1から引き継いだSSを完成させました

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1名無しさんだよもん
初代はDAT落ち。
二代目は私の不手際でまたもやDAT落ち。
誠に勝手ながら、今回はSSを完成させてからこのスレを再建させてもらいました。
SS自体勝手に引き継いだようなものでしたが、期待して下さる方が居ました。
二代目は初めに比べて需要はかなり減ったものの、
四人ぐらい(本当はもっと少ないかもしれないけど)読んで下さる方が居て下さいました。

SSの方は80〜100レスぐらいの少し長い物になってしまいましたが、
できれば目を通してみて何か指摘や意見を下されば嬉しいです。

初代、二代目のスレをウザイと思われた方、すみません。
需要が無いならこれを最後にこのまま落とさせます。

プロローグ、序盤に加筆、修正をしているので1の原文を知りたい方は、
↓を参照にして下さい

【初代スレ〜ONEの教室にいる赤紫の髪の女生徒は〜(>>1-35までが原文です)】
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1034/10347/1034780679.html
【前スレ 修正後(途中でDAT落ち+タイトルミス)】
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1038/10384/1038499227.html
2名無しさんだよもん:02/12/15 10:33 ID:tfyDmNQV
2
3名無しさんだよもん:02/12/15 10:54 ID:zidKzRIZ
スリー
4名無しさんだよもん:02/12/15 10:55 ID:/QwUAUMz
よん
5名無しさんだよもん:02/12/15 10:57 ID:f8/cB8Od
あぁ
6名無しさんだよもん:02/12/15 11:03 ID:nR4l/J4e
俺は読むぞ。まー落としてみ>>1
つーか、初代スレの45さんでつか?
7名無しさんだよもん:02/12/15 11:48 ID:WZUjsL7j
(゚Д゚ )ムハァ http://hkwr.com/
8初代スレ45:02/12/15 18:57 ID:N0YjRhtu
>>6
ありがとうございます。そう言って頂けるとありがたいですね。
そういえば名前については>>1に書いてませんでした。

現在クッキー設定をしていないと書き込みできないようなので、
途中何回もIDが変わると思いますが、そこは了承してください。
では今から終盤まで落とします。
9プロローグ:02/12/15 18:58 ID:N0YjRhtu
俺の妹の名前は葉川雪(はがわ ゆき)
妹、といっても、雪とは血の繋がりがあるわけじゃない。
全ては過去にある。
過去の記憶の糸は、手繰り寄せなくとも勝手にやってくる。
俺の体を呪縛のように付き纏っているから。
あの日の親の声。鳥の鳴き声。風で擦れ合う葉音。
全てがゆっくりと、鮮明に。そして拍車を掛けて脳裡に映し出される。
――狂気を帯びたかのように。
いずれ、この呪縛を取り払わなければならない。過去と渦巻く狂気に清算をつけるのだ。

初めて雪と会った時、あいつは今の雪ではなかった――少なくとも周囲の目はそうだった。
雪は昔から何も変わっていないというのに。
先入観というのもあるかもしれないが、俺の周りの人間は相手に対して接せられる態度や、
気持ちで、その相手に対する印象を容易に変えるような連中ばかりだった。
――最も、人間自体の本質がそうなのかもしれないが。

とにかく、雪はあらゆるものを拒み、そして撥ね退けていた。
今でこそ俺を兄と慕ってくれるが。
10プロローグ:02/12/15 19:00 ID:N0YjRhtu
あれはいつの頃だったろうか。
雪が夜中に起きだして、一人で泣いてることがあった。
俺は決まって、そんな雪を見ると、黙って頭をそっと撫でていた。
それは、俺の「見るに堪えない苦し紛れからの衝動」に駆られていただけなのかもしれない。
今でも雪は芯の強い性格でいようとする。
それだけに、時折見せる弱弱しさがたまらなく辛かった。
家族の中でも特に俺を慕ってくれてるようで、子どもの頃からずっと一緒にいるからよく分かる。
ただそのせいか、今でも俺にべったりなのはどうかと思うが。


最近、雪のクラスに転校生が来たらしい。
名前は、確か七瀬(おそらくこういう字を書くのだろう)とか言ってたな。
友達になれるといいなとか言っていた。俺にとってもその方が良い。
雪を囲む多くの友人。雪の彼氏。
そうなってくれれば、兄のことは次第に忘れていくだろう――まさに俺の理想の展開だ。

俺も同じ学校に通ってるが、なかなかいい雰囲気の学校でよかった。
雪にとっては、こういう雰囲気は馴染みやすいだろう。
後は――後は、俺がけりを付けるだけだ――それで全てがうまくいく。

さて、そろそろ寝るか。
また、朝起きたらいつものパターンだろう……
11プロローグ:02/12/15 19:01 ID:N0YjRhtu
夢。
またあの夢だ。
氷塊の中で見せられるような夢。
怒涛の如く狂気を呼び寄せ、俺の周りで渦巻き、そして支配する。
俺はあの頃、無力だった。無知だった。愚かだった。
そして、それは夢の中で蘇る――俺は夢ではただの傍観者でしかない。
今の俺だからこそ、見つけることの出来る解決策。あの頃を救う方法があった筈だ。
だが、夢の中ではそれも無力だった。
いくら名案が思いつこうと、いくら手を伸ばそうと努力しようと叶わない。
夢の世界で自由なはずのもう一人の俺の体は存在しない。
その世界では俺が自分を支配していなかった。記憶だけがそこに存在していた。

記憶から手は伸びない、声も出ない。当たり前だ。
フィルムの中の映像はもう二度と、顕在化しないのだ。
夢は、見飽きた映像を壊れた映写機のように、何度も再生している。
俺に何をさせようというのだろうか。
手は伸びないというのに、声も発せないというのに。
それとも、俺は自分が気付かない内に狂ってしまったのだろうか。
それなら、それでいい。今の俺にとって狂ったままで死ねた方がどれだけ幸せだろう。
ただ記憶の光と、その光を利用し、同じ内容をいつまでも放映し続ける、
飽くなき支配人が住む映画館の上映会。
そんな世界が終わりを告げてくれる。考えるまでも無い。
あの頃の俺は無力だった。それでいいじゃないか。

自由な現実と一方的な夢の相克。
夢が俺を支配するのはいつだろう。
12第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:02 ID:N0YjRhtu
「朝、か……」
白。
白色の天井。
何の味気も無い、俺の部屋の天井。
たったそれだけのことに気付くのに、どのくらい時間がかかっただろうか。
面白みも無い、真っ白な天井――今の俺に、死を連想させる。
浮遊。漠然。
ひたすら意識が漂漾している。
「うっ……」
俺が起きるのを待っていたかのように、一瞬、置いて頭痛が重く伸し掛かる。
酷く気分が悪い。夢の残滓が俺を苦しめている。
脳が不快を訴えている。最近では馴染みの感覚だ。
昔から寝起きがいいせいもあってか、不快さとは裏腹に、意識はすぐに覚醒していく。
二度寝なんてこの気分では、とてもじゃないがする気にはなれない。
「……ん?」
左腕が重い。動かない。
(……まさか)
背筋に鋭利な氷を突き立てられたような感覚――嫌な予感がする。
俺は周囲に視線を飛ばす……

「すー……すー……」

……必要はなかった。
左腕へ目を落とすと、雪が俺にしがみついて、幸せそうに寝息をたてている。
元凶はこいつだった。
「……俺の精神負担を増やすんじゃない」
思わずため息が出る。嫌なわけじゃないが、ここ数日は毎日のようにこうだ。
しかし、これで予感が確信に変わった。どうやら最悪の事態は免れたようだ。
それは同時に雪に救われた事でもあるわけだが……
13第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:02 ID:N0YjRhtu
(くそ……)
いつもなら、雪に目覚めに効く生活の知恵を手授してやるところだが、
これに免じて、今日はやめにしてやる。
「……んー……ふにゅ」
俺は雪の髪をそっと撫でた。
どういう訳か、雪は頭を撫でられるのが好きらしい。
こうして撫でてやると、くすぐったそうに身をよじらせる。
俺自身もこれが面白くて、ついつい、いつまでもやってしまうのだが。
「そろそろ起こすか……」
俺は壁時計に目を遣った。時間も時間だ。
「おい、起きろ。雪起きろ」
ゆさゆさと体を揺する。
「……んー……?」
「んーじゃない。朝だぞおーきーろー」
「……ふわぁ……おはよぅ……おにぃちゃん……」
やっと起きたみたいだったが、思考は追いついていないだろう。
その証拠に雪の目は眠気まなこそのまんまだった。
「ああ、おはよう。目、覚めたか?」
14第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:03 ID:N0YjRhtu
「うん……ちゃんと起きてるよぅー」
確認を取る。返事はくぐもり声で、意識はまだ覚束ないようだった。
雪はしきりに目蓋をこすり、眠気と奮闘している。
さっきのと併せ、雪のその行動は小動物を想像させて、少し可笑しかった。
こうしてベッドの上で上半身だけ起こして、
向かい合ってる俺も、他人から見ればそれに匹敵するぐらい滑稽だが。
「またお前、こっちに潜り込んできたのか」
「んーだって……いいでしょ?」
「悪くはないけどな……光熱費が浮く。風邪も引きにくい。だが、子供っぽい。自分の年を良く考えろ」
「うー……子どもじゃないもん……寒かったからだもん……」
「夏でも潜り込んできてこなかったか?」
「……暑かったからだもん」
「一緒に寝たら余計暑いだろうが」
「あ、そうだ!クーラー代の節約だよ」
「苦しいな、雪。騙されんぞ、俺は」
なんだか不毛な会話をしている気がする。
「まあいい……さっさと着替えて来い。遅刻するぞ」
「……はーい」
そう言うと雪は、ぱたん。と滑るようにしてベットから抜け出し、自分の部屋へと仕度しに行った。
遅刻はお兄ちゃんしかしないと言わないところが素敵だ。
15第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:03 ID:N0YjRhtu
「おはよう、今日は遅かったわね」
着替えてキッチンに向かうと、コーヒーが放つ独特の香りとヒーターの暖かさがキッチンを包んでいた。
母さんが朝食の準備をしているのだ。
「おはよう、別に……いつもと変わらないと思うけど」
「ふふ……”いつもと”ね」
いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「おはよう、お母さん」
「おはよう、雪」
少し間を置いて、二人は朝の軽い挨拶を交わす。雪も着替え終わって出てきたようだった。
俺のときと違って、母さんの言葉に毒が混ざっていない。
この二人を見ていると、家族ってのは血のつながりだけじゃないと実感できる。
いくら親友の子どもだと言っても、こどもを一人引き取るなんて大変なことだ。
それでも俺の両親は、雪を本当に自分のこどものように見てる。
それはとても凄いことだ、なかなかできたものじゃない。
俺は朝食を口に運びながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
「?おにーちゃん、どうしたの?ボーとして……」
「あ、いや……何でもない」
怪訝な顔つきで、雪が俺を眺めていた。
口に出すのは、恥ずかしいので止めにしよう。
16第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:03 ID:N0YjRhtu
「恥ずかしい」、か。
そういえば、俺は雪を本当の妹として見れているのだろうか?
ご近所に「あなた達って、本当に仲の良いご兄妹ね」と、ゴミ袋片手言われた事がある。
しかし、それは所詮他人の目見た、所謂客観的な意見に過ぎない。
言葉の重みなんて微塵もないだろう。
つまる所、要は俺の中に、どれくらい雪を本当の妹として見れているのだろうか。
という疑問が頭をよぎる。それだけではない。

あの過去も今となっては、心のどこか奥底で喜ばしい事件だと思っているのかもしれない。
実際、雪が高校に通うようになってからその疑問は、数学の関数のように比例して、
日増しに強くなってきていると言ってもいいぐらいだった。
心の中での疑問が強くなるという事はつまり……そういう事かもしれないという事だ。
もしかすると、雪を女として見ているのかもしれない。
それは避けなければならない。

雪にとって俺は唯一の兄という存在であり、逆に俺にとっても唯一の妹という存在だ。
湧き出る感情に困惑する自分。それを必死に抑えようとする自分。
こういう疑問が自分にある、という事自体が腹立たしかった。
俺の雪に対する理性なんて、薄い習字紙ぐらいのものでしか無いのだろうか。
全ての疑問は拭いきれない。俺は懊悩していた。

17第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:04 ID:N0YjRhtu
「・・・にーちゃん」

「お兄ちゃんっ!!」
「……!!」
「?おにーちゃん、どうしたの?さっきからずっとボーとして……」
さっきとよく似た台詞。
雪の声に促されるように、自分の手を見てみると箸が宙で止まったままだった。
食なんて少しも進んじゃいない。
「あ、いや……何でもない」
「おにーちゃん、さっきと同じ台詞。」
呆れたように雪がツッコミを入れる。
「うるさいな、お前も変わらないだろ」
にべも無い口調で俺が返す。
「違うよ、お兄ちゃんと違って私は進歩してるもん」
「俺はなあ、朝からお前とくだらない寸劇を繰り広げる気力は無いんだ」
「う……悪いのはそっちなのに……」
雪は俺から視線を外し、納得がいかないという表情で口を尖らせていた。
「それよりお前、学校はどうしたんだ?」
俺が思い出したように言うと、雪は驚いた表情で自分の口に手を当てこう言った。
「いけない!急がなくっちゃ!」

