SSの墓場

このエントリーをはてなブックマークに追加
204名無しさんだよもん:03/01/27 22:33 ID:Fo7NsVPa
 だが、午後から空が明るくなってきた。明日は学校・・・・・・ということは宿題か!?
 宿題は生物と世界史、英文法で出ていた。明日は世界史はないが、後の二つは午後に
ある。午前中だったら、雪かきで・・・・・・とか言って遅刻することもできるだろうが、
午後だと、そういう言い訳も通用しそうもない。
 オレと名雪は、その後一緒に宿題に取り組むことにした。場所は名雪の部屋のおこた
だ。
 ・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。
 静かだ。二階ではコトリとも音がしない。気付くとオレのシャーペンの動きも
止まっている。名雪は……言うまでもない。
 いかん。ここ何日かまともに勉強してないせいか、教科書に向かうのが苦痛だ。しかも
昼メシ後ということもあり、血液が胃に向かっている。意識が混濁してきた。
 結局、名雪を叩き起こし、宿題を片付ける……つもりが、どうでもいい雑談に華を
咲かせてしまった。今更ながら思う。二人で一緒に勉強すれば、半分で終わるというの
は絶対に嘘だ。分担すれば半分だろうが、そこには雑談の時間が考慮されていない。
しかもオレたちの場合、名雪が居眠りするというリスクもある。
 さすがのオレ達もそれに気付き遅まきながら取り掛かる。が、名雪は目を離すと
直ぐに船を漕ぎ始める。額をシャーペンで突っついて起こすものの、その効果は短時間だ。このままじゃ埒があかない。
 眠気覚ましのコーヒーを淹れに階下に下りたとき、秋子さんは台所にいた。覗いてみると、
なにやら大仕事をしていたらしい。生臭い匂いが台所に立ち込めていた。換気扇がフル
稼働している。コンロの上には大きな鍋が小さな蒸気を吹き上げていた。
205名無しさんだよもん:03/01/27 22:34 ID:Fo7NsVPa
「秋子さん、なにか手伝いましょうか?」
「あら、祐一さん。大丈夫ですよ。晩御飯の仕込みはもう終わりましたから、あとは
これを片付けるだけです」
 と言って、厳重に封された黒いビニールのごみ袋を勝手口の前に持っていった。
「なんか変な匂いがしますけど・・・・・・」
「ちょっと食材を腐らせてしまって・・・・・・。ここは寒いから大丈夫だろう、と思って油断
してしまいました。・・・・・・それより宿題は終わりましたか?」
「それが・・・・・・名雪が眠ってしまいそうで・・・・・・それで眠気覚ましにコーヒーでも、と」
「それじゃあ、私が用意しますから、祐一さんは名雪を呼んできてください。一緒にお茶
にしましょう」
「分かりました」
 オレはそう応えて、名雪を呼びにいった。夢の世界に旅立つ寸前だった名雪をなんとか
こちらの世界に呼び戻し、リビングでお茶にした。
 お茶の片づけも秋子さんがやってくれた。オレが手伝いを申し出たが、すげなく
断られた。宿題が残ってるんじゃありませんか、との言葉に頷くしかなかったが、
なんとなく秋子さんの態度が不審に思えた。
(疲れているのかな・・・・・・)
 もう閉じ込められて五日。表面上はいつもと変わらずニコニコしているが、精神的に
参っているのだろうか。残り少ない食材をやりくりしなければならないし、年長者として、
状況に動揺するわけにもいかない。心労も溜まるというものだ。
 結局、宿題が終わったのは夕食の直前だった。
206名無しさんだよもん:03/01/27 22:35 ID:Fo7NsVPa
 その日の夕食はシチューだった。香草をきかして肉と野菜を煮込んである。台所で蒸気を
上げていた鍋の正体はこれだろう。
 口に含むと、香草の複雑な香りと共に、なんともいえない臭みが鼻についた。これは
何の肉だろう。今まで食べた記憶がない。昔、家族で北海道旅行に行ったときに食べた
ジンギスカン(羊肉)とも違う。鉄っぽい味。
 なんだか怪しい。
「これって、何の肉ですか?」
「ヤギ、ですよ」
「でも、肉類は全部食べ尽くしたんじゃ……」
「ええ、でも、冷凍庫の奥に残っていたんです」
 名雪が顔を上げた。
「あれ、私が見たときは冷凍庫には、ホントに何もなかったけど……」
「うーん、見つけにくいところにあったから……」
 名雪の顔にハテナマークが浮かんでいるが、すぐ消えた。何もなかったかのように
パクパクと食べている。オレは、ふと周りを見回した。いつもの位置にぴろがいない。
「そういえばぴろは? 晩メシ、まだあげてなかったと思うんですが」
「さっき、あげちゃいましたよ。どうもお腹が空き過ぎたらしくて。本当は甘やかし
ちゃいけないのだけど」
 と、周りを見回し、小首を傾げた。
「変ねぇ。さっきまでそこにいたのだけど……」
 まぁ、気まぐれなネコのことだ。雪が止んだ嬉しさに外に飛び出したのだろう。
 その後他愛ない会話をし、晩メシはなごやかに終わった。
207名無しさんだよもん:03/01/27 22:35 ID:Fo7NsVPa


