高倉翁は、おれが目をぱちくりとさせているのを余所に、尚ほも言葉を続けた。
私も鬼ではない、お前への力量次第では考へてやらぬ事もない、
だが仮にもみどりは高倉財閥の跡取りとも云ふべき存在である、
生半可な力量では私を満足させることは出来ぬ、と。
そして、その力量とやらの条件をおれに突き付けて来たのであつた。
この店で壱千円の儲けを歳末までに叩き出す事、それが条件であると。
余りの常識外れな金額に、おれは他人事のやうな感覚で居た。
が、事の内容が段段と頭の中に浸透するに従つて、おれは呆然とすると同時に、
猛烈に腹が立つて来た。
またおれの知らぬ所で話が勝手に先走つてゐやがる。何時の間に二人の仲は
其処まで進んでゐたのか、これではまるで結納を目の前へに控へた男女のやうではないか。
兎も角落ち着け落ち着け、話し合へば分かる、と頭は呼び掛けてゐたが、それを無視して、
おれの口がまたもや唐変木振りを発揮しやがつた。
あんたには失望しました、骨董を見る目がある人物だと一目置ひてゐたのに、
金儲けの道具としか考へられぬとは、骨董通の風上にも置けぬ、
勿論おれに取つては飯の種ではあるが、必要以上に儲けやうとは思つておらぬ。
あんたはここに来る資格なんぞ無い、二度とこの店の敷居を跨ぐな、とどやしつけた。
今にしてみれば、よくもまァ、隠居したとは云へ、財閥の会長様に、ここまで青臭い
建て前が吐けたものだ、赤面ものである。
実際の所は、骨董屋も金儲けの手段であるし、おれも贅沢がしたいと口を大にして
言ひたいのではあるが、まさかここで本音を言ふ訳には行くまい。
>>297-299 えーと、応援(?)ありがとうございます。
まぁ、1000まで先は長いですし、ちんたら書いていくことにします。
>>300 300getおめ〜。
みどりさんスレでは初の快挙ですね(w
>>301 シナリオについては、雨之氏のシナリオをカットしまくったという椎原氏に
文句を言いましょう(;´Д`)
というか、貴方もこのスレでみどりさんシナリオの補完案を出してください(w
あと、むしろエロゲとしてはズンパンの方が不自然だと思うんですが、
まじアンではズンパンでない方が不自然というところがなんとも……。
305 :
名無しさんだよもん:03/02/10 01:47 ID:FV9ki/Lh
ヽ(´ー`)メ(´ー`)メ(´ー`)ノ
306 :
名無しさんだよもん:03/02/10 01:52 ID:DYs4lSXV
あんあんメンテ
おれの言葉に対し、高倉翁の面に怒りの表情がありありと浮かんでゐるのが
見てとれたが、流石は歴戦の強者と言ふべきか年の功と言ふべきか、
今にも店を追ひ出さんとするおれを制し、少しも怯む事なく言葉を続けた。
必要以上の儲けを得る事を嫌ふのが理想と言ふのであらば、それでも良い。
されど、お前へもこの店を切り盛りしてゐる身であるならば、理想ばかり追つてゐる訳にも行くまい。
それに私とて人の親、娘が商売人の元に嫁に行くと言ふのであらば、
せめて相手の男が最低限の物の売り方位出来るかだうか見極めねばなるまい。
儲けが厭だと言ふのならば、今年一年の売り上げで良い、壱千円に届かせてみよ、
悪い条件ではあるまい、と言ふのだ。
滔滔と話す高倉氏に圧倒されて、おれは返事に窮してしまつた。
確かに壱千円の利益を出すよりは、壱千円の売り上げを出す方が遥かに容易いが、
このこぢんまりとした店で、それだけの額を叩き出す事の厳しさは想像に難くない。
この糞爺、何が悪い条件ではあるまいだ、思いッ切り足元見やがつて。
よッぽど怒鳴り付けてやらうかと思つていた時、また何とも頃合ひ悪く、
みどりさんがやつて来た。その途端、みどりさんと高倉氏の両者の顔色が
さッと変はつたかと思ふと、おれを差し置ひて言ひ争ひを始めるではないか。
おれも半ば呆れて放つて置ひたのであるが、やがて、高倉氏がみどりさんの腕を
強引に取ると、先程の件確かに約束したぞ、と言ひ捨てて店を出て行つた。
しまッた、うやむやのうちに約束させられてしまつた。
何時の間に来てゐたものか、スフィイがおれの背後で、ご愁傷様、とぼそりと言つた。
何ゆえ人はかくも豊かなりし乳房を求めて止まん
健太郎のために金箔入りのチョコを作るみどりさん
314 :
名無しさんだよもん:03/02/15 01:41 ID:WHSlkrCf
オパーイage
315 :
名無しさんだよもん:03/02/15 01:46 ID:7y2WQz1C
あのさー、
パンパンパンパンパンドクドクドクドクッ!!!