……陳腐だ。なんてありふれた遅刻のパターンなんだろう。
18第一章 氷が雪に変わる時 :02/12/15 19:08 ID:N0YjRhtu
「最近、学校が楽しくて仕方ないよ」
例の転校生の事だろうか。
雪は無邪気な笑顔を浮かべた。本当に嬉しそうな、屈託の無い笑顔だった。
「お兄ちゃんはどうするの?]
[俺は……遅れていく……」
「やっぱり……」
雪はため息交じりに返した。
しばしば雪には迷惑をかけていると思うのだが、特に今日に限ってはこんな気分で登校する気は起こらなかった。
さっきまで考えていたことを雪が知ったら、どんな顔をするだろう。
もう顔さえ合わしてくれないのかもしれない。
(出来の悪いお兄ちゃんでゴメンな……雪)

区切り

「じゃ、行って来るよ。 お兄ちゃん、みんなにあまり心配かけちゃだめだよ」
余計なお世話だ。と視線で返し、雪を見送った。
母さんもそれに続いて、いってらっしゃいと雪を送った。
少し間を置いて、玄関の方で二三歩靴音。
それからドアが閉まる乾いた音がした後、辺りが静寂に包まれた。
俺が椅子に腰を掛け天井を仰いでいると、母さんが心配してか顔を覗き込んできた。

「雪にはああいってたけど、本当に大丈夫?」
よほど顔色が悪いのだろうか。まるで入院中の病人に向けるような顔だった。
「ああ……昨日はあまり眠れなかったんだ」
頭から適当に出てきた言葉。あまりに適当すぎていつもの俺なら思わず噴きだしていただろう。

「……そう、なら良いのだけれど」
母さんはまだ心配した面持ちで、雪の食器を下げた。
俺も後に続いて少しも手のつけていない食器を下げ、また椅子に腰を掛けた。
しかし、遅刻する度しばしば思うのだが、
母さんは少し息子の出席状況に抗議をした方がいいと思う。
19第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:08 ID:N0YjRhtu
それについては、俺の友人の母親なんて凄いものだった。
無断欠席など以ての外で、遅刻なんてしようものなら不動明王を思わす顔振りで凄んでくるのだという。
どんな顔だ。とツッコミそうになったが、それは失礼に値するし、何せ友人が不毛な奴だったので

「お前の死に水は取ってやろう」と、肩を叩いて故人の心配をしてやった。
もし、俺の母さんがそんな性格だったら……と少し思い巡らしてみる。
          ・

          ・

          ・
……やめよう。今、人間が入ってはいけない領域に入った気がする。
大体、不動明王って何だ。
仏界の救世主にそんな悪性のイメージを植え付けて失礼ではないか。
と、一丁前に信者のようなことを心の中で口走ってみる。

何だか、少し気が楽になったような気がする。
俺は洗面所へ向かった、ふと台所に目をやると、
母さんが手際よく洗い物を片付け、リズムがいい音を辺りに響せていた。
それを見ると思い出したように俺は足を止め、踵を返し玄関へと方向を変えた。
今の表情を自分で見て、また気を重くしたくないからだった。
20第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:10 ID:N0YjRhtu
俺は鞄を手に取り、玄関を開けた。少し重かった。
風がドアに吹き付けているのだ。
外に出た俺は寒さを確かめるように、顔を少し上へ傾け息を吐く。
吐いた息は絵の具で作った青色の水に水色の雫を垂らすように、
皓白の息は蒼色の空へ溶けていった。
空は昼へ向けてますますその青みを帯びていく。

(もう冬か……)

言ってみれば当たり前の事だった。
暦でいうと今は12月。窮冬を迎えていた。
普段は通勤ラッシュで会社員や学生が多いこの通学路も、
さすがにこの時間帯ともなると、人影はまばらだった。
服を着せた犬の散歩をしている主婦。訳の分からないものを載せた乳母車を押す老人。
それらが平和を象徴するものなんだなと思うと、何故だかすごく滑稽なものに見えた。
21第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:11 ID:N0YjRhtu
しばらく足を進め、学校近くの公園へさしかかると、子供の声がこぼれてきた。
俺はそれに釣られるように公園へと続く階段に進路を変えた。
長い階段を上り終え、公園にある目に入ったベンチに身を預けた。

(何をしてるんだ……俺は。)

俺は心の中で自嘲した。馬鹿らしかった。
学校へ向かわず、こんな所で道草を食っている。傍から見れば不良学生に見えてしまうだろう。
あと、煙草なんかがあれば申し分ない。
俺は喫煙するような仕草をした。これで不良学生に見えるだろうか。

ふと、子供達に目をやると、不良学生の真似をしている一人の青年なぞには目もくれず
各々自分達の遊びに耽っていた。
俺は膝に右手の肘を付き、それを眺めた。
誰に気兼ねするわけでも無く、ひたすら目の前のものを追う子供達。

冬の寒さなんて微塵も感じていないだろう。
微笑ましい光景。そんな表現が相応しかった。
俺がその声やこの光景に惹かれて此処に来たのは、やはり過去の事が原因だったのだろうか。
22第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:11 ID:N0YjRhtu
同い年ぐらいの女の子が葉川家に初めて来たのは、俺が丁度六歳の頃だった。
旧姓は何だったか、今はもう忘れてしまったが、名前は「雪」といった。
両親を交通事故で亡くしたらしく、母さんが雪の母親と親友ということもあって、
身寄りのない雪の身元をうちで引き取ることになった。
当時、雪の血族と面識のなかった俺にとって、それは何のことだか分からなかった。
両親からも「あなたに妹が出来る」ぐらいのことしか教えてもらえなかった。

学校や親からは子供はコウノトリが運ぶだの、神様から授かるだの、
お為ごかしに近いことを聞かされていた俺にとっては、それはとても不思議で、懐疑的なものだった。
親に疑問を訴えても、顔を背け、口を噤んだままで何も答えなかった。
何も分からなかった俺だったが、そこから母さんの悲しみは伝わってきた。
母さんが悪魔に騙されて、そいつの子供を連れてくるんだ、と考えていた。
陳腐な言い回しだが、大人にとって、子供はいつも純粋で残酷だ。
大人になればそれを忘れ、真実を知る。

ともかく、俺はその名前を聞いて、雪というより氷みたいだなという印象を持った。
俺の家に初めて来た時の雪は、憎悪とも嫌悪とも取り難い目付きをしていたからだった。
23第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:12 ID:N0YjRhtu
目の前にある物を、何であろうが薙ぎ倒す程の強い眼差し。
人によっては、それがそのまま恐怖の対象に成り得たぐらい強いものだっただろう。
当時の雪にあどけなさなどという、一種のゆとりなんてものは無かった。
それは当時、情緒に関しては何の苦難もなく暮らしてきた俺には想像もつかない感情だった。

悪魔の子供という表現も当時の雪を見るとあながち間違いではなかったかもしれない。
だが知識不足のせいもあってか、不思議と雪に恐怖は感じなかった。
そしてその眼差しは、俺の家に引き取られてからも続いた。
雪はずっと口を噤んだままで、誰とも口をきかなかった。
あの眼差しを保ちつづけ、ひたすら氷であることを努めた。

俺はそれが堪らなくもどかしく思えた。
むしろ家庭の雰囲気を壊した雪に、怒りさえ覚えていたのかもしれない。
俺は度々、雪にちょっかいを出した。
だがそれはもどかしさや、怒りからくるものでは無かった。
それは何だったか今でもよく分からないが、
ただ、そうでもしないと雪が俺の目の前から何の断りも無く消えてしまいそうだった。

俺が今、此処にいる公園に雪を連れ出しても、雪は当たり前のように誰とも口をきこうとしなかった。
初めの内は、近所の女の子達が雪と会話を交わそうと努力はしたのだが、それは結局無駄に終わった。
次第に雪に話し掛けてくる相手も居なくなり、雪はまた孤独になった。
相変わらず雪の瞳には例の感情が燃え滾ったままだった。
俺のちょっかいが始まったのはそれからだった。
24第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:13 ID:N0YjRhtu
「おい、雪!ついに俺はマスターしたぞ」
「……………………」
雪は相変わらずあの瞳で、俺の方に少し視線を向けると
すぐに興味を無くしたように、また遠くの景色に視線を移した。
「なんだ、なんだ。せっかくオレがこれから
凄いものをお前に見せてやるというのにしけた面だな」
聞いているのか、いないのか、雪はまだ遠景を凝視したままだった。
でもまあ、それはいつもの事だったので俺は気にせず続ける事にした。
「よ〜く見てろよ・・・・・・一度しか見せないからな
かなり痛いと思うが、そこは我慢しろよ」
俺は腰を低く落とし、両手を頭から後ろへ流れるように引きこみ
掌で何かを溜めるような姿勢をとった。世に言う「必殺技」というやつだ。
「ハァ〜〜〜ッ……」
数秒ほどの沈黙。体中の全ての意識が掌に集中される。
「ハアッ!!!」
その沈黙を解くように俺は声を張り上げ、溜めたものを再び掌によって解放する。
              ・
              
              ・ 
              
              ・
さっきより長い沈黙。掌は雪の横で構えたままだった。
明らかに雪には効いていなかった。

(うーむ……おかしいな、父さんや母さんや友達(一部)には効いたのだが)

「まっ、まさか俺の技はまだ完全ではないのか!?」

後ずさりし、どさくさ紛れに構えた手を元に戻す。
(しかし……何故効かんのだ?もしやMAXパワーでやらなかった事に問題が??)

「よし!もう一度やるからな!」
25第一章 氷が雪に変わる時:02/12/15 19:14 ID:N0YjRhtu
       ・
       
       ・
       
       ・
……今思うと、かなり雪に対して悪い気がする。
後日、親から雪の両親は交通事故で亡くされたという事実をそこで初めて聞かされた。
だが、俺は雪にちょっかいを出すことをやめなかった。
止める気なんてさらさらなかったし、何よりその状況を俺自身が楽しんでいたからだ。

そして何ヶ月か似たようなことを繰り返している内に、いつの間にか俺の傍らで雪が笑っていた。
そこには、あの頃の俺と同じあどけなさがあった。
いつしか雪の瞳にあった燃え滾る憎悪のような炎は消えていた。
雪は自分を偽装しているにすぎなかったのだ。
屈託の無い無邪気な雪の笑顔――それは氷を雪に変えた笑顔だった。
26第二章 夢:02/12/15 19:16 ID:N0YjRhtu
           ・

            ・
         
            ・
時刻はそろそろ正午といったところだろう。
腹時計が唸り、そういっている。間違いない。
俺の腹は今、正に空腹感にTKOされそうになっていた。
「拙い!判定に持ち込まれても不利だッ!相手の隙を突いて一気にたたみかけるんだ!ジョー!!」
腕を振り回す。……つまらないことはよそう。
無駄に腹が減るだけだ。
思い出すと後悔した。朝食を無理にでも腹に入れておけばよかった。
さっさと学食に行って空腹感を紛らわそう。

俺が歩き出そうとしたその瞬間。何ともつかない違和感があった。
探し物をしにある場所へ行ったが、その探し物を忘れてしまった。
もどかしさが入り混じった、そんな違和感。
周囲に目を配る。が……何も無い。
気のせいか、と、ふと下に目をやるとその違和感はあった。
五歳ぐらいの幼い子供が、これぞ蔑視といわんばかりの表情で俺を唖然と見つめていた。
「見られたか……?」
視線を子供に向けたまま確認を取ると子供は嬉しそうにこくりと頷いた。
27第二章 夢:02/12/15 19:17 ID:N0YjRhtu
(……………………)
これは非常に拙いことである。俺は子供が苦手だ。
嫌いというわけではないが、苦手なのだ。
しかも今の子供に分かりにくい応用ネタ(同世代でも通じるかどうか怪しいが)を聞かれてしまった。
この手のネタは相手の既知のネタや、理解をもらえたりしないと実に寒い。
子供がさっきの俺に持ったイメージ……頭がおかしいお兄ちゃん。白痴。
嫌な単語が頭の中で羅列する。
(ここは釣るか……)
子供に駄菓子を握らせて両者の間に暗黙の交渉を成立させるのだ。
学生服の右ポケットを探る、少しのお金。昼飯代だ。
左ポケットを探る、ボールペンが見つかった。
(これをこいつにくれてやろうか)
少し考えてみたが、五歳の子供とボールペンは似合いそうになかった。
それにこいつが欲しいと言うだろうか。それは考えにくい。
第一、これはクラスの山下のボールペンだった。
28第二章 夢:02/12/15 19:18 ID:N0YjRhtu
後、考えつくのは右ポケットの金だが……それは避けたい。
俺はたたでさえ朝食をほんの少ししか口にしてないのだ。
明日の三面記事を真冬に餓死した青年で飾ってしまうのは絶対に避けたい。
こいつに譲ることができるのはせいぜい1〜10円が限度だ。
俺の空腹感も考慮すると、もはや一刻の猶予も無い。
屈み相手の目線に合わせ交渉に入る。
「おい、少年。これでうまい棒で……」
「いらん」
さり気無く餌を撒こうとしたが関西弁で遮られる。
交渉はいきなり断絶した。
「おっちゃん、そのお金で鳩にやる餌買うんやろ?」
俺は思わず頓狂声をあげそうになったが、それを無理矢理押し込めた。
この子供はとんでもない勘違いをしている。
「その後、[しょくあん]ってとこ行って……」
それどころか結構なことに勝手に話を展開させている。
面白いのでそのまま話を黙って聞こうかと思ったが、空腹がそれを許してくれそうにもない。
「………………」
まだ、日本の経済状況に熱く語ろうとする少年を尻目に、俺は無言で身を翻した。
あの調子だと、あと数十分はあの口を踊らせ続けるだろう。

