葉鍵的 SS コンペスレ 5

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446蜃気楼 (1/1)
 見上げれば、どこまでも青空が広がっていた。
さっきまでは確かにその場所にあった雲が、気がつけばなくなっていた。
形を頼りにその雲をさがして目線をスライドさせると、俺の視界には一面の海が映った。
溶けてしまいそうなほどの空とマリンブルーとの交わりにすこし目を細めると、自らの
身体が宙に浮かんでいるようにも思える。落ちもせず、上りもしない。
そんな言い知れぬ不安の要素を抱えたままベンチに腰かけ、俺は呟く。

「……く旅れた」