの辺にはいないんだし。だって私が」
「貴女が一晩中見張っていたから――ですか?」
その通りです、とばかりに響子はにこっと微笑んだ。
「これでも記者の端くれですからね。一晩二晩寝ないぐらい何でもないですよ。
それより、篠塚さんだって寝てないでしょ?大丈夫ですか?」
「私は別に」
…会話が持たない。これは記者としてのプライドが許さない。
響子はやや強引に話を切り出してみた。
69 :
怒り:03/03/24 00:40 ID:LhnsPv9Q
矢島と垣本。
言語に絶するとてつもない目にあわされた二人。
二人は怒り狂っていた。
片方はほうき頭をさらにとがらせて、
片方は端正な顔を異様にゆがめて、
一歩一歩、地面を踏みしめながら歩いていた。
「垣本よ」
「矢島よ」
「端役軍団の名にかけて」
「結局出番の無い南と城島の分まで」
「目立ってみせるぞこんちくしょう」
「橋本先輩……」
「南明義……」
「城島司……」
「そして、ここに参加していない全ての端役よ……」
「我らの生き様」
「とくと見ていてくれ」
「そして、俺たちに」
「力を与えてくれ」
「端役に光りをッ」
「端役の怒りを見せてくれるッ」
「目標!」
「住井 護! 北川 潤!」
「首を洗って待っていろぉッ!」
怨念の言葉をまき散らしながら、目指すは脇役コンビの首。
怒りに燃える二人を止められる者は、
もはや、いない。
【端役コンビ、行動再開】
【罠の家〜草原へ向かう】
「ねえ、篠塚さん。お訊きしたい事があるんですけど…いいですか?」
「私に答えられる事なら」
「どうして森川由綺にそこまで固執するのかしら?」
「マネージャーとして当然の行為だと思いますが」
「貴女のそれはタレントとその担当マネージャー、という関係の範疇を越え…」
「ダイヤモンドが何故美しいか御存知ですか?」
「…ダイヤモンド?ダイヤが何か?」
「ダイヤモンドの原石自体は、決して見栄えの良い物ではありません。それこそガラス同然です。
そこに人間が意図的に手を加えて、初めて鑑賞に堪え得る物となる…私はそう考えています。
原石は原石のままあってはならないのです」
「……はあ…」
「森川は原石です。あまつさえ自ら光を放ちながら、その光が見えていない。……以上です」
…分かったような分からないような。
ただ一つ言える事といえば、彼女が森川由綺を愛しているという事ぐらいだった。
「……これからどうします?私はもう動けますけど…」
「森川を捜しに行きます。貴女は?」
「分かってるくせに…付いて行かせて下さい」
つくづく愛想の無い人よね、響子はそう思った。
(まぁ、この人の事だからきっと辛くても口には出さないんでしょうけどね…)
響子は何となく、弥生の事が分かりかけてきた。
意外と悪くないコンビなのかもしれない。
【弥生 響子 由綺探しの旅へ】
71 :
69:03/03/24 00:42 ID:LhnsPv9Q
ごめんなさい。割り込みました。
>>リスト製作者だよもん氏
乙かれ様です。本当に助かってます。
>>64 そんなに厳しくない批判感想なら良いんじゃないですか?
「帰れ」だの「もう書くな」だの言うわけじゃないんでしょう?
建設的批判なら、書き手にとってもありがたいことですし。
もちろん、それもいやだという人もいるでしょうが……
もちろん、「帰れ」だの「もう書くな」だの言うわけじゃない。
意味のある批判に書いたつもりだし、賞賛だけのSSがほとんど。
……でも凹む人は凹む批判です。
取りあえず一時凍結します。
本編を再開して下さい。
ちゃぷん。
「…………朝になってしまった」
頭だけ水中から出した岩切が呟いた。
「少しやりすぎたか」
と、岩切は昨日の事を改めて反省していた。
人外の能力を植え付けられた岩切にとって一般人を相手に逃げることなど造作
もない。日没と同時に岩切は全能力をもってして逃げまくった。もちろん水中を基
点にして、ありとあらゆる『鬼』から身を隠しとおしたのだ。
その結果が、これである。
鬼ごっこやかくれんぼといった類の遊戯で最も避けねばならない状態。それは
最初に鬼の役になってしまうことでも、いち早く捕まってしまう事でもない。
「――あれ以来誰とも遭遇してないではないか………!」
そう。
隠れているうちにいつの間にか散会になってしまう事。これこそが鬼ごっこやか
くれんぼにおける最大の危機。ヨシダくん何で帰っちゃったんだよーだってお前ど
こにいるかわかんねぇだもん皆帰っちゃったよー。
ぶっちゃけ泣きたくなるだろう。そりゃもう、とても。
いくら強化兵とはいえど岩切も一個の人間だ。泣きはしないにしろ、すごい勢い
で寂しくなっているに違いあるまい。
「……」
岩切は何かを決心したかのような表情で水からあがる。ほらね。
「…………朝食だ」
一体誰に言っているのか、言い訳とも取れる呟きを残して岩切は屋台のある方
へ向かった。
【岩切 朝食を取りに屋台に向かう ちょっと寂しい】
すみません。
>>77のタイトル入れ忘れてしまいました。
『いわきりの鬼ごっこ促進化計画』
とお願いします。
「くーーー・・・・・・・・・」
「すーーー・・・・・・・・・」
「くかーーー・・・・・・・・・」
パチッ!、パチッ!
3人と寝息と焚き木の燃える音を聞きながら浩平は起きていた
別に、最後の一人になるまで殺し合いをしてる訳でも、恐ろしい
怪物達の住む島でサバイバルしてる訳でもない、ただの鬼ごっこ
なのだから鬼となった今、起きてる必要は無い
「痛っ!・・・」
彼が起きてる理由は別にあった
「やっぱり、腫れてやがる・・・」
見ると浩平の足は赤く腫れていた
七瀬と広瀬に暴行?を受けた状態で崖から飛び降りる、闇雲に
歩き回る、風呂場を覗く、等で蓄積されたダメージが現れてきたのだった
「なんとかしないと明日に響くな・・・」
焦燥の念に駆られ一人ごちた
「浩平?・・・・・・起きてるの?」
彼の独り言に目を覚ましたのか、長森が話しかけてきた
「いやー興奮して寝れなくてな」
心配をかけたくない、彼なりの配慮からそう嘘をついた
「足・・・痛いの?」
「ぐあ・・・」
見破られていた
「大丈夫だって、明日になりゃ引いてるよ」
「嘘だよ」
長森が隣に座ってきた
「浩平、我慢しなくてもいいよ」
「別に我慢なんかしてないよ」
「こんなに腫れてるよ・・・」
「腫れたい年頃なんだよ」
訳の解らない言い訳をしながら浩平はそっぽを向いた
「浩平・・・」
そっと引き寄せられる
「浩平、無理しちゃだめだよ・・・体の方が大切だよ
トウカさんやスフィーさんには理由を話して、
ここでゆっくりするのもいいと思うよ。」
包み込むような優しい感覚
懐かしい感覚
ずっと求めていた感覚
ああ、そうかもな」
「私は浩平が元気ならそれでいいよ、他は何もいらないよ」
「ま、明日しだいだな」
・・・嘘
強情なこの幼馴染の事だから無理してでも行くに決まってる
「ねえ、浩平・・・」
「スーーー・・・・・・」
安らかな寝顔と寝息が聞こえてきた
「もう・・・」
目の前の幼馴染を強く抱きしめ
「心配だよ・・・」
「スフィー殿・・・」
「しっ、こういう時は寝たふりをするの!」
【浩平・瑞佳、いい感じ?】
【トウカ・スフィー、寝たふり】
>>67 俺も聞きたいです
自分でもちゃちい文章なのは解ってます
でも、いえ、だからこそ正直な感想が聞きたいです
やってしまった。
>>65、NGです。
本当に申し訳ない。
>>83 NGにするな。
責任持って辻褄合わせしる!
カンホルダリ様の出番はまだですか?
さっきから服脱いでスタンバっているのですが…
いい加減あたりも薄暗くなってきた森の中に少女が二人。
普通なら心細くて泣き出してしまいかねないそのシチュエーションにも
関わらず少女たちの足取りは軽かった。
というか速い。
大の男ですらこんなペースじゃ進めないといった速度だ。
茂みを掻き分け、倒木を越え、軽い沢ならぴょんぴょんぴょんと一直線。
渡りきったところで一歩前を進んでいた娘が立ち止まった。
「……ここら辺で、ちょっと休憩しましょう」
「そうね。って、疲れたー」
うひゃー、と手ごろな岩に腰掛ける。
「…大丈夫ですか、綾香さん?」
「うん、だいじょぶだいじょぶ。ちょっとくたびれただけー」
あははと返す綾香の顔にはなるほど酷い疲労は見て取れない。
軽く辺りを見渡して暫し黙考。
顔を上げて楓は言った。
「…多分、もう芹香さんの近く迄来ていると思います」
「やった!さっすが楓ちゃん、頼りになるわぁ」
「ただ…近くに千鶴姉さんも居るみたいなんです」
「えっ、姉さん捕まっちゃったのかな?」
楓、再び黙考。
綾香、ちょっと気は急くがそれを表には出さない。
普段、芹香と一緒に居るから楓みたいなタイプとの付き合い方は自然と
身についている。
「気配が……気配がさっきから動いてませんから…休憩中なのかも」
「休憩?」
こくんとうなずく楓。
「……ルミラさんたちの中立屋台が営業中ですから…姉さんたち夕食中
かも知れません」
「あ、いいなぁー。私もお腹すいちゃったし」
うんしょ、と岩から腰をあげる。
「近いんだったら私たちもそこまで行っちゃお!ご飯〜」
くすりと笑う楓、だがその眼が不意に細くなった。
「…誰か、こっちに来ます」
「えっ?あっホントだ」
音など聞こえないが確かに気配がする。
自分でもこういう感度は良い方だと思っているのだが流石に出来が違う
なぁなどと綾香が考えたその次の瞬間、前方の茂みから人が現れた。
身の丈は浩之あたりとほとんど代わらないがTシャツから覗く二の腕や
胸板は鍛えられた男のそれ。
そして、その面差しは…
「…外国の方、ですね」
楓が呟いた。
髪はダークブラウン今時街角、教室ですら珍しくもない色だが流石に青
いその瞳が彼の出自を物語っている。
「……」
男が語りかけてきた。
英語だった。
『こんばんわ。急に茂みから出てくるからびっくりしちゃったわ。
私は来栖川綾香、こちらは』
『柏木楓です…』
「・・・・・・」
『えぇ、私は小さい頃アメリカで暮らしていたから。普段から話す機会
も多いし』
『私は、あまり話せません…。ヒヤリングの方なら、少しは』
「・・・・・・」
『そうですよね。楓ちゃん発音きれいよ?』
うつむく楓、こんな事でも照れてしまうのかちょっと顔に朱が刺す。
『えっと貴方お一人?』
「………」
『はぁ、お父様とご一緒だったんですか』
「……」
『はぐれてしまって…鬼になってるかも知れないけど一応探していると』
「………」
『はい、見てません』
「……」
『私も姉さんを探していて…。あっ、この近くに休憩所があるんですけどご
一緒します?そこなら他の参加者にも話が聞けると思いますけど』
「………」
『え、助かります?あははっそんなのいいですよ』
だけど…なんだろう。
この人のしゃべり、誰かを髣髴とさせられるわっ!
などという綾香の思いはさて置いて、三人はその場を後にした。
という訳ですっかり暗くなった森を二人の少女と一人の青年が行く。
傍から見れば和気藹々、だがよく見ているとほとんど一人がしゃべり残る二
人が聞きに回っている。
普段、芹香と一緒に居るから、二人みたいなタイプとの付き合い方は自然と
身についている綾香であった。
【綾香と楓、ジョン・オークランドと合流】
【まもなく森を抜け屋台に到着】
夜が明けているチームもあるのにまだ夕食とか言ってるよw
前の人に習って綾香→楓をちゃん付けにしてますがアレだったら直してください。
あっ、ジョンはビル・どうすればいいんだ・オークランドの息子。
ABYSSBOATの主人公です。
どうしたものでしょうかね
NGナシを目標としてるゆえに最大の問題だなぁ
特例を認めるとそれなら……ってなりますし
主人公特権(w
漏れはジョン氏は知らないが・・・
わ、ごめん。
凄くごめん。
各作品の登場人物チェックしただけで投下したものだから>61読んでなかったよー(´Д`;)
アレだったら容赦なくNGでよろです。
無理矢理ジョン削除させてもいい?
よければ駄文書くけどw
>>95 オーケー。
まんまNGよりそっちのほうが面白いだろw
>>96 おk、ビルの処理は俺に任せろ。駄文の責任はお前に任せた。
>>95 ちょっと待って、議論スレの方で話してる最中なので
出来たら見にきて欲しいです
「……そりゃ、眠れるお姫様二人の横で用便をするなんて余りにも愚鈍だろう」
英二さん、草葉の陰でお花つみ。ラフレシアの方じゃないあたり英二さんのダン
ディズムを感じる。
「無論手を洗わないなど笑止、だな」
用を済ませ、東屋の水道で手を洗う。普段あまり細かいところを気にしない彼だ
が、今日の緒方英二は一味違うのだ。
「…ま、それでもなんとか及第点ってところかな」
何せ、意気込んで見張りにあたったはいいものの気付いたらいつの間にか眠こ
んでしまっていたのだ。徹夜なんて慣れたものだったのだが……からだを動かす
方が壊滅的にダメみたいだ。実は体中筋肉痛だったりする。
「帰ったら少し動くか…」
そう呟く英二の前方で、彩が目を覚ました。一帯は草の丈が高く、ちょっと通り
すがっただけでは人影を認めることも容易ではない。背後には森を控え、万が一
見つかってもそこへ逃げ込めば良い。隠れるには絶好のポイントだった。
「おはようございます……」
といったままフェードアウトしかけて、また開く。それに同調して頭も上下する。海釣りの竿のリズムだ。
「おはよう――朝は弱い方?」
「いえ…そうではないんですが……」
「あまり慣れてないとか」
「…はい………」
――揚力低下。失速します。
ごちん。
「いた…」
見事に墜落してしまった。英二は軽く笑った。
「あそこの東屋に水道があるから顔でもあらって来なさい」
「はい…」
彩はふらりと立ち上がり、おぼつかない足取りで顔を洗いにいった。ずいぶん不
安定には見えたが、転んでも辺りは草原だし問題はないだろう。
ポケットのタバコを取り出し、口にくわえる。逆のポケットからライターをとりだして、
「すぅー……」
「……」
そのすぐ横できよみが寝息をたてていた。彼はタバコを仕舞う。これもダンディ
ズム。
「ま、あそこからここまで警戒しながら移動したんだ。もう少しの休息くらいは許し
てくれるだろう?」
英二は天に向かって呟いた。
空は高く、青い。暑くなりそうだった。
【英二・きよみ(白)・彩 落とし穴から丘まで移動】
【時間 早朝】
【英二 ダンディズムというより枯れ気味の優男】
「おいおい、俺はまだ現役だぜ?」
【英二 まだまだ現役】
ID:9k1SPt92
ナイス辻褄合わせ!
「ん〜っ、いい朝ね〜♪ やっぱり空気が綺麗だわ、ふふっ♪」
「にはは、ひかりさんおはようございますっ」
「おはよう、観鈴ちゃん」
和やかな微笑みを交し合う、ひかりと観鈴。森の遊歩道脇のベンチで夜を明かした訳だが、
眠っている間に鬼に見つかる事はなかった様だ。二人の体には鬼の襷が無い。
「顔を洗いたいけど、ここではどうしようも無いわね」
「ひかりさんって、寝起き、いいですね。私のお母さん、朝は酷い」
「あらあら。じゃあ、心配?」
「……うん。でも、大丈夫。…きっと。……多分」
…何となく、自信の持てない観鈴ちんであった。
再び森の小道を歩く二人。その姿は、鬼ごっこをしているというより、散歩でもしているかの様だ。
「――さて、これからどこへ行きましょうかね…?」
「鬼に見付からない様な所を探して、隠れる――とか」
「んー、そうねぇ。おばさん、小さい頃は隠れんぼして遊んだ物だわ。懐かしい…」
「隠れる、得意でした?」
「結構ね。でも、鬼ごっこも好きだったわ。逃げ回るのが楽しくて♪」
のどかでのんきな二人であった。――その時、
ガサッ…!――
「まさか野宿をする事になるなんてね…」
小道の脇の森から現れたのは、現在捕獲数1人の鬼役、広瀬である。
「おはよう。――…あら、鬼さん?」
小道に佇むひかり・観鈴ペアを目に留め、広瀬は双眸を細めてにやりと笑った。
「おはよう御座います。――そうですね、私は鬼です」
「そう。…じゃあ、逃げないとね♪」
「が、がお…」
観鈴ちん、がお――それが合図となったか、広瀬が二人にむかって飛び出す。
――ひかりも、観鈴の腕を掴んで走り出した。
ひかりの脚は、意外に早かった。観鈴を引っ張りながらであるのに、かなりのスピードである。足腰が強く
健康であるのだろう。
「ひっ…ひかりさっ……早いっ…はやいよ〜っ…!」
だが、引っ張られる観鈴ちんは、もうヒィヒィである。
「我慢我慢!」
「待てぇ〜っ!」
「待てと言われて待ってたら、鬼ごっこにならないわーっ♪」
言い返されて、広瀬は苦笑した――確かにそうよね。…だが、逃げる二人との距離が縮まらない。相沢・天沢
ペアの追跡によって消耗した体力が、回復しきれていないのだ。
「捕まえたあの天沢って子と、別れて行動したのは間違いだったかも…」
今更後悔しても遅い。今はあの二人を捕まえる事に集中しよう。――赤毛の方はともかく、金髪の方は脚が遅い
様だ。何時までも一緒に走ってはいられないだろう。見捨てるか、共に倒れるか。それを狙って追い続ければいい。
「逃げ切れやしないわよっ!?」
(…確かにそうね)
追って来る広瀬の声に、ひかりは内心で呟く。――自分ではなく、観鈴がそろそろ限界だ。
「――!」
森が途切れる、その向こうに、川が見えた。更に、桟橋とそこに着けられた小舟がある。
「観鈴ちゃん、お舟は漕げる…!? オールで、ぐいっぐいっってするやつ…!」
「はぁっはぁっはぁ…!」
声が出せない。だが、観鈴は頭を頷かせて答えて見せた。
「オッケー…! じゃあ、残念だけど、ここでお別れよ。観鈴ちゃんは川を舟で下って逃げて。
おばさんはこのまま走って逃げるから」
「っ……でっ………でもっ……!!」
「大丈夫っ…♪」
程なくして、桟橋に辿り着く。ひかりは観鈴を小舟に乗せ、手際よく桟橋と舟を結ぶ縄を解き始める。
「…ひかりさんっ…!」
「どろり濃厚冷やしあめ味、美味しかったわよ、観鈴ちゃん♪ ――また後で会おうね」
おまじない替りか、ひかりは観鈴の頬にキス。そして、舟を脚で川へと押し出す。
「ひかりさん…!」
小舟は、ゆっくりと川を滑り始めた。
「くっ…!? 舟で逃げた!?」
一足遅れて桟橋に着いた広瀬は、川をゆっくりと下って行く小舟を見やり、悔しげに歯噛みした。
――が、その舟に居るのは、金髪の少女一人。
「……一人…!?」
「――こっちよ、鬼さん♪」
広瀬の後ろに、何時の間にやらあの赤毛の女性が立っていた。
――なるほど、脚の遅い方を逃がしたのか。どうやら、相手を見縊っていた様だ。
だっ…!――
ひかりが振り返って逃げ出す。川に逃げた方を追うのは無理だ。何も言わず、広瀬はひかりの後を追った。
「くっ…! 早い…!」
相手の健脚振りに、広瀬は舌を巻いた。その相手の実年齢を聞いたら、更に驚き、きっとこう思っただろう。
体力で、おばさんに負けるなんて!!――
――森が途切れ、その先に草原が見えた。低い丘が幾つかある草原。その草原を出た所で――
「っ………!? み、…見失った………?」
ひかりの姿が見えない。広瀬は周囲を注意深く見回したが――…居ない。どこにも。
「………駄目。体力が…」
落胆し、肩で息をしながら、広瀬は森の中へと消えた。
その時、ひかりは――
――実は、広瀬のすぐ傍にある、大木の陰に隠れていたのである。
深く、静かに、呼吸を整えつつ、楽しげに笑みを浮かべていた。
「…まだまだ、甘いわね。フフっ…♪」
広瀬を隠れつつ見送ると、ひかりもまた歩き始めた。あの川の、川下の方へと。
【ひかり・観鈴ペア 広瀬に見つかる】
【ひかり、観鈴を小舟に乗せて逃す】【観鈴、川を小舟で下る】
【広瀬、ひかりを追うも、ロストする】
【ひかり、川辺の森を歩いて川下方面へ】
「さて同士住井、そろそろ皆行動を開始する頃だな」
「ああ、どれだけ釣れるか楽しみだな同士北川」
「ここに来てからずっと罠作りまくってただけあって、オレ達のスキルもかなりのものになった」
「後期型トラップはもはやその道のプロでも回避は難しいぞ」
そう、彼らのトラップは既に一流の戦士達でも簡単には見破れない程精巧になっていた。
もっとも致死トラップではないのでひっかかった後に脱出すればいいわけだが、かなりの足止めを強いられることになるだろう。
「ときに同士住井、一体どんなトラップをs…」
ちゅどどどーーーーーん!!!!
尋ねる北川の声を遮るド派手な爆発音。方向は草原のある方向。ニヤソと笑う住井。
「アレがその答えのひとつなのだよ同士北川」
「爆破は流石にヤバイのではないのか?」
「アレは音が派手なだけだ。物理ダメージは皆無だから耳さえ塞いでおけば問題ない」
「な、なるほど。しかし同士住井、それでは現在の目的である『捕獲』ができないぞ?」
「同士北川よ、罠はアレ一つではない。派手な罠をワザと発見させて、それを回避して
気が抜けているところに本命の罠を潜ませるという手法がある。実はその周囲にさらに
トリモチを敷いた落とし穴を用意してある。並の人間なら半日は立ち往生させることが可能だ。」
罠の設置にはこのような心理作戦が取り入れられている事例も多い。
「死角は心の中にあり、か。なるほど勉強になったぞ同士住井。ではオレの方も一つ罠のネタを披露しよう。
オレの方はそのような手の込んだ方法ではなく、設置場所に着目してみた。
食料を求めて人が集い、それを狩るために鬼が集う場所、次の舞台は恐らく市街地だ。
そこで、市街地の鬼が待ち伏せに使いそうな場所を中心に罠を大量に仕掛けてきた。」
「それは良い判断だと思うが、しかし同士北川よ。それでは食料を求めてきた鬼でない
連中も罠に引っかかることにならないか?そうすると他の鬼に捕まり、鬼が
増えてしまうぞ?」
「確率の問題なのだよ同士住井。多少誤爆して鬼以外を捕まえる危険が
あっても、鬼を一網打尽に出来る可能性が高いのだから効率的なのだよ。」
つまりこういうことである。いくら食料があるとはいえ鬼の待ち伏せの
可能性が高いのは少し考えれば分かることである。
よって慎重な者や余裕のある者は市街地に来ないだろう。
つまり、くるのは余裕の無いもの、森などで食料を発見できないサバイバル
能力の無い者達のみ。しかしながらそういった連中は鬼にとってはスコアを
稼ぐいいカモなので、慎重派が来ない事を見越しても、鬼にとってはオイシイ
狩場なのである。また、鬼自身の食料も不確定な屋台等より
確実な市街地で探す者が多いはずなので大半の鬼は集まるだろう。
ならば今回の作戦目的には絶好の罠設置ポイントである。
……二人とも口だけでなく本当に罠に関しては達人レベルに化けたようである。
「同士住井よ、今頃市街地は阿鼻叫喚の地獄絵図だぞ。…ああ、そうだ、忘れていた。
市街地といえば我々の分の当面の食料と罠に使えそうな資材を確保しておいたぞ」
「おお…、これはこれは。これがあればまた面白い罠を作れるぞ」
【住井 北川 食料及び資材確保】
【罠マスターにクラスチェンジ】
爆発音の付近にて
「ぐぁ…耳が…」
「なんだこの落とし穴は!トリモチ!?…動けん…」
【矢島&垣本の脇役コンビ 行動不能】
市街地カレー屋にて
「カレーに罠仕掛けるなんて極悪人だよ」
「街に着いて早々これかい…。勢い良く飛び出したと思ったら…」
『先輩を助けるの』
【みさき 街に到着早々北川の罠にハマる】
【智子 澪 みさきの救助開始】
【罠のタイプ 超激辛カレー→水飲み場に捕獲網トラップ】
明け方の風吹く岬にて朝焼けを、そして太陽を腕組みしながら見据える一人の男がいた
もしもそれがすばるであれば、風の中のす〜ばる〜♪とやりたくなるその姿は
世紀末端王、立川雄蔵のものであった
それではこのへんで郁美を守るという最重要使命をソックリさんのクロウにとられた今の心境を聞いてみたいと思います
雄蔵さ〜ん、雄蔵さん……雄蔵さん?
……どうやら立ったまま、目を開けたまま寝ているようです
【立川雄蔵 岬にて立って目を開けたまま睡眠中】
「いくよっ! ぺどふぃりあきょにゅうずきのでぃー!」
「待て! ペドフィリアは違うぞ!」
「もんどう……むようっ!」
ここはディー一家がねぐらにしている洞窟の前、少し開けた草むら。
「まいかのこうげきっ! にぎりかためられたこぶしがでぃーをおそうっ!」
「フン、甘いっ! ディーは華麗なステップでまいかの一撃をかわしたっ! そして次はディーの攻撃だ!」
「いたっ! まいかはのうてんにでぃーのちょっぷをくらったっ! まいかにきゅぅのだめーじっ!」
ディーとまいかが熾烈な戦いを繰り広げていた。
「ハァァッ、ディーの猛攻は止まらない! 絶妙なワンツーコンビネーション!」
「くっ、はっ、てやっ、しやっ! ぴんちぴんち! まいかのぴんち! じょじょにまいかがろーぷぎわにおいつめられていきます!」
「そして……とどめだッ! 強烈なるディーの旋風脚……って、ぬおっ!」
……いや、傍目から見ればどう見ても『お母さんが朝食を準備する間、じゃれあっている父子』なのですけどね。
「ふっふっふっ、まいからっきー! でぃーのどじ! でぃーはなれないまわしげりをはなとうとしたためばらんすをくずしたっ! すかさずまいかのろーがでぃーのじくあしをねらうっ!」
「ぬぐっ!? ディーはまいかのローを喰らった! 10のダメージ! そしてそのまま転んでしまった!」
「まいかがこのすきをみのがすはずがないっ! すかさずでぃーのうえにのり、まうんとぽじしょんっ! なぐるなぐるなぐる!」
陽だまりの中、ょぅι゛ょが美形青年にのしかかってぺちぺちと頬を引っぱたく。
「ぐっ、がっ、ちっ、くそっ! まいかの連続攻撃ッ! ディーは起き上がれない! このまま決まってしまうのか!?」
「きゃははっ! どうだどうだでぃー! まいかのほうがつよいぞ! これにこりたらにどとなまいきなくちをきくな! ……じゃあ、とどめぇっ!」
「まいかが大きく振りかぶった! 勝機だ! ディーは一瞬腰のバネをためると、両足を弾きあげ、まいかの両脇に引っ掛けた!」
「え?」
こんどは組体操を始めました。位置を逆転させたお父さんが娘の両腕をつかみ、「高い高い」しています。
「一瞬の油断が命取り! 私は以前それを身をもって体験したのだ! さぁどうするまいかよ!?」
「うぐぐっ、くそぉ……こんどはぎゃくに、まいかがでぃーにつかまってしまった!」
「さぁ謝れさいか! 私はこう見えても汝等に崇められ、うたわれるものウィツァルネミテア! 本来はお前などと拳を交える存在ではないのだ!」
「なんかわけのわからないことをいっていますっ! とうとうあたまもイってしまったようですっ!」
「な、なんだとこのょぅι゛ょめが! ……これでも、喰らえッ!」
お父さんが娘の頭を小突こうとしますが……
「くそぉっ……。ならさいごのしゅだんっ!」
「な、何ィっ!?」
体を振った娘の足が、お父さんの……
キ――――――――――――――――――――――――――――――ン!!!!!!!!!!!!!
「ぐっはぁ!!??!?!??!?!」
足の間。股座。股間。有り体に言えば『キン●マ』に直撃しました。
「へっへーんだ! ゆだんしたのはでぃーだったね!」
「ぐ、ぐぉぉ……ぐぉぉぉぉぉぉぉ……!」
あらあら、お父さんは蹲り、自分の股間を握り締めています。お父さんには悪いですが、微笑ましい光景ですね。
「そらっ! そらっ! そらっ! へっへーーんだ!」
娘は楽しそうにお父さんにキックキックを連打しています。フフッ、よっぽど楽しいですね。
しかし、ちょうどその時です……
カーーーーン!
「HeyD! まいか! ゴハンできたよ! 早く食べないと冷めちゃうヨ!」
エプロンをつけたお母さんが洞穴から出てきて、フライパンをおたまで打ち鳴らしました。
「あ、はーい。れみぃおねえちゃんいまいくよー!」
動き回ってお腹が空いたのでしょう。娘はお母さんのところへトテトテトテと走っていきます。
「がっ、ぐはっ、なっ、つぁっ、がはっ……!」
お父さんはいまだに悶絶しています。まぁ、仕方ないですよね。同じ男としてその痛みはよくわかります。
「D遅いよ! なにやってるの? Dの分も食べちゃうヨ!」
【ディーVSしのまいか第二戦】
【勝者:まいか 決め技:金的】
【ディー:悶絶中】
【まいか:『キン●マ蹴り』を会得】
【一家はこれから朝食】
Dはみちると組ませた方がよかったかもなw
鬼ごっこ初日から今迄、鬼にも他の参加者にも会わずにいる人物がいた。
人気声優である、桜井あさひだ。
元々内気、というか臆病とも取れる性格故に、彼女の行動は慎重であり、人の気配を感じるなり
すぐに隠れるという行動が、彼女に“誰とも会わない”という状況を作り出していた。
鬼ごっこでは、ある意味最適とも言えるかも知れないが、これはこれで寂しい物がある。
しかし彼女は今、ようやく人と会話を交わしていた。鬼と、である。
――…が、その鬼は、宙にぶら下がっていた。
「すいませんー、助けてくださぁーい…」
「うにゅ〜、こんな格好で宙にぶら下がっているのは、恥ずかしいよぅ〜」
ネットトラップに引っ掛かった、理緒と名雪である。
「あの…、だ、大丈夫…ですか?」
「大丈夫じゃないですーっ」
「下ろしてぇ〜っ」
「ええっと……」
あさひは困った。縄網は、木に登って根元の方を解けば外れるだろう。
…だが、その網の中に居るのは、鬼役だ。解放した途端、自分をタッチしに来るだろう。
「あの…、ご、御免なさい…。私、逃げないと…」
「うにゅーっ、解いた途端にタッチしたりしないから、下ろして欲しいよ〜」
「……タッチしません?」
「見えなくなるまで待ちますから、下ろして下さい〜っ!」
…暫く考え込んだ末、人の好いあさひは、二人を解放してあげる事に決めた。
どさっ――…っと、網が地面に落ちる。
「はぁ…、やっと地面に戻れたよ…」
「私まで引っ掛かるなんて、失敗しました…」
ようやく解放された理緒と名雪は、体をコキコキと鳴らし伸ばし、やれやれとばかりに溜息をつく。
「あ、あの……よ、良かった、ですね…。下に、も、……戻れて…」
もたもたと些か危なげな手つきで木から降りて来たあさひが、二人にぎこちなく微笑み掛けた。
罠に引っ掛かった名雪を理緒が解放しようとした時、理緒自身も罠に掛かってしまったのだが、あさひは
別の罠に掛かる事も無かったらしい。
「有難うだよ〜」
「…通り掛ったのが、女の人で良かったです。どうもスイマセンでした…」
網の中の二人の格好は、男性に見られるのはちょっとハズカシー格好であったのだ。
「あ、…あの、それじゃ、わ、私、行きますね…。さ、さよなら」
律儀にペコリとお辞儀までして、あさひは二人の傍から走り去って行った。
「…あ〜……、行っちゃう〜…」
「仕方ないよ、助けてくれた人なんだし…」
遠ざかるあさひの後姿を見送る二人は、がっくしと肩を落とし合う。
「今度は、罠に気をつけないと」
「なんだか無差別に仕掛けられてる感じがしますね」
――あさひの背中が、見えなくなる。それから、二人は互いの顔を見やり、微笑んだ。
「――じゃ、ゲーム再開といきますか!」
「ん、頑張るよ!」
そして、ぱんっ!――と、手を叩き合った。
【桜井あさひ 名雪・理緒両名を網罠から解放】
【名雪・理緒 あさひを見逃す】
【鬼役俊足ペア 復活】
みさき先輩のとこって、澪じゃなくて初音じゃないか?
朝食を終え、早速海へ向かおうとしていた茜たちは早々と危機に直面していた。
細く開けた窓から外を見ていた茜が、ため息混じりにつぶやいた。
「む…失敗しました。案外鬼がたくさん出てきてしまっています」
『鬼にはなりたくないの〜』
「正面から出て行っても迎え撃たれるだけですね」
『鬼は嫌なの』
「…あれ、詩子がいませんね?」
ところかわって店の裏。詩子はその機械を撫でながら口の端を不気味に歪ませていた。
「ふふっ、こんなものがあるとはね〜」
と言うや否や、座敷の方へ走り出す。
「あっかね〜!いいモノ見つけちゃった〜!」
「詩子、あまり大きな声をださないで下さい。で、いいモノとは?」
「へっへ〜、バイクよバ・イ・ク!」
「…なるほど、それはいい考えです。」
『どうしたの?』
話に乗り遅れた澪が、不思議そうに茜を見つめた。
「話は後です。早く逃げましょう」
「アイアイサ〜!」
【茜 澪 詩子 オートバイで商店街脱出】
【食料 水 三食分所持】
【バイクの燃料 残り僅か】
「どうせいっちゅーねん」
穴の中。それも典型的な落とし穴の中。
同棲(板違いの疑いをかけられること数十回)のヒロイン皆瀬まなみは放置プレイを食らっていた。
―事の起こりは数時間前―
相方のまさきと喧嘩している最中、空から女子高生が降ってきた。
幸運な事に彼女はまさきの後頭部に直撃。まさきはKO。
さすがにまなみも面食らったが、気を取り直して――
「―――逃げよ」
まさきを見捨てて逃げることにした。ピクピク痙攣しているが死にはすまい。
「…うにゅ?」
妙に挙動不審――というか、寝惚けているようだ――な女子高生を連れ、てくてく歩く。
もちろん彼女に鬼の襷をかけることも忘れない。
そしてそのまま、当てもなく夜道を歩いて
「――きゃっ!?」
落とし穴に落ちてしまった。ご丁寧にも足元にはトリモチがベッタリ。
一緒の女子高生はというと…
「にゅー?」
穴には落ちているが、まなみにおんぶされる格好になってトリモチには捕まっていない。
「…どうしよう。ちょっとあなた、助けてくれない……って」
ぎゅむ。
「ぐえっ」
「脱出だぉー」
ヒロインを踏んづけて脱出するヒロイン。
「私、陸上部の部長さんだよー。走るよー」
そのまま朝が来た。
「祟ってやる…まさきも、あの女も、この罠作った奴も…」
祈りが届いたか。数分後名雪は別の罠にかかっている。…もっとも、それすらすでに脱出しているのだが。
【まなみ 穴の中でトリモチに捕らわれつつ放置プレイ】
いい加減あたりも薄暗くなってきた森の中に少女が二人。
普通なら心細くて泣き出してしまいかねないそのシチュエーションにも
関わらず少女たちの足取りは軽かった。
というか速い。
大の男ですらこんなペースじゃ進めないといった速度だ。
茂みを掻き分け、倒木を越え、軽い沢ならぴょんぴょんぴょんと一直線。
渡りきったところで一歩前を進んでいた娘が立ち止まった。
「……ここら辺で、ちょっと休憩しましょう」
「そうね。って、疲れたー」
うひゃー、と手ごろな岩に腰掛ける。
「…大丈夫ですか、綾香さん?」
「うん、だいじょぶだいじょぶ。ちょっとくたびれただけー」
あははと返す綾香の顔にはなるほど酷い疲労は見て取れない。
軽く辺りを見渡して暫し黙考。
顔を上げて楓は言った。
「…多分、もう芹香さんの近く迄来ていると思います」
「やった!さっすが楓ちゃん、頼りになるわぁ」
「ただ…近くに千鶴姉さんも居るみたいなんです」
「えっ、姉さん捕まっちゃったのかな?」
楓、再び黙考。
綾香、ちょっと気は急くがそれを表には出さない。
普段、芹香と一緒に居るから楓みたいなタイプとの付き合い方は自然と
身についている。
「気配が……気配がさっきから動いてませんから…休憩中なのかも」
「休憩?」
こくんとうなずく楓。
「……ルミラさんたちの中立屋台が営業中ですから…姉さんたち夕食中
かも知れません」
「あ、いいなぁー。私もお腹すいちゃったし」
うんしょ、と岩から腰をあげる。
「近いんだったら私たちもそこまで行っちゃお!ご飯〜」
くすりと笑う楓、だがその眼が不意に細くなった。
「…誰か、こっちに来ます」
「えっ?あっホントだ」
音など聞こえないが確かに気配がする。
自分でもこういう感度は良い方だと思っているのだが流石に出来が違う
なぁなどと綾香が考えたその次の瞬間、前方の茂みから人が現れた。
身の丈は浩之あたりとほとんど代わらないがTシャツから覗く二の腕や
胸板は鍛えられた男のそれ。
そして、その面差しは…
「…外国の方、ですね」
楓が呟いた。
髪はダークブラウン今時街角、教室ですら珍しくもない色だが流石に青
いその瞳が彼の出自を物語っている。
「……」
男が語りかけてきた。
英語だった。
『こんばんわ。急に茂みから出てくるからびっくりしちゃったわ。
私は来栖川綾香、こちらは』
『柏木楓です…』
「・・・・・・」
『えぇ、私は小さい頃アメリカで暮らしていたから。普段から話す機会
も多いし』
『私は、あまり話せません…。ヒヤリングの方なら、少しは』
「・・・・・・」
『そうですよね。楓ちゃん発音きれいよ?』
うつむく楓、こんな事でも照れてしまうのかちょっと顔に朱が刺す。
『えっと貴方どうしたの?』
「………」
『はぁ、参加者ではなくスタッフだったんですか』
「……」
『迷ってしまって…どこに何があるのかわからなくなってしまったけど仕事をしていると』
「………」
『う〜ん流石に島の全体図まではわからないですね』
「……」
『私は姉さんを探していて…。あっ、この近くに休憩所があるんですけどご
一緒します?そこなら他の参加者にも話が聞けると思いますけど』
「………」
『え、助かります?あははっそんなのいいですよ』
だけど…なんだろう。
この人のしゃべり、誰かを髣髴とさせられるわっ!
などという綾香の思いはさて置いて、三人はその場を後にした。
という訳ですっかり暗くなった森を二人の少女と一人の青年が行く。
傍から見れば和気藹々、だがよく見ているとほとんど一人がしゃべり残る二
人が聞きに回っている。
普段、芹香と一緒に居るから、二人みたいなタイプとの付き合い方は自然と
身についている綾香であった。
【綾香と楓、ジョン・オークランドと遭遇】
【ジョン 米大統領要請の現地リポーター】
【まもなく森を抜け屋台に到着】
というわけで改訂させて頂きました
>>95申し訳ない
やあ、僕伊藤です。
また無視されてしまいました。
みんなこの僕の存在感に気付いていないんだろうか?
ちょっと落ち込んでしまいます。
そこで僕、考えました。主役狙いはあきらめよう、と。
大体あれだよね、主役とはいえ男相手に本気になっても
いい事ないもんね。どうせ狙うならカワイイ女の子の方が
百倍イイ!!(・∀・)に決まってるじゃないですか。
それが僕の愛する皐月ちゃんならなお最高なんですけどね。
と、そんな僕の前にまたとない好機が!
夜も白々と明けようとしている頃合い、灯台を通りがかったんです。
…おお! これぞ神のくれたビッグチャンス!!
女の子が四人、無防備に寝息を立ててるじゃないですか。
二人は同じピンクのセーラー服を着てる、
茶髪のショートと薄紫のロングの女子高生。
一人はメガネの赤いジャージ姿の女の子。何故か傍らにはハリセンが?
そしてもう最後の一人は、緑髪のショートでえんじ色ベスト着用。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
やっぱりこうでないと。みたところ全員、特になんか変な能力を
持ってるようには見えないし、なにより全員幸せそうに寝こけてるし。
そろそろと足音を忍ばせ彼女に近付いていく僕。
10メートル…
9メートル…
まだ僕には気付いてないみたいです。
8メートル…
7メートル…
そのカワイイ寝息がもう聞こえてきそう。
6メートル…
5メートル…
もうあと少しでタッチ出来る…
と、その時!
近くの草むらから全身黒ずくめの男達の影が、ザザッと現れて!
「!?」
「我等がちゃんさまに指一本触れさせはせん!」
「そう、我等したぼくーず、ちゃんさまを守のが使命なり!!」
叫ぶなり僕、かつぎあげられて運ばれています!
わっせ! わっせ! わっせ!
「あ、あの〜、君たちも参加者な…?」
「参加者でも管理側でもない、まあいわば
詠美ちゃんさまの特殊能力と思っていただきたい!」
「我々は歌舞伎の黒子と同様、空気のようなモノ。
存在は気にしないでいただきたい!」
「比較的通常人が多いこみパキャラに於いては、
我々の能力くらい認めていただきたい!」
「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜」
僕、伊藤。なんかさらわれちゃってます…。
「…ふみゅ? なんかいま物音がしなかった?」
「気のせいやろ。なんやまだ暗いやないか、もうひと寝入りや…」
「ふみゅ〜ん…」
【いとっぷ、したぼくーずにさらわれ中】
【詠美、由宇、志保、琴音 まだ就寝中】
…久瀬だ。
何故か、一回登場したきりもう出番がないのは気のせいか?
っというわけで、出番を求めてこっそりと相方が寝ているところを抜け出してきたわけだが
「・・・どこだ、ここは」
迷った。
「教えてあげましょうか? ついでに襷なんかも受け取ってくれると嬉しいんだけど」
ふりかえるとそこには天沢郁未が一人。
「野球というスポーツを知っていますか?」
「当たり前でしょ」
「打者は3回まで空振りを許されるものです」
「見逃せっていうの?」
・・・・・。
さらばっ!
冗談じゃないっ!
ここで捕まっては出番が更にきえてしまうではないかっ
「ちょっ、待ちなさいよ」
「待てと言われて待つ人はいない!!」
【久瀬:逃亡中】
【天沢郁未:久瀬追跡中】
【オボロ:睡眠中】
【現在、森の中】
「見事だ…… 罠に関しては俺を超えたかもしれんな…」
「ありがとうございます…師匠…」
冬弥は性格的に罠向きだった。
内面のどろどろとした部分では他の追随を許さないWAの主人公。
流石である。
「平行して教えていた、戦闘技術などは大して身に付いていないのにな」
「ハハ…死にそうでしたよこっちは。罠解除やって、師匠と戦って、妙な草食べさせられて…」
「ふ、いいよるわ」
軽い憎まれ口は信頼の証。
今ここに理想の師弟関係が成立していた。
「さて行くか」
師は弟子にいう。
「ええ」
弟子は師の言葉を理解する。
この場に留まるのは危険だった。
あたり一面、効力を失った罠罠罠…
ほとんど冬弥一人で解除したものだ。
訓練のためとはいえ、目立つこと甚だしい。
その訓練が一段落した今、移動は当然のことだろう。
「しかし、慢心してはいかんぞ。常に心を…」
「刃にのせろ…でしょ? 解ってます、決して油断しません」
「うむ、ならばよい」
【醍醐&冬弥 訓練ひとまず終了…移動】
【冬弥 トラップ解除の達人となる】
130 :
129:03/03/24 15:23 ID:XiuHf+/V
すいません
「トラップ解除の達人」じゃなく「トラップ使い」にして下さい。
冬弥と醍醐の前話読んで呆然としてしまいました…
「見事だ…… 罠に関しては俺を超えたかもしれんな…」
「ありがとうございます…師匠…」
冬弥は性格的に罠向きだった。
内面のどろどろとした部分では他の追随を許さないWAの主人公。
この短期間で流石である。
「空いた時間に教えた戦闘技術などは、ほとんど身に付く気配が無いのにな」
「ハハ…死にそうでしたよこっちは。罠解除やって、師匠と戦って、妙な草食べさせられて…」
「ふ、いいよるわ」
軽い憎まれ口は信頼の証。
今ここに理想の師弟関係が成立していた。
「さて行くか」
師は弟子にいう。
「ええ」
弟子は師の言葉を理解する。
この場に留まるのは危険だった。
あたり一面、効力を失った罠罠罠…
ほとんど冬弥一人で解除あるいは利用したものだ。
訓練のためとはいえ、目立つこと甚だしい。
その訓練が一段落した今、移動は当然のことだろう。
「しかし、慢心してはいかんぞ。常に心を…」
「刃にのせろ…でしょ? 解ってます、けして油断しません」
「うむ、ならばよい」
【醍醐&冬弥 訓練ひとまず終了…移動】
【冬弥 トラップ使いとなる】
129です…修正しました。
「わっせわっせ」
「えいほっえいほっ」
「……」
存在は気にしないでください。とか言ってる割にはヘタな参加者よ
り目だつ黒子ブラザース(自称ちゃんさまーず)二人に担がれなが
ら、いとっぷはちょっとばかり憤慨していた。
「うんしょっうんしょっ」
「どっこいせっどっこいせっ」
「………待てや貴様ら!」
「ひっ! ななななんですかいきなり!」
「黙れ黙れ! 我を誰と心得る! 恐れ多くもRoutes脇役キャラの一
人、いとっぷであるぞ! 頭が高い! こうべを垂れぃ!」
「はっ…、ははぁぁぁ……!!」
いとっぷのよくわからない覇気に圧倒されてしまい、ちゃんさまー
ずはあっけなく地に伏してしまった。
「――だいたい貴様ら何者だというのだ! よりによって立ち絵まで
もが用意されているというこの”いとっぷ”伊藤を、一枚絵どころか
キャラクターですらない魑魅魍魎的存在である貴様らが何をするとい
うか! 無礼千万厚顔無恥、八百万の神々を冒涜するにも悖るその
行為、およそ許されるべきものではないぞ!!」
「ははぁあああっ…!」
自分でも何を言ってるのかよく判ってなかったが、とりあえずいとっ
ぷはちゃんさまーずを屈服させることに成功したみたいだ。水戸黄門
を毎週欠かさず見ていたのがこんな場面で役に立つとは、正に人間
万事塞翁が馬であるな。うむ。
「……どうされましたか?」
「…っええい、いつまでそこにいる! 見苦しい、はよう退けぃ!」
「ひいいぃぃぃぃっ…」
よく判らないイベントのせいで随分寄り道を喰ってしまったが(もは
や天変地異といとっぷは割り切っていた)、気を取り直して例の婦女
子軍団を襲撃する事にする。先ほどと全く同じパターンでねぐらに近
づくことにした。
10メートル…
9メートル…
――まだ僕には気付いてないみたいです。
8メートル…
7メートル…
――そのカワイイ寝息がもう聞こえてきそう。
6メートル…
5メートル…
――もうあと少しでタッチ出来る…
4メートル…
3メートル…
――ああ、今や捕まえる光景が目に浮かぶ…
2メートル…
1メートル…
――今だっ!!
がばっ!!! いわゆる不二子ちゅわ〜ん飛び込みだ。もらった!
「……」
『あんなデカイ声出して気付かんとでも思ったか? まーせいぜいが
んばりやー 由宇』
そこには一枚の置き手紙が鎮座しているのみであった。
ピンクのセーラー服も、赤いジャージ姿の女の子も、えんじ色ベスト
も――
ユメのゆめ、ユメ。
「…てぃくひょう……」
一人泣き濡れるいとっぷ。
アヒルは所詮、アヒルでしかないのだろうか。
【いとっぷ 自業自得】
【ちゃんさまーず 霧散する】
【詠美、由宇、志保、琴音 場所変えて就寝】
>>132-134 現在、感想掲示板にて「したぼくーず」の是非について審議中です。
伊藤と詠美グループの話の続きは待ったほうがいいと思います。
スマソ
吊ってきます。
「わっせわっせ」
「えいほっえいほっ」
「……」
存在は気にしないでください。とか言ってる割にはヘタな参加者よ
り目だつ黒子ブラザース(自称したぼくーず)二人に担がれながら、
いとっぷはちょっとばかり憤慨していた。
「うんしょっうんしょっ」
「どっこいせっどっこいせっ」
「………待てや貴様ら!」
「ひっ! ななななんですかいきなり!」
「黙れ黙れ! 我を誰と心得る! 恐れ多くもRoutes脇役キャラの一
人、いとっぷであるぞ! 頭が高い! こうべを垂れぃ!」
「はっ…、ははぁぁぁ……!!」
いとっぷのよくわからない覇気に圧倒されてしまい、自称したぼくー
ずの二人はあっけなく地に伏してしまった。
「――だいたい貴様ら何者だというのだ! よりによって立ち絵まで
もが用意されているというこの”いとっぷ”伊藤を、一枚絵どころか
キャラクターですらない魑魅魍魎的存在である貴様らが何をするとい
うか! 無礼千万厚顔無恥、八百万の神々を冒涜するにも悖るその
行為、およそ許されるべきものではないぞ!!」
「ははぁあああっ…!」
自分でも何を言ってるのかよく判ってなかったが、とりあえずいとっ
ぷはしたぼくーずを屈服させることに成功したみたいだ。水戸黄門
を毎週欠かさず見ていたのがこんな場面で役に立つとは、正に人間
万事塞翁が馬であるな。うむ。
「……どうされましたか?」
「…っええい、いつまでそこにいる! 見苦しい、はよう退けぃ!」
「ひいいぃぃぃぃっ…」
よく判らないイベントのせいで随分寄り道を喰ってしまったが(もは
や天変地異といとっぷは割り切っていた)、気を取り直して例の婦女
子軍団を襲撃する事にする。先ほどと全く同じパターンでねぐらに近
づく。
10メートル…
9メートル…
――まだ僕には気付いてないみたいです。
8メートル…
7メートル…
――そのカワイイ寝息がもう聞こえてきそう。
6メートル…
5メートル…
――もうあと少しでタッチ出来る…
4メートル…
3メートル…
――ああ、今や捕まえる光景が目に浮かぶ…
2メートル…
1メートル…
――今だっ!!
がばっ!!! いわゆる不二子ちゅわ〜ん飛び込みだ。もらった!
