超高級娼館「葉鍵楼」〜第二別館〜

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359跳ね水 1-1
 久しぶりの休日。繁華街に出ると、俺の足は自然と葉鍵楼に向かった。美凪さんに
また会える。そう思うと足取りも軽い。

「美凪さんはいるかい?」
 すでに顔なじみとなった、受付の青年に声をかける。
「はい、支度をさせますので先にお部屋へご案内します」
 青年は愛想良く笑いながら、俺を奥へと案内した。

「おじゃましまーす」
 通された座敷で待っていると、襖の向こうから妙に元気な声が聞こえた。女の声だが、
明らかに美凪さんではない。
 襖が開き、生意気そうな少女が入ってきた。藍色の木綿の着物、背の丈は俺の胸くらい。
腰まである長い髪を、上の方で二つに分けて結び、横に垂らしてある。
 少女は酒肴を運んできたようだった。美凪さんの姿は、無い。
「? お前は確か、いつも美凪さんにくっついてたガキ」
「みちるのことガキって言うな!」
 そう、たしかそんな名前だった。しかし、自分のことを名前で呼ぶとは、やはりガキだ。
「おまえなんかガキで充分だ。それより美凪さんはどうした」
「美凪はいそがしいの。あんたなんかの相手してる時間、ないの」
「なにぃ?」
「ほらほら、みちるが遊んであげるから。美凪をあんまり困らせたらダメだよ?」
「な ま い き い う の は こ の く ち か」
 頬をつまんで、一音ごとに左右に引っ張った。みちるの顔はよく伸びて、けっこう
楽しかった。
360跳ね水 1-2:02/12/17 22:44 ID:vUiv7ciZ
「いま白状すれば、罪は軽くて済むぞ」
「うにゅ、『あとから行くから、お酒飲んでてもらいなさい』っていわれた……」
 涙目になりながら、みちるは白状した。
「ま、そんなところだろうな」
「あ、みちるがやるよ」
 俺が酒を飲もうとすると。みちるは俺より先に銚子を手にした。意外に目ざとい。
杯を差し出すと、みちるは危なげない手つきで酌をしてくれた。
 とりあえず、飲む。
「おいしい?」
「お前みたいなガキに酌されてもなぁ」
 手酌よりマシだが、とは口に出さなかった。
「あ〜 またガキって言った!」
 頬を膨らませ、口をとがらせて抗議する様子は、どっから見てもガキだ。
「美凪さんに比べたら、まだまだ」
「そりゃあ美凪には負けるけど、あんたの相手なんかみちるでじゅうぶんだよ」
「はっ、お前相手じゃ俺の方がその気にならん」
「むむむむむ、言ったな〜」
 何を思ったか、みちるは立ち上がると俺に背を向けた。
361跳ね水 1-3:02/12/17 22:48 ID:vUiv7ciZ
 しゅるり、という衣ずれの音と共に、みちるの腰から帯が落ちる。そろり、と肩を
はだけ出しながら、こちらに流し目を送る。そのまま、崩れるように横座りになり、
みちるは薄く笑った。
「ほう」
 我知らず、感心のため息が出ていた。
 彼女の動きは非常に洗練されており、明らかに男の視線を計算に入れていた。
昨日今日に習い覚えたものでないことは、俺にも判った。
 美凪さんが同じ事をやったら、俺は鼻血噴いて倒れていたかも知れない。だが、相手は
所詮みちるである。色気より、微笑ましさが先に立つ。
 それでも、面白い芸には違いない。俺はしばらく見ていることにした。
 俺の反応に気をよくしたのか、彼女の笑みが深くなった。俺に見せつけるようにして、
細い指先を舐めてから、体の前に持っていった。俺から見えない位置で、彼女の手が体の
上を這い降りていく。喉、胸の間、鳩尾、腹、そして
「はぅん」
 俺に聞こえる最小限の音量で、みちるは喘いだ。
362跳ね水 1-4:02/12/17 22:50 ID:vUiv7ciZ
 自分が唾を飲む音で我に返った。身を乗り出しそうになっているのに気づき、慌てて
姿勢を正した。
 その間も、みちるは休まず動き続けていた。着物はすっかりはだけきって、
腰のまわりにまとわりついているだけだ。折り重なった布の中心で、みちるの
小さな背が揺れる。