そろそろ登校しなくてはいけない。
この調子で遅刻していると、冬休みどころか卒業さえあやうくなってくる。
入り口へと続く階段に差し掛かったとき、ふとあることが頭に思い浮かんだ。
29第二章 夢:02/12/15 19:20 ID:N0YjRhtu
そういえばこの公園の裏山と学校は隣接していたのだった。
そうなると、ここから裏山を通して学校へ行った方がベストだ。
しかし、公園と学校を区劃するための金網が張られていたはずだ。
学校でそれを見たときの記憶を探る――高さはどうだったか――問題ない。
有刺鉄線であるかどうか――問題ない。

軽い自問自答を終え、薄暗い林の中へと踏み入れた。
常緑樹が混じっているのだろう。林の中は冬ということを忘れたかのように鬱蒼としていた。
俺はかすかな木漏れ日と、堆積した落ち葉を踏み締めながら、それを実感した。

少し歩を進め、やがて学校と公園とを区劃する金網が見えると、
そこで一旦足を止め、ある程度距離を置いて学校の様子を窺った。
いくら高校の校風が自由奔放といえど、こんな時間に。
しかも金網を登っている姿を見られたら、かなり面倒くさい事になる。

学校の様子はというと、どうやら昼休みは終わったようで、
外で午後の体育を予定しているクラスもないらしく、辺りは寂然としていた。
俺はその情景を数十秒ほど、じっくり味わうと、
金網に片足を掛け、ひょい、と軽く、そこから向こうへと一気に乗り入れた。
ここからは学校だ。まずは第一関門クリアといったところか。
だが、油断は大敵だ。細心の注意を払いながら食堂へ向かわなければならない。

上履きに履き替え、足早に食堂へと向かった。
途中、なるべく上履きの擦れる足音を立てないように、いくつかの教室を横切った。
騒然としているクラス、寂寥感漂うクラス。
そのクラスや教師達の性質を、よく表していた。
運がよかったのか巡回の教師に出くわすことは無かった。
30第二章 夢:02/12/15 19:20 ID:N0YjRhtu
食堂の入り口までくると、公園の金網の前でしたことをもう一度繰り返した。
遅れた昼食をとっている教師がいる可能性がある。
覗き込んで、辺りに軽く視線を走らせた。
後始末に忙しそうな食堂のおばさん達以外に人影は見当たらない。
それを確認すると、俺はまっすぐ購買へ向かった。
「おばちゃん。これでパンとジュース見繕ってくれ」
「はいよ」
俺は右ポケットからあるだけの小銭を出した。
こういう場合、二人には暗黙の了解がある。
物事に深入りしないのが、この購買の魅力でもあるのだ。
「残ってるのがこれだけ。丁度、そのお金で買えるよ」
俺は軽く頷いた。
目の前に菓子パンが2個、ジュースが一本出された。
まあこんな所が妥当だろう。惣菜パンは人気が高い。
残ってないのも無理はなかった。
むなしい昼食になるだろうが、ここは涙をのむしかない。

菓子パンとジュースと掴んで踵を返す。
その時、手に突き刺すような感触があった。
(…………?)
手元に目を落とした瞬間、とんでもないものが目に飛び込んできた。
ジュースのラベル。よく見覚えのあるものだった。
31第二章 夢:02/12/15 19:21 ID:N0YjRhtu
[フリーズ スプライト]

俺はこれをよく知っている……いや、これを知らない奴なんてこの学校には居ないだろう。
名前の通り、このジュースは凍りつくような清涼感が得られる。
事実、俺自身も今、凍り付いている。
その清涼感で人気のあるジュースである、夏季限定で。
というより、このジュースが冬にも販売されているなんて知らなかった。
こんなジュースを冬に飲もうとする奴なんて、よほどの変わり者だ。
しかし、俺は今それを手にしている。他人から見たら俺も変わり者だ。
今更、返品はきかない。
季節によって天使から悪魔へと変わるこのジュースを、どうにかして始末しなければならない。
俺は覚束ない足取りで、屋上への階段を上っていた。
32第二章 夢:02/12/15 19:22 ID:N0YjRhtu
     「立ち入り禁止」

そう書かれた立て札をよそに、ドアノブに手を掛けた。
屋上へ通じるドアを開けると、視界が広がった。
足を踏み入れると、フェンスから吹き抜けた寒気を伴った風が体を吹き付け、自然による手荒い歓迎を受けた。
ここなら誰もこないだろう。今、昼食を取るのに最適の場所だ。
難点を言えば、とてつもなく寒いところだ。
風を遮る場所として給水塔を選び、その袂に腰を下ろした。
33第二章 夢:02/12/15 19:24 ID:N0YjRhtu
不意に空を仰ぐ。
昼も過ぎ、空は優しい微睡を与える天使のように独特の光をたたえていた。
太陽は依然として空から瞰視し、その天使を見守っている。
薄い雲は水面を跳舞する魚のように、現れては消えた。
そして大きな雲は呼吸するかのようにゆっくりと、自由な空間を泳ぐ旅を続けていた。
――今日は風が強い。
俺はそれを眺めながら菓子パンを噛りついた。
「まずい…………」
いや、パン自体は不味くないのだろう。
ひたすら虚しいのだ。それが不味さを醸しだしている。

それに隣には悪性因子が、我が物顔で座っていることだろう。
さっきから目線も合わせていない。さっさと食事を終わらそう。
寒さと不味さが併せ合い、俺に菓子パンを運ぶ手を急がせる。
「……グッ!!」
最悪の事態がふりかかった。菓子パンを喉に詰まらせたのだ。
喉元を叩いて、必死に流そうとするが頑として流れない。
「……………!………!!」
落ち着いて考えてみたが、時折、苦しさが混じってくるだけで何もいい考えは思い付かなかった。
様々な方法を思案してみたが、行き着く結果は同じだった。
隣の缶ジュース。だが、それはあまりにも酷だ。
背に腹は変えられないというが、この場合どちらにしろ変わらない気がする。
喉の苦しみは増すばかりだ。冬にこれを飲むのは想像もつかないことだが、やるしかない。
俺は乱暴にジュースを掴み取り、内容物を流し込んだ。
「…………」
吹雪のような風が体を突き抜けた以外は何も感じなかった。
俺が気を失ったというのに気付いたのは、それから後の事だった。
34第二章 夢:02/12/15 19:26 ID:N0YjRhtu
昏迷とした何処ともつかぬ場所で俺は漂っていた。
「……へ……くん」
ふと、音が聞こえる。今まで聴いた事のない音だった。
比較的大きな雫を垂らしてできた波紋を音で形容したかのような、静かで、響く音だった。
「……いくん」
何も存在しないはずの視界が揺らいだ。音はぼんやりと聞こえた。
そこで初めて、ここは何処なのか。音の正体は何なのか。ということが理解できた。
「……うへいくん?」
俺は深い意識の中を彷徨っていた。音の正体は声だった。
声はさっきよりも近く、そしてはっきりと聴こえた。
俺の意識が深海から浅瀬へと泳いでいくのが分かった。
目覚めが近い。
「……こうへいくん?」
もう一度体が揺すられ、俺は目を覚ました。
(…………教師か!?)
「わっ!」
咄嗟に身構える。教師ならば逃げなければならない。

だが、違った。俺を起こしていたのは女の子だった。
俺の行動によっぽど驚いたのか、彼女は狼狽していた。
「……あ、スマン」
それを見て、俺はばつが悪いように謝る。
俺の声を聞くと、彼女はさらに慌てた様子を見せた。
「あ……え、えと、ごめんなさいっ。驚かせてしまいましたか?」
「あ、いや。大丈夫だ」
相手を落ち着かせるため、言葉一つ一つを区切って答えた。
体は恐ろしく冷えきっていた。
激しい頭痛も襲っている。思考が定まらない。
それにおかしい。確か今は、午後の授業中だったはずだ。
なのに何故、俺は起こされたのだろうか。
もう一度女の子に目を遣ると、疑問はすぐに氷解した。
35第二章 夢:02/12/15 19:28 ID:N0YjRhtu
彼女の体が朱に染まっていた。いや、彼女だけではない。
周りに目を配ると、光が伸びて、屋上、延いてはこの空間全てが朱に彩られ、そして包まれた。
俺の体は給水塔の夕影に覆われて暗くなっていた。

彼女は長い髪を押さえ、高原にそよぐ草花のように静かに風に委ねていた。
空を見上げると、空気はゆっくりと流れていた。夕暮れが一日の終わりを告げている。
強く吹いていた風は穏やかになっていた。
「なあ、今……何時だ?」
こめかみを押さえながら、切り出した。恐らく、放課後だろう。
真面目そうな奴だ。校舎の見回りを教師に頼まれ、屋上に来たと考えるのが妥当な線だろう。
しかし、彼女はこう答えた。
「三時十五分だよ」
少なくとも放課後ではない。それどころか、まだ掃除も終わっていないんじゃ……
(………………)
なかなか話が分かる奴かもしれない。顔を覚えておくのもいいだろう。
俺は初めて彼女を見た。
正確にいうと既に何度か見ているのだが、注意深く眺めたのは今が初めてだった。
(…………)
いくつかの疑問が解けると同時に、考えるべきこともいくつか浮き上がった。
彼女の事。記憶――学校の噂。呼んでいた名前。
彼女の事、まず目に入ったのは彼女の顔。詳しくは瞳だった。
光が、宿っていなかった。何年も光を忘れた闇だけがただ黒く、そこに佇んでいた。
(目が……見えないのか)
その瞬間、記憶が脳裡をかすめた――学校の噂で、三年に目の不自由な生徒がいる。
名前は川名。川名さんだ。
俺自身三年生なので、それは既知の情報だったし、結構有名な噂だった。
居てもおかしくはないだろうと考えていた。
だが、実際に見たこともなかったし、逢いたいと思ってみたことすらもなかった。
36第二章 夢:02/12/15 19:32 ID:N0YjRhtu
(驚いた、こんな奴もいるんだな)
それはただ、夕照の効果で神々しく見えただけかもしれない。
彼女の瞳には光が宿っていなかったが、それ以上のものが彼女にはあるように感じられた。
いや、目が見えないから何だというのだろう。それは何も関係の無い事だ。

少なくとも、俺の瞳には無いものが彼女の瞳にはある。
俺の瞳はずいぶんと濁ってしまった。その濁りが清められることはもう二度とないだろう。
「そうだな、少し小さい雲がででいるが、いい天気だ」
俺は余計なことを考えてしまわないように会話を紡いだ。
「だとしたら、夕焼けだね。夕焼け、きれい?」
「さあな。俺には侘びさびというものがよく解らんからな」
「いい風が吹いてるよ、今日は」
「いや。俺は寒いんだが」
「結構、いじわるだね」
振り向きざま、彼女が苦笑混じりに返す。
手入れを欠かしていないのだろう。長い髪がそれに応じて軽く舞った。
雪が見たら羨ましがるだろう。
(長髪は色々と手入れが大変らしい。雪が長髪をやめたありがちな理由だ)
それぐらい綺麗な、黒く長い髪だった。
「そうか?」俺は苦笑混じりに笑い飛ばしたが、その言葉は心に重く響いた。
以前、雪にも同じような台詞を言われた事があったからだ。
俺は女性に対してそんなに意地悪なのだろうか。
男と女の観点の違いは解っているつもりでいたが、
こう立て続けに言われると、この件について一度よく考えなければならない。
3736と37逆です すみませんでした。:02/12/15 19:34 ID:N0YjRhtu
その次に名前。あれは誰だったのだろうか。
こうへい。確かに最後、そう聴こえた。
ほぼ間違いなくここの生徒であることは確かだ。どんな文字を書くのだろうか。
宏平、康平……浮かんだ文字が多すぎた。
第一、ありふれた名前だ。屋上によく来る奴なのだろうか。
記憶を探ってみたが、そんな男子は知らなかった。
そして、彼女はここでその彼を待っていた……?
「風が、穏やかだね」
彼女の言葉が俺の思考を遮った。まあ、いいか。俺には関係のない事だ。
無駄な詮索は好きでは無い。

彼女はゆっくりと振り返り、その体を夕陽に向け、微笑みかけていた。
夕風と同じ、穏やかな笑顔だった。
何に微笑んでいるのかは俺には分からなかったが、彼女の笑顔を見ていると、こう感じた。
38仕切り直しでもう一度 :02/12/15 19:37 ID:N0YjRhtu
(驚いた、こんな奴もいるんだな)
それはただ、夕照の効果で神々しく見えただけかもしれない。
彼女の瞳には光が宿っていなかったが、それ以上のものが彼女にはあるように感じられた。
いや、目が見えないから何だというのだろう。それは何も関係の無い事だ。

