それにしても、初めて女を抱かうと云ふのに、おれの頭は何故か冷静である。
否、冷静と言ふよりかは、どこか冷めてしまつてゐると言つた方が良いやも知れぬ。
こんなに好い女と口づけを交はしても、その豊満な肉体を思ふがまヽにしてゐても、
おれの心中には情熱ではなく、虚無しか湧き上がつて来ないのだ。
その癖、下腹部だけは、おれの意思とは裏腹に独り気を吐ひてゐるのがまた
恨めしくも情け無い。
兎も角もこの期に及んで何を迷つてゐるのだと己に言ひ聞かせながら、おれは
みどりさんの豊かな胸を揉みしだく。俯きながら何かをぢッと堪へてゐる顔を
空ひてゐる左手でわづかに上向けると、ふたたび唇と唇を合はせる。
おそらく顔が上気してゐるのであらう、熱気が唇や頬を通ほして伝はるのを感じる。
程無くして、みどりさんの身体から強張りが抜けて行くのを確認すると、
おれはみどりさんの着物にそろそろと手を這はせて、胸元から内側へと進入する。
再度みどりさんに緊張が走つたが、それはほんの刹那であり、直ぐに収まる。
既にこの女はおれの為すがまヽであるなどと考へてゐると、また新たな熱が
湧き上がつて来た。
と、その時である。
草を薙ぐ音が聞こへたかと思ふと、聞き慣れた声がおれの耳に届ひた。
おれは咄嗟にみどりさんから離れ、何気無い振りを装ふ。みどりさんも慌てて
着衣の乱れを整へておれに倣つた。
この底抜けに陽気な声の主は、言ふまでも無い、スフィイである。
折角の良い所を、と思ふと腹が立たぬ事も無かつたが、どちらかと言ふと
ここで頓挫して却へつて良かつたやも知れぬと云ふ安堵感があつた。
色の世界に浸つてゐる暇は、今は無いのだ。
おれはスフィイに声を掛け、暫しの間ひだ三人で庭を巡つた。
何かを話してゐたのであるが、内容はぼんやりとしてゐて覚へてゐない。
現実に還へつて、ふたたび理不尽な要求と戦はねばならぬ事を考へると
気が重かつた。
ほんの数分前への出来事ですら、遠ほい昔の出来事のやうに思へた。
トリップ忘れた(;´Д`)
なんかこの一週間で随分寂れたような……。
いますよー!(;´Д`)ハァハァ
グッジョブ!!
エロ路線は回避されますた(W
>なんかこの一週間で随分寂れたような……。
ちゃんとみてますよ〜!
でもたしかに住人は他のまじアンスレにくらべたら少ない…?
見ますた!寸止め…ハァハァ
基本的にまじアンスレはどこも寂れ(ry
続き見ましたー
いいねー
骨董の件もどうなるのか気になるし。
絵ですがぼちぼち描いていくつもりです。
今は仕事が忙しくてゲンナリ。
まったりいきましょう。
>基本的にまじアンスレはどこも寂れ(ry
ましろスレ兼な住人ですが、こちらも微妙な書き込み密度だ〜よ。
官能的なシインに行つた方が良いのかさうで無い方が良いのか分からぬ
おまかせしたい
>438
アンタの文章はエロなしでも充分に読み甲斐があるから、美味しい
ところはあとまでとっておいて欲しいね。個人的には。
まぁ、エロ書けと言われても書けるかどうか自信がありません(w
ここのところ仕事とかRoutesとかRoutesとかRoutesで忙しかったのですが、
ぼちぼち続き書いて行くことにします。
健太郎「そういえば、もう卒業式のシーズンですね」
みどり「あ、そうですね。なんだか懐かしい……」
健太郎「あ〜あ、俺もみどりさんの制服姿見たかったな〜」
みどり「ふふ……じゃあ今度着てきましょうか」
健太郎「ぜ、ぜひぜひ!」
ぼかっ。
スフィー「馬鹿なこと言ってないで、けんたろも手伝ってよ」
健太郎「み、みどりさん、俺は本気ですから!本気……」
スフィーに引きずられて健太郎フェードアウト。
