【AAカップ派も】折原みさおスレッド4【A+カップ派も】

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813ほかの誰かには求めない
酔い潰れた皆に毛布を掛けながらお片付けをしているあたし。たはは…なんか野戦病院みたい。

「みさお、ちょっといいか?」
「うひゃあっ! び、びっくりしたあ…」
「何故そこまで驚く」
「だって、お兄ちゃんも討ち死にしたと思ってたから…起きてたんなら手伝ってよぅ」

それには答えず、ソファーに寝転んだままちょいちょい、と手招きするお兄ちゃん。なにか企んでる顔。

「片付けは後にして、ちょっと二階に上がるぞ。もうすぐイブが終わるからな、急げ」
「…?」

気付けば時計の針は11時半近くを指していて。楽しかった夜も、あと少しで日付が変わろうとしていた。
お兄ちゃんの後に付いて階段を昇り、寝室に入る。……し、しんしつにっ? え、あ、えと…うぁぁ。
まさかお兄ちゃんそんなっだめだよぅ下に皆居るし、あたしまだお風呂入ってないし、それにそれに
心の準備だってまだだし、あ、でもでも……嬉しい、し……

「みさお、こっちに来てみろ。渡したいものが……みさお?」
「は、はいっ!? 当方ばっちり、か、覚悟完了でありますっ!」
「……いきなり固まったりおろおろしたりにへら笑いしたり、一体どうした? あと、覚悟ってなんだ?」
「なんていうか…出来れば、とっておきのぱんつに着替えたかったなあ、とか思うあたしもいるわけで…」
「…なーにを考えとるかお前は。まあいい、ちょっと待ってろ…」

呆れたような顔のお兄ちゃんが、ポケットから何か小さな包みを取り出す。綺麗にラッピングされた箱。
悪戯っぽく笑いながら、あたしに『それ』をそっと差し出す。もしかして、これ…
814ほかの誰かには求めない:02/12/24 23:26 ID:6xRu7Vhn
「メリークリスマス。良い子のみさおに、兄ちゃんからプレゼントだ」
「あ…………ちょ、ちょっと待って、すぐ戻るからっ!」
「どした?」

そうだ、そうだった。あたしだってお兄ちゃんにあげたい物があったのに。
タイミング計ってるうちに忘れちゃうなんて、ホントばかみたいだ。
急いで階下に戻って、クッションの下に隠しておいた包みを手に取る。踵を返して二階へ猛ダッシュ。
…途中、住井さんを踏んじゃったけど。ごめんなさい急いでますのでこれにてっ。

「はあはあ…ご、ごめんなさいお兄ちゃん…あたしも、これ、お兄ちゃんにプレゼント…」
「何を慌ててるのかと思えば…俺から貰った後でもよかろうに」
「そんなのだめっ! ちゃんと交換しないとっ」
「律儀なやつめ。よし、では改めて…メリークリスマス」
「メリークリスマス♪」

小箱と包みを交換する。なんだか照れくさくて、でも暖かい気持ちで胸がいっぱいになって。
少しだけ泣きそうになるあたし。えへへ…うれしいな…お兄ちゃんからの、贈り物…

「ねえお兄ちゃん、開けてみてもいい?」
「ああ。これも開けていいか?」
「もちろんっ。あ、でも気に入って貰えるかなぁ…」
「それは兄ちゃんも同じことだ」

そうして二人、丁寧に丁寧に包みを解いていく。そこから現れたのは。
815ほかの誰かには求めない:02/12/24 23:27 ID:6xRu7Vhn
「…指輪? これ、指輪だよねっ そうだよね?」
「手編みのマフラーか…よく出来てるな、大したもんだ」

お兄ちゃんの手には、あたしが懸命に編んだマフラー。あたしの手には、とても綺麗なプラチナリング。

「ねえ、お兄ちゃん…これ、どの指に」
「みさお、その指輪は『ピンキーリング』だからな。勘違いせんように」
「…はあい」

小指かあ…ちょっと残念。えへ、嬉しいのには変わりないけどね。
そしらぬ顔でマフラーを巻き始めるお兄ちゃん。あ、あれっ? なんか、ヘン…

「みさお…これ長すぎやしないか? どうみても三メートル近くあるぞ」
「うあ、や、やっぱり? 突貫作業失敗…」
「やっぱり、て。判ってたんなら程々の長さで止めておけば…」
「うううぅ…間に合わないかもと思って、夕べラストスパートかけたら…」
「かけたら?」
「うっかりやりすぎちゃったみたいで…直してる時間もなくて、その…ごめんなさいぃ…」