「………………あれ?」
そこには、一枚の置き手紙が鎮座しているのみであった。
『あんなデカイ声出して気付かんとでも思ったか? まーせいぜいが
んばりやー 由宇』
ピンクのセーラー服も、赤いジャージ姿の女の子も、えんじ色ベスト
も――
ユメのまた、ユメ。
「…てぃくひょう……」
申し訳程度に置いてあったかにかまぼこをかじりながら、いとっぷは
一人泣き濡れた。
アヒルは所詮、アヒルでしかないのだろうか。
【いとっぷ 自業自得】
【したぼくーず 霧散する】
【詠美、由宇、志保、琴音 場所変えて就寝】
「痛い痛い痛い!」
「何するんですか!」
「この島は招待者以外立ち入り禁止ですから♪」
ばたばたばたばた…。
迎えのヘリコプターにしたぼくーずをムリヤリ押し込みながら、千鶴
は妙に嬉しそうな顔をしてそう言ったという。
【したぼくーず 強制送還】
市街地カレー屋にて
「カレーに罠仕掛けるなんて極悪人だよ」
「街に着いて早々これかい…。勢い良く飛び出したと思ったら…」
「わあぁっ、大変っ! みさきお姉ちゃん大丈夫っ!?」
【みさき 街に到着早々北川の罠にハマる】
【智子 初音 みさきの救助開始】
【罠のタイプ 超激辛カレー→水飲み場に捕獲網トラップ】
「もう少しの辛抱や、川名さん…。ここを解けば…――解けた」
「うう〜っ、御免ね、智ちゃん…」
水飲み場の網トラップから解放されたみさきを、初音が支えて立たせてやる。
「超激辛カレーで一度引っ掛けといて、その後駆け付けるであろう水道の所に本命――二重トラップとは、
やってくれるやないか…」
静かな声で呟く智子。その背中を見ていた初音は、ゾクリとする物を感じて慄然とした。
「……智子さん、怒った?」
「――めちゃ怒っとる」
「うえぇ〜、怒らないで欲しいよ、御免なさいだよ智ちゃん〜っ」
「川名さんに怒っとるんとちゃう。こんな罠考えて仕掛けた奴にや」
振り向いた智子の表情は、酷く冷たい物となっていた。それだけに、彼女の抱いている怒りが激しいという事であろう。
何よりその双眸が、正視するのも恐ろしい程に鋭くなっている。
――それこそ、“ゴゴゴゴゴ…!”という効果音さえ聞こえそうな位に。
「食べ物を見せ付けて罠張るんは構へん。只な、食べ物自体を罠にするんが気に食わんのよ。
こんなんされたら、この先で食べ物見つけても疑心暗鬼に囚われてしまうやないか」
「智ちゃん、いいんだよ。引っ掛かった私が悪いんだし…」
「川名さんがどう思おうと、私の気は治まらへんよ。仕掛けた奴見つけたら、二つ三つシメたるわ」
シメる――というより、殺ス目になっている智子に、二人は何も言い返せなかった。
「――ま、今はええ。鬼が来る前に、ここから逃げよか。これ見る限り、街は罠だらけやろ」
「う、うん。でも、食べ物探さないと…。まだちょっとしか見つけてないよ?」
「それだけ見つけたら充分。こんな場所、長居は無用や」
「…御免ね、二人とも。私が街に行こうなんて言ったから…」
「…もうええって、川名さん。結局それで酷い目におうたんは、川名さん自身やしな」
「うん…。…えへへっ、私ったら、ウ・カ・ツ・♪」
「ほんまやで、この食いしん坊さんが」
ふ……と笑って、智子はみさきのおでこを指で軽く突付く。――智子に笑顔が戻り、他の二人も笑い合った。
みさきが、『超激辛カレー⇒水飲み場直行⇒その場に捕獲網』というコンボトラップに引っ掛かったものの、食料は
今日一日分位は確保出来ていた。それで充分と判断した三人は、罠だらけの街から早々に退去する事にした。
「…でも、智子さんがあんなに怒るなんて……ちょっと意外」
「――こう見えても結構情熱派やねん。友達が酷い目おうたら、黙っとく事なんて出来へんわ」
「をお〜っ、智ちゃんカッコイイ〜っ♪」
頼もしげに目を煌かせる初音とはしゃぐみさきに、智子が、はっ…として頬を赤らめる。
「もっ、もうええやろっ…! ……ったく、口が滑ってもうたわ…。
――…向こうは鬼が結構うろついとる様やな…。こっちの方から抜けよか」
「オッケー、隊長♪ どこまでも着いて行くでありまする〜」
「それも、もうええねん…!」
「……ところで智子さん。罠を張った人を見つけたら、どうするつもりなの?」
「…………………………………………………………………取り敢えず、頭でもカチ割っとく」
目付きも声音も至って冷静な所が、ひたすらに怖い。みさきと初音は、苦笑しあうしかなかった…
【智子・みさき・初音チーム トラップに引っ掛かるも、何とか食料一日分を確保】
【みさき、迂闊な自分に反省】
【速やかに街を脱出】【島の北側へ進路を取る】
「…同士住井よ。今、何となく寒気の様な物を感じたのだが」
「ふむ。同士北川、お前もか」
「…………武者震いだな」
「――ん、武者震いだ。きっとそうだ」
「そうだな。ははははは…!」
「ははははは…!」
「よーし、張り切っちゃうぞー♪」
「おっ? こっちだって負けないぞーっ♪」
【北川・住井コンビ 智子に頭をカチ割られる……かも?(笑)】
したぼくーずをしまっちゃうおじさんよろしくヘリコプターにしまっちゃってか
ら数える事1時間。朝の木漏れ日の下で、ちーちゃんこと柏木千鶴は少々
悩んでいた。体中酒臭い事と頭が痛い事ではない。体調はむしろ快調だっ
た。会長なだけに。
「罠……があって然るべきよね。やっぱり」
千鶴の5メートルほど目の前に、木に背中を預けながら堂々と眠っている
リサ・ヴィクセンの姿がある。辺り一面に広がる木々によって多少視界が遮
られているものの、身を隠すにはあまりにも不十分。せいぜい移動する時
にちょっと邪魔になるくらいにしかならない。
「大胆ね」
このゲーム、相手の身体に直接触れなくては鬼とカウントされない。逆に
言えば、いくら鬼に発見されようとも身体に触らなければ良いのだ。この場
合で言えば、自分を中心に鳴子でも仕掛けてしまえば良い。見つかったら
速攻で逃げればいいのだから。無論、リサの超人的運動能力があって初
めて有効な作戦なのだが。
「どうしましょうか」
しばらく考えた後。千鶴は思い切って正面突破を試みた。参加者名簿を
参照した限りでは特殊能力の類いは無いらしかったが、流石の千鶴もホン
モノのプロを相手にするのは初めてだ。腕が鳴る。
からん。
「やっぱり…!」
四方八方で木のぶつかる音がなりまくる。千鶴は臨戦体勢をとった。
「……あれ?」
目の前の女性は微動だにしない。何事もなかったかのように眠りつづけ
ている。千鶴はちょっと力抜けしたが、すぐさま他のトラップの可能性を考え
て態勢を維持する。
「……」
が、やはり何もない。相手は現役エージェントということで、千鶴はパンジ
ステークやらスパイクボールやらが仕掛けられていると想像していたが、よ
くよく考えてみればんなもん仕掛けでもすれば即失格だ。千鶴はちょっと残
念だった。微妙に間違った知識だったのには気付いてない。ヴェトコンはベ
トナムの兵隊である。
「――気を取り直して」
先ほどよりも大胆に近づく。いろんな意味で鬼の千鶴にとって、一般人で
すら致命傷に至らしめないようなトラップなど豆鉄砲に等しい。千鶴はリサ
の挙動にのみ集中力を傾け、細心の注意を払いながら生ゴミを触る手つき
で手を伸ばした。
その刹那、リサの表情が笑みを浮かべた。
「やっぱり気付いてた…!!」
そういう暇もなく――リサは、後ろの大木に右手を引っ掛け、斜め後方に
跳んだ。千鶴の太腿数センチ前を右の踵がかすめる。
「See you later」
だが、ただ眺めているだけの千鶴ではない。一瞬遅れてからその方向に
向かって跳躍した。
「そうはいきますか」
経験とパワーのぶつかり合い、高速鬼ごっこの開幕だ。
【千鶴 二日酔いを押して全力疾走で追う】
【リサ 逃げる】
【身体能力は鬼の千鶴が数段上】
146 :
腐りD:03/03/24 21:54 ID:3hdFLPK6
「……おい」
「あ、れみぃおねいちゃん。まいか、ねぎきらいだからとって」
「モウ、ダメだヨまいかちゃん。好き嫌い言ってたら大きくなれないよ?」
「……ちょっと待て」
「だって、きらいなんだもん。……えいっ!」
「ああっ、Dの分に入れちゃダメだよ!」
「……お前たち」
「ところででぃーは、さっきからなにをむつかしいかおしてるの?」
「ウン、早く食べないと冷めちゃうヨ?」
「……待てと言ってるだろぅがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「わっ、びっくり」
ここはD一家が暮らしている洞穴内。
なぜかちゃぶ台やらお茶碗やらと言った食器類が用意され、台の上には炊きたての白米、湯気をあげるみそ汁、漬け物……といった純和風のメニューが並べられている。
とりあえずDには珍しい物ばかりであったが、食べれないこともない。意外にレミィは料理の腕が結構よかった。
……ただ一つ。
「何だこの豆は? 思いっきり腐っているではないか!」
「なぁにでぃー? なっとうもしらないの?」
「これは腐ってるんじゃないよ。『ハッコウ』させてあるんだよ」
「同じことだ。思いっきり腐臭がただよってるぞ!」
鼻をつまみながらディーが叫ぶ。確かに、洞穴内には納豆の生活じみたあの臭いが充満している。
「……そんなにきになるかなぁ?」
「そんなこと言わずに食べてみてよ。結構美味しいよ!」
と言いながら、まいかとレミィはちゃっちゃと混ぜた納豆をご飯にかけ、ずるずると食べている。
「む……が……っ……。おのれ……なぜ小さき者に崇められうたわれる我がこんな物を食べなければ……」
Dも渋々、鼻をつまみながら同じようにしてみた。ずるずるずる……。
「……あ、美味い」
「そういえばまいかちゃん、まいかちゃんは1人でこのゲームに参加したの?」
ポリポリと漬け物を囓りながら、やおらレミィがまいかに問いかける。
「んーん、まいか、おねぇちゃんといっしょにきたの」
「お姉ちゃんだと? ……何歳くらいだ? おっぱいは大きいのか?」
「氏ねよディー。……まいか、おねぇちゃんといっしょにみすずおねえちゃんとここにきたの。さいしょはおねぇちゃんといっしょにいたんだけど、とちゅうではぐれちゃったの。
……おねぇちゃん、やみあがりさんだから……まいか、しんぱい」
「ソウ……」
レミィが心底同情したような視線をまいかに送る。
「まいかちゃんのお姉ちゃん……1人で大丈夫なの?」
「うん。まいかがまいにちまいにちじんじゃにおねがいしにいってたから、だんだんよくなってきてる。それに、すたーとするまえにへんなぼたんもらったから」
「神社にお祈りか……愚かなことを。祈るのならばウィツァルネミテアに祈れ」
「ボタン? それナニ?」
「うん。ほかのひとのなかにもびょうきのひとがいるみたいで、そういうひとにはみんなくばられたみたい。あぶないとき、それをおせばかかりのひとがすぐにきてくれるんだって」
「ソウ……それなら安心だネ!」
ぱあっとレミィの表情が明るくなる。
「……けど、まいかちゃん……。やっぱりお姉ちゃんと会いたい?」
と思ったらまた怪訝に眉をひそませた。
「……無視された……」
一方Dの表情は暗い。おそらく突っ込まれたかったのだろう。
「うん……おねえちゃんさみしがりやだから、きっとまいかがいなくなってないちゃってるとおもう。それに、でぃーみたいなへんたいにつかまっちゃったら……きゃあん」
「オイコラ、待て」
「ふーん……まいかちゃん、おねえちゃんのお名前はなんていうの?」
「さいかだよ。しのさいか」
「ウンわかった! それじゃ、さいかちゃんをお姉さん"たち"が探してあげるヨ!」
「え……ほんと!?」
がたんっ、と勢いよく立ち上がるまいか。
「ウン! どうせこれからはHuntingしに歩き回るんだから、さいかちゃんも一緒に探せば一石二鳥だよ! そうだよね? D!」
「……好きにしろ……」
(どうせ私は今見捨てられたらのたれ死にしかねない……)
ずるずると納豆をすすりながら呟くD。悲しい神様の姿だ。
「えー? でぃーもいっしょー?」
「……なんだその不服そうな『えー?』は。私は汝らに崇められうたわれ(以下略)」
「ウン! よし決定! 善は急げ! ご飯食べたらさっそく出発するヨ! ささ、Dもまいかちゃんも、早く食べて食べて!」
「……はーい!」
「はいはい……」
対照的な返事であった。
【D一家 食事中】
【この後は他参加者狩り&さいか探し】
【D 納豆を食べる】
…どいつもこいつも姉妹兄弟親子に従兄弟、揃いも揃ってはぐれおって!
ここは一家離散アイランドかw
だがそれがいい。違うかな?
扉の向こうから、突っ込む様な声、ボヤく様な声、はしゃぐ様な声が、リズミカルな旋律の如く聞こえて来る。
岡田軍団三人娘が、シャワー室をご利用中であるのだ。
…食べ物は発見出来なかったが、スポーツ施設らしき建物の奥に使用可能なシャワー室を見つけ、
早速利用しているという次第であった。――そして、シャワー室へと続く扉の前には見張り役として、
白一点(?)の雅史がいる。
雅史は見張りをしながら、転がっていたサッカーボールを足で弄んでいた。…静止状態から、ぽんっと上へ
すくい上げ、リフティングを始める。数十回、その場から動く事無く繰り返し、最後に、頭の上へちょこんと乗せる。
――澱み無い動き。見事な物だ。
普段は“ぽややん”系で、“人畜無害のいい人”と見做されている雅史だが、サッカーの試合等でフィールドに立つ彼は、
なかなかどうして、鋭くも熱い人間であったりする。
――と、
「……………」
頭にボールを乗せたまま、周囲に視線を巡らせる。聴覚も、同じ以上に鋭く。
「――…ん。人の気配無し…と」
人好さげな笑みを浮かべ、再びリフティング開始。
…サッカーは、体力だけで出来るスポーツでは無いという(無論、サッカーに限らずそうであろうが)。
終始変動するフィールド上の敵味方の位置。動き。それらを見て、聴き、把握し、予測し、判断する。その為、
頭や勘の鈍い者には、名選手になれる資格が無い――…と言ってしまうのは、些か乱暴であるだろうか。
雅史は、文武両道を行く人物と言えるであろう。学業成績は良いし、親友の浩之に言われて始めたサッカーでは、
最早皆まで言う必要も無い。
……だのに、何故に普段あーも“ぽややん”なのか、誰か教えて欲しい物である…
――例えば浩之であればここで、見張りなどそっちのけで三人娘のシャワーシーンを覗きに掛かっているであろう。
「据え膳!」とか「鬼の気配が!」などど言いながら。委員長絡みの事など事象の彼方へ吹っ飛ばして。
だが、雅史はそれをしない(イケナイ事なので当然と言えば当然だが)。
彼も若い男性だ。女性に対する欲求も、当然の事ながら有る。
…だが、やはり、しない。
何と言うか、残念だ…。何故なら、三人娘のシャワーシーンという、ある意味非常にレアな――
「佐藤君、上がったよ〜♪」
「見張りご苦労! 激しく感謝するわ」
「今度は私達が見張るから、佐藤君どうぞ」
三人娘が、シャワー室から出て来る。雅史は彼女達に、にっこり笑って見せた。
「うん。出来るだけ早く済ませるから」
主人公級の能力を持ちながら、いい奴過ぎて主役にはなりきれず、見る者を時にヤキモキさせる男。
――それが、佐藤雅史という男なのだろう。
…きっと。
【岡田・吉井・松本 雅史 街のスポーツ施設でシャワー室発見 これを利用】
【食料は未だ発見出来ず…】
【雅史、サッカーボール一個入手】
>>153 なるほど・・・まったく気付かんかったYO
ウルトリィ曰く、彼は本来
「優しくて明るく、何処となく無邪気な性格」
だったそうだ。
まあうたわれ本編ではウィツさんに憑りつかれてるのだがな。
舞台は夜。アヴ・カムゥなるデカブツを脇に置いて、皆の衆はおでんなど
つついていた。
「ん、んまいなこれ」
「そうでしょー。なんせ死ぬほど昆布を投入してるからね」
「おいひいでふねぇ〜ひゃふやひゃま〜」
「あーもーサクヤ! 食べ物を口にしながらしゃべるな!」
「ふびばへ〜ん〜ひゃふやひゃま〜。あんまりおひひぃものふぇふふぁら」
「……おいしい」
「やっほー」
「あれ、綾香じゃんか。楓ちゃんまで」
「…こんばんは」
二名追加。
「あ、姉さん。無事だったのね。心配したのよ〜」
「……(こくり)」
「なーに水くさいこと言ってるのよーもー」
「浩之さん、千鶴姉さんを見ませんでしたか?」
「千鶴さん? 俺達が来た時にはいなかったけど」
「――あー。そういや楓ちゃん。千鶴さんね、何か用事があるとかでつい
さっきどこかいっちゃった。ちょーど浩之くんたちが来る10分くらい前なんだ
けどね」
「そうですか…」
「まーとにかく座って頂戴。ちょっと狭いけどがまんしてね。何にする?」
「ラーメン大盛でお願い」
「てんぷら定食、ありますか?」
「ふっふっふ、きみ達は運がいいねぇ。このショップ屋ねーちゃんの屋台で
揃わないものは何も無いのよ? ちょっとまってなさい――でもビックリした
のなんの。千鶴さん、もうすぐ楓ちゃんたちが来るからって言ってたからさ。
下ごしらえしといて良かったー」
こんな感じで、晩餐会は盛り上がっていったとさ。
「……」
『……』
「……」
『……』
「……ひろゆきさぁーん! どーすればいいんですかー!?」
一部を除いて。
【綾香・楓 屋台到着】
【千鶴 移動。浩之たちとは逢っていない】
【時間 夜(一日目)】
159 :
独り言:03/03/24 23:39 ID:2og3T4UB
「happy birthday to me ・・・」
「どうしたの浩平?」
「いや、なんとなく」
「・・・?」
「浩平殿〜森の近くに屋台がありましたぞ」
「早くいこうよ〜」
「浩平」
「うむ、何故か解らんが足の腫れも引いたしいくとするか」
(スフィーさんがやってくれたんだ・・・)
【浩平、足回復】
【一同、屋台へ】
【時間は二日目の朝】
「……影が薄いって訳じゃ無いと思うんだけどな、僕…」
朝ぼらけの森の中、そんな事をボヤく人影が一つ。
初日、森の中へ単独で“潜行”した、電波使いこと長瀬祐介である。
「なんて言うかな…、“決め手”に今一つ欠ける印象があるのかな? 派手では無いっていう自覚はあるけど…」
祐介は、そう自分で語る通り、派手に動く事は無かった。隠れ易き場所に隠れ、潜み易き場所に潜み、静かに、
影の様に、森の中に潜伏していた。――その間、鬼役の姿を何度か目撃している。
「…森の中をえらい勢いで走る人に、木の枝から枝へ跳び回る人…。挙句には空を飛んでる人…――そんな中じゃ、
影が薄くなるのも仕方ないかなぁ…」
またボヤく。
「そんな事ないよ」
「……っ!? ――…その声は、沙織ちゃん?」
「…当たり」
――が、声はすれども、姿は見えず。
「沙織ちゃん…?」
「…祐くん、私ね、あれから酷い目にあったんだよ…」
いつも元気丸出しであるはずの沙織の、沈んだ声。――その声に肩を震わせ、祐介はゆっくりと立ち上がった。
「……沙織…ちゃん?」
「いきなり問答無用で唐辛子のジェット噴射アタック掛けられて、息が出来なくてのた打ち回ってる所へ、
頭踏んづけられて……苦しかったよ。…痛かったよ。……怖かったよ」
「………」
森の朝の空気は、ややもすると肌に冷たい。だのに、祐介の額には汗が浮かび、その頬を雫が一筋――流れ落ちた。
「私ね、祐くんを呼んだんだよ。助けて!……って。――でも、祐くんは来なかった…」
「………ゴクッ…」
沙織の声音から只ならぬ気配を感じ取り、祐介の喉が鳴った。視線が、顔が、不安げに辺りを見回す。
「だからね…――」
ガササッ…!――
沙織が、祐介の立つすぐ傍にある茂みの中から、にょきっと顔を覗かせた。それ迄の声音とは異なる、楽しげな笑みで。
「――私が迎えに来ちゃった♪」
そう言って微笑む彼女の体には―――あの、鬼の襷が掛けられていた。
「それであなたがジョンさん?」
ショップ屋のねーちゃんは綾香と楓についてきた男に話し掛けた
『…………』
「はいはい、事情は聞いてるわ」
『…………』
「うーん千鶴さんもまたここにくるでしょうからその時までココにいたらいいんじゃない?
参加者たちにインタビューとかもできるし」
『…………』
「はい、じゃそういうことで。何食べる?」
【ジョン 千鶴が戻ってくるまでショップ屋で待機】
早朝――まだ薄暗い森の中を、二つの影が走る。――逃げる獲物・祐介に、それを追う鬼・沙織。
「待って祐くん! 逃がさないよっ!」
「わああぁっ!?」
「バレー部で培った体力を嘗めちゃ駄目だよ! 祐くんと私じゃ、体力はこっちの方があるんだから!」
「こんなっ、こんな序盤で鬼役になっちゃうなんて…! それだけは勘弁…っ!!」
「私だって、あんな最初の方でいきなり鬼になるなんて思ってなかったもん! しかも唐辛子ぶっかけられて
頭ムギュだよ!? 祐くんも、むぎゅっと鬼になってしまいなさいっ!」
「む…、むぎゅ…?」
「そう! むぎゅっと!」
「………」
「………(赤)」
「……えーっと…」
「待ぁてぇーーーっ!!」
「わわわっ!? 加速しないでよ沙織ちゃん!」
やはり体力勝負では、祐介に勝ち目は無い様だ。後ろから追って来る沙織との差が、どんどん縮み始めている。
「っ…! ダメだっ! このままじゃ…――んっ!?」
祐介の目が、走る先に何かを捉えた。――野兎だ。
「これだっ…!」
思いつくや否や、祐介は野兎を見据え、集中。電波を放つ。ぴくっ…と、野兎の小さな体が一瞬だけ震えた。
「――跳べっ!」
別に掛け声はいらなかったのだが、勢いで祐介は叫んでいた。
その声に応じる様に野兎が大きく跳躍し――
「にょわあああーーーーーっ!!?」
沙織の顔面に直撃!
――沙織は、何となくキャラ違いな悲鳴を上げ、野兎を顔に貼り付けたまま森の中に沈んだ。
背中越しに沙織の悲鳴を聞きながら、祐介は暫く走り続けた…
「………?」
…だが、沙織が起き上がって来る気配が無い。
祐介は走る脚を止め、肩で息をしつつ振り返る――
ガサァっ!!――
振り返った目の前にある茂みが揺れ、すぽーん!とばかりに沙織が飛び出して来た。
その頭にはあの野兎が乗っかっており、何となく誇らしげにウサ耳をおっ立てていたりした。
「ウサ耳嘗めるな!!」
「うわわわぁぁぁーーーーーっ!!!??」
――そして、再び始まる追跡劇。
鬼ごっこ二日目である今日は、まだ始まったばかりだ…――
【祐介 森の中で鬼となった沙織に見つかる】
【早朝の追跡劇開始】
【祐介………どピンチ】
さおりん×祐介
ほのぼのとしてていいなぁ
青々と生い茂る木の葉たち。
そのわずかな隙間から、朝日がさんさんと降り注ぐ。
葉の間を抜けた光は、何千本もの光の矢となって少年の網膜に飛び込んできた。
「ん…朝…か?」
相沢祐一は、木の根元で目を覚ました。
あの後、郁未の尊い(?)犠牲でなんとか逃げのびた祐一。
その後は慎重に行動し、なんとか一日目は鬼に捕まらずに済んだ。
寝心地は最悪だったが、木の根元で夜を明かす事が出来た。
彼が高所恐怖症じゃなかったら、彼の従兄妹のように木の上で寝れたのかもしれないが。
うん、と一伸びすると、固まっていた筋肉がほぐれていく。
名雪のおかげで最近は割と朝に強い相沢祐一。朝の活動開始である。
バシャバシャ…
近くの川で顔を洗い、口をすすぐ。
川の水は澄んでいて、冷たかった。
わずかに残っていた眠気も今は完全に吹き飛んでしまった。
そして、朝食。
「…ん、美味い」
祐一は、昨夜は屋台には辿り着けなかった。夜の間はほとんど動き回らなかったからである。
そのかわり、昨夜のうちに慎重に食糧を捜した結果、野いちごと山葡萄を発見した。
とりあえずそれを大量に確保し、夕食と朝食に充てていた。
「…しかし、できれば米や肉が食いたいな…」
それでも、やはり彼のような食べ盛りの少年にしてみれば、物足りないものではあったが。
「とりあえず、今日はどうやって逃げるか…」
これからの行動を考えていた、それと時刻を同じくして…
「さーて、そろそろ本命の出番ね」
地下道から出てきた由美子はなんの根拠も無いことを呟く。
その手にあるは分厚い封筒。
実は五十万円分の鬼ごっこ券が入っている。
鬼ごっこ券とは、まあ鬼ごっこの間だけ使えるお金のことらしい。
これを、地下道での冒険の末手に入れたわけである。
「くうー、辛かったわ。
宝箱の前でぶちスライムが出てきたときは、ホントどうしようかと思ったわね…
幸い聖水持ってたからどうにかなったけど」
封筒を握り締めながらしみじみする。
「まあ報酬は十分なものだったし、良しとしましょう」
しかしすぐに気を取りなおした。
なんせ五十万である。
大学生の身分では相当の大金だ。
気分が良いいのも当然だろう。
「…それにしてもお腹減ったわね。
とりあえず屋台屋台…」
冒険での疲労、そして空腹を感じていた由美子はとりあえず屋台を探すことにした。
【由美子 壮大な冒険の末、五十万円分の鬼ごっこ券を入手→屋台を探す】
168 :
狩人:03/03/25 00:05 ID:bJiCvHDB
「……む」
老いたる武人、二人。
一人の鬼と行き会った。
目を伏せ、小声でぶつぶつ言いながら、ふらつきながら歩いている。
夜を徹してさまよっていたのか、目の下にはくまができ、
疲れ切っているのか、足取りは頼りなく、おぼつかない。
「ずいぶんと頼りない鬼であるな」
ニウェが言い、その声に反応して、鬼が顔を上げる。
「君たち……ルリコを見なかったかい?」
「ルリコ?」
見かけを教えてもらっても、ここまで誰とも出会っていない二人が知るはずはない。
月島拓也は、小さくそうかと答えて、その場を去ろうとする。
「待て」
ニウェが月島を呼び止める。
「なんだよ……君たちに用はない」
「おぬし、鬼であろう? ならばなぜ、我らを捨て置く」
「僕が探しているのは瑠璃子だけ……ルリコ……どこへ行ったんだルリコ……」
ふむ、とニウェが頷く。ゲンジマルは
「なんのつもりじゃ」
と問うが、ニウェは無視して
「わしに触れ」
と、月島に言う。
「なんでだい?」
「逃げるのには飽きた。やはり、わしには狩りが似合う。運悪くこれまで鬼と行き会えなんだが。
わしに触ってゆけ」
「いやだな……鬼を増やすのはいやだ」
「なぜ」
「瑠璃子が他の鬼に捕まるなんて……想像するだけで吐き気がするよ」
この男、相当に狂っているようだな。ニウェはそう思い、言う。
169 :
狩人:03/03/25 00:05 ID:bJiCvHDB
「わしはおぬしの探し人の居場所を知っておる」
「ニウェ!」
「なんだって!?」
ゲンジマルと月島、二人の叫びが同時に響く。
「どこにいる、どこで見た瑠璃子を!」
「教えて欲しければわしに触れろ」
「ああいいとも!」
「待て!」
ゲンジマルの制止など、すでに耳に入っていない。
ニウェにタッチし、笑うニウェの指さした方角へ、駆けていく月島。
「わしは狩人よ。生きのいい獲物を狩ることこそ、わしの生き甲斐」
ゲンジマルの方を向くニウェ。
「ゲンジマルよ、エヴェングルガ族の力、見せてみよ」
そのときすでに、エヴェングルガの戦士は駆け出している。
「クカカカカ! 良いぞ! そうよ、逃げるがいい!
それを追いつめることこそ我が楽しみ!」
呵々大笑し、逃げる男を追い始めた。
【ゲンジマル逃走、ニウェ追撃】
【月島兄、森の奥深くへ迷走していく。かなり疲れている】
【時間は早朝】
「うう…腹が減ったぞ。だれぞおらぬか?」
神奈が誰もいない空に向かって独り言を言いながら、ふらふらと飛んでいた。
長時間飛び続けるのは意外と体力を消耗する。
しかも、夜の闇もあってカミュ達を見失ってしまい、失意のまま夜を明かしていたのである。
今までは食糧の確保は柳也と裏葉に任せていたために、その2人とはぐれてしまった神奈は
何も食べられないまま、朝を迎えてしまったのである。
「…寂しい…ひもじい…ううっ、もうこんなのは嫌じゃ…
柳也どのぉ…裏葉…」
泣きそうになりながら、そばにいて欲しい二人を捜してふらふらと飛び続けていた。
だが、それも限界だった。
ふっ、と意識が遠くなり、神奈の体は地上へと―――
ガサガサガサッ!
「な、何だ!?」
祐一は付近で起きた大きな音に驚き、周囲を見渡した。
見ると、付近の木の枝に人がひっかかっていた。
そう、空腹のあまり空から落ちてきた神奈であった。
幸いにも枝に引っかかり、生い茂る葉が衝撃を和らげてくれたおかげで、
神奈の体にはほとんど傷はついていない。
「…あゆと同じくらいか?…って、あゆは俺と同い年だっちゅーの。
…結構可愛いとは思うけど…なんで羽根が生えてんだ?」
その少女をしげしげと観察する祐一。
…と、神奈の装束の上から掛けられた鬼のタスキが目に入った。
「……見なかったことにしよう」
美少女は歓迎だが、鬼なら話は別である。
祐一は必殺「見ないフリ作戦」を使い、
何事もなかったかのようにそこから離れようとした。
「…待たぬかそこの男!何事も無かったかのように行くでない!余を下ろさぬか―――!」
しかし、祐一の存在に気付いた神奈が、必死で呼び止めようとする。
「悪いが、俺はまだ鬼になりたくないんだ」
「ええい、薄情な奴め!…いいから余を助けぬか!誓ってお主が助ける間はお主に触れぬと誓う!」
どうやら1人では降りられないようだ。必死でもがきながら助けを求める。
元々困ってる女の子をほっておけない祐一。(男は自分でなんとかしろ)
さすがに気の毒になってきたのか、神奈に手を出さないように念を押したのち、手ごろな木の枝で
ひっかかっている神奈の装束を持ち上げて外してやった。
その際、地上2メートルくらいの地点から神奈はまっ逆さまに落ちてしまったが、
そこはなんとか両手で受け止めた。
「…ふう、助かったぞ。すまぬの」
「いやいや。それより、約束だ。今お前が俺に触れたら俺は鬼になってしまうんだ。
間違っても俺に触れるなよ」
「もちろんじゃ。余の誇りにかけても約束は守る。…ところで、いつまで余を抱きかかえておる?」
「…いや、もう少し。これくらいの役得はあってもいいかなぁ…と」
「…ええい、この益体無し!しかもどこを触っておる!」
「こ、こら暴れるな!そして手を振り回すな!鬼になるだろ!」
慌てて神奈を下ろす祐一。
ようやく神奈も地上に降り立つことが出来た。
「…助けてもらったことには礼を言うぞ。余は翼人・神奈備命。神奈でよい」
「俺は相沢祐一だ。祐一でいい。…しかし神奈。お前、空から降ってきたし、その翼…
お前、飛べるのか」
「うむ。もっとも、油断して鬼になってしまったがのう。祐一どのはまだ鬼にはなってないようだの」
「ああ」
「…助けてもらったことは礼を言ったが、これからは勝負じゃ。すまぬが、余は今から
おぬしを捕まえるぞ」
「…やっぱりそう来たか。ま、お前も自由になったし、ゲームである以上文句は言えないな」
口では冷静だが、内心はやや不利を感じていた祐一だった。
なにしろ向こうには翼がある。飛びにくい森の中とはいえ、逃げ切れる保障は無い。
「いさぎよい男よの。では…」
参る、と言おうとした瞬間、2人にとって予期せぬ音が鳴り響いた。
ぐぅ〜〜〜。
とたんに顔を真っ赤にして、へなへなと崩れ落ちる神奈。
「…忘れておった…余は空腹のあまり空から落ちてしまったのだ…」
「………」
その様子に、祐一も一気に脱力してしまった。
「…神奈。少しでよければ、食い物はあるぞ?」
その言葉に、神奈が即座に反応する。
「まことか!?」
「ああ。…ただし、いったん休戦だ。俺はこれから逃げる。
逃げる前にお前に食糧分けてやるから、俺を追いかけるのはそれを食ってからにしてくれ。
その条件を飲むんだったら、食糧を分けてやる」
神奈には、その条件を呑むしかなかった。
「よい!何でも約束する!本当なら鬼の余が頼める立場ではないが…分けてたも」
素直な上目遣いで祐一を見上げる神奈の姿にちょっと照れつつも、
祐一は残った野いちごと山葡萄のうち半分を葉っぱの上に乗せて地面に置いた。
それを見て、神奈の口からよだれが溢れる。
「…それじゃあ、神奈。俺は逃げる」
「うむ、分かった。余はこれを食べ終わったらお主を追いかけてもよいのじゃな?」
「ああ」
「祐一どの。お主のような正々堂々とした男に会うのは久しぶりじゃ。
…その、お主と会えてよかったぞ」
「…そうだな。できれば神奈が鬼じゃないときに会いたかったな」
お互い、クスッと思わず笑ってしまう。
「それじゃあな」
「うむ。縁があったらまた会おうぞ」
「俺はなるべくなら会わないにこしたことはないけどな」
そうして、祐一はその場から離れた。
3分後。
凄い勢いで食糧を食べ尽くした神奈。立ち上がると祐一が立ち去った方角を見つめる。
「…では行くか。祐一どの。悪く思うでないぞ」
【時刻は早朝。祐一&神奈、朝食を済ませる。祐一、食糧1食分所持】
【神奈、祐一が逃げ出してから3分後に祐一の後を追う】
「動かないでっ」
「止まっていて頂ければ直ぐには攻撃致しません」
香里とセリオは栞を狩るという最重要目標の為に襲撃先として選んだ三人組を威嚇した
その三人は……
「え、え、えっ!?」
「あれ、その声……セリオじゃない」
「香奈子ちゃん、あの襷……セリオちゃんたち鬼だよ……」
香奈子、瑞穂、夕霧であった
なお、夕霧はとりあえず瑞穂のスペア眼鏡を借りている
香里は三人を見回し……
「栞は……いないわね。貴女たちボブカットでストールを持った小柄な娘見てない?」
「ええと、見てませんけど……」
「そう、残念ね。さて、それじゃ相談。
見ての通り私たちは鬼でルール上貴女たちタッチしなきゃいけないんだけどある目的からあまり鬼は増やしたくないの。
勿論鬼だから全員は見逃すつもりは無いけれど二人は見逃してあげるわ。さ、どうする?」
対峙する二組、そして……
「……それじゃ私が鬼になるわ」
「香奈子ちゃん!?」
「太田さん!?」
「夕霧ちゃんは眼鏡探さなきゃいけないし瑞穂は長瀬君と合流するんでしょ?」
「でも……」
「いいから行く! 確認するわ、絶対二人にはタッチしないのね?」
「ええ、10分間ここに留まるわ。それなら大丈夫でしょ? 信用できないなら貴女が止めればいいし」
「じゃあどうぞ。瑞穂たちはとっとと行きなさい。長瀬君によろしくね」
「う、うん。気をつけてね。それじゃ夕霧ちゃんいこ」
そして瑞穂たちが去り
「それじゃセリオ、タッチどうぞ」
「宜しいのですか?」
「ええ、あくまで協力者だしね。栞以外の獲物はある程度平等に分けましょ」
「それでは太田様、失礼します」
……そして
「さてと、10分間ここにいるんでしょ? その間その栞さんの話聞かせて貰っていいかしら。興味あるんだけど」
「物好きね、別にいいけど……」
【瑞穂、夕霧 祐介と眼鏡を探して移動】
【香奈子 鬼になり香里たちの事情を聞く】
175 :
167:03/03/25 00:15 ID:EnR97u+F
>>166 あなたにスマソ。
そして誤字スマソ
>>『気分が良いいのも当然だろう。』→『気分がいいのも当然だろう。』
そしても一つスマソ。題名は「由美子クエスト」で。
「……朝になってしまいました」
およそ60回に及ぶ壮絶なじゃんけん大会によって、ゆかりは寝ずの番を
するハメになってしまった。――いや、少なくとも当初の予定だとそうなる訳
ではなかったのだが、
「……」
「………起きやがる気配すらみせませんよ、このおんなときたら」
というわけなのである。寝不足もあってゆかりは珍しくご機嫌斜めだっ
た。一言一言が妙にとげとげしい。
二人は、海の見える建物のすぐ脇で寝ていた。文明の証しである建築物
を使用しなかったのは、もちろん寝込みを襲われないための措置であり、
万が一そうなった場合でも速攻で逃げられる為でもある。
「うーん」
ゆかりはそれに至った経緯を思い返す。
「……皐月ちゃんが言い出したんだよね、確か」
一周してよりどろんと重たくなった眠気が襲ってくる。
「……私は反対しましたよ。反対しましたとも」
腕を組み。脳味噌をフル回転させる。豊富すぎる乳が揺れる。
「………だがしかしゆかりさんの思惑通りにはいかなかった」
こういうときの人間は大概にして、とげとげしいのは言葉だけではなかっ
たりする。
「……よし。決めた」
ゆかりは建物の裏手に広がる林を見やる。日が登っているとはいえどさ
すがは林。薄暗い。単独行動にはうってつけ。
『ということで突然ではありますが、皐月ちゃんとはお別れです。長年のご
愛好、誠に感謝いたします』
そんなよく分からん置き手紙を残し、ゆかりは森の中に消えていった。
【ゆかり 長年のご愛好を戴いた皐月と袂を分かち、独り行動に出る(徹夜)】
【皐月 野宿中。】
割り込みすんません。
こみパ:千堂和樹、高瀬瑞希、牧村南、猪名川由宇
>>137-139、大庭詠美
>>137-139、長谷部彩
>>99-100、芳賀玲子、
桜井あさひ
>>114-115、御影すばる、立川郁美、九品仏大志、立川雄蔵
>>109、澤田真紀子、風見鈴香、
縦王子鶴彦、横蔵院蔕麿、【塚本千紗:1】
NW:城戸芳晴、コリン、ユンナ、『ルミラ』、『イビル』、『エビル』、『メイフィア』、『アレイ』、『たま』、『フランソワーズ』、
『ショップ屋ねーちゃん』
>>161 まじアン:宮田健太郎、江藤結花、リアン、高倉みどり、牧部なつみ、【スフィー】
>>159 誰彼:三井寺月代、砧夕霧
>>173-174、桑島高子、杜若きよみ(白)
>>99-100、岩切花枝
>>77、石原麗子、杜若きよみ(黒)
【坂神蝉丸:4】、【御堂:4】、【光岡悟】
リスト編集乙〜
183 :
166:03/03/25 00:24 ID:3Gyjd0lx
由美子クエスト作者さん、狩人作者さん>
お気になさらないで下さい。
私もタイミングが悪かったですし。
管理:長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)
支援:アレックス・グロリア、篁(Routes)
参加者はこのリストで確定です。
このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。目標NG0で。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想スレ』 へどうぞ
>
ttp://6821.teacup.com/hakagionigokko/bbs
「ぶーん」
非常にやるせなげに、コリンは早朝の空を飛んでいた。
本来なら凄く爽快なはずなのに、今の彼女にはどこかむなしい。
結局、飛んで逃げる暇もなく、何か術を使う暇もなく、光岡に捕まったコリン。
今は、それからずっと一緒に行動している光岡に頼まれて、上空から周囲を偵察している。
「結局、芳治の言うとおりだからなぁ……」
ああ、やるせない。自信はあったのに……
「ぶーん」
ぶーんと地に降りていくコリン。
「誰もいないよー」
「そうか」
瞑目して木にもたれかかりながら、光岡が答えた。
「そんなので眠気とれるの?」
「ある程度はとれる。休息にもなる。
それに、三日四日の徹夜くらいどうということはない」
「人間止めてるだけあるなぁ」
「おまえも人間ではないのだろう?」
「……」
夜中に爆睡していたコリンだった。
「それはそれとして。これからどうするの?」
「野草の粥をつくっておいた。これで腹を満たして、移動だ」
「お粥かぁ。もっと良いものない?」
「贅沢を言うな」
「ぶーん」
なんだかんだいって、結構良いコンビなのかもしれない。
【コリンと光岡、朝食の後移動開始】
【森の中です】
土を掘っていた。
重く湿った大地の中、真っ茶な土をざくざくと掘っていた。
冷たく湿っている土に、冷たい画鋲の罠。
「……」
相沢祐一は大地に深く掘った穴を再度見直して、もう一度穴掘りを開始した。
大地の上から掘った穴の出入り口は、今もまばらに土を吐き出している。
ため息をつきながら、今日のために念のため買った腕時計を見ると、時刻は10時。
まだまだ朝っぱらだが、森に覆われてその向こうの太陽は見えない。
「…暇だ」
祐一は神奈を撒いたことに安心して空を見上げる。そして、一言だけ言葉を吐き出す。
視界が一瞬茶色い土に覆われて、そしてすぐにそよ風に流されていく。
そして、絶えることなく掘られ続ける穴。
心なしか、大地を覆う粘土の密度が濃くなったような気がする。
もう一度ため息混じりに見上げた空。
その視界を、ゆっくりと何かが遮る。
「……」
雪雲を覆うように、女性が祐一の顔を覗き込んでいた。
「土、積もってるよ?」
ぽつり、と呟くように言葉を吐き出す。
「2時間も掘ってるからな…」
「…あれ?」
祐一の言葉に、女性は不思議そうに小首を傾げる。
「いつから掘ってるの?」
「8時」
計算ぐらいしやがれ。
「わっ、びっくり。」
相変わらずのんびりとした言い方。
全然、変わってない、別れたときと。
「これ、あげる」
襷。
そういえば、さっきから掛けているのは襷。
「いらない」
祐一は即答した。
「人の好意を…乙女心を踏みにじったなんて許せないよ〜!!」
「ちょ、ちょっと待て!! いまはそういうゲームなんだが」
「…なぁに〜〜〜聞こえんなぁ〜〜〜!!」
【相沢祐一:鬼決定。しばらく気絶】
【水瀬名雪:祐一GET】
【森に落とし穴1つ追加。画鋲付き】
190 :
余の夢:03/03/25 01:10 ID:zHbCexlb
少し歩いたが、相沢祐一は見つからない。
実のところ、三分という単位が神奈にはよく判っていなかった。
多分三分だろうと思うくらいで歩きだしたのであるが、それが本当に三分だったのかというと、全然自身は無い。
しかしそれは結構長い時間で、それに加えて男の足と女の足、見つかることができなくて仕方がないのかもしれない。
小さな囀りに気を盗まれ、神奈備命は足を止めて首を空へと向けた。
木々の隙間からこぼれ落ちる陽光が目の前に溢れて、目の前が真っ白になる。
目を細め少しすると次第に明るさ慣れて、蒼く澄んだ空を見上げることができた。
小鳥が先ほどと同じように声をあげ、目の前を横切っていく。
「あやつらは良いな」
小さく呟いて、己の服の切れ目から突き出る二つの翼に目をやる。
そして溜息をついた。
先ほど運良く食事を取ることが出来たからといって、まったく飛べる気配は無かった。飛べない羽に意味など無い。ただの飾りである。
現時点で、神奈にとって二枚の羽はただのお荷物だった。回復するまでには、足を使うしかない。
そして、一歩一歩足を進める毎に、神奈にあの頃の思い出を浮かび上がらせる。
「本当に、懐かしいのう」
そう、森や茂みを歩いていると思い出すのだった、柳也殿や裏葉と旅したころの事を。
あの時は追いかけられる側だったが、今は追いかける側だ。
正直、慚愧に耐えない思いである。追いかけられるのが好きな訳ではない。
柳也殿と裏葉に今回の鬼ごっこの参加を持ちかけたのは余だというのに。
目的はひとつだった。
いや、誰もがそれを目的としているだろう、素晴らしい商品。
それを売って土地を購入し、あの頃の杜殿を再構築する、それが神奈の絵空事。
だがすでに……いいや、まだ可能性はあるのだ。
一番多く掴まえれば良いのだ。簡単なことなのだ。それに加えて柳也殿、又は裏葉が最後まで残れば完璧なのである。何が完璧なのかよくわからないけど、兎に角完璧なのだ。
俄然、やる気が出てきた。
「やるのだ、がんばるのだっ!」
ぐっと握り拳を空に向かって突き出す。
そして神奈は元気よく森の中を駆けだした。
「祐一捕まえたよ〜」
「幸先いいね」
「気絶しちゃってるから、起きるまで待ってようか?」
「そうだね」
「それじゃぁ、何か食べ物になるもの探そうよ」
「そうだね」
しばらく後。
「わー、豪華だよ」
理緒がGETしてきた食べられる野草の雨霰。
どっさりと。
これぞ、貧乏生活の極意なり。
「調理器具がないと食べられないけどね」
「祐一が起きたら、家を探しにいこう」
「うん」
【名雪と理緒、意気投合。野草たっぷりGET】
【祐一気絶中。そろそろ起きる頃合いで】
【十時半くらい】
106-108>141
遅レス&間違い放置スマソ。そして修正サンクス。修正された方で話続けてください。
「こんにちわ〜。チョコレートパンくーださーいっ♪」
イビルはビールを吹いた。
「な、な、な、な……」
なんてこった。これっぽっちの酒(注:商品に手をつけました)で酔っ払ってしまったのか。
今現在イビルの眼前には、恐るべき光景が展開している。
彼女の記憶が確かならば、この女はかつて己の目的のために相棒を騙して
自分たちをハメてくれた、兆回焼き尽くしても腹の蟲がおさまらないにっくき仇敵、ユンナ。
狡猾・悪辣・策謀・欺瞞。どれだけ疑っても疑い過ぎることはない、危険極まる魔性の白翼。
そのクソ天使があろうことか、いきなり目の前に飛んで降りてきたと思ったら
幼い子供か単なるバカみたいな警戒心ゼロのへらっとした笑顔まるだしで、
自分に『こんにちわ〜。チョコレートパンくーださーいっ♪』と言っている!!!
「ねぇねぇ。黙っちゃってどうしちゃったの?チョコレートパン、ないの?」
「……………………あー、えー…………」
きっと、これはアレだ。また以前のようになんか企んでいるに違いない。よくわからんが。
多分この純真無垢な面で気を許させて、自分たちを騙して
きっととんでもない悪事の片棒を担がせる気なんだ。参加者の魂集めとか。
そうなんだろ。そうであってくれ。頼む。そんなキラキラした目で見つめないでくれ。
あああ、どうすればいいんだ…
「チョコレートパンは一つ500円だ」
「……え?」
豹変したかつての敵を前にして、いつもと変わらずに、エビルが接客した。
194 :
187:03/03/25 01:40 ID:bJiCvHDB
ごめんなさい。芳治じゃない、芳晴でした。
「一つでいいのか?」
「うーん……きよみとわたしの分、明日の朝の分も入れて、四つください!
あと、飲み物…お茶も二つありますか?」
「紅茶のペットボトルも一つ500円だ。しめて三千円になる」
「もしもし、エビルさん?」
「わーい、ありがと〜!えーと(ごそごそ)五千円でお願いしまーす」
「確かに。こちらがお釣りだ」
「( ゚д゚)ポカーン」
大喜びで去り行くユンナを尻目に、イビルは相棒に問わずにはいられなかった。
「おい、エビル…お前、なんとも思わないのか?
こいつ…いや、えーと…こんなんで…とにかくわけわからんし、ぜってぇおかしいだろ?」
言おうとすることが要領を得ない。それほど先ほど見たものに動揺している。だが
「彼女が誰だろうが、どうなっていようが。金を払って商品を求める以上は、お客だ。
お前が契約を履行するように、わたしが魂を刈り取るように、成すべきことを成すだけだ」
この異常な事態を前に、エビルに動揺は毛ほども、ない。
こいつ、商売人の鑑だ…。
イビルは改めて自分の相棒を尊敬すると同時に、そのあまりにも完全な仕事ぶりに
少々畏怖の念を抱いた。
「あのぅ…」
「あん?」
ふと気が付くと、小山のほうに飛び去ったはずの、ユンナがまだ屋台の前にいる。
何か申し訳なさそうな顔をして、彼女は言った。
「さっきの…おつり、二千円だよね?これ多いよ、二万円だよ?」
「…………………………………」
「…………………………………」
イビルは心中で前言撤回した。(でも少しホッとした)
【反転ユンナ デュラル軒3号店で食料とお茶を入手。時間軸は初日の夜更け】
(お金は黒きよみより渡されたものを使用)
良企画ハケーン
ああ……この鬼ごっこ、平和だなぁぁ……嬉し泣き
「退屈だな」
「そうね」
「何で一晩中誰とも会えないんだ?」
「しらないわよ」
「せっかく参加したのに、これはあんまりじゃないか?」
「ぐちぐち言わないで」
「腹減った」
「わたしも」
「なんかないか?」
「あったら出してるわ」
「こうなりゃ、適当に喰うか」
「こっちの世界の植物なんて、怪しくて食べられないわよ。毒付きだったらどうするの」
「魔法で解毒……できねぇんだった」
「へたに手を出さない方が良いわよ」
「腹減ったなぁ」
「お腹空いたわねぇ」
「あ」
「どうしたの」
「きのこ」
「そうね」
「きのこ」
「ちょっと、なに摘んでるの」
「……きのこなら大丈夫だろ」
「……やめといた方が良いと思うわ」
「……」
【ティリア&サラ、森の中できのこを発見】
【二日目の朝】
【さて。きのこを食べるか食べないか? どんなきのこか?】
「おねーさん、ホットケーキ追加〜」
「浩平、ここのクレープおいしいよ〜」
「ふぉうふぁな(そうだな)」
「このチクマ、中々いける・・・」
森の中に切り開かれた砂利道に置かれた屋台での賑やかな一コマだった
「いやー旨かった、よくよく考えたら丸一日何も食ってなかったんだよな」
腹が満たされ満足感に浸る
「えーと、お客さんはたしか鬼だね。折原浩平・・・3人捕獲だから・・・
3万円までの換金ができるわよ」
「へ〜、一人捕まえると1万円に換金ね〜」
そもそも、鬼になったら参加者をたくさん捕まえるといい事があるというのは
知っていたが具体的には知らなかったのである
「そうと解れば、積極的に参加者を捕まえねば・・・」
ここの屋台の商品は本来のレートに比べればえらく高価ではあるが3万も資金が
あるのだ、そこそこの装備はととのえれるだろう、そう思って装備を覗くと・・・
「うひゃぁーーーー、やっぱ捕獲系の装備は高いなー」
とても手の届くものではなかった
「唐辛子放射器・・・sold out?こんな物買った奴がいるのかよ・・・」
他にも参加者の位地を把握するレーダー、とりもち銃、メリケンサック?など
があったがどれも高価なものばかりであった
「仕方ないな・・・おねーさん!」
「なんだい?」
「のこった資金で買えるだけの食糧を詰めてくれ」
「あいよ」
ショップ屋のねーちゃんが手際よく食料を詰めている間、戸棚を見ていると
一つの商品が目に留まった
「すいません!これは?」
「ああそれ?パーティグッズだよ、しゃれでおいといたんだけどどうだい?
安くするよ?」
中には白い覆面、サングラス等のジョークグッズが入っている
「じゃあ、ついでにこれも」
「毎度あり〜これはオマケね」
『映るんです・すぐつくフラッシュ』
「・・・まあ、もらっておきます」
「あと、5回しか使えないから回数に気をつけてねー」
「ホットケーキおかわり〜」
「スフィーさんすごい食欲だよ・・・」
「スフィー殿・・・」
【浩平一行・パーティグッズ、映るんです、当面の食料確保】
【残金は0に】
【時間にして9時ごろ】
賑やかな来客が去ってから数分後
「おなかへった〜」
「やれやれ、また騒がしいのが相手かい?」
「ねえ、おなかすいた〜」
「はいはい、ちょっと待っててね〜」
【しのさいか起床】
【ショップ屋のねーちゃん朝食の準備】
先ほどから幾分か経ち、日も少し昇った頃。高台の詰所では…
「鈴香さん、鈴香さん、起きてください」
「むにゃ…あ、みどりさん。おはようございます。もう時間ですか?」
「ええ。今、南さんが朝食を作っていますよ」
台所を見ると、鼻歌を歌いながら南が魚を焼いているのが見える。
「あ、先に食べていても全然構いませんでしたのに?」
「南さんが、三人揃って食べた方が良いだろうって言っていましたから。私も賛成ですし」
「すみません…」
「大丈夫ですから。顔でも洗いに行かれては?」
「そうですね…目を覚ましてきます…」
とぼとぼと洗面所へ向かう鈴香。入れ違いに、台所から南が入ってきた。
トレイいっぱいに載った三人分の食事が運び込まれた。
「さぁ、ご飯が出来ましたよ」
見張をしていたみどりと、折りよく洗面所から戻ってきた鈴香を座らせ、食卓に朝食を並べる南。とても
史上稀に見る未曾有の鬼ごっこをしているとは思えない風景がそこにあった。
一通り並べ終えると、食事の挨拶をして食べ始める三人。
「やっぱり朝は日本食に限りますね〜」
「ええ。全くです」
…日本は平和です。
朝食を食べ終え、少々くつろいでいる時、みどりは棚の上に置いてあった真新しい地図を発見した。
「あら、地図…?この島の地図でしょうか?」
「確かに、港や商店街の表示もありますし…この島ので正しいと思いますが」
「やりましたね!みどりさん」
喜ぶ鈴香。
「やっぱりRPGでは棚探しは基本ですね」
「鬼ごっこはRPGじゃないと思いますが…」
早速地図に見入る南と鈴香。さすがにここに居続けることはルール違反になってしまうし、もっと
鬼ごっこならではのあの緊張感を味わいたかったのだ。
「あら、こんな所に灯台が…次はここを拠点にしたいですね」
「灯台ですか〜…この道をまっすぐ歩いていけば行けるんじゃないですか?」
高台から山の脇を通って森の中走っている道を指す鈴香。
「それは駄目ですね。鬼の殆どは森の中にいると考えていいと思います」
そして、遠回りになるが、高台から海沿いを走っている道を指す南。
その後何度かやりとりがあったが結局、とにかく島を海沿いに巡って回ること、鬼に出くわしたら三方向
に逃げること、森の中にはあまり入らないようにすること、などが取り決められた。
「さ、そろそろ出発しましょう」
リュックを持って立ち上がるみどりと南。
「あ、私が荷物持ちますよ。仕事で慣れてますから」
「そうですか?…ではお言葉に甘えて」
「こんなことだけ…すみませんね」
ふたりは鈴香にリュックを預けた。周囲を警戒しつつ、詰所を出る三人。幸いにも、近くに鬼はいなかった。
しかし、直接鬼に会っていないこともあって危機感が薄いようだ。
「まぁ、森が近くなるまでピクニック気分で行きましょう」
「「そうですね〜」」
【みどり 南 鈴香 灯台へ向けて行動を開始】
【島の地図入手 しかし、大まかな道と地形しかわからず】
【時間 9時過ぎ】
見込み違いスマソ
「Helen's House....と。ウン! これでいいネ!」
すっかりD一家の生活臭が染み付いた洞穴。そこの入口にレミィがなにやら板を立てかけていた。
「れみぃおねえちゃん、それ、なぁに?」
「ヘレンの家……? おいレミィ、それを書くなら『Lemmy's House』が正しいだろう」
板に彫られた文字を見て、ディーが訝しげに指摘する。
「ウウン、これでいいんだよ。私のFull nameは『Lemmy Christopher Helen Miyauchi』だからネ」
「レミィ・クリストファー・ヘレン・宮内……」
「ながいなまえなんだねぇ」
どうでもいいことに関心する神様とょぅι゛ょ。
「そうかなぁ? Statesではフツーだけどね。あ、別にワタシのことは『ヘレン』って呼んでも構わないヨ」
「いや」
「おねえちゃんでいいよ」
「ふーん……でも、おねえちゃんのいえかぁ……」
まいかが何やら言いたげな目で表札とレミィを交互に見つめている。
「………ん? あ、そっか」
これはしまった、という様子で手をポンと叩く。
「ワタシとしたことが。うっかりしてました。ここはワタシだけの家じゃないもんね。まいかちゃんの名前も彫らなきゃ」
「……うんっ!」
まいかの目がキラキラと光る。
「それじゃあ……はい、気をつけてね」
レミィが背後からまいかを抱きかかえ、片手で板を支え、片手をナイフを握らせたまいかの手に添える。
「ん……と……よい、しょっ……と」
「そうそう。ウマイよまいかちゃん」
コリコリコリ……と乾いた音があたりに響く。
(……忘れ去られてるな、私)
寂しげなDの呟きは誰にも聞こえない。
「うん、できたっ!」
「It's Great! スゴイよまいかちゃん!」
先ほどまでの表札。その『Helen』と書かれていた文字の頭の部分に窮屈そうに『Maika&』という文字が入った。
今の状態は『Maika&Helen's House』である。
「よーし、それじゃぁれっつ……!」
勇んで出発しようとするまいかだが……
「ハイ、次はDだよ」
「ありゃ」
レミィは彼女を無視し、Dにナイフを手渡した。
「………い、いいのか?」
「ウン! だってまいかちゃんもDもワタシたちの家族だモン!」
満面の笑みで言い切るレミィ。
「ふ、ふん。当然だな。もとはといえばお前たちをまとめあげたのは私。私の名前が入らんことには始まらん」
「ウン! そうだよネ!」
表面上は平静を装って板を受け取るD.しかし内心は飛び跳ねたいほど嬉しかった。
「む……は、う……っ? 手が、手が震えるな……」
手だけではない。声も震えている。
「く……っ、上手くいかん……」
切っ先がガタガタと震え、上手く文字を彫れない。
「モウ、Dはダメだね。はい、手伝ったげるよ」
「え?」
レミィはまいかにそうしたように自分の手をDの手に添えると、ゆっくりと動かしていった。
「とはいっても一文字だけだからネ。『D』……と」
「で、出来た……!」
思わずむせび泣きそうになるD.だがさすがにそれは彼の自尊心が許さなかった。
(おっとと……危ない危ない。大神たる私が人前で涙を流すことなど)
「それじゃあ、飾るよー」
よいしょっと背伸びをし、レミィが洞穴入口に表札を引っ掛けた。
三人が顔を上げ、出来たての自分たちの名前を見る。
『D&Maika&Helen's House』
「それじゃ、こんどこそほんとにれっつごぅ!」
まいかが駆け出し……
「ああん! 待ってよまいかちゃん!」
レミィが後を追い……
「ま、待て……走らないでくれ」
ディーがいきなりバテ始めた。
【D一家 狩り&さいか探しに出発】
【表札を作り、洞穴の入口に掲げる】
【8〜9時ごろ?】
(*´ー`)イイネェ
感想できた。
近日公開。お楽しみに。
めちゃくちゃDに萌えるな。
うたわれ買いたくなった
D……ハカロワの御堂となれるか?
