巨乳ハァハァ
∧,,∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ミ 彡 < 寸止め浪漫……
(ミ ミ) \_______
ミ ミ
∪ ∪
∧,,∧ サッ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ミ,,゚Д゚ミ < マーベラス!
⊂ ○m \_______
ミ、,, ミ,
.しヾJ
464 :
名無しさんだよもん:03/04/02 05:04 ID:ZjSeUQtc
長瀬さんは展示されてゐる美術品を一つ一つ見ては、これも贋作、これも贋作、と
ぶつぶつと呟きつヽ鑑定して行く。最早怒りを通ほり越して呆れてゐるやうであつた。
みどりさんとスフィイは長瀬さんの剣幕におろおろしてゐるが、老主人の方は
何も聞こへてをりませぬと云つた風に飄飄と構へてゐる。
一方おれの方はと言へば、贋作と聞ひても何処か遠い世の出来事のやうで、
正直あヽさうですか、と云ふ思ひしか湧ひて来なかつた。何故であらうか、
この期に及んで危機感が欠如してゐるやうである。かやうなまでに楽観的な
性格では無かつたと思ふのであるが。
さて、その一方で長瀬さんは部屋をぐるりと回り終へて来ると、帰へりませう健太郎君、
だうやら時間の無駄でした、と憤懣やる方無い様子で出て行かうとする。
追ひ討ちを掛けるやうに老主人が、贋作でも満ち足りる者は居る、それの何処が
悪いと言ふのだ、などと言ふものだから、余計に長瀬さんは頭に血が昇つて
殴り合ひにでも成りかねぬ空気になつた。おれとみどりさんはそれをなんとか
抑へ、兎に角長瀬さんには待つてゐてもらふことにした。
何は無くとも品を見せて貰ふべくおれは残つたのであつたが、残つたからと言つて、
長瀬さんが全て贋作だと鑑定した物をだうしやうと言ふのか、おれ自身も分からぬ。
兎に角己の目で確かめて見ない事には納得出来ぬとでも思つたのであらうか。
しかし、おれが長瀬さんの倍は時間を掛けて見てみても、さう簡単に鑑別は出来ず、
展示品を前へに唯唯唸つてゐるのが関の山である。段段と惨めになつてきて
諦めて帰へらうかとさへ思ひ始めた時、スフィイがおれに耳打ちをして言つた。
呪なひの鞠が別の方向を指し示してゐると。
良く良く考へてみれば、一見の客に店の秘宝たる品をおいそれと見せはしまいと
云ふのは充分に可能性がある事であり、これらの贋作の数数も偽装の為だと
言へば言へなくも無い。スフィイは悪戯気な笑みを顔中に浮かべると、鞠の
反応する方角へと駆けて行つてしまつた。それまで泰然としてゐた老主人が、
初めて動揺の色を見せ、慌てて後を追ふが、飢ゑた仔鼠のやうにすばしッこい
スフィイには到底追ひ付ける筈も無い。
追ひつ追はれつ行く先は、未だ見ぬ秘蔵の宝の山か、遮へぎる扉も堅固な錠も、
怪光線で弾け飛び、無人の荒野を駆けるが如く、韋駄天スフィイが道を行く。
467 :
名無しさんだよもん:03/04/04 06:04 ID:2YLMal+7
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SS乙〜
韋駄天スヒィが道を逝く
かくて着ひたる所とは、黴臭さ漂ふ小部屋であつた。早速スフィイは老主人が
追ひ付く前へに中を物色してをり、その様はまるで空き巣か追ひ剥ぎの如くである。
これがおれであつたならば、警官を呼ばれても致し方無い所であるが、
スフィイならば、子供のする事であるからと云ふ言ひ逃れも充分に出来ると云ふ事を
念頭に置ひた上での計画的犯行と言へやう。
後から入つて来たおれとみどりさんが見た物は、古びた掛け軸を広げたスフィイの
姿であつた。掛け軸には二匹の小動物、だうやら猫のやうな獣が描かれてをり、
相当に年季の入つた物であるやうだが、部屋が薄暗くて良く見えぬ。
其処で漸く、息も切れ切れに老主人が追ひ付ひて来た。何やら罵倒の言葉が
出て来る事が予想されたのか、老主人が息を整へ終はる前へにスフィイは
先手を打つて、ご免なさい、と可愛らしく頭を下げた。
さしもの強者でも、これで怒り散らす訳には行くまい。渋い顔こそしてゐたものの、
拝観を許可してくれる事になつた。
掛け軸は想像通ほり猫の画であり、スフィイが昨晩見たと言ふ夢と一致してゐたが、
果たしてこれが如何ほどの価値があると云ふのか見極はめねばならない。
紙の質や古さ、そして筆使ひと恐る恐る見て行つたのであるが、その一つ一つが
おれのやうな若僧が見てもかなりの代物である事が見て取れる。恐らく相当の
大家に因つて描かれたものなのであらう、この筆使ひは何処かで見た事が