443 :
名無しさんだよもん:03/03/23 00:22 ID:lNnfzuGZ
翌朝、おれ達四人は揃つて京都の市中に出掛ける事にした。
今回に限つては骨董屋巡りでは無く、観光である。
真を言へば、悠長にしてゐる余裕なんぞ露程も無いのであるが、長瀬さんに
指摘を受けた事もあり、またスフィイに対ひする骨休めの意味もあつた。
おれがその事を話すと、奴はおれの言つてゐる事が理解出来ずに暫しの間ひだ
固まつてゐたが、目的を覚ると途端に眼を輝かせ始めた。
朝方に顔を合はせると、興奮して眠れなかつたのか、眼が兎のやうに真ッ赤に
なつてゐるではないか。近ごろ成長著しいとは云へ、まだまだ子供である。
観光とは言つても、京都と云ふ土地であるから、行く先は大概寺社仏閣である。
子供が見ても面白いのかだうかおれには分からぬが、スフィイは特に和室や掛け軸と
云つた類ひの物に惹き付けられるらしく、尤もらしく頷づきながら、飽きもせずに
延延と眺め続けてをり、おれが呼んでも気付かぬ事さへある。
本人曰はく、これとそれには魔力だか神通力だかあるなどと、また何時もの世迷言を
ほざひてゐるのであり、さう言へば、五月雨堂に居候するやうになつた時から、
スフィイは己がおれを殺してしまつたから魔力で甦へらせたなどと主張してゐたが、
その虚言癖は未だに直つてをらぬやうだ。
まァ、年ごろの娘に良くあるやうな気質なのであらうと、おれは気にも留めて
ゐなかつたのであるが、それは誤りであつた。
否、誤りどころでは無い、おれは大馬鹿者であつた。
小休止して、皆で昼餉の饂飩を啜つてゐる時の事である。
何時もは他人を呆れさせしめる程の大食漢であるスフィイが、珍しく中途で箸を置くと、
おれに目配せして外へ出ろと促すのだ。二三刻前へから、スフィイが不審な挙動を
してゐたのであるが、一体だうしたのであらうと、おれは饂飩を掻ッ込んで外へ出た。
スフィイは眼を閉ぢて物思ひに耽つてゐる様子である。そのやうなスフィイを久しく
見た事が無かつたので、おれは思はず、だうした、結花のホットケヱキでも恋ひしく
なつたのか、と茶化したのであるが、スフィイはわづかに頷ひただけで意にも介さない。
それどころか、驚ろくほど真ッ直ぐな眼でおれを見ると、呼んでゐるのだと唐突に
訳の分からぬ事を言ひ出すのだ。
いきなりそれでは分からぬ、詳しく説明しろ、とおれが言ふと、漸くスフィイは
記憶を捻り出すやうに眉間に皺を寄せながら、途切れ途切れに語り始めた。
それに因ると、昨晩、夢の中に二匹の猫が現はれてスフィイに手招きをしたのだが、
招くのに従つて後を追ふものの、行けど走れど追ひ着く事が出来ず、つひには
見失つてしまつたのださうだ。その見失つた場所がこの辺りの景色と良く似てゐる、
若しかすると求めてゐる物が見つかるやも知れぬ、とスフィイは言ふ。
たかヾ夢ではあるが、長瀬さんの意味深な発言の後でもあり、且つ藁にでも
すがりたい時でもあるので、おれに可否は無い。
だうすれば良いのだ、とスフィイに尋ねると、スフィイは魔力を使ふなどと言ひ始めた。
考へが顔に出たのであらう、スフィイは忌忌しげにおれを睨み付ける。
其処を堪へて尚ほも、魔力を大分消耗してしまふが良いかと聞くので、おれは
どんどん使つてくれ給へと言つてやつた。おれが魔法だの何だのを疑つてゐる事を
知つてゐるので、スフィイは諦めた様子で小息を吐くと、何事かぶつぶつと呟き始めた。
文句を言つてゐるのかとも思つたが、だうやら違ふやうである。
そのまヽぢッと眺めてゐると、気の所為かスフィイの指先が微かに光りを灯し始めた
やうに見えた。