私と目があった事に気付いたのか、その少女ははっと息を飲んで、勢いよく頭を下げる。
「ご、ごめんなさい。え、えっとそれで、お客様の求める人はお決まりでしょうか」
「あ……初音ちゃん、この人は……」
柏木氏が慌てて取り繕おうとするより早く、私は彼の言葉を遮った。
「何か……目録のようなものはない?」
「はい。ただいまお持ちします!」
初音と呼ばれた少女が、パタパタと柏木氏の横をすり抜け、私の前に目録を差し出す。
「ありがとう」
私は彼女に礼を言って、目録をめくった。
その向こうでは柏木氏が、作った無表情の中に、隠しきれない困惑の色を滲ませている。
確かに、自分でも何故そんな事をする気になったのか、わからなかった。
ただ、ふとしたきっかけに対して、気紛れにも似た選択をしたのだと思う。
だから、そこに深い意味はない……筈だ。
さすが目録の中には、ずらりと少女の名前が並んでいた。
無意識の内にひとつの名前を探した自分に気付き、私は思わず苦笑する。
あるはずがない……いや、あってはならない名前なのだから。
その時、私の目にひとつの名前が止まった。
可愛らしい名前と、もうひとつ……彼女の隣の注意書きが、私の気を引いたのだ。
「お決まりでしょうか」
「……ええ」
私は柏木氏に目録を返し、その名前を口にした。