Dr.リアンが診てあげる 〜メール4通目〜

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203名無しさんだよもん
広いお部屋。
お洋服がいっぱい入ってるおっきなタンスに、難しくて読めない本がたくさんの本棚。
ふかふかのカーペットに、それからふわふわの羽の詰まったベッド。それからそれから、大好きなくまさんのお人形!
部屋の外からママの声がするの。
「リアン!お勉強の時間ですよ、先生がもういらっしゃったのですよ。早く出てきなさい」って。
でもでも、ずーっとずーっとこの部屋に居たいから絶対に部屋から出ないもんっ!
ママが私の事を何度も呼ぶけど、ドアの鍵は絶対に開けないの。
開けたらママが私のところを無理やりお勉強部屋まで連れて行くはずだもの。
だから、呼ばれても返事もしないもん!お勉強なんてつまらなくて退屈で大嫌い!
それにそれに、お勉強の先生もいっつもおっかない顔して私の事叱るの。大嫌い!
お勉強なんてしないで、お姉ちゃんと遊びたいなぁ。
くまさんのお人形と3人でお庭に咲いているお花で綺麗な髪飾りを作るの。
それからお花畑でお花に囲まれながらお姉ちゃんにご本を読んでもらって
それから太陽さんの暖かい光の中でお姉ちゃんと一緒にお昼ねしたいな。
それから夜になったら、お母さんが早く寝なさいって厳しく言うけれど遅くまでお姉ちゃんとずっとお話していたいな。
けれど、お姉ちゃんが忙しいから中々会えないの・・・お姉ちゃんと会いたいなぁ・・・
204名無しさんだよもん:03/02/22 02:00 ID:6halnI+I
そんなふうにお姉ちゃんの事を考えていたら、お母さんが私を呼ぶのを止めて変わりに誰かが私を呼びはじめたの。
「リアン、いい子だからドアを開けなさい」
お姉ちゃんの声だ!
お姉ちゃんが私の部屋の前にいると思うとうれしくって、お姉ちゃんの言うとおりすぐにドアの鍵を開けたの。
そしたらいつもの優しいお姉ちゃんが居て、とてもうれしくて思わず抱きついちゃった。そしたらね、お姉ちゃんが
「リアン、いい子だから勉強しましょうね」って言うの。お母さんだけじゃなくてお姉ちゃんまで「勉強しろ」って言うから
びっくりして、悲しくって、泣いちゃいそうになっちゃった・・・それでもお勉強なんてしたくないから
「でも、リアンはお姉ちゃんと遊びたいの!」って言ったらお姉ちゃんが「じゃあ、勉強終わってから遊びましょう」って言ってくれて、
わーいお姉ちゃんと遊べるんだ!
「だからちゃんとお勉強しましょうね」
「うん!」
お姉ちゃんと遊べるんなら、お勉強も我慢してできるもん!
そのあとリアンが遅いからって先生はかんかんになって怒ったけど
お姉ちゃんと遊べると思ったらそんなのへっちゃらだもんね!
205名無しさんだよもん:03/02/22 02:01 ID:6halnI+I
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「なんて時期がリアンにもあったそうだけど、実際どうなんだ?
スフィーからの話だから、あまり信憑性が無いんだよ」
と、健太郎と言う名の青年が顔なじみのウェイトレスに向かって話し掛けた。
街の小さな喫茶店。日当たりも良く、休日の昼間なんかは日向ぼっこついでにこの店に来る客も多い。
マスターの作る料理が、ずば抜けてではないが、美味なるものであったり、煎りたての味わい深いコーヒーを出す
と言う理由の他にこの店が繁盛する理由として挙げられるものは、なによりも二人のかわいい店員がいるからに違いない。
そしてその青年が話し掛けたのは、その一人である。
(しかし、その清楚で美しい女性と知り合いであるなんてなんと羨ましい事限りないのだろうか!)
「むー!けんたろ、それって私の事信じてないって事?そんなこと無いわよ!ねー、リアン!」
話し掛けられたウェイトレスが答える前に、その青年と一緒に居る少女が二人の会話に口を挟んだ。
少女がウェイトレスに向かって返答を催したので
答えるのに躊躇していたが、やむを得ないと言う感じでようやく青年の質問に答えた。
「は、はぁ・・・思い起こしてみればそんな事もあったような・・・」
「マ、マジか!リアン!」
「ほら〜私の言ったとおりでしょ!これからはちゃんと私の言うことを信じなさいよ!」
青年は、まるで隕石が我家に落ちたかのような驚きでその返答を聞き入れ
また、少女はそれが至極当然の如くであるかのような態度で迎えた。
その中で、当のウェイトレスは何か言いたそうな面持ちであったが、平常から自分の欲求を表に出さない彼女なので
その何か言いたそうな態度は、ちゃんと目を見張らないと気付かない程度のものであり、結局は誰にも気付かれる事は無かった。
206名無しさんだよもん:03/02/22 02:02 ID:6halnI+I
「しかし、甘えん坊なリアンもちょっとは見てみたいもんだなぁ〜。
ところで、いつ頃からこんなおとなしくなったんだ?」
「ん〜、いつ頃からこんなにもおとなしくなったんだっけ?
そういえば昔からリアンと一緒にいるけどさっぱり覚えてないなぁ・・・リアン自信は覚えてる?」
再度質問をされたリアンは、またもや返答するのに数秒の間を要した。どうやら彼女は答えるのが苦手らしい。
「わ、私も、お、覚えてないです・・・」
そのクセのある答え方に、どうやら何か迷いがあるのだと漸くその青年は悟ったようで
「あ、うん、そうだな。人の過去を掘り返すなんてあんまり心地いいもんじゃないよな
ごめん、リアン。もう辞めとくよ」
と、これ以上根掘り葉掘り聞くのをやめた、懸命な事だ。
「い、いえ・・・」
ウェイトレスも、内心ホッとはしたが、相手の行動を制限してしまったようで悪い事してしまったと
必要性のない罪悪感も感じていた。
そして一息ついてから、
「じゃあ、そろそろ俺らもおいとまさせて頂きましょうか、じゃあなリアン、行くぞスフィー」
そう言って青年は立ち上がり、勘定を払うべくレジの方へ向かって歩いていった。
「待ってよ〜」
少女も急いで立ち上がり、駆け足で青年のあとを追いかけていった。
207名無しさんだよもん:03/02/22 02:02 ID:6halnI+I
彼らが喫茶店から出て行くと、店内はもう一人のウェイトレスと、マスターと3人だけになり
冬の日の寂しい午後は、残されたウェイトレス―リアンの心に寂寥感をもたらした。
テーブルの上を片付けながら、そのリアンは呟いた。
「勉強を嫌がっていたのは姉さんの方で、勉強するように説得したのは私だったのですが・・・」
と。
・・・・どうやら、その少女の記憶が間違っていたらしい。
しかし、一見少女にしか見えない女の子が、もう成人したかのような女性の姉とは・・・
甚だおかしいものである。