一夜開けて二日目の朝。
「あーたーらしーいーあーさがきたーきーぼうのーあーさーだー」
川の岸辺では緒方理奈のソロコンサートが展開されている。その美声は
どこまでも響き、周囲に文字通り朝を訪れさせていた。
……妙に脱力感のある歌声なのは秘密である。
誰だって朝は辛い。
「よろこーびにむねをひーらけーおおぞーらあーおーげー」
歌声の向かう先は、朝食が補給できる屋台か適当な建物のどちらか。
島全土に散らばる建築物に何かしらの食料品は取り揃えてあるということ
らしいので、とりあえず理奈はそこを目指す事にした。屋台の存在に彼女
は気付いていなかったのだけれど。
「こえてーゆーくーはるーかーゆめーもー」
曲目をラジオ体操のテーマから夏影に変えつつ、移動式巡回コンサート
は進行してゆく。曲自体はこの上なく情景にマッチしていたが、いかんせん
歌い手の調子が上がらない。さっきの金髪女性に別れ際にもらったお菓子
(なぜかポッキーだった)をかじるが、理奈の空腹を満たすにはあまりにも
非力な存在だ。
「ながるーかーわーのーながーれーもー」
やっぱり、河原を歩いてるからいけないのだろうか。
そのあまりにも当たり前の考えに、理奈はしばし立ち止まってしまう。
よくよく思えば当然だ。なにが悲しくてこんな辺鄙なところにスーパーマー
ケットを立てにゃならんのだ。ペンションや別荘にしたってもっと地盤がしっ
かりしてて交通の便のいいところに建てるだろう。
そうと判ればやることは一つ。
道を見つけよう。
「……道なんてどっっっこにもないじゃない」
そりゃそうである。理奈だって好きでこんなところまで流されてきたわけで
はない。あの奇妙なくせっ毛の所為だ。
――思い出してしまった。理奈は星の記憶を受け継ぐかのように昨日の
出来事を思い出してしまった。リサのツッコミに傾注していたせいで忘れる
ところだった。
「――……標的が増えちゃったわね」
といってるわりには嬉しそうな日本有数のアイドル・緒方理奈なのであっ
た。
「ララほしがいまーうんめいをーえがくーよー…――はっ!」
いつの間にか理奈は自分の持ち歌を歌ってしまった。持ち歌を素で歌う
のは結構恥ずかしかったりする。
すぐさま周りを見渡す。誰もいな
「(がさがさ)」
「(ごそごそ)」
居た。しかも二人。理奈はムチャクチャ赤面する。すぐさま走って逃げたく
なったが……よく考えれば自分は鬼なのだ。逃げてどうする。
と、そっちから小さな声が聞こえてくる。
「(ほほほほほホンモノの緒方理奈なんだな…っ!)」
「(まさかこの目で見られるとは…拙者、眼福でござるよぉぉぉぉっ…!!)」
理奈は少し考えた。そしておもむろに歌い出す。
「……一つひとりで姫始め…右手よ今年もよろしくな…」
例の音頭を、これ以上ないくらい艶っぽい声で。
「(フ、フォォォォォォォ!!!)」
「(お、おちつくでござるよ!!)」
もはや()で区切る必要のないくらいの音量で二人は悶絶の声をあげた。
もちろん一直線に向かってくる理奈の事など目に入ってない。
「はい、捕まえた」
「ォォォォォォ……ぉ?」
「ござるよぉぉぉぉ…ん?」
「ご静聴ありがとうございました。粗品ではありますがこれをどうぞ」
にっこり笑って襷を渡す理奈。その姿は筋金入りのオタクである横蔵院蔕
麿と縦王子鶴彦を勘違いさせるのに十分過ぎる破壊力を秘めていた。
「理奈ちゃんだ…ほほ、ほんもののモノホンなんだな」
「あの、もし宜しければこの襷にサインなど頂戴してよいでござるか?」
「…いいわよ……」
理奈の笑顔に歪みが生じた。
「――何はともあれ」
予定外の時間外勤務をしてしまったが、とにかく、だ。
「使えるわね。この手は」
ニヤソと笑った。理奈は珍しく自分の兄に感謝したりした。
【理奈 ゴキブリホイホイみたいな作戦を思いつく】
【横蔵院蔕麿・縦王子鶴彦 見事撃沈】
>212
買った方がいいぞ。Dに萌えるから。
「―――?」
青い、青い空。
英二はふと空を見上げた。
「どうかしましたか?」
隣の彩が訝しげに英二を見つめた。
「―――いや。今、理奈の声が聞こえたような……」
微かに。
だが、彼が聞き間違うはずのない声。
「理奈……妹さんですか?」
小首をかしげる彩の膝元できよみが寝息を立てている。
周りには生い茂る草木。
聞こえるのは風に流される草音と鳥の声。
あたりに人の気配はない。
「まあ、気のせいだろう。――――それはそうと、お腹すかないか?」
微苦笑を浮かべながらの英二の問いに
彩がわずかに顔を赤らめる。
開けた空。心地よい風。
良い場所だが、同じところに居続けるのはリスクが大きい。
もう一人の彼女が目を覚ましたら、移動することにしよう。
とりあえずは美しい少女たちと朝食を。
それからのことは、後に考える。
緒方英二。
彼は彼なりにこのゲームを楽しんでいた。
【英二・きよみ(白)・彩 まだ丘】
【時間 朝】
「はぁ、はぁ、はぁ、どうだ、みたかい!朝だよ!」
意味不明に朝が来たことを勝ち誇っている男が一人。ハウエンクアである。
ついさっきまで泣き喚いていたことは既に忘却の彼方らしい。
「それにしてもお腹がへったね…」
夜明けから、数時間。ハウエンクアは森の中をさまよっていた。
特に行く当てがあるわけでもなかったが、平地を行くよりは見つかりにくいだろうし、食べられる木の実の類も見つかるだろうと思ったからだ。
まあ、結局は当てもなく歩いていたその時。
「たーすけてー……」
どこかから声が。
「ん、誰だい?」
あたりを見回してみるが、どこにも人影はない。
「たーすけてー」
だが声はまだ聞こえてくる。
気になって声のしてほうに歩いていくと、そこには落とし穴が。そして中を覗いてみると
「どこの誰か知らない、けど助けてー」
鬼の襷をかけた、いたる絵大爆発な女の子――皆瀬まなみがとりもちに捕われていた。
「助けてー。お願いよー」
ハウエンクアの姿を見るなり、懇願してくる女の子。
だが、相手は鬼だ。ここで助けるなどアホでしかない。
「何言ってるんだい。お前は鬼だろう?助けたらタッチされちゃうじゃないか」
「絶対にタッチしないからー。お願いー」
信用できるはずがない。
無言で立ち去ろうと……
「ああー、待って待って待ってー!お願い、助けてよー!絶対にタッチしないからー!信じてよー!」
立ち去ろうと……
「ちょっと、ホント待ってってばー!信じてよ!お願いよ!もう、こんなカワイイ女の子を見捨てるつもりー!?」
「ああ、うるさいね!」
渋々引き返すハウエンクア。
「わかったよ!助けるから少し静かにしたらどうだい!」
その言葉を聞いたまなみの目が爛々と輝きだす。
「ホントに?やったぁー。ありがと☆」
とりあえず、ハウエンクアはそこらの蔓で簡単なロープを作り、それでまなみを引っ張りあげることにした。
「ほら、これに捕まれよ」
「うん☆」
上から垂れてきたロープを掴んだまなみは……
「オラァッ!」
思い切りそれを引っ張った……。
「何するんだ!おい…って、あぁ〜!?」
当然上にいたハウエンクアは穴の中へ。
「ふっふっふ、わたしを信用したのが運の尽きね」
穴の中に落ちて、気絶しているハウエンクアに襷をかけ笑っている女が一人。
「見てなさい…。こうやって通りがかる奴は全員鬼にしてやるわ!」
【ハウエンクア 鬼に】
【まなみ 穴の中から参加者を狙う】
たち悪ーッ(´Д`;)
「――――森に身を隠していればとりあえず安全だと思ってたんだけど」
困ったように呟いたのは
主人公としては少々遅い登場の、千堂和樹。
「当たり前でしょ。森なんて誰でも思いつくんだから、安全なわけないわよ」
小馬鹿にしたように巳間晴香が続ける。
森の中を歩き回って数時間。
今、彼らの目の前には無数のトラップの残骸が広がっていた。
無効化されたこの場所だけでこれだけの数。
森全体にはどれだけのトラップが仕組まれているのか見当もつかない。
和樹は森を「危険」と判断した。
ちなみに彼らには知る由もないことだが、トラップの残骸は冬弥が修行の末獲得した技術の成果だったりする。
(――――失敗だったかもね)
成り行きで同行することになったとなりの青年をみて、
晴香は何度目かの後悔をしつつあった。
昨夜、穴の中で足をしびれさせて動けないでいるところで、たまたま穴を前を通りかかった
和樹に『救出』(あくまで和樹主観)された。
余計なことを、と晴香は思ったが、
和樹の一言で穴を出ることを決意した。
「こんなところにいて、煙でいぶりだされたらどうするんだ?」
でてきたところをとりもちで狙い撃ちされるよ、と。
なるほどと納得する反面、晴香は自分の迂闊さに内心歯噛みした。
入口出口が一つということは逃げ道も一つということだ。
不可視の力も万能ではない。
行動の選択肢が限定される状況下で、そこに居るとわかっているのなら
作戦と準備次第でいくらでも対処法はある……。
もちろん、葉子にも。
(……それにしてもこの男……)
どうみても一般人然として頼りなさ気な青年を見上げる。
晴香にはよくわからなかったが、なんとかいう『本』を書くために
資料をあさった成果ということらしい…。
(……小説家か何かなのかしらね……)
なんだかんだと言って、晴香は割とマトモかもしれなかった。
【和樹・晴香、同行中(森にて)】
和樹ってエルルゥと一緒のはずでは?
・里村茜 柚木詩子 上月澪
・川名みさき 保科智子 柏木初音
・少年 深山雪見
・七瀬彰 澤倉美咲 さおり
・宮内レミィ ディー しのまいか
・住井護 北川潤
・七瀬留美 広瀬真希
・長森瑞佳 折原浩平 トウカ スフィー
・山田まさき 皆瀬まなみ
・岡田メグミ 松本リカ 吉井ユカリ 佐藤雅史
・高瀬瑞希 九品仏大志
・牧村南 高倉みどり 風見鈴香
・相田響子 篠塚弥生
・緒方英二 長谷部彩 杜若きよみ(白)
・水瀬名雪 雛山理緒
・来栖川綾香 柏木楓
・名倉由依 名倉友里 A棟巡回員
・エディ 阿部貴之 橘敬介
・ユンナ 杜若きよみ(黒)
・ドリィ・グラァ
・美坂香里 セリオ
・田沢圭子 清水なつき
・マナ 深田真紀子
・月島瑠璃子 松原葵 沢渡真琴 天野美汐
・藍原瑞穂 太田香奈子 砧夕霧
・柏木耕一 ダリエリ
・柏木梓 江藤結花
・藤田浩之 来栖川芹香 マルチ クーヤ サクヤ 川澄舞
・神岸あかり 氷上シュン
・長岡志保 姫川琴音 猪名川由宇 大庭詠美
・坂下好恵 宮田健太郎 【月宮あゆ】
・御影すばる 桑島高子
・立川郁美 クロウ
・【縦王子鶴彦】 【横蔵院蔕麿】
・高槻 椎名繭
・石原麗子 ヌワンギ
アルルゥ ユズハ カミュ 【神奈】
・【国崎往人:1】【ウルトリィ】
・ゲンジマル ニウェ
・オボロ、久瀬
・湯浅皐月 伏見ゆかり
・巳間良祐 美坂栞
・柳也 裏葉 【鹿沼葉子】
・霧島佳乃 霧島聖
「兄さん兄さん」
悪い庄屋が悪代官に近づくモーションで住井がやってきた。
「どうしたよ、住井?」
「しっ……。ほれ、よく耳を凝らしてみろ」
「――爆発音だな」
「そうだ。またまたどこぞのどなた様が引っ掛かりおったわい」
-LIVE/爆発現場-
「ぎぎゃあああ!!」←七瀬(漢)。
「危ないっ! ……て、もう遅かったか」
「また仲間が増えてしまった――否、同志ッ! ヤツは言わば同志ッ!」
「何が同志かぁ!」
もはや逃げ手・鬼の区別無く彼らの罠に引っ掛かってゆく。
くけけけっ、と小悪魔ライクな声で笑う住井。
北川はその笑い声が冗談で言ってるのか素で笑ってんのか、判別しあぐ
ねた。
――どーもこいつは真性のサディストな気がする。北川はそう思ったらし
い。
「……なんだ北川、その微妙な距離は」
「いやいやいやなんでもないぞスミィよ。さーて作業を続けよか」
-LIVE/爆発現場-
七瀬の落ちた穴から、土げむりがもうもうとあがっている。
「……すごいな」
「落ちたヤツ、ものすごい体重みたいだ」
「見たところ普通の女子高生な感じだったけど、人間外見じゃわからんもん
んだなー」
「それにしても、ホントにすごいな――っぷ、目にはいった」
「うお、俺もっ……ぺっぺっ! ぐわーぁ」
二人の嵌まっている塹壕に容赦なく降り注ぐ埃。
「こんなに煙があがるなんて…あれは人間か!?」
「メイドロボ――いや、特有の耳飾りが無かったな」
「試作型!? 全身ウラニウムボディの超質量なのかもしれんぞ!」
「なに!?」
「………あんたたち、ね」
ずむっ。
「ぐぼぁ!?」
「ぬぐへっ」
「なめないでよ。あたし、七瀬なのよ?」
七瀬(漢)は、すっかり存在を忘れていた竹刀で二人の鳩尾を突いた。
「こんのうら若き乙女を、メイドロボだのウラニウムだの鉄腕アトム試作型だ
のビッグ・ザ・ブドーだの言ってくれたわね――でも、少なくともそっちのあ
なたは一声掛けてくれたし。許してあげましょっ♪」
全体重載せた突きを喰らわせておいて、突然何を言うかこの漢は。
という矢島の突っ込みはココロの中。なんか言ったらあの竹刀でばちこー
んとやられてしまうだろう。
手を差し伸べて貰う。トリモチはあらかじめ切断してあったので、あとは上
から引っ張ってもらうだけでよかった。力を入れた瞬間に七瀬は顔が引きつ
つる。
「…くっ、腰が」
「――おばさんか?」
モーションゼロで竹刀が飛ぶ。ノールックパス。やるね。
「ぐぎゃー」
垣本は気絶した。捻りのない断末魔だ。
「や、どうもありがとう」
「どーいたしまして」
「俺は矢島。お礼と言っては何だけど、少し同行してもいいかな?」
気絶した垣本をよそに話を進める矢島。七瀬は少しの間考えたが、運動
神経のよさそうな矢島をみて承諾した。少なくとも足手纏いにはならないだ
ろう。
「じゃ、よろしく」
「まかせろ」
七瀬留美。ONEのヒロインであり、なおかつとんでもない戦闘能力を持っ
ていると推測される。脇役の矢島にとっては、またとない活躍のチャンス
だった。
「さらばだ、同志よ。俺は君を一生忘れない」
気絶したままの垣本に一瞥して、矢島は七瀬の後を追った。
【七瀬(漢)・矢島 同行】
【垣本 気絶】
【住井 サディスト疑惑】
スマソ、追加です。
【七瀬のかかったトラップ→穴の底いっぱいに敷いてあった土+石灰】
スマソ。割り込んだ…
>>236 前スレででてた<「一樹」+エルルゥ
「和樹」で検索してたからひっかからなかったんよ。
「お酒を」
「はぁ?」
いきなり現れたかと思うと、女は開口一番、そう言った。
「お酒を。大量に」
人を小馬鹿にしたような微笑みで、言い切る。
「酒……おさけ?」
「そうです。酒ですわ。ありったけくださらない?」
微笑の女――カルラは酒酒と同じ単語のみ発し続ける。
意外な注文に驚いたねーちゃんだが、ここはお仕事。すぐに営業スマイルに戻り、品物を取り出した。
「はいはい酒ね。じゃあこんなのはどうかしら? 大吟醸『来栖川の怒り』。
来栖川の先代が祝宴で出された酒のまずさに激昂して、わざわざそれ専門の部署を立ち上げてまで
自分が納得できる味の酒を造ったものだそうよ。金持ちの道楽が興じて生まれた名酒」
「試し飲みしてもよろしいかしら?」
「はいはいどうぞどうぞ」
ねーちゃんは一升瓶からぐい飲みに一杯分の液体を注ぐとカルラに差し出した。
「あら? これだけ?」
「試し飲みってことを忘れないでね」
「やれやれ……」
カルラは少し残念そうにため息をつくと、一気にぐいっと飲み干す。
「……ぷはっ」
美味そうな嘆息を漏らし、口の周りについた液体も残さず舐めとる。
「いいですわねコレ。気に入りましたわ。いただいていきます。あ、あと肴も適当に見繕ってくださらない?」
「まいどあり〜。それじゃあ全部で……」
「ああ、代金はトゥスクル皇ハクオロ様にツケておいてくださいな。じゃ、私はこれで……」
本人が聞いたら絶叫しそうなセリフを残し、商品が入った袋を掴んで颯爽と去っていくカルラ……
「ちょっと待て」
だがねーちゃんの腕ががっしと肩を掴んだ。
「何か?」
「うちにはねぇ、ツケってもんはないの。代金はこの場で支払ってもらうわよ。さもなきゃ商品は置いていきなさい」
顔は笑顔だが、声には微妙な怒気が混じっている。
「これは困りましたわ。私、現金というのは持ち合わせない主義なので」
「困るのはこっちよ。金が無いなら、さっさと失せなさい」
微妙に修羅場げな空気が流れる、が……
「おねーちゃん、どうしたの?」
「あら、可愛らしいお嬢さん」
「あ、さいか」
ねーちゃんの言いつけで水汲みに行っていたさいかが、バケツを抱えて戻って来た。
カルラはさいかとねーちゃんを交互に見やりながら……
「……あなたの娘さん?」
「ンなわけあるかいっ! 私ゃまだ独身よ!」
「あら、その歳で?」
「余計なお世話よ!!!」
「冗談ですわ」
「……あ、そうだ」
その時、ぴかーんとねーちゃんの頭の上に電球が灯った。
「あなた、名前は?」
「カルラですわ」
「よし、じゃあカルラ。この小娘を預かってくれない?」
さいかを指さしながら、意外な提案。
「……は?」
「いや、この小娘知らないうちに紛れ込んでてね。一応参加者みたいだからずっと私の手元に置いとくわけにはいかないし、かといってこんなガキンチョを一人で放置しとくのも危ない。
ほとほと困ってたとこなのよ。もしあなたが責任もってこの子を預かってくれると言うのなら、その酒と肴。タダにしましょう。どう?」
カルラは迷いもせず、
「かまいませんわ。それでタダ酒が飲めるのなら」
即断した。
「ただし、それならもう一本付けてくださらない?」
「ぐっ……がっ……アンタ、やるわね。いいわ……仕方がない」
足元を見られた。商売人にとってかなり屈辱的だが、渋々了解するねーちゃん。調子に乗ったカルラはさらに……
「それじゃあ、サービスでもういっぽ……」
「撃つわよ」
「冗談ですわ」
さすがにこれは断られた。
「それじゃ、確かに酒とこの子供は預かっていきますわよ」
袋を担ぎ、さいかの腰ひもを掴んだカルラが屋台から離れていく。見ようによっては酔っ払いが鮨詰めを持っているようにも見える。
「はいはい。もしその辺にほっぽっといたのがわかったら地の果てまでもアンタを追い詰めて代金は請求するからね。というワケでよろしく」
ひらひらと手を振る。
「おねーちゃーん、おねーちゃーん」
宙吊りになったさいかがばたばたと手足をゆらし、ねーちゃんを呼ぶ。
「はいはいさいか、元気で過ごしなさいよー。おねーちゃんはいつも遠くの空からアンタを見守ってるわよー」
「おねーちゃーん……おねぇ……ちゃん……」
泣きそうなさいか。
「男だったら別れ際ぐらいシャッキリしなさい。笑われますわよ」
「さいか、おんなのこ……」
もっと泣きそうなさいか。
「……………」
さいかを見送るねーちゃん。その目に一抹の寂しさが漂ってた……かどうかは、誰にもわからない。
【カルラ 大吟醸『来栖川の怒り』×2・酒の肴・しのさいかゲット】
【しのさいか カルラにお持ち帰りされる】
【ジョンはその辺にいると思う。いや、沈没船やってないからキャラわからんのよ】
【『来栖川の怒り』に特に深い意味はありません。ただの美味い酒です】
【時間 午前中?】
>【しのさいか カルラにお持ち帰りされる】
(*゚∀゚)=3
「……すぅー」
さて。
一方の皐月はというと、未だに寝顔をお天道様に晒して熟睡ぶっこいて
たりした。もちろんゆかりとの見張り当番条約を一方的に破棄した事も、ゆ
かりが別行動をとった事も知らない。何者をも寄せ付けない、とてつもなく
深い眠りだった。
「――はい。いとっぷです」
だから、森の中から突如現れた朴訥フェイスの伊藤こといとっぷの存在に
も全く気付かなかった。
「――えー、わたしはいまー、皐月さんの寝室の目の前にいまーす」
あさっての方向を向いていとっぷは呟く。片手にマイクっぽい木の枝を
持っている。
「――さてー、これはなんでしょー。実はこの部屋のキーなのですー」
いとっぷはポケットに入っていたトレカを取り出した。無論部屋などない。
「――がちゃり。はーい。開きましたね。開いてしまいましたねー」
愛しの湯浅皐月さまをついにこの手にかけることが出来る。
いとっぷのやや寝不足の脳味噌を完膚なきまで再起不能にさせるのに
は十分な事象であった。
「――おおっと! これは湯浅さんの着替えでしょうか?」
そんな我々を遥かに超越してしまった現世のマホメッド・いとっぷには、僕
達には決して見えないものが見えるらしい。虚空に向かってなにやら解説
した。
「――はい、前置きが長くなりましたね。ということで本日のメインディッ
シュ! 湯浅皐月の寝起きどっきりー! いえー!」
言うが早いか、いとっぷは皐月の肢体めがけて移動を開始した。その距
離、およそ3メートル。随分と間取りの広い部屋である。
「――さーさーさーさー、どうなんだどうなんでしょーかーさつきさーんはー」
何がどうなのかさっぱり判らない。やはりいとっぷは一般人よりも高いステージへと移行してしまったようだ。
そしてさらに近づく。あと1メートル弱。
「嗚呼。ここに辿り着くまでいかにながい道のりだったか。もはや思い出し
たくないけど、しかしそれもいとっぷ本人の歴史なのだ。真摯に受け止めよ
うではないか」
と、一旦真剣な顔に戻って、
「はい。では遠慮なくタッチさせて戴きます」
ついに処刑は執行された――
「……おねーちゃん」
「あら。その年で相手の望んでいることが分かるなんて賢いですわね。将
来有望かしら?」
そこには一体の死体が――いや、死体っぽい肢体が転がっていた。
「もしかしてさつがいしちゃったの?」
「まさか。これはただの遊びですわ」
「でも、あかいよ?」
肢体は思わず目を塞ぎたくなるような血――のように赤いケチャップにま
みれている。
「確かに見た目はかなりエグいけど、死にはしないから安心しなさいな」
カルラはそういってさいかの頭に手を乗っけた。
おつまみセットにちょうどチューブ一つぶんの隙間が空いていた。
「どちらが先に目を醒ますか……楽しみですわね。先手を取った者が勝ち、
後手に回った者は敗者となる――」
「こどくってやつかしら」
「蟲毒……難しい言葉を知ってますわね」
そういわれてさいかはへへんと胸を張った。
「だってさいか、あたまいいもん」
「………」
「…すぅー」
そんなこんなで、またしてもいとっぷは撃沈してしまった。
【カルラ・さいか いとっぷ殺害――いやさ気絶させる】
【皐月 全く変化無し】
【いとっぷ も う だ め ぽ 】
高台にある公園――
ここへ来た時は既に夜であったので解らなかったが、今は眩く照らす朝日によって、
眼下に拡がる風景を見渡せた。
「ふわぁ〜…っ、やっぱり綺麗〜…!」
「ん〜…確かに、結構な物だね、これは」
美しい島の姿を見下ろして、あかりが目を輝かせ、シュンがそれに相づちを打つ。
うっとりとさせると同時に、目も醒まさせる景色であったが、
二人は公園備え付けの水道で顔を洗い、更に意識を覚醒させる。
――その、ぱっちりと開いた目が、眼下の景色の中に何か妙な物を捉えた。
「……氷上君…、あれ…屋台、だよね…?」
「…みたいだね」
「何であんな所に屋台が…?」
「…余り深く考えない方がいいよ。
大体このゲームの参加者自体、人外な存在が割と多いし。
事ある毎に驚いてたら、体力が続かない」
そもそも、主催者からして『人外』なのだ。
――それを思い出し、あかりは脱力した様な息を漏らした。
「そう……だね。…(くきゅぅ〜〜…)」
苦笑していたあかりのお腹が、可愛らしい音を発した。
――「あう…」と呻き、あかりは頬を赤らめながらお腹を押さえた。
「…そう言えば、昨日から何も食べてないね」
「あー…、そう言えば…」
「――あの屋台に行けば、何かあるかも」
「屋台だったら、ラーメンとかかなぁ…?」
「あとは、焼き鳥とかおでんとか(くぅ〜…)――…おっと」
それらを想像して、シュンのお腹も空腹を訴える音を放つ。
――互いに目を合わせ、二人はクスクスと笑い合った。
「ふふっ…――まぁ、行って見れば解るさ」
「ここを下りた後でもあそこにあればいいけど…」
「そうだね。だけど、ここで見てても仕方ないよ。出発しようか」
「あの屋台を目指して?」
「うん。散歩がてらって感じで」
「隠れながら――ね♪」
――あかりとシュンは高台の公園を出て、ゆったりとした歩みで道を下り始めた。
【あかり シュン 高台にある公園を出発】
【眼下に見えた屋台を目指す ※何号屋台かは不明】
【朝の七時から八時くらいの時間帯】
にゃあ、もう朝ですか。この季節、日が昇るのが早いです。
千紗、夜の間ずっと、森の落とし穴に落ちてました。やっと今出れたです。
エビフライのお姉さんとサヨナラしてから、千紗に捕まるドジな人、いないみたいです。
ぐーーっ。
千紗、またお腹が空いてきましたよ。
ん、いい匂いがしてきました。こんな森の中で料理ですか?
千紗、さっそく行ってみるです。
「………千堂さん、遅いです。香草、わからなかったんでしょうか」
にゃあ、お姉さんがお料理してますよ。
千紗、猫娘っていわれてますが、お姉さん犬娘さんです。
千紗、お腹ぺこぺこです。お姉さんに聞いてみるですよ。
「お姉さん、汁だけでも千紗に分けてもらえますか?」
「はい、それなら一緒に食べましょう」
とっても優しいお姉さんです。
「……お姉さん、千堂のお兄さんと知り合いなんですか?」
「千堂さんに料理の手伝いを頼んじゃいました。同人誌のモデルのお礼だそうですが、
同人誌って、なんですかねえ」
──犬のお姉さん、世間知らずみたいです。
あれ、昨夜も似たことがありましたよね。
千紗、またタスキつけるの忘れてたですか?
違います、しっかりと服にかかってます……
「……お姉さん、鬼ですか?」
「はい?私はエルルゥですよ」
「お姉さん?私は鬼ごっこの鬼ですよ」
「鬼ごっこですか?アルルゥたちがハクオロさんと遊んでいるみたいですねえ」
──犬のお姉さん、ル ー ル 把 握 し て な い み た い で す。
「お姉さん、タッチです」
「はい?なんですかこれ?」
「鬼のタスキです……」
犬のお姉さん、このタスキは気に入らないみたいです。
「嫌ですよこんなタスキをかけるなんて!料理の邪魔になるじゃないですか!」
「うにゃあ、タスキをかけてない鬼は、ルール上無効なんですよ、お姉さん」
「そんなこと知りません、私は絶対かけませんからね!」
お姉さん思ったより頑固です。
「もうすぐ千堂さんが帰ってきます、料理の邪魔するなら出てってください!!」
お姉さん、どうしてもタスキをかけません。
千紗、とっても困りました……
………………
……
「お姉さん、千堂のお兄さんはタスキしてましたか?」
「そんなもの、してるわけないです!!」
「─────お姉さんゴメンなさいです、千紗謝ります。
……お 姉 さ ん は そ ん な タ ス キ し な く て い い で す」
「それなら、許してあげます」
「お姉さんの料理美味しそうです、もっといっぱい作ってくれますか?」
「はい、じゃんじゃんおかわりしてくださいね」
「千紗向こうでまってますぅ☆」
……本当にいいにおいのする料理です。
にゃあ☆どれだけの獲物がこのエサに釣られてやってくるのでしょう。
入れ食いです。一網打尽です。ウッハウッハです。
千 紗 は 悪 い 子 に な り ま す。
【塚本千紗 エルルゥを捕まえる。料理の近くに隠れている】
【エルルゥ 鬼になるがタスキもせず、ルールを全く把握していない(触られてもセーフ)
美味しそうな料理を作って千堂和樹を待っている(森の中、朝です)】
触られてもセーフって書いてあるからねぇ…鬼ではないのでは?
>>252 あ、失礼。何か勘違いしてますた。
エルルゥは鬼になったけれども、
もし他者に触れても無効、相手は鬼にならないということですな。
というよりもエルルゥ、こうなると
参 加 者 じ ゃ な い
となるのでは……。
これは少し不味いな…
しまっちゃうおばさんの登場ですk
「料理できました。はい、タスキしますね」
「にゃあ、それですよお姉さん☆」
「料理の最中にタスキをすると汚れますからねえ」
「ルールわかっていたですか?」
「ルールですか…さ あ 隠 れ て ま し ょ う ………」
【塚本千紗 エルルゥを捕まえる。料理の近くに隠れている】
【エルルゥ タ ス キ し ま つ た 料理の近くに隠れている
(森の中、朝です)】
「……まさかコイツと夜を明かしてしまうとは…」
「フッ、何を今更。我輩と夜明けを迎えるのはこれが初めてという訳でもあるまいに」
「誤解されるよーな言い方すんな。修羅場だの何だので和樹とか猪名川さんとかも一緒だったでしょーが!」
「…なる程、読めたぞまいしすたー。
――野宿は野宿でも同志和樹とであれば“青カン”フラグが立ったのに、…と嘆いておるのだな?」
…め゛しぃっっっ………!!!
――朝っぱらから何やら凄絶な鈍い音などを響かせているのは、大志と瑞希の二人組だった。
彼等は森で野宿して夜明けを待っていたのだが、大志は、ある人物以外の誰と共に夜を明かそうがそれ程変わり無い
であろうが、一方の瑞希は、甚だ不本意であった様だ。
「すぐに肉体言語を用いるのは余り好ましい性癖とは思えんのだがな、同志瑞希」
「やかましい! アンタが余計な事を言うからでしょ!!?」
「余り大きな声を出すと鬼に見つかるぞ」
不自然な方向へ曲がってしまった首を、至って冷静な態度でコキコキと治しつつ言って来る大志。そんな彼をギロリと
睨みやってから、瑞希は大きな溜息を吐いた。
…大志と野宿する事に、瑞希は危機感等を抱いたりはしなかった。彼の普段の言動はひたすらにアレだが、女性に対
しては結構紳士的(譲りに譲って譲りまくって)であるからだ。
――加えて、彼の心の中には、既にある女性が存在している。瑞希自身も和樹を通じて知り合ったのだが、今ではよく
知っている人物だ。
(…ああいうタイプが好みなのかな?)
ちらり…と、大志の顔を見やる。
ルックスは悪くはなく、むしろ良い方であろう。変な眼鏡だが。上背もあるし、スタイルも好い。変な眼鏡だが。それに
恐らく、惚れた相手を献身的に愛そうとするタイプかも知れない。変な眼鏡だが。
(何だかんだで、割といい奴だしね…)
嫌いではない男だ。恋愛感情を抱く事は無いであろうが…
「フッフッフッフ…――考えている事は解っているぞ、まいしすたー瑞希」
大志がいきなり低く笑い出し、眼鏡のレンズが白い透過光に染まる。
――ギクリとして、瑞希は慌てて視線を明後日の方へと逸らした。
「な、何よ…?」
「我々は今、選択を迫られている。同志和樹を捜索するか、当面の食料を確保するか――だ」
「…な、何だ、その事…。――そうね、昨日は私の持って来てたサンドイッチで足りたけど、もう何も無いしね」
「うむ。美味であった、同志瑞希。その礼は何れ必ずさせて貰おう」
「いいってば。…和樹を探すのも大事だけど、食べ物も手に入れないとね。鬼ごっこって、結構体力必要だし」
「そう――我々にとっては、どちらも重要な事だ。だが、二人では多数決を採る訳にもいかん。
そこでだ。…ここは一つ――」
瑞希の目の前に、大志の手が突き出される。その指に挟まれていた五百円硬貨が、朝日を受けてキラリと光った。
「この方法で今日の大まかな行動を決定しようではないか」
それ以上語る迄も無い。瑞希は双眸を鋭く光らせ、頷いた。
キンッ…!――と、大志の指が硬貨を弾く。クルクルと回転して垂直に舞った硬貨は、大志の手の甲へと落ちる――
――寸前に、もう一方の彼の手が硬貨を覆った。
「…私は、表。食料を探す」
「うむ。では我輩は裏だな。まいぶらざーの捜索を優先する。……では、ジャッジだ――」
大志の手がどかされる…
――そこにある硬貨を見た瑞希の目が、点になった。
硬貨は裏でも表でもなく、大志の指に挟まれ、その側面を見せていた。――つまり、“横”。
「ふむ。互いに外れだな。では、第三の目的である、まい心の女神あさひちゃんの捜索を最重要任務とし――」
――その日二回目の鈍くも凄絶な打撃音(マシンガンの如き)が、よく晴れた空へと響き渡った。
「――食料確保。今はそれが最優先。…いいわね?」
「うむ。長期戦になるであろうからな。糧食無くして戦いは出来ん。極めて合理的かつ堅実な選択だ」
「……今度またフザけたりしたら、両腕を蝶々結びにしてやるわよ…?」
「ふざけたり――とは、心外であるな。我輩はいつでも本気だぞ?」
「そう。私もアンタをブチのめす時、いつでも本気で殺スつもりでやってるわ」
「ほう。気が合うな、まいしすたー。はっはっはっ」
「そうね。ふふふふ…」
【大志 瑞希 森を出た所?】【食料確保が当面の目的】
【罠や待ち伏せがあるのを警戒して、市街地は避ける】
【進路は港の方を向いているが、二人は港の存在を知らない】
【大志は相変わらず重傷っぽい軽傷(眼鏡は無傷)】
【朝の八時位】
「・・・・・・」
「どうしたの浩平?」
罠の解除痕の周りを見ながら浩平がしゃがんでいる
「ん・・・これだよ」
罠の残骸しか見つからない
「罠がどうかしたの?」
「そうじゃなくて隣のこれ」
見ると地面が凹んでいる。靴後だろうか?
「パッと見た感じ、3つ程大きさの違う凹みがある
つい最近ここを3人ほど通っているみたいだ。
罠が解除されてる事からして一人は間違いなく
鬼ではない、残りの二人は恐らく一緒に行動してる」
「へー」
変な事に鋭い幼馴染に感心する
「つまり、この先に参加者の人がいる訳だね」
「その可能性が高いな」
「追いかけるの?」
「今からじゃ、たぶん間に合わない。それより解除してある
罠から使えそうな奴を集めよう」
「わかったよ」
【浩平一行・森で罠から使える物を回収中】
【昼前】
「ところで、どうしてさっきは千紗を見て逃げなかったですか?エルルゥおねえさん?」
「徹夜明けでちょっと頭がボケてました…千堂さん眠らせてくれないんですよ」
「ええっ!」
「絵のモデルのことですよ。勘違いしないでくださいね」
「もしもし、もしもし」
「うう……ん」
「おはようございます」
リアンは目を覚ました。
起きて、目の前には、黄色い髪の少女が一人。
「おはよう……ございます」
肩にかけられた、鬼のたすき。
「あ」
「ごめんなさい、寝ている間に、タッチさせてもらいました」
ぺこりと謝る、黄色い髪の鬼。
「……仕方ないです。こんなところで無防備に寝ていた方が悪いんです」
「では、これ、たすきです」
「はい」
たすきを受け取って、肩にかける。
「わたし、リアンといいます。あなたは?」
「エリア=ノースです」
「外国の方ですか?」
「外国というか……異世界からやってきました。あなたと一緒です」
「え? どうしてそのことを」
「千鶴さんに、参加者リストをもらったので……だれかが、わたしの魔法を封じ込めてしまったんです。
そんなことができそうな人をリストアップしてもらったんですよ」
「それで、ですか」
「えと、そういう魔法使いました? 使われたのなら、解いて欲しいんですけど……」
「わたしじゃないです」
「そうですか……」
「えと、それでしたら、わたしの魔法で探してみましょうか?」
「そんなことできるんですか?」
「多分……結界を張った人の、技量にも寄ると思いますけど」
「……お願い、できますか?」
「はい」
【リアン、鬼になる。魔法で結界師の捜索開始】
【時間は八時くらい】
【森の中です】
森の中を二つの影が疾走する.
逃げる影はリサ=ヴィンセン.世界を股にかける超一流のエージェント.
追う影は柏木千鶴.血に魅入られた同族を狩る,狩猟者の狩猟者だ.
「ハァ...ハ...しつこいっ」
手にした小石を振り向きざまに投げる.
投擲された石は,着地直後の千鶴の足元に当たり...
ガッシュッ
トラップを発動させる.
トラップの位置を正確に記憶し,疾走中に絶妙のタイミングで発動させる
リサの能力には驚嘆する他はない.だが,
「甘いですね」
それさえも,狩猟者たる千鶴の身体能力を凌駕することはできなかった.
地中から現れる網に包まれる前に,千鶴は再度跳躍し罠を回避する.
「GOD... DAMN!!」
相手は化け物か...驚愕を越えて呆れた,リサの表情がそう物語っていた.
だが,追う千鶴の顔にも余裕はない.むしろその顔には苛立ちが見てとれた.
身体能力の差を考えれば,とうに決着はついているはずである.
だが,次々に発動するトラップ,こちらがそれを回避するタイミングを読んで
姿をくらまそうとするリサの動きがそれを阻んでいた.
あやうく見失いそうになったのも一度や二度ではない.
そしてなにより...千鶴は歯噛みした.
互いのスピードが千鶴にタッチすることをためらわせていた.
このスピードでリサに触れようとすれば,その勢いでリサに怪我させる可能性があるからだ.
目の前をいくエージェントはそれさえも計算に入れ,
崖のそばなどのあえて危険なルートで逃走している.だが,
「しかしあなたは逃げられません」
もうすぐ森を抜け,平地に出る.何もない平地ではものをいうのは単純な走力.
罠もせいぜいが落し穴というところ.これにさえ気をつければ,千鶴が負けるはずかない.
だから,千鶴は危険を侵して森の中でタッチするより,
見失わないことを第一として追跡を続けた.相手の息ももうあがるだろう.
そして,森を抜けた.
追跡劇は見晴らしのいい平地に移行する.
千鶴は落し穴を警戒し,リサが走った場所と同じところを走る.
「終りです!!」
後,二歩...一歩...金髪がなびくその背中に手を伸ばし...
ズボッ
という音とともに訪れる,虚無感.あるべき手応えが地面から感じられない.
そして,自分が落し穴にかかったと認識するよりも早く,千鶴は落下し
ベチャッ
トリモチのいやな粘着感がその身をつつんだ.
「な...なんで」
驚愕する千鶴の頭上に
「よう...やく...かかってくれたわね...」
息も絶え絶えのリサの声が降り掛かる.
「上がって...これそう...?」
「悔しいですが...無理ですね」
跳躍しようと踏ん張ろうとすればより強くトリモチに粘着されてしまう.
トリモチをひきはがそうとしても,支えとなる壁面はもろすぎる.
「一つ聞かせて欲しいのですが.どうして同じ場所を走ったのに私だけ罠にかかったのですか?」
「Of corse,体重の問題」
この罠や先ほどから発動させている罠も実はリサが作った罠ではない.
別の者の手によるものだ,
リサは罠をあらかじめ感知し,利用しただけだ.
だが,いくつかの罠には少し手を加えた.
リサの体重では作動しないが,それよりもずっと重い者に対しては発動するように.
本来ならば,那須宗一のような男性の強敵や重火器を装備したものを
相手にしたときの対抗手段として用意したのだが...
「あなた,私と体格そうは変わらないのに,なぜか私よりずいぶん重いよね.Why?」
そういうことですか,と千鶴はため息をついた.
狩猟者の力を使役している時,なぜか彼女たちの質量は増大する.
その事実をリサが知るよしはないが,おそらく先ほどまでの動きで質量増加を看破されたのだろう.
エージェントの観察力恐るべし,といったところか.
だが千鶴は称賛の意を表するかわりに,ふてくされた顔を見せた.
「女性に対して体重の話しを持ち出すのは,失礼です」
「Sorry」肩をすくめるリサ
「どうしても出られないのなら屋台に連絡してもいいわよ?」
「心使いだけもらっておきます,一応管理者として通信器も持ってますしね.しばらくおとなしくしてます」
「そ.じゃ,Good by」
適当に手の平をヒラヒラさせて立ち去ろうとするリサに,
「See You Ageinと言わせてもらって構いませんか?」
声をかける千鶴.
リサはそれに答えず,ただチラリと笑みを見せると千鶴の視界から消えた.
【リサ 逃走成功】
【千鶴 落し穴で見動きとれず.通信器は持っているので連絡はとれる】
あ、やっちゃった。
ラストはHigh Speed Dance (5)ですね。
ところで、リサってこういう口調でいいんでしょうか。
Routesやったことないわけですが。
千鶴さんから逃げ切った初の人間キャラですな。
さすがの住井、北川の後期型罠も、プロを超えた超一流のエージェントの目はごまかせなかったな…
リサの口調については特に問題無いと思います。
「――うーん」
「どうかしたの? 我が同志たる田沢圭子嬢」
「我が同志なんて言わないでよぅ……」
野望のメガネ、清(略とその連れの田沢圭子は海岸沿いを歩いていた。なんの因果
か、二人はなし崩し的に行動を共にしている。肩には襷が掛かっているが、彼女達は鬼
ではない。付けているのは『鬼っぽい襷』であって、鬼の襷ではない。
「大丈夫かなぁ…」
「なに、まだそんなこと言ってるのあなたは!?」(むぎー
「ひ、ひひゃいひひゃいっひぇ!」
「無論ルールに抵触していないとは言えない。それは認める」
「じゃぁもういいでしょ? とるよ?」
「あなたは人の話を最後まで聞かないのね」(きうー
「あふぁふぁふぁだかぁひゃめっへふぁー」
もはやこのパターンがお定まりと化してしまっていた。ごはんを食べる時も寝る時も朝
起こす時も一貫して頬を抓る。お陰で右頬は情けなく腫れてしまった。しかし清(略は全
然まったく気にしない。
「公然の事実、という言葉があるわ。いくらむちゃくちゃなことをやっても、誰も何も言わな
ければ無問題」
「問題ありありだと思うんだk」
「まだいうか!」(ぎゅりー
「あふぁふぁふぁふぁふぁふぁひゃへへー」
「全く……あんまり手をわずらわせないで欲しいわね」
「私たちってこんなキャラだったっけ…?」
両目に涙を浮かべながら、独り悲しむ田沢圭子だった。
その涙が一滴、
頬を伝って地面に落ちた。
ぴとり。
その瞬間――水平線から、一機のヘリコプターがやってきた。
「なんで!?」
「何奴!?」
圭子は即座にツッコみ、清(略は瞬時に構えた。流派は八卦拳尹福派、牛舌掌の構え
である。寸分の隙も見せ付けない完璧なフォームだ。午前の太陽がメガネに反射する。
とても不気味な光に見えた。
「なんか違うよぉ……」
それ以前に、ヘリコプターに中国拳法で対抗しようとしてるとかそもそもヘリの存在自
体がアレだとか諸問題はあるのだが、圭子はどうでもよかったらしい。ヘリコプターは猛
スピードで清(略たちの上空に到着した。
「むぅ……」
「何よぉ…この展開は……」
と、ヘリ側部から拡声器のようなものが出現、放送を始めた。
『清(略! 田沢圭子! 聞こえているか!?』
「↑これなんて読んだの!? 清(略って!?」
『君達は重大なルール違反を起こしている。判っているとは思うが…改めなければ、即
刻――』
声が切れ、ヘリコプターは降下を始める。着陸する気だ。
「何? 即刻何なのよ!?」
「だまらっしゃい! バルカンが狙ってるわよ!」
清(略の叱責に思わず口をつぐむ圭子。事態の不条理さに泣きたくなった。
ヘリコプターが着陸し、反対側のハッチから人影が現れる。
「貴方は……篁」
「カカカ。私の素性を知っているとは貴様、ただ者ではないな?」
ヌッ、とした表情で篁と呼ばれた男は清(略に近づく。圭子はもーなにがなんだかわか
らない。
「ええ……ここで全てを話す気にはなれないけど」
「貴様とはいずれ決着をつけねばなるまいが――しばしお預けだ。さあ、その襷を外して
もらおうか」
「はい」
篁の指示に圭子はあっけなく従った。
「ちょ…待ちなさい圭子さん! 罠よ!」
罠って。
圭子は心の中でツッコんだ。
「フフフ…こちらのお嬢さんは物分かりが良いな。状況を冷静に捉える者ほど長生きする」
「くっ……」
「さあ清(略よ。貴様はどうするのだ?」
「何を戯れ事を!」
「そうか……本当にそれでいいのか?」
と、篁はヘリコプターに向かって歩き、ハッチを空け、
「しまっちゃうぞ」
そう言った。
「……!」
そこには、古今東西のありとあらゆる道具――三角木馬、猿轡、ローソク等――が収まっ
ていた。これには流石の清(略も戦慄を覚える。
「フフフ……本部に戻ればこの程度では済まされぬぞ? 清(略よ」
「くそっ…」
暫くの間、清(略は逡巡していたが、やがて諦めたのか襷を取り、篁に放り投げた。圭子は
清(略と関わりだして初めて、彼女の行動に共感を覚えた。
「判ればよい」
そう吐き捨て、ヘリコプターは篁を載せて去って行った。
海岸には地に深く拳を叩き着ける清(略と、滝のような涙を流している田沢圭子だけが
残された。
「くっ――くそぉぉっぉぉぉおお!!!」
「……もーツッコむ気にもなれないよぉ…」
【田沢圭子 清(略 襷を放棄】
ここは、森の脇に走る道。
「しっあわっせわー♪ あーるいーてこーないー♪」
「だーから歩いて行くんだネ♪」
「一日一歩。三日で三歩」
この道を三つの人影が。
「さーんぽすすんでにっほさっがるー♪」
「じーんせいは、One-Two-Punch!」
「汗かきべそかき歩こうよ」
軽快な足取りで、ゆっくりとジョギングしていた。
「もうでぃー! まじめにうたってよ!」
「何を言うか。私はしっかり歌っているだろう」
「ウーン、そういうんじゃなくて……もっとコウ……リズムに乗ってみたら?」
「リズム……」
最近異次元を歩んでいると言われて久しい、D一家である。
「それじゃつづきいくよ? ……あっなたのー、つけたあしあとにゃー♪」
小生意気でありながらも人懐こいょぅι゛ょ、しのまいか。
「キレイなー、花が咲くでショウ♪」
みんなの母親、(巨乳の)宮内レミィ。
「う……腕を振って足をあげてわんつー! わんつー!」
本当に腕を振って足をあげて走り出した糞真面目な神様、D.いや、ディー。
「きゃははっ、でぃーうたにあわせてはしってる!」
「ホント、Dって不器用だよネ」
「う、うるさいっ! 真面目に歌ってやったらこの仕打ちかっ! 私を侮辱するのかっ!?」
しかし……彼等は決してゲームを忘れているわけではない。今回の事件で、その事実が証明される!
ガサガサ……
「What? ....シッ!」
不意に一行の目の前の茂みが鳴った。ハンターの耳でそれを聞きつけたレミィが二人を黙らせる。
「えっ?」
「ムッ、どうした?」
(誰かいるヨ……2人とも、伏せて!)
小声で命令する。
(う、うん…)
(あ、ああ…)
お母さんには逆らえず、素直にその場に伏せるまいか&D.
「うーん、野宿なんて始めてでしたけど……思ったよりよく眠れるものですね」
「ははは……それはよかった」
森から出てきたのは……栞&良祐ペア。
「良祐さんのおかげで寝込みを襲われることもありませんでしたし、本当、感謝してもしきれませんよね」
「いや、俺の仕事上徹夜とかは慣れてるからな。一晩や二晩くらい軽いもんさ」
「それじゃあ今夜もお願いしますね」
「うぐっ……」
壮絶なる野心と下心、本音と建前をぶつけ合う2人。まぁ、もっぱら利用されてるのは良祐であることは彼の目の下のクマを見れば明らかなのだが。
「では、これからどこへ行きましょうか」
「そうだな、ひとまず……」
「Target Lock-on! D,Maika! Go! Go! GoGoGooooooooo!!!!!!!!!」
その姿を認めた瞬間、レミィが叫んだ。
「えっ!?」
慌てて振り返った栞と良祐が見たのは、自分らに迫るパツキン美形青年とょぅι゛ょの姿。
「わるいけど、つかまってもらうよっ!」
「大神としてのプライドのため! こんな座興で負けるわけにはいかんのだ!」
「わわっ! 鬼です! しかも2人……いや、3人!」
「くそっ! こんなところで捕まってたまるか……栞ちゃん! 君は早く逃げ」
「わかってます!」
良祐の言葉が終わるより遥かに早く、栞は道の向こう側に駆け出していた。
「あ……ああ、それでいいんだ」
少し面食らった良祐だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「俺もこいつらをなんとかしたらすぐに後を追う! 待っててくれ!」
「はいっ!」
「では……」
改めて良祐は向き直り、ちょうど足元に落ちていた手ごろな木の枝を拾い上げる。
「でぃー! あいつまいかたちとたたかうつもりだよ!」
「ふん、愚かな! 崇められうたわれるものである我に歯向かうつもりか小さき者よ! その罪、死すら生ぬる……ガフッ!」
良祐が振り下ろした枝は見事にDの脳天を打ち据え、一撃でダウンを奪った。
「でぃーつかえねー! やっぱりここはまいかが……てやっ!」
たーんと地を蹴り、飛び跳ねるまいか。だがそこはやはりょぅι゛ょ。良祐はこともなげにかわす。
「ふふーんお嬢さん、そんな危ない真似をしてはだめだ。将来いいレディーになれないぞ!」
さすがにょぅι゛ょを殴ることは出来ない。仕方がないので良祐は足をすくって転ばそうと、まいかの足元を狙って枝を向ける、が……
ヒュオ……ガゴッ!
「な、なんだとぉ!?」
刹那、枝の中ほどに飛んできた矢が突き刺さり、遥か後ろに弾き飛ばされた。
「Hitネ! 動く獲物は百発百中!」
「く、くそっ! 計算外だ。ここはひとまず……な、なにぃ!?」
今日は驚くことが多い良祐。逃げようと振り返るが、そこには先ほど殺した(※殺してません)はずのパツキン男が不適な笑いを浮かべて立っていた。
「フフフ……甘いな。行くぞッ! まいか!」
「うっしゃおっけー! いくよでぃー!」
結果的に、良祐を挟み撃ちの形で取り囲む。
「大神神拳奥義!」
「しのまいかひっさつ!」
「う……う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ウィツァルネミテアアパカー!」
「ぐっはぁ!?」
腰の回転の乗ったいい一発が良祐の顎に決まり、のけぞったところに……
「ょぅι゛ょりゅうせいきーーーーーーーーーっく!!!!」
「うぎゃはぁ!?」
しのまいかの跳び蹴りが後頭部に決まった!
「ぐ……ぁ……。しまい……姉妹丼の……夢……が……」
哀れ、そのまま昏倒し、大地に倒れる良祐。
「………まいか」
「………でぃー」
「やったネ2人とも! Combinationの勝利だヨ!」
駆け寄る3人。そして……
パシィン!
ハイタッチを一つ!
「「「一匹ゲットーーーーーーーーーッ!!!!」」」
ちなみに、その頃の栞はただひたすら走り続けていた。
「たったったったった……っと」
道が終わり、草原になり、また森に入るまで、ひたすら走り続けた。
「ふう……思ったより早かったですね」
大きな岩に腰掛け、バニラアイスをつまんでちょっと休憩。
「新しい男を捜さないと……」
【D一家 良祐を倒す】
【ディー ポイント+1、コンビネーション殺法を会得】
【良祐 鬼になる】
【栞 良祐を見捨てて逃亡。新しい男を捜す】
「浩平殿!こちらに!」
トウカが叫ぶ、何かあったらしい
「これを・・・」
「どれどれ」
見ると罠が作動している
「網でつるし上げるタイプか・・・
網は使えるな、ナイスだ!トウカさん」
「いえ、そうではなくて中に・・・」
「中の?・・・」
そういいながら覗いてみると・・・
やや青みがかったショートの女の子が眠っていた
「どうします?」
「とりあえずタッチしとく」
少女に手を触れる
「これでよし、事情を説明するのは起きてからでいいだろ」
「zzz・・・・・・皐月ちゃんのばかぁ・・・」
「寝言か?」
【ゆかり?タッチされる(まだ寝てる)】
【浩平一行、網入手】
【昼前】
森の中にて。
「うぅ…」
名雪のボディプレスを食らった山田まさきは、やっとこさ目を覚ました。
「……えっと…ここは?」
辺りをきょろきょろと見回す。
「…お〜ぃ、まなみ〜」
自分以外の人影が確認できないのでとりあえず相棒の名を呼ぶが、答える者はいない。
「………」
考えること数秒。
この状況から察するに…
「………逃げられた?」
御名答。
「まったく…どこかで男を引っかけてるんじゃあるまいな」
自分は浮気する気マンマンだったくせに浮気されるのは嫌らしい。
とにかくここにいても仕方がない思い、彼は数時間ぶりに腰を上げた。
「さて。どこに行ったもんか」
行く当てなどない。
まぁ、これから彼がとる行動を考えると行く当てなんてなくても構わないのだが。
「…そうだ、思い出した。新しい出会いを見つけに!」
まなみがいない今、彼を止める者は誰もいない。女探しの始まりだ。
「ふっふっふっ…待ってろよまだ見ぬマイラバー。
まなみとのHで鍛え上げたゴールデン右手がっ!
光ってうねっておんにゃの子に触りまくり!相手はすぐにHな気持ちになってそのままズンパン!」
自分はテクニシャンだと主張しているようだ。
よく言うよ。胸と股間を適当に触る事しか知らないくせに。
確かにまなみには効果があるが、それはまさきが凄いんじゃない。原作のシステムが凄いのだ。
「さあ行くぞっ!俺は主役だ!」
気合入ってるね。彼好みの女に出会えればいいんだけども。
生憎、まなみも浮気相手もいたる絵大爆発だからなぁ。最近の若い娘をブス扱いしないように。殺されるよ?