少なくとも、俺の瞳には無いものが彼女の瞳にはある。
俺の瞳はずいぶんと濁ってしまった。その濁りが清められることはもう二度とないだろう。
「そうだな、少し小さい雲がででいるが、いい天気だ」
俺は余計なことを考えてしまわないように会話を紡いだ。
「だとしたら、夕焼けだね。夕焼け、きれい?」
「さあな。俺には侘びさびというものがよく解らんからな」
「いい風が吹いてるよ、今日は」
「いや。俺は寒いんだが」
「結構、いじわるだね」
振り向きざま、彼女が苦笑混じりに返す。
手入れを欠かしていないのだろう。長い髪がそれに応じて軽く舞った。
雪が見たら羨ましがるだろう。
(長髪は色々と手入れが大変らしい。雪が長髪をやめたありがちな理由だ)
それぐらい綺麗な、黒く長い髪だった。
「そうか?」俺は苦笑混じりに笑い飛ばしたが、その言葉は心に重く響いた。
以前、雪にも同じような台詞を言われた事があったからだ。
俺は女性に対してそんなに意地悪なのだろうか。
男と女の観点の違いは解っているつもりでいたが、
こう立て続けに言われると、この件について一度よく考えなければならない。
39第二章 夢:02/12/15 19:37 ID:N0YjRhtu
「ね、ここで何してたの?」
(う…………)
いずれ、この質問は避けられないものだと思っていたが、会話で繋いできた。
しかしどうやら限界がきたらしい。苦肉の策だが、これを敢行するしかない。
「ん。いかんな、そろそろ校舎を見回なければ」
声を低く、適当な教師を真似てみる。
「声が違うよ」
「む、いかん。そろそろフライトが……」
何もない手首に目を落とす。
「学校の屋上に社長さんはいないよ」

彼女は軽く顎に手を当て、笑顔で俺の行動を見透かしているようだった。
むしろ無駄に俺が恥ずかしいだけだった。しかし、まだ手はある。
「そっちは何してたんだ?」
「え……?」
表情が困惑の色を見せた。今がチャンスだ。俺は自分のゴミを掴み、素早く身を翻した。
相手の声を後ろに、屋上の出口まで突っ走った。
(悪いな、川名さん)
別に屋上でサボっていたのを気付かれるのを避けたわけではない。
彼女も同じ穴のムジナなのだ。
それよりも、あの調子でいくと俺の名前を訊かれるのは、ほぼ間違いなかった。
「葉川」なんて名前はそうそうあるもんじゃない。
俺の名前を話すと、彼女の友人関係に漏れてしまう可能性がある。
そうなると、いずれ必然的に、雪にも迷惑がかかってしまうだろう。
確信は持てないが、危険はできるだけ少ない方が良い。
出口のドアを開け、掃除中の生徒が視界から消えた時を見計らい、一気に階段を駆け下りた。
ほっと胸を撫で下ろし、階段近くのゴミ箱に空き缶をビニール袋をそれぞれ捨てていると、
屋上へ向かう一つの人影が目に入った。どうやら、逃げて正解だったようだ。
40第二章 夢:02/12/15 19:38 ID:N0YjRhtu
人波と喧騒を抜け、俺は体育館倉庫に居た。
下校までの時間を稼ぐためだ。もちろん、真正面から入ったわけではない。
侵入方法なんていくらでもある。こうした清掃中や休み時間だからこそ盲点を突くことが出来る。
返って侵入はし易い。俺はなるべく埃のついていない壁を選び、もたれかかった。

耳を澄ますと、放課後に思いを馳せた女子が今後の予定について話し合っているのが聴こえた。
声の弾み具合で、どれだけ嬉しいのかが分かる。
腕を組み、錯綜する意識を集中させた。俺は時にこうやって心身の安らぎを得る。
何故だかこうすると、意識を分散させている時よりも落ち着く。
俺はひとつ、ひとつ。品定めするようにゆっくりと意識を集めながら時が過ぎるのを静かに待った。
時折、余計な言葉が意識に混じってくる――駄目だ、今は体を休めなければ。
俺はそれを慎重に避けて通り、意識に全てを委ねた。

意識から解放されたのか、それとも感覚が周りの変化に自発的に気付いたのか。
目を開くと、辺りが悄然としていた。
こんな所に居る必要はもう無い。俺は足早に体育館倉庫を後にした。
中庭に出ると、空が夕闇に覆い被さろうとしていた。
体操服を着た部活動に励む生徒がちらほら見える以外は人影は見なかった。
校門をくぐると、そこは寂寥の波にさらわれていた。
後ろを振り向いても、聞こえるのは僅かな声とかすかな外灯の光が道に漏れているだけだった。

車幅灯が目の前を横切っていく。信号機が赤から青へ、
俺はぼんやりとそれを眺めながら帰路へついた。
41第二章 夢:02/12/15 19:39 ID:N0YjRhtu
「ただいま……」
玄関を通り、リビングのドアを開けると、まずテレビの音が耳に入ってきた。
中は少し薄暗く、テレビから発せられる僅かな光源だけがその空間にぼんやりと影が映していた。

その影は薄闇に慣れた俺の眼によって、少しずつはっきりとした姿を形成し、雪を映し出した。
手にはコーヒーカップと受け皿を持ち、テレビから少し距離を置いた所で、
立ったままニュースを眺めている。
「目が悪くなるぞ……」

「あ、そうだね。今、明かり点けるよ」
俺の声に気付き、雪がライトを点ける。光が広がる。
雪は眩しそうに、目蓋の上に手をかざし、影を作っていた。
コーヒーカップと受け皿は食卓の上に置かれていた。
「お帰りなさ……」
俺の顔に視線を移すなり、雪は表情を豹変させた。
「わっ、お兄ちゃん。だっ、大丈夫?」
「ん?」
「顔が……真っ白だよ」
雪はコーヒーカップと受け皿を食卓の上に置いたままで、あわてて俺の側に駆け寄ってきた。
「それに、手が冷たい……」
手の上に雪の手が乗せられた――小さくて暖かかった。
「お兄ちゃん、これ飲んで」
目の前にコーヒーカップが差し出された。俺は軽く首を振って断った。
すると雪はこう言った。
「大丈夫、温かいし、まだ口をつけてないから安心だよ。私の保証付き」
俺はこう返した。「俺はコーヒーより、味噌汁派だ」
42第二章 夢:02/12/15 19:42 ID:N0YjRhtu
頭をぽかりと殴られた。
「馬鹿っ。風邪引いたらどうすんの。そんなこと言ってられないよ、いいから飲んで」
雪は肩を怒らせて言葉を浴びせた。俺は黙って従う事にした。
こうなったら雪には勝てない。
コーヒーを手に取る。温かさがカップから手へと伝わり、強張った手が弛緩していくのが分かった。
「毛布を取ってくるよ、あとお風呂も洗って沸かしておくね。温度は42℃で良かった?」
俺は頷いた。雪はそれを確認すると、
ぱたぱたとせわしそうに足音を立てて二階へと早足で向かった。

雪はお節介焼きというより――ある種の健康マニアだった。
一時期の青汁にハマっていた時なんかは大変だった。
キッチンの戸棚には青汁がまるでひしめきあうように詰められ、
朝の食卓には必ず青汁が並び、少なからず俺の食欲と朝のやる気が削いだ。
爺臭い、婆臭い、というより、雪の体の中には葉緑体が居て、光合成しているのではないか。
と思わせるぐらい、青汁を摂取するよう心がけているようだった。

(あいつと結婚する奴は絶対、長生きするな……)
おもむろにカップを口元に近づけた。
湯気に誘われて、コーヒーの香ばしいかおりが鼻腔をくすぐった。
雪は物の加減というか、調節具合が最高に上手い。
料理においても、調味料の加減は抜群だし、風呂は人の好みの温度に容易に合わせることが出来る。
コーヒーや、煎茶の温度はもちろん。味の濃さも指定した通りに淹れてくれる。
前にその事について雪を褒めたのだが、「そんなこと褒められても、全然嬉しくないよ!」、と
顔を少し赤らめて笑い飛ばされた。個人的に天性に恵まれた凄い才能だと思うのだが。
俺自身、コーヒーどちらかというと嫌いな方なのだが、それでも何の抵抗も無く飲めるぐらいのものだった。
インスタントのくせに。そこが雪と同じで少し生意気な部分でもあった。
43第二章 夢:02/12/15 19:42 ID:N0YjRhtu
コーヒーを啜った。温度は丁度いい。味も……味……?味は?
「苦っ!!!!!」
味はとてつもなく苦かった。
思わず掻き毟りたくなるような激しい不快感が喉を襲う。急いで流し台へ。
蛇口を捻り、水で口を濯いだ。
何だろう。この味は。ただ苦いだけではない。
後に残るものが凄いのだ。
例えてみれば苦味が来たあとに、喉に爆弾が投下されたようなものだった。
もはやこれは飲み物ではない。細胞を破壊する科学兵器だ。
「凄い声がしたけど……だ、大丈夫?」
雪が手に毛布を抱えたまま、姿を見せた。
「お、おのれ雪……おぬし、謀ったな」
咽びながら、雪の姿を視認すると死ぬ寸前の戦国武将の如く、激しい眼光で睨みつけた。
いつものお返しなのだろう。俺はいつも雪に何らかの悪戯をする。
「……?」
しかし、返ってきたのは雪の首を傾げた顔だけだった。
おかしい。ネタのお約束なら、本来ここでざまあみろ、などの笑いを含んだ返しが入るはずだ。
それとも、雪は役者になりきっているのだろうか。
しかしそれならそれで、そういう雰囲気を少なからず漂わせるはずだ。でも雪にはそれがない。
「……どういうことだ」
思った言葉をそのまま呟いた。雪の表情は変わらない。
その刹那、記憶が脳裡に流れ込んできた。
44第二章 夢:02/12/15 19:43 ID:N0YjRhtu
このコーヒーが苦い理由。全ては俺の仕業だった。
友人宅からくすねてきたイモリの尻尾や高麗人参のすり身と、
薬用養○酒(少量)を混ぜたものをコーヒーボトルの底の方に忍ばせておいたのだ。
こういう悪戯は実に楽しい。雪の反応を見るのが面白いのだ。
当のリアクションを見えなかったとしても、雪の後日談で十分楽しむ事が出来る。

雪が淹れるコーヒーの濃さは大体予測がついていた。
丁度数回入れたときにこの罠が作動するよう仕掛けた。
量を確かめた。途中、味に支障が出るかどうかも確かめた。
――計画は綿密だった。
が、俺の手によって綻びがでた。正に因果応報とはこの事か。

(随分、前のことだったから、すっかり忘れていた)
雪は相変わらず首を傾げたまま、俺を見ている。
疑心を持たれる前に切り出さねば――そう思った。
「いや……ちょっと、時代劇の一説を言ってみただけだ。気にするな」
「思いっきり不自然だよ。気にするよ」
「時に人はそういう衝動に駆られる」
「言葉が不自然だよ」
雪に悟られぬよう、コーヒーを啜った。
「安心しろ。コーヒーを飲んで体が少しずつ暖かくなってきている。
それにつられてテンションも高くなるもんだ」
適当に思い浮かんだ言葉を繋いだ。
「手が震えてるよ」
「マリファナの副作用だ」
そう言うと、雪はくすっと微笑して俺の体に毛布を被せた。
どうやら冗談と理解したらしい。
「じゃ、お風呂を沸かしにいってくるよ」
そう言うと、雪は小走りで浴室へと向かった。
雪が俺の前から立ち去ったということを確認すると、ひとしきり流し台でむせいだ。
45第二章 夢:02/12/15 19:44 ID:N0YjRhtu
「お風呂が沸いたよ」
しばらくして風呂場から曇った雪の声が聞こえた。
その声に促され、脱衣所へと足を運んだ。
脱衣所には俺の着替えが用意されており、雪の姿はなかった。
鏡で自分の顔を
風呂場に入ると前が見えないほどの湯気で包まれていた。
洗面器のお湯で体を濯ぎ、垢すりで擦った。
今日の事を全て洗い流すかのように、髪も念入りにぐしゃぐしゃと濯いだ。
そして湯船につかると、視界がぼやけ、しばらくの間何も考えられなくなった。

さっぱりとして、俺の部屋のドアノブを廻していると、下のほうで足音が聞こえた。
おそらく雪が風呂に入るのだろう。
バタンとドアを閉めた。俺が今日聞いた最後の音だ。
そのままベットに倒れこむと、吸い取り紙が水を吸うように、そのまま意識を失った。
46第二章 夢:02/12/15 19:49 ID:N0YjRhtu
夢。
夢はナイフで脅すように恐怖をちらつかせながら歩いてくる。
ゆっくりと、ゆっくりと。俺の中で重ねられる恐怖を確かめながら。
何も出来ない俺は、その恐怖から逃げようとする。
何も出来ないのに?
逃げられない、何も出来ないから。
何もない暗闇から鎖が伸びる。具体化して手足に絡みつき、足枷となる。
俺の思考に合わせているのだろうか。それが順を追って分かる。
人間の足枷ならまだいい方だ。これはきっと人外の足枷なのだ。
動けない。鎖はかちゃりともいわない。

ひたすら一方的。無力。
俺は助けを求める。懇願する。
自分の声が聞こえる。でも心の中だ。発音されない。
泣きたい。涙が出ない。
理由は解っている。
これは「束縛」などという、甘い存在ではないからだ。

青く澄み切った空。
ゆっくりと流れる風。
孤独な自分。
その存在だけ仲間外れ。
47第三章 記憶:02/12/15 19:55 ID:N0YjRhtu
ガラス越しに窓の外を見る。酷い雨が降っていた。
溟濠とした雲の隙間からは大量の水が流れ込み、激しく地面を叩きつけていた。
恵みを与えるはずの雨が小さな生物に死を与えていた。
(凄い雨だな……)
俺は起きていた――いつもの頭痛を抱えながら。
後ろを振り向くと雪が立っていた。
雨の音のせいだろうか。部屋に入ってきたことに気付かなかった。
暗くてよく分からないが、窓の外を心配そうに眺めているように見えた。