朝目覚めると、そこは一面の白い世界であった。
そういえば、昨夜の天気予報で雪になるとか言ってたな。
冷える冷えるとは思っていたが、それにしてもよく積もったもんだ。
『……地方は、この冬で一番の冷え込みとなりました。各地で雪かきをする姿が見られ……』
一応、店を開けたものの、往来にはほとんど人影が見えない。
店内は俺ひとりしかおらず、テレビの音だけが妙に響いている。
スフィーはと言えば、子供は元気でいいなぁ、という俺の皮肉も気にせずに、
大はしゃぎで雪の中へと飛び出していった。まったく……。
それにしても今日は寒い。じじくさいが、ストーブの前から離れたくない。
まぁしかし、こんな日に骨董品を見に来る客もそうそういないだろう。
よし、今日は一日テレビとお友達になろうと、俺は店番モードを半ば解除していた。
「こんにちは、健太郎さん」
おっと、みどりさんだ。みどりさんなら大歓迎、俺はいらっしゃいませと
笑顔で答えて、みどりさんをストーブの前に案内する。
よほど冷えたのだろう、みどりさんはマフラーと手袋をしたままストーブに手をかざした。
「こんな日に来てくれるのはみどりさんだけですよ」
お茶を出しながら俺がみどりさんに語りかけると、みどりさんはくすりと小さく笑った。
「実は……あんまり寒かったから、今日は家の中でぬくぬくしていようかと思っていたんですよ」
「みどりさんって寒いの苦手なんですか?」
「はい、少しだけ……でも今日はどうしてもここに来ないといけなかったんです」
そう言ってみどりさんは鞄の中から包みを取り出し、はい、と俺に手渡す。
「え?これは……って、ひょっとしてチョコレート?え?もらってもいいんですか?」
「ええ、どうぞどうぞ。そのためにここに来たんですよ」
穏やかな笑み。あぁ、生きてて良かった〜〜〜。
「ありがとうございます、ほんっっっっと〜〜〜〜〜に嬉しいです。仏壇に供えて毎晩拝みます」
「そ、それはちょっと……」
みどりさんは苦笑する。
それにしても感激だ。雪の中わざわざ店まで来てくれて俺にチョコを……しかも随分高価そうな。
包装紙にはフランス語らしき綴りで店の名前が書いてあるが……
そういえば、以前結花から聞いた、本場のショコラティエを招いたチョコ専門店(なんでも、
買うのに3ヶ月待ちで、値段もべらぼうに高いとかいう)がこんな名前だったような。
「でも、本当にありがとうございます。一番欲しかった人からもらえたんですから」
「まぁ、お上手ですね」
「欲を言えばみどりさんの手作りだったらな〜、なんて言っちゃったりして」
「え?」
一瞬みどりさんの顔から笑みが消える。しまった、図に乗り過ぎだ。
「あ、冗談ですよ、冗談。これ以上欲張ったらバチが当たりますよね。もらえるだけでも神様と
仏様に感謝しないと」
慌てて取り消したものの、みどりさんはちょっとだけ深刻そうな顔をしている。まずいまずい、
話題を変えよう。
あ、そういえば、ちょうど前の骨董市でみどりさんが好きそうな茶碗を手に入れていたんだった。
いい機会だから見てもらおう。
「そうだ。いい茶碗が入ったんですよ。せっかく来てくれたんですし、良かったらどうですか?」
俺がそう言うと、みどりさんの頬がふっと緩んだ。
「本当ですか?じゃあちょっと見せてもらいますね」
みどりさんが茶碗を手にとろうと手袋を外した時、俺はみどりさんの指にいくつもの絆創膏が
貼っているのを発見した。
「その傷、どうしたんですか?」
「あ、こ、これは……」
なぜかみどりさんは赤くなった。何やら言いよどんでいるようだ。
触れない方が良かったのだろうか。
「あ、すみません。俺、差し出がましいことを……」
「あ、いえ、違うんです。その……」
しばらくみどりさんは考え込んでいたが、やがて意を決したように口を開いた。
「あの、実は昨日、健太郎さんにお渡ししようと思ってチョコレートを作っていたんです。
でも、ちょっと失敗してしまって……それで火傷を……」
「え?」
「一応、持ってきたんですけど、その……健太郎さんにさしあげられるようなものでは……」
「ください」
間髪入れずに俺は言った。
「え?でも……」
「ください」
「…………」
俺が真剣なのを感じてくれたのか、みどりさんはもう一つの包みを鞄の中から取り出した。
シンプルな包装紙にシンプルな箱。中身もシンプルな一口大のチョコ。
確かにみどりさんにしては失敗作なのだろう、多少不恰好ではあるが、それでも気になる
ほどではない。俺はチョコを一つ摘まんで口の中に放り込んだ。
うん、美味い。
「俺にとってはこっちのチョコの方が遥かに価値がありますよ」
「健太郎さん……」
見つめ合う俺とみどりさん。そのまま顔と顔が近付き、くちづけを交わす。
「……チョコレートの味がします」
そう言ってみどりさんは微笑んだ。
本日最高の微笑みだった。
「いつまでいちゃいちゃしてんのよ〜……中に入れないじゃない……」
その頃スフィーは、外で震えながら二人の様子をうかがっていましたとさ。
おわり
一日遅れのバレンタインネタでした。一応SSコンペ用……。
SSと言うよりは、「ゲーム中にバレンタインがあったら」という感じですが。
しかし、みどりさんって完璧超人だからSSにしづらいなぁ(w
324 :
名無しさんだよもん:03/02/15 06:15 ID:MbmzlNfu
ちきしょう!うらやましいぜ。みどりさんはきっと手作りチョコも持っていくかどうか迷ったんでしょうね グッジョブ!
完璧超人だといいながらチョコ作るのに苦戦してたりするが
そこに完璧な萌えを見出せる見事な描写!
グッジョ!
326 :
名無しさんだよもん:03/02/15 07:22 ID:MJbP9ubu
327 :
名無しさんだよもん:03/02/15 15:40 ID:qy/f5+FR
いいねえ
>>328 希少な結花CGありがとうございます
あと一人(だっけ?)がんばれ