【山田まさき 行動再開】
>>220-222まで更新しました
…スレの進みが早い・゚・(ノД`)・゚・
いや、いいことなんだが
「うりゅー」
スフィー、悩む。
「どうしたのスフィーさん?」
瑞佳、状況が分からず聞く。
「でも、ここでカミングアウトしちゃうのも可哀想だし…」
「スフィー殿、この人間はまだ寝ているが? 寝ている者に事情を説明してもしょうがな
い気がするが」
トウカ、同じく状況を把握できず訊ねる。
「そういうことじゃないんけどなぁ……」
みしっ。
「……!」
浩平、事情を察する。
それとなく吊るされた人間をみやる。
そして、驚愕。
みしっ。
「? 何の音?」
「やっぱり言うべきなのかなぁ…」
スフィー、回りに気を遣う。
みしみしっ。
「やっぱり言うべきよねぇ…」
スフィー、まだ悩む。
「……悪い、ちょっとトイレに行ってくるわ」
浩平、逃げる。
みしみしみしっ。
「行ってらっしゃい〜」
瑞佳、全く気付かない。
みしみしみしみしみしみしっ。
「(……さっきから音がする)」
トウカ、ようやく異変に気付く。吊るされた人間を見や――
ぶちっ。
縄が切れた。
「……っ、危ない!」
トウカは急いで落下地点に向かい、間一髪のところで受け止め――
「うわわわっ」
――きれなかった。
「うりゅー…やっぱり…」
「え、なに? どうしたの?」
瑞佳だけが状況についていってなかった。
【トウカ ゆかりの重量を身をもって知る】
【折原浩平・長森瑞佳・スフィー・トウカ 一部を除き現状まま】
Σ(゚д゚lll)キヤセスルタイプダッタノ!?
バババババ…
商店街から高台へ続く細い坂道を、一台のバイクが走って行く。獣道と言っても過言ではないほどに
険しい道だ。しゃべりながら乗っていたら舌を噛むくらいの揺れが断続的に続いている。
『どうにかならないの?』
『この道を抜けるまでの当分は無理でしょうね』
『詩子さんは止められないの?』
『無理です。一度バイクに乗った詩子は、目的地に着くまで止められません』
目を潤ませながら必死に訴えてくる澪に、筆談で答える茜。確かに詩子は夢中でバイクを運転していて、
とても周りの言うことなど聞いてくれそうに無かった。
こういう時に、筆談は便利だ。
さっきからこういうやりとりをしている二人であったが、しかし、これには一つ欠点があった。
『う…さっきからずっと字を見てたから気持ち悪いです』
『わたしもなの…』
バイク揺れに酔うことであった。これはきつい。
これに次ぐ問題としては、バイクが出す騒音で鬼を呼んでしまう恐れがあることだった。
鬼が集まりつつあった商店街から運良く逃げ出すことができたのだから、
さすがに志半ばで鬼にはなりたくない。
鬼が出てきたところで振り切ってしまえばいいという意見もあろうが、さすがは葉鍵鬼ごっこ。
人外の連中が多いこともあってバイクなどでは到底太刀打ちできないのが現状である。
まあ、そんな連中に会ったら奇跡でも起きない限り逃げおおせることができないわけだが。
『この坂道を過ぎれば…平坦な道になると思います。それまでの辛抱です』
『…結構辛いの』
『…我慢です、澪』
二人にしてみればかなり切実な話をしているとき、唐突に詩子が声を上げた。
「ああっ!!…うぐっ!」
ついでに舌も噛んでくれたようだ。
茜が詩子に『どうかしましたか?』と澪のスケブに書いていると、急にバイクの速度が下がり始めた。
最後にパスッ…という情けない音を出して、バイクは完全に停止した。
「どうかしたんですか?詩子」
もう筆談する必要がなくなったので、口に出して茜は言った。
詩子は少しの間口元に手をやって転げ回っていたが、なんとか起き上がった。
「どうしたのですか?…舌を噛んだのはわかりましたが」
「あ、あのね〜、ガソリンが…無くなっちゃった」
てへっ、と気不味そうに笑う詩子。あっけにとられる茜と澪。
「…仕方ありませんね」
「ごめんね〜…早めに気が付いてればよかったよ〜…」
『こんなところにいたら、鬼に捕まっちゃうの。早く隠れるの』
「いいですよ詩子。とりあえずこの森の中に入りましょう。丁度良く高い草が生えてますし」
「そだね。こんなに高かったら絶対見つからないね」
そして草の中に巧妙にバイクを隠した後、茜一行は草の生い茂る森へと入っていった。
【茜 澪 詩子 オートバイで脱出なるも、高台手前でガス欠】
【バイクの燃料 無】
【時間 昼前】
「お帰りなさい、千鶴さん」
「ご苦労様です、秋子さん」
鶴来屋本社ビルの一室。鬼ごっこの管理人たちが、休息所として使っている部屋だ。
いつものように穏やかな笑みを浮かべながら、戻ってきた千鶴を、秋子が出迎えた。
千鶴の髪の毛や、服のあちこちにはとりもちがこびりついたままだ。
通信機で管理人雑用組(鶴来屋社員たち)を呼び、彼らに救助されて、そのまま鶴来屋に戻ってきたのである。
千鶴は、備え付けてあるカップを取って、中に紅茶を入れ、秋子の隣に座った。
「見ていましたよ。見事にやられましたね」
「もぅ、いじめないでください秋子さん」
顔をほんのりと赤く染めて、千鶴はうつむいた。
少し現状報告を受けた後、千鶴が切りだした。
「ところで、現時点でわたしが捕まえた人数、教えていただけますか?」
「10人ですね」
「他の鬼の人たちの中で、一番多く捕まえた人は誰ですか?」
「御堂さんと、坂上さんですよ。人数は四人です」
「そうですか」
さすがは秋子嬢。あらかたの情報を記憶しきっているらしい。
「一時間前の情報ですから、もう少し増えているかもしれませんが」
「ですが、わたしが圧倒的に多く捕まえていることにかわりはないでしょう?」
「そうですね」
「ですから、わたしはしばらく、ゲームから降りておこうと思います」
「おや」
「さすがに、主催者がトップ賞を取ってしまってはまずいでしょう? それに……」
少し苦笑して、続ける。
「鶴来屋社長としての仕事が、かなりたまっているらしいので」
「あらあら」
二人は、軽く笑いあった。
「しばらく社長室にこもりっきりになりそうです」
「ふふ、がんばってください」
「それでは、何か非常事態が発生したら、呼んでください」
「はい、わかりました。では、また後ほど」
そして千鶴は、空になったカップを持って、部屋を出ていった。
(……とは言ったものの、やはり、悔しいですね)
(リサ=ヴィクセン……できれば、わたしの手で捕まえたいものですね)
【千鶴、鶴来屋社長室へ本来の仕事をしにいく】
【でも、やっぱり悔しいらしい】
【時間は昼過ぎで】
「いたたたた・・・」
「大丈夫か?トウカさん?」
「浩平、トイレにいったんなかったの?」
「大きな音がした所為で止まっちまった」
大嘘
「某とした事が・・・女子ひとりささえれないとは・・・」
「しかし、豪胆というか鈍感というか・・・あのショック
でも目が覚めないとは・・・」
「だめだよ、そんなに激しくしたら壊れちゃうよ」
「どんな夢みてるやら・・・」
【折原浩平・長森瑞佳・スフィー・トウカ 現状まま】
【ゆかり、まだ目が覚めず】
294 :
書き手:03/03/26 00:11 ID:AvxqS5Vh
すいません脱字です
×「浩平、トイレにいったんなかったの?」
○「浩平、トイレにいったんじゃなかったの?」
川辺の桟橋に立つ、少女が一人。
ひかりが囮となって逃がした、観鈴ちんである。
どれくらい川を下ったのか解らない。――が、暫くゆっくりと流れに任せていた所、桟橋が見えて来た為、
彼女は些か慌ててオールを漕ぎ、小舟を桟橋へと着けたのだ。
…そして、暫し呆然と佇み、川上の方を見つめる。
「……ひかりさん」
ぐし…――と、眼に涙が浮かぶ。鼻まで垂れそうになる。
「が、がお…、…観鈴ちん、泣かない。ひかりさん、また会おうって言ってくれた…。会えるまで、逃げなきゃ…」
涙を堪え、観鈴は周囲を見回した。背後は森。対岸にも森が広がっている。――ここがどの辺りであるのか、
まるで見当が付かない。
…再び小舟に乗り、更に川を下るという手もある。が、もしこの先に激流ゾーンや滝なんかがあったりしたら、
観鈴ちん・大ぴんちである。
「……川は別の意味で危険かも。こっちに行こう」
結局、観鈴は森へ伸びる小道を歩く事に決めた。
「………誰も居ない」
森の中は、静かだった。時折吹く風が木々を軽く撫で、枝葉が擦れて音を鳴らす。野鳥達の囁き声。
人の声は、無い。
「…観鈴ちん、また一人ぼっち」
呟いて、手を頬に当てる。――ひかりが別れ際にしてくれた、頬へのキス。まだその柔らかさと温もりが
残っている様な気がした。
「にはは…。くすぐったかったけど、なんか嬉しい」
優しかったひかりを思い出し、嬉しげに笑った。しかも、『どろり濃厚〜』まで飲んでくれた。
――そしてまた、不意に寂しさが襲う…
「がお…っ、泣かない、泣かない。………そうだ。どろり濃厚…まだあったかな?」
もそもそとポケットに手を突っ込む。――その手が、四角い物体を掴んだ。
「あった…! これが最後の一個――あっ…!」
自らを鼓舞するかの如く、引っ張り出した『どろり濃厚』を掲げて見せたのだが、その拍子に足元がもつれた。
――べたーんっ!…と、すっ転ぶ観鈴ちん。手からも、すぽーんっ!…とばかりに『どろり濃厚』が外れて、
前の方へと転がって行ってしまう。――その時、
ばささぁっっ!――
観鈴の手からすっぽ抜けた『どろり濃厚』の落下した小道が、落ち葉を巻き上げて弾け飛んだ。
「………が、…がお」
誰が仕掛けたのか、捕獲網のトラップである。
今は人では無く、観鈴の放り落とした『どろり濃厚』を網の中に巻き込んで、ぷらーんと揺れている。
「わ、罠…?」
この先にも仕掛けてあるのだろうか…? 観鈴は戦慄し、冷汗を一筋、頬から顎へと滑らせた。
「がお…、ど、どうしてこういう事するかなぁ………――あ、これは…?」
小道の脇に、細く長い木の棒が落ちていた。少しばかり古ぼけている。
標識などを作る為の資材が、置き去りにされたままであったのだろうか? だが――
「これで、歩く先を、突付いて行こう。観鈴ちん、頭いいっ、ぶいっ♪」
そうやって、慎重に進む事にした。歩くスピード自体も遅くなるが、罠に引っ掛かって立ち往生するより
はいいだろう。…鬼が現れたら、その時はその時だ。
自分の歩く先を長い棒で突付きながら、観鈴はゆっくりと森の小道を歩き続けた。
【観鈴 小舟から降りて岸へ上陸】
【森の小道を進む】【小道に罠が仕掛けられているのを知る】
【長い木の棒(2メートル前後)を入手 歩く先を突付いて罠の早期発見・回避を図る】
【午前10時頃からお昼前辺りで】
297 :
さぶ:03/03/26 00:19 ID:e2c/T245
少年が一人、河原で水浴びをしている。
――という描写を見て思わずムラムラしてしまう読者諸兄(含:お姉さん)。ヘンな願望
は抱かないほうがいい。彼は着痩せするタイプだ。おまけに結構たくましい体つきをして
いる。あまりご期待には添えないだろう。
「……こういうのも中々悪くないね」
その名も無き少年は、まるで久しぶりに水中に浸かったかのように身体を洗っていた。
「ふぅ……さっぱりした」
少年は水から上がる。身体を拭くようなものがないので、代わりに水絞りしておいたT
シャツを使った。あまり清潔とは言えないが、一日たっぷりためた汗を流せただけでも僥
倖だろう。
と、少年は視線に気付く。
「………」
じーっ。
顔を真っ赤に染めた雪見が体育座りでそこにいた。
「あれ? 起きたんだ。おはよう」
この上ないくらい爽やかに笑みを浮かべて少年は挨拶を交わす。無論少年はすっぽ
んぽんの裸一貫だ。しかも隠すそぶりすら見せない。これだけ恥じらいも無くやられる
と、逆にわざとらしい。
「ちょっ……ま、ま、前隠しなさいよ!!」
「え? ――ああ、ごめんごめん」
少年は雪見に指摘されてやっと気付く。一応照れてるように見える割に余裕のある動
作。確信的犯行か天然まるだしかのどちらかにしか思えない。尤も、この少年に限って
言えばそのどちらでもなかったりするのだが。
298 :
さぶ:03/03/26 00:19 ID:e2c/T245
「ごめん」
「本当にわざとじゃないのね?」
「そんなヘンな趣味は持ってないよ」
「………そうよね」
雪見は納得してくれたようだ。
「起きてるって気付かなかったんだ」
「まあね。いつの間にか寝ちゃった私も悪いことだし……って、そういえばいつ寝たの?
私一度も起きなかったけど…」
「昨日は寝てないよ」
少年はさらりと言い流す。
「…大丈夫なの? 確かに一晩寝ないくらいで死にはしないけど――何か随分健康そう
ね」
「これでも健康には自身があるほうだからね」
少年は身体を動かしてみる。徹夜している割に異様に元気だ。昨日雪見を救出した時
から寸分の衰えもない。
「本人がそういうなら、そういう事なんでしょうね」
雪見はもう一回納得して、笑った。とても演技には見えない。演劇部の部長がそう言っ
ているのだから間違いないだろう。
「まずは空腹を満たしましょうか」
「そうしようか」
二人は合意して、とりあえず食料を探すことに決めた。あてはないが、まあ何とかなる
だろう。
【少年・雪見 移動開始。食料調達へ】
【時間→朝】
「あれ、鬼だよね…?」
穏やかに梶原夕菜は呟いた。
目の前には鬼のたすきをかけ、ケチャップの中で眠り込んでいる(ように見える)伊藤。
そしてその少し離れたところには、こちらは正しく眠り込んでいる皐月。
「このまま、ほおっておいたら捕まる…よね?
…あ、でもでも逃がしちゃったら鬼の人が困る…かな?」
彼女は参加者中トップクラスのお人好しだった。
「どうしよう…」
悩む夕菜。
しかしこういった問題に答えなど無い。
「宗ちゃんだったら…どうするかな?」
悩んだ末、結局考えはそこに行き付いた。
大事な弟の姿を思い浮かべてみる。
想像の中で弟は言う。
(男なんか助けるかよ)
彼女は弟をしっかりと理解していた。
「うんわかったよ、宗ちゃん」
「もしもし…」
「…んー? 何、もう?」
寝ぼけて親友と勘違いする皐月。
「あのね…このままだと捕まっちゃうよ」
しかし全く気にぜず夕菜は続けた。
「……え!」
慌てて飛び起きる。
そして目の前の夕菜に気付いた。
「え、誰? ゆかりは?」
「えーと…… その人の事は知らないけどあそこで鬼の人が寝てるの…」
「え!?」
混乱気味の頭を動かし、夕菜の指の先を見てみる。
そこには言うまでもなく伊藤が…
「え、伊藤君?」
「だから離れた方がいいんじゃないかな?」
ゆかりが行方不明。目の前には優しそうなお姉さん。少し離れたところに鬼の伊藤。
類まれな思考速度で頭を整理する皐月。
そして夕菜の提案が妥当性溢れるものであると理解する。
「そうですね……
…有難うございます、助けてくれたんですね?」
「そんなたいしたことじゃないよ」
本気でいうのが夕菜だ。
皐月もそれをおぼろげながら理解する。
「あ、あの私湯浅皐月っていいます」
「私、梶原夕菜っていうの。よろしくね」
「はい! 夕菜さん!」
早速その場を離れながら互いに自己紹介をする二人。
和やかな空気が流れる。
カア… カア…
伊藤は寂しそうなカラスの声を聞きながら気絶中。
夕方じゃないのにねえ。
【伊藤 気絶中】
【皐月 目を覚まして夕菜と共に移動】
【夕菜 皐月をおこして共に移動】
「ふぅーっ」
犬小屋……ならぬ、港の管理人詰め所で、一夜をあかしていた霧島姉妹。
歩き通しで疲れていたのだろう、佳乃はまだ熟睡している。
先に起きた聖は、調理場に立って朝食を作っていた。
ポテトは外に、
「自分の食料は自分で探してくるんだ」
と、聖に放り出されてまだ戻らない。
時計を見る。九時半。
そろそろ良い頃合いだな。コンロの火を止め、お椀を用意する。
お玉を取り出して、みそ汁を二杯。
鍋で焚いていたお米。少し焦げているが、
「これがうまいんだ」
満足げに頷きながら、茶碗によそう。
さて。
「佳乃ー、朝ご飯だ」
「あー」
姉妹はのんびりゆったり朝ご飯である。
こちらはポテトであります。
ああ、なぜ私はこんなところでこんなことになっているのでしょうや?
いえ、最初はちょっとした出来心だったんです。
何かいいにおいがするから、行ってみたわけですよ。
いや、当方、人よりずっと鼻が利きますのでね。
ところがこれですよ。
いきなり木の上から降ってきたかごの中ですよ。
豚肉の骨(そう、骨!)はGETできたのですがね。
さすがにこれだけでは腹は満たせないのですよ。
しかし出られないのですよ。
「ぴこぴこーーーーー」
鳴いても、誰も来やしません。
ああ、泣きそうですよ。
誰か助けてください。
本当に。
赤髪幼女でも、人相悪い黒服男でも、誰でも良いですから。
「ぴこぴこーーー」
ああ、助けてください。
「あら?」
「どうしましたか? 南さん」
「いえ、何か鳴き声がしませんでしたか?」
「私には聞こえませんでしたけど」
「勘違いかしら……」
……………………
「やっぱり。私、人より耳はいいんですよ。こっちです」
「あ、南さん」
【霧島姉妹はのんびり朝食】
【ポテトはひぃひぃ】
【おねぇさんズ、ポテトの所へゴー】
真琴にスマソ。
301を修正
カア… カア…
一方、伊藤は寂しそうなカラスの声を聞きながら気絶中。
夕方じゃないのにねえ。
【伊藤 気絶中】
【皐月 目を覚まして夕菜と共に移動】
【夕菜 皐月をおこして共に移動】
全参加者一覧及び直前の行動(
>>305まで)
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
『』でくくられたキャラはショップ屋担当と取材担当、レス番は直前行動、無いキャラは前回(
>>179-186)から変動無しです
fils:ティリア・フレイ
>>198、サラ・フリート
>>198、【エリア・ノース:1】
>>266-267 雫:長瀬祐介、月島瑠璃子、藍原瑞穂、
【新城沙織】、【太田香奈子】、【月島拓也:1】
痕:柏木耕一、柏木梓、柏木楓、柏木初音、柳川祐也、日吉かおり、相田響子、小出由美子、阿部貴之、ダリエリ、
【柏木千鶴:10】
>>291-292 TH:藤田浩之、神岸あかり
>>247-248、長岡志保、保科智子、マルチ、
来栖川芹香、松原葵、姫川琴音、来栖川綾香、佐藤雅史、坂下好恵、
岡田メグミ、松本リカ、吉井ユカリ、神岸ひかり、しんじょうさおり、田沢圭子
>>275-278、
【宮内レミィ】
>>279-282、【雛山理緒:2】
>>191、【セリオ:1】、【矢島】
>>229-233、【垣本】
>>229-233
参加者はこのリストで確定です。
このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。目標NG0で。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
>
ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/
乙!
そういや、最近雫・痕のキャラ見てないなぁ……と思ったら。
やっぱり。
そうですねぇ、
雫、痕、鳩に動きが無かったので纏まりよく投下出来ましたし
目の前には香里からこれまでの経過を聞く、香奈子の姿がある。
「なるほど……つまり、その性悪な妹を「私に妹なんていないわ」
「……その『美坂栞』だけが目的なわけね」
「ええ」
「なら―――」
慎重に言葉を選びながら、香奈子は続ける。
「他の人――――たとえば私が一緒にいた人たち――――には興味がない?」
「ないわ。――――もっともさっきみたいに遭遇してしまえばどうするかわからないし、
障害になれば排除するだけだけれど」
「……OK。手を組みましょう」
このまま鬼になってうろついても、瑞穂たちに益することは何もない。
なら、この危険な人物には目的のみに専念してもらうべきだ。
香奈子は冷静だった。
セリオはその香奈子の意図を正確に把握していたが、なにもいわなかった。
呉越同舟、というには呉越の系統が似ている……二人とも微妙にドッグファイトタイプだからかもしれない。
なにより、
「フフフ。見てなさい、怨敵美坂栞。捕まえたら……ひん剥いて……して……してやるわ。
ぷにもえろりぃは……泣き叫んでも……じゃむ……(以下略)」
くくくっ、とここでなければ職務質問確実な含み笑いを浮かべる香里を
止めることが出来るとは思えなかった。
なお、セリオはこの会話をバッファレベルで即削除しているので、
データとして記録に残ることはない。
彼女は単に情報処理能力に秀でているだけでなく、個個の情報の私的な評価への『配慮』
使用者のプライバシーに配慮することのできる、実に『高性能』なメイドロボだった。
市原悦子ではこうはいかないだろう。
「……とりあえず食事にしませんか?」
セリオはとても建設的だった。
【香奈子 鬼になり香里・セリオと同行】
「はあっ、はあっ…」
少年は走る。いや、逃げる。
すでにどれほどの時間経ったのだろう。
疲れては隠れ、隠れては休み、休んでは見つかり、見つかっては逃げて疲れる。
それを延々と繰り返してきた。
相手は少女なのに、なぜか逃げ切れない。
いや、それどころか向こうはだんだんと「狩り」を楽しむ気配さえ出てきている。
「あんたもしつこいわね!いいかげん楽になっちゃえば?」
逃げる少年―――久瀬の予想外のしぶとさに呆れながらも、執拗に追いかける鬼――
天沢郁未。
2人が追いかけっこをしているのは、森の外れ。
罠も仕掛けられていないような小さな小道であった。
…ああ、見ていますか倉田さん。
この久瀬、現在人生の中で最大のピンチであると同時に、
最大の見せ場を迎えようとしています。
そう、例えるなら、9回裏2死満塁―――。
などと、いささか頭の方もイっちゃっている久瀬であった。
対する郁未の方も、いくら不可視の力の使い手とはいえ、その体力は無尽蔵ではない。
かといって、ただの一般人に不可視の力を使うのも面白くないし何より危険だ。
仕方なく、普通に追いかけていた。
…と、それと時刻を同じくして…
森の中の小道を、2つの疾風が駆け抜けていた。
風を切り、大地を蹴り、激しい追跡劇を演じているのは、単純な肉体的戦闘力なら最強クラスの
戦士・ゲンジマルとニウェであった。
「さすがにやりおる!」
「まだまだ負けぬよ!!」
2人の間には余裕など欠片も無い。
食うか食われるか。
戦場の雰囲気そのままの気迫で、追い追われる戦士達。
信じられないほどの強靭な肉体と体力、そして精神力があればこそ成り立つ、
まさに死闘とも呼べる鬼ごっこであった。
…だが、この微妙な均衡は、予期せぬ形で破れることとなる。
本人達は知らないが、南から北へと向かっている久瀬・郁未。
そして、北から南へと向かっているゲンジマル・ニウェ。
彼らは、実は同じ道で鬼ごっこを繰り広げていた。
最初に気がついたのは、ゲンジマルだった。
今自分たちが走っている道のちょうど反対側から、人が走ってくる気配がする。
足音は―――2人分。
走っているということは、おそらくは追いかけっこの最中だろう。
下手をすれば正面衝突である。
すぐ後ろで追ってきているニウェもそれに気がついていた。
―――さて、どうするか。
脇道に避けようにも、道の両脇は深々と藪が茂っている。
出来ることなら入らないに越したことは無い。
引き返すなど論外だ。
Uターンする時に出来る隙を見逃してくれるほど、二ウェという男は愚かではない。
なら、結論は1つ。
このまままっすぐ行った上で、うまくかわせば良い。
おそらくは二ウェが自分の立場でもそうするだろう。
そう判断し、そのままスピードを緩めることなく駆け出していった。
…ゲンジマルがこの判断を後悔するのは、この後すぐのことである。
ゲンジマルたちに遅れて、久瀬と郁未も前のほうから接近する気配に気づいていた。
いや、すでに姿も見えている。
見た目はかなりの年寄り…だが、その動きは人間業とは思えないほどに素早い。
稲妻のように移動するその2人は、みるみるうちに久瀬たちに接近してくる。
「(…どうする?…しかし、脇道に避けるのは危険だ。このままうまくすれ違おう)」
「(鬼と参加者のようね。…それにしても、あいつら本当に人間?
…あいつらになら、いいかも―――ね)」
「(小童と娘か。走りからすると普通の人間のようだな。特に危険はあるまい)」
「(ふん、わしらのジャマにさえならなければ関係はない)」
お互いの思惑が重なり合う。
すでに、久瀬とゲンジマルはあと10メートルで正面衝突しようとしていた。
―――その刹那。
ゲンジマルが、跳んだ。
ゲンジマルを避けようと一歩右に避けた久瀬の頭上を越え、久瀬の背後に着陸した。
一瞬、久瀬には何が起きたのかわからなかった。
一瞬足が止まり、呆然となる。
そして、ゲンジマルは着地と同時に再び跳んだ。
今度は目の前にいる鬼…天沢郁美を飛び越えるためである。
上手くすれば、この2人を目くらましにして逃げられるかもしれない。
そう判断したゲンジマルだったが、彼は知らなかった。
郁未が不可視の力と言う人外の力の使い手であることを。
そのため、ゲンジマルはうかつにも戦場において何よりも危険な行為―――すなわち、
油断をしてしまった。
この娘は、特に気をつけるまでも無い、と。
油断―――それは、力の劣る者でも力が上のものを倒せるための要素としては
非常に重要な要素を占めるものであることは言うまでもない…。
さて、ゲンジマルが大気の微妙な違和感に気付いたとき、彼はまだ空中にいた。
その空中に、突如として砂嵐が出現した。
郁未が―――不可視の力で小型の竜巻を起こしたのである。
しかし、その竜巻で直接ゲンジマルを狙ってはルール違反になってしまう。
だが、「直接攻撃」をしなければよいのだ。
「力によって二次的に引き起こされた砂嵐による目くらまし」なら文句は言わせない。
よって、小型の竜巻によって地面の砂や小石が巻き上げられ、ゲンジマルはそれに突っ込んでいく
形になってしまった。
いくら達人と言えど、何も無い空中で自分のジャンプの軌道を変更することなど出来ない。
とっさに、目に砂や小石が入らないよう腕で庇いつつ着地体制をとる。
だが、そのために一瞬郁未の姿を見失ってしまった。
辺りにはまだ巻き上げられた砂が立ち込めている。
そして、ゲンジマルが地面に着地、そのまま再び跳躍しようとした瞬間――
ガシッ。
背中に、何者かが接触した。
「ふふ、捕まえたわよ、お爺さん」
それは、砂煙立ち上る背後から一瞬の隙を突いてタッチしてきた天沢郁未であった。
紙一重の差ではあったが、たしかに郁未の手はゲンジマルに触れていた。
「…むぅ、これまでか」
まさか、二ウェではなくこの女にしてやられるとは。
相手がただの女だと思い込み、油断してしまった自分の負けである。
ゲンジマルは、素直に鬼のタスキを受け取った。
「…貴様らしくも無いな、ゲンジマル。…もっとも、この小娘の力はわしも予想だにしなかったがな」
振り返ると、二ウェが憮然とした表情で立っていた。
獲物を横取りされたのが内心は悔しいのだろう。
「うむ…某もまだまだ修行が足りぬ。時にそなた、名はなんと言う?」
「天沢郁未よ。貴方は?」
「ゲンジマルと申す。今回は某の完全なる敗北だ。以後は潔く鬼となろう」
「あなたもたいしたものよ。あなたが油断してくれなかったらたぶん捕まえられなかったわ…
…そうだ、あの男―――!」
捕まえる、という言葉でようやく、久瀬の存在を思い出した郁未。
だが、久瀬は半ば放心状態で、鬼のタスキを肩に掛けながら木にもたれかかっていた。
「そこの小童なら、わしが捕まえたわ。ふん、手ごたえの無い」
ニウェがつまらなそうに呟く。
「…まあ仕方ないわね。お互いさまってことで。それじゃあ、私は行くわね」
そう言って、郁未は来た道を引き返し始めた。
「…ではゲンジマルよ。わしも狩りを再会するとしよう。
この大会―――やはり楽しめそうだ」
ニヤリと笑い、木の上を飛び移りながら小道の脇の道なき森の奥へと消えるニウェ。
「…ふむ。では某も行くとするか。この男は…まあ、しばし休ませておいた方がよかろう」
そう言って、ニウェとは反対方向の森の奥へ進むゲンジマル。
1人残された久瀬は―――
「はぁっ、はぁっ…こ、この島はみんなバケモノ揃いなのか―――?
あ、あまりにも非常識極まりない―――」
疲労とショックで、当分はその場を動けそうになかった…。
【郁未、ゲンジマルを捕獲】
【ニウェ、久瀬を捕獲】
【郁未は森の外、ゲンジマル&ニウェは森の奥へ。いずれも単独行動で狩り開始】
【久瀬、一連の逃走劇の疲労とショックから立ち直るためにしばし休憩を取る】
322 :
さぶ:03/03/26 01:29 ID:e2c/T245
20分が経過した。
「さて……どうしたものか」
「この人まだ寝てるよ。どうするの浩平?」
「浩平殿、流石にそろそろ起こさないとまずくはないか?」
「……お、重い……重いよ、この人」
浩平たちはこの眠れる少女を起こす為、ありとあらゆる手段を講じてきた。
呼びかける。ダメ。
頬を叩く。反応無し。
身体を揺さぶる。胸部に反応がある以外は現状まま。
濡れタオルを喉頭につっこむ。無反応――ていうかむしろ死ぬ。
持ち上げてみる。が、持ち上がらない。
ここまでやっても無反応だとはー。
一同頭を抱えて悩みこむ。しばし沈黙が流れるが、突然浩平が閃いた。
「ふっ……んっふっふっふ」
「な、なに? 浩平? どうしたの?」
「いやなに……。以前長森が同じような状況下にあったとき、とある手段を講じたところ一
瞬にして目覚めた時があってな」
「おお、さすが浩平殿」
「なになに?」
二人は素直に感心したが――長森だけ、ものすごくいやな予感がした。
もちろん長森は、そんな事態に至った記憶などない。浩平のいつもの戯れ言だと当た
りをつけてはいる。
つけてはいるのだが……ものすごく、ものすご〜く厭な予感がしたのだ。
それは、遠い日々の記憶――
「忘れてしまったか長森。よし、この折原浩平がその様を再現してしんぜよう」
とか言い終わる前に浩平は少女の目の前に移動して両の手を思いっきり突き出し、地
球の引力を頼りに接近を試みた。
「いいかよくみていろ。ここをこーしてこーやれb」
がし。
「浩平。それやったらとんでもないことにするよ?」
にこっ。
浩平は一瞬にして冷や汗が吹き出た。
とんでもないことに、『するよ』?
「はて、なんの事かな長森」
「誤魔化してもだめだよ浩平」
ぎうー。
「あだだだだだ」
他の二人は呆然と眺めている。なんというか、あの二人だけにしか分からない領域が
あるように思えて他ならないのだ。
「まさかそのままこの人の胸揉んだりしないよね?」
ぎううううー。
「いだだだだだだだだだ」
「浩平殿、それは誠かっ」
「うわー浩平へんたいー」
「ちち、違っ…あだだ」
浩平は疑いを――とりあえず今の所は容疑だが――晴らすのに必死だ。ていうか長
森ってこんな握力あったか? そんなことを思いつつ押し問答をしていると、
「……ん…」
なんか、いきなり目が醒めた。
「あ、起きた」
その後、完全に覚醒したゆかりに同行の是非を訊いたが、彼女はあっさりと承諾した。
話によると、どうもパートナーと別れたらしく、単独行動は望むところではなかったらし
い。
「えーと……そっちの人から折原くん、長森さん、トウカさん、スフィーさん、折原くん」
「ちょっと待て」
「あれま、一周しちゃいましたね」
割とマトモな人みたいだが今のボケが天然かどうか気になる。もし狙ってやったのなら
手ごわいな――とか浩平は思っていた。
「浩平は一人だけどとりあえずよろしくね。ゆかりさん」
「よろしくー」
「拙者もよろしくお願いする。ゆかり殿」
「えと、こちらこそよろしくお願いします」
ゆかりという名前の少女(よりは若干上の方だが)は丁寧に挨拶をした。少なくとも七瀬
のような漢ではないみたいで浩平は安心した。
「へぶしっ」
「七瀬さん……今の、クシャミ?」
【ゆかり 覚醒。浩平らと行動を共に】
「………………」
「………………」
「やっ、済まなかった青年」
「お願いしますから次からこんな真似はしないで下さいいやマジで」
おはようございます。一応世界一位エージェントの那須宗一です。今度タイトル返上しようか真剣に悩んでます。
姉さん、世の中は思っていたよりも広く厳しかったです。俺もちまたではNASTY BOY(無茶苦茶小僧)などと呼ば
れておりますが、目の前にいるこのおっさんの方が数倍NASTY(無茶苦茶)でした。
……俺どうやらまだショックが抜けきっていないようです。ちょっと退行引き起こしてる感じがします。
「しかし同性には効果がなかったとは。確かに男と女ではそもそもの肉体構造が違うからして同じ方法が
採れないとは思っていたが……」
何でそこで心底残念そうな表情をするんですかあんたは。
「っかし、俺が偶然あんたらに関する情報を仕入れてなかったらあのままどうなっていたか……」
ぎりぎりまですっかり忘れていた事に対するツッコミは勘弁してください。
結局、突っ込むのは前なのか後ろかだとか、宗一×蝉丸と蝉丸×宗一どっちだだとかとこのおっさんが悩んでい
る間になんとか思い出して事なきを得ることが出来ましたが。
「ふむ、その時は痛み分けということなっていただろうな」
「それは激しく聞き捨てならないのですが」
勘違いで純潔奪われたら裸で吊される以上のさらしもんです。
「だから済まなかったと……おお、そろそろ夜が明けるぞ青年」
明らかに話題逸らそうとしています。この人きっと正直馬鹿です。
そういえば強化兵という存在はお天道様の下を堂々と歩けない人種と聞きました。自分も後一歩で(別な意味だ
が)彼らの仲間入りを果たしていたかと思うと、朝日が今日ほど愛おしく感じられた日はありません。
「まあとにかく俺が鬼になったことには変わらないわけだ。おっさんはこれからどうするつもりだ?」
受け取った襷を掛けて俺が蝉丸に尋ねると奴は一瞬の思案して、
「俺か? 俺は当然次の獲物を探す。お前を捕まえて悟ちんより一歩有利になる予定が予想外の時間を消費して
しまった。捷疾鬼と呼ばれるあいつのことだ、このままでは俺の勝利は危うい。この時間なら眠っている参加者も
いるはずだからその隙を狙う」
と言った。丸一日飲まず食わずで走り回り完徹したにも関わらず全く応えた様子がしない。なるほど、これが
強化兵か。
「待てよ」
俺は、今すぐにでも立ち去ろうとしたこの白髪鬼を呼び止めた。
「なんだ、青年?」
「こっちは危うくトラウマ負わされるところだったんだ。朝飯探す手伝いくらいしてくれたっていいだろ?」
それに、一人でも多く捕まえないとヤバイのは俺だって同じだしな。せめて鬼の最優秀者にでもなってなきゃ
あのクソじじいに何をされるか。
下手に強力なライバルを野放しにするより、監視して出し抜く。なんだか俺もずいぶん汚なくなっちまったな。
【蝉丸 あらたな獲物を探そうとするも宗一の朝食探しを手伝うことに】
【宗一 貞操死守。蝉丸にひっつきながら獲物を横取りする算段。とりあえずは朝飯】
【時間帯は早朝】
その二人の遭遇はある種の必然であったかもしれない
辺りを警戒しつつ動く醍醐と冬弥から少し離れたところに何かが幾つか放たれ
同時に一人の白髪猫背の男が姿を表した
「けっけっけっ、折角鬼になったってのに楽しい獲物は逃し、坂神光岡との勝負には負け、
捕まえたのは女子供ばかりと散々だったが面白そうなのがいるじゃねぇか」
「ふ、面白いな。俺も貴様のような男との対峙を望んでいたのやもしれん。冬弥よ、さらばだ」
「師匠!?」
「これは男と男の戦いだ。この一日俺についてきた貴様ならその意味わかる筈」
「……わかりました。ご武運を」
「別れは終わったみてぇだな」
そして冬弥が姿を消し
「あぁ、始めようじゃないか」
戦いは幕を開けた
逃げる醍醐は現代戦闘のエキスパートでありその点で言えば参加者でも屈指の実力者である
だが対する御堂も軍人として戦闘訓練を積んでおり尚且つ仙命樹の超感覚を持つ
一進一退のまま続く追いかけっこだったが間もなく異変が起こった
御堂が小さなワナに引っかかったのである
それは小さな、だが決定的な差だった
逃げ切るべく逃走速度を更に上げた醍醐
その先に待っていたものは……
御堂が姿を表す前に放ったトリモチだった。
間もなく追いつく御堂が醍醐にタッチしながら言った
「お前さんがワナに嵌めようとしてたのはバレバレだったが俺もワナに嵌めようとしてたのさ。
逃げる側がワナに嵌めるのに成功すりゃ油断もする、拮抗してたら尚更だ。
ようは亀の甲より年の功ってことだな。けっけっけっ」
【御堂 醍醐を捕まえる】
【冬弥 単独行動】
>>324 「拙者もよろしくお願いする。ゆかり殿」
↓
「某からもよろしくお願いする。ゆかり殿」
訂正です。申し訳ない。
太陽がギラギラと体を照らしている。
「う……ぬ……?」
どのくらい時間が経ったのか。良祐は頭痛と共に目を覚ました。
「俺は……?」
顎と頭がズキズキと痛み、体は埃だらけだ。だが動かぬこともない。
「……ああ、そうか」
体に引っ掛けられたたすきを確認し、ようやく自分に何が起きたのかを思い出した。
「負けたのか……」
ムカつく金髪ヤローと、どうみても小学生以下の幼女に負けてしまった。
「はぁ……姉妹丼の夢も露と消えたか……」
結局それかよ。
「ぱらぴ〜らぽ♪ ぱらぴらぽら〜♪」
「あ……?」
不意に耳に聞き慣れたような慣れないようなメロディが聞こえた。
「……なんだありゃ?」
霞む目で道の向こうを見ると……
「屋台?」
……あまりに庶民的な、屋台が向かってきていた。
「おっ、人間がいるぜ」
「こっちに向かってくる。客のようだな」
その屋台はイビル・エビルの率いる弐号屋台であった。
(ちなみにねーちゃんが零号、ルミラ組が壱号、メイフィア組が参号である)
「おい君たち、何だこの屋台は?」
「やれやれ、そうだったな。説明しなきゃいけねえんだ……」
面倒くさそうに頭を掻きつつも、イビルは説明を開始した。
「なるほど……」
感心した様子の良祐。考えてみればそうだ。確かにこの島において食糧確保の手段は限られている。あくまでもこれが『ゲーム』ということを考えると、餓えを避けるため何らかの人為的な食料供給は必要だ。
「というわけだ。何か欲しいものはあるか?」
「とりあえず飯だな。パンと飲み物を。昨日からバニラアイス以外何も食べてないんだ」
「わかった。パンだな。菓子パンでいいか?」
「ああ、問題ない」
受け答えをしながら、エビルは棚を漁り、良祐はポケットを……
「……あ?」
「そら。チーズハムロールと農協牛乳だ。合わせて300円」
商品を差し出しながら、エビル。
「……えーと。ちょっと待ってくれ」
ゴソゴソと体中のポケットはもとより、服の裏、靴の中、パンツの中まで手を突っ込む良祐。
「……どうした?」
「あー……いや、その……」
「……まさかテメェ……」
一方その頃、結構遠く離れた場所で。
「お姉さん、バニラアイスをありったけお願いします」
「……ありったけ?」
突然目の前に現れた少女の、あまりに突拍子も無い注文に一瞬面食らうメイフィア。
「はい、ありったけですね。これをどうぞ。20000円になります」
しかしフランソワーズは動じず、注文通りの品を袋に詰め、手渡した。
「はい、ありがとうございます。二万円ですね。ええと……」
栞はゴソゴソと、ストール裏のポケットからサイフを取り出し、諭吉券二枚を手渡した。だが、メイフィアは一瞬その姿に違和感を覚えた。
(……なにかしら?)
「はい、ありがとうございました」
「喰いすぎるなよ〜、腹壊すぞ」
「はい、それでは失礼します」
少女は礼儀正しくお辞儀をし、屋台を後にした。
その後姿が消える頃、ようやくメイフィアは違和感の正体に気づく。
「あの子……なんで男物のサイフなんて使ってるのかしら?」
【良祐 無一文。現在弐号屋台】
【栞 ホクホク。現在参号屋台】
【昼ごろ】
美坂姉妹に皆瀬まなみ辺りが関わりたくないキャラのトップ3かのぅw
333 :
名無しさんだよもん:03/03/26 02:34 ID:Y3ZxUstS
普通に盗難事件だなぁw
(・∀・)イイ!
335 :
余の夢:03/03/26 02:49 ID:yxoh2fq7
遠くから足音が耳に届く。神奈備命は足を止めて草むらに隠れ、周りに気を配った。
人が余のほうへと近づいてくる。好機だった。余の夢への第一歩が今、踏み出される時が来ているのだと神奈の心は震えた。
神奈の目標(ターゲット)となりえる人物。
それは、ひとりの少女だった。襷はつけていない、よって鬼にではないと確認する。
今、この瞬間、その少女は神奈にとって目標となりえたのだった。
「そこの者、足を止めよ!」神奈は声高らかに叫ぶ。「余は神奈備の命! おとなしく捕まるのだ!」
神奈はばたばたと少女に駆け寄る。
「が、がおっ」目標である少女は驚いて声をあげた。その後すぐに余が鬼ある証拠の襷に気を取られたのか、手に持っていた棒を神奈へと向けた。
戦う気は満々のようだと神奈は理解する。にたりと不適な笑みを見せて、神奈は少女との間合を詰める。
「そんな飾りのような武器で余から逃げられぬぞ!」
神奈はまた一歩と間合を詰める。
「そこ……危ないですよ」
神奈の目標である少女が言ったその瞬間だった。
「ぐおわっ!?」
神奈の足下の土がぐにゃりと歪み、崩れ落ちる。
「ぬぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ!? どうなっているのだっ!」
深さは5メートルくらいだろうか? その穴の中に神奈は落下していた。
「かわいそう……。助けてあげたいけど、わたし逃げなきゃ」目標であった筈の少女の声。それは神奈にとって絶望の声。
「ま、待つのだ!」
その言葉を聞いてか聞かずか、足音はだんだんと遠離っていく。
「ぬううううう! どうして余はこんなのばかりなのだっ! どうなっているのだっ! 柳也殿ー! 裏葉ー! なんとかするのだーーっ!」
【神奈、仕掛けられていた罠(落とし穴)に落ちる】
【観鈴 森の小道を進む】
>>335 タイトルミス 「ファースト・インパクト」で
337 :
名無しさんだよもん:03/03/26 03:31 ID:8usGYm5l
>>328 >御堂が小さなワナに引っかかったのである
醍醐が・・・の間違いじゃない?
m同であってるのでは?
御堂が罠にかかって醍醐にタッチしたのか?
罠に掛かったのは醍醐だろ?
御堂の小さな罠・・・だったらおかしくないと思うが。
m同が罠に掛かる(ふりをする)→醍醐油断する→醍醐罠に掛かる
の流れだと思われ。
なるほど。読解力不足だったな。
>327-328さんは何故句点をつけないんだろう……
多分、句点つけてない話は同じ人が書いているんだろうけど、
議論スレでも言われてたので出来れば句点つけて欲しい。
個人的には読みにくいので。
久しいな諸君。こんにちわだ。
私の名前はD……じゃなかった、ディー。汝等小さき者に崇められうたわれるもの、ウィツァルネミテアでもある。
我が使命は、人類を互いに争わせることにより種をより高きへと……
「でぃー! なにをそんなところでぶつぶついってるの!?」
「そうだヨ! こっちに来なよ!」
「そんなでぃーには……えいっ!」
どばっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!
……ん? なぜ私が濡れ鼠になっているのかと?
まぁそうだな。それを説明すると少し長くなる。
「れみぃおねいちゃん、でぃー、どうかしたの?」
「ウウン、気にしないでいいヨ。D,ときどきああいう風に物思いに沈む性格だから。セイシンテキシッカンの一種だネ!」
「しずめるほうほうはしってる?」
「I don't know!」
先に連中の説明をする必要があるな。
連中の名前はしのまいか、それとレミィ・クリストファー・ヘレン・宮内。
2人とも質(たち)の悪い禍日神(ヌグィソムカミ)だ。
まいかの方は人を見ると蹴っ飛ばし、ピンチになるとみるやキ●タマを蹴っ飛ばす戦闘狂、
レミィの方は動くものを見ると生物無生物問わず矢を射かけ、それが何であれ焼いて喰っちまうおっぱい。
……我ながら難儀な2人と行動を共にしているものだ。
「そんなことよりおねいちゃん! おしろつくろう、すなのおしろ! もう、すんごくでっかいやつ!」
「That's a nice idea! 早速作ろう!」
あ? なぜ狩りをしているはずの私たちがこんなところで遊んでいるかだと?
……痴れ者が! 私たちは遊んでいるのではない!
そういやどこかのライターで句点をつけないヤシがいると聞いた事があるが・・・降臨の予感?
「たのしいねー。れみぃおねいちゃん、まいか、こんなにたのしいのってはじめて!」
「ワタシだってそうだよ。本当、このGameに参加してよかった!」
遊んで……いるわけでは……ないっ! 決してないっ! 断じてないっ!
私たちは! あくまでも!
『海岸線及びその周辺を中心とした索敵行動』を取っているにすぎない!
そうだとも!
「それにしてもおねーちゃん、おっぱいおおきいよねぇ。それにくらべて、まいか……」
「ウウン、まいかちゃんはまだまだ成長するモン。毎日ミルクを飲んで、適度な運動をしてればすぐ大きくなるよ」
「ホント!」
……そうだともっ! なぜかレミィが水着(しかも男物まで)持っていて、それを着ているのも!
ひとえに水際では普通の服装よりもこちらの方が機動性が保たれるからだ! ああそうだとも!
「よし、できたっ!」
「…………ウーン……」
「……ちょっと……しっぱい、しちゃったかな?」
「……お城というより……お山になっちゃったネ……」
そうだとも! まいかがロリロリビームを乱射してるのも!
レミィのおっぱいが別の生き物のようにぶるるんぶるるんと暴れ狂っているのも!
全ては! 全ては我が計算どおり! そうだとも! 全ては合理的精神に基づく判断なのだ!
「やっぱりつまんないや。およごっ、れみぃおねえちゃん。でぃーもつれてきて」
「ウン、OK! D,行くよ!」
おわっ! 何をするレミィ! 首を! 首を掴むな! うぐぁ!? 他人の顔を……顔をおっぱいに押しつけるな!
のわあっ!? むにむに……ああっ、ぐはっ、ぐほっ、これはっ、ウルトを超え……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!!!
「それじゃ……Let's Diving!」
レミィが私を抱えたまま、岩場から海に……ってちょっと待てェ!
「私は! 私は泳げ……うぼがはぁ!?」
どっぽぉぉぉぉぉん!!
あばがっ!? ごうぁっ!? 水が! 水がぁ! 入って……入ってくるゥッ!
息が息がいきがぁぁぁ! 空気っ! 空気っ! 空気はどこだっ!? 死ぬっ! 死ぬっ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬしんじまうっ!
「きゃははっ! でぃーったら、あんなにはしゃいでる!」
「ホント素直じゃないんだから。遊びたいなら素直に自分から言えばいいのに」
「「ねー♪」」
【D一家 『海岸線及びその周辺を中心とした索敵行動』中、水着着用】
【↑のを言い換えてみる 『海水浴』】
【D 溺れる】
【現在位置:海岸(砂浜) 時間:昼ごろ】
下らん書き込みで割り込みしてもうた・・・スマソ
「はぁ。準会員さんですか」
「…違う。巡回員だ」
森の入り口で休憩中の名倉姉妹+A棟巡回員チーム。
「さーて、獲物はいないかな」
偶然、彼らの方へ向かう天沢郁未。
先刻までの追いかけっこで疲れているが、動けないほどではない。
「…ん?この気配は……」
最初に気付いたのは友里だった。
やはり不可視の力を持つ者同士、互いの存在に敏感に反応できるらしい。
「A−12か。厄介だな…」
「あれ、鬼の襷ですよね?」
続いて巡回員と由依も、目でその姿を確認する。
一方の郁未はこっちに気付いていない…
「………(にやり)」
…わけがない。
「来るわよ」
「逃げるか?」
郁未は森の中からやってくる。逃げるなら反対側の平地部。
隠れるところなんてないから、純粋な追いかけっこになる。
「多分、逃げ切れないと思います…郁未さん、元陸上部のエースですから」
「そりゃ初耳だな。道理でいい体格をしている」
「…まともに逃げたんじゃ不利ね。捕まっちゃうわ」
特に由依なんかはあっという間に捕まってしまうだろう。
どうすればいいんだ。
少し考えて、巡回員が提案した。
「…仕方ない、撃退しよう。こっちは3人。1人は不可視の力が使えるし、なんとかなる」
「正気?私に完全体と力比べしろって言うの?」
「そうとは言ってない。直接攻撃は禁止だからうまく相手の意表を突いて……って」
急に郁未が立ち止まり、膝をついた。
疲れて休憩、という風には見えない。
「あの構えは――」
クラウチングスタート!
残忍な笑みを浮かべ、物凄い勢いで郁未が接近してくる!
「ちょっ…速すぎない!?」
「え、わ、どど、どうしましょう?」
「後退っ!後退だっ!」
逃げる3人組。追う郁未。
「おほほほほほほ逃げれるもんなら逃げて御覧なさい!」
久瀬との追いかけっこで疲れていたのか、さっき大物を捕まえたからか、それとも獲物を3匹も見つけた喜びからか。
郁未はトリップ状態だ。
(この3人なら余裕で捕まえられる!)
油断?そうではない。相手は自分のよく知る相手。不確定要素が無い上に実力はこちらが勝っているのだ。
負けるわけがない。
「う、うわっ!」
距離は5メートル弱。それもぐんぐん縮まっていく。
「由依っ!観念して捕まりなさい!」
「ひっ!」
案の定遅れている由依をターゲットにし、タッチをしにかかる――
――が。
チャキッ
「そこまでだ!」
「―――?」
突如叫ぶ巡回員。いつのまにか由依達の反対側、郁未の後方に回っている。
彼の手には…拳銃。
「ちょっと!そんなのアリ!?」
「やかましいっ!化物を相手にする俺達の身にもなれっ!」
「だからってそんなっ!」
「急所は外してやる!悪く思うなっ!」
撃つ気マンマンだ。
いくら不可視の力を使えるとはいえ、郁未の体は一般人と同じ。
銃弾を食らったりしたらただではすまない。
(――くっ)
やはり油断だったか。前々から怪しい奴とは思っていたが、こんな無茶をする人間だったとは。
歯噛みながら、半ば本能的に不可視の力で防壁を作る。
(間に合えっ!)
力の圧縮。郁未と巡回員の間の空間が捻じ曲がり…
――同時に巡回員が引き金をひく。
カチッ!
弾切れだった!
「……は?」
一瞬、呆然とする郁未。
「名倉姉!」
「言われなくてもわかってるわよ」
その隙に、友里が不可視の力を発動させる。
「――!? しまった…」
対する郁未は、今の防壁で力の多くを使ってしまった。集中力も落ちてしまい、なすすべがない。
「行くわよ!名倉流不可視の力最終奥義、断固相殺拳!」
がしっ、と妹を掴む姉。
「へ?」
「とりゃぁっ!」
「……きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
不可視の力を上乗せした由依カタパルト!
「ごふっ!」
見事に郁未の鳩尾に命中した。
「…これは直接攻撃にならないのか?」
「さあ。不可視の力で攻撃したわけじゃないんだし、いいんじゃない?」
「ならいいんだが……お前、妹に悪いとは思わないのか」
「別に。このまま着いて来られても足手まといになると思ったから」
「…それは俺も同意だが」
彼らの足元には、疲れとダメージで気絶した郁未。
それから、頭部に衝撃を受けやはり気絶している由依。
「姉妹の仲って、そんなにあっさりしたもんなのかね」
「そうよ。案外ね」
「怖いねぇ…」
巡回員は弾の無い拳銃をくるくると回しながら溜息をついた。
ハッタリが上手く通じたのが嬉しいのか、彼には珍しく笑顔を浮かべている。
(まあ、理性が飛んでる相手限定だろうがな)
拳銃をしまい、倒れている2人に背を向けた。
「さっさと離れるぞ」
「ゲームセットまで、この2人には会いたくないわね」
「ああ。まったくだ」
【A棟巡回員、友里 その場を離れる】
【A棟巡回員 弾の無い拳銃を所持】
【郁未、由依 気絶中】
【由依 郁未に抱きついた状態。鬼になる】
>(2/4)
>相手は自分のよく知る相手
あわばっ。やってもうた。
354 :
名無しさんだよもん:03/03/26 14:09 ID:YoMLfmwU
名倉友里にも由依カタパルトの時代かw
美坂、名倉の姉妹関係は最悪のようですw
356 :
ネットdeDVD:03/03/26 14:13 ID:OEtnzwz3
「確かこの辺りのはずなんですが…」
「…どこでしょうか?いませんね〜…」
海沿いを走る道の途中、ふいに耳にした鳴き声を耳にした南とその連れは、その声に導かれるままに森の中へ
入っていった。
「やはり気のせいでしょうか?」
「そうでしょうか、さっきは聞こえていたんですがねぇ…」
「この森の中にはたくさん動物がいそうですしね」
気のせいだったか、と三人が引き返そうとした時。
がさがさっ…
「ぴ〜〜こ〜〜」
「あら?あんなところに綿飴が?」
籠の中で蠢いている白い物体を見てそんな感想を漏らすみどり。まあ、初対面なわけだから、
毛糸だとか綿飴とか、そんな形容の仕方で十分だろう。
「生き物なんですか?これ?」
「動いていますからねぇ」
「ぴこぴこ!」
「あ、喋った」
「ぴこぴこぴこ!」
「とりあえず助けてあげましょうか」
そう言って、籠を取り去る鈴香。とたんにその動物が飛びついてくる。
「ぴこ〜!」
「きゃっ…!いきなり飛びついてくるなんて…」
「会ったばかりなのに、すっかり懐いてますね」
「ぴこぴこ〜」
「人に慣れてますね…このままでは危険ですし、連れて行きましょうか」
「そうですね。仲間は多い方が楽しいですし」
そんなわけで、予定通り灯台までのピクニックを再開する三人であった。
「ところで君の名前はなんていうのかな?」
「ぴこぴこ!」
「ぴこぴこって言うんだ。よろしく、ぴこぴこ」
「ぴこ〜…」
ポテトの声は、森の中に空しくこだました。
【みどり 南 鈴香 灯台へ向けての行動を再開】
【ポテト 鈴香に救出される→懐く】
【鈴香 ポテトをぴこぴこと命名】
【時間 昼前】
「…この糸を切断して…この隙間に棒を詰め込んで…」
藤井冬弥はゆく先々でトラップを解除している。
「師匠は…大丈夫だろうか?」
もう、どれだけのトラップを解除しただろうか?