「……休みにならないかな」
雪はぽつりと呟いた。
「何だ?お兄ちゃんのサボり癖が移っちまったか?」
「もうそろそろテストだし、ね。勉強したいよ」
雪は控えめな口調で言う。
「いいか?俺の癖が移ってでもみろ。たちまち馬鹿になってしまうぞ」
「お兄ちゃんは勉強できる方だよ」
「勉強ができる奴が決して頭が切れるってわけじゃないだろ。俺は馬鹿だよ」
「そうなの?」
「そうだ。実は言うと、頭が切れる、切れないはさほど問題じゃない。
世の中に必要なのは、お前のような努力タイプの人間なんだ」
雪の表情はまだどんよりとしていた。どうしたというのだろう。
俺は続けた。
48第三章 記憶:02/12/15 19:56 ID:N0YjRhtu
「頭の切れる奴は必ずどこかで誰かを欺こうとするんだ」
「お兄ちゃん。何かの本読みすぎだよ」
雪の表情が明るくなった。
「あたしって……魅力ないかな」
「は?」
顔を俯け、雪が胸に手を当てて小さく呟いた。
「魅力って魅力的の魅力だよな?」
雪のあまりに脈絡のないその言葉に俺は思わず訊きかえした。
「ないかな?」
雪はそれだけ言った。
「う〜ん……そうだな、よく見ると胸も結構でかいしな。容姿も悪くない。だが、地味だ」
地味という言葉だけ強く発音した。
「そう……そっか。ありがとう」
雪は笑った。余計なことも付け加えたつもりだったのだがいつもの反応が無い。
いつもならここでツンとした表情で怒るのだが。
何はともあれ、こういう質問をするということは雪にも彼氏候補が出来たのだろう。
喜ばしい事だ。
この時期に恋に憂うということはありがちなことだ。
暗い表情もそのせいだろう。
俺たちは長い間側に居すぎたのだ。そろそろ離れる時が近づいているのだろう。

「お兄ちゃん、久しぶりに一緒に学校に行こうよ」
久しぶり……そうか、最近遅刻続きで雪と一緒に登校したことが無かった。
「いや、俺は遅刻続きだからな。今日は早く行ってみるよ」
「そう……」
雪はがっくりと肩を落とす。
俺はすれ違いざまに雪の髪をぽんぽん、と叩いた。
「なんせ、一緒に行くとお前を遅刻させてしまいそうだしな」
そう言うと俺は部屋を後にした。
49第三章 記憶:02/12/15 19:57 ID:N0YjRhtu
「あら、早いのね」
リビングに向かうと母さんが洗濯物を畳んでいた。
俺はその中から自分の物だけ(といっても俺の分しかなかったが)を掴み、着替えた。
「ああ。流石にもう遅刻するわけにはいかないからな」
「まあ……極端なのね」
微笑んでいる。母さんには何も反論できない。
俺は洗面所で身嗜みを整え、学校へと向かった。
50第三章 記憶:02/12/15 19:58 ID:N0YjRhtu
学校。クラスに入るなり声を掛けられた。
「ようっ。葉川。今日は社長出勤じゃないのか?」
「うるさい、俺は学校が好きなんだ」
前日、遅刻や欠席をした場合、こうしたやり取りが待っている。
時間も過ぎ、ぽつぽつとクラスメイトが登校してくる。
適当に雑談を交わし、授業に入った。

放課後。まだ雨は止まなかった。
雨は朝よりその勢いを増し、辺りは一定の音と水で溢れ返っている。
俺は雨の中を走っていた。
(くそっ、あんなぼろい傘使うんじゃなかった)
朝、玄関で適当に選んだ傘は、放課後になると頑として開かなくなってしまった。
それでも無理矢理に開くと、傘は自分が何であるのかを忘れ、ありえない音を立てて壊れた。
今は燃えないゴミ箱の中だ。
51第三章 記憶:02/12/15 19:59 ID:N0YjRhtu
気休めにしかならないが、目に雨が入らないように矢のような水を腕で防ぐ。
傘が無いとなると、雨の日は視界が限られてくる。
うっすらと視界に何かが掠める――人だ。

傘を持ってゆっくりと雨の中を歩いている。
うちの女子の冬服を着ていることから、女の人だと分かる。
俺は少し道を逸れ、そのまま横切った。
顔がちらりと見えたが、知らないやつだったのでその時は、特に気にはかけなかった。

しばらくそのまま走っていると、何かが頭に引っ掛かった。
さっきの女性の事だ。あれは――雪ではないのか?
いや、それはありえない。俺は雪を20メートル離れていても、その姿を視認できる。
後ろ姿であってもだ。視力には自信がある。
後ろを振り返る。あるのは轟々と音をたてる雨だけ。

それは普段なら見間違い、ということで済まされる事だった。
だが、これは知っている。この違和感を俺は見ているからだ。
そのことが頭に引っ掛かっていた。
52第三章 記憶:02/12/15 19:59 ID:N0YjRhtu
家。
シャワーの蛇口を捻る。湯気と温水が一緒くたになって流れてきた。
俺がさっき抱いた感情はよく知っている。
母さんが体験した違和感だった。

最近のことだった。
母さんが雪と家で正面衝突したのだ。
それも母さんから無意識的にぶつかるかのように。
その後の母さんの台詞「あ、あら雪。そこに居たの」で
「母さん、もう耄碌し始めたのか」と俺が笑ってその場は何事も無く収まった。
他愛の無い、家庭の一場面だ。
だが、俺にも起こったとなると、どうやら真剣に考えなければならないだろう。

あの時の母さんの表情をもう一度、脳裡に思い浮かべてみると、本当に無意識だった。
まるで道の小石を足蹴にするかのように。
あたかも初めから、そこに存在しなかったもののように……

存在しない……火を見るより非現実的で馬鹿馬鹿しいことだった。
偶然の重なり、又はほんの些細な事かもしれない。
それにしては、あまりにも何かが引っ掛かりすぎる。
世の中には原因と結果がある。
雪……いや、今の俺たちに起こっている現象はなんだろうか。
最近、自分の身の回りに起こったことを洗いざらい脳裡に再現する。

最近の出来事――テスト前ということを学校で知らされた。
俺は毎日同じ夢を見るようになった。
母さんが無意識に雪とぶつかった。俺が今、同じ感覚に遭遇した……
あまり収穫は無かった。
だが、これらからある一つのことが考えられた。
53第三章 記憶:02/12/15 20:00 ID:N0YjRhtu
それは母さんが雪とぶつかった時のことだった。
あの時の母さんの無意識は一時的なものだったのだろうか。
たまに会合する相手などならまだしも、いつも顔を見合わせている相手だ。
もしも、一瞬足りとも、人の記憶から存在しなくなる。などという馬鹿げたことがあるのなら、
それは断続的なものであるのではないか。ということだ。

もう一度。今度は俺が見た範囲で、母さんと雪のやり取りに重点をおいて思い出す。
昨日の朝食時に雪と母さんはキッチンで会っている。
その時の母さんに無意識のタイムラグがあったかどうか?
――あった。
朝、二人が挨拶を交わす時の少しの間。克明に覚えていた。
背中に悪寒が走る――俺はシャワーの水圧を強めた。
54第三章 記憶:02/12/15 20:01 ID:N0YjRhtu
これだけでは確信を得られない。起きたばかりだから少しの間ぼうっとしていた、ということも有り得る。
俺は昨日の夜、母さんと会ってない。
これでは確かめようが無い。なら今日の朝はどうか。
俺は雪より早く家を出た。

雪と母さんの接点は見ていない。しかし、合点がいかない部分がある。
俺が今日の朝、着替えを取った洗濯物の中にいつも在るはずのものがなかったのだ。
それは雪の洗濯物だ。

雪は家事はおおよそ手伝っているものの、洗濯は殆ど母さんに任せっきりだった。
しかし、そうだとしたら、母さんは本来なら存在しないはずの雪の洗濯物を不信に思い、
捨てるなどの何らかの処理を施すはずだ。
だが、朝のあの状況はとても捨てた後だとは思えない。
そういう事があったなら、知らない大量の洗濯物のことについて少なからず俺に訊くはずだ。

雪、雪は自分の身起こっていることに気付いているのか……?
雪は母さんや俺に感づかれないように、全部自分の洗濯物を部屋に取り込んでいるのか?


そして――夢。俺の奇妙な夢は関係あるのだろうか。
最近見続ける同じ内容の夢。
母さんと雪のあの出来事と、俺が夢を見始めた時期は奇しくも一致している。
何故だかは分からない。だが、答えを探すことはできる。
方法は簡単だ。こちらから探しに行けばいい。

着換えて自分の部屋へと入ると、俺は意識的に睡眠を取った。
55第三章 記憶:02/12/15 20:02 ID:N0YjRhtu
俺が見る夢、それは記憶の夢だ。
セピア色に染まった記憶ではなく、現実のように鮮明な記憶。
一人の子供が公園で遊んでいる。俺だ。
その光景を眺めている二人の男女がいる――俺の両親だ。まだ若い。
青く澄み切った空、天気は良好だ。

ゆっくりと流れる空気が、木々は葉を優しく揺らせ鳥たちを呼ぶ。
それに応えた鳥は木の上で羽を休め、囀る。
子供の俺が両親に駆け寄る。母さんが両手を広げ、俺を迎える。
父さんはそれを嬉しそうに眺めている。優しいひと時、そんな言葉を感じさせた。
その瞬間、俺が視線を感じ取る。
夢の中の幼い頃の俺ではない。夢を見ている俺自身だ。
視線。幼い頃の雪の視線だ。

雪の姿が俺の眼を掠めると同時に、景色は一変して暗闇へ。
ここからは記憶だけが支配する闇だ。
感じるのは黒く塗りつぶされるような孤独感と恐怖。
刃物で四体をじんわりと引き裂かれるように、確実性のある恐怖の種を植え付けられる。
それがしばらく続くと、フィルムが回転を始める。また最初だ。

青く澄み切った空、ゆっくりと流れる風。
鳥の鳴き声。風に揺れる葉。
両親の声――そして、暗闇の中の自分。
56第四章 超越されし時間軸:02/12/15 20:06 ID:N0YjRhtu
朝――空は見事な青の穹窿を描いていた。
俺はまだ狂ってはいなかった。
人間はそう簡単に狂えるものではない。必ずどこかで理性が歯止めをかけるものだ。
そして狂えないという確信もあった。答えを欲しているからだ。
ベッドの隣、あいつの姿は無い。そういえば昨日からだった。
頭を振り払った。今は考えるときではない。
時計を見た。この時間、きっと大丈夫なはずだ。
俺は制服に着替え、財布をポケットに突っ込んで家を出た。
57第四章 超越されし時間軸:02/12/15 20:06 ID:N0YjRhtu
冬の雨が空気を洗い、その残滴が陽光を受け、アスファルトを光り輝かせていた。
歩道は人通りが無く、閑静としていた。
午前六時。俺は受話器を片手に持ち、それを眺めていた。
俺は公衆電話の中に居た。
おもむろに財布の中から、親戚から旅行のお土産でもらったテレホンカードを取り出し、電話機に差し込んだ。
赤い電光が表示されると、俺はある番号をプッシュした。
四コールほどで、相手は出た。
「……もしもし」
威厳のある声。相手が公衆電話のせいか、用心深い声だった。
「父さん。俺だよ」
「おお、お前か。どうした、こんな時間に」
途端に相手は声を綻ばす。いつも聞く、俺の親父の声だ。
親父は長期出張で、今は家にいない。
俺は親父の仕事で使う威厳のある声が好きだ。
幼い頃の俺の憧れでもあった。今でも尊敬している。

「いや、ちょっと、久しぶりに話してみたくてさ」
「ふむ。そうか、でも何でわざわざ公衆電話で掛けてきたんだ?」
「まだ、母さんが寝てるからさ……起こしたくないんだ」
この時間帯。親父の唯一の自由な時間だ。
俺たち二人は少しの間、色んな事を話した。
俺の近況。母さんの様子。最近の話題――
「そうか、話を聞く限りでは、何の問題も無くやっているようだな。
新年はそちらで迎えられそうにないが、仕事はあと三ヶ月程度で終わる。
そうしたら、みんなで飯でも食いに行こう」
俺は相槌を打って、受話器を置いた。
「…………」
俺は公衆電話のガラスに背を預けた。
閑静な住宅街にいつのまにか救急車のサイレンが遠く響いていた。
一つ分かった事がある。
親父からあいつの名前は聞けなかったが、俺は訊けなかった。
58第四章 超越されし時間軸:02/12/15 20:07 ID:N0YjRhtu
学校。
今日は誰とも話さなかった。
今日が終わっても、いつ、誰に話し掛けられたか覚えていないだろう。
机に寝そべって、ずっと窓の外を眺めながら考えていた。
外で朝と同じサイレンが聞こえる。今日はやたらと耳に障るな、と思った。

記憶から忘れ去られる――馬鹿馬鹿しいことだった。
だが、その馬鹿馬鹿しいことに俺は今、辟易している。
俺も遅かれ早かれあいつのことを忘れてしまうのだろうか。
あいつ、か。
その証拠に俺の頭にはもう、そんな代名詞しか思い浮かばないのではないか?
いや、そんな筈はない。俺はあいつの名前を覚えている。