 翌日、待望の太陽が顔を出した。雪が塵を綺麗にしてくれたため、空気が透明に感じる。
冷たいには冷たいのだが、それほど不快なものではなかった。精神的な開放感があった
ためかもしれない。
 夜のうちに除雪車が通ったらしく、道路を埋め尽くした雪は端の方に集められていた。
高い壁となっているが、日常生活には問題なさそうだ。悔しいことに学校に行けてしまう。ニュースも公共交通機関、学校の再開を告げていた。

「あ、手伝いますよ」
 秋子さんがごみ袋を出しているのを見てそう申し出た。秋子さんは両手に大きなごみ袋を
持っている。
「台所ですよね?」
と確認して、向かおうとしたが呼び止められた。
「じゃあ、こちらをお願いします」
 手に持っていた袋をオレに手渡すと、ぱたぱたと台所に向かった。オレは、何とはな
しに違和感を感じながらも、外のゴミ回収所に捨てにいった。そこには既に燃えるゴミが
山のように積み上げられている。これじゃあ、ゴミ回収も一回で終わりそうもないなぁ、
などと考えながら、適当なところに積んだ。とりあえず道路にはみ出さなければいい
だろう。
 手ぶらになって戻ってくると、玄関先で何やら黒い袋を抱えた秋子さんとすれ違った。
袋はそれほど大きくはないが、ガムテープで頑丈に封されている。オレが持っていき
ますよ、と言ったもののすげなく断られた。祐一さんは気にせず学校の準備をしてくだ
さい、とのこと。
208名無しさんだよもん:03/01/27 22:36 ID:Fo7NsVPa
 雪に降り込められた日々が終わり、五日ぶりに学校が始まった。結局宿題は完成しな
かった人も多かったが、英文法の偏屈教師は別にして、世界史も生物もうるさく言わ
れることはなかった。家の手伝いでできなかった北川(明らかに言い訳だが)のような
生徒を考慮したためだ。
 翌日からの好天で積もった雪はみるみる溶け、再開三日後には、名雪に言わせる
ところの「いつも通り」に戻った。寒すぎる反動で暖かくなり、バランスがとれるの
だろう。

 こうして日常が再開した。ぴろが行方不明になったことを除いて。
<fin>
209192:03/01/27 22:39 ID:Fo7NsVPa
>193-208
『雪の中』でした。
夏に書き始めて、結局放置してしまったSSです。久々に書いたら
文章力落ちてるし…。

100行くらいのショートショートのはずが、だらだらとした短編になって
しまいました。

一応完成したのですが、「動機」がさっぱり描けず、墓場での公開と
相成りました。
210192:03/01/27 22:40 ID:Fo7NsVPa
三点リーダと・・・・を混在させてますが、お願いだから見逃して……。
211名無しさんだよもん:03/01/27 22:54 ID:x4CBJgN5
>>192
死して屍拾う者なし
南無〜〜

もしかして、南の方に住んでる人かな?
212192:03/01/27 23:18 ID:Fo7NsVPa
>211
一時期仙台に住んでいたんです。気候の描写はそれを元に、
大雪に関しては新潟出身の友人の話を元にしてます。
つららは動物のお医者さんです。雪下ろしはまったくいい加減ですが。

私は東京に住んでます。
213名無しさんだよもん:03/01/28 00:06 ID:5UY0HZVu
オチに対して、前置き部分が冗長すぎるように感じますた。
ダークさを出したかったら、秋子さんがもっとピロをかわいがるところを強調するとか、
とにかく、ピロをもっと表に出せばよかったのではないかと。
214名無しさんだよもん:03/01/28 01:11 ID:EpSjFx/K
とりあえず、お悔やみ申し上げます。
215名無しさんだよもん:03/01/28 18:53 ID:PVoq1pYt
213に全くもって同意。
ぴろを前面に押し出さないと怖さが感じられない。。。
216名無しさんだよもん:03/01/29 08:24 ID:nnXDM2CO
(・ワ・)
217名無しさんだよもん
ぴろが怖くない