「…ここにもあるな。括り罠とは」
醍醐に貰ったナイフでロープを切断し、罠を解除する。
「行ける……これなら…やれる」
微妙に性格が変わっている冬弥。多少は変わったようである。
【冬弥 トラップを解除しながら仲間を探す】
360 :
□□日本最大割り切りサイト□□:03/03/26 16:11 ID:x8aKQRv7
「ひとーつ掘っては」
「AWESOMEEEEEEE!!!!!!」
「ふたーつ掘っては」
「SSHIIIIIITTTFFUUUUCCKKKK!!!!!」
「みーっつ掘っては」
「NIITTCCHHEEVOOOO!!!!」
住井の手が止まる。
「……北川。もうちょいマシな合いの手は思いつかないもんかね? せめて
日本語でお願いしたいもんだが」
「無茶言うなよ。こっちだって穴掘るのに必死なんだから」
「――左様でございますか」
たぶん北川の脳内は土と穴と美坂とかいう女でいっぱいなんだろう。言う
だけ無駄だと住井は判断して、黙って作業を続ける事にした。
「うわ……。これはまた随分とえげつない」
北川たちのすぐ近く。トラップ解除のスキルを新たに身に付けた藤井冬弥
がその新技術を遺憾なく発揮していた。技術に関してはもはや工兵部隊の
平均以上までに達している。これも教官のお陰だろう。
「よし。解除完了」
後ろには彼の手によって解除されたトラップの残骸が広がっている。埋め
られた落とし穴、切断されたロープ、その他諸々が随所に見受けられた。
「しかし……なんでこんなことやってるんだろ」
と彼は自問する。醍醐師匠はトラップを解除して周ろうと思っていたわけ
ではない。むしろ仕掛けられたトラップをより洗練させる事で、無駄な労力
を省こうとしていたきらいがある。じゃあ、なぜ冬弥はこんな善行を行ってい
るのかと言うと、
「――そこにトラップがあるから」
ということらしかった。よほど罠を解除するのが楽しいのだろう。
「――あー、ちかれたびー。ここらで休憩としましょうや」
「そーだな。もうすぐ昼だし」
気付けば太陽は中天に差しかかろうとしていた。概算で二人はもう6時間
以上、掘っては仕掛け掘っては仕掛けていた。途中落とし穴に引っ掛かっ
た者をこっそり見物したりしていたが、それを勘定に入れなくてもかなりの
運動量だ。
と、スコップを片していた住井が怪訝な表情を浮かべる。
「――妙だな」
「どした、住井」
住井の並々ならぬ様子に北川も真剣味を帯びる。
「おかしくはないか? ちょうど1時間くらい前から罠にひっかかる人間が途
切れた。突然」
「確かに……言われてみればそんな気が」
とはいってみたが、実はじぇんじぇん覚えてなかったりする。穴掘り・香
里・香里と、極限まで単純化された思考ルーティーンのなかで行動してい
たからだ。
「――……え、何か言った?」
「……様子を見に行こうかって言ってるんだよ。大丈夫かお前?」
住井が呆れた表情で見ている。北川は一瞬向こう側にイッてしまってい
たらしい。
「ああ。大丈夫だ。考え事してただけ」
「ホントか?」
「気にするな同志住井よっ! さあいざ行かん!」
「はいはい……」
「っ…、なんじゃこりゃ」
もはや歴戦の戦士と化しつつある冬弥だったが、目の前に現れたトラップ
に思わず行軍を止めた。
糞。糞。糞。
糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞。
犬の糞らしき物体が2.5メートル四方隙間なくびっしり置かれている。
「……どうすればいいんだ」
さすがの醍醐師匠もこんな事態は想定していなかっただろう。冬弥は思
わず硬直してしまった。
「なんだアイツは」
住井が
「! おい住井! 向こう見てみろ!」
「……!!!! ぬぅあぬぃーー!?」
音声だけでは意味不明なので解説させて戴く。
犬の糞地雷地帯を挟んで反対側に北川・住井組が出現。二人はトラップ
が解除されている事に気付き、その主犯らしき男に向かって接近。例の男
は地雷に夢中で気付いていないようだった。
「なんだアイツは」
住井が
「! おい住井! 向こう見てみろ!」
「……!!!! ぬぅあぬぃーー!?」
音声だけでは意味不明なので解説させて戴く。
犬の糞地雷地帯を挟んで反対側に北川・住井組が出現。二人はトラップ
が解除されている事に気付き、その主犯らしき男に向かって接近。例の男
は地雷に夢中で気付いていないようだった。
「――そこのアンタ! まさか、罠を解除してたりしてないか!?」
前方から飛んできた声で、冬弥は二人の存在を認識した。
……あなたがた、その襷はなんですか?
「聞いてんのか!? おい!」
「…あれ、アイツ何持ってるんだ?」
二人は返事を待たずして悟った。
彼の右手に、ナイフと麻のロープが納まっていたからだ。
「――どうしましょうか。住井殿」
「――僕らが必死こいて製作してきた芸術を無下にするヤシなど言語道断」
「――では」
「――ええ」
からんからん。
地面にスコップを放り、二人は駆けだす。
「「〆る」」
「あら? 栞ちゃん?」
辺り一面に広がる平野で、栞に話し掛けるのは秋子。
栞は、秋子に襷がかかっていないことに安心して対応する。
「あっ、秋子さん。こんにちは」
栞はぺこっと頭を下げてあいつするが、表情を見るに何かを企んでいる。
「秋子さんも参加してたんですね、びっくりですー」
「あら? 私は参加していませんよ」
「え?」
栞は困惑の表情を見せる。
参加者ではないとすると主催者側。
栞は嫌な予感がした。
大抵そういう予感は当たるものである。
「栞ちゃん、泥棒はだめよ? めっ」
秋子は、困った表情で栞にしかりつける。
栞は、がっくりとした表情である。
しかし、既に栞は逃げ道を探している辺りまだ諦めていない。
逃げる気満開。
「とりあえず、財布と買ったアイスは没収ですからね。」
栞のポケットから財布を抱えていたアイスの袋を没収される。
「そんなことする人…」
「悪いのは栞ちゃんよ? でも…仕方ないわねぇ…代わりにこのジャムでも食べますか?」
主催者側と、いつまでもこんな隙だらけな場所で会話しているのは得策ではない。
ましてや、秋子さんは主催者側なのでいくらでもペナルティーを与える方法はあるだろう。
強行手段として、反則で鬼にされる可能性もある。
それは、栞として困る。
「すみませんでした…。ジャムで、我慢しおきます…」
この場は栞が譲っておくことにした。
【栞 財布とアイスを没収。ジャム(種類は書き手におまかせ)ゲット】
【秋子 財布をアイスを回収。これをどうするかは書き手にお任せ。】
「…なっ……!」
冬弥は一瞬固まった。
鬼が追ってきたのも確かだったが――、
その鬼達、地雷地帯を平気で突破してきたからだ。
「うわぁあぁぁああ! 汚い!!! 汚いのが来たあああ!!!」
一目散に逃げ出す冬弥。
「ふはははははははは、犬の糞だと思ったかね青年!!!」
「実はただの粘土だったりするのだよ!!」
少々ズレた怒りに燃える工作員に冬弥は追われるハメになった。
無論、彼らの声など届いていない。
【冬弥 トラップ解除ツアー→追われる身に】
【北川・住井 冬弥迎撃。体力はあまりない】
【トラップ ほとんど無効に】
訂正です。
>>364 >「なんだアイツは」
> 住井が
↓
「なんだアイツは」
住井が叫ぶ。
です。ややこしくてスマソ。
>>368 気にしなさんな。
訂正その2です。
>>364後半と
>>365前半が被ってました。
お手数かけますが
>>369の訂正を加えた上で削ってください。
重ね重ね申し訳ないっす。
「く、久瀬一体どこにいんだ!?」
オボロは焚き火跡から腰を上げ久瀬に駆け寄ろうとするが、
すぐに顔をしかめた。
「鬼になってしまったのか…」
「ああ、我ながら軽率だったよ…どうにも認識が甘かったようだ」
全く、この島は化け物ばかりだ ――――― そんなため息とともに、
久瀬はその場に崩れ落ちるように座り込む。
「…義理堅いな。もう昼過ぎだろうというのにわざわざ待っていてくれたわけか?」
「そりゃ…まあ、な」
目をそらしてオボロは鼻の頭をかいた。
「それに、逃げないのか?僕は鬼だぞ?」
「いや、いつでも逃げられるから、それは構わないが…何があったんだ?」
「なるほど、お前ついてないな。二ウェのやつが相手だとは」
事情を聞いたオボロは同情気味にいうが、
久瀬は無気力に首を振る。
「どうだかな。どうやらこの島は化け物だらけらしい」
そして、ぽつりと付け加える
「この島は危険すぎる…」
「危険だと?そりゃ大げさすぎるだろ?」
「果たしてそうかな!?」
急に大声を出す久瀬。
「僕の姿を見たまえ!!まるで子一時間痴女に追い掛け回されたあげく、
戦いが生きがいのモンゴリアンに張り手を食らったような哀れな様を!!」
「そりゃ…同情はするが…」
恐怖に顔をゆがませる久瀬に引き気味のオボロ。
「僕だからまだいい!!しかし、追われていたのがか弱い乙女だった場合
どうなっていただろうか!?
そう、われ等が急務はか弱い存在を保護することではなかろうか!!」
「あ、あのな…これはただの鬼ごっこ…」
「聞き捨てならんな…」
オボロが文句を言いを終える前に、大男がのそりと暗がりから姿を現す。
学ランを着た、傷だらけの顔を持つ男だ。
「お、お前どこから」
「そんな事はどうでもいい…続けろ」
「よかろう!!繰り返して言う、この島には危険が満ち溢れている。
そして、ユズハさんのようなか弱い少女たちはその危険にさらされているのだ!!
想像してみたまえ、可憐に咲く一輪の花が嵐によって、
獣によって無残にその身を散らしていく様を!!」
「うっぐ…!!」
言われてオボロは押し黙る。確かにこの鬼ごっこ、
可憐なわが妹には過酷過ぎないだろか。
今この瞬間にもユズハはその華奢な体を不安と恐怖に身を震わせながら
兄の名を泣き叫んでいるかも知れぬ…!!
大男のほうもなぜか歯噛みして血管を額に浮かべ身を震わせていた。
「こうしちゃいられない!!悪いが、久瀬行かせてもらうぞ!!」
「待ちたまえ!」
身を翻すオボロに久瀬の声が突き刺さる。
「なんだ久瀬!!ユズハが危険にさらされていると言ったのはお前だろ!!」
「ならば聞こう!!君はどうやってユズハさんを守るつもりだ!?」
「知れたこと、探し出して傍にいる!」
「それでは、不足だ」
「不足だと…?」
いぶかるオボロと大男に、久瀬は先ほどとは一転して静かな声でこたえる。
「そう、君がいかに強いといえど、あの化け物たちから確実に妹さんを守れると断言できるのか?」
「くっ…それは…!ならばお前はどうすればいいというのだ?」
「簡単なことだ」クイッと眼鏡を指で押し上げる。
「鬼に、してしまえばいい。そうすれば追われる事も逃げる必要性もなくなる
幸いにしてここにはもう襷があるのだからな。それをユズハさんにわたせばいい」
「お、俺に鬼になれというのか?」
ためらうオボロに、久瀬は再度一転して大声を出す。
「我等はなんだ!!?」
「…盾だ」
言葉を詰まらせるオボロに変わって大男がぼそりと答える・
「そう、我等は強き者から弱き者を守る盾!!
雨霰と降り注ぐ矢から身を守る鎧!!
冷害からトマトを守るビニールハウス!その使命を全うするためならば
あえて鬼道をゆくのが愛!!そうではないだろうか!?」
そして、穏やかな笑みをうかべ二人に手を差し出す。
「さあ、貴兄らの選択すべき未来は二つに一つ。
鬼になるか、鬼になるか。とくと選びたまえ」
「応!!」
「承知」
がっしりと三つの手が合わさった。
(思いの外うまくいったな)
襷をかけ森の中をゆく二つの背中を眺めながら久瀬は思う。
生徒会会長としての演説のテクニックがこんなところで効を奏するとは。
とはいえ、いやな気分ではある。自分を義理堅く待ち、
鬼になった自分を見ても逃げ出さなかったオボロをだますというのは。
いや、弱きものを保護すべきだというお題目は全くの嘘ではない。
佐祐理がこのような粗野なところにいるのは我慢できない。
また、彼にみについた会長の根性が、危険の規制と秩序を求めていた。
リスクよりも安全を、遊戯よりも秩序を優先させるのが久瀬という男であり、
しかもそれを他人に押し付けてしまうという悪癖を彼は持っていた。
が、まあそれはそうとして、自分のみを守るために鬼を増やし
アイテム獲得のためのポイントを稼いだ問うのも事実なわけで…
(まあ、悪く思わないでくれ。これも策略だ)
久瀬はため息混じりに首を振った。そうはそうとして…
(大男…お前はいったい誰なんだ?)
【久瀬 オボロ、立川雄蔵と合流、鬼にする】
【オボロ 鬼化、ユズハの保護が最優先】
【立川雄蔵 鬼化、郁美の保護が最優先】
「……これで全部ね、栞ちゃん」
財布の中身を確認しながら秋子は尋ねた。栞は少しうつむいていたが、
しかしハッキリとした声で返事をする。
「はい、そうです」
「――本当に本当?」
「本当にほんとうですよ」
「……栞ちゃん、ちょっとジャンプしてくれない?」
「…え?」
「ちょっとした確認よ。何か問題あるかしら?」
「ないですけど……。――ああっ! 突然持病の心筋梗塞が」
「そんな持病ないわよ」
秋子のもっともな指摘に栞は黙ってしまった。しばし逡巡していたが、や
がて栞は降参し、渋々跳ねた。
ちゃりん。ちゃりんちゃりん。
「さ、ポケットの小銭も出しましょうね」
にこり。
――その知識は一体どこで身に付けたのだろうか。
「…はい……」
「はい、確認しました。それじゃ私はこの辺で失礼するけど、また泥棒した
らこのジャムを食べてもらいますからね♪」
秋子は妙に大袈裟なそぶりで小瓶を見せた。
栞は恐怖に戦慄した。
ばたばたばた…。
秋子を乗せたヘリコプター(銃身がこちらを向いていたのは気のせいだろ
う。きっと)が完全に去っていったのを確認して、栞はようやく緊張を解く。
「ふぅ……まさかあんな知識を知っていたとは思いも寄りませんでした」
とか言ってる割にはあまり残念そうには見えない。
「でも……こういう方法だってあるんですよ?」
栞は右の靴を脱いで、靴下の中から夏目漱石を取り出した。
「秋子さんもまだまだ甘いですね」
【栞 所持金1000円】
取りあえず多くの鍵キャラには「人に危害を加えちゃだめよ」という基本ルール
を守ろうという意識が端から無いようで…
悪ふざけと犯罪行為は鍵ギャグのお約束とは言え皆よくやるわいw
ルールなんてあって無いようなものだろ。
おもしろければいいんだよ。
好意的に受け止めますよ。もちろん。
>>379 その通りだが、そうしないと書けない作家の力量が問われるのも確k(ry
小鳥達の囀りが心地よい。ショップ屋のねーちゃんは、爽やかな風を
うけながら一つ、伸びをした。
「今日もいい天気だねぇ……」
と、そこに大きなリボンをした女性が、小走りでやって来た。肩から襷を
下げている。ここを目指して来た様子からして、どうやらお客さんらしい。
「おはよう。こんな時間から熱心だね」
その女性―――佐祐理は笑顔で一礼した。
「おはようございます。えっと、武器はありますか?」
「あるけど、値が張るよ?ポイントはたまってる?」
「いえ、1ポイントだけですが、あとはお金で払います」
また金持ちか。そういう事なら遠慮は要らない。せいぜい儲けさせて
もらおう、とこの道一筋の商売人は思った。
「トリモチ銃に…手投げ唐辛子弾三つに、それから……当座の食糧と……
あっ、これは何ですか?」
佐祐理はシェーバーのようなものを手にとって尋ねた。
「これ?スタンガンよ。電流で相手を痺れさすの。ただし万一の場合を考えて、
弱めに改造してあるから、気絶まではしないんじゃないかな」
「じゃあ、それも頂きます」
「でもこれ、逃げ手が鬼を撃退するための物よ。鬼のアンタにゃ使いようが
無いんじゃない?だって、それが使える距離ならタッチすればすむ事だし」
「あははーっ、使い方次第ですよ」
なんだかアタシの苦手なタイプだな、と彼女は思った。一見のほほんとした
この娘が、頭蓋骨の中身で一体なにを考えているのか、なかなか見通せない。
「あっそう……本人が納得してるならいいけど」
「ところで、髪の黒くて長い、長身で無口の女の子は来ませんでしたか?」
「あー、昨日のお客さんの中にそんなのが居たな。同じように無口な娘と
コンビだったから、良く覚えてるよ」
「今、どこに……?」
「さあ、もうどっか行っちゃったから、わからないねぇ」
「そうですか、失礼します」
佐祐理は店を後にした。その顔には決意が満ち溢れていた。
【佐祐理(鬼)、トリモチ銃、手投げ唐辛子弾3、スタンガン、食糧入手】
384 :
栞大戦略:03/03/26 18:26 ID:BnpFpsDY
「はてさて、これからどうしたものでしょうか……」
栞は考える。岩の上に座り、考えてみる。
とりあえず現在の自分の駒を確認してみることにした。
「ええと……漱石のおじさんが一つ、最初から持ってたバニラが一つ、最終兵器邪夢が一つ……ですか」
1000円。この不景気のご時世、ワンサウザントで何が帰るのか。
残ったバニラが一つ。灼熱の砂漠に残された最後のオアシス。そう簡単に食べるわけにはいかない(なぜ溶けないのかは気にしてはダメだ)。
そして……最終兵器邪夢。通称謎ジャム。
それだけだ。
なんてこったい。
「うーん、これは困りました。これでは性悪な鬼に追われたとき逃げ切れそうにありません」
(たとえばお姉ちゃんとか、美坂姉とか、香里とか)
幸い奇跡的な力により病気は治った彼女。キャラクターの特性上ナースコールは与えられているが、使う必要はなさそうだ。
だが……
「こんなか弱い女の子に走ったり飛んだり戦ったりしろと言うのですか。そんなこと言う人嫌いです」
やはり彼女の身体能力は同年代の女子に比べても数段階劣る。肉体言語で会話する破目になった相手がよっぽど……
幼女であるとか、致命的な障害を持っていない限り、勝利は薄いだろう。
「やはりここは人のいい男の方に保護してもらうのが適当ですね。良祐さんは弱すぎて使えませんでしたから、次はもっと頼りになる方を。
できればお金も持っててバニラアイスを奢ってくれるような人ならそんな人大好きです」
そして栞は太陽に向かい、叫んでみた。
「嗚呼神様! お願いです! 私は今までの人生、艱難辛苦の闘病生活を生きてきました! こんな可憐で可愛らしくて儚い病弱少女にあなたのお力を!
日々の善行に報いを! 私のもとに、頼りになる男の人を! 優しくて力強い、私の言うことなら何でも聞いてくれる白馬の騎士を使わしてください!」
――ソレガ汝ノ願イカ、小サキ者ヨ。
そんな声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
ただ、確実なのは……
「うわぁぁぁぁぁぁぁ……! しつこいよぉ沙織ちゃぁぁぁぁぁん!」
「待て〜〜〜〜〜〜!!! 待ちなさい祐く〜〜〜〜〜ん!!! ここが年貢の納め時だよ〜〜〜〜〜〜!」
……みたいな声が自分のところに迫っているということだ。
「うわわわわ〜〜〜〜!」
近くの藪を掻き分けて、出てきたのは女顔の頼りない少年。
(……これが白馬の王子様?)
「まっちなさ〜〜〜〜〜〜い!」
さらに後ろから出てきたのは、鬼のごとき形相のうさみみ少女。
(うわっ、鬼さんです)
しかもたすき着用。ホントに鬼だし。
「そ、そこのキミっ! お願いだ助けてくれっ!」
走ってきた少年はなんと、栞を守るどころか栞の背後に回って彼女を盾にした。
「祐君! 誰その女? 私というものがありながら!」
「し、知らない人だよぅ。見逃してよ沙織ちゃん!」
どうやら目の前のうさみみ少女は栞が参加者(非鬼)だということにも気づかないほど頭に血が上っているようだ。
少年はその勢いに圧倒され、栞の後ろでガタガタと震えている。
「……オイ神様」
これのどこが白馬の王子様だよ……と密かに毒づく栞。が、本音を出すわけにはいかず、とりあえずしなをつくる。
「まあまあ、落ち着いてくださいお2人とも」
「うるさいっ! あんたなんかに用はないのよっ! 祐君から……離れなさ〜〜〜〜い!!!!」
人の話を聞きやしねぇし。
跳躍し、栞に踊りかかる少女。その動きはしなやかで無駄がなく、おそらく何らかのスポーツをたしなんでいると思われた。
「ヒィッ!」
後ろの少年は完全に戦意を喪失している。……使えねぇ。
「チッ、正面決戦は不利ッ! ならば!」
栞はシュポッと空気の抜ける音と共に、邪夢の入った小瓶、その蓋を開く。
「一撃必殺! 謎邪夢アタック! てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そしてそのまま中身を少女に向かってぶちまけた。
「がっ……はぁぁぁ……ッ!?」
叫びながら飛んでいた少女は正面から邪夢を浴び、思わず口の中に入れてしまった!
ゴクンッ!
小気味よい音が少女の喉から漏れる。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
肩で息をする栞。短時間といえど、この緊張感は彼女の体にキツかった。
「あ、あなた……わ、私に何を……うぐ、がぁっ!?」
突如、少女が胸を抑えて苦しみ始める。
「この隙に、逃げますよ!」
「あ、ああ! ……沙織ちゃん……」
栞に手を引かれつつも、少年は未練がましい目で後ろを振り返る。
「ゆ……ゆう……ぐ……ん……。また……わたし……を……見捨てる……の?」
少女は死にそうな顔で一言を残した。
「ごめんよ、僕は、優勝しないとならないんだ」
無情に少年は言い切る。栞はこの少年に、少し自分と似たものを感じた。
【栞 祐介と合流、謎邪夢により沙織を撃退、その後撤退】
【所持品 ナースコール、1000円、バニラアイス(1)】
【沙織 食べてしまう】
ペナルティーに謎ジャム出したってすぐにこの様っすよ。
というか秋子さんもなんで凶器を栞に渡すのかと思ったものだが予想通りの使われ方だな。
沙織も美坂姉妹相手にいい災難だな。
栞、先に出されてしまった・・・。
>>361 いまさらですがお疲れ様です。
今後もよろしくお願いしマース。
>ペナルティーにジャム
秋子さんはペナルティーのつもりはない…と、思っているのではといってみる。
・香里視点
それは本当に偶然だった。
たまたま水場を探しに、他の二人と分かれていた時、見かけた姿。
あまりに見慣れた、ストール姿。
そう―――美坂栞。
「ふ、ふふふ」
体中に悦びが満ちてくる。
栞もこっちの気配に気づいたようで、
「お、お姉ちゃん!」
ほんの一瞬表情をこわばらせると、
「良かった、無事だったんですねー。心配してたんですよ」
などと言って来た。
―――愚かな妹。
この期に及んで、懐柔の余地があると思っているのかしら。
周りをみるが、仲間らしき人影はないようだ。
―――愚かな妹。
一人で行動するなんて。
あの噴霧器を置いてきたのは失敗だったが、捕まえてしまえばどうとでもなるだろう。
お楽しみは狩りの後に、ということだ。
反応もせず無言で近づく私に、栞が身を翻して、
―――狩りが始まった。
・栞視点
えぅー。
いったい何を間違ったのでしょうか。
ほんの些細な誤解から、この世に二人しかいない姉妹が相争うことになるなんて……。
あっ、いまちょっとドラマみたいでカッコ良かったですねー。
ではなくてっ。
すみません、ちょっと現実逃避してしまいました。
とにかく、ぷりてぃかつヒロインでかよわい私があのワカメ…ゲフンゲフン…お姉ちゃんの
追跡から逃れるのは至難の業です。追いつかれるのも時間の問題でしょう。
というか、行き止まりーーーーー!?
こわごわと振り返ると、やはりそこにはお姉ちゃんの姿が。
「うふふふふ。し・お・り――――」
ああ、なんて――――楽しそうなんでしょうか。
「あー、お姉ちゃん。」
ちょっと説得を試みたりします。
「私に妹なんていないわ」
にべもありませんでした。
襲い掛かる、お姉ちゃん―――っと。
お姉ちゃんは視界から消えました。
あたりを見回すがいません。
見上げると、網縄に吊るされたお姉ちゃんの姿が。
下から見ると、すごい格好ですね。詳細は省きますが。
「ちっ。まあいいわ。次、みてなさい」
なんて負け惜しみを言ってます。
「次? 今この次といいましたか?」
ぷぷぷっ。
甘い。なんて甘いんでしょうか、お姉ちゃんは。
イチゴサンデーにどろり濃厚ピーチ味をぶっかけたくらい甘いです。
ふぁーすとるっく・ふぁーすときる。
悪即断。
情状酌量の余地なんてありゃしません。
で、懐から取り出したのは――――あのじゃむ!
「し、しおり―――ななななんであんたがそれを……」
あ。お姉ちゃんがおびえてます。
ちょっと萌えですね。
「お姉ちゃん――――」
ひろいんでもないのに。
「起きないから奇跡って言うんですよ?」
やはり、極刑です。
「しおりーーーーーーーー!!!!!!!」
悪は滅びました。
「さて。祐介さんのところにもどるとしますか」
【栞vs香里 1ROUND終了】
ぶちまけたけどまだ残ってたってこと?
とりあえず、ジャムネタ乱用は危険だと思う。
ずぞぞぞぞぞぞ。
むぐむぐむぐ。
ずぞぞぞぞぞっぞぞぞぞっぞぞっぞ。
ども。世界一の(以下略です。カップラーメンなど食しております。乾燥麺
にお湯を注いだだけの食物がこれほどまでに旨く感じられたのはアノ日以
来です。
「やはり飯はきらら397に限るな、青年よ」
すぐ横で白米に箸をつけているのは坂神蝉丸。日本の朝ですね。うまそ
うに味噌汁なんか飲んでやがります。
――ていうか、彼我の食品の間に確かなヒエラルキーを感じませんか?
そう。それもこれもパートナーの黒人ミュージシャン・エディなる男が出発
前に『備えあれば憂いなしダロー!?』と謎の文句をのたまいながらさらり
と口座を閉鎖しやがったからです。絶対このゲーム睨んでやったなあのヤ
ロー。
ということで、ポケットに偶然入ってたなけなしの小銭を投じてカップラーメ
ン(税込み315円。高っ)を頼み、おっさんはなんか良く分からん名前がつい
た定食(税込1700円)を注文しました。さっきから向こうで洗い物してる
ねーちゃん、時折こっち向いてはニヤニヤしてます。
ちなみに只今の所持金、総額274円(しかも10円玉ばっかり)。
……泣けてくる……。
ぽむぽむ。
なんか背中叩いてくれてますよこのおっさん。なに勘違いしちゃってるん
でしょーか。俺は自分の不甲斐なさに涙しているというのに、
「そんなに旨いか。よかったな、青年」
そんな世迷い言を吐いてきます。やっぱり馬鹿ですよこのおっさん。どこ
ぞの工場で機械的に生産された小麦粉の塊よりも皿5つも使った愛情いっ
ぱいの豪華定食のほうが旨いに決まってるじゃないですか。
「ちょっと、那須くん」
んでなんで名前知ってるんだよこのねーちゃん。つーか何ですかその高
らかに差し出された手は?
「お湯代150円」
「………どうすればいいんだ」
――姉さん。所詮この世は金だってことらしいです。
【宗一 残金124円】
【蝉丸 撃墜数をに換金、豪華定食でおなかいっぱい】
金持ち宗一に対する抑止のつもりか。
もっとほかに抑止すべき「誰か」も「何か」もあろうに。
広瀬を撒き、川辺の森を川下の方へ歩いていたひかりは、暫く進んだ所にあった対岸の桟橋に、
観鈴を乗せていた小舟が留められているのを見つけた。
「観鈴ちゃん…、向こう岸へ渡ったのね」
無論、観鈴の姿はどこにも見えない。
対岸の桟橋から森の方へと小道が続いており、そちらの方へ進んだのかも知れない。
「うーん…、泳いで渡るのもどうかと思うし…」
観鈴が鬼に捕まっていない事を祈りつつ、ひかりは更に川下の方へと足を進めた。
川のカーブを幾つか越えた所に、橋が架けられていた。太い縄と木板で作られた吊橋である。
――これが、口をぱっくりと開けた渓谷などに架けられていたらスリル満点だが、
緩やかに流れる川までの高さは、3メートル前後といった所か。
危なげない足取りで吊橋を渡り、ひかりは対岸へと足を踏み入れる。
そのまま、森へは入らずに、川辺の道を歩き続けた。
――森が途切れた頃、どこか離れた所から、この場においては少々妙な音が聞こえて来た。
「…チャルメラ?」
周りを見回し、ひかりは音の出所を探す。――途切れた森の向こう側…やや遠くの方に、
その音の主らしき物があるのを目に留めた。
「屋台かしら、あれ…?」
小首を傾げながらも、ひかりの足は既に屋台の方へと向いていた。
屋台では、その売り子らしき二人組と客らしき男が、何やら話しこんでいる様子だった。
「金も持ってねーのに注文すんな!」
「冷やかしなら、去れ」
「い、今は持ってないだけだ! 後で必ず払いに来るから…!」
「悪いが、ツケ払いは受け付けていない」
「いつもニコニコ現金払いの奴だけが客なんだよ」
揉めている…――ひかりは、男の体に鬼の襷が掛かっているのに気付き、
ちょっと残念そうな声を上げた。
「あら〜…、ここは鬼さん専用だったの?」
問答を展開していた三人の視線が、一斉にひかりの方へ向く。
夢中だったらしく、ひかりが来ている事に今迄気が付いていなかった様だ。
「なら、仕方が無いわね。私の事は見なかった事にして頂戴な」
「だーーーっ! 待った待ったぁ! ねーさんちょっと待ったぁっ!!」
困った様な笑みを浮かべて立ち去ろうとするひかりの腕を掴み、必死な声をあげてイビルが引き止める。
「ここは参加者なら誰でも利用可能だぜ!? 金さえ払ってくれりゃあ問題無ぇ!」
「あら、そうなの?」
「それに、屋台の周囲百メートル以内は、鬼のタッチが無効になる安全地帯だ」
じぃ〜…っと、良祐から目を逸らさぬまま、エビルが補足して来る。
「じゃあ、お買い物させて貰おうかしら♪」
三日分程の食料に、森で食材となる物を拾った時に調理出来るよう、小さな鍋やフライパン等といった
簡単な調理器具を買い、それらを入れておくザックも買った。
…その財力に加え、必要だと感じた物への払いの良さは、流石主婦といった所か。
「へへっ♪ 随分買い込んでくれるな、あんた」
ひかりの買い物のお蔭で、先程の反転ユンナ訪問時における大失敗赤字を大分解消出来たので、
イビルは上機嫌だった。
「探さなければならない子がいるもので」
「友達か?」
「ええ。昨日知り合ったばかりだけど、大切なお友達よ。鬼から逃げる為に別れ別れになっちゃってね」
「…大変だな。ま、頑張れよ」
労わる様な笑みをひかりに向けるイビルだったが、
「あのー…」
「あ゛…?」
一転して、ギヌロと目を剥く。――端っこの方で縮こまっていた良祐だ。
「な、何か食べないと、体が…」
「草でも食うか、自分で探せ」
心温まるお言葉に、うな垂れる良祐。
「…どうかされたんですか?」
憔悴している良祐を見かねたのか、ひかりが声を掛けた。
「はぁ…、あの、財布を失くしてしまって…」
「あらあら、それは大変ですねぇ。…じゃあ、私が少しだけお助けしましょうか?」
ひかりのその申し出に、良祐が顔をガバッ!と上げ、イビルとエビルが驚いて目を見開く。
「…いや、しかし――俺は鬼ですし…」
「お腹が減って倒れたりしたら、鬼ごっこ所じゃないでしょう?
それに、貴方の顔色――寝てないんでしょう? せめて食べる物だけでもしっかり摂らないと」
言葉の端端に真心を感じて、良祐の目頭は何だか熱くなった。
イビル・エビルの二人も、興味深げな目を向けて来ている。
「貴方が買おうとしていた物は何ですか? その分の代金を私が持つから」
――その言葉に、良祐ではなく、売り子二人の目がギラリと輝く。
「も、申し訳無い……。チーズハムロールと農協牛乳を――」
「あと、これも買うって言ってたよな」
「ああ。それにこれとこれとこれも買うつもりだったらしい」
「そうそう。全く食い意地の張ったヤローだぜ」
「あらあら」
ここぞとばかりに食べ物を良祐に押し付けるイビルとエビルに、何やら感心した様な笑みを浮かべるひかり。
当の良祐は、目を点にしていた。
「…おい」
「健啖なのね。やっぱり男の子だからかしら」
しかも、ひかりは全く疑いに目を光らせる事も無く、エビルに代金を渡している。
「…じゃあ、お体に気を付けて、お互いゲームを楽しみましょうね。ふふふっ♪」
「毎度ありーっ♪」
「――あ、そうだわ。恩着せがましい事をお願いしちゃうんだけど」
去り際に足を止め、未だに目を点にしている良祐にひかりが振り返った。
「もし、金髪でポニーテールの、“がお”とか“にはは”とかが口癖の女の子を見つけて、追い掛ける事に
なったら、ちょっとだけでいいから、手加減してあげて欲しいの。それと、私にそっくりの子を見掛けたら、
その子の方もお願いね。そっちは私の娘なのよ」
「は、はあ……娘さんですか。むすめ…――娘!!?」
目をひん剥く良祐と売り子二人に、ひかりはにっこり笑って左手の薬指で光る指輪を見せた。
「おばさんのワガママだけど、聞いてくれると嬉しいわ♪」
…去ってゆくひかりの後姿を見つめ、良祐が、やはりまだ目を点にしていた。
「……詐欺だ…。…詐欺紛いの片棒を担がされた挙句、詐欺に遭った気分だ……」
「ま、何であれ、これでさっきの赤字も消えたぜっ♪」
「めでたしめでたしだ」
【ひかり 弐号屋台で買い物 食料三日分、簡単な調理器具、ナップザックを購入】
【良祐 ひかりに食料を買って貰う ※どれくらいの量なのかは不明】
【弐号屋台 反転ユンナ訪問時に出来た赤字解消】 【ひかりは観鈴の捜索を続行】
【時間は昼頃】
優勝は栞でFA?
>>401 >ひかりの買い物のお蔭で、先程の反転ユンナ訪問時における
>大失敗赤字を大分解消出来たので、
>イビルは上機嫌だった。
――を、
“ひかりのお蔭で随分売り上げがあがったので、イビルは上機嫌だった。”
>>402 >「ま、何であれ、これでさっきの赤字も消えたぜっ♪」
――を、
“「ま、何であれ、儲かったんだから言う事無しだぜっ♪」
>【弐号屋台 反転ユンナ訪問時に出来た赤字解消】
――は、
削除の方向で(汗)
申し訳ないーーーっ!!!
407 :
愛の認知 :03/03/26 21:33 ID:MN7TYOHO
うっそうとした森の中、ひときわ目に付く物体があった。
石のテーブルの上に湯気の出ているなべ料理が乗っているのだ。
その横には『とってもおいしい朝ごはん、みんなで食べてくださいね』とのメモ書きがある。
───一体全体、誰が何の意図でこんなオブジェを作り上げたのだろうか……
料理の後方3メートルほどの繁みの中にオブジェ製作者が隠れていた。
「とってもいい匂いがしますです☆早く誰かこないですかねえ?」
「食べてるところを二人で襲うんですね。千紗さん、策士です」
「にゃあ☆それほどでもないですよ。エルルゥお姉さん」
塚本千紗とエルルゥのふたりだった。
すこし料理がさめてきたころ、一人の男がやってきた。
「───腹減った……」
目付きの悪い黒シャツの男。国崎往人だ。
シャツにはしっかりと鬼の証であるタスキが巻かれている。
国崎往人は『とってもおいしい朝ごはん』に目を付けた。
「こ、これは……あからさまに怪しいが背に腹は変えられん。喰うぞっ!!」
「ふみゃあ、これは鬼さんは食べちゃダメですぅ」
「これは私たちの罠なんです」
千紗とエルルゥが往人を羽交い絞めにする。
「こんな怪しい罠、引っかかるヤツがいるかっ!!」
国崎はもっともな意見を言って、二人を引き離そうとするが……
「駄目だ、力がでねえ……」
へなへなと倒れこんだ。
そのとき、三人と料理の延長線上のしげみから、かさりと音がした。
やはりエルルゥのことが心配になり様子をうかがっていたハクオロと、その背中ですうすうと寝込んでいるみちる。そしてハクオロと仲良く手をつないている遠野美凪だった。
408 :
愛の認知 :03/03/26 21:34 ID:MN7TYOHO
「美凪、みちるもいるのかっ!?」
「……国崎さん、おはこんばんちわ」
「ハクオロさんまで!!」
複雑な人間関係が繰り広げられる中で最も早く動いたのは千紗だった。
「獲物三匹捕まえるです☆」
その声を聞いてきゅぴーーんと眼を光らせた国崎も同時に駆け出す…が、
「みゃあ、黒シャツのお兄さん、突然出てこないでください!」
千紗とぶつかってゴロゴロゴローと盛大にコケた。
「ハクオロさん、その人たちは誰ですか…」
やきもち焼きのエルルゥが引きつった笑顔で質問する。
美凪はぺこりとお辞儀をして、丁寧にエルルゥに挨拶した。
「……遠野美凪と申します、ハクオロさんの奥さん。
……奥さんとは一度お会いしたかった……
……私にはこの子、みちるがいることを奥さんに知ってもらいたくお伺いしました」
美凪の言葉に全員が固まる。
「み、み、美凪、お、お前なんてことを」
あまりのことにハクオロがうろたえながら口を挟む、
「ハクオロさんは黙っててください!!私はこの人と話しているんです!!」
「…心配しないでください、私とみちるはハクオロさんと奥さんとお子さんの仲を壊すつもりはありませんから…」
美凪はまた凄い言葉をいう。
「マジかよ──」
国崎も動揺を隠せない。
409 :
愛の認知 :03/03/26 21:35 ID:MN7TYOHO
国崎と絡まっている千沙が禁断の質問をする。
「千紗、よくわからないですけど……
二号さんが本妻さんに子供を認知してもらってるですか?」
「ぽっ……」
「み、美凪っ!か、顔を赤らめるなあっ!!第一、美凪の年では計算があわんだろうがぁ!!」
「最近の子は育つのが早いですっ。千紗、びっくりです」
「だーかーらーーっ」
あまりの騒ぎにハクオロの背中で寝ていたみちるがぼんやりと目を覚ました。
「うんにぃ…お父さん……」
「ハークーオーローさーん」
エルルゥのこめかみに血管が浮き出る。
寝ぼけていたみちるがあたりを見渡した。完全に目覚めたようだ。
「にょわ、国崎往人!!他にも鬼だ!!
美凪、ハクオロさっさと逃げるのだ!!」
「……では、ばいばいぷぅーー」
「──あ、ああ。とりあえず逃げるぞっ」
逃走するハクオロ達……
「ハクオロさーん、待ちなさいーーーーっ!!!」
そして必死に3人を追うエルルゥ。
残された国崎と千紗はすっかりあっけにとられていた。
「みんな、いっちゃたですぅ」
「とりあえず、メシ、喰うか……」
なべ料理はすっかり冷めていた。
410 :
愛の認知 :03/03/26 21:36 ID:MN7TYOHO
【ハクオロ とにかくエルルゥから逃げる】
【美凪 ハクオロと共に愛の逃避行へ】
【みちる ハクオロにおぶさっている】
【エルルゥ ハクオロを地の果てまでも追い詰める】
【千紗 作戦を練り直す】
【国崎 冷めたなべ物を喰う】
森の中、朝から昼のあいだです。
「っかし、本当に何でもあるなこの島……」
浩之が呟く。標準以下の音量にも関わらずとても反響した。つられて浩之
に掴まりっぱなしのサクヤが縮み込む。
「こっ、恐くないんですか浩之さん……」
「そりゃお化けでも出てくれば恐いだろーけど、な」
のんびりとした調子で浩之は答えた。
「…………」
あまり喋らないので存在を忘れられがちだが、浩之の前を舞が先行して
いる。普段慣れているせいで足取りは軽い。夜目が効くと言うことで先陣を
切って貰っている。
遡る事、およそ10時間。昆布たっぷりのおでんを心ゆくまで食した一同は
とある問題に直面していた。
「――この人数で移動するのは得策とはいえないわね」
綾香が言う。浩之、マルチ、サクヤ、クーヤ、舞、それに香は頷いた。
なんとも判りやすい情景描写だ。
ちなみに楓はというと、
「姉さんたちが心配なので。綾香さん、申し訳ないですけど…」
「いいっていいって。姉さんにこうして逢えたのも楓ちゃんのお陰だし」
「それでは、失礼します」
と、どこかに行ってしまった。
「で、一つ提案があるんだけど……この際だから、何個かにメンバーを分け
て行動しない?」
綾香の大胆な提案に一同しばし考える。
「……面白そうだな。オーケー、俺は賛成するぜ」
真っ先に浩之が賛同した。このまま動いて鬼に発見されたら身動きが取
りづらいだろう。合理的な判断だと彼は思った。
「………………はちみつくまさん」
ややあって舞が答える。身軽になれば佐祐理を発見するのにも都合が良
いだろう。彼女はそう思った。
「……(こくり)」
「姉さんもそれでいいって」
あまり運動能力の高くない自分が与える影響は少ないほうが良い。それ
に、こちらから手を出すような場合でも小回りが効く。芹香はそう思った。
「どーしましょうか……?」
「このまま団体で動いてもあまり面白くないだろ? もっとアクティブに行こ
うぜ」
「……そうですねっ」
マルチはそう決断した。あまり深くは考えていなかったが、彼女なりに楽し
もうとはしているらしい。
「……クーヤ様」
「……ええい、そんな目で見るなサクヤ! この空気で断れるほど余はば
かではないわ!」
最後にクーヤが渋々同意した。
「よし、満場一致ね」
そういうや否や、綾香が右手の拳を突き出す。じゃんけんだ。
「2,2,3人ずつでいい? じゃあいくわよ。
あいこはなしよ、グーチョキパーッ!――――」
ということで、浩之はサクヤ、舞と共に行動している。
今彼らは、海岸沿いの洞窟を探検していた。前に志保が調査した
場所だったが、もちろん彼らは知らない。
「………大丈夫みたい」
「よし、ならば前進だ」
「ほんとに先に進むんですかぁ〜……」
約一名ぶんの不安を抱えつつ、彼らは一歩踏み出した。
【浩之・サクヤ・舞ペア 洞窟探検】
【(他のペアはお任せします)】
【時間→二日目午前中】
砂浜、そこの木陰で三角座り(又の名を体育座り)している男がいた。
「……海なんて、だいっキライだ」
悲しきかな。彼の名前は泳げない神様D.もしくはうたわれるものウィツァルネミテア。
仕方がないので、彼は楽しく泳いでいるレミィとまいかを砂浜で独り寂しく眺めているしかなかった。
「……………………」
ざざーん、ざざーん。
「キャッ、やったねまいか! エイッ!」
「うわぁん! ズルイよれみぃおねえちゃん!」
太陽は燦々と輝き、紫外線と赤外線用いてDを、そして砂浜を暖かく照らしている。
海からは静かな潮騒と楽しげな2人の少女の歓声が和やかなコントラストを醸しだしている。
「……美しい。しかし……」
……寂しい。とても寂しいと思った。
今の自分が、ではない。今までの自分が、である。
思い出してみれば、自分はこんなにゆったりとした時間を得ることなど今までなかった。
学生時代は勉強勉強に追われていたし、哲学士を志してからは今度は勉強とはまた違う修行の数々。
姫巫女の家庭教師に抜擢されたのも確かに大抜擢と言えば大抜擢だ。だが、その分失うものもまた多かった……
「……つまらぬ座興かと思っていたが……」
たまにはこんなものも悪くないかもな……と唇をフッと綻ばせる。
「……どうした、お前は泳がないのか」
「ム!?」
不意に……Dがほんの少し気を緩めた、その隙に彼の後ろに立つ影があった。
「お前は……?」
「安心しろ。私は鬼ではない。ま、最もお前も鬼のようだからな。心配することもないか」
相手に敵意がないことを確認すると、改めてDは海に向き直る。レミィとまいかは遊ぶのに夢中で、こちらの様子には気づいていないようだ。
「彼女らは……お前の家族か?」
「……………いや」
少し悩んだが、Dは首を横に振る。
「鬼として行動を共にしている。捕獲は協力した方が成功率が上がるからな。それだけだ」
「そうか……」
「それよりも、お前、腹は減らないか?」
「腹?」
いきなり雰囲気は変わり、後ろに立っていた女はそんなことを切り出した。
「そう言われてみれば……」
「うん! まいか、おなかすいた!」
「そうだネ、いっぱい遊んだからお腹が空いてきたネ!」
「のわっ!? お、お前らいつの間に!」
今度は後ろに気を取られている隙に、前方にいつの間にやらまいかとレミィが立っていた。
「それはちょうどいい。では何か食っていかないか? 焼きそば、ラーメン、お好み焼き……なんでもあるぞ」
「おうエビル、キャッチは成功したみたいだな」
「あまり人聞きの悪い言い方はするな。腹の空いた者に食料を、私たちはそれだけを成せばいいのだ」
「ま、言い方なんてどうでもいいや。らっしゃい、ここはショップ屋弐号店。大抵のモンは揃ってるぜ」
なんとまあ砂浜に、一台の屋台が現れた。
「それじゃあ、まいかはすぱげっちー!」
「ワタシは焼きそばネ」
「……ニンニクラーメンチャーシュー抜き」
「はいよっ、ちょっと待ってな」
のれんの裏の座席に3人揃って並び、とりあえず注文を済ませる。
「おねーちゃん、りょうりうまいねー」
身を乗り出したまいかが歓声を上げる。
「まーな、この業界も長いし」
「早く借金を返したいものだ……」
「……ところで主人、これは……」
Dが屋台の一角に飾られている『それ』を手に取り、たずねた。
「主人などと呼ぶな。私はエビル、そっちはイビルだ」
「……ではエビル。これは……何だ?」
一角に飾られた、空気の抜けてしわしわの『それ』を示す。
「なにとは何だ。浮き輪あd。それ以外に見えるのか?」
「……まぁ、そうなんだが……」
「エッ! 浮き輪!?」
だが、意外にも一番激しい反応を示したのはレミィだった。
「どうした?」
「やったネD! これでDもワタシたちと一緒に泳げるヨ!」
Dの戦慄。
「おい……お前、まさか……私に、それを付けて……」
……Dの気持ちもわからぬことはない。何せそれはどう見ても小学生低学年、しかも女の子用。
カードマスターピーチとかいうものが毒々までにプリントされた原色バリバリの浮き輪だからだ。
「ん? 買うのか?」
「ウン買うよ! 他にも何かない?」
「ああ、その手のものだったら後は……ビーチボール、パラソル、マット、サンオイル……色々あるが」
「Yeah! That's great!」
それを聞いたレミィは目を爛々と輝かせ、迷わずサイフから札を一枚取り出し台の上に叩きつけた。
「全部買うよ!」
「ま、待て……お前……!」
「まいどありぃ!」
悲痛なDの声など誰も聞きはしない。
【D一家 ただいま砂浜の弐号屋台で食事中】
【レミィ 海の遊具いろいろ買い込む】
【時間 昼過ぎ】
森といえばムックルの領域である。
すごい形相で追いかけてくる神奈の追跡は長時間にわたったが、野生の本能で、神奈の見つかりにくそうな岩場を駆け、茂みを抜け、振り切ることができた。
「いないみたい〜」
偵察にその辺を見てきたカミュが帰ってきて言った。
「……よかった」
ユズハがほっと胸をなで下ろす。
何時間もの逃亡の末、どうやら神奈の追跡を免れたアルルゥ一行。
とはいえ、実際に走っていたのはムックルなわけで、ゼイゼイと息を切らしているのは彼だけだ。
アルルゥはねぎらうようにムックルの鼻面をなでりなでりした。
「ヴォフ〜」
ムックルは幸せそうに目を細めている。
「これからどうしよう?」
「……そうですね。ハクオロ様を見つけるのは難しいでしょうし」
「おなかすいた」
アルルゥが少しむくれたように言った。
「確かに。じゃ、もういいかげん疲れたし、ここで一休みしよっか。あ、でも食べ物は……」
ない。
「うー」
「あ……」
ユズハが猫耳がぴこぴこ動かして口元に人差し指を当てた。
「……ユズっち?」
「……しっ」
「………………」
くんくん。
「ひとの声……食べ物のにおい……」
祐介と栞がどこかへ行ってしまってから数分、新城沙織は未だにのたう
ちまわっていた。原因は言うまでもなくあの可塑性粘液である。
「(ギギギギギ……祐君わしゃもうだめじゃ……)」
粘液は沙織の喉に引っ掛かっていた。声が出ない。酸素不足で言語野
に一部混乱が見られる。
「(死ぬんじゃ……わしゃ死ぬるんじゃ……)」
わっしわっしと地面の土を引っ掻く沙織。傍目から見ても苦しそうだった。
咽喉に直接手を突っ込んでみるが、届かない。声帯の奥の方に引っ掛
かっている感じだ。何度も試みるがやはり指では無理なようである。
「(祐君……はようにげて……)」
もはや沙織は死を覚悟したのだろうか。よく判らない事を頭の中で浮かべ
た。徐々に視界が暗くなる。
「(祐君……)」
そして沙織は冷たい土の下へ――
「……ぷはああっ!」
突如呼吸が通じた。ものすごい勢いで沙織は酸素を取りこむ。まさに九
死に一生を得た表情で全身に空気を巡らせる。
「はぁっ、はぁっ…………………………ふぅ」
沙織はようやく落ち着いてきた。まだ少し頭がはっきりしない。たぶん酸
素不足が原因だろう。目が霞んでいるのも同様だ。
「えっ、どこどこ?」
「あっちの方です……」
「行こ」
即座にアルルゥが言う。が、さすがのムックルもグロッキーだ。
「あ、じゃあ私が見てくるよ」
「私も行く」
「じゃ、アルちゃんと私で何か調達してくるから、ユズっちはムックルとここで待っててくれる?」
「はい」
「ムックル」
ユズっちをちゃんと守るんだよ。
「ヴォフフ〜」
こくり。
で、ひとり残されたユズハ。
正直、少し心細い。
ここに来てから、ずっとアルルゥ(+2匹)に頼り切りだった。
(私も、なにか役に立ちたい……)
そういえば、さっきからすぐ近くで水の音がする。
川だ。
(せめて、お水くらい……)
カバンの中の水筒を思い出し、ユズハは立ち上がった。
「ヴォフ?」
「ちょっと行ってくるだけだから、大丈夫……」
ムックルににこりと笑って、ユズハは一歩踏みだし……
転んだ。
「…………ぁぅ」
外を出るときは誰かに手を引いてもらって、背負ってもらって、抱いてもらって、ひとりで歩いたことなんて数えるほどしかない。
しかも足場の悪い森の中。木の幹が張り巡らされている。
「痛いです……」
擦りむけたヒザに触れると、少し血がにじんでいた。
「ヴォフ〜っ」
「あ、大丈夫……。ごめんなさい、心配しないで……」
ユズハは再度にこりとして、今度こそ慎重に、慎重に一歩踏み出した。
……成功。
「ふぅ……」
やっぱり無理なのだろうかという疑問が浮かぶ。
が。
「ムックルちゃんはここで待っていて……。
ユズハは頑張ります。すぐに戻りますから」
そう言って、ユズハは足下を探りつつ、ふらふらよろよろと川に向かって歩き出した。
ちょっと迷ったムックルだったが、やがてユズハに気づかれぬようそうっとその後を付けて歩き出した。
【アルルゥ(+ガチャラタ)、カミュ:食料を求めていったんユズハと別れる】
【ユズハ(+ムックル):水を汲みにに行く】
さらに5分ほどして、ようやく沙織に疑問が浮かぶ。
「……なんでいきなり息出来るようになったんだろう…」
あれだけ強力な物質が突如消失した。どう考えてもヘンだ。辺りを見回す
が、それらしいものはない。吐き出した訳ではないようだ。
「…あれ? そういえば」
べっとりとした感触もない。そもそも上半身を中心に粘液をかけられて、そ
の一部が口の中に入ってきたのだ。それらも同じくして綺麗サッパリ跡形も
なくなっている。沙織にはさっぱり訳が分からなかった。
「………あ、そうだ。祐君」
沙織は事に至る顛末を思い出す。そうなってくると急激に行方が気になっ
てしまう。呼吸困難の原因を人知を超えた味と胸焼けに結論付けて沙織は
思考を切り替えた。
「こうなったら地の果てまで追い詰めてあげるからね! 祐君!」
気合い一発、沙織は足跡の方にむかって全力で走り始めた。
千鶴は一息つく。
「……ふぅ」
彼女の手には、秋子が持っていたはずの小瓶。
――いや、それと全く同じ別の瓶が収まっている。中身も一瞬見ただけ
では見分けがつかない。
「もし本当にそれを持たせたら人死にが出兼ねませんからな」
机を挟んで立っていた足立さんが言った。
「ええ、全く……特に栞さんは危険です」
「まぁ、でもこれで一安心ですね」
「あとは水瀬家の冷蔵庫にそれを置けば、一件落着ですな」
足立さんもほっとした顔をしていた。千鶴はしばらく瓶を眺めていたが、い
きなり呟いた。
「食べたほうがてっとりばやく証拠隠滅出来ないかな?」
「私は遠慮しておきます」
一秒で遠慮されてしまった。
「ところで、秋子さんに渡した瓶には何が入っているんですか?」
「ふふふ、聴いて驚かないでください。あの瓶には何と、『千鶴特製ジャム!』
を入れておきました!」
足立さん、思わず倒れこんでしまった。地面に接触する瞬間の足立さん
の脳裏では『いーみなーいじゃーん』という誰かの言葉が延々リフレインし
ていたという。
【沙織 引き続き祐介を追う】
【謎ジャム→実は謎ジャムツヴァイ(千鶴製)】
425 :
420:03/03/26 23:02 ID:gJDbWEHE
>>423 いえいえ、こちらこそ(^^;
改行規制でひっかっかっちまいまして、ノロノロしてたもんで。
「ユズハ……か。……可憐だ」
思わず呟く光岡悟、強化兵。
その視線の先にはよろよろふらふら歩くユズハがいる。
艶やかに伸びた髪、華奢な身体、無垢な笑顔、猫耳。
どれをとっても可憐すぎる!!