机から適当なプリントを取り出して、その裏にシャープペンで文字を走らせる。
葉川。俺の苗字だ。
……だが、その後が続かない。記憶がぼんやりと浮き沈みしている。
ありえない。手が震えていた。
馬鹿馬鹿しいのは、認めない俺のほうでないのか?
――頭を振り払った。
59第四章 超越されし時間軸:02/12/15 20:08 ID:N0YjRhtu
授業中。
数学の抜き打ちテストだった。
俺はずっと、あいつのことを考えていた。
これはただの一時的なものに過ぎないのだ。
あいつの所持品を何か一つでも見れば、全て思い出すはずだ。
筆箱の中を探る――ロクな物しか見つからなかった。
すると際限ない焦燥感だけが、俺を襲ってきた。
教卓の上に掲げられた時計を見る。残り二十分。
充分だった。この単元のコツは把握している。
俺は適当な解答を頭の中から導き出し、それを解答用紙に書いた。
これで60点ぐらいはあるだろう。
残り五分。することが無くなった。

昼休み。
俺は二年生の教室の前に居た。あいつの教室だ。
近くに居た女生徒に呼びかけ、話を聞こうとした。
「おい……」
「はい?」
「あの〜……何か?」
困った表情で俺を見ている。しばらくの沈黙。
「ここの担任は誰だ?」
「ああそれなら……」
かなり癖の強い先生らしく、軽い特徴を加えて説明してくれた。
「そうか、ありがとう」
礼を言って踵を返した。
あいつのことを訊こうとしたが、できなかった。
俺はあいつの名前を思い出せないのだ。言えるはずが無い。
特徴を伝えればいい話だが、俺はそれを避けた。
確答が出るのを恐れている。答えを欲しているどこかで、恐れている俺がいる。
だが、まだ分かっている事がある。
このクラスにいた赤紫の髪の女生徒は俺の妹だ。
60第四章 超越されし時間軸:02/12/15 20:08 ID:N0YjRhtu
家に帰るなり、目に付いたのは靴だった。
いつから無いのだろうか。あるのは俺の靴と、母さんのもう履かない靴だけだった。
俺は自分の部屋へ向かった。
途中、妹であるはずの人の部屋の前を横切る。ネームプレートは取り下げられていた。
ドアの前で立ち止まり、精神を研ぎ澄ます。
……気配が感じられる。妹は部屋にいるようだ。
名前はまだ思い出せない。急いだ方がいい。
母さんがこの部屋の始末に気付いて、妹と鉢合わせする前に。
妹が家を出て行ってしまう前に。俺があいつを妹だと認識できる今に。
61初代スレ45:02/12/15 20:20 ID:N0YjRhtu


序盤から終盤までは以上です。正直、疲れました…
最終章にかけては明日落とします。
不愉快に思われた住民の方、もし居ましたら、すみません。

後、稚拙な文章ながら、生意気な事を言うのですが、
文字サイズを最小または小にすることを推奨します。
このスレ文字ばかりですから。
62名無しさんだよもん:02/12/16 00:51 ID:BLzn6z8m
保守。つーか激しく(・∀・)イイ!
二章辺りはたるかったけど、三、四辺りは面白い。変わった伏線の使い方するね
63名無しさんだよもん:02/12/16 07:21 ID:JnUOrqsy
いいね。続き期待。
64名無しさんだよもん:02/12/16 13:46 ID:bV5y7pCg
ほっしゅ
65第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:10 ID:/V5UV4uL
答えを出す時がきた。
不確定な論理に勝手な憶測を立てるのは、返って困惑を招く。
もし答えが導き出され、真実が見えたとしても、恐らく俺は正常ではいられない。
その真実が決して俺にとっていいものではないという確信があるからだ。
だから恐れた。俺は臆病だ。
だが、時が急がしている。恐れる時がきている。

俺は自分の部屋のベッドで大の字になって天井を見上げている。
目覚めと同じあの天井を。
全てが思い過ごしなら一番いい。俺はゆっくりと、思索に耽った。

あいつに対するイメージは確実に薄れていっている。
靄がかかった情景、アンテナの位置がおかしいテレビのように。
何故、こうなるのかは解らない。
何故、解らないのか?根拠がなかったからだ。
66第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:12 ID:/V5UV4uL
あいつの存在が記憶から消えていく、馬鹿げた話だが事実だった。
全ての人の記憶からあいつの存在が消える。そうなると、あいつはどうなってしまうのだろう。
そして夢。俺の幼い頃と家族。
一瞬、目を掠める幼い頃の妹と、その後の暗闇で俺が感じた孤独と恐怖。

ぼんやりと覚えていることだが、俺の妹は幼い頃に本当の家族を亡くしている。
あの頃の瞳をまだ覚えている。
そして、俺と家族が戯れている光景。夢の中のあいつはそれを見ていた。
家族。あの過去の瞳。あいつは俺の家族の光景に憧れているのか?
もうこの世には存在しない、あいつの本当の家族。

俺たちはその時間軸に支配されて生活している。
存在しない……その人の時間軸が存在しなくなる。
もし、それが存在しない世界なら?
あいつが会いたいとする人が存在する世界なら……??
この世界の時間軸を超越した世界……それはあの世なのだろうか。

……駄目だ。
頭の中で様々なキーワードが交錯するが、一つにならない。何かが足りない。
結果に辿り着く前の、難解な錠付きのドアを開ける知識の鍵が欠如している。
平凡な高校生の思考など、たかが程度が知れているのだ。
確実に進行するあいつに対する記憶の薄れ。もう時間が無い。
67第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:13 ID:/V5UV4uL
俺はあいつと少しでも会話がしたかった。が、できなかった。
掛ける言葉が見つからないから、というわけではない。
掛ける言葉はいくらでもあった。
とっておきの面白話。テレビの話題。あいつの変な癖。
だが怖かった。疑心暗鬼によって生まれる不安が、俺をひたすら狼狽させていた。

俺はベッドから飛び跳ねるように起き上がった。
そして机の中から折れ曲がった便箋を取り出し、
二十文字程度の文を書くと、それをあいつの部屋の前のドアの隙間から落とし込んだ。
内容はこうだ。
「今夜六時、学校近くの公園。広場にて待つ――」
挑戦状みたいだが、これでいい。あいつは来てくれるだろう。
もしこなかったら――それは俺が全てを忘れた時なんだろうと思う。

針は4時を指していた。俺は着換えを済ませ、部屋から出ようとしていた。
ふと、あることが頭によぎる――俺の本棚の上にある使い捨てカメラ。
まだフィルムが残っていたはずだ。
俺はおもむろにカメラを手に取り、きりきりとギアを回転させる。
かちりと音がしてフィルムの装填が完了した。

しばらく、そのカメラを眺めた後、机の上に置いて工作用のハンマーで叩いた。
カメラは短い音を立てて崩れた。崩れたカメラからは砕けた機械部が顔を覗かせている。
俺はカメラをそのままに部屋を後にした。
68第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:14 ID:/V5UV4uL
午後五時。おそらくそれぐらいだろう。
俺は公園に向けて歩いていた。冬の日没は夏の溶ける氷のように早かった。
周りの家を見回すと、様々な色のライトで彩られ、
中にはクリスマスツリーのカラフルな明かりを輝かせている家もあった。
だが俺にとっては、それらはすべて空しい灯に見えた。

いくつかの道を折れ、俺はいつのまにか約束した場所についていた。
今は何時だろう。時計をわざわざ見に行くのも面倒くさい。
俺は空を見上げた。冬の空は冷酷なまでに遠く、今は煌煌としている銀色の星々も、
この日の光は届かないんじゃないのかと思わせた。
公園。辺りはしん、としていた。
昼間は賑やかな分、こういった静けさは奇妙な感覚だ。
(………………)
俺は待っている。記憶が知らない人を。
いつも知っていたはずの、その女性を。
あれからどれくらい経っただろう。
肩に少し重いものが優しく掛けられ、体に暖気が入り込んできた。

「もう……馬鹿だね。何でコート着ていかないのっ」
知らない女性の声――俺は空を見上げた、いつの間にか曇っていた。
振り向けなかった。その姿を見るのが怖かった。

だが、知らないからこそ、確信があった。
俺の後ろにいる女性はあいつだ。
69第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:14 ID:/V5UV4uL
背中にぽん、と何かがもたれかかった。その感覚の具合で相手が背中を預けているのが分かった。
「お前は……いつから知っていたんだ?」
焦燥感からくる不安で単刀直入に訊いた。記憶がある内に知っておきたかった。
「多分、そっちが思っている通りだよ」
俺は空をまっすぐ見たまま言った。
彼女の一言一言が俺を安心させた。どこか懐かしい。知らない声。
「お前はずっと訴えてたんだな、俺に。俺の夢の中へ」
「……」
何も答えなかった。だが、おおよそ間違いないことだった。
彼女の悲しみ。それが俺の記憶のフィルムを通して映されていることを。
「お前が見ている世界。それは、死の世界なのか……?」
「ううん。違う……」
「そこは私が望んだ世界……何も失われない、ね」
彼女は力なく呟いた。
「そこにお前の両親はいるのか?」
「…………」
相手は黙り込んだ。沈黙が何よりの答えだった。
俺は淡々と続ける。そうでもしないと何も言えなくなってしまいそうだった。
彼女が望む世界――それは幸せな記憶だったというのか。
あの頃の瞳。倉庫に長い間忘れ去られたような物のような冷たい目つき。
あれはずっと遠い過去を見ていたというのか。
「そっか。お前は昔から何も変わっていなかったんだな」
「でもな、お前が変わった部分も見つけたぞ」
「…………」
「随分と頭がよくなったな、雪」
「……え?」
雪――俺の妹の名前。これだけの言葉を言うだけに、どれだけ時間がかかっただろう。
空の景色は白に変わっていた。
俺は忘れていた。この空から降る白と同じ、妹の名前を。
70第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:15 ID:/V5UV4uL
「お前は欺きつづけたんだ、俺や周りを。そんなことは頭が良くなくちゃできないぞ」
今なら分かった。
雪が俺の隣で寝ていた理由。雪の質問。
洗濯物の中に無かった雪の服――そして靴のこと。
「でもな。そういうのが世の中で一番、質が悪いんだ」
「……お兄ちゃん」
意地悪く笑えたつもりだった。
だが、言葉が詰まるばかりで、出る声全てが震えていた。

「お前は……ずっと信じていたんだな。自分の両親にいつか会える事を」
「私、私は……」
「雪」
俺は短く遮った。この事について雪とはもう話をしたくなかった。
「少し早いが、二人でクリスマスパーティをしよう。もちろん俺の部屋で」
「…………うんっ。分かった」
少しの沈黙があったが、雪は納得してくれたようだった。
「よし、そうと決まったら先に家に帰っててくれ。
俺は友達の家に少し用があるからな。でもすぐに帰るよ」
「うん。私も学校に荷物を取りにいってくるから、
もしかしたら私の方が遅くなるかもしれないし、丁度いいよ」
ふっ、と浮き上がるように、俺の背中から雪の感覚が消え、足音が聞こえた。

――用があるなんて嘘だった。ただ、今の雪の姿を見るのが怖かった。
でも、今なら間に合うかもしれない。俺はゆっくりと後ろを振り返った。
「おい、ゆ……」
そこには何もなかった。ただ振る雪だけが地面に舞い降りては消えていた。
71第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:16 ID:/V5UV4uL
街はクリスマス前の降る雪に心を浮かせていた。
俺は商店街をあても無く彷徨っていると、ある雑貨店が俺の目を惹いた。
ガラス張りの店の中で特に目を惹いたのは、ガラス細工のツバメの置物だった。
どういう訳か知らないが、あいつはこういう細々したガラスの物が好きだ。
俺は実用品にしか価値を見出せないので、こういうものの価値は全く分からないが、
雪は喜ぶだろう。何せ俺の目を惹いたぐらいだ。

俺は店の中に入り、それを手にとって、速やかにレジで勘定を済ませた。
少し高くついたが、まあいいだろう。今日は特別な日だ。
店員に包装してもらっているあいだ、遠くの方でサイレンが聞こえた。今日で三度目だ。
包装し終わると、俺は店員に慇懃に礼を言って家路についた。

家。俺は玄関であいつの帰りを待っていた。
リビングに母さんの書置きがあって「今日は帰ってこれないらしい」との事だった。
今の俺たちには好都合だった。無くしたものはまたゆっくりと作っていけばいい。

これから俺たち家族四人はずっと一緒だ。少なくともその存在を忘れるまで、
名前はええと……俺は掌にボールペンで書いておいた文字を見る。
そうだ、雪だ。悪い夢は今日で終わって、明日からは新しい現実が始まるんだ。

俺は待つ、雪はまだ帰ってこない。
時計を見た。時は無情にも刻刻と針を進めている。
俺が帰ってきてから既に十分が経っている。
さらに待った……二十分。どうしたんだろうか。
(まさか……)
その瞬間、凍えた手に鋭い刃物を突き立てられたような悪寒が体に流れ込んできた。
俺は急いで玄関のドアを開ける。
(どうか杞憂であってくれ!)
心の中で祈りながら走った。
72第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:17 ID:/V5UV4uL
俺はいつもの通学路を走っていた。この突き上げてくるような嫌な予感。
どうか冗談であってほしかった。
入り組んだ住宅街を走り、歩道を抜け、大通りに出ると人だかりができていた。
立ち止まると、話し声が耳に入ってきた。
「……災難ねぇ」
「この時期多いらしいわよ、奥さんも気をつけて」
「何でもこの事故、大変だったらしいわよ」
「どうして?」
「人が乗用車に撥ねられたらしいんだけど、その後、
どこにその撥ねられた人が居るか分からなかったんですって。時間も結構かかったらしいわよ」
「まあ。そんなことがあるのかしら」
「不思議よねぇ」
(くっ……)
俺は無言で走り去った。既に息は切れていた。
だが、走っていないと余計なことを考えてしまいそうだった。
病院――ここから自転車で三十分のところにあったはずだ。
俺は道を折れ、病院へと足を向けた。事故現場は見なかった。
見ると、きっと俺は動けなくなってしまうだろう。
73第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:17 ID:/V5UV4uL
あいつの存在自体が希薄になってきている。
存在自体というのは正しくない。存在を知る情報も希薄になっているのだ。
人はいささか視覚に頼りすぎている。
その視覚による情報が遮断された時、人はその存在に目もくれなくなる。

