212 :
水月:
俺は死んだ筈だった、否、確かに死んだ・・・筈なのだ・・・。
確実に部屋の天井からロープを吊り下げたしロープの端に輪っかを作ったしそこに首を通したし足場代わりの椅子も蹴飛ばした。
つまり俺は確かに確実に完璧にパーフェクトに自殺したのだ。
だけど俺は今ある建物の前に立っている、建物の名は「葉鍵楼」
夢だと思って頬を抓ってみるが非常に残念なことに鋭痛がする、夢ではなさそうだ
「いらっしゃいませお客様」いきなり後ろから声を掛けられて俺は少なからず驚いた
思わず声の方向を向いてみる、声を掛けてきたのは20代前半位の男性、体は結構大きい。
俺はそこまで分析した所でふと感じた疑問を何の気なしにぶつけてみた。
「あの・・もしかして柏木耕一さん?」
馬鹿だな俺は、そんな事がある訳無いじゃないか、いくらここの名前が葉鍵で目の前にいる人物が柏木耕一に似ているからって本人の筈が無い・・・。
そんな事を考えていたから目の前の人物の答えに少々絶望に似た感覚を覚えた。
「はい、私、当「葉鍵楼」オーナーを勤めさせて頂いております柏木耕一と申します」
213 :
水月:02/12/01 16:19 ID:2LtjU10+
「ハァ!?」
思わずそんな事を口にしてしまった、スイマセン・・・と謝ると、
「いいんですよ、ここに来る方は大概そういう反応をしますから」と言いながら耕一さんは俺を建物の中へ招き入れる
俺はそれに従う、何かこの人の笑顔には逆らい難いものがあるな、そんな事をふと思った。
中はゲームと同じそのまんま鶴来屋でカウンターと思しき場所には金髪触覚の”あの子”がいた。
「あ、耕一お兄ちゃん、お客様?」俺はその犬耳が妙に似合いそうな子に頭を下げる、そこで気付いた様にその子も頭を下げ
「いらっしゃいませ、私オーナーのアシスタントをしています柏木初音です」と一言
俺はその慌てた仕草に可愛いなぁと思いながらも本当に葉鍵のキャラがいるよ・・・と変な感覚に陥った。
まぁいい、どうせ死んだ身だ、この際だから幸運だと思って楽しもうじゃないか
そうなると楽しむにしても一つの疑問が残る、「すいません、ここは一体どういう所なんですか?」
初音ちゃんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら俺は疑問を投げかける、すると耕一さんは笑顔でとんでもない事を言った
「え〜っとですね、簡単に言うと遊郭みたいなものですかね?」
俺は飲んでいたコーヒーをそれはもう盛大に吹き出した。
214 :
水月:02/12/01 16:43 ID:2LtjU10+
「す、すいません・・・」と平身低頭で平謝りする俺
「いえいえ、普通はそういう反応をするものですから」と耕一さんが言うと
「ここに来る人って結構こういうリアクションする人多いですよ」と俺がぶちまけたコーヒーを拭き取る初音ちゃんがそういった
「あの・・・、遊郭ってことはつまりその・・・、葉鍵の人とHな事をする所という事なんでしょうか?」
俺の質問に耕一さんはちょっと考えて「半分正解で半分不正解ですね」と答えた
「へ?でも遊郭っていうのはそういうものでは?」と少々混乱する俺に耕一さんが
「やっぱりこういう事は双方の同意が無いといけませんからね、お互いに話したりしてもらってその上で相手方
つまり貴方が指名した女の子ですね、その子が貴方の事を気に入れば性的関係を結んでもらっても構いません
あ、あとウチは時間無制限なんでごゆっくりして下さいね」
と教えてくれた、そしてそのままの笑顔で、しかし先刻までとは明らかに違う口調で一番重要である事を口にした
「お客様、誰をご指名なさいますか?」
「超先生と柳川で」
「わかりました」と耕一さんは冷静に流す
「うわっ!!耕一さん、冗談ですよ!!マジに取らないでください!!」ってゆーか超先生まで居るのかココはっ!?
「そうなんですか?では本当のご指名は?」耕一さんはなぜか残念そうにそう言う、なんで残念そうなんだオイ・・・。
とまぁコントの時間はここまでにしておいて実はひとつ俺には思うところがあった
自分が椅子を蹴る、この世との決別の瞬間に、父の顔でも母の顔でもなく、1人の葉鍵キャラの顔が浮かんだのだ。
「お客様、ご指名の方は・・・」なかなか回答を出さない俺に耕一さんが怪訝な表情で尋ねる
俺の言うべき名は1つに決まってる、死の瞬間に見た天使のような女性・・・・・・・・。
「保科智子さんをお願いします」