自然と消え入りそうな声になる。お兄ちゃんは素敵なリングくれたのに…あたし、だめだめだぁ…ぐすっ。

「な、泣くなみさお。そんなことより指輪嵌めてみろ。なっ? よし、兄ちゃんが嵌めてやるから…」
「う、ん…」

お兄ちゃんは慌ててあたしの手を取り、リングを嵌めようとする。
伸ばした小指に、何の抵抗も無くリングが……あれ? ホントに抵抗ないよ?
816ほかの誰かには求めない:02/12/24 23:28 ID:6xRu7Vhn
「…おや? こ、こんなはずは…おやあ?」
「お兄ちゃん、なんか、すかすかしてるよ…?」
「…まあ、その、なんだ…もう少し大きくなってからのお楽しみということで…」
「そんなあーっ!」

やたら長いマフラーを引きずるお兄ちゃんと、抜け落ちそうな指輪を嵌めたあたし。聖夜のお間抜け兄妹。
しばらく戸惑ったまま顔を見合わせて、やがてどちらからともなく。

「…ぷっ…くくっ…くすくすくす」
「ははっ…わはははははっ!」
「…もうっ! ちゃんと指のサイズくらい測ってよぅ! あ、あははははっ!」
「お、お前が言えるかっ! 縄跳びできるようなマフラー編みやがって…わはははマジで長えっ!」

そうしてひとしきり笑っているうちに、なんだかうじうじしてたのが馬鹿らしくなって。
少し笑いが収まったあたしは、いまだ可笑しそうに笑い続けるお兄ちゃんを眺める。
優しくて、頼りがいがあって、まるでお父さんみたいで、でも悪戯な子供みたいな、あたしのお兄ちゃん。
…うん。やっぱりあたしは、お兄ちゃんのことが好きみたいだ。

「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「大好き、だよ」

ぽかんと口を開けたお兄ちゃんの顔が、みるみるうちに真っ赤になる。不意討ち成功っ♪
硬直するお兄ちゃんに近づいて。「ありがとう」とか「すき」とか「これからもよろしく」とか。
あたしの気持ち全部を詰め込んで。

―ちゅっ                            …もう一度、不意討ちした。
817ほかの誰かには求めない:02/12/24 23:28 ID:6xRu7Vhn
「しかし『賢者の贈り物』じゃあるまいし、どちらも使えないというのはなあ…」
「…ふふっ、実はそうでもないのであります…ほらっ♪」
「お? ちゃんと指に嵌って……て、おひおひ。まちたまい。その指は…」
「左手の、薬指だよ?」
「だよ? でなくて。そこはその、なんていうか、アレだ。……駄目だ駄目だそんなんっ! 不許可だっ!」
「聞こえませーん。なんにも聞こえなーい。えへへ…この指に決定っ♪」
「くっ…何時からそんな聞き分けの無い子にっ…! そんなことするなら兄ちゃんにも考えがあるぞ…」
「えっ? ななな何? …きゃあああああっ」

ぐるぐるぐる

「…これが世にも恥ずかしい『一本のマフラーを共有』だっ! ど、どうだみさお、恥ずかしいだろっ!」
「うん……恥ずかしい………すごく、恥ずかしいっ♪ (ぎゅっ)」
「……ぬかったああああっ! 『まんじゅう怖い』状態にっ!」

「…こら、そこのバカップル兄妹」
「「ゆ、由起子さん見てたのっ!?」」

皆で大騒ぎしたことも。お兄ちゃんとプレゼント交換したことも。泥酔した由起子さんにお説教されたことも。
…こんなに、なにもかもが楽しいクリスマスなんて初めてで。だから。

―あたしはきっと、2002年の12月24日を、一生忘れない―