そして、逆に見えている方は恐怖だろう。
見えているはずの自分が周りの人には見えていないのだ。
それはどれほどの不安。孤独感なのだろう――俺は夢の中で味わっている。
視覚、聴覚、触覚。
あいつを知る情報は今の俺はどこまで失っているのだろうか。
存在の希薄――それに気付けなかった俺は愚鈍だ。
俺は結局、昔から何も変わってはいなかった。

俺は走った。体力配分など考えてる余裕はなかった。
それは馬鹿なことだとは分かっている。だが、そうせずにはいられなかった。
いくつもの交差点を渡り、いくつかの歩道橋を渡った。
可能な限りの道路は横切った。途中どれだけの信号を確認したなんて覚えていない。
ミイラ取りがミイラになりそう、という状態は正にこのことだ。
よろめき、歩道にある標識に前のめりになってもたれかかる。
74第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:18 ID:/V5UV4uL
体力は既に限界に等しかった。心臓が節度を失い大きな音をたてている。
周りはその音しか耳に入らなかった。
視界はぼやけ、軽い視野狭窄のようなものを起こしていた。
『もう間に合わないんじゃないか?』
そんな思考が脳裡を掠める――
「くそっ……」
俺は走り出そうとする。足がもつれて、その場に両手を突いて倒れこんだ。
数秒もしない内に立ち上がり、転がるように走り出した。
口の中では血の味を混じらせた吐き気、そして眩暈がする。もう自分の体がどうなろうがいい。
せめて記憶があるこの時にあいつの姿を見たかった。
俺は掌を開け、目を落とした。文字は汗で滲んで見えなくなっていた。
名前が思い出せなくとも、俺にはまだ、うっすらと記憶がある。
それを頼りに体を前進させた。

病院が見える。もう自分が何故、ここを走っているのか分からなくなっていた。
あいつのことが頭に思い浮かび、また走る。その繰り返しだった。
やっとのことで病院の中に入ると、看護婦が慌てて近寄ってきた。
「あの人の親族の方ですね。でもよっぽど無理して走ってきたようね。
顔と体がそれを物語っているわ。少し休んでいきなさい」
「いいから……案内して下さい。集中治療室へ」
息が邪魔でうまく話せなかった。俺は肩で息をしながら、途切れ途切れに答えた。
彼女はしばらく俺を眺めると、背を向けこういった。
「いいわ……案内してあげる」
通路をしばらく歩き、階段を上がったところで彼女は立ち止まった。

「ここは……」
「じゃあ、私はこれで」
彼女は俺の顔も見ず、立ち去った。
4×2号室……そこはただの病室だった。
75第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:21 ID:/V5UV4uL
俺はドアノブを廻して部屋に入った。
中にはパイプ椅子に腰掛けた、白衣を着た男の医師が手を組んだまま、入り口に向かって座っていた。
その神経質そうな顔のせいからか、初老ぐらいの印象を受けた。
「親族の方ですね」
「ええ、そうです。あいつは……大丈夫なんでしょうか」
医者は黙ったまま立ち上がり、体を90度回転させ、俺にその先の場所に行くように指示した。
俺はそれに従うままに、その先へと足を踏み入れた。
「………………」
火照りあがった体が、そのまま氷海へと投げ出されたような気分だった。
俺が見た光景――知らない女性がベットで横たわっていた。
目蓋を閉じたままで外傷も無い。ただ眠っているようだった。
だが、彼女の体はいくつもの管とそれに続く大掛かりな機械に繋がれていた。

「目立った外傷は右腕の骨折のみです、他は特に異常はみられませんでした」
「命に別状はありません。ですが……」
「続けて下さい」
俺は答えを促した。医師は少し躊躇っているようだった。
答えは頭で分かっているのかもしれない。ただ、いま感情に介入されたくはなかった。
「打ち所が悪く、彼女の大脳皮質が……
つまり、彼女がこの先、人間としての働きを取り戻すことは、もう無いでしょう」
俺は何も返せなかった。録音されるカセットテープのようにただ聴いているのみだった。

「私はこれで失礼します。少し落ち着いてきたら色々と話がありますので医務室へ出向いてください。では……」
バタン、とドアが閉まる音が聞こえた後、
辺りは機械音だけと、時たま通り過ぎる人の足音だけなった。
76第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:22 ID:/V5UV4uL
ずいぶんと不思議な感情だった。悲しいはずなのに涙を流せない。
なぜなら、ここに横たわっている女性は知らない人だから。
何を生み出すわけでもなく、記憶と感情がかき混ぜられるコンクリートのように重く渦巻いているだけだった。
知らない人なのに、俺は何故ここに座っているのだろう――
俺はこの女性を親族と認めた。でもそれは姿が見えなかったからだ。
病室の間違いではないか?いや、それ以前に俺に兄弟なんかいたのだろうか。
それさえも分からなくなった。

空虚。ただぼんやりと過ぎる時間と共にいた。
立ち上がり、彼女の顔を見る。
年は俺と同い年ぐらいだろうか。いや、それにしては少し幼すぎる。
年は十五歳ぐらいだろう。なんかかなり地味な容姿だが、どこか可愛らしげのある女性だった。
何よりからかい甲斐がありそうな奴だ。友達だったら面白いかっただろうな、と思う。

そっと顔に手を触れる。氷のように冷たいだけだった。
……もう、遅すぎたのだろうか。できれば、この人を救いたかった。
だが、もう遅い。俺は再び椅子に腰掛けた。
少し疲れた。思い起こせば、俺はこの病院まで走ってきたのだった。
腕を組む。今日、母さんは帰ってこないといっていた。
ならもう少しここにいよう。今更帰ったってどうせすることが無い。
俺はしばし眠りについた。
77第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:23 ID:/V5UV4uL
光。辺りは光に包まれていた。
「ん……」
目を開けると、ある女性がブラインドを手で広げ、外の景色を眺めていた。
光はそこから差し込んでいる。
「あ、お兄ちゃん。起こしてごめんね、ちょっと外が気になって」
「気にするな、朝の光は目覚めに良いんだ」
俺は四体を伸ばす。体の節々が痛い。こんな体制で寝れば無理もなかった。
「それよりも腹が減ったろ。兄ちゃんがリンゴでも剥いてやろう」
「うん、ありがと」
リンゴと果物ナイフを手に取り、早速作業にかかった。
「ねえ……」
「何だ、雪」
雪――その言葉。自然に出てきた。
「まだ、退院できないのかな……私」
「そう気を焦らすなよ。また、病気が再発したらどうすんだ。
こういうのは時間をかけて治すのが一番なんだ。それに……あとほんの半年ぐらいじゃないか」

病気、半年。思ってもいない言葉が湯水のようにすらすらと沸いて出た。
何かが引っ掛かる……思い出せない。
まあいいか。俺は雪の見舞いに来たんだ。
俺は黙々とリンゴの皮を剥いた。
「わぁ。お兄ちゃん、器用だね」
雪の表情が輝いていた。その目線の先は桂剥きで帯状に連なったリンゴの皮を見ている。
「これぐらいならお安い御用だぞ。しかもその気になれば、中身も桂剥きにすることが可能だ」
「そんなリンゴおいしくないよ……」
「馬鹿っ、これは芸術なんだ。お前にも教えてやろう。これで入院中の暇も解消だ」
「嫌だよ。そんなことしてたら、先生も看護婦さんもびっくりするよ」
リンゴを綺麗にきっちり四等分にして皿の上に乗せ、雪の前に差し出した。
雪は苦笑混じりに皿からリンゴを摘んでそれを口に運ぶ。
俺も一切れ口に放り込んだ。甘酸っぱい酸味が口の中に広がった。
78第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:25 ID:/V5UV4uL
「ね……お兄ちゃん」
「ん?」
「私はお兄ちゃんの家族……だよね」
雪はぼんやりと目の前を凝視したまま訊ねてきた。
手に持ったリンゴは、小さく一口しかかじられていない。
「今更何を言うか。俺は昔からお前を妹と認めている」
「良かった」
俺は新しく手に持ったリンゴを横にくるくると指で回しながら眺めていた。
ふと、顔を見上げる。
雪の顔、うっすらと目に涙を浮かべていた。
「どうした!?苦しくなったのか?」
俺は急いで雪の側へ駆け寄る――雪はちがう、と左右に大きく首を振った。
「ごめんなさい、私……お兄ちゃんに忘れられるなんて……堪えられなかった」
雪はずっと俯いたまま、嗚咽を漏らしていた。涙は今は大きな粒となって雪の頬を伝っていた。
どうして雪が泣いているのか分からなかった。俺はいつもするように雪の髪を撫でた。
「馬鹿だな、これから俺たちいつも一緒じゃないか……」
その瞬間。様々なものが反転し、変化する。
光が闇へ、リンゴが虚無へ。幻想から、現実へ。そして……知らない女性から、雪へ。
79第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:26 ID:/V5UV4uL
「俺たちはいつ……も一緒……」
泣いていた。泣いていたのは反対に俺のほうだった。
雪。雪は優しく微笑んでいた。
「お兄ちゃん……私は大丈夫だよ」
――嘘だ。雪の右腕は力なくだらんと垂れ下がっているだけで、ぴくりとも動かなくなっている。
こいつは肝心なときに嘘が下手だ。
雪は抱くように俺の肩に顔を乗せ、左手で俺の髪をゆっくりと撫でた。
「馬鹿……野郎っ」
「……笑顔で。笑顔で私を送って」
雪はただそう言った。
「そんなこと……できるか。お前は俺の家族、妹なんだ。
この世界だけに一人しか居ないのに……この世界しか」
雪は芯の強い性格でいようとする。それは他人から見れば、ただの虚栄心だけなのかもしない。
俺にはそれが無い。肝心なときにただ喉を詰まらせて泣いてばかりだ。
本当に強いのは雪のほうだった。昔から、今でもずっと、二人は何も変わらなかった。

俺は強く、強く、雪を抱きしめた。
鼓動を感じられなくてもいい。体温なんか感じられなくてもいい。
雪の存在をこの腕に確かめられるだけで良かった。

「十数年ぶり……お父さん、お母さん。私の成長に驚くかな……?」
雪の声はだんだんと力を無くして薄れていくのが雪の体を通して感じられた。
「十年ぶりだから、私の顔、分かってくれるかな?……少し、怖いよ。
お兄ちゃん、私の両親が迎えにきてくれるまで側にいてくれる?」
「ああ、迎えに来るまで俺が一緒にいてやる」
俺は頷いた。
「ありがと……最後まで……」
俺の体が重力が掛けられたようにがくりと揺れる。

目の前には雪が眠る姿と、緑色の線が横一直線にピンと張っているのが見える。
俺は椅子に座ったまま眠っていたようだった。
立ち上がり、耳に障る電子音を背に病室を後にした。
80第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:27 ID:/V5UV4uL
俺は医務室のドアを開けた。一応報告しておかねばならない。
医師は椅子に座ったまま、患者のカルテに忙しそうに目を走らせているようだった。
後ろまで近づくとようやく気付いたらしく、古ぼけた回転椅子をきゅうっと軋ませながら俺のほうに向いた。
「早速ですまないが、ご家族の方は……?」
「あいつに両親は居ません……」
そう言うと、医師は怪訝な顔つきを俺に向けてきた。
無理もない。俺の両親が居ないといった方が良かっただろうか。

「え?私は君に訊いてるんだよ?あいつって誰かね?」
逆に今度は俺が怪訝な表情になった。この医師は何を言っているのだろう。
「誰って……4×2号室の……」
「4×2号室……?今、あそこは空き部屋だよ」
「え……」
「それより君。私の患者じゃないのかね?予約を取った。もしかして、医師を間違えては……」
俺は最後まで聞かずに医務室を出た。


「…………」
俺は病室の中で立ち尽くしていた。
大掛かりな機械。それに繋がる管。そして、誰も居なくなったベッド。
それらが役目を無くして困っているように静かに目の前にあった。
「雪。お前は俺の家族だからな」
一人、俺の声だけが病室に響いた。
81第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:28 ID:/V5UV4uL
自動ドアを開けて病院を出る。
空から降る雪はいつの間にか止んでいた。帰るには丁度良い。

(私……お兄ちゃんに忘れられるなんて……堪えられなかった)
雪は俺に記憶を残すことを選んだ。
誰も知らない唯一の記憶。ただ独りの世界。
それがどれだけ辛い事なのかということを雪は知っていたのだろう。
「俺はお前を知らないほうがもっと辛いぞ」
周りの人間。俺に妹がいたことなんて誰も覚えていないだろう。
――そして、俺もいつか。
色々な部分がまだ分からないまま、終わってしまった。
桜は散るから美しいという――無茶な理屈だが、それと同じようにこの記憶も大切にしよう。
空を見上げ、笑う。今度はうまく笑えたろうか。
82第五章 冬のツバメ―reunion―:02/12/16 23:28 ID:/V5UV4uL

夢。
その日、夢を見た。
もう俺の自己嫌悪が混じったような、狂気に渦巻かれた夢ではなかった。
夢の世界での体を俺は持っていた。どちらかというと現実味のある夢だった。