「可憐、ねぇ……」
呆れて呟くコリン、天使見習い。
「男ってみんなああいうのがいいわけ?」
「……可憐だ」
↑聞いてない。
儚げな仕草には、どこかきよみを連想するものがある。だからなのかもしれない。
会ったばかりの彼女に何か惹かれてしまったのは。
見かけた彼女を鬼にしようとするコリンを遮ったのは。
「いい……」
「なんか変態っぽいわよ?」
「守りたい……彼女を……」
↑やっぱり聞いてない。
『ユズハは頑張ります』
盲目の彼女の言ったその言葉に、光岡悟は感動していた。
お涙ストーリーを勝手に想像して涙ぐんでしまっている。
「コリン」
「なによ」
「俺はあの人を守る」
思えば、思い人(きよみ)の最期(生き返ったけど)を看取ることもできず、守ることも助けることも蝉丸にイイトコ奪われてきた。
「はぃぃ?」
「彼女を鬼にはさせない。あの娘の努力を実らせてやりたい。決めた」
「って……んなイキナリなっ」
恐ろしく唐突な展開である。
これも超先生の呪いなのかッ。
「第一、私たち鬼じゃないの」
「ああ、俺は彼女に指一本触れはしない。ただ、こっそりと守るだけだ……」
「そういうの、ストーカーって言わない?」
「すとーかー?」
「それに、勝負とかなんとか言ってなかった?」
「それは……」
言いよどんだ光岡の視線の先で、ユズハがまた転んだ。
「くっ……」
「……はいはいはい、わかったわかった。守るなり襲うなりなんなりしてちょーだいな。
でも、もうコリンちゃんは付き合ったげないからね」
「……」
↑聞いてない。
「ふんっ」
【コリン:光岡と別れる】
【光岡:ユズハのストーカーになる(ユズハを鬼から守る)】
「みゅーっ」
「どうすりゃいいんだっ!俺はっ!」
屋台参号機で朝食を終え、山中を適当にふらついている高槻&繭コンビ。
「みゅーっ♪」
繭はすっかり高槻に懐いてしまった。肩車までしてもらってゴキゲンである。
「ぐぁぁぁぁっ…」
懐かれた高槻は困っている。金は減るわ肩は痛いわ耳も痛いわ。
まぁ、困りつつ叫びつつも大きな問題は無いと言うのが現状なのだが。
…と。
「みゅーっ!」
遠くを見ていた繭が前方を指差す。
「ん? なんだぁっ!?」
その先には…木の陰に隠れてよく見えないが、人影が確認できた。
「人間だなっ! おい、襷は見えるかぁっ!?」
「…ううん」
「そうかぁっ! 鬼じゃないのかぁっ!」
「うん」
「よしっ! そこの人間、出て来いぃっ!」
「でてこいっ!」
「………」
無反応。
「みゅーっ?」
「出て来いっ! 俺達は鬼じゃないぞぉっ!」
「………」
「みゅーっ! みゅーっ!」
「おいどうしたぁっ!」
「………」
「ふいふい」
「そうかっ! よしっ! じゃあ俺たちからそっちに…」
「…だぁぁっ! わかった! わかったからもう叫ぶなっ!」
「なんだ。若い女だと思ったのに、つまらん」
「みゅー」
「悪かったな、若い男で…」
男の名は柳川。セリオに救われた後、鬼に見つからないように木々の間を縫って歩いていたのである。
「全くだ。この世には俺と若い女だけいればいいのだ」
「みゅーっ」
タカツキズム全開の彼の言葉を理解しているのかいないのか、とにかく繭は笑っている。
事態は和やか。とてもいい雰囲気…。
…でもない。急に柳川が怖い顔をした。
「ところで、高槻とやら」
「なんだ」
「みゅ?」
「この子は、お前の娘か何かか?」
「そんなわけあるか。ただの他人だ」
「みゅ」
「……そうか。一応聞くが、この子は未成年だな」
「あたりまえだ。こんな奴が二十歳過ぎならこの鬼ごっこの開催者は何歳になる」
「ふいふい(こくこく)」
「よし。ならいい」
ごそごそと、柳川は何かを取り出す。
「ん? なんだ、それは」
「見れば分かるだろう、警察手帳と手錠だ……高槻! ょぅι゛ょ誘拐の疑いで現行犯逮捕する!」
「ご、誤解だっ! こいつが勝手に着いて来た…」
「問答無用!」
「だぁぁぁぁっ! 参ったぁっ! 俺は参ったぁっ!」
「えぇぃ逃げるなっ! 大人しく捕まれぇっ!」
「どうすりゃいいんだ、俺はっ! こうやって猿のように足を前後させるしかないだろうっ!」
ひょんな所から始まった、鬼ごっことは別の次元での鬼ごっこ。
スピードに乗って下り坂を降りる降りる。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ…」
「くそっ…何故だ、妙にスピードが出んっ…」
「みゅーっ♪」
「どうすりゃいいんだぁぁぁぁぁっ!」
「だが、こんな奴を相手に狩猟者の力を使うわけにはいかんっ…警官として鍛えた、人間としての能力で充分っ…!」
「みゅーっ♪」
逃げる高槻、追う柳川。
あと、いつのまにか柳川に肩車してもらってる繭。
勝つのは変態研究員か、重りをつけた警官か?
ごきっ。
「ぐぅっ…何だ、首の筋肉が…」
気付けよ柳川。
【高槻 柳川に追われる】
【柳川 高槻を追う】
【繭 柳川に乗っている】
【昼前くらい】
「…いやむしろこっち方が」
「ちがう、そうではないぞ。いっちゃん…」
耕一とダリエリ。
身体能力なら参加者中でも1、2を争う優勝候補の一角。
二人は議論していた。
この鬼ごっこでは、最強エルクゥとはいえ油断できない。
作戦を練るのも当然だろう。
「絶対パジャマだろ!? そでが余って指先だけ出してる楓ちゃんや初音ちゃんを見てみろ! もう萌え萌えだぜ?」
「情けない… ネグリジェの真価がわからんとは、それでも我が宿敵か?
天蓋付きのベッド… その中ですやすや眠る由美子嬢… ふとした寝返りと共に捲れるシーツ…
そして目に飛び込むうっすらとしたネグリジェ… そのネグリジェに包まれた瑞々しき肌…」
「おい…由美子さんちは普通のアパートだぞ…」
ゴメン俺が悪かった。
アホだこいつら。
特にダリエリ…貴様いつの生まれだ?
しかしそんな馬鹿話やりながらも、即時反応可能なように周囲に五感を張り巡らせているのはさすがである。
「お?」
「ふむ?」
そして二人は同時にそれに気付いた。
「屋台…だな」
「ちわーす」
「邪魔するぞ」
暖簾をくぐる二人。
「いらっしゃい」
「いらっしゃいませー」
歓迎の意を示すルミラ、アレイ。
「あ、ここはルミラさんとアレイちゃんの店なんだ? 久しぶり」
別の店を既に利用していた二人からすれば、今更疑問に思うほどの事でもない。
まあ、買ったのは食料くらいだが。
「ええ、久しぶりね」
「お久しぶりです」
簡単に再会の挨拶を交わす。
「どちらも中々だが、俺の趣味ではないな。そっちのアレイとやらはいい線行ってるのだが…」
「で、今日は何を買ってくれるの?」
スルー。
妙なお客には慣れっこなのだろう。
「うーん、やっぱ安くて量がある食べ物かな?」
以外と堅実な耕一。
「それでいいの? いいアイテムそろってるわよ?」
ルミラとしてはできるだけ売りたい。
一刻も早いデュラル家再興のために。
「いや高いでしょ。俺あと一万ちょっとしかなくて」
ダリエリにいたっては持ってないし。
無駄使いはできない。
するとルミラは少し考えて、
「んー、じゃあ…このパチンコ玉は? 普通の人なら役に立たないけど、あなたならこれはじいて攻撃できるでしょ?」
「相手死んじゃいますよ…」
「そうね…、じゃあ…」
「これを頂こうか」
「はい、3千円になります」
ルミラと耕一の交渉の間にダリエリはアレイから商品を受け取っていた。
あせったのは耕一。
慌てて問いただす。
「お前何を!?」
ダリエリの手にあるのは二つの仮面。
けして視界を塞がないよう、そしてけして壊れないよう篁技術を用いて作られた一号と二号だ。
キャッチコピーは、『鬼になっても大丈夫』。
「買うか!」
「いっちゃんだし、一号は譲るぞ?」
「アホか! んなものに金は出さんぞ」
まあ当然だろう。
しかしその背後から聞こえてきた声は、耕一といえど無視できないものだった。
「返品はきかないわよ?」
数分後、仮面二枚と、数日分の食糧を買い込んで去って行く二人の男がいた。
【耕一 残金数千円 一号の仮面を所持】
【ダリエリ 二号の仮面をかぶる】
434 :
ギョウ:03/03/27 01:26 ID:0FX/tgDM
「…………」
「……何を悲しんでるのかさっぱりわかんないんだけど、とにかく何かリア
クションを取らないとどんどん影薄くなると思う」
「――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
圭子の冷静なメタ発言に清(略はようやく我を取り戻した。驚きを隠せな
い清(略。それは感嘆符の数からも容易に見て取れる。レンズ越しの両目
は焦点が定まっていない。指先は微かに震えていた。
「圭子さん……あれからどれくらい経ったの?」
「え? え、えーと確か40分くらいだと思う」
「40分――――35分300秒!!」
彼女はそう吐き捨て、防風林の一番手前の木までべたべたと全色疾走
した。幹に軽くタッチすると、今度は同じく全力駆足で元の位置戻ってくる。
「何? 何? なんなの今の!?」
圭子は清(略の一連の動作をうまく理解できない。清(略は息を整えつ
つ、混乱しかけている圭子にかいつまんで説明した。
「行よ」
へへっ、指先で鼻を擦りながら答えた。かいつまみすぎだ。
「行? 行って何?」
しかし既に清(略は走り出している。圭子の声は届いていないようだっ
た。
「……もー……いや……」
【清(略 心身を鍛えるべく行をする】
【田沢圭子 もうなにがなんだか】
「どういうことだ! 俺様の出番が全然こねぇぞ!」
「まぁ仕方がないわね。葉鍵の最馬鹿と最無茶の存在が同居してるんだから。書きにくいと言ったら書きにくい」
「……何か言ったか?」
「いいえ、別に。で、これからどうするのヌワンギ君?」
そう。エルルゥを探すと出発したはいいが、2人は森の中をぐるぐると回るだけで一晩を明かしてしまった。
有り体に言えば、迷った。
罠の数々は麗子が見抜いていたため幸いあれからかかることはなかったが、誰とも会わないと目立つこともできない。
本編中でも改心した瞬間殺された(と思う)ヌワンギ君。ヌワンギスレでは愛されているとはいえ、ここで一つイメージアップを図りたいところだ。
……既にディーに先手を打たれているため、状況はかなりキツイのだが。
「……がーーーーーーーーーーっ! 誰か! 誰かいねぇのか!?」
「何を騒いでいるの?」
「だってよォ、つまんねぇじゃねえか。いくら鬼ごっこで鬼には見つからない方がいいとは言ったって、ここまで誰とも会わないのはつまんねぇよ」
そう。ヌワンギには苦い思い出があった。
かつて彼がヤマユラで暮らしていた頃……エルルゥやアルルゥと、隠れんぼをした際の話だ。
―――ねぇアルルゥ、ヌワンギ、いた?
―――ん〜ん、いない。
―――おかしぃなぁ、どこに隠れたのかな?
―――おねーちゃん、あるるぅ、おなかすいた。
―――え? おなか……。困ったなぁ、ヌワンギまだ見つけてないのに……。
―――ん〜ん、ヌワンギ、かえった。エルンガートロくさいって、もうかえった。
―――ええっ!? 本当!?
―――うん、ほんとう。ヌワンギ、とっくのむかしにかえった。
―――もう! ヌワンギったら! わたしがこんなに一生懸命探したのに……いいわアルルゥ! 帰りましょ! そろそろ晩御飯の時間だし!
―――うん。
そして、数時間後。すっかり辺りも暗くなった頃。
―――おいヌワンギ、こんなトコで何してんだ? おっかさんかなり心配してるぞ。
―――おう親っさん、かくれんぼだよ。エルルゥを待ってるんだ。
―――エルルゥ? エルルゥだったらとっくの昔に寝ついたぞ?
―――は?
「俺ァもうあんなみじめな思いは二度と御免だぞ! だったらまだ誰かとチェイスする方がまだマシだ!」
「……わがままねぇ……いいわ。じゃあこっちについて来なさい」
やおら言うと麗子は180度向きをかえ、明後日の方向に歩き出した。
「お、おい! ちょっと待てよ!」
「全く、不快だわ。野宿なんて乙女にあるまじき行為よ! 乙女って言うのはこう天蓋付きのベッドで、ネグリジェを体にまとって、ふと寝返りをうった拍子にシーツが捲くれちゃったりして、
そしてネグリジェが目に飛び込んできたりして、瑞々しき肌が下からチラリと……」
「そりゃよかった」
「がっ……ぐっ!」
思わず一撃をかましそうになる七瀬。この矢島という男、そこそこの突っ込み属性を持っているようだがその方向性が折原とかなり違う。
言わばスルー系だ。七瀬はかなりやり辛く、昨日から徐々にストレスが溜まっていた。
「ほら、見えたわよ」
「あ?」
冷静な麗子の声と共に、七瀬の目の前にヌワンギが、ヌワンギの目の前に七瀬が現れた。
「………あ?」
「………へ?」
「私の見立てによるとあなた方の身体能力はほぼ互角。いい勝負が期待できるわ。さぁて、逃げるわよヌワンギ君!」
言うやいなや麗子は脱兎のごとく駆け出し、一瞬で森の奥へと消えた。
「お、おいおい待ちやがれ!」
慌ててそれを追うヌワンギと……
「え、獲物発見! 撃滅するわよ矢島君!」
「お、おう……」
七瀬の言った『獲物』という言葉―――それには、二ツの意味が込められていた。
一ツは、当然ゲームにおける得点源。
そして、もう一ツは―――
「やるわよやるわよ! 思いッッッッきり殺ってやるわ!」
―――ストレス発散対象。
【七瀬・矢島組によるヌワンギ・麗子組への追撃開始】
【麗子の見立てによると2人はほぼ互角】
【2日目・午前中 場所は森】
fils
ティリア・フレイ 森の中できのこ発見。やめといたほうがいいよ。 witn サラ
サラ・フリート 森の中できのこ発見。お腹空いた。 with ティリア
エリア・ノース 森の中、寝ていたリアンを捕まえて、行動を共にする。朝八時。 with リアン
雫
長瀬祐介 だだっ広い平原。沙織との追いかけっこ終了。栞と合流。昼頃。
月島瑠璃子 森の小道。軽い捻挫も応急手当で行動している。初日日暮れ後(!?) with 天野美汐 松原葵 沢渡真琴
月島拓也 森の中。ニウェに嘘を吹き込まれて森の奧へ駆けていく。疲労たっぷり。早朝。
藍原瑞穂 平原? 香奈子ちゃんの犠牲の下、香里から逃げる。早朝。 with 砧夕霧
太田香奈子 平原? 香里、セリオと行動を共にする。早朝。 with 美坂香里 セリオ
新城沙織 だだっ広い平原。可塑性粘液の打撃から回復。祐介の追跡再開。昼頃。
痕
柏木耕一 伊藤をあしらってどこかへ。真夜中。 with ダリエリ
柏木千鶴 とりもち落とし穴から救出された後、鶴来屋社長室へたまった仕事をこなしに行く。昼過ぎ。
柏木梓 森の中。かおりから遁走後、たまたま耕一・結花と出会う。結花と同行。耕一は地に沈めた。 with 江藤結花
柏木楓 浩之たちとおでんを食べた後、姉たちを捜しに別行動。初日夜。
柏木初音 食料は一日分手に入れました。ばんざいです。商店街から島の北へ向かう。 with 川名みさき 保科智子
柳川祐也 山中に潜んでいたところ幼女誘拐犯を発見。肩に繭を乗せ、逃げる犯人を追撃中。昼頃。
日吉かおり 森の中。落とし穴から助けてくれたカルラを気に入るも、やはり今は梓第一。初日、昼!!!!!
ダリエリ 伊藤をあしらってどこかへ。ダリーと呼んでくれ。真夜中。 with 柏木耕一
相田響子 朝起きて、太陽に挨拶。弥生と共に、移動開始。日の出直後。 with 篠塚弥生
小出由美子 地下道探検終了。五十万円券ゲット。屋台捜索開始。時間不明。
阿部貴之 商店街の片隅にある建物に潜伏中。時間は不明。 with エディ 橘敬介
To Heart
藤田浩之 サクヤ・舞と行動中、志保ちゃん洞窟を発見。探索開始。午前中。
神岸あかり 高台にある公園→?号屋台。空腹です。朝七時〜八時くらい。 with 氷上シュン
長岡志保 謎の洞窟から生還。洞窟は灯台に続いていた。灯台には琴音他二名が。初日夕方。
保科智子 罠をしかけた野郎への怨みに燃えつつ、島の北へ向かう。 with 川名みさき 柏木初音
マルチ 屋台にて、グループ分割。誰と一緒になるかは不明
セリオ 平原? 香里と共に、香奈子を捕まえる。とりあえず食事にしませんか? 早朝。 with 美坂香里 太田香奈子
来栖川芹香 屋台にて、グループ分割。誰と一緒になるかは不明
来栖川綾香 屋台にて、グループ分割。誰と一緒になるかは不明。
松原葵 森の小道。瑠璃子の手当をして、移動中。初日日暮れ後。(!?) with 月島瑠璃子 天野美汐 沢渡真琴
姫川琴音 灯台にいる。初日の夕方(!?) with 長岡志保 猪名川由宇 大庭詠美
佐藤雅史 街のスポーツ施設にて、サッカーボール確保。食料はない。 with 松本 吉井 岡田
神岸ひかり 弐号屋台で買い物終了。食料三日分、簡単な調理器具、ナップザックを購入。観鈴捜索再開。昼ごろ。
しんじょうさおり 小屋。太助と一緒におねむです。初日夜。 with 澤倉美咲 しんじょうさおり
宮内レミィ 砂浜。屋台へゴー。昼食と、水泳遊具大量購入。水着着用。昼過ぎ。 with D しのさいか
雛山理緒 森の中。野草たっぷりゲット。貧乏万歳。調理器具がないと食べられません。 with 水瀬名雪 相沢祐一
矢島 平原。とりもち落とし穴から引っ張り上げられ、七瀬と同行。
垣本 平原。とりもち落とし穴から引っ張り上げられた後、暴言を吐き七瀬に撃沈させられる。
田沢圭子 偽たすきを放棄させられる。もう、なんかいやだ。場所不明。午前。
岡田メグミ 街のスポーツ施設にて、シャワーを浴びた。食料発見できず。 with 松本 吉井 佐藤雅史
松本リカ 街のスポーツ施設にて、シャワーを浴びた。食料発見できず with 岡田 吉井 佐藤雅史
吉井ユカリ 街のスポーツ施設にて、シャワーを浴びた。食料発見できず with 岡田 松本 佐藤雅史
坂下好恵 丘の中腹。いきなり天から羽根娘が振ってきて、固まってる。 with 宮田健太郎
White Album
藤井冬弥 森の中。罠を解除しつつ行動中、北川・住井と接触。〆られそうになり逃走中。昼。
河島はるか 由綺から逃走。成功。初日夕方(!?) with 三井寺月代
澤倉美咲 小屋。子供と一緒にお休みなさい。初日夜。 with 七瀬彰 しんじょうさおり?
七瀬彰 小屋。美咲さんハァハァ。子供じゃま。睡眠不足。初日夜。 with 澤倉美咲 しんじょうさおり?
森川由綺 はるからを追跡するもロスト。その後、七海を見つけ、捕まえる。初日夜。 with 立田七海
緒方理奈 川辺。歌っていたらバカ二人をGET。この手は使える。朝。
緒方英二 背の高い草原。朝起きて、用を足して、煙草をふかす。まだまだ現役だぜ? 朝。 with 長谷部彩 白きよみ
篠塚弥生 一晩徹夜で全周警戒。日の出後、森川由綺捜索開始。 with 相田響子
観月マナ 朝起きた。場所不明。朝。 with デリホウライ 澤田真紀子
こみっくパーティー
千堂和樹 森の中。エルルゥの頼みで、香草を探しに行っていたところ、穴の中の晴香を助け上げる。同行することに。朝。
高瀬瑞希 港へ続く道。目標、食糧確保。港の存在は知らない。八時過ぎ。 with 久品仏大志
芳賀玲子 ドリィ&グラァをおもちゃにしていたら逃げられた。昼過ぎまで寝てる。
九品仏大志 港へ続く道。目標、食糧確保。港の存在は知らない。重傷っぽい軽傷。八時過ぎ。 with 高瀬瑞希
猪名川由宇 灯台にいる。初日の夕方(!?) with 大庭詠美 姫川琴音
大庭詠美 灯台にいる。初日の夕方(!?) with 猪名川由宇 姫川琴音
長谷部彩 隠れるのに持ってこいな、背後に森を控えた草原。起きました。朝。 with 緒方英二 白きよみ
牧村南 海岸沿いを行動中、ポテトを発見。事後、灯台へ向かう。昼前。 with 風見鈴香 高倉みどり
御影すばる 商店街の建物。ちょっと興奮気味に就寝。初日夜。 with 桑島高子
塚本千紗 森の奥深く。愛の逃避行を見送った後、鍋のそばで作戦再構築中。朝〜昼の間。
立川郁美 砂浜。あゆに襲われていたところをクロウに助けられる。 with クロウ
立川雄蔵 久瀬の演説に感動。鬼になる。郁美……無事でいろ。 with 久瀬 オボロ
桜井あさひ 森の中、名雪&理緒を救出して、どこかへ。早朝。
風見鈴香 海岸沿いを行動中、ポテトを発見、懐かれる。事後、灯台へ向かう。昼前。 with 高倉みどり 牧村南
澤田真紀子 カロリーメイトで朝食。場所不明。 with 観月マナ デリホウライ
縦王子鶴彦 川の岸辺。理奈の歌に誘われ、叫んだところを捕まる。サインゲットで幸福。朝。 with 下の奴
横蔵院蔕麿 川の岸辺。理奈の歌に誘われ、叫んだところを捕まる。サインゲットで幸福。朝。 with 上の奴
ナイトライター
城戸芳晴 屋台二号店でカップ麺を購入→食。初日のいつか。
コリン 川のそば。ストーカー化した光岡を見捨てて、単独行動開始。朝?
ユンナ ただいま反転中。弐号屋台にて、二人分の食料とお茶を購入。初日の夜更け。 with 黒きよみ
まじかる☆アンティーク
宮田健太郎 丘の中腹。天から降ってきたあゆと激突→死にかけ。 with 坂下好恵
スフィー 森の中。伏見ゆかりと合流。うりゅー。九時は過ぎた。 with 折原浩平 長森瑞佳 トウカ 伏見ゆかり
リアン 森の中。寝ていたところをエリアに捕まる。魔法で結界を張った術者を探し始める。八時。with エリア
江藤結花 森の中。偶然梓・耕一と出会う。耕一は梓に沈められる。初日夜。 with 柏木梓。
高倉みどり 海岸沿いを行動中、ポテトを発見。事後、灯台へ向かう。昼前。 with 風見鈴香 牧村南
牧部なつみ 川辺。緒方理奈の攻撃を、ココロの力でかわす。初日夕方(!?) with (ココロ)
うたわれるもの
ハクオロ 森の奥深く、エルルゥに追いかけられている。朝〜昼の間。 with みちる 遠野美凪
エルルゥ 森の奥深く、子供を背負った浮気者を追撃中。朝〜昼の間。
アルルゥ 神奈の追跡を逃れ、川辺へ。人の声、食べ物の臭いに釣られて、移動。朝? with カミュ ガチャタラ (ユズハ)(ムックル)
ユズハ 川辺。川へ水をくみに行くも必死。疲れ果てムックル付き。ストーカー付き。朝?
カミュ アルルゥと一緒に食べ物捜索へ向かう。朝? with アルルゥ ガチャタラ (ユズハ)(ムックル)
カルラ しのさいかお持ち帰り後、伊藤を赤い海に沈める。その後どこかへ。午前中。
クーヤ 屋台にて、グループ分割。誰と一緒になるかは不明。
サクヤ 浩之・舞と共に行動中、志保ちゃん洞窟を発見。探索開始。午前中。
ドリィ 芳賀玲子から逃げ出した。変な影響受けた可能性有り。夜明け間近。 with グラァ
グラァ 芳賀玲子から逃げ出した。変な影響受けた可能性有り。夜明け間近。 with ドリィ
トウカ 森の中、伏見ゆかりに潰されていた。九時は過ぎた。 with 折原浩平 長森瑞佳 伏見ゆかり スフィー
ウルトリィ 羽根についたトマトが乾いたので、国崎往人と別れた。そのほか不明。
ディー 海岸を中心とした策敵行動中、屋台を発見。昼食。水着着用。昼過ぎ。 with しのさいか 宮内レミィ
オボロ 久瀬の演説に感動、鬼になる。ユズハはどこだッ! with 久瀬 立川雄蔵
ベナウィ 屋台壱号車。早朝から、酒を抜くために演武をしている。一飯の恩義を返すため、晴子と同行することを決める。
クロウ 砂浜。あゆをどこかに吹っ飛ばして、ウォプタル騎乗でどこかへ。初日月が出てる頃。 with 立川郁美
ヌワンギ 海岸近くの森の外れ。エルルゥ捜索へ出発だ! サァ付いてこい! 初日。 with 石原麗子
ハウエンクア 森の中。皆瀬まなみにだまされ、落とし穴の中へ。朝。
ゲンジマル 森の中。混戦の末、天沢郁未に捕まる。一人で森の奧へ。朝。
ニウェ 森の中。ゲンジマルとの追いかけっこ終了。一人で森の奧へ。朝。
デリホウライ 急いで姉上を探さねば。ともあれ朝食。場所不明。 with 観月マナ 澤田真紀子
アビスボート
ジョン・オークランド 屋台零号店にいる。以上。
ビル・オークランド
Routes
那須宗一 零号屋台でカップ麺をすすっている。残金124円。朝。 with 坂神蝉丸
湯浅皐月 海が見える建物の脇。夕菜に起こされて、そばで気絶している伊藤から逃げる。午前中。 with 梶原夕菜
伏見ゆかり 森の中。浩平たちと行動を共にすることに。朝の九時は過ぎた。 with 折原浩平 長森瑞佳 トウカ スフィー
リサ・ヴィクセン 平原。千鶴の追跡を逃れ、どこかへ。朝。
醍醐 森の中。冬弥と別れ、激闘の末御堂に捕まる。
立田七海 どこぞ。だいとーりょーからもらった飴を持って散歩中、由綺に出会い、そのまま付いていく。初日夜。
梶原夕菜 海が見える建物の脇。皐月をたすけて、一緒に伊藤から逃げる。午前中。 with 湯浅皐月
エディ 盗聴器大量設置して、商店街の片隅に潜伏中。 with 阿部貴之 橘敬介
伊藤 ケチャップにまみれて気絶中。カァ、カァ。午前中。
同棲
山田まさき 森の中。名雪クラッシュからようやく復帰、行動再開。時間はまったく不明。
皆瀬まなみ 森の中。落とし穴の中から参加者を狙う。ハクエンクアGET。朝。
MOON.
天沢郁未 森と平野部の境目。名倉グループと接触→由衣カタパルトにて撃沈さる。昼過ぎ。
巳間晴香 森の中。穴の中から和樹に救出され、同行する。少し彼に感心している。
名倉由依 森と平野部の境目。実の姉により郁未へ投げつけられ、共に気絶。鬼となる。昼過ぎ。
名倉友里 森と平野部の境目→どこかへ移動中。由衣を郁未に投げつけ、逃亡。昼過ぎ。with A棟巡回員
鹿沼葉子 森の中。柳也と裏葉を発見。気配を消して接近中。夜明け前。
少年 河原で水浴び後、朝食を探しに行く。徹夜しているが影響なし。朝。 with 深山雪見
巳間良祐 弐号屋台にて、神岸ひかりに食べ物を奢ってもらう。昼頃。
高槻 屋台三号店で食事後、山中で、幼女誘拐犯として柳川に逮捕させられそうになっている。昼前。
A棟巡回員 森と平野部の境目→どこかへ移動中。弾のきれた拳銃を所持。昼過ぎ。with 名倉友里
ONE
折原浩平 森の中、罠にかかっていた伏見ゆかりを捕まえる。九時は過ぎた。 with 長森瑞佳 トウカ スフィー 伏見ゆかり
長森瑞佳 森の中。伏見ゆかりと合流。九時は過ぎた。 with 折原浩平 伏見ゆかり トウカ スフィー
七瀬留美 平原。落とし穴にはまる。端役コンビを救出→垣本撃沈。移動再開。 with 矢島
里村茜 ガス欠バイクを乗り捨てて、背の高い草の生い茂る森へ。昼前。 with 柚木詩子 上月澪
川名みさき 商店街の激辛カレー。反省。島の北へ向かう。 with 保科智子 柏木初音
上月澪 ガス欠バイクを乗り捨てて、背の高い草の生い茂る森へ。昼前。 with 柚木詩子 里村茜
椎名繭 山中で、高槻を追う柳川に肩車してもらっている。幼女? 失礼な。昼前。
深山雪見 河原のそば。朝食を探しに行く。朝。 with 少年
住井護 森の中。罠を解除しまくっていた藤井冬弥を発見、〆に行く。時間は昼。with 北川潤
広瀬真希 川岸。神岸ひかりを追撃するもロスト。失意のままどこかへ。朝。
柚木詩子 せっかくのバイク、ガス欠で放棄。背の高い草の生い茂る森へ。昼前 with 里村茜 上月澪
氷上シュン 高台の公園→?号屋台へ。七時〜八時くらい。 with 神岸あかり
清水なつき 偽たすきを放棄させられる。場所不明。時間は午前。 with 田沢圭子
Kanon
相沢祐一 森の中。落とし穴を作っていたら名雪と接触。玉砕。十時半現在、気絶中。 with 雛山理緒? 水瀬名雪?
月宮あゆ 丘の中腹。クロゥに吹っ飛ばされて健太郎に激突。
水瀬名雪 森の中。野草たっぷりと祐一ゲット。調理器具を探しに行こう。十時半 with 雛山理緒 相沢祐一?
美坂栞 だだっ広い平原にて、謎ジャムで沙織を撃退。バニラアイス一個、千円所持。ナースコール所持?
長瀬祐介と合流。その後、共に行動するかどうかは不明。 昼頃。
沢渡真琴 森の小道。さぁ、寝床を探さなきゃ。(!?)初日日暮れ後。 with 天野美汐 月島瑠璃子 松原葵
川澄舞 浩之・サクヤと行動中、志保ちゃん洞窟を発見。探索開始。午前中。
倉田佐祐理 零号屋台にてお買い物。時間は不明なれど、しのさいかがカルラにお持ち帰りされた後。
天野美汐 森の小道。真琴と出会えて嬉しいです。初日日暮れ後(!?) with 沢渡真琴 月島瑠璃子 松原葵
北川潤 森の中。罠を解除しまくっていた藤井冬弥を発見、〆に行く。時間は昼。with 住井護
美坂香里 平原? 栞ハンティングに意欲を燃やす。香奈子をGET 早朝。 with 太田香奈子 セリオ
久瀬 森の一角。見事な演説で、オボロ・立川雄蔵を鬼にする。昼過ぎ。 with オボロ・立川雄蔵
AIR
国崎往人 森の奥深く、冷めたエルルゥ鍋を食することにする。朝から昼の間。
神尾観鈴 森の小道を行動中、神奈と接触。神奈が勝手に落とし穴に落ちて、そのまま逃走。昼前。
遠野美凪 森の奥深く、愛の逃避行。エルルゥから逃げている。朝〜昼の間。 with みちる ハクオロ
霧島佳乃 港の管理人詰め所で、寝ていたところを聖に起こされる。 九時半。 with 霧島聖
霧島聖 港の管理人詰め所で、朝食つくって佳乃を起こす。九時半。 with 霧島佳乃
みちる 森の奥深く、逃げるハクオロにおぶさっている。寝ぼけ中。朝〜昼の間。 with 遠野美凪 ハクオロ
神尾晴子 屋台壱号店にて、いい感じで熟睡中。早朝。 with ベナウィ
柳也 森の中。眠る裏葉を護りつつ、周囲を警戒している。夜明け前。 with 裏葉
裏葉 森の中。柳也に護られ、安眠中。夜明け前。 with 柳也
神奈備命 森の小道にて、観鈴と接触→落とし穴に落下。ヘルプミー。昼前。
橘敬介 北川&住井の罠がたっぷりしかけられた建物に潜伏中。 with エディ 阿部貴之
しのさいか カルラにお持ち帰りされました。
しのまいか 海水浴は一休み。屋台弐号店で昼食。昼過ぎ。 with 宮内レミィ D
つかれたーーーーーーー!
とりあえず、前キャラの最新情報をまとめておきました。
見づらいでしょうが、我慢してください。
って。
また新しいの上がってるし!
>>430 までの情報です。
>>447 乙!
ところで誰彼キャラが見当たらないですが…
誰彼組…
超お疲れです。
んで更新されたのが
「耕一・ダリエリ」 が 「屋台壱号」 で 「仮面」 を購入。
「七瀬留美・矢島」 が 「ヌワンギ・石原麗子」 を追跡(森)。
ですね。
>>447 乙〜。
ロワと違ってキャラの絶対数は減らないから、
全体把握している書き手がいると助かりますね。
何で誰彼抜けてるんだよ! あかん、疲れてる。はよ寝よ。
誰彼
坂神蝉丸 鬼としての戦績を換金。豪華弁当を食している。朝。with 那須宗一
岩切花枝 どこぞの川辺。朝食を取りに、屋台捜索開始。朝。
三井寺月代 はるかと同行中、由綺に襲われ、逃走。初日夕方(!?) with 河島はるか
砧夕霧 平原?瑞穂の予備メガネでしのいでいる。香里から逃走。早朝。(メガネは岩切が持ってる) with 藍原瑞穂
桑島高子 商店街の建物。おやすみなさい。 with 御影すばる
杜若きよみ(白) 草の陰でまだ寝てます。朝。 with 緒方英二 長谷部彩
杜若きよみ(黒) 小山のどこかに隠れています。初日の夜更け。 with ユンナ。
御堂 森の中。激闘の末醍醐を捕獲。
光岡悟 川辺。ユズハの守り神となる。実質ストーカー。オイ。朝?
石原麗子 ヌワンギと一緒に七瀬から逃げている。(手抜きスマソ)
AIR:神尾観鈴
>>335、霧島佳乃、遠野美凪
>>407-410、神尾晴子、霧島聖、みちる
>>407-410、橘敬介、柳也、裏葉、
しのさいか、【国崎往人:1】
>>407-410、【神奈】
>>335、【しのまいか】
>>414-416 管理:長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)
支援:アレックス・グロリア、篁(Routes)
毎回微妙にマイナーチェンジをしてるので読んでほしいこと&連絡事項↓
参加者はこのリストで確定です。
香里の2万ゲットは議論板でポイント入手で換金済みではないんじゃないかと指摘があったので変更。
>>391-393悪女の条件は現時点ではアナザー扱いとしリストに加えていません。
>>396-397金は力なりはどこの屋台かわかる描写が無いため屋台のレス番はいれてません。
(最初の小切手以降那須宗一警戒連絡はあってもおかしくないのでねーちゃん、ルミラ、メイフィアどれにもとれるかと)
このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。
NGはできるだけ避けるよう書く話のキャラの前話くらいは読みましょう。
前スレも健在なのでリストをたどれば最終行動はわかる筈なので。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
>
ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/ 後書き
遅くなった上により役立つものが直前で投下されてて
どうすればいいんだw
やっぱり誰彼は放置される運命なのね。゚(゚´Д`゚)゚。
「─────────」
「………………………」
北川と住井は目の前に広がる海を前に、へたり込んでいた。
二人にとって現実との唯一の接点である落とし穴を無力してくれた不届き者──冬弥を追撃していたのだが、奮闘虚しくこの海にたどり着こうとする辺りであえなく取り逃がしてしまったのである。
今まで多数の落とし穴を作り続けてきたことによって、二人の体力は大幅に殺がれていたうえ、なし崩し的な追いかけっこである。
精も根も尽き、動悸はなかなかおさまってくれない。
「海───か」
絞り出すように北川は言った。
「ああ」
喋ることも億劫だとばかり、住井は相槌をついた。
ざざーん、ざざあん、規則正しく繰り返される波の音と時折吹き付ける風が、焼き切れそうだった二人の全身を優しく包んでくれる。
「海だぁ…」
ほどよく疲れも癒えた頃、体を起こしてもう一度北川は言った。今度はキラキラと輝く水平線の向こうをまぶしそうに見つめながら。
「こんな風に二人で海を見るなんて何年ぶりかねぇ」
「ビキニ」
北川はそれに答えず、自分がこの世で3番目に尊ぶ物の名前を口に出していた。
「パレオ」
それにつられた住井も、自室にご神体として祀ってある薄布を思い浮かべた。
「スイカ割り」
「粉っぽいカレー」
「のびた焼きそば」
「酸っぱいラーメン」
「散乱する浣腸」
「だんだん言ってて虚しくなってきたな」
「同感だ」
力無く二人は同意した。
そもそも、彼らにとって海は苦い思い出の場所であった。
中学時代修学旅行で石垣島に行ったときのことである。二人は持ってきた薬用入浴剤を
珊瑚礁にぶちまけ、壮大な疑似赤潮を演出してのけた。
当人達は人間エゴにより惹起された公害の痛ましい現状をクラスメートに知らしめたかっ
たという善意でやったつもりであったが、実際彼らを待っていたのは全学生徒からの困惑し
た視線と担任からの平手打ちだった。
流石に懲りた二人は赤潮はやめ、その二ヶ月後プールの授業で登別カルルスと新穂高を
ぶちまけ、豪壮無比な青潮を築いたのである。
当人達は赤潮以上に生態系にとって驚異となる青潮を実体験を通してクラスメート達に理解
してもらいたいという義侠心から行ったつもりだったが、実際彼らは賞賛によって迎えられたの
ではなく、クラスメートからのさげすみの視線と、体育教師と生活指導教師からのスパンキン
グをお見舞いされた。
つまり、彼らにとって母なる海はタブーの地であり、自分たちは草の根のガーディアンで
あった。ただ、残念な事にツムラの薬用入浴剤では無知蒙昧な輩からサンクチュアリを守り通す
ことは出来なかった。当時、彼らにとってそれが世界の全てだったのである。
その二人の前に、時空を越えて今再び海が立ちはだかる。
【北川と住井の二人、海に出る】
>>447 >書き手さんだよもんさん
詠美、由宇、志保、琴音の現在の状況が間違っています。
>>139 3人とも
『灯台で眠っていたが、伊藤から逃れて場所を変えて就寝中。夜明け前』
「はぁ、ようやく撒けたかな。ADなめんなって」
トラップブラザーズを何とか撒いた冬弥。
しかし直後彼にとって最大最強の敵ともいえる女性が立ち塞がった。
「見つけたよ、冬弥君」
「あ、この人が由綺さんの話してた冬弥さんですか。見つかって良かったですね」
森川由綺、アイドルであり藤井冬弥にとって『浮気をしていない前提のもと』唯一の彼女。
しかしその体には鬼の襷がかかっている。
「由綺……だけど俺はまだ鬼になる訳にはいかない。俺に男の道を教えてくれた師匠の教えに応える為にも」
「冬弥君、‘また’私以外の人と何かあったんだね……」
「っていうか師匠は男だぞ、人の話聞いてるか? 由綺」
二人の問答はいつのまにか愛憎モードへ。
完全に七海のことは忘却の彼方な由綺は必殺文句を放った。
「冬弥君だったら、でも、私、強くなるよ。
わがままにも、乱暴にもなる・・・!
いくら冬弥君が誰かに好きになられたって、私、冬弥君と一緒にいたいから・・・。
だから・・・誰にも負けないくらい強引に、わがままに、乱暴に冬弥君を好きになれるよ・・・。
私、誰からだって冬弥君取り上げるんだから・・・!!」
「ちょっと待て、由綺。それは反則だろ。本編屈指の名台詞こんなトコで使うなよ。
大体男相手に好きも嫌いも無いだろ」
「だって今冬弥君逃がしたらきっとはるかや美咲さんやマナちゃんや彰君とくっついちゃうもん」
「最後のは流石に聞き捨てならんがそういうことか。
こうして問答して他の鬼に襲われても困るし、俺いくよ。じゃあな、由綺」
「逃がさないよ冬弥君っ」
「あ、由綺さんっ、待ってくださいー」
こうしてWA好きな人間が見たかった戦いは無事幕を開けた
【冬弥 由綺、七海と追いかけっこ開始】
「ちょっとちょっとあんたたちっ!
いきなりこの状況は何なのよ!? 時と場所を考えなさいよっ!!」
「しゃあないやろ、時期が時期や。ホンマはこんなとこに
来とるヒマなんかなかったの、すっかり忘れとったんやから」
「ふみゅみゅ〜〜ん! ぜーんぶ温泉パンダのせきにんなんだから!
春レヴォ…じゃなかった、春こみの〆切前だってのに、
この詠美ちゃんさまをこんなとこに連れてくるなんて〜〜〜!!」
「ま、ええやないか、運ええ事にこうしてたまたまアシ出来る子と
一緒になれたんやし、なあ、ねこっちゃの」
「…ねこっちゃ言わないで下さい…」
「だからってこんなとこで漫画描き出すなんて、少しは状況を考えたらどうなのよ!
非常識にもほどがあるわ!」
「なんやおもろそうって参加したはええけど、こうまでイベントに出くわさんのやったら
少しでも原稿進めといた方がええ思うんは同人作家として当然やろ?」
「おあつらえむきにこーして机とかあるとこみつけられたしねー。
それにねこっちゃもいるし〜」
「…ねこっちゃ言わないで下さい…」
所は灯台の一室。
一人騒いでる志保を尻目に詠美、由宇、琴音の三人は……黙々と原稿にいそしんでいた。
早朝のいとっぷ騒動を切り抜けた一行は、灯台内に場所を移していたのだ。
「せっかくのこの志保ちゃん情報、洞窟と灯台がつながってるって
世紀の発見したってのに、だーれもこのネタ活用しないしっ!」
「………」(カリカリ)
「………」(カリカリ)
「………」(カリカリ)
「…って、そんなに原稿に集中しないでよ! 間がもたないじゃないのよっ」
「………」(カリカリ)
「………」(カリカリ)
「………」(カリカリ)
「…だーめだこりゃ」
修羅場モードの同人作家の集中力は並ではない。
例え地震が起ころうと、家が焼けようと、原稿にかける熱意は削がれることはないのだ。
ある意味それはエルクゥの、強化兵のそれをも凌駕するといっても過言ではない。
島の各地での喧騒をよそに、昼下がりの灯台には三月の爽やかな風と
ペンを走らせる音が静かに響いていた。
「ねーえ、お腹すかなーい?」
「………」(カリカリ)
「こんなとこで原稿描いてたら、ますます本筋から乗り遅れちゃうわよ?」
「………」(カリカリ)
「ああもう! つきあってらんないわ。あたし行くからね!」
「………」(カリカリ)
「そんじゃ! こんなとこでコソコソしてるなんてこの志保ちゃんには似合わないから!」
と志保が階段を降りようとしたその時…
「でーーきたっと!」
「!」
「…もう完成ですか? さすがCAT or FISH!?の詠美さんです」
「なんや、もう終いか? 手ェ抜いたんとちゃうか?」
「へっへーん。なんとでもいってなさいよ〜。このこみパのくいーん、
天才詠美ちゃんさまにかかったら、こんな原稿、ちょちょいのちょいよ!」
「ま、そういうことにしといたるか」
「盆栽のパンダはまだまだかかるんでしょ? ねこっちゃはおいてってあげるから
まだまだがんばってなさいよねー」
「…ねこっちゃ言わないで下さい…。それに盆栽じゃなくって凡才じゃ?」
「ふみゅ〜ん! こまかいこと言わないの!!」
「よーやくカタついたみたいねえ。ね、原稿終わったんだったらこの志保ちゃんと
一緒に行く? せっかくの鬼ごっこなんだから、参加しなけりゃ損よ〜?」
「そーねー。あんた、なんかあたしと似てるとこあるみたいだし、いいわよ。
とくべつに詠美ちゃんさまとのごどーこーをきょかしてあげても!」
「……。ま、いいわ。じゃあたしたち行くから」
「ああ。ウチらはも少しここでねばっとるわ。
もうしばらく付きあってもらうで、ねこっちゃの」
「…ねこっちゃ言わないで下さい…」
と、
『ガタン!』
「!?」
「ふみゅっ!?」
階下で何か物音? 物陰から志保がそっと窺うと、入り口付近に数人の人影が。
「だ、誰かそこにいるの? 鬼だったら間に合ってるわよ〜!」
思わず声に出してしまう志保。相手がホントに鬼だった場合
すぐさま発見されてしまうこと請け合いの性格である。
しかし運よく、そこにいたのは鬼ではなく、
「あ、ヒロ!」
「その声、志保か?」
【詠美:原稿完成 由宇・琴音:未だ原稿執筆中】
【浩之・サクヤ・舞:灯台に到着】
【志保・詠美と邂逅】
【昼下がり】
(だいぶ近づきましたね……)
不可視の力を行使した跳躍で、三歩。鹿沼葉子はそう目測する。
男の方は剣を持ち、隙無く周囲を警戒している。女性のほうはまだ起きる様子は無い。
だが周囲はかなり明るくなりかけている。朝日まで後数分というところか。
確実を期すためには後少し近づきたかったのだが……その余裕は無いようだ。
(仕掛けさせてもらいます!!)
葉子は決意を固めると、男が背を向けた瞬間を狙い、暗がりから飛び出し突進をかける。
一歩。男はまだ振り返らない。
二歩。男はまだ振り返らない。
(たわいもない!!)
葉子は勝利を確信する。
だが、最後の一歩に合わせるようにして、男は背を向けたまま横っ飛びに跳躍した。
(気づかれていた……誘われたというのですか!?)
ぎりぎりのところで葉子の手が空を切った。葉子はあわてて男のほうを向き直り、動きを止めようと不可視の力の集中を高めようとする。だが、
「ギャー・テー・ギャー・テー・ハーラー・ギャー・テー・ソワカ!!」
背後から女性の声が響き、衝撃が葉子の身を包む。
「ッ…!!」慌ててシールドをはる。間に合った、ダメージはない。
(こちらも狸寝入りだったのですね…!!)
そう葉子が認識するのとほぼ同時に、男がこちらに走る。
(斬られる!?)
一瞬身を硬くし、再度シールド。
しかし、男は葉子に切りかかることなく通り過ぎた。
「クッ、なんてこと!!」
葉子は歯噛みする。一連のアクションの隙をついて女のほうが身を隠したのだ。
近くにいるのは間違いない。しかし気配がまるで感じられない。
しかもこうしている間にも男の背はどんどん小さくなっているのだ。
女を捜すか、男を追うか。その迷いがさらに葉子の動きを止める。
「絶対に逃がしません!!スピードは私のほうが上です!!」
逡巡の後、結局葉子は男を追うことを決めた。
「あてが外れたな…」
身を隠しながら、口の中で柳也はつぶやいた。
気配を消すこと、感知することにおいて裏葉は化け物じみている。
だが、走力に関しては並の女性。だから、自分が囮となることに決めた。
相手を振り切り、あらかじめ決めていた合流場所で会う。
相手は女の足。振り切るのは造作も無いことだろう。
「だが、実際はこれか」
どうも自惚れが過ぎたらしい。信じがたいことだが速度は向こうのほうが上だったのだ。
相手が山道に不慣れなことが幸いして、茂みの中に身を隠すことに成功したのだが…
「身動きが…とれんな」
相手の女もまた身を隠し、辛抱強くあたりを探索しているようである。
近くにいるということぐらいは分かるのだが、 相手の正確な位置が分からない以上
少しずつしか移動できない。気配を消したまま根気よく距離を稼ぐしかなさそうだった。
……そうして、どのぐらいだっただろうか。
「だいぶ離したようだな」
柳也は嘆息する。相手の執念深さには目をみはるしかない。
だが、それでも策敵能力は自分のほうが上のようであった。安全圏までもう少しだろう。
しかし、第三者の泣き声が事態を変えた。
「誰かー、誰かおらんのかー…うう…おなかがすいたのじゃ…」
(か、神奈か!?あの馬鹿!!)
危険を承知で、柳也は声のするほうを見やる。
「落とし穴か…」
直接姿は見えないが、声は地面の穴からしていた。
「さて、どうしたものかな」
今助けに行った場合、追っ手につかまるのは確実であった。相手もこの声を聞いているのだ。
追っ手が立ち去るのを待ってからゆっくりたすければいい。
だが…
「ぐすっ…寂しいのじゃ…柳也殿に裏葉やくたいなし…はよう助けんか…」
このような声を聞かされて無視することができるだろうか?
(主の命令とあればな)
フッとため息をついて、姿を現そうとする。その矢先だった。
「おお、お主。助けてくれるのか!!」
「ええ、つかまってください。災難でしたね」
柳也は目をむいた。先ほどまで自分を追っていた女性が神奈を助けていたのだ。
「本当にかたじけない!!礼をいうぞ!!」
「フフ、大袈裟ですよ」
「いや、俺からも礼を言わせてくれ」
神奈達に姿を見せる。
「柳也殿!!」かけよろうとする神奈。だが、すぐに頬を膨らませる。
「まったく何をしておったのじゃ、主の危機に一番に駆けつけないとは…」
「全くだな。面目ない。しかしだ…」女性のほうへ向き直る。
「なんであんた、この状況を利用しようとしなかったんだ?
ずいぶん執念深く追いかけていたし、せっかくの好機だっただろうに」
「そうですね…」女性は静かに答えた「まず、私の名前は葉子です。
初対面の人にあんた呼ばわりは失礼に当たるというものでしょう」
「ああ、すまん」やや気圧される柳也。
「謝罪を受け取りましょう。それで、先ほどの答ですが…」
葉子はいいよどむ。
「…?言いにくいことなのか?」
「いえ、そういうわけでもないですが。そのまあ、なんといいますか…」
しばらく黙った後、葉子は続ける。
「実は、その私、鬼ごっこというものを初めて経験するわけでして」
「それは珍しいな」
「神にささげたこの身、そのような瑣末な遊びに興じる暇はありませんから」
「は、はぁ」
「ですが、まあ、そのちょっと興味がなかったかといえば嘘になるというか、
い、いや、どうしてもやりたいというほどではないですが、やってもいいかなぁというか、
それで、まぁ、まあやるからには、楽しい鬼ごっこにしたいな…と…」
赤面してうつむく葉子。だが、それを聞いて神奈ははしゃぐ。
「おお、そうなのか。余も鬼ごっこは初めてだぞ!!」
リアルでもっと壮絶な鬼ごっこを経験してるだろ…と思ったが柳也は黙っていた。
そうですか、と、はしゃぐ神奈に葉子は微笑む。そして柳也にむきなおると、
「今回は見逃して差し上げますが、先ほどの不覚忘れません。
いずれお返しをさせていただきます」神奈の頭にポンと手をのせる。「この方と一緒にね」
「うむ、覚悟するが良いぞ、柳也殿!!」
「分かった。せいぜい覚悟するさ」
苦笑交じりに柳也は答えると、その場から姿を消した。
【柳也 逃走成功。裏葉と分かれているが合流場所は決めている】
【裏葉 逃走成功。柳也と分かれているが合流場所は決めている】
【葉子 神奈を救出、合流】
【時間は昼以降】
時間は昼。
食材の前に、二人の影があった。
「ねえ。私、思ったんだけど―――ええと、セリオ?」
包丁をくるりと器用にまわしながら、香奈子はセリオに向き直った。
「はい。なんでしょうか、香奈子様」
手元に置かれた包丁や鍋は、先ほど通りかかった小屋で見つけたものだった。
屋台で食べずに、料理は作る。
逃げる側には正気の沙汰ではないが、既に鬼である彼女達は周囲を気にする必要が無い。
屋台をいちいち探して時間を浪費するよりは、と料理を作ることになった。
ちなみに、いいだしっぺでありじゃんけんに負けた香里は水汲みでいない。
「あなた、来栖川重工の誇るメイドロボ―――言ってみればテクノロジーの塊よね。
島中スキャンして、ぱぱっと目標を見つけるとかできない?」
「衛星を使用すれば、地上のつまようじの本数から数えることも出来ますが、
残念ながら――――現状では不可能です」
「どうして?」
「”ゲーム”開始以来定期的にスキャンを試みていますが、一度も成功していません。
昨日使用したサテライト・キャノンのコマンドも無効化されました」
さらりとでてきたサテライトキャノン、という単語に
香奈子はわずかに目をむいた。
「ええと―――つまり、壊れてる?」
「サテライトサービスの要は人工衛星を介したメインフレームへの継続的かつ安定的なアクセスが
保証されている点にあります。そのため理論的に想定可能な事態に対して幾重にもセキュリティが
張り巡らされており、サービスの中断が今回のように長期に渡ることはありえません」
しかし、とセリオは付け加える。
「一方でバックアップ用のデータリンクは確立されていることから、衛星側のトラブルとも
考えられません。――――推測になりますが、人為的な障害の可能性が」
「主催者側の干渉によるものだ、と」
「あくまで推測ですが」
セリオの答えに、香奈子は再び考え込む。
瑞穂たちや『美坂栞』の位置が特定できれば、何かの事態に対処もしやすいと思ったのだが、
そうあまくはないようだった。
無意味なほどに手のかかった鬼ごっこだ。
「じゃあ、現在使用できるのは、何?」
「いえ。衛星そのものの機能以外は通常と変わりありません」
すっと指を下に向ける。
「この食材もサバイバル用のデータをDLしました成果です」
「……あなたって、ほんと便利ね」
「――ありがとうございます」
【セリオ・香奈子 待機中】
【香里 水汲み】
【セリオ サバイバルテクニック修得】
っと自分で書いて思った。
もしかしてこの後に391を持ってくればまだやりようがあったんじゃ、と。
今から言ってもせん無きことですが。
「はぁ」
森の中、重い足取りで良祐が行く。
心が重い。鬼ごっこが始まってからと言うもの、悪いことばかりが起こっている。
はて、本来巳間良祐と言う男は高槻と対を成す硬派キャラではなかったか。
それなのに姉妹丼だの小娘に利用された挙句財布をパクられるだの新たな出会いだと思ったら子持ちの人妻だっただの…。
「あれで母親はないだろうよ…」
長年高槻の突っ込み役をして感染したのか。完璧に軟派キャラと化してしまったらしい。
「はぁ…」
足取りが重い。
精神的に参ってるし、徹夜明けだ。
さっさと眠ってしまえばいいのだが、日光に照らされて寝る気が失せてしまった。
「………」
ごそごそと手にした袋をあさり、中から農協牛乳を取り出す。
ひかりの好意とエビルイビルの商い根性のおかげで、食料と水分は充分過ぎるほど持っている。
まぁ、あまり食欲が無いのでもっぱら飲み物ばかりを飲んでいるのだが。
牛乳パックを開け、そのままがぶ飲み――
――と。
「巳間良祐さん」
「ぶっ!?」
いきなり声をかけられ、牛乳を吹き出してしまった。
「あら、驚かせてしまってごめんなさい」
慌てて辺りを見渡す…良祐のすぐ後ろ。
「私、管理者の水瀬秋子と申します」
いつの間に。
零れた牛乳を拭い取り、姿勢を正す。
管理者、という立場が気になるが相手はレディだ。カッコ悪いところは見せられない。
「確かに僕は巳間良祐ですが…何か」
ちなみにこの男、一人称は「僕」と「俺」を使い分けている。
詳細は原作を参照。
「えーっと、」
秋子は何故か口篭もる。管理者がわざわざ出向いてきたからには、良祐に用があるはずだが。
「どこまでお話したものかしら」
彼女には珍しく困り顔だ。
「…?」
「最小と完全、どっちがいいですか?」
「はい?」
「いえ、ちょっといろいろとありまして…」
「はぁ…では、完全で」
「…そうですか」
ふぅ、と秋子は溜息を1つ。
「実は…」
………。
……。
…。
「………そう、ですか」
「………はい」
「………」
「………」
気まずい。実に気まずい。
『最小』を選んでいれば、「貴方の財布をお届に参りました」だけで済んだのに。
「………女の子って、怖いですねぇ」
「………ええ」
『完全』を選んだから、「貴方は小娘に財布をパクられて、取り返してきましたよ」となったのである。
「………はぁ」
良祐の凹みようはハンパではない。
気まずい。とても気まずい。
「とにかく、お返ししましたので、私はこれで」
「…はい。どうもありがとうございました」
秋子は申し訳無さそうに去って行く…。
「……あ、あの、水瀬さん。財布を届けてもらったことですし、何かお礼を」
お。偉いぞ良祐。
「いえいえ。当然のことをしたまでですから」
「ですが…何かお返ししないと僕の気持ちが」
このまま財布を受け取っただけじゃ男として惨め過ぎる。
秋子もその辺の男の心理を汲み取ったのか、少し考えて言った。
「そうですね。…管理者として、こういうお願いはよくないんですが」
「………」
嫌な予感。
「もう鬼になっちゃいましたけど…もし、私とよく似た、妙に寝惚けてる女の子を見つけたら助けてあげてください」
「………」
それは、とても不吉な予感だ。
「私の娘なんです」
秋子は会釈をして、森の中へと消えていった。
「………」
一方の良祐。
「 ま た 母 親 か 」
ほとほと女運が無いらしい。
「……そうだ、さっきの屋台に戻って、姉妹丼………」
誰か助けてやってくれ。
「…いや、ここは娘さんたちを助けて、親子丼………」
彼は硬派なんだから。
【良祐 食料、水分多数保持。財布が返ってきた。栞に騙されたことを知る】
【秋子さんのこれからの行動は適当に】
【もうそろそろ昼】
…………はぁ………ああ………ひぃ……………
………恥ずか…しい……よぉ………うあぁ………
……………どうして………こ…んな……………
見られ…てる…………あたしの………裸…………
……くはぁ………あふぁ………やだよぉ………
…………お尻……………痛い…………………
いやぁ……………許してぇ……もぅ……
………………………………………………………………び………
「びっくり…するほど…ユー…トピア!(パンパン)
……びっく…りする……ほど……ユートピ……ア!(パンパン)
……びっ……く…り…するほど………ユー…トピ…アぁ!(パン…パン)
お、お、お、終わりましたサー!」
びっくりするほどユートピア300セットを終え、田沢圭子は地面に倒れ込んだ。
防風林にベッドはないので土手を昇り降りした。腿と尻が三倍くらいに腫れて大変だ。
息は切れ切れ、頬は朱の色。全身はびっしり玉の汗。荒い呼吸に合わせ、
彼女の小ぶりな乳房が激しく上下する――記述が遅れたが、
彼女は今、びっくりするほどユートピアのフォーマルスタイルである、全裸である。
どうせ色気のないオチだろうと読んでいた読者諸君はハァハァするように。
「寝られるようなご身分様か?何分かかったこのケツの穴のションベン野郎!
