【ギャルゲー以前】
かつては駒としか見られてなかったがゲームのキャラクターに
ギャルとしての必然性を持たせたのが『夢幻戦士ヴァリス』であった
その後『夢幻戦士ヴァリス2』でアニメの声優を使うという
今のギャルゲーであれば当たり前の事を最初に行ったという意味も含めて
ギャルゲーの歴史は「ヴァリス」から始まったと言っても過言では無い
他にも『東京ナンパストリート』『アテナ』『スーパーリアル麻雀』などの佳作は存在したものの
あくまでもプレイヤーは「動かす」もしくは「脱がす」という即物的な欲求を満たすだけであり
現在のギャルゲーに見られる「心の琴線に触れる」感じを見出すことは出来ない
唯一「中山美穂のときめきハイスクール」については
中山美穂というヒロインとのコミュニケーションが可能であるという点をもって
例外だったと言うことが今にしてみれば言えるかもしれない。
【プリンセスメーカー、卒業、同級生】
そしてエポックメイキングなゲームが発売となる
父親となり娘を18歳まで育てる『プリンセスメーカー』
女子高の教師となって5人の美少女を卒業させる事を目指す『卒業』
そして同級生の少女達と交流を重ねて行く事で
練り上げられたストーリーを楽しむ『同級生』の三本である
この三本に共通して言える事は、ここに至って
初めてギャルそのものがゲームのターゲットになったという事である
「ローラ姫を助けに行くために旅立った勇者」に代表される勧善懲悪
さらに言えば少年マンガ的な展開とは別次元にある。
「敵を倒す快感」とは異なる「感情に訴える何か」を含んでいたのだ
それは比較的近い世界を舞台にしているがゆえの「感情のフィードバック感」ではないだろうか
身の丈三メートルの怪物と戦った経験は無くとも
ちょっと可愛いクラスメートに「ありがとう」と言われてドキドキした経験は誰にでもあるだろう
その、どうしようもなく喚起される感情
誤解を恐れずに言えば「本能」に近い部分に触れるゲームが
ここに至って登場したのである。
「敵をぶっ飛ばした快感」とは全く別の感情をゲームにおいて喚起させたと言う点において
この三本のゲームを忘れる事は出来ない。
【ギャルゲービッグバン】
そして『ときめきメモリアル』が発売になった。
『ときめきメモリアル』がいかに画期的であったかを述べるだけで
枚挙にいとまが無いのだが、『ギャルゲー』の進化という側面で
『ときめきメモリアル』を見た場合、このゲームは明らかにある歴史の中で
正統的に進化して生まれた結果であると言う事ができる
すなわち『プリンセスメーカー』で追求された
「育成=鍛錬」に比重を置いた育成シミュレーションとしての側面
『卒業』が提案した複数のヒロインとの交流
そして『同級生』が目指した物語全体を流れるストーリーの強化である。
この三つの要素を融合、さらにオリジナルのシステムを加える事で(結果的にではあるが)
「恋愛シミュレーション」というジャンルを確立させたのが『ときめきメモリアル』なのである
ここにギャルゲー時代の幕が開き
異端とされていたギャルゲーが広く市民権を得ることになった。
【ギャルゲーバブル】
どのような分野においても見られる事になるのだが
あまりにも完成度の高い、革新的な作品が提示された後には
新たなる成長の方向が見えなくなり、ジャンル全体が迷走してしまうことがある
神懸り的な完成度を誇るアルバム「サイン・オブ・ザ・タイムス」を発表して以後のプリンス
アントニオ猪木が政治家に転身した後に訪れた格闘技ブームを含めたマット界の解体
フリッパーズ解散後に大量発生した「なんちゃってフリッパーズ」と渋谷系…
パッと見は進化しているようであっても
これらはオリジナルの中にある一要素を特化、拡大させたものに過ぎない
(例えばK-1にしても猪木が行っていた異種格闘技路線の延長戦に位置している)
『ときめきメモリアル』の登場によって幕を開けたギャルゲー時代は
同じように自己矛盾を抱えつつ、しかし爆発的な勢いで進化と遂げて行った
面白いのは、この進化がユーザーの欲望(妄想)に非常に忠実な形で進化したということである
最も分かりやすい進化を遂げたのが「キャラ萌え」と呼ばれる
可愛いキャラクターを先行させていく事で人気を得ようとする方向である
これを最も先鋭的に進化させたのが『センチメンタルグラフィティ』
「ゲーム本編が発売される前に、既にグッズの印税が数億円に上っていた」
という噂のあるこのゲームは、甲斐智久の描く可愛い女の子達を確信犯的なウリにしていた
その手腕は見事で、ゲームの説明書の後ろ半分がキャラグッズのカタログになっているという
徹底振りであった。
32ビットマシンの登場はゲームの可能性を飛躍的に向上させたのだが
本来ならば歓迎すべきこの進歩を
「実写の声優さんとペアでボーリングが出来て嬉しい」=『スターボーリングDX』
というレベルでフル活用しているのが声優ゲームを中心とした「カルト化」の方向である
それに対して「物語強化」はハードの進歩に対応
より深みのあるストーリーを可能にしているという点で大きな可能性を秘めている
このように『ときめきメモリアル』以後のギャルゲーは大きく分けて
「キャラ萌え」「カルト化」「物語強化」の方向に進化している訳であるが
前述したように、それらは全て『ときめきメモリアル』の中にス既にある要素
しかも分かりやすい部分を特化して拡大したに過ぎない
もしも『ときめきメモリアル』以後を象徴するギャルゲーが出るのであれば
それは「意識する/しない」を問わず「キャラ萌え」「カルト化」「物語強化」の全ての要素を完全に満たした上で
なおかつ『ときめきメモリアル』にはない新システムを加えた物になるであろう