「んっ、はあっ、あぁんっ」
 息を殺すようにして、みちるの微かな喘ぎ声を聞く。俺のことを意識しているのか、
いないのか、湿った物音に混ざる声の中には、男を誘う艶が、確かにあった。
 体を支えきれなくなったのか、みちるの上体が次第に横に傾いていった。それにつれて、
背中に隠されていた彼女の肢体が、少しずつ俺の目に入ってくる。
 微かな胸のふくらみ、その上で息づく桜色の突起。しっとりと汗ばんだ腹の上で、
二本の腕が忙しなく動き続ける。
 濡れたみちるの目が、こちらを向いた。
 みちるが、笑った気がした。
「はぁうぅぅぅぅんっ」
 固く目を閉じ、わずかに大きな声を出したあと、みちるはくたり、と弛緩した。
 呼吸を忘れていたのに気づき、俺は大きく息を吐いた。二人分の荒い呼吸音が、
静かな部屋に満ちた。
363跳ね水 1-5:02/12/17 22:54 ID:vUiv7ciZ
「どう? グッと来た?」
 仰向けのまま俺の顔を見上げ、みちるは聞いてきた。
「まだまだだな」
 俺は内心の動揺を隠そうと、わざとらしく酒を呷った。
「ふぅん、こんなにしちゃってるのに。それでもまだまだなんだ?」
 いつの間にか俺の懐に潜り込んでいたみちるが、ズボンの上から人差し指で俺の股間を
なぞり上げた。杯を取り落としそうになるのを、俺は必死でこらえた。
「だいじょうぶ、みちるが最後までめんどう見てあげるから」
 彼女はそう言って笑うと、俺のものを取り出し、先端に軽く口づけた。
 指先を雁首に絡めながら、唾液を塗り広げるようにしてみちるは竿全体を舐めまわした。
「おっきすぎて、みちるの口には入りきらないけど……がまんしてね」
 先端部を唇で包み、みちるは俺の上で舌を踊らせた。口の端からこぼれた唾液が、
糸を引いて落ちる。そのとき、
「失礼します」
 涼やかな女性の声が、襖の向こうから聞こえてきた。
 俺が返事をする間もなく、襖が開いた。そこには、廊下に座る美凪さんの姿があった。
 彼女は室内の様子を一瞥すると、無表情のまま一礼した。俺は声をかけようと口を
開いたが、なんと言おうか迷っているうちに、襖がぱたりと閉じた。
「あ、ちっちゃくなった」
 みちるの声が、遠くで聞こえた。
364跳ね水 1-6:02/12/17 22:57 ID:vUiv7ciZ
 美凪さんの後を追おうかとも思ったが、みちるを振り払うのも気が引けて、俺は
結局その場に座り直した。
「ほら、がんばれ〜」
 俺がため息をついている間も、みちるは熱心に奉仕を続けていた。俺が頭を
撫でてやると、みちるは顔を上げ、にへら、と嬉しそうに笑った。
 一度は萎えかけた俺の欲情も、彼女の的確な刺激で再び滾り立ってきた。みちるの頭に
置いた手にも、つい力がこもってしまう。
「そろそろ……だ」
 終わりが近いことを、俺はみちるに告げた。彼女は目線で頷くと、一層激しい動きで
俺を責めはじめた。
「くっ」
 みちるの口の中に、吐き出す。
 臆する風もなく、みちるは俺の欲望を受け止めた。雁首のまわりを指でしごき上げ、
射精をうながす。管の中に残った分も吸い出すと、みちるは少し上を向いて、
小さな喉をこくりと動かした。
365跳ね水 1-7:02/12/17 22:59 ID:vUiv7ciZ
「んに、いっぱいでたね〜」
 頭を撫でてやると、みちるは気持ちよさそうに目を細めた。
「ところで、さっき美凪の声しなかった?」
 そう、俺は美凪さんに大恥をかかせてしまったのだ。無表情で去っていった
彼女のことを思いだして、俺は気が重くなった。
「帰ったよ」
 やっとの事で、そう答えた。
「なんで?」
「どう考えてもお前の……いや、俺のせいか」
 怒鳴りそうになったが、みちるの怯えた顔を見て、自分を抑えた。
「もういい、寝る」
「ん、わかった」
 灯りを消して布団にはいると、みちるは当然のような顔で隣に潜り込んで来た。
「お前、ここで寝る気か?」
「ダメ? 二人の方があったかいよ?」
「……そうだな」

 夜中、寒さで目を覚ますと、みちるに布団を奪い取られていた。
一人の方が暖かかったな、と思った。