貴様のようなクソノロマは戦場でファッキン鬼どもに五体引きちぎられて
夕餉のふりかけにされちまえ!とっとと起きて次、チャンコ増田のモノマネ500!」
なんかまずい感じの目つきになってる清(略は、足元の圭子を罵った。
彼女は「行」を行っているうちに、脳内のエンドルフィン分泌が止まらなくなり、
大変愉快痛快な精神状態に陥った。
そして、ぐったりと一部始終を見つめていた圭子にも、「行」を強要したのである。
反論は許さなかった。なぜなら彼女はいまや清(略ではなく
地獄の鬼教官ハートマン軍曹なのだから。一から十まで間違っているが。
ちなみに女ならサーでなくてマダムだろという苦情は受け付けなかった。
上官の横暴に耐えかね、生まれたままの姿の圭子は必死で身を起こし、決死の覚悟で上訴した。
「……ひぃ、はぁ……お、お言葉ですがサー!
こんなことに、なんの意味があるんでしょうか!?
どうせ特訓するなら、トラップの解除訓練とか、サバイバル技術を磨いた方が……」
当然の不平不満である。だが脳汁ジャンキーに常人の道理は通らない。
「意味なんかねぇーッ!スカッとするからしているだけなんだよこのボケーッ!
聖書にもあるぜ、右の頬にシールつけられたらエルメェスがパンティーを……」
返答代わりに、テンションのまま思いついたひどいネタ口走ったからさあ大変。
プッツゥ――――――――z__ンン
それまで虐げに虐げられてきた田沢圭子の中で、決定的な何かが弾けた。
(あ……
あたしはキレた。)
次の瞬間、今までの人生一度もしたこともないような阿修羅の顔で、
圭子は吼えていた。全裸で。
「清水ゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!」
「(略をつけろよデコスケ野郎ォーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「表出ろ!どっちが上か死をもって思い知りやがれ!!
テメェの腐れ頭はミートパテにして、便所蟋蟀のディナー決定だぁ!!」
「笑いが止まらないと書いて笑止!!
地獄のクソ風呂に肩までつかりながら、阿弥陀迎来の時まで後悔するがいい!!」
最初から表であるところの防風林で、聞くに堪えない罵詈雑言を撒き散らし、二人は相対する。
圭子の心に眠る、餓狼の鎖は引きちぎられた。
清(略ははなっからアバレモード全開。
いつかはこうなる宿命だったのかもしれない。
死合いを始めてしまった凶手ふたりは、最早誰に求められなかった。
もとい、誰にも止められなかった。
「「じっけっしっ!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(ビシュッ)
「「じっけっしっ!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(シュバッ)
「「じっけっしっ!」」
「「あっち向いてホイッ!」」(ズピャッ)
以降、二人の死闘は29時間38分という、前代未聞の長さに及んだ。
これが葉鍵板史上に残る
「絶!超絶煉獄千日あっち向いてホイ シェフの気まぐれ風ってどんなのよVer.」の幕開けであった。
誰も見た奴ないけど。
まあ、暴力は良くないよね。失格になるし。
【田沢圭子 キレる。全裸】
【清(略 受けて立つ】
【現在、初日の夜。場所は防風林】
【死闘は水入らずで29時間38分続く】
「……暇ですわ」
戦闘民族ギリヤギナのお姫様、カルラ。
「例えようもなく暇ですわ。酒があっても、遊び相手がいなければ味気ない」
彼女は現在、木の上でしのさいかを胸に抱き、買ったばかりの酒を啜っていた。
「あるじ様かトウカでもいれば別なのでしょうけど……」
あいにく、2人の姿は見かけていない。
今まで見かけた他人といえば、自分を襲った軍人風の男、買い物をしに行った屋台のねーちゃん、そしてしのさいか。
後はまぁ、木の下を通り過ぎていった鬼の数人くらいであった。
「そして現在私と行動を共にしているのは……」
チラリと下を向く。そこでは、カルラの豊満な胸を枕にすうすうと寝息を立てているさいかのあどけない寝顔があった。
「いい気なものですわ……」
また一口、酒を飲む。
「……はぁ、やっぱり退屈ですわ」
小一時間後、カルラは同じようなセリフを口にする。
「ま、いないよりはマシでしょう。フフッ」
カルラは何やら意味深げな微笑を浮かべると、ぺちぺちとさいかの頬を叩いた。
「ほら、起きなさいさいか」
「ん……う……? あ。おはよう、かるらおねぃちゃん……」
眠そうな目を擦りながら、それでもしゃんと起き上がるさいか。
「お姉さんね、とても暇なの。あなたも私に預けられたのなら、お酒の相手の一つくらいしなさいな」
「おさけ……?」
トウカやハクオロ、エルルゥあたりが聞いたら奇声を発しそうなセリフをさらりと言ってのける。
なにせ相手は六歳児。アルルゥよりも年下なのだ。
「うん、わかった」
しかし六歳児。相手の言うことの意味もよく介さずに、素直に言うことを聞いてしまう。
嗚呼……
「いい子ですわ。では……これをお飲みなさいな」
トクトクトク……とぐい飲みに酒を注ぐカルラ。波々と入ったと見ると、それをさいかに手渡す。
「ささ、グーッといきなさいな。ぐーっと」
「うん。……ごく、ごく、ごく……」
本当にグーッと一気飲みするさいか。
「ぷはぁっ。なんか、のどのところがあつくなるじゅーすだね」
……飲み切ったさいか。
「おや? 意外にいい飲みっぷりですわね。それじゃ、もう一杯……」
調子に乗り、さらに注ぐカルラ。
「ん」
……素直に受けてしまうさいか。
……知らねぇぞ。どうなっても……
【カルラ さいかにお酌】
【さいか 飲酒】
【木の上 昼ごろ】
ここまで更新しました
ミス発見したら指摘お願いします
>488
今回もお疲れ様です。
「ふぅ…やっぱり名雪達と行けば良かったかな…」
手柄を多く集めるには一人が一番効率がいいと判断した祐一は目覚めた後、名雪達と別れた。
3人なら、手柄も三等分。
決して効率がいいとは思えなかったからだ。
しかし…
「――誰もいねぇ…」
森と平野部の境目。
周りにあるのは森と二人の倒れている美少女のみ。
……美少女?
倒れている美少女といえば助けなければ男じゃない!
……と、言っても俺には受身な出会いが似合う気がするんだけどなぁ…。
"うぐぅ"とか"あぅ〜"とか"実は悪女のか弱い少女"とか…。
「おい、大丈夫か?」
返事なし。
寝てるようではない。
二人、重なって寝てたらレズだ。
大方、カタパルトにされたんだろう、栞似のこの少女が。
やっぱり、この少女には香里似の姉がいるんだろうか。
下の奴は……げっ、あの時の…。
……ここでポイントを稼いで帳消しにしてもらうのも手だよなぁ…。
名雪で鍛えた俺の人を起こす力を見せてやる!!
【相沢祐一 郁未を起こす】
【天沢郁未 気絶中】
【名倉由依 気絶中】
【時間 郁未は気絶してあまり時間は経ってない】
「いい朝ね」
「そうね」
乾パンと缶詰を食べながら、梓と結花は朝の清々しい風を全身で感じていた。
「しかし、ここを見つけたのは本当にラッキーだったわね」
「そうね。屋根もある食糧もある燃料まで完備。
野宿しなくて、本当に助かったわ」
こんなにのんびり出来ているのは自分達くらいだろう、と、
2人は至福のひと時を感慨深げに味わっていた。
ここは、島の南。
森を出て、さらに平原を進み坂を下った先にある開けた広場である。
一歩森から出ただけでは、単に見晴らしのいい平原があるだけなのだが、
さらに進むと坂になっており、その坂の先には川と、そして
綺麗に整備された広場があった。
この広場、どうやらリゾート客用のキャンプ場として用意されていたものらしく、
人が4〜5人は入れそうなテントが7,8つ設置されていた。
さらに、中央にある物置小屋には、予備のテントを始めとして
乾パンや缶詰、ミネラルウォーター、ガスコンロ、燃料、ランタン、工具など、
生活に必要な物資がほとんど揃っていた。
森の中と比べれば、ここはまさに天国のようなところである。
梓と結花は、ここで一晩過ごし、食事も休息も十分に取った状態で
二日目を迎えていた。
「これなら、今日は他の参加者達より有利に戦えそうね」
「全くだ。…ただ、いつまでもここにいるのはまずいだろうな」
なぜ、こんな便利な施設が今まで誰の目にも触れなかったのか。
それは、参加者のほとんどが森で戦っていたことが一番の要因である。
このキャンプ場、森を出てさらに南へ向かわないと発見できない。
おまけに、そこに辿り着くまでには周りから丸見えの平原をしばらく歩かなくてはならない。
隠れる場所の多い森を捨ててまで、危険の多そうな平原へ向かおうとする参加者が出ないのは
当然の成り行きであったかもしれない。
運動神経なら人並み以上の自信と度胸があるこの2人のペアでなければ、なかなかできない冒険である。
「そうね。鬼も一日目で増えただろうし…いつかはここも見つかってしまうわね」
「捕まることの心配をしなくていい鬼にとっては、ここは絶好の拠点だからな」
2人はこんなまったりした雰囲気の中でも冷静に状況を判断している。
物資の面でも、体調の面でも他の参加者よりは一歩抜け出た2人。
あとは、できるだけ鬼に見つからない運さえあれば、思わぬダークホースになるかもしれない。
「とりあえず、どうする?」
「そうね…ここを拠点にして、川沿いを中心に探索してみましょう。
ここは見通しが良すぎて、隠れられる場所がテントの中くらいしかない。
足の速い鬼にここを発見されたらさすがに危険だわ」
「悪くないな…よし、それで行こう。このキャンプ場から離れすぎないようにしなきゃな。
ただ、もし鬼に見つかったらもうここには戻らないようにしよう。待ち伏せされる可能性が高い」
「オッケー。それじゃあ、念のため役に立ちそうな道具は持って行きましょう」
「了解。なら、さっそく行動開始だ」
「(耕一、楓、初音…みんなどうしたかな。ちゃんと食って休めてるといいんだけど…)」
【梓&結花、キャンプ場を発見。休息、食事共に十分。現在は朝の9時ごろ】
【2人とも三日分相当の食糧に加え、缶切、ランタン、マッチ、ナイフ、ロープ、軍手、ナップザック装備】
【キャンプ場を拠点にしながら、隠れられそうな場所等の探索開始】
ようやく川にたどり着いたユズハ。額には汗が浮いている。
ほんの数十メートルという距離を歩いてきただけなのだが、既に息も上がっていた。
が、心地よい充足感が占めていた。
(ユズハはやりました……!)
川の水の冷たさが心地よい。やりとげたことが現実なのだと物語るかのよう。
にこにこと水を汲んでいるその姿を、ストーカー光岡が見つめていた。
新しい朝が来た! 希望の朝だ!!
そんなフレーズが頭をかすめる。
「眩しい……この俺には、貴女が眩しすぎる……」
演技がかった動作で眩しげに手を目の前にかざす光岡。バカである。
「あ、今ちょっと目を開けた……。(ドキーン)
光を映していない瞳。ああ、なのにこうも美しいのは何故だ……。
おっ、今耳が動いて……」
まさにストーカーである。
それにしてもなんて無防備な……。
彼女の見えない瞳では、鬼のたすきも判別できまい。
やはり俺がいなければ、俺がついていなければ……っ!
彼女に肉親はいるのだろうか。
『お嬢さんをください!』
今の時代では、いささか古風なのだろうか。
今の若者はどのように言われるのが好きなのだろうか。
「……」
考えることしばし。
いや、そもそも両親はご存命なのだろうか。
薄幸の美少女な雰囲気がするが……。
考えているうちに、当のユズハは水をくみ終えて森へ引き返そうとしていた。
危ない危ない。慌ててまた後を付ける光岡であった。
両親は居ないが、兄はいる。
光岡の真意をオボロが知ったとき、それは戦いの幕開けとなることは間違いあるまい。
さて、どうなることやら……。
【ユズハ(+ムックル):水を汲み終えて森へ戻る】
【光岡:ストーキング続行中。ユズハへの想いを強くしている】
495 :
香里無双:03/03/27 17:42 ID:sNH/X4xU
「ターゲット発見」
最終兵器彼女ならぬ最強マスク彼女。美坂香里。
じゃんけんで負けた時はどうなるかと思ったが、水汲みへ赴く最中……思わぬ幸運と出くわした。
「……たすきは無い。参加者ね。さて、どうしたものかしら……」
水が入った桶を持った少女が一人。それと巨大な……白い虎。
「……厄介ね。虎を連れてるなんて……」
しばらくの間、香里は静かにユズハの後を尾行する。音はほとんど立てていないし、風下から接近しているため虎に発見されることもないだろう。
「あんな子と行動を共にしてるってことは……少なくとも、野生じゃないわね」
さすがに香里も野生の虎と正面切って戦いたくはない。
「……別にあの虎と戦うわけじゃないんだし、どうにか……あの虎を少し引き離すことが出来れば……」
チッと歯噛みする香里。少女自体はものの数ではない。問題なのは……あの虎だ。
「鼻っ面に唐辛子ぶっかけてやれば怯むかしらね……」
物騒なことを考えるが、それは自分で打ち消す。下手に手出しをして怒らせたら喰われかねない。
なにせ相手は人間でないのだ。ルールを守ってくれる保証などどこにも無い。
「古典的な方法だけど……やってみる、か」
香里はスルリとリボンをほどくと手ごろな大きさの意思に結びつけ、
「よい……しょっ!」
ヒュオッ、と遥か彼方に投げつけた。
ガサガサッ!
「ガオッ!?」
「ハッ!?」
投擲した石は過たずユズハとムックル正面の薮に落ち、気をひきつけるには十分なくらいの音を発した。
「お、鬼の方……ですか……? それとも参加者……?」
ユズハはおずおずと目の前の薮に話しかける。が、当然反応は無い。
相沢祐一であります。
さて、俺はこれから気絶している2人の女の子…えーとたしか一人は天沢
だったかな、あと一人は知らないが微妙に栞似なのでとりあえず栞2号(仮)と
呼ぶことにしよう。
先程から普通に起こしてみようと試みているが、なかなか起きない。
しかし普通の人間の気絶など名雪の爆睡に比べればたいした問題ではない。
俺は対名雪用の作戦を試みることにした。
さて、どの作戦を適用しようか?
作戦1<
作戦2
作戦3
俺は作戦1を適用した。比較的柔らかい草をむしり取り、その草で鼻を
くすぐる。水瀬家では胡椒を使用したが、生憎今は持ち合わせていなかった。
まずは天沢に試してみる。少し鼻をむずむずさせている。多少効いている
ようだ。胡椒があればきっと起きていたに違いないだけに残念である。
栞2号(仮)にも試してみる。こちらは残念ながらあまり効果がなかった。
この作戦は効果が薄いようなので次の作戦に移行する。
次の作戦はどれにしようか?
作戦2
作戦3<
俺は作戦2を飛ばして作戦3を適用することにした。作戦3は美味しそうな食べ物
の香りで釣る作戦だ。俺は自分の荷物を確認する。しかし残念ながら食い物は多少
あるが、香りで釣れそうなものはなかった。しかし少し行ったところに湖があった。
「焼き魚ならどうだろう?」
そういえば俺も微妙に小腹が減っていたところである。昼飯は魚にしよう。
思い立って俺は二人を抱えて湖に向かった。いくら女の子とはいえ、2人も
小脇に抱えて歩くというのは本来相当な重労働なのだが、実は俺こと相沢祐一は
普通ではない。舞シナリオを思い出してほしい。俺は舞が投げて真っ直ぐ
飛んできた消火器を木刀の一閃で破壊したのだ。あれだけの重量・速度の
飛行物体を破壊できる腕力となれば推して測るべし。まあ、消火器をぶん投げた
舞の腕力も想像するだけで怖いが。ともかく俺にとっては女の子2人分の体重など
問題にならない。
そんなこんなで俺は湖に到着した。天沢も栞2号(仮)もまだ起きる気配がない。
その後首尾よく魚をゲットして、火を焚く。なんの魚だか分からないのが
気にならないこともないが、食っても死ぬことだけはないだろう。
「さかな、さかな〜♪」
思わず名雪のように謎の歌を歌ってしまう。周囲には狙ったとおり焼き魚の
良い香り。この香りが気絶している二人の方に向かうように空気を送る。
「ぅ…ん」
魚の香りに釣られたのか天沢が目を覚ます。
「お、起きたか。」
「……魚?」
まだぼんやりしているらしい。
「そうだ。魚だ。お前達の分もあるぞ。」
無駄に偉そうに言う俺。
「…お前『達』?って、ああっ!あんたはっ!それに由依!」
「ぅう…うーん…」
栞2号(仮)を見て叫ぶ天沢。起き抜けに騒がしい奴だ。
そしてその騒ぎで目を覚ます栞2号(仮)。
とりあえずこれで作戦3は成功だ。
「そうか、栞2号(仮)の本名は由依なのか。」
「なのよ、その栞2号(仮)って…」
「栞は香里の妹だ。」
「よくわからないけど、まあいいわ。助けてくれたんでしょ?ありがとう。」
素直に礼を言う天沢。目覚めたはいいが状況が把握できていないらしい
栞2g…もとい由依。
「まあ、なんだ。丁度魚も焼けたことだしメシにしよう。」
というわけでメシを食うことになった。
さて、この後はどうしようか?
【祐一 作戦3成功 湖で食事】
【郁未&油依 復活 祐一と食事】
一方ムックルは正面の音と漂ってきた人間の『臭い』に反応し、戦闘態勢を整える(とはいえアルルゥに人を食べないようきつく言いつけられているのだが)。
「グルルルル……」
しかし彼の容貌を持ってすれば大抵の人間は戦闘意欲など無くす。ムックルは低い唸りをあげながら、ゆっくりと臭いの元へと歩み寄っていった。
(よし! 作戦成功!)
それを確認した香里は、ゆっくりとユズハの背後に忍び寄っていく。
ムックルが進む一歩に合わせ、香里も一歩。少しずつ、だが確実に距離を詰めていく。
射程に入ったらタッチ&たすきをパスでTHE ENDだ。後は速攻で逃げればよい。
「グルルルルル……」
(そうよそうよ白虎ちゃん、もうちょっと先に進みなさい……)
一歩、一歩、また一歩進んでいく。
「グルル……」
あと三歩……
(もう少し……)
あと二歩……
「だ、大丈夫ですかムックル……?」
あと一歩……
(よし……ここっ!)
タッチせんと、香里が最後の一歩を踏み出す。その刹那。
「チェストォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」
「!?」
白い刃が糸状の閃光と化し、香里の顔面すれすれを駆け抜け、ガスマスクを掠めた(※峰打ちです)。
「ちぃっ!」
何が起きたのかはわからないが、バックステップで慌てて後ろへ下がる香里。
「えっ!?」
突然の後ろからの叫びにハッとするユズハ。
「やらせはせん! やらせはせんぞぉ! 貴様のようなマスク女に、やらせはせんぞぉ!」
「どっかの弟のセリフパクってんじゃないわよ! それにアンタ、鬼じゃない! どういうつもり!?」
と叫びながらも、香里は噴霧器を突然現れた男に向け、引き金を引く。
「ガス兵器かッ! 笑止!」
だが男は猿のごとき身軽さで木の上に飛び上がると、剣を大上段に構えつつ飛び降りてきた。この間、一瞬。
「俺の勘が叫んでいるッ! 貴様は危険だと轟き叫ぶッ! 俺と彼女の明るい未来のため、貴様にはここで眠ってもらうぞ!」
「しまッ!?」
いかな香里が実戦経験を積もうとも、相手は百戦錬磨の強化兵。なすすべも無く香里が打ち倒されるところではある、が―――!
「グルォォォォッ!!!!」
「んなぁ!?」
光岡の刃が香里に決まる直前、飛び上がったムックルが光岡に圧し掛かった。
「ば、馬鹿っ! やめろ! 俺はただ、お前の主人を……うわあっ!?」
噛まれこそしないものの、その巨体に押しつぶされる光岡。
「くっ、もう少しだったのに……。仕方ない……!」
不確定要素が混じった戦闘に戦う価値は無い。香里はそう判断すると、踵を返し、全速力で今まで来た道を戻っていった。
「ま、待て貴様……! 二度と……彼女に近づくな……ぐっ、がぁっ! お、重い……!」
「グルルルル……グォォオオオオ!!!」
「……何が起きているのでしょうか?」
唯一、何がなんだかわからないユズハであった。
【香里 撤退】
【光岡 ムックルの下敷き】
【ユズハ もう何がなんだか】
「冬弥くーんまちなさーい」
愛しのマイフェアレディ、森川由綺が猛スピードで追ってくる。これが他の
人間だったらもっと大声を出してきたりするのだろうが、今のように黙々と追
走されるのはハッキリ言って恐い。それが自分の恋人だったりするのだか
ら、もう妙な錯覚を覚える。――鬼ごっこやってるんだよな? 俺。
それだけでも十分アレだが、なんと鬼はもう一人居たりする。七海と呼ば
れた娘だ。背丈はだいたい由綺の胸のあたりくらい。解りやすく属性で分
類すると観月マナ級LGL。Lolita Girl of LEAF。……軍艦さんですか?
「ゆきさーんまってくださーい」
判りづらいが、セリフの最後の『さーい』あたりは殆どフェードアウトしてい
る。見た目どおりあまり体力がないらしく、どんどん距離が離れていく。
「由綺、後ろ」
「え?」
由綺は後ろを見る。七海ちゃん(未確認)はもうあんなに遠くだ。流石の
由綺も自分の相方を見捨てるわけにはいかないだろう――
「ななみちゃーん、ちょっとそこで待っててねー! 冬弥君捕まえたらすぐ戻
るからー!!」
――(゚∀゚)アヒャ。
安直かつしょっぱい希望を抱いた自分に悲しくなってしまった。そもそも由
綺達は鬼じゃないか。
さて、どうしたものか。
そろそろ体力も底が見えはじめている。鬼の由綺もそろそろスタミナ切れ
を起こしそうだけど、それまで走りつづけているほどの余裕はない。ここら
へんで何とか逃げ切りたいものだ。
「……ん?」
気がつくと、例の森林地帯に紛れ込んでいた。トラップ解除にカルシタス
を覚え始め、謎の少年二人組に〆られかけたあの一帯だ。
ということは。
この先に待っているのは――例の、アレ。
「冬弥君、もしこのままおとなしく捕まってくれたら、帰ったあとであーんなこ
とやこーんなことをー(以下フェードアウト)」
「――何ぬっ!?」
くそ、由綺のやつめ。トップアイドルの名を欲しいままにしているというの
に、ガールフレンドという立場を巧妙に使ってそんな下劣な姦計を巡らせて
くるとは。
「とうやくーん」
「くっ…」
やめろ。やめてくれ由綺。ものすごく揺らぐじゃないか。そりゃもう色々と。
――――――。
一瞬だけ師匠の姿が見えた。
「! 冬弥君!」
驚き半分、嬉し半分で由綺が叫ぶ。目前に迫る地雷に気付いたようだ。
しかし、自分はスピードを弱める気など毛頭ない。
師匠――俺、やりますよ。そう心の中で叫び、地雷原につっこんだ。
ずむ。ずむずむずむずむずむずむずむずむずむ。
「と、冬弥君!?」
由綺は唖然としていた。恋人であるはずの目の前の男性が、犬の糞(っ
ぽい形の粘土)を躊躇なく足蹴にしつつ自分から去ってゆく。誰だって傷つ
くだろう。いろんな意味で。
渡り終えてから振り向く。そこには立ち往生した由綺……
「……うそぉん」
森川由綺。マイガールフレンドは、小道の脇の木の幹に手をかけながら
割と簡単に地雷原を回避していた。
普通の人間ならまずそうするだろうな、やっぱり。うん。
「ははははは……………そいじゃねっ」
「逃がす、もんです…かっ!」
【冬弥・由綺 追いかけっこ継続。かなり消耗している】
【七海 途中で脱落。マターリ休憩中】
そしてその光景を見ていた人影が二つ。
「…………」
「…………」
「……えっと」
「……はい」
「…………」
「…………」
「…見なかった事にしよっか」
「…そうですね」
「…………」
「……ところで…」
「ん?」
「これからどうしましょう?」
「んー……どうしよう?」
【河島はるか 三井寺月代 ぼーぜん】
ふと、杜若きよみ(黒)は地面から身を起こした。
さっきまで当然に存在していた夜闇はどこへやら、
遠く海の向こうから、強烈な橙色の陽射しがおでましていた。
自分の髪よりも黒かった空は紫から藍を過ぎ、薄青に変わりつつある。
ひんやりとした静謐。空気の流れる音が聞こえそうだ。
いや、鶏が鳴いている。野鳥も。
朝だ。
また騒がしい一日が訪れるのだろう――
認識。
理解。
焦燥!
寝過ごし疲労迂闊四時間で交代今何時だから朝よ鬼!危険敗北襷はユンナ当番のまま彼女も寝ちゃって
「ユンナっ!」
「…あ、きよみ起きた〜…」
ユンナはそこにいた。
瞼は半眼どころか閉幕寸前。頭は盛大にヘッドバンキング。
歩きながらもゆらゆらと大きく左右に体がぶれ、実に危なっかしい。
はっきり言って九割方爆寝。だけど、彼女は寝てはいないのだ。
「…あなた…まさかずっと鬼を見張って?」
「うん。…大丈夫、鬼いなかったからね。…いぇーい」
自分と相手の肩に襷がないことを、のろのろと指し示す。
「そうじゃなくって、何で起こそうとしなかったのよ?」
「…うー、ごめんね。きよみの寝顔、気持ちよさそうだったし、
徹夜でがんばっても、何とかなりそうと思ったから…」
「全然何とかなってないじゃないの。いいから早く寝なさい!」
「うん、わかった。今度はきよみの番だね…。
頑張って…ね…」
言いながら地面に倒れこみそのままグー。
野比のび太並みの見事な就寝速度だ。
眠りについたのを見て、ほぅっと息をつく。
…安堵の息?
ちょっと、まるで彼女のこと心配してるみたいじゃないの。
「……うーん、むにゃむにゃ……
……チョコレートパン……おいしいね…………」
ユンナの端正な口がだらしなく崩れ、無意識の呟きが漏れた。
寝言。よだれ。おまけに大きな鼻提灯――惜しい。実に惜しい。
これで寝言の後半が「もう食べられないよう」だったら完璧である。
もはや初めて遭った時の、研ぎ澄まされたナイフのような、どこか危険な美しさは微塵もない。
ただひたすら柔らかで、安らかで、無防備で、愛くるしい寝顔。
世界の全てを信じきって風に舞う、蒲公英の綿毛のように
昨日出会ったばかりの自分のこともまた、信じきっているのだろう。
もちろんそれは、今ひと時の仮初でしかないのだけど。
「……いけないいけない」我に返り、頭を振る。
一体何を考えているのか。
自分は今やこの人の善すぎる女性を半ば騙して利用しているに過ぎない。
情を移してどうするのか。獄吏が死刑囚を哀れに思って逃がすのは、自己満足。偽善だ。
第一、茸の効果が切れたら、いつどんな報復をされてもおかしくない。
先ほどの例なら、逃がしたとたんお返しとばかりにこちらが牢にぶち込まれるのか、それとも――
自分はそういう立場なのだ。決して流されるわけにはいかない。
わかっている。
わかっている、のに。
「……えへへーー……きよみぃ…………
一緒に…………優勝……しよ…ね…………すぴゅー」
まずい。非常にまずい。
この寝顔、癒されてしまう。見続けてるとてるとふんにゃかしそうだ。
いや、寝顔ばかりじゃない。
これまで一日も行動をしていないのに、その間彼女が自分に振りまき続けた
天使の微笑み―嗚呼、そのまんまだ―は、危険なくらい、クる。侵食されてる。
このままいけば――例えば鬼に囲まれて大ピンチな時、自分は
「もういいの、わたしは優勝なんて。あなたからはもっと素敵なものをもらったから」
とか何とか言って彼女をかばって鬼になって、本来の目的を潰してしまう。
そんなパターンが頭に浮かんだ。――――ヤバい。笑えない。
彼女にハンテンタケを食べさせたことで、チャンス到来と思ってたけど
かえって自分はピンチになったのでは?
「…………んん……きよみぃ……」
やめなさいよお願いだから。
夢にまでわたしを出演させて、そこまでなつこうっていうの?
そんな眉をしかめていやいやするようなそぶりを見せて、かわい……そそそそうわいか
「……きよみぃ……………
………足の裏……なんだかヤギの匂いがするよぉ……………」
きよみ(黒)は、とりあえず踏みとどまれたことを天に感謝した。
あと、ユンナを起こすときは人中に中指一本拳突いてやろうと決めた。
【黒きよみ 起床。心が揺らぐ(笑) しばらくは鬼の見張り】
【反転ユンナ 就寝中】
【現在、二日目早朝】
うおー反転ユンナ萌えーw
そこに辿り着いたのは、恐らく夜の九時過ぎ辺りであっただろう。
夜の闇の中に浮かぶ、白い建物。それ程大きくは無い、森の中の小さな教会。
――当初、そこに入る事は躊躇われた。もしかすると、鬼が待ち伏せしているかも知れないし、
そのつもりの無い鬼が休んでいて、鉢合わせになる可能性もあるからだ。
だが――
「瑠璃子さんの体力を考えて、野宿は避けましょう。鬼がいたら、その時はその時です」
怪我人である瑠璃子を背負った葵がそう言い、率先して教会の中へと足を踏み入れたのだった。
幸いにして、教会の中に先客はいなかった。只、中の礼拝堂は、高い位置にある窓から差し込む蒼白い月光に
照らされているだけで、所々にある暗い影が、静かにこちらを見つめていた。
「…電気は無いのでしょうか? 燭台はたくさんありますが…」
「蝋燭の明かりだけを照明とするつもりなのかも知れないですね。……今は、月の光だけが頼りです」
美汐と葵が、やや心細げに話し合っていると――
「奥の方に電気の点く部屋があったよ!」
ぱたぱたと真琴が駆け戻って来た。
――教会の奥には小さな居住区画があり、小さな部屋の中には、寝台が二つ。クローゼットが一つ。
そして、使用可能な給湯室とバスルームがあった。
「……バスルームが使えるだけでも、文句の付けようがありませんね」
「そうですね…」
苦笑しあう、美汐と葵。
瑠璃子の捻挫は冷水シャワーで冷やし、シャワー後も冷水に浸したタオルで冷却した。…本来なら冷湿布や
アイスバッグ等で冷やすのが一番なのだが、そこ迄気の利いた物は見つからなかった。
「…まだちょっと痛むけど、歩けなくはないよ」
「ああ、駄目です。捻挫を甘く見てはいけません。痛みが引く迄は、安静・冷却・圧迫して固定・心臓より高い位置、
…でなければ腰より高い位置に上げておく――を、心がけて下さい。無理は禁物ですよ?」
「…うん。解った…」
瑠璃子の事は、葵に任せるのが一番だろう。
シャワー後、部屋のクローゼットの中で見つけた就寝用の貫頭衣を着た美汐は、給湯室を物色していた。
――そこへ、同じく貫頭衣に着替えた真琴がやって来る。
「美汐、何しているの」
「…食べ物を探しています。お腹が空いているでしょう?」
「うんっ、もうペッコペコ。ポッキーも無くなっちゃったし…。――真琴も探すね♪」
…真琴の望む物は、きっと肉まんだろう。
だが、真琴の望みは叶う事も無く、出て来たのは、開封に缶切りを必要としない缶詰のポタージュスープと、
袋に入った食パン一斤。
「あう〜、寂しいよう。肉まんやーい」
「まあ、何も無いよりましです。コンロやお鍋があるので、早速食べられる様にしましょう」
「パンはどうするの?」
「そちらはそのままでも大丈夫でしょうけど、焼いた方が好きなら、フライパンがあるのでこれで焼きましょう」
「真琴は、カリカリトースト好きだよ」
「…ふふ、私もですよ」
…ポタージュスープとフライパンで焼いたトーストという質素な晩餐であったが、四人は空腹の所為もあって、
会話もせずに黙々とそれらを食べ続けた。
取り敢えず食欲が満たされれば、次に訪れるのは眠気である。それに疲労迄加わるので、抗い難い。
「………でも、見張りを立てなければいけませんね」
「朝起きて、皆、鬼になっちゃってました♪――なんてオチだったら、笑うしかないもんね」
どちらかが寝入ってしまわないようにという理由も含めて、二人ずつ交代で見張りに立つ事となった。
――結局、鬼どころか新たな訪問客さえ現れる事も無く、教会は静かに朝を迎えた…
朝食は、昨晩と同じ物だった。スープを温め直し、パンをフライパンで焼く。
置いたままにしても仕方が無いので、開けた分のスープとパンは、全て食べてしまった。
「…これからどうしましょう、皆さん」
朝食後、礼拝堂に集まった四人は、今後の動き方について話し合った。
「瑠璃子さんに無理はさせられません」
「私の事はいいから、皆で――」
「――その選択肢は除外しましょう」
美汐の、穏やかながらもきっぱりとした口調に、瑠璃子以外の二人も頷く。
「でも……葵ちゃんは、探している友達がいるんでしょう?」
「…はい。――ですけど、大丈夫ですよ。私よりもずっとしっかりしている人達ですから」
和やかな笑みと共にそう応える葵。浩之も綾香も坂下も、そう簡単に鬼となる事はないだろう。きっと。
「ねぇねぇ、瑠璃子にはここに隠れてもらって、一人くらい見張りも付けて、
あとの人達は何か食べ物探して来るっていうのは、どお?」
真琴のその提案に、美汐達は顔を見合わせる。
瑠璃子を置き去りにして行動するという考えが他の三人には無い以上、
そういう選択を採るのは必然であったかも知れない。
――無論、ここにずっと居続ける気は無いが、今日一日位はここに隠れていてもいいだろう。
「鐘楼へと続く階段がありましたから、瑠璃子さんはそこに登って隠れてもらいましょう。…私が、付き添います」
「じゃあ、真琴と葵が食べ物探す係?」
「そう…なりますね。――…出来ますか、真琴?」
問い返された真琴は、表情に不安そうな揺らめきを浮かべていたが、それを振り払うかの様に頷いて見せる。
「頑張るよ。真琴が言い出しっぺだからね」
「私は、湿布薬とかも探しておきます」
今日の行動は、これで定まった。
「御免ね、皆…」
…どう見ても足手纏いでしかない瑠璃子は、どこか悲しげに微笑む。
「何を言ってるんですか。私達はもう、仲間なんですよ? ファイトです、ファイトっ!」
「……私のお兄ちゃんにあったら、気を付けて。
思い余って、ルール違反を承知で直接電波を当ててくるかも知れないから」
拓也の特徴は、既に葵も真琴も耳にしている。
…ともあれ、「るりこー、るりこー」と、うわ言の様に呟いている男を見たら、要注意と言う事だ。
「それと……鬼になっても、戻って来て…。私、皆の中の誰かなら、タッチされても辛くないよ」
兄にタッチされて鬼となるには嫌だと、瑠璃子は言外に語っていた。
「……解りました」
「うんっ。絶対に帰ってくるからっ!」
「二人とも、頼みますね…」
美汐の言葉に、葵と真琴は力強く頷き、瑠璃子が微笑む。
――そして、四人は互いの手を叩き合った。
【美汐・真琴・葵・瑠璃子 森の中の教会で初日の夜を明かす】
【瑠璃子の怪我 捻挫は軽度。ゆっくりとなら歩ける様だが、葵に安静を勧められ、それに応じる】
【美汐と瑠璃子は、教会の鐘楼に上がって隠れる。下からは見つかり難い】
【真琴と葵は、各々単独で食料探し】【月島兄(拓也)を警戒】
【真琴・葵が出発する時点では、二日目の朝九時〜十時頃】
「……どうしよう。どうしよう。すごく楽しそう……」
神尾観鈴は迷っていた。
道……は元から目的地が無いわけだからともかくとして、精神的に激しく迷っていた。
林の隙間から見通す向こうでは……
「そぉらでぃー! いくよぉ! とすだぁー!」
「クッ! 高すぎだ下手糞!」
「Ah-ha! come on,come on! boy&girls!」
「うう……まいかちゃん、楽しそうだなぁ……」
彼女の友人しのまいかと見知らぬ男女2人が楽しそうにビーチバレーに興じている。
美しい太陽の光を燦々と浴びるその姿。思わず観鈴はどこかで見た外国映画のワンシーンを思い出してしまった。
「行くぞレミィ! 必殺必中! ウィツァルネミテアスパイクッ!」
「Hahaha! 甘い! 甘いヨD!」
「あっ……ブロックされた。ああっ! 男の人の顔面に直撃……うわっ、血が出てる……
ああっ! まいかちゃん……蹴っちゃダメだよ。死人に鞭打っちゃダメだよ……」
うずうず。すごくうずうず。気を抜いたら次の瞬間にも
『いーれーて♪』
と叫んで輪の中に入ってしまうだろう。そうすれば2on2で戦力的にもバランスが取れ、包括的にバレーボールを楽しめるはずだ。
(現状でも一人である金髪女性が優勢なのはきっと気のせいだ)
だがそこは観鈴ちん。簡単に友達が出来ようはずがない。
「……けど、みんな鬼……」
そう。観鈴そっくりの巨乳娘も、金髪サラサラの美形青年も、友人しのまいかも皆……鬼を表すそのたすきを装備している。
友達は作りたいが、鬼になるのは遠慮したい。
「がお……。観鈴ちん、悲劇のヒロイン……」
自分で言うのもどうかと思うが、まぁ間違ってはいまいて。
「血が! 血がァ! 私の血がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なんだでぃー! はなぢていどで!」
「馬鹿者! 私の血は世界の海! 私の肉は世界の大地! 私の魂は世界の核なのだ! 一滴たりとも無駄に流すわけにはいかんのだぞ!」
「ハイハイD,イマ絆創膏貼ってアゲルからね。騒がない動かない」
「……いいなぁ……」
【D一家 ビーチバレー中(レミィ VS D&まいか)】
【観鈴ちん それを近くの林から眺める。すごくうずうず】
【時間は昼過ぎ】
市街地を抜け、北へと進路を取った智子・みさき・初音の三人は、
道の脇にぽつねんと建てられてある小屋の中にいた。
恐らくは、今朝出発した森林監視員の詰め所と同じ様な所なのだろう。
只、それ程大きな建物では無く、水道、トイレ、ロッカーが幾つかあるだけだ。
先刻の様に罠が仕掛けられている恐れもあったが、食料を確保しなければならないので、
智子達は通り過ぎる事なく、家捜しをし始めたのである。が――
「……何も出てけえへんなぁ…」
「う〜ん…」
罠は仕掛けられてはいなかったが、代わりに、何の収穫も無いままだった。
ロッカーを調べ、壁を調べ、水道傍の棚やトイレの中迄調べたが、何も見つからない。
「あれやな…、“ハズレ”って奴や」
「注意深く探せばきっと何かが出て来るって、千鶴お姉ちゃん言ってたんだけどな〜…」
「ん〜…」
家捜しにおいて、みさきの活躍の場は少ない。自分でもそれを承知しているので、隅の方で所在無げに
佇んでいたのだが、ちょっと体を動かした時、足に何かが当たった。
「? ……何だろ、これ?」
足に当たった『それ』を、ぺたぺたと触る。……どうやら、蓋付きの壺――らしい。
触っている内に蓋の取っ手らしき箇所が手に当たったので、みさきはそこを掴み、蓋を持ち上げようとする――
「――っ! 待ちぃっ、川名さんっ!!」
智子も壺に気が付いたが、もう遅い。声を上げた時には既に、蓋は持ち上げられてしまっていた。
「大〜当ぁ〜りぃ〜〜〜っ♪」
ぽんっ!…と、パーティークラッカーが弾け、カラフルな紙吹雪や紙テープが、
きょとんとしているみさきの上へと舞い落ちてくる。
みさきの目の前には、男が佇んでいた。長身痩躯。糸目細面。獣の様な耳。――顔に愛想の好い笑みを浮かべ、
両手は揉み手でもするかの様に重ね合わされている。
――その男が、みさきの開けた壺の中から、いきなり“にゅっ”っとばかりに立ち上がって来たのだ。
「なななななな…、何やアンタわっ!?」
智子は反射的にレモン汁銃を構え、初音は目を点にして固まっている。みさきなど、鼻を突付き合わせる程
目の前に男が立っているのだが、何が起きたのか解っていない様子だった。
「私、チキナロと申します。ハイ」
ニコニコと笑いながら、男――チキナロが応える。
「…チキンナゲット?」
「いいえ、違いますよ川名様。私の名は、チ・キ・ナ・ロ――で御座います。ハイ」
チキンナゲットを想像して涎を垂らし出すみさきに、やはり変わらぬニコニコ顔で穏やかに応える。
「……何や、あんた…――チキナロさんは、私らの事知っとるんか。運営側の人かいな?」
「はい、その通りで御座います。ハイ。貴女様は、保科智子様ですね。そしてそちらの方は、柏木初音様で。
いやはや鶴来屋様には、この度は大変お世話になっております。ハイ」
「は、はあ…」
未だ呆気に囚われている初音の横で、智子がレモン汁銃の銃口を下へ降ろしていた。
「――で、何の用や? 運営側の人間が用も無く出て来たりせぇへんやろ」
ぺたぺたとチキナロを触りだすみさきを掴んで引き寄せながら、智子が小首を傾げる。
「これはですね、おまけゲームの“チキナロを探せ!”という物でして。ハイ」
「……見つけられる迄、その壺に隠れている気ぃやったんか…?」
呆れた様に目を細める智子に、チキナロは、やはりニコニコ笑顔で頷いた。
「ええ。その通りで御座います。ハイ。初日は誰もここを通らなくて、ちょっぴり寂しかったりしたのですが。ハイ」
言葉で語るほどに、ニコニコ笑顔に疲労の翳りなどが一切無い。
「チキナロさんを見つけると、何かあるの?」
「勿論で御座いますよ、川名様。見事私を発見なされた貴女方には、こちらの“屋台で使えるクーポン券”
三万円分が進呈されます。ハイ。どうぞ、お受け取り下さいませ」
両手で恭しく差し出されたのは、『進呈』と書かれた熨斗袋だった。
戸惑いながらも智子が受け取り、開けてみると、青地の上質紙に“一枚千円分♪”と書かれた物が三十枚
納められていた。ウィンク+Vサインの千鶴のディフォルメイラストが、何だか妙に可愛らしい。
「……屋台で使える…?」
「はい。では、屋台ルールをご説明致しましょう――」
――チキナロから屋台ルールを聞いた少女達は、唸る様な声を上げていた。
「そんな便利な物がある事に今迄気が付かんかったとは…」
「私も知らなかったよ…」
「カレー、あるかなぁ〜♪」
「屋台は全部で四つ御座いまして、島中を常に動き回っております。鬼ごっこを続けていれば一度は
見つけられる事でしょう。勿論、そのクーポン券は、どの屋台ででもご利用になれますよ。ハイ」
「さよか。ほんなら、有難く受け取っておくわ。――良かったな、川名さん。これでカレー食べられるやろ」
「\(T▽T)/〜〜♪♪」
「……泣くほど嬉しいんかい」
「あはは…」
――と、気が付けば、チキナロが壺の蓋を掴み、するすると再び中へ入って行こうとしていた。
「それでは、私はこれにて失礼させて頂きます。ハイ。引き続き鬼ごっこをお楽しみ下さい」
「あっ――ちょっと待ちぃ、チキナロさん…!」
かぽっ…と蓋が閉まる壺。智子が間髪置かずに蓋を持ち上げた時――
――チキナロの姿は消えていた。カケラすら無く、壺の中身は空っぽ…
「………何やの、あの人わ」
「うーん、でも悪い人には見えなかったけど…」
「カレー〜♪」
「言い忘れましたが――」
「「わあぁっ!?」」
壺の中に消えたはずのチキナロが、何時の間にか智子達の背後に立っていた。
「――そのクーポン券は、現在開催中の鬼ごっこにおいてでしかご利用に慣れませんので、あしからず。ハイ。
それでは改めて、失礼致します」
お辞儀をしたまま後ろへと下がって行き、触れてもいないのに開いたドアをくぐり、外へ。
ぱたん――と、静かにドアが閉まる…
……少女達は、暫く目を点にしたまま、佇んでいた――
「カレー♪ カレーだよぉ〜♪ うふふふふ〜♪(くるくると回転中)」
――みさきを除いて。
【智子・みさき・初音 北へ向かう道の途中にあった小屋にて、チキナロと出会う】
【おまけゲーム“チキナロを探せ!”において見事チキナロ発見。
景品として“屋台で使えるクーポン券”三万円分が智子達に進呈】
【智子達 屋台の存在及びルールをチキナロから伝えられる】
【クーポン券は、鬼ごっこ開催中のみ利用可能】
【智子・初音 チキナロの特異なキャラにちょっと呆然】【みさき カレーが食べられそうなので有頂天】
「さてと……、今度はどこに隠れましょうかねぇ…♪」
【チキナロさん 結構ノリノリです】
WA:藤井冬弥
>>501-503、河島はるか
>>504、澤倉美咲、篠塚弥生、観月マナ、七瀬彰、緒方英二、
【森川由綺:1】
>>501-503、【緒方理奈:2】
こみパ:千堂和樹、高瀬瑞希、牧村南、猪名川由宇
>>467-469、大庭詠美
>>467-469、長谷部彩、芳賀玲子、桜井あさひ、
御影すばる、立川郁美、九品仏大志、澤田真紀子、風見鈴香、
【塚本千紗:2】、【立川雄蔵】、【縦王子鶴彦】、【横蔵院蔕麿】
NW:城戸芳晴、ユンナ
>>505-508、【コリン】、
『ルミラ』、『イビル』、『エビル』、『メイフィア』、『アレイ』、『たま』、『フランソワーズ』、『ショップ屋ねーちゃん』
まじアン:宮田健太郎、江藤結花
>>491-492、高倉みどり、牧部なつみ、【スフィー】、【リアン】
誰彼:三井寺月代
>>504、砧夕霧、桑島高子、杜若きよみ(白)、岩切花枝、石原麗子、杜若きよみ(黒)
>>505-508、
【坂神蝉丸:4(4)】、【御堂:5】、【光岡悟:1】
>>495-500 ABYSS:【ビル・オークランド】、『ジョン・オークランド』
毎回微妙にマイナーチェンジをしてるので読んでほしいこと&連絡事項↓
参加者はこのリストで確定です。
今日のトピとしてはチキナロ登場。これと島内にあると思われる商品券で一般キャラの買い物活用でしょうかね
このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。
NGはできるだけ避けるよう書く話のキャラの前話くらいは読みましょう。
前スレも健在なのでリストをたどれば最終行動はわかる筈なので。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
>
ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/ 後記
ちぃと失速しましたかね? ここからが重要なので頑張りましょう。
525 :
空の夢:03/03/28 00:30 ID:9SBUwroZ
「二人はもう撒いてきたはずだが……」
鬼があの二人だけということは考え難いし、万が一、ということもある。
もしもの時は、連れの人も一緒に鬼にしてしまう危険がある。
男は細心の注意を払って、静かに待ち人のもとへ向かっていた。
「確かこのでかいのを目印にして…と」
この大木から……一本、二本……三本目。
この脇の道を入った奥の方の茂……
「大変おそうございます。柳也さま」「うわぁっ」
驚く。全く気配を感じなかった木陰から、急に声をかけられた。
これ以上ない位の注意は払っていたつもりではあったが……彼の連れは普通ではなかったようだ。
「すまない裏葉、ずいぶん手間取ってしまった。 しかし朗報があるぞ」
「朗報…でございますか? もしや神奈さまのことで何か」
「実は、だな・・・・・・・・・・・・」
526 :
空の夢:03/03/28 00:32 ID:9SBUwroZ
「あらあらまあまあ。それでは神奈さまはもう既に……」
「みたい、だな。でも楽しそうだったし、良いんじゃないか?
確かに些細なことだが、こういうことを神奈は……」
知らない。 当たり前のことだった。独り遊びのお手玉ですらろくに知らなかった少女。
そんな彼女が、大勢の人間と遊ぶ。
それはどんなに些細なものでもきっと楽しいのだろう、楽しいに決まっている。
『覚悟するが良いぞ、柳也殿!!』
そう叫んだ少女の笑顔はとても眩しかったから。
「まことに、そうでございますね…」
静かに微笑む裏葉。
母親を知らない柳也であったが、母が子を想う顔とはこのようなものなのだろう
と、何とは無しに考えていた。
「で、だ。神奈が鬼になってしまった以上、俺たちがいくら気にかけてもはじまらん」
「そうでございますね」
隋人達のあっさりとした会話。主君がいたらなんと言ったであろうか。
「頼りになる仲間もできたようだしな」
「そうでございますね」
「主君に覚悟しろ、と言われた以上はこっちも気合を入れていかねばな」
「(クスクス)そうでございますね」
しれっとした顔で答えていた裏葉の顔に笑みがこぼれる。
「どれくらいの人間がいるのかわからんが、折角のこの機会だ」
「そう、でございますね」
「童になった心持ちで、遊びと、出会いを精一杯楽しむと致しましょう」
彼の妻は最高の笑顔を返してくれた。
527 :
空の夢:03/03/28 00:33 ID:9SBUwroZ
「撒いた、と言ってもそんなに離れてはいないだろう。のんびりしていると神奈達に見つかってしまう」
「はい、早速出立いたしましょう。それで、どちらに向かわれましょう?」
「うむ……ここは、島だったな」
「はい」
頭に浮かぶ、少女が呟いた台詞…これは何時のことだったろう?
