【AAカップ派も】折原みさおスレッド4【A+カップ派も】
一時間目終了後の休み時間―――
机の上に倒れ伏しているオレに、住井が声をかけてきた。
「折原、今日は何時集合なんだ?」
「今日?」
「おいおい、もう忘れたのか? 『ドキッ! 男だらけのクリスマスイブ!』
時間決めとかないと集まれないだろう?」
「……企画云々はこの際置いとくとして、一体誰なんだ? その致命的なまでのネーミングセンスのなさは」
「先週の水曜日にお前が言い出したんじゃないか。しっかりしてくれよ」
言われて思い返してみる。うむ、たしかにそんな話をしたような気がする。
でも普通本気にするか? どう考えてもその場限りの冗談だろうが。
「で、どうするんだ? 俺的には学校終ってすぐ集合、そのまま馬鹿騒ぎモードに突入したい所なんだが」
このままでは非常に不味い。強制参加させられてしまう。
何とか理由をつけて断らねば……。
「お兄ちゃん!」
脳細胞をフルに回転させて言い訳を考えていると、背後から軽い衝撃が襲ってきた。
この声、この感触。さては―――
「みさおか?」
「うん、そうだよ。すぐにわかった?」
「おう。お前の事だったらなんだってわかるぞ。それこそスリーサイズから手の平のしわの数まで全て、な」
「もう、お兄ちゃんたら……」
顔を真っ赤にして俯いてしまう。
ははははっ、みさおは可愛いなぁ。
「……折原」
呆れたような呼び声。
おお、住井。そういやコイツと話してたんだっけ。
「ところでみさお。わざわざオレの教室まで来て何の用なんだ?」
「あ、ちょっと確認したい事があって。
お兄ちゃん、今日は一時に正門前でいいんだよね?」
「おい! みさお」
ちょ、ちょっと待て。
「楽しみだな〜、二人だけのクリスマス・イヴ。お買い物して、ケーキを食べて、プレゼントを交換して……その後はいつも通り一緒にお風呂。
このごろちょっと恥ずかしいけど……お兄ちゃんに体洗ってもらうのって気持ち良いから、私、我慢出来るよ」
何てことを、何て場所で言いやがるんだお前は!?
こうなったらさっさと逃げださないと……。
「浩平!」
「……浩平」
「折原ぁ!」
遅かった。オレが立ち上がるより前に周囲をあの三人に囲まれてしまう。
前方には七瀬。これはわかる。オレの前の席だし。
右方には長森。稲城と近くで駄弁ってたみたいだから、これもまぁ理解できる。
問題は茜。さっきまで入り口近くの自席に座ってたはずなのに、一体どうやってオレの席まで来たんだ?
「浩平、嘘だよね?」
「……近親相姦は絶対に嫌です」
「乙女の純情、踏みにじったわね!」
「ちょ、ちょっと待て。オレの話を……」
「だって浩平、わたしに告白してくれたもんね。ずっと前から好きだったって言ってくれて……」
「浩平は私を過去の楔から解き放ってくれました」
「あたしを乙女にしてくれるって約束したわよね?」
フラグが無茶苦茶だぞ、おい。
「想いは時空を超えるんだよ」
「口にしなくても目で語ってくれました。私にはわかるんです」
「乙女の力よ!」
皆さん、超能力者ですか?
もはやオレの力ではどうしようもない。ここは一つ、みさおに事情を説明してもらって……って、あれ?
「住井、みさおはどこに行ったんだ?」
「とっくに教室に帰ったぞ」
なっ、いつの間に!
そうこうしているうちにも三人はさらにヒートアップ。
「浩平はわたしのお弁当美味しいって言ってくれたもん! たぶんあの後には『長森、オレのために毎朝味噌汁を作ってくれないか?』って続くはずだったんだよっ!」
「……いえ、それはただのお世辞です。私のお弁当には最高点を付けてくれました。つまり、私こそが浩平の伴侶になるに相応しいといえます」
「普通のお弁当なら普通に食べられるけど、あたしなんか落としてボロボロになったクッキーを食べてくれたのよ! 愛の深さは比べ物にならないわね!」
「おい、お前ら落ち着いて……」
「そもそも浩平がはっきりしないのがいけないんだよっ!」
「……そうです。男の癖に優柔不断すぎます」
「さっさと決めなさいよ!」
そして一斉にこっちを向いて―――
「「「誰を選ぶの!」」」
―――一方、廊下では。
「ふふふっ、みんな単純なんだから。
これでお兄ちゃんの信頼は失墜して私だけのものになるんだよ」
教室を覗き込みながら、一人ほくそえむみさおの姿があったとさ。