スフィー降臨3HC with まじアン総合スレ#5
ぼくとようくんは、今『HONEYBEE』にいる。
昨日の大雨が、今朝になって突然やんだせいか、お客さんはそれほど多くない。
……というよりは、ぼくたち以外のお客さんがいないんだよね。
「あきら、今日これからどうする?」
「え? えと、うーん、どうしようか」
突然前の席に座るようくんに話しかけられ、ぼくは慌てて曖昧な返事を返す。
あ、しまった。……と思う間もなく、メニューで頭を叩かれた。
「はうっ」
「おーまーえーなー。行きたい場所考えとけって言っただろ」
「……うう、ごめん……」
本当は、ようくんと一緒に行くならどこでもいいんだけど。
それを言っちゃうとようくんが怒るから、言わない。
「はーい、お待ったせー!」
あすかちゃんが両手にお盆を持ってぱたぱたと駆けて来た。
お盆にはそれぞれ、ナポリタンとシーフードスパゲティが……って、あれ?
とんとん、と慣れた様子でテーブルの上にお盆を乗せると、あすかちゃんはそのまま
ようくんの隣の席に陣取った。
「ようすけお兄ちゃん、あたしお昼まだだから、一緒に食べていいでしょ?」
ああ、なるほど。そういうことか。
でも、聞かれたようくんは手をひらひらさせながら、
「駄目」
「えー! なんでよー!」
なんて言った。不満の声をあげるあすかちゃん。
「俺の席が狭くなるだろ?」
「う、ううー」
あすかちゃんが無念そうに立ち上がる。僕は助け舟を出すことにした。
「ねえあすかちゃん、ぼくの隣なら座ってもいいよ」
途端、ぱっ、と表情を輝かせ、僕の隣にものすごい勢いであすかちゃんは移動してきた。
そこで、
「あきらお姉ちゃんがいいって言ってくれたから、あすかもここで食べるもん」
「はいはい、勝手にしろってば」
「食事は、大勢で食べた方が楽しいもんね」
呆れるようくん。喜ぶあすかちゃん。
僕はホットケーキが来るまで、窓の外を眺めるようくんの顔を眺めて待つことにした。
時間が、あっという間に過ぎる。
「はい、お待たせー」
結花さんが、いつもより三段くらい多く重ねたホットケーキの皿を持ってきた。
僕の前にそれを置くと、申し訳なさそうに僕に話しかけてきた。
「ごめんねー。ホントならナポリタンより早くできるはずなんだけど、あすかが、
『ようすけお兄ちゃんのお料理は私が作るの!』って言って、キッチン占領しちゃって」
すると、その多目のホットケーキはそのお詫びなんだ。
「そんなに気を使わなくてもいいのに……」
「いえいえ、大事なお客様ですもの」
そう言いながらおどけて笑う結花さん。いいなあ、ぼくもこんな風になれたらなあ。
と、ようくんが自分の隣の席をぽんぽんと叩いて結花さんに話しかけた。
「結花さんも、一緒に食事どうですか?」
あすかちゃんのときとは正反対の態度に、シーフードスパゲティを口の中に詰め込んだ
表情のまま、ぼくの隣でむくれるあすかちゃん。
けど、結花さんは笑いながら席を離れていく。
「あはは、嬉しい申し出だけど、これでもお店があるから。それより二人とも、
早く食べないと折角の料理が冷めちゃうわよ?」
その結花さんの言葉で、ぼくも気づいた。
ようくんの目の前にあるナポリタンに、全く口がつけられていない。
「さて、それじゃいただきますか」
半分冷めて、ほんの少し固まりかけたナポリタンにフォークを差し込むようくん。
ぼくの方に料理が来るの、待っててくれたんだ。
「うん、いただきます」
ぼくも、大盛り状態のホットケーキにナイフを入れる。
同時にひとくち。
それは、いつものホットケーキより、なんだかもっとずっと、美味しく感じられた。