『これは、夢であるな』
『余の、夢だ…』
「もしも、神奈が俺たちを追ってくることができるなら、崖よりは砂の方が良かろう。
手や足で直接触れられるようなところが一番良いな」
裏葉の笑顔がさらに広がる。察してくれた。
「大変、素晴らしいお考えかと」
「明け方、潮の臭いがしたから、まずはあちらへ進もう」
「ええ、お供いたします。……ずっと、何処までも」
【柳也と裏葉合流、海岸を探す】
【神奈 葉子と一緒。柳也達を追いかける】
【神奈が柳也達を見つけられるかどうかは不明(基本的には完全に見失っている)】
とうとう徹夜してしまいました。
にも関わらず、綾香さんたちと別れて以降、どなたとも接触はなし……。
想像していたよりこの島は広いのかもしれませんね。
闇雲に歩き回って遭遇するのを待つというのは少々無理があったようです。
となると、ここは対象を絞って、姉さんたちを一人ずつ探していくのがベターでしょう。
問題は誰を初めにするかですが―――
―――まず、千鶴姉さん。
”ゲーム”に参加された中には色々不思議な方もいらっしゃるようですが、
純粋な戦闘能力という意味で千鶴姉さんが引けを取ることはないのではないでしょうか。
そもそも人ではありませんし、あれで偽善……失礼、計算高いところもありますから。
一応主催者側でもありますし、身を守る算段くらいはしているでしょう。
―――ということで、千鶴姉さんは外します。
―――梓姉さん。
やや打たれ弱いところもありますが、あの性格は断然サバイバル向きです。
……日吉かおりさん、でしたか。彼女に遭遇しない限り大丈夫でしょう。
―――ということで、梓姉さんも除外。
耕一さんは……、多少のことはエルクゥの力でねじ伏せるでしょう。
なにせ雨月山の次郎衛門です(ぽっ
あの人でダメならどうしようもありません。
―――順当に除外ですね。
となると、やはり初音、ということになります。
反転きのこや蜘蛛な女性ならともかく、あの人の良すぎる性格はサバイバルでは不利です。
まあ、そこが初音の良いところでもあるのですけど。
―――さ、て。
初音はどこにいるのでしょうか。
辺りを見渡してみます。
森を出て、目の前に広がるのは平原……いえ、丘ですね。
向こう側に見えるのは商店街、ですか。
確かに水・食料の確保という点からみれば、商店街ですが。
姉さんたちなら、極力人のいるところは避けるでしょうね。
初音なら……。
そっと息を吐きます。
上手く他の人に保護されていれば良いのですが。
【楓 商店街に向かう】
【時間 昼頃】
「あー、腹減った」
「うむ満腹。実にいい味だった」
どうも、昨日から世界一位の肩書きについて真剣に考えています那須宗一です。
この隣で爪楊枝(一本10円)をしーはーさせながら『満腹』などと宣って
いらっしゃるおっさんは坂神蝉丸。竹槍でB29落とせそうな人ランキングで
堂々世界一位の座に輝いている方にございます。
「いやあ、しかし今は実に良い時代だな青年。食べたい時に食べられる。こんな
余興にも興じていられる。越えてしまった時もあながち無駄ではなかったな」
おっさん、あなたそれは確信犯的行為ですか? それとも天然ですか? どっち
にしろあなたの言う『食べたいときに食べられる』に当てはまらない青年がここに
一人いるわけですが。
いえ、そりゃカップラーメンは非常に美味しかったですよ。ですが僕だって育ち
盛りの健全な高校生でして、いつもなら皐月シェフのわんだふるかつでりしゃすな
ランチという物をお腹いっぱい食させていただいているわけです要するにお腹が
減っているんですあれっぽっちじゃ足りないんです。そうだあいつの料理ならば
この苦しみも至福の瞬間を引き立てるスパイスになる。あいつを探そう。
「さて腹は満たされた、次は腹ごなしと行こうか。そう言うわけで青年、今度こそ
さらばだ」
──そろそろ思考を切り替えようか。
まあそうだな。嘆いていても始まらないし腹だって膨れない。
何をやるにしても常に万端の準備を整えておくのが一流エージェントてものだが、
どんな悪条件からでも最大限の戦果を生み出す、これもまた一流の条件であるわけだ。
最近どうにもらしくないマネばっかしてるけどさ、天下に名を馳せさせてもらってる
以上はここらでビシッと極めておかないとね。
「まあ待ちなよおっさん。あてもないのにどこに行くって言うんだ?」
ともかく呼び止める。このおっさんを利用させてもらう為には必須事項だな。
「無いな。あてが無いからこそ動くのだが、違うか? それとも君にはその『あて』が
あるのかな青年よ」
「ある」
おっさんが振り返った。OK脈有り。まず餌に反応してはくれた。
「ただしただでというわけにはいかない。当然条件がある」
俺達エージェントは情報を金に変えるのが仕事だ。純粋な身体能力で劣る部分はここ
でカバーしてみせるさ。
「条件は二つ。俺が提示できる情報も二つ。一つ目、当然情報代だ。とりあえずあんた
が持ってる金の半分でいいや。二つ目、俺があんたに同行することを認めること。見た
とこあんたと組んだ方が有利そうだからな。あと換金時の取り分は捕らえた方が7割」
「提示できる情報は?」
「全参加者の現在地。誰が鬼で誰がそうでないかもわかるが一度きり。もう一方は
これまた全参加者のパーソナルデータ」
表示できるのは後三回だけど、教えるのは一度だけな。
「ぱーそなるでーた?」
「個人個人の詳細な情報だよ。確か昼間は本領を発揮できないんだろ? 元帝国陸軍
特殊歩兵部隊所属・坂神蝉丸さん」
「なるほど……確かにこの手の競技は一人より二人の方が圧倒的有利だが」
おっさんはしばらく瞑目して考えを巡らせていたようだがやがてこう言った。
「年齢のわりには卓越した能力。それに少なくとも退屈はせずに済みそうだしな。
わかった、その申し出快諾しよう」
さて、かかった魚には幾らの値が付くかな?
【宗一・蝉丸 正式にコンビを組むことに】
【時間は朝方を少し過ぎたくらい】
【とりあえずのターゲットは皐月?】
「……カルラ」
誰かの低い声が、カルラの名前を呼ぶ。
「あらウルト。奇遇ですわね」
カルラとさいかのかなり早い晩酌中。隣の木にとまる鳥……ならぬウルトリィの姿があった。
「あなた、何をしているの?」
「何って、この子にギリヤギナ式の教育を」
「……私には酒を飲ませているようにしか見えないのですが?」
微妙に微笑みではあるが、ウルトの表情はかなり硬い。
「豪傑はまず酒豪でないことには始まりませんわ。私など、物心ついたころには既に樽を一本空けてましたわよ」
カルラの台詞を聞くうちに、徐々にウルトの眉間にピキピキと皺が刻まれていく。
そして、決定的だったのが。
「ぷはっ」
さいかが心地よさそうな息を吐いた。
「おいしいね、かるらおねぃちゃん。さいか、いっぱいのんじゃった」
「ええ、いい子ですわ。あなた、見込みがありますことよ」
ブツンッ!
切れた。何かが切れた。
「ギリヤギナと普通の子供を同じにするんじゃありませんっ! その子供、こちらによこしなさいっ!!!!」
ばっと翼を開きつつ飛び上がり、正面のカルラへと踊りかかる。
「断りますわ。あなたに子供を預けたらまたどうなってしまうことか」
カルラはさいかと酒を抱えるとヒラリと身を躍らせ、綺麗に大地に着地した。
「クッ!」
直前までカルラたちが乗っていた枝の上から、ウルトが叫ぶ。
「相変わらず無駄に身軽! けど……今回は逃しませんよ!」
「おお怖い怖い。けど、やっと鬼ごっこらしくなってきましたわね……」
カルラの目つきが鋭く変わる。戦闘態勢だ。
「……ではさいか! 逃げますわよ!」
「うん!」
一声高らかに、カルラは駆け出した。
「カルラ! 待ちなさいッ!」
ウルトも負けじと翼をはためかせ、その後を追う。
「あなたに子供など預けたらどうなってしまうことか!」
「あぁら? その台詞をあなたが吐くと?」
……母性本能のぶつかり合いは恐ろしい。
【ウルトリィ カルラ・さいかへの追撃開始】
535 :
勘違い:03/03/28 03:35 ID:GCS9devT
「私たちは、とんでもない勘違いをしていたようですの」
いきなりすばるが語り始めた。
「突然どうしたんですか?」
しょうがないので高子が相槌を打つ。
「私たちは存在をアピールする為、目立つ為に優勝を狙っている筈ですの。
でもこうしてビルに潜伏してるだけじゃ優勝は出来ても一番大事な目立つ事ができないですの。
つまり私たちの今の行動は本末転倒だったんですの!!!」
「…………」
「…………」
「駄目ですの、桑島さん。ここはなんだってー? って言うところですの」
「そうなんですか」
「そうなんですの。という訳でまずは街にれっつごーですの」
そうしてビルを出て鬼を警戒しながらも商店街を歩き出した
【すばる、高子 出番を求め移動開始】
開けた平原。
そこにはおなじみとなった零号屋台とひとり屋台に佇む、編集長―――澤田真紀子の姿があった。
観月マナ、デリホウライと一緒に行動していた彼女だったが、とりもち銃を持った男―――もとい、
鬼の襲撃を受け、離散することになった。全くの不意打ちで、誰かひとりくらいは捕獲されたかもしれない。
思い出しただけで、怒りがふつふつと込み上げてくる。
なお今、真紀子はスーツ姿にスニーカーという、なんともキャリアウーマンらしからぬ格好をしていた。
昨晩の襲撃によって、このゲームにおいて動きにくいスーツにハイヒールは不利だということを
身をもって痛感していたからだ。
もっと動きやすい服を得るために、真紀子は屋台に立ち寄っていた。
いたのだが……
「これって……ジャージ?」
ショップ屋ねーちゃんの取り出したのは、ジャージ。
どこからみてもジャージ。
しかも、ブルース・リーが着ていたような黄色のジャージ。
ジャージ姿の自分を想像してみる。
――――なんだか、泣けてきた。
「なんというか……もう少し、別のはないの?」
スーツにスニーカーというのも耐え難いのに、こんなジャージなど着れる訳が無い。
知人にみられた日には、その後の人生を隠遁生活にするか目撃者を葬り去るかの選択に迫られることになるだろう。
「うーん。需要あるとは思ってなかったから基本的に着替えは置いてないのよねー」
ほら、服装もキャラの一部でしょ? とわけのわからないことをいい、
「次から入荷しておくことにするけれど、他にあるのは……」
がさごぞと奥で品物をあさるショップ屋ねーちゃん。
そしてとりだしたのは、
「…体操服?」
「…看護婦服?」
「…スクール水着?」
なんというか……もう、終わっていた。
ダメダメだった。
真紀子はすっぱり着替えを諦めることにした。
数分後。
「じゃあ、これなんてどう?」
相変わらず商売っ気満々、売り込みにいそしむねーちゃんの姿があった。
真紀子の前に持ってきたのはとりもち銃。
「装弾数こそ少ないけれど、基本的に殺傷力ある銃火器禁止のルール下では抜群の捕獲機能をもつ
とりもち銃! 長距離から鬼の撃墜も可! いまなら脱着剤付けるよ!」
そのうち実演販売をし始めるかもしれない。
「でも、高いわね」
銃そのものよりも銃弾の価格を見て、彼女は言った。
とりもち銃に限らないが、捕獲系の武器はとても高価で…というか、ぼったくりだった。
「まあ、少々便利すぎるシロモノだからねえ。とりもちのみで捕獲された獲物もかなりの数になるし。
おかげで主催者側からもできるだけ流通を抑えるようにいわれてるの。購入するなら今のうちよ」
「―――いえ、結構。私に目標に当てられるとは思えないから」
―――真紀子はねーちゃんに説明を受けた細かいルールについて整理していた。
鬼は捕獲数を上限として「換金」が可能であるという。
しかし、逃げ手にはそのようなシステムは用意されていない。
つまり鬼は捕獲によって資金を獲得ことができるが、逃げ手には資金を得る手段がないことになる。
このルールの下では時間の経過とともに鬼は増加の一途を辿り、かつ鬼の装備は充実する一方だ。
逃げ手には時間そのものが敵となる。逃げるしかないのに、持久戦は不利なのだから。
――――なんてアンフェアなルールなんだろう。
これでは逃げ回って優勝を狙うより、最初に鬼になってしまって捕獲数を稼いだ方が断然有利だ。
「……それより島の地図のようなものはないの? あるいは参加者の現在地を把握出来るレーダーのようなものは?」
「残念だけど、今は扱ってないの」
「今は?」
「規制にあってねえ。まあ、もともとゲームバランスを壊しかねないアイテムだから」
「悩んでるねえ」
「それはそうでしょう。こんな状況じゃあ」
険のある眼をむける真紀子に、
「逃げ先行のつもりなら、こういうアイテムはどう?」
ねーちゃんがとりだしたのは、二つの金属の塊。
説明を受け、真紀子はそれを購入することにした。
【真紀子 零号屋台】
【スニーカー着用 カロリーメイト 閃光手榴弾×2 購入】
【時間 昼頃】
540 :
背景:03/03/28 16:23 ID:GCS9devT
「初めて活躍の機会を得たのに逃げ手に全く会わない。どうすればいいんだ」
あゆに捕まり鬼になった後、出番を求めて鬼としての職務を全うしようとしていたビルだが
その存在感の薄さが災いしてかどうかは不明だが人に会うことが無かった。
……もっとも今現在、隠れて優勝を狙っていたキャラが出番を求め挙って動き出してたりするのだが。
結局ビルは街へ移動することを選んだ。
「街中なら誰か通りかかることもあるだろう」
そう言いながら街中の電柱によりかかり腕組みをし、人が通りかかるのを待つことにした。
【ビル 街の電柱に寄りかかる。存在感皆無。ある意味トラップ】
「だから、誤解なんだぁぁぁ!!」
「誤解だと言うのなら、その2人から離れて大人しく捕まってください!!」
森の中では、激しいデッドヒートが繰り広げられていた。
ある意味でうたわれるもの最強キャラとまで呼ばれているエルルゥと、
みちるを肩車、さらに美凪の手を引いて逃げている、どうみても愛の逃避行にしか見えないハクオロ。
森の奥深くをさらに超え、彼らは森の外へ向かっていた。
すでに木々はまばらにしか見えず、辺りは広々とした平野が広がっていた。
「お、大人しく捕まったら何もしないのか!?」
「………ええ。何もしません」
嘘だ。
あの数秒間の沈黙がそれを証明している。
捕まったが最後、事実を全て問い詰められたあげくに再起不能にされるのがオチだ。
…捕まったら、最後だ。
ハクオロは本能的にそれを察知すると、必死の形相で逃げ続ける。
「どうして逃げるんですか!やっぱりそうなんですね!
後ろめたいことがあるから逃げるんでしょう!」
「ち、違うぞエルルゥ。私はまだ鬼になりたくないから逃げるんだ」
「だったら、どうして足手まといになっているそのお2人を離さないんですか?
…やっぱり、ハクオロさんにとってそのお2人は私よりも大切なんですね―――!?」
ものすごい怒りの炎を燃やしながら、聞く耳もたずに追いかけてくるエルルゥ。
これほどの殺気は、戦場でもそうはお目にかかるまい。
…まあ、確かにいつまでも美凪の手を引いているハクオロにも問題ありそうだが。
「ねーねー美凪、これっていわゆる『しゅらば』ってやつ?」
「…正解。…でも、それを本人達の前で言うのはヤボヤボですから、秘密…」
「んに、了解」
この状況を分かってるのか分かってないのか、最大の元凶2人はのんきに井戸端会議などをやっている。
走りながらよくやれるものだ…。
さらに西へ向かう一行。
…と、みちるが正面方向に目ざとく何かを発見した。
「ねーねー美凪、あそこに何か建物があるよ?」
それは、横に長く、高さはそれほどでもない、小さな建物だった。
「あれは………閃いちゃいました。ハクオロさん、あの建物に入ってください」
「あの建物…?あれか。しかし、建物の中に入ったら袋のネズミだぞ」
「うるさいぞハクオロ!美凪が言うんだから大丈夫なのだ!!」
耳元でみちるが怒鳴る。
「わ、わかったから髪の毛を引っ張るな。…美凪、信じていいんだな?」
「はい」
三人がその建物に入るのは、後ろを追いかけていたエルルゥにもはっきりと見えた。
「あんな建物、この島にあったんですか…でも、これで逃がしませんよ!覚悟してくださいハクオロさん!」
入り口近くでスピードを落とし、腕まくりをすると、エルルゥは中に入っていった。
建物の中には、ほとんど何も無かった。
稼動しているジュースの自動販売機。
幾つか並べられたベンチ。
右にはドアが1つ。ドアの向こうには事務室らしき部屋がある。
左には男女用のトイレ。
…そして、正面にはプラットホーム。
「…ここは…一体……?」
森から出た平野にひっそりと存在する、質素な建物。
…それは、小さな無人駅であった。
バァン!
大きな音を立てて、事務室のドアが開かれる。
中には机と椅子、それにロッカーがあるだけだった。
おそらくは、ここは駅長室に使う予定なのだろう。
だが、今はまだ簡単な道具があるだけで、ほとんど何も揃ってはいない。
当然、隠れる場所などあるはずもない。
念のためロッカーの中や机の下を探したエルルゥであったが、ハクオロはもちろん
美凪とみちると呼ばれていた2人の少女の姿も無い。
「…ここではない…とすると、あっちですか!?」
今度はトイレを探し始めるエルルゥ。
しかし、男用にも女用にも人影は無い。
っていうか、男用トイレに何のためらいも無く入るか、普通…。
ベンチの下も自販機の裏も探したが、いない。
「ここにもいない…なら、まさか外に?」
急いでプラットホームへ駆け出す。
まだ作られていないのか、この駅には改札口も切符売り場もなかった。
そして、プラットホームも狭いものだった。
プラットホームにもベンチがあったが、人影は無い。
そして、ホームからは線路が一本伸びていた。
ここが終着点なのか、線路の一方はこの駅で切れている。
もう片方は、地平線の向こうまでずっと続いている。
電車が走ってくる気配もないし、付近を見渡しても人影は見えない。
もし線路沿いに逃げているとしても、時間からしてハクオロたちが見えなくなるほど遠くには
逃げられないはずだが…。
そして、エルルゥは1つの結論に達した。
「…しまった!やり過ごされたんですねきっと…!」
ベンチの下でもどこでもいい。
まずどこかに隠れて、自分が駅長室かトイレを探している間にでも入り口からこっそり脱出。
そのまま、逃げてきた道を引き返したのだろう。
この駅にはハクオロたちが隠れられる場所が他に見つからない以上、
そうでもしないとハクオロたちの姿が見えない説明がつかない。
「…まったくもう!そこまでして逃げなくてもいいじゃないですか…。
これは…見つけたら、ただじゃおきませんね…」
聞いているものがいたら戦慄のあまり震えそうな声で呟きながら、エルルゥは入り口から出ると
来た道を引き返していった。
「…行った様だな」
「嵐は静まりました…ちゃんちゃん」
「ぷはあ、苦しかった」
エルルゥが引き返してから5分後。
3人は駅のプラットホームに立っていた。
…はて?駅はエルルゥが隅から隅まで探したはずではなかったか。
今までどこにいたのか?
その答えは、ホームの下にあった。
ホームの下には、大抵、人が隠れられるスペースが空けられてある。
うっかりホームに転落してしまった人が電車から身を守るために隠れるスペースである。
もちろん、ホームから降りないとそんなところは見えない。
「…しかし美凪。よく思いついたなあんな隠れ場所」
「私の父は…駅長をしていましたから。駅のことならピンときちゃいます」
「んに。それに、みちると美凪は毎日のように駅で遊んでいたしね」
「…はい。だから一目であれが駅だとわかっちゃいました」
「それは凄いが…もしエルルゥがホームの下まで降りて探したりしたら、どうするつもりだったんだ?
それに、ここの駅のホームにあんなスペースがあるという保障はなかったんだろ?
この辺りはホームに転落しても、ホームの反対側には何も無いから簡単に避けられるわけだし…」
「……………」
何故黙る、美凪…。
その沈黙にため息を吐きながらも、とりあえず同時に安堵の息も吐くハクオロであった。
「ところで、何故こんなところに線路が…?」
ハクオロが、至極当然の疑問を口にする。
「…送電線が無いです…つまり、これは電車の駅ではないということになると思います」
「…すると?」
「…もしかしたら、これはトロッコの駅なのではないでしょうか」
「トロッコ…というと、人力で動かす、線路の上を走る運搬車みたいなアレか?」
「正解…。では、これを進呈」
そう言って、ハクオロに『進呈』と書かれた封筒を渡す美凪。
もちろん、中身は言うまでもなくアレである。この島では何の役にも立たないのも言うまでも無い。
「この島…結構広いです。道具や資材を運ぶのも、結構大変…ですから、運搬用として
トロッコ用の線路が設置されているのかもしれません。…あくまで予想ですが」
「おお〜、美凪あったまいい〜」
心底尊敬した様子で、みちるが目を輝かす。
「…すると、この線路の先には何かがあるんだな」
「…おそらく」
「ねーねー。じゃあ、行ってみようよ〜」
みちるが美凪の袖を引っ張る。
「…ハクオロさん、よろしいですか?」
よろしいですか、とはもちろん、『線路に沿って歩き、この先に向かってもいいか』
という意味である。
「…うむ、危険が無いのなら面白そうだ。エルルゥには申し訳ないが、もう少し逃げさせてもらおう」
「いいのかハクオロ?後になればなるほど、ひどい目にあわされるかも知れないぞ」
「……………今捕まっても、結局は同じ事だ。はっはっはっ…」
ヤケクソで笑うハクオロ。
もはや彼は人生を諦めていた…。
「…では、れっつごー」
「子供たちは〜夏の線路〜歩く〜」
元気に歌いだしながら歩くみちると、その手を取って一緒に歩く美凪。
その後ろを、1割の冒険への好奇心と9割のいつか訪れる終わりへの恐怖を抱きながらハクオロが続く…。
【エルルゥ、3人を見失い、森へと引き返す】
【ハクオロ、美凪、みちる。無人駅から線路を辿って島の端のほうへ。ハクオロの寿命がちょっとだけ延びるw】
【ハクオロ、お米券を進呈される。もちろん、この島ではなんの意味も無い】
【この線路は運搬用トロッコの線路らしい。線路の先に何があるかは誰にも分からない】
「……心配してついてきてくれたの?」
(ドクン)
突然話しかけられ、光岡はムックルの下でらしくもなく狼狽えた。
「ありがとう……よくわからないけれど、助かったみたい」
「いや、あの……」
が。
「ヴォフ〜」
もちろん、ムックルに対するものであった。
「……? どなたかいらっしゃるのですか」
ユズハは、ムックルの腹の下に居る光岡に形の良い指先を伸ばし……。
「触れるな!!!」
「っ!」
ユズハはびくりと怯えたように指を引っ込めた。
ムックルが低く唸って光岡に敵意を向け、体重を乗せる。ギュゥゥウウ。
「うぐ……重い」
「あ、あの……。すみません。馴れ馴れしく……」
ユズハは耳をシュンと垂らして謝った。
「違う、謝ることではない」
「でも……」
「これには事情がある。けして……貴女を嫌っているわけではない!」
それどころか好いているのだが……鬼だと言ったら警戒されてしまうかもしれないわけで。
「……」
「俺の名は光岡。貴女を守……」
「ヴォフっ」
「ぐはっ」
「……? あ……アルちゃん達の気配……」
「仲間か?」
「はい……。あの、光岡様?」
「さ、さま……?」
「ユズハは行きます。ムックルちゃん、行きましょう」
「ヴォフフ?」
「ええ、いいの……。光岡様は、けして悪い人ではない気がするから……」
ムックルはしぶしぶと腰を上げた。
(ええ子や……)
光岡はしみじみと思った。
ああ、口惜しい。自分が鬼でなければ、手のひとつでも握りたいところだ。
「ご一緒しますか?」
ユズハは遠慮がちに尋ねたが、光岡はきっぱりと否定した。
もちろん一緒には行動したい。
が、ユズハの同行者達は、ユズハのように無垢に鬼の自分を簡単に信用したりしまい。
しかも、こちらの行動が限られてしまう。ここは影ながら見守るのが一番だ。
さきほどのマスク女との一件もあるし。
「では……」
小さく頭を下げるユズハ。
「ああ、ユズハさん。無事で」
そうして、ふたりは別れた。
と思ってるのはユズハだけで、光岡は依然ストーカー中なのだが。
「会話をしてしまった……」
ひとり、感動を噛みしめる光岡。根は純情な男である。
【ユズハ(+ムックル):森。光岡と知り合う。アルルゥ達と合流か?】
【光岡悟:森。ユズハと会話。ストーキング続行】
【二日目の朝〜昼くらい】
「あの男……なんだったのかしら」
不機嫌そうな顔でセリオの料理をガツガツと喰らう香里。
「どうみても鬼のたすきをかけてたってのに、あんないいカモを捕まえない……どころか、守るだなんて……」
ほとんど味もへったくれも関係なく、ただひたすらに飢えを満たすため飯を喰らい、茶を啜る。
「……ん〜……その子の仲間……とか?」
こちらは行儀よく食事を摂っている香奈子が、自分の考えを伝えた。
「いえ、その可能性は低いですね。そもそも鬼と逃げ手が同盟を組むというのはほとんどメリットが考えられませんから。
それに、仮に何らかの協定を結んでいるとしても、コソコソと隠れながら護衛する意味が見当たりません。非常に不可解です」
「……まったく、もう少しだったっていうのに……。あの娘なら鬼にしても問題なさそうだったのにね……」
「……あ」
はたとスプーンを止め、香奈子が何やら怪訝な表情を浮かべる。
「どうなさいましたか?」
「……いや、ひょっとしたらそうかなー……程度なんだけど、これだったら全部説明が付く気がするのよね」
非常に言いにくそうな様子の香奈子。
「なに? 言ってみなさいよ」
「私もお聞かせ願いたいです」
「ん〜……鬼ごっこと言うか、男がコソコソと女の後ろをつけるって言ったら、これしかないんじゃないかな〜……って」
「……それって、まさか……」
言わんとすることを勘付いたのか、表情を歪める香里。
「ストーカー、ってヤツ?」
「さぁて、そろそろ出発するわよ」
既に香里の脳内において先ほどの変態のメモリーはかなり消去されつつある。あんな男にかかずり合っている暇は無い。
……一刻も早く、怨敵美坂栞を発見しなければならないのだから。
「セリオ、近くに何か反応は?」
「はい。……おそらく美坂様が接触されたという一団、それ以外は見当たりません」
「で、これからどうするの?」
香里はマスクを装着し、噴霧器の残量を確認しながら、
「そいつらは放っておくわ。不確定要素が多すぎる。まずは屋台を探しましょう。私たちもそれなりにポイントが溜まってきた。何か役に立つものが買えるかもしれないわ」
と言った。セリオと香奈子もそれに頷く。
「当然、道中に獲物の反応があったら接触、場合によっては狩るわよ。それじゃ、行きましょ!」
先頭に立って歩き始める香里。黙ったままついていく香奈子とセリオ。
3人が3人の思惑を抱えたまま、最凶軍団は移動を開始した。
……不幸な獲物を求めて。
【香里軍団 とりあえず目的地は屋台】
【獲物を発見すればそちらが優先】
【時刻 朝〜昼頃】
「岡田のぱんつはしましまぱんつ〜♪」
ごんっ…!――
突然響いてきた妙ちくりんな歌に反応してか、棚が鈍い音を放つ。…そこに頭を突っ込んでいた岡田が、
驚いた拍子に上げた頭を棚の内側にぶつけた音だ。
「っ…! いきなり何て歌を唄ってんのよっ…!?」
頭にタンコブをこさえて憤然と立ち上がる岡田。振り返った先には、にへら〜っと笑う松本が居た。
「え〜? 岡田、ぱんつ丸見えだったからだよ」
「そーいう時は普通に教える! 妙な歌ウタわない!」
顔を真っ赤にしながら、岡田はスカートをぱたぱたと確かめる。棚を調べるのに夢中で、スカートがめく
れている事に気付いていなかったのだ。
取り敢えず松本の頭にチョップを喰らわせつつ、付近に雅史が居ない事に胸を撫で下ろした。
「…ここもハズレ。何も無かったわ」
不機嫌な声で、岡田は低い声でそう言う。。
――彼女達はスポーツ施設から出た後、市街地の他の建物を渡り歩いて食料を探していた。
根気良く探したお蔭で、吉井、松本、雅史の三人は、各々少しずつではあるが食料を発見している。
…“坊主”続きなのは、岡田だけである。しかも、只坊主であったのなら、まだ良い。上から突然金ダライが
落ちてきたり、巧妙に隠されたネズミ捕りに足を挟まれたり(挟む力が弱められていたとはいえ、痛い物は
痛い)、ハリセントラップで顔面を叩かれたりと、悉く罠に引っ掛かりまくっているのだ。
「ほらー、岡田って日頃の行いが良くないからー」
「何だとコラ」
「歩道橋の階段上がるお婆ちゃんの荷物とか持ってあげたり、道が解らない外人さんに身振り手振りで
一生懸命道順教えてあげたり、落ちてた財布を交番に届けたりしてたじゃない? 岡田って」
「それのどこが良くないのよっ!? ――つーか、どこで見てやがったこの女…!?」
「柄にも無い事するとバチが当たるとゆー事さね。にょははは、岡田顔が赤ぁーい♪ カワイーっ♪」
うめぼしぐりぐりで松本を黙らせると、岡田は調べていた部屋を出て、吉井や雅史の居る部屋へと向かった。
「……こっちは駄目。またハズレよ」
げんなりした声に、吉井と雅史が振り向く。
――二人の手には、食料と水があった。ここで新たに発見したのだろう。
…それを見た岡田の片眉が、ヒクヒクと震える。
「そういう時もあるよ」
「気にしちゃ駄目だよ、岡田?」
「…別に気にしてなんかないわよ」
憮然として応える岡田。その険しい目付きと怒りマークは、誰に向けられている物なのか。
「えっと…――取り敢えず、お昼にしよっか。
見つけた分を集めれば皆で分け合っても三日分位にはなったし」
「さんせ〜♪ お昼にしよ、お昼〜」
岡田のうめぼし攻撃から立ち直った松本がやって来て、岡田に後ろから抱き付きながら明るく賛同した。
「お昼を食べたら街から出よう。岡田さん」
一つ…小さな溜息をつき、岡田は雅史の提案に頷いて見せる。
「………解った。じゃ、お昼タイム」
――とは言ったものの、岡田は正直、余り食欲を感じてはいなかった。
「…岡田、もういいの?」
お菓子の豆大福を一個、口にしたきり、どこかへ行こうとする岡田に、吉井が心配そうな声を掛けて来る。
「――ちょっと考え事」
一言そう応えただけで、岡田は皆から離れて建物の中をとぼとぼと歩いた。
…ツいていない。自分は今、ツいていない。ツキが落ち込んで来ている気がする。多数で行動する時、
ツいていないというその事だけでも、足手纏いになりうる。
(……これは、良くない状況だわ)
岡田は独りごちる。
――今迄の罠は、殆ど実害などないと言える、只のイタズラの範囲内の物だった。だが、この先はどうだろうか?
もし、捕獲用のマジ物トラップに引っ掛かったりしたら…。…それどころか、他の三人を巻き込んだりしたら……!
…吉井と松本は、何があろうと見捨てはしないだろう。自負では無い――あの二人は、こちらのツインテールを
フン捕まえてでも引っ張って行きそうな気がするのだ。雅史も、あの人の好さを考えれば言わずもがな。
先程の松本も……ハズレばかりを引いて落ち込んでいると思い、元気付けようとしてああいう風にからかって
来ていたのだ。
「……ったく、あの女は…。普段天然のくせに、妙な所で鋭かったりするんだから…」
岡田は苦笑する。…まぁ、実際ちょっと落ち込んでいたりしていたのだが。
「まー、クヨクヨしたって意味ないわね。ツキが落ちたら、また呼び込めばいーんだし」
ぺちぺちと顔を叩く。――そして、ある部屋の前で立ち止まった。
「ここは…、まだ調べてないわよね…――」
そっと、部屋の中を覗き込む…――そこは、何故かマイクコードが床一面に落ちている部屋で、
その奥にある机の上には――
岡田は“それ”を見て、ニヤリと笑った。
『っnきゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああーーーーーーっっ!!?』
――という悲鳴に、三人の耳を突いた。
「岡田…!?」
吉井が慌てて立ち上がり、松本もそれに続く。一番早かったのは雅史で、彼は悲鳴が上がった時点で
無言のまま立ちあがり、悲鳴のした方へと駆け出していた。
「岡田さん!?」
「「岡田ぁっ…!」」
悲鳴のした場所に辿り着いた時、その光景を見た三人は、目を点にさせた。
――岡田は、マイクのコードに絡め取られ、逆さになって宙にぶら下がっていた。
両腕にも両脚にもコードが絡み付き、完全に動きを封じられている。
「たーすーけーてぇぇぇ〜…」
もうカンベンして――と、その声と表情で語ってくる岡田に、吉井と松本が吹き出して笑った。
「笑うなーーーっ!!」
「今迄の中で、一番ハデな罠じゃない、岡田?」
「一人SM〜?」
「いーから早く助けろっ…! ――佐藤君、見ないでよっ!?」
「わ、解ってるよ。外で待ってるから…」
逆さになってぶら下がっている為、岡田は今、ぱんつ丸見え状態なのだ。――雅史は部屋の中には入らず、
外で待機。……目を隠しながらも何となく肩が震えているのは、笑いを堪えているらしい…
「はは〜ん、机に置いてある食べ物に誘われた訳ね。――っていうか、こんなの一目見て罠だって気付きなよ」
「悪かったわよっ! えーえー、それはもお見事に引っ掛かったわよっ! だから早く助けろゴルァ!」
「あー、ハイハイ…(プ」
「岡田のぱんつはしましまぱんつ〜♪」
「黙れ小娘!」
【岡田・吉井・松本 雅史 市街地にて】
【岡田が罠に引っ掛かりまくるものの、皆で三日分程の食料を確保】
【昼食後、街から脱出の予定】【正午過ぎくらい】
【岡田 ぱんつ丸見え(w】
朝食を取り終えてからおよそ4時間。
そろそろ一日の半分が経過しようとしている時、ようやく獲物を発見する事が
出来た。殆どランダムに移動していたのでこれは僥倖と云えるだろう。
「はるかさん、少し休憩しません?」
「そうだね。ちょっと疲れた」
女が二人、木の幹に腰をかけている。三井寺月代、河島はるか。両者とも普
段から身体を動かしているものの、体系的な戦闘技術などは一切やっていな
い。参加者全体でも平均程度の脅威だろう。
「――月代か」
第一発見者である蝉丸は三井寺月代と面識があるらしい。しかし、現在の両
者の関係は鬼と逃亡者。加えて蝉丸は光岡なる人間と撃墜数を競っている。以
上の状況から蝉丸は、鬼としての立場を優先させた。
尤も、自ら進んで作戦を立てるつもりはなく、専らこちらの意見に従う形で彼な
りの義理を立てていたらしいのだが。
「どうするつもりだ? 青年」
「まあ待てよおっさん。じっくりと作戦を練ろうじゃないの」
「何にせよ長考しすぎるのも考え物だ。下すべき判断は必要最低限に抑えろ」
「――むむ」
蝉丸のもっともな指摘。思考を切り替え、当該情報に意識を絞る。
獲物までの距離、約10メートル。相手の挙動に油断を誘うような油断は全く見
られない。此方の存在に気付いていないといって良い。
獲物の居る場所は、沢を挟んだ森の入り口のような広場。雑草が生い茂った
更地で、向こうに広がるは一面の野原。手前には鬱蒼とした森。境界線のように
流れる沢によって森と野原は寸断されている。恐らくは逃走経路になるであろう
野原は、参加者の基本体力がモロに出る環境だ。
「つまりは――『下手な考え休むに似たり』、てところかな?」
「む」
「はるかさん、これからどうしますか?」
「鬼の追走を、全力を以ってして適当に逃げる」
「前向きなんだか後ろ向きなんだか、さっぱり良く分かりませんね……あれ?」
「――どしたの?」
「いえ、何か聞こえませんでしたか? 水の跳ねるような」
「いや」
「あれ、確かに……あ、まただ。さっきより大きな音です」
「――お客さんみたいだね。どうやら」
沢の傾斜から顔を出すと、二人は手際よく逃走体勢を確保していた。逃げ手と
して経験するうちに徐々に慣れていったのだろう。
上出来だが、遅すぎる。
「月代。久しぶりだな」
ヌッ。
三井寺月代の前方に蝉丸が生えてきた。
「うわあああっ!! せ、蝉丸!? どうしてこんなところに…って、その襷――
鬼?」
「ああ。ということで月代よ。大人しく捕まって戴こ」
「逃げるよ」
いうや否や猛然とダッシュを開始する河島はるか。三井寺月代が慌ててそれ
に追従する。双方とも模範的な、スピードの出るフォームで走る。その後ろを蝉
丸が追う――ごく自然に相手の進路を誘導しながら。
その視線が一瞬、こちらを向く。合図だ。
沢の傾斜から勢い良く飛び出し、逃げる二人の70度後方――ほとんど右脇
――から刺すように接近する。
「うわわ、なんか一人増えましたよはるかさん!」
「――やばいね」
三個の勢力を頂点にやや歪な正三角形が描かれ、あとはただひたすら力任せ
に追いかけるのみ。ゴリ押し戦法だって立派な作戦だ。脳内に言葉が浮かぶう
ちに、蝉丸がみるみると二人に近づいてゆく。
――ヤバイ。あのおっさん、何か企んでる。つーか明らかに二兎狙ってる。
いかん、このままだとおっさんがまたポイントをあげることになってしまう。
「だあああ! 待てやオイ!!!」
ホントの本気の全力疾走で、なんとかおっさん・二人と等距離までもってくきた。
あとは何とかおっさんを妨害……いやいや、んなことやって逃げられたらただ
のアフォだろう。とにかく今はおっさんを信じて獲物を確保せねばなるまい。条約で
はポイントは二等分すると明文化していたのだから。
「はるかさん……もう限界…」
「んー、実はわたしも」
前者はともかく、河島のほうはどこが限界なのかさっぱり分からない。
が、とにかく最後のひとふんばりだ。
気力と体力を振り絞って腕を振り、脚をあげ――とうとう、河島はるかの背中に
タッチすることが出来た。
出来たのだが。
「やられたー」
1メートルの距離を隔てていた獲物の背中が、いきなりゼロ距離に縮まった。
「んごっ」
判りやすく云うとぶつかった。背中に。
つーか急停止した。河島が。
故に。
顔面を強打した。背中に。
以上。解散。
あ、あたまがこんらんっぽいぞ。や、やば。
「――大丈夫? 那須くんとやら」
「……首が」
軽い鞭打ちになったようだった。ちょっと痛いけど我慢すれば大丈夫だろう。こ
の女――河島はるかと本人から直接言われた――、どこまでやる気があるんだ
ろうか。少なくともあそこでいきなりストップしたらどうなるかくらい考えろっつーに。もう。
「――ところで、髪が白い変なおっさん見なかったか?」
しばし考えていたが、ふいに河島は向こうの茂みを指さした。
「あそこで月代ちゃんと何かやってる。より詳しく言うと、何かヤッてる」
「…………………………………それ以上は聞かないで置こうか」
せっかく塞がりかけた精神的外傷を余計に掘り起こしたくない。
地面に垂れていた血液らしき雫の正体も、時折うっすら聞こえる喘ぎ声も。
知りたくはなかった。
決して。
【はるか 宗一によって撃墜 鬼に】
【宗一 はるかを撃墜 鞭打ち気味】
【月代 蝉丸によって撃墜】
【蝉丸 月代を撃墜。アフターサービス込み】
国崎は森の中で目を覚ました。
「少し横になるだけのつもりだったがな……」
遅い朝食をとった後、満腹感で眠ってしまったらしい。
「そろそろ夕方か──とりあえずメシでも探すか」
そう言って出発しようとした時、メモを片手にうんうんと唸っている少女を見つけた。
国崎がメモを覗いてみると、『お化け作戦』『UFO作戦』『ツチノコ作戦』『ミサイルが落ちてきた作戦』と、
まるで小学生のお遊び計画を思わせる内容が書かれていた。
「……何やってんだ、千紗」
「千紗には人を騙すには向いてないですかねえ…………」
「お料理作戦の次の計画があれじゃあな……
──ただ二人掛りで逃げ手に襲い掛かるのは悪くなかったがな」
そう言うと国崎は突然考えこみ、
そして目をきゅぴーーぃんと光らせた。
「この空の向こうには、翼を持った少女がいる……」
突然の国崎の独り言に千紗がぎょっとする。
「お兄さん電波ですか、電波届いたですか?」
「俺は彼女を探して長い間旅をしてきた……
──そして見つけたマーーイエンジェル!!
カモーン、ウルトリィ」
ぱちんと国崎が指を鳴らした。
国崎が目を覚ました同時刻、森の中で二つの影が疾風の如く舞っていた。
「カルラ、その子をこちらに寄越しなさい!」
一つは木々の間を滑空する白い影、ウルトリィ。
「さいか、怖いお姉ちゃんから私が守って差し上げますわね」
もう一つは大地を疾走する赤い影、カルラ。
カルラに抱きかかえられたしのさいかは、翼をもつ追跡者を見てきゃっきゃと喜んでいる。
(……さすがはギリヤギナ族、森の中はお手の物ですか。しかし──追い着けます!)
ウルトリィは更に飛ぶスピードを速めた。
カルラとウルトリィの追跡劇の同時刻、国崎は夕焼け空を指差した。
「千紗、あれはなんだ!!」
「鳥ですか?飛行機ですか?それともABYSSBOATが落ちてくるですか?」
千紗は期待で目を輝かしている。
すると空からぱたぱたと紋白蝶がやってきて、国崎の指に止まった。
「ちょうちょうさんですか?」
「……っかしいな、聞こえなかったか?
カモーーォン、ウルトリーーーーーィイ」
国崎は蝶を指から払いのけると、今度は大声で叫んだ。
──しかし、
「誰もこないですねえ……」
「もうちょっと待ってなっ!
おーーい、ウルトリーーーイ。楽しい人形劇、始めちゃうぞーーっ」
今度は蝶もやってこない。
千紗の国崎を見る目がお星様からジト目に変わった頃、ついに国崎がキレた。
「こぉおおらウルト。出てこねえと昨夜てめえが女子便所に閉じ込められてわんわん泣き出しやがった事、みんなにばらしてやっからなあああぁ!!!!」
(まずいですわね、今日の風はウルトに吹いている──)
ウルトリィはついにカルラの背を捕らえる寸前に迫った。
ウルトリィがさいかに触ろうと手を伸ばしたそのとき、
『カモーン、ウルトリィ』
森の奥から指を鳴らした音とともにウルトリィを呼ぶ声がした。
(国崎さん!?)
カルラはウルトリィの動揺を見逃さず、すかさず向きを変えタッチをかわした。
『おーーい、ウルトリーーーイ。楽しい人形劇、始めちゃうぞーーっ』
「殿方を待たせては失礼にあたりましてよ、ウルト」
明かに不機嫌そうな顔をしたウルトリィを、カルラは引き離していく。
「五月蝿い!!」
「まあ怖い、とても巫女とは思えませんこと」
そして、
『こぉおおらウルト。出てこねえと昨夜てめえが女子便所に閉じ込められてわんわん泣き出しやがった事、みんなにばらしてやっからなあああぁ!!!!』
その絶叫を聞いたウルトリィは、バランスを崩し木に激突した。
「楽しかったですわ、また遊んで差し上げましてよ。
──今度はトイレに閉じ込められないようになさいな」
「とりさん、ばいばい」
そういい残したカルラとさいかをウルトリィは完全に見失うと、
顔を真っ赤にして不届きな呼び声のほうへ向かった。
国崎は夕日の向こうからウルトリィが飛んでくるのを見つけると、おーいと手を振った。
「遅かったじゃねえか、ウルト」
「にゃあ☆お姉さん飛べるですか?すごいですぅ♪」
千紗の目にお星様が輝きだす。
「国崎さん!!一体全体、なんの用ですかっ!!」
普段は温和を絵にかいたようなウルトリィだが、さすがに声には怒気がこもっている。
そんなウルトリィには意に介さず、国崎はウルトリィに提案を持ちかけた。
「なあウルト。俺と手を組まねえか?」
【ウルトリィ 国崎のせいでカルラとさいかを取り逃がす。怒り心頭】
【国崎 ウルトリィに共闘を持ちかける】
【千紗 ウルトリィを見て目をキラキラさせている】
【カルラ さいかとともにどこへともなく消え去る】
【さいか カルラに抱きかかえられている】
【二日目の夕方 森にて】
全参加者一覧及び直前の行動(
>>564まで)
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
『』でくくられたキャラはショップ屋担当、取材担当、捜索対象担当
レス番は直前行動、無いキャラは前回(
>>520-524)から変動無しです
fils:ティリア・フレイ、サラ・フリート、【エリア・ノース:1】
雫:長瀬祐介、月島瑠璃子、藍原瑞穂、【新城沙織】、【太田香奈子】
>>549-550、【月島拓也:1】
痕:柏木耕一、柏木梓、柏木楓
>>528-529、柏木初音、柳川祐也、日吉かおり、相田響子、小出由美子、阿部貴之、
ダリエリ、【柏木千鶴:10】
TH:藤田浩之、神岸あかり、長岡志保、保科智子、マルチ、来栖川芹香、松原葵、姫川琴音、来栖川綾香、
佐藤雅史
>>551-554、坂下好恵、岡田メグミ
>>551-554、松本リカ
>>551-554、吉井ユカリ
>>551-554、神岸ひかり、
しんじょうさおり、田沢圭子、【宮内レミィ】、【雛山理緒:2】、【セリオ:1】
>>549-550、【矢島】、【垣本】
WA:藤井冬弥、【河島はるか】
>>555-559、澤倉美咲、篠塚弥生、観月マナ
>>536-539、七瀬彰、緒方英二、
【森川由綺:1】、【緒方理奈:2】
こみパ:千堂和樹、高瀬瑞希、牧村南、猪名川由宇、大庭詠美、長谷部彩、芳賀玲子、桜井あさひ、御影すばる
>>535、
立川郁美、九品仏大志、澤田真紀子
>>536-539、風見鈴香、
【塚本千紗:2】
>>560-564、【立川雄蔵】、【縦王子鶴彦】、【横蔵院蔕麿】
同棲:【山田まさき】、【皆瀬まなみ:2】
MOON.:巳間晴香、名倉友里、高槻、少年、A棟巡回員、
【天沢郁未:2】、【名倉由依】、【鹿沼葉子】
>>525-527、【巳間良祐】
ONE:里村茜、川名みさき、上月澪、椎名繭、柚木詩子、深山雪見、氷上シュン、清水なつき、
【折原浩平:4(3)】、【長森瑞佳】、【七瀬留美:1】、【住井護】
>>462-463、【広瀬真希:1】
Kanon:美坂栞、沢渡真琴、川澄舞、天野美汐、
【相沢祐一】、【水瀬名雪:1】、【月宮あゆ:2】、【美坂香里:4(1)】
>>549-550、【倉田佐祐理:1(1)】、【北川潤】、【久瀬:2】
AIR:神尾観鈴、霧島佳乃、遠野美凪
>>541-546、神尾晴子、霧島聖、みちる
>>541-546、橘敬介、柳也
>>525-527、
裏葉
>>525-527、しのさいか
>>560-564、【国崎往人:1】
>>560-564、【神奈】
>>525-527、【しのまいか】
管理:長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)
支援:アレックス・グロリア、篁(Routes)
毎回微妙にマイナーチェンジをしてるので読んでほしいこと&連絡事項↓
参加者はこのリストで確定です。
このリレーは余程の反則(電波で他の参加者を操る、魔法で自分を触れなくする)が無い限り能力使用はOKです。
但し原作外のオリジナル設定は基本的に抜きで。ていうか基本ギャグで済ませましょう。
細かいところに拘るより鬼ごっことしての状況を進める方向で
致命的なミスがない限りは脳内保管しましょう。
NGはできるだけ避けるよう書く話のキャラの前話くらいは読みましょう。
前スレも健在なのでリストをたどれば最終行動はわかる筈なので。
また他のスレのネタは知ってる人はニヤリ、あ、このネタ上手いなーくらいにしておきましょう。
能力に関してグレーゾーンな話を書く際には
『葉鍵鬼ごっこ議論・感想板』 へどうぞ
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ttp://jbbs.shitaraba.com/game/5200/ 後記
全体的に動きが少ない中うたわれキャラに結構動きが
細かいところを気にしてあーだこーだ言うより話をガンガン進めた方がスレ的には良いかと
「うふ。うふふふふふふふ」
少女が、歩いていた。
不気味な笑い声。顔に張り付いた不気味な笑み。
ぼろぼろの服。軽い擦過傷・裂傷だらけの体。
それでも少女は笑っていた。
「ふふふふふふふふふふふふふふふ」
「うふふふ、ふふ、ふふ、ふふふ、ぬふふふ」
ときおり、でれっと相好を崩しては、自分の体を抱きしめたりする。
はっきり言って、恐ろしい。
周囲の空気が変わるくらい、恐ろしい。
現に、
夜の森で悶絶していたハクエンクアも、
狩人御堂も、
貧乏脱出大作戦展開中の理緒も、
出番を心から求めているはずのビルでさえも、
だれも、彼女に近寄ろうとはしなかった。
おそらく、これからも。
「ふふふふふ、ふふ?」
彼女の目が、何かを捉えた。
視線の先。清かに水のせせらぐ音が聞こえる方角。
木々の切れ目から見える、森の中を流れる小川のほとりを歩く、二人の女性の姿。
「hhhhhhhhhhhhhhhhh!」
「見ぃ、つけた。ふふうふふうふふっっふうふふ」
笑いがますますおかしくなる。
不気味を通り越して凄絶ですらある。
「あぁずさ、せんぱぁいぃ〜〜〜」
凄絶をも通り越した場合、なんと表現すべきであろうか。
すぐにでも踊り出、愛の再開を果たそうと、ダッシュの態勢を作る。
そう、これまで、
幾多の罠をかいくぐり、
数多の障害を越えて、
崖を登り丘を越え、街を駆け抜け川を渡り、
島中を探し歩いてきた、その成果が、ついにでるのだ!
が。
「……二人」
そう、梓には連れがいる。
梓とよく似た感じの、年は少し上だろうか。
「胸は無いけど……良いわぁ(はぁと」
「二人まとめて……ぬふふふ」
どこのオヤジか。おまえは。
「……さっきから、何か悪寒を感じるんだ」
「梓も? あたしも。なーんかいやな感じ」
くるくるとあたりを見まわして、
「誰もいないよなぁ」
二人うなずき合う。そして一瞬後、
「あ! あれあれ」
結花が川向こうを指差して言った。
指さされた方向には、小さな小屋が一軒。
小川のほとりの、小さな小屋。
「行ってみる?」
「行ってみよう」
即断即決である。行動派の二人に逡巡は無い。
ひょい、ひょいと岩の上を渡って、対岸に。
「ああ、待って梓先輩ー」
妄想にふけっていたかおりは、二人が対岸にわたっていくのを見て、慌てて後を追おうとする。
「ほんとに小さいわね」
「隠れるには悪くない場所じゃないか?」
うまい具合に、森の木々が姿を隠している。
気を抜いていたら、気づかずに通り過ぎてしまったかもしれない。
「中も見てみましょう」
「そうだな」
そして、二人は中に入っていく。
「ああああ」
焦り、木の根に足を引っ掛けて、出遅れたかおり。
二人が、小屋に入っていくのを、それでもしっかとその目に収めていた。
「まさか……梓先輩、ああいうタイプが好みなんですか?」
「許せない……泥棒猫! 梓先輩は私のものっ!」
恋は盲目。
トリップ状態の人間には、何を言っても通じまい。
どこぞで死闘を繰り広げている、二人と同じように。
【梓・結花、森の中で小屋を発見。中へ】
【かおり、勘違い&徹夜のせいでトリップ中】
【昼前】
「夕菜さん、そっちなんかありますー?」
「ううん、ないよ。でもね、皐月ちゃん。やっぱり人の家の中から物を取っていくのはいけないことだと思うよ?」
「そんなこと言われてもこのゲームってそういうルールですし」
警察に被害届けを出せないような物は盗んでもいいとすら考える皐月と
どこまでも生真面目な夕菜の考えはどこまでも平行線だった。
皐月が説得し夕菜が折れて暫くは夕菜も皐月の言う通り一緒に家捜しをするのだが
少しするとまた同じように自論を展開する。。
実はこの問答既に5回目である。
「あれ? この下に何かあるみたい」
そしておそらくは倉庫であろう所の奥の床にずれて外れる部分を発見した夕菜はそこを外した、すると……
「おや、見つかってしまいましたか」
人が出てきた
「え、ええっ?」
「どしたの? 夕菜さん。あ、人がいる。あなたも鬼から逃げてるの?」
「いえいえ違います湯浅様。私チキナロと申しますです、ハイ。実は……」
ミニゲーム『チキナロを探せ』ルール説明中
「という訳で見事私を発見されました梶原様にはこちらの“屋台で使えるクーポン券”
三万円分が進呈されます。ハイ。どうぞ、お受け取り下さいませ」
そろそろ容量やばくないか?
次スレ立てるまで、SS投下中断したほうがよくないか?
いや、真上のこれ投下した漏れが言うのもなんだが。
チキナロから差し出されるクーポン券、しかし……
「そんな、受け取れないよ」
「どうして!?」
「だってね、皐月ちゃん。知らない人から物を貰っちゃいけないって教わったでしょう? だめだめ、だめだからね」
ズルッ
ずっこける二人。
しかし直後の皐月の言葉が話を進展させる事になった。
「あーあ、ここに宗一がいたら絶対がっついて貰うだろうになー」
「え!? 皐月ちゃん宗ちゃんのこと知ってるの!?」
「え? ええと、う〜ん……」
皐月は悩んだ。夕菜が言ってる宗ちゃんというのがまいだーりん宗一の事であるならば
相手が宗一の事を宗ちゃんと呼ぶ程には親しい間柄という事だ。
そんな相手に「はぐちて」だの「らぶ?」だの一つのカップラーメンだのな関係なのは流石に言わないにしても
友人以上の関係である事を知らせれば修羅場の予感もしないでもない。
……まぁ裏切った親友であれば平然と7500万の時計の事とか話して
修羅場にして「この雰囲気がいいんじゃないですか」とかほざいた挙句に
宗一にらぶりー百裂拳を放ったりするかもしれないが。ゆかりだし。
「クラスに那須宗一って友達は居ますけど……」
結局宗一らぶな皐月は安全策をとり
「なんだ、皐月ちゃん。宗ちゃんのクラスメートだったんだ。そっか、宗ちゃんならきっと貰うよね。よし」
宗ちゃん大好きな夕菜姉さんは宗一がやりそうな行動を選んだ
そして
「ふぅ、一時はどうなることかと思いましたが貰って頂けてよかったです、ハイ。商人は信用第一ですから。
しかし今回はアッサリ見つかってしまいましたね。次はもう少しわかりにくい所に隠れましょう」
チキナロを探せ、次の隠れ場所は中々見つけにくそうだ。
【夕菜 クーポン3万円分ゲット】
【皐月、夕菜 共通の知り合いの存在を認識】
【チキナロ 次はもっと見つけにくい所へ】
ごめん。割り込んだ。
容量、もう限界だろう。
ポキッ…
和樹と晴香はあいかわらず森の中を歩いていた。
さまよっているわけでも迷っているわけでもない。
和樹は枝を折りながら香草を探しに出ていたので、ルートは一つだった。
ポキッ…
ルートを逆を辿りながら、他所を一緒に折りなおすことも忘れない。
これも例の本を製作するのに得た知識らしい。
手際よくそれらを行う和樹と彼に付いていっている自分という構図は
晴香に脳裏にある童話を思い起こさせた。
(さしずめ私達はお菓子の家の兄妹といったところかしら)
くすり、と晴香は笑う。
あの柏木千鶴とかいう女性が魔女。
親に捨てられた兄妹は森の中でお菓子の家を見つける。
それは魔女の罠で、好き放題やってくれるが、最後にはかまどで焼き殺される。
パンでも小石でもなく、兄妹でもないけれど、
そういう結末を想像するのは中々愉快だ。
「着いたよ」
急に視界が開け、和樹が振り向いて言った。
どうやらお菓子の家についたらしい。
空になった鍋とできあいの食器もどき。
到着した彼らを待っていたのはそれだけだった。
待っているはずのエルルゥの姿はない。
「……遅かったみたいだね」
ぽつりと和樹が呟いた。
彼が晴香と遭遇してから、ゆうに一時間は経過している。
鍋のそばの複数の足跡と荒れた周囲をみるに、何かがあったことは確かなようだ。
少なくとも彼女がこの場から去らざるをえないような事態が。
「もう捕まった、とか」
隣の晴香にはわりと余裕がある。
まだ会っていない人物がいないからといってさほど状況が変わるわけではないのだ。
「鬼になっていれば、逆に待っているんじゃないか?」
捕獲した鬼と一緒に待ち伏せするのが、パターンといえばパターン。
彼女はそういうタイプにはみえなかったが、その展開はありえないことではない
「それもそうね。……ということは、逃亡中か、もう鬼になってこちらに向かっているか、だけど」
おいながら、晴香は鍋をのぞく。
中身はきれいさっぱり無くなっていた。
食事ができると思っていたが、なんともアテが外れたようだ。
お菓子の家はからっぽだった。
隣の和樹が手にしている、香草がなんとも痛ましい。
「どちらにしろ、この場にいる必要はないわね。で、どうするの? 合流する?」
「うーん……。いや、やめておこう。時間も経っていることだし」
手の香草を見つめながら、和樹が言った。
意外に鍋に未練があったのかもしれない。
「まあ、妥当ね。じゃあ、はやくここから離れましょ」
「あー、ちょっと待って」
和樹が残りの材料と調理器具をかき集めはじめた。
できるだけ持っていこうというつもりらしい。
「純粋な好奇心できくんだけど……君、料理できる?」
「……がんばって」
【和樹・晴香 現在地 森】
【時間 朝〜昼】
あー、スマソ
やってしまった。
うー、書き込みたいのにもどかしい…