俺は家を出て、屋根にある物を眺めていた。
ツバメの巣。もう冬になっているのに、まだ取り残されたツバメ達がいた。
羽を怪我しているのか、飛ぶのが下手なのか、
まだ幼いツバメが覚束ない飛びかたをして、
門柱に止まったり、木に止まったりしていてまだ旅立てないでいた。

親ツバメが手本を見せるように空を切って飛び、幼いツバメを飛び立たせようとしていた。
飛ぼうとするが、すぐにバランスを崩して目の前に降りる。
もう一度――幼いツバメは今度は大きくはばたいた。
しかし、またバランスを崩して、落下する。でも今度は飛んでいた。
まだ頼りない飛び方だが、大丈夫だろう。
親ツバメが歓びの声を上げてそれを証明している。

俺はそれを見終えると、踵を返し、通学路に向けて歩き出した。

それぞれに向けて歩き出す。
ツバメ達は遥かなる旅路へ。俺は日常へと――
そんな夢を見た。
83エピローグ:02/12/16 23:30 ID:/V5UV4uL
私は浮かれていた。今日はお父さんもお母さんも仕事が休みだ。
久しぶりの三人の休日。すごく幸せだった。
私の希望で今日はガラス工場に来ている。
ガラスはとても綺麗で私に夢をみせてくれる。
思った通り、ガラスはとても神秘的だった。
赤く小さなガラスがおじさんの手によって綺麗なガラスのコップへと変わる。
綺麗で凄かった。

私も体験させてもらって、コップを作らせてもらった。
動物の置物を作りたかったけれど、おじさんにお嬢ちゃんには無理だよと笑われてしまった。
出来上がったコップはとても変だった。水を入れるとこぼれそうだ。
でもお父さんは頭を撫でで私をほめてくれた。
何かとお父さんは私の頭を撫でる。困ったものだ。
でも、こうして撫でてくれると嬉しい。お母さんも笑ってて嬉しそうだ。

お父さんとお母さんが昼食を買いに行くから、それまでここで遊んでなさいと言われた。
ようし、だったらもう一度チャレンジだ。お父さんはほめてくれたけど、私は嫌だ。
おじさんに手伝ってもらって、今度は水が飲めそうなコップになった。
やった。おじさんもその年でたいしたもんだとほめてくれた。
もう一個作って、お父さんとお母さん両方にプレゼントしてあげたらどうだいとおじさんが言った。
私は頷いた。それはいい考えかもしれない。
84エピローグ:02/12/16 23:31 ID:/V5UV4uL
もう一個目もうまくいった。
でも、ちょっと大きい。これはお父さんにあげよう。
出来た二つのコップを眺めるとお父さんとお母さんみたいだった。
あとは帰ってくるのを待つのみだ。

帰ってこない。もうおやつの時間になってるのに。
駐車場に入ってくるお父さんの車を見る。
やっと帰ってきてくれた。私は急いで駆け寄る。

でも中にいた人は違う人だった。がっかり。
ずっと待った。空にはもうお星様が出ているのに。
「お腹減ったな……」
そういえばお昼もまだだった。
「うくっ……」
泣きそうになる。でも泣かない。
せっかくのプレゼントなのに、泣いてたらみんなが悲しくなる。
しばらくすると、工場のおじさんが私の前に立っていた。
「お嬢ちゃん……」
おじさんはとても暗い顔をしていた。
だから私はおじさんを励ました。
「暗い顔してたら、みんなが悲しくなるよ」って
するとおじさんは泣き出した。よほど悲しいことがあったのかな。

「お嬢ちゃんのお父さんとお母さんは……遠いところに行ってしまったんだよ」
おじさんは涙を流しながら、私にそう言った。
でも私は泣かない。
私まで悲しい顔をしてこれ以上おじさんを悲しませたくなかったし、
なによりまだ会えないわけじゃないからだ。
少しお腹はすいたけれど、そこは我慢しよう。
85エピローグ:02/12/16 23:32 ID:/V5UV4uL
あれから私は待ち続けた。あの後、親戚の家に預けられ一ヶ月ほど面倒を見てもらうことになった。
その間も私は両親を待ち続けていた。
なるべくあの日と同じ服を着るように心がけ、近所で一番目立つ場所にいつも居た。
一週間、二週間……私は時が経つにつれ、だんだん両親が憎くなった。
一体お父さんとお母さんはどこまで行ったのだろう。私は放っていかれたのだろうか。
それとも私は両親の本当の家族じゃないんだろうか。
今まで優しくしてくれたのも、全てはあの日のためではないのだろうか。
とそんなことを考えるようになった。
私は早く両親が迎えに来てくれて「それは違うよ、待たせてゴメンね雪」と証明して欲しかった。
次第に私は何も喋らなくなった。過去のことを思い浮かべると、迷惑かけたなって思う。



ほとほと親戚の人が困っている時、私はお母さんの親友の家に預けられた。
同い年くらいの子供が居るし、丁度良いとのことだった。
私は家が変わっても行動は変わることは無かった。
近くに公園があってそこで私は待った。
86エピローグ:02/12/16 23:33 ID:/V5UV4uL

そして何日が過ぎただろうか、ある日、声が聞こえた。
「おいっ、雪」
久しぶりに人の声を聞いた気がした。
でも最初は、まさか私に声を掛けられているとは思わなかった。
          
          ・

          ・

          ・

「……こう毎日無視されると悲しいものがあるぞ」
「参ったな……こいつが俺の家族になるのか」
「家族……?」
おかしな話だけど、自分の声も久しぶりに聞いた気がした。
目の前をみると、元気そうな男の子がでん、と立っている。
「そうだ、お前は俺の家族なんだからな」
「私は……家族でいいの?」
「何いってんだよ、当たり前だろ。お前は俺と話してくれないけどさ。俺達は兄妹だ」
「私がお姉さん?」
「バカッ、俺がお兄ちゃんだ。お前は俺より一つ年下なんだからな」
「だからこれからは、俺をお兄ちゃんと呼べ、分かったな?」
「うんっ……分かったお兄ちゃん」
「よし、お前は今日から俺の家族の一人だ」
笑った。私には家族がいる。
それだけで私は幸せだった。
87エピローグ:02/12/16 23:33 ID:/V5UV4uL
1月××日


俺は荷物の始末に追われていた。
「くそ……父さんも母さんも俺をいいように扱いやがって」
自分の部屋の不要品をダンボールに詰めながら愚痴る。
机の上のボロボロになったカメラをゴミ袋に放り投げる。
今思うと何故こんなことをしたのだろう。このカメラはまだフィルムが残っていた筈だ。
「これで俺の部屋は終わり、か」
しかし、まだ大きな難関が残っている――倉庫だ。
もともとこれが無ければ、俺はとっくに遊びに行っているのだ。

「ちくしょう、多いな……」
持ってきたダンボールを脇に置き、腰に手を当てて、ため息をつく。
この部屋。親戚からもらってきた女物の不要品でごった返しているのだ。
全く母さんの貧乏性も困ったものだ。
しかし女物の服は一式揃っているので、無一文の女性が来ても充分なほどだ。
「長くなりそうだが、はりきって頑張るか」
早速作業に取り掛かる。靴。服などを流れるようにダンボールの中に詰めていく。
中にはフリマに出せば、まだ売れるような新しい物もあった。
「おっ、こんなとこにあったのか」
不要品を漁っていくと、以前に探していた、俺の筆記用具などが時たま発掘された。
「これは……」
作業の半ば頃、不要品の山の中から、くしゃくしゃになった包装紙に包まれた小さな箱を見つけた。
それを躊躇なく剥いて中身を取り出す。俺はこういうのは気になるタイプなのだ。
そして箱から出てきたのは、ガラス細工のツバメの置物だった。
不思議な感覚だった。俺はこれを買った覚えがある。
買った店まで覚えていた。あの雑貨店。
だが、おかしい。俺がこんなものを買うはずが無いのだ。
「気味が悪いな……」
置物を放り投げ、俺は作業に没頭した。
88エピローグ:02/12/16 23:36 ID:/V5UV4uL
「や、やっと終わった……」
へなへなとその場に倒れこむ。いらないものはゴミ袋へ、衣類は全てダンボールへ詰めた。
その時、部屋の隅のほうに何かに反射した光が目を掠めた。まだこれがあった。ガラスの置物だ。
俺は手に取り、ゴミ袋と置物をしばらく眺める。
(捨てるのはさすがにもったいないよな……)



「よし!」


俺はガラスのツバメの前に指を突き出して言う。


《――夢の中の翠影の下、俺は眠っている》


「お前は今日から俺の部屋の一員だ」


《記憶の中で舞うツバメ。ただ、一羽。》


                    


                    End
89初代スレ45のあとがきみたいなもの:02/12/16 23:57 ID:/V5UV4uL
以上で私の「ONEの教室に居る赤紫の髪の女生徒は」はこれで終わりです。

最初にこのスレを立てた1は、今で当たる>>15までしか考えてなかったので
1がどういう結末にしてこの話を完結させようかと思ったかは私は知る由もありません。

かなり自分勝手ながら、こういう形で終わらせて果たして良かったかどうか、一度1に会って訊いてみたいです。
SSを書いたのは今回が初めてでしたので、所々いたらない部分があると思われますので、感想や指摘を下されば幸いです。
月並みなことしか言えませんが、最後にこの話を読んで下さった方、ありがとうございました。
90名無しさんだよもん:02/12/17 06:39 ID:eDfqp0kg
(つд`)いい・・・感動しますた。
91名無しさんだよもん:02/12/17 13:23 ID:zhLqmvNF
ちょっと長すぎだよね…
展開自体、こんなに長くするようなものでもない。
あと無駄に心理描写が多い気がした。ついでに主人公が寒い。
初っ端から継続して重い雰囲気、などが気になった点。必要以上に小難しい表現を使ってるとことか。

展開や文章は、良くも悪くも鍵作品の影響を受けましたという感じがした。
だからどうしても読んでいて二番煎じの感がつきまとった。(鍵SSなんだからってことではなく)

ただそれでも書きたいことがとても伝わってくるのは、やっぱり熱意がこもっている証拠だと思う。
ラストが綺麗に終わってるのもいい。
92初代スレ45:02/12/18 04:58 ID:kv1YbIPV
>>90
指摘ありがとうございます。
率直な感想ももちろんのこと、こういった指摘は凄く嬉しいです。
SSを書いている人もこういった感想や意見をもらうために書いている、
というのも、やはり理由の一つなんでしょうね。

>展開自体、こんなに長くするようなものでもない。
あと無駄に心理描写が多い気がした。ついでに主人公が寒い。
初っ端から継続して重い雰囲気、などが気になった点。必要以上に小難しい表現を使ってるとことか。

気付いてみると、全て私の癖ですね…精進します。

あと、このSSはKeyの「家族」とONEの「永遠」の二つのテーマに沿って書いてみたつもりだったのですが、
やはりオリジナリティを出すのは難しいです。
自分も情けないことに、読んでいて、少し既視感を覚えてしまいました。
93名無しさんだよもん:02/12/18 15:05 ID:5W2R4mka
設定はうまく使えていたと思う。

主人公と雪の両者の家族を巧く扱ってるし、作中のさりげない伏線もいい味出してた。
だけど、>>91が言ってたように未熟な点もまだまだある。
初めてだから。ってのもあるかもしれないけど、これからに期待できる。がんがれ!
94名無しさんだよもん:02/12/20 23:22 ID:aT7ELm0q
 
95アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 05:51 ID:0qzQPh4U
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96アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 06:17 ID:tim4r+gd
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97アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 07:40 ID:eI292REV
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98アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 08:28 ID:HUpnX5n4
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99アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 09:37 ID:oteC4KgG
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100名無しさんだよもん:02/12/23 13:45 ID:DOk73EHb
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102アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 15:58 ID:eI292REV
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103名無しさんだよもん:02/12/25 10:04 ID:xM/LrS4z
 
104名無しさんだよもん:02/12/30 03:04 ID:c5RhLAnW
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105名無しさんだよもん:02/12/31 22:33 ID:DT62M/nO
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107ノーマッド ◆6iTxfX5LOA :03/01/05 03:21 ID:q/sQAMoF
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115ノーマッド ◆O.yn34En22 :03/01/05 04:35 ID:q/sQAMoF
モナーがテレビアニメ化!!!
祭りだ!!!!
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<<放送時間>>
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
札幌 テレビ北海道 (日)9:30〜10:00
岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
116ノーマッド ◆74NVkNXezo :03/01/05 04:48 ID:q/sQAMoF
モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
札幌 テレビ北海道 (日)9:30〜10:00
岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
117ノーマッド ◆TIBogn.Bp. :03/01/05 04:55 ID:q/sQAMoF
モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
札幌 テレビ北海道 (日)9:30〜10:00
岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
118ノーマッド ◆dCGNJq.JyI :03/01/05 05:08 ID:q/sQAMoF
モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
札幌 テレビ北海道 (日)9:30〜10:00
岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
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モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
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モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
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モナーがテレビアニメ化!!!
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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123ノーマッド ◆fkWqsaBuDM :03/01/05 05:55 ID:q/sQAMoF
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東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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124ノーマッド ◆lnkYxlAbaw :03/01/05 06:06 ID:q/sQAMoF
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東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
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モナーがテレビアニメ化!!!
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東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
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岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
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東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
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福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
札幌 テレビ北海道 (日)9:30〜10:00
岡山・高松 テレビせとうち (日)9:30〜10:00
140山崎渉:03/01/14 09:58 ID:uzUhoTci
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141山崎渉
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