あるやうな気さへする。
ふと、みどりさんが掛け軸の隅にある小さな印に気付ひた。消え掛かつてゐる為、
判別し難いが、わづかに宗辰と云ふ文字が確認できる。さうだ間違ひ無い、この印は
江戸初期の画家、柔屋宗辰に因る物である。宗辰は対ひになつてゐる動物の画を
良くしたが、これは未だ見ぬ宗辰の習作なのであらう、道理で見覚えのある画風な訳である。
宗辰の未出の画であれば、話題性は充分過ぎる程である、若しこれが五月雨堂の
内装を飾る事になればとおれの心は躍つたが、老主人に何と言へば良いのか。
このやうな芸術品、ともすれば国宝にも成り兼ねない物を、見も知らぬ若僧から
くださいなどと唐突に言はれても、叩き出されるのが関の山である。
然れどもここで芸術品を見ただけで唯帰へると云ふ事が出来ぬのもまた現実である。
男児たるもの、このやうな時こそ度胸の一つも見せねばならぬ。
ご主人、ものは相談なのですが、この掛け軸を歳末まで貸して頂く事は出来ないでせうか。
ひと呼吸置ひて、あヽ構はぬよと云ふ返事が返へつて来た。
不躾な事は百も承知です、そこを何とか、と言葉を続けやうとしてゐたおれは、
余りにあつさりとした今の言葉が俄かには理解出来ず、そのまヽ固まつてしまつた。
良いと言ふのだから素直に借りて置けば良いのであるが、おれは混乱してゐた。
しかし本当に良いのですか、これは相当な価値の物ではないのですかと尚ほも聞くと、
あの世へ持つて行ける訳で無し、大切に扱つてもらへるならばそれで良い、と。
それに、と老主人はスフィイの方に目を向けた。
其処の嬢ちゃんならば、わしが嫌だと言ふても持つて行つてしまうだらうしなァ、と
さも可笑しそうに笑つた。
狐につまヽれた気分ではあつたが、何はともあれ、おれは目的を達する事が出来たのである。
何もかもが上手く行きさうであると云ふ高揚感に包まれて、おれは京都を後にした。
だが好事魔多しとは古人も良く言つたもので、次なる関門が大口を開けて待ち構へて
ゐたのである。
長瀬さんと別れ、おれとスフィイとみどりさんの三人が懐かしの五月雨堂に
帰へつて来てみると、店の前へに不吉な人影が立つてゐるではないか。
例へるならばさう、死者に地獄行きの判決を読み上げる前への閻魔大王とでも
言ふべきか。
明らかにおれを待つてゐたその御仁は、言ふまでも無い、高倉宗純氏である。
おれが旅に出てゐる数日間の何時から待つてゐたものか、高倉氏は、おれたちの
姿を確認するとそれはそれは恐ろしい形相で近付ひて来た。その縁起の悪い顔が
目に入つただけで何か良くない事が起こる予兆はあつたが、この雰囲気はだう見ても
只事では澄まぬやうである。
そら来た、やれ来た。何を言はれるのかは凡そ見当が付ひてゐるが、敢へて聞ひて
やる事にしやう。
お前へと云ふ奴は、と云ふ前口上から嵐のやうな大音声と恫喝が巻き起こるが、
余りに五月蝿過ぎて何と言つてゐるのか良く聞き取れぬ。
まァ、みどりさんが高倉氏に何も言はずに、おれの旅路に着ひて来てゐると云ふ事は
薄薄察しが付ひてゐたので、今さらだうかう言はれたからと云つて動揺する事は無い。
寧ろおれよりもみどりさんの方が哀れを催す位におろおろとしてゐた。
いちいちこの爺さんの相手をしてゐられる程の元気は無かつたので、おれは一言
はっきりと言つてやつた。
愛する二人が共に旅をして何が悪いと仰るのです、と。
無論虚言ではあるが、この際最早だうでも良い事だ。おれは早く我が家で寛ぎたい、
それだけである。が、高倉氏にしてみれば冗談では済んでいまい、顔色が面白い位に
真ッ赤に染まつて行つたかと思ふと、おれに掴みかからんばかりの勢ひで迫つて来る。
おれは造作も無くそれを躱はし、素早く間合ひから離れた。かかる修羅場染みた状況では
あるが、子供の頃にやつてゐた鬼ごつこのやうで愉快である。
しかし高倉氏はそれ以上は追つては来なかつた。体力では勝てぬと云ふのが明確で
あるからであらう、悔しさうに歯噛みすると、条件を達しやうと達しまいと、みどりとの
交際は認めぬ、と言ひ渡した。
おれも負けじと、条件を達すれば、認めやうと認めまいと交際する、と言ひ返へしてやる。
断じて認めぬ、いいや交際する、認めぬ、いや交際、とまるで子供の口喧嘩のやうに
なつて来た所でスフィイとみどりさんの仲裁が入つた。
高倉氏は最後にみどりさんに向かつて、お前へは今後一切この店へ来る事は
罷り成らぬ、と宣言してみどりさんの腕を引ッ張つて大股で去つて行つた。
474 :
100円:03/04/06 12:17 ID:mg+p5jwI
後先考えないけんたろ(・∀・)イイ!
>>474 書いてゐる人間も後先を考へてゐないのでありました