あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
祐一は左手を美汐の左胸に当てました。
袖から入れた右腕とは違い、左手は小袖の上から手を置いています。
美汐は徐々に高まる情欲に、追い討ちをかける愛撫に声をあげると、くたっ、として後ろにいる祐一に体を預けました。
一旦右腕を美汐の袖から引き上げると、祐一は両腕を使い、美汐の胸元を大きく広げました。
そのまま力の抜けた美汐の腕を袖から抜くと、美汐は上半身を晒した扇情的な姿になってしまいまいます。
すでに美汐の顔は紅に染まり、ぼんやりとした頭で半身を外気に当てていることを知ると、両手を顔に沿えて顔を隠してしまいました。
祐一は直に美汐の裸体に触れ、首筋を舐めながら指先で美汐の固くなった乳頭を強く挟みこみます。
「そういえばな、昔俺がお前の袖に手を入れてる時、お前のことを押し倒したくてしょうがなかったんだぞ」
そういって祐一は、美汐の胸を下から掬い上げるように揉みました。溶けるように馴染む指先は、胸の底へ近づくと押し上げる力が強くなり、美汐の胸の鼓動に跳ね返されるようにすら感じられました。
舌で祐一は美汐の白い首筋を舐め上げます。赤い後髪をかきあげて、舌先が産毛を捉えると、撫でつけるようにして強く舌を押しつけました。
逆立った産毛が、祐一の唇と舌の脇をやんわりと刺激し、くすぐったさを感じさせていきます。
ほのかに浮かびあがってきた美汐の汗を、祐一は舐め上げました。
少し舌に辛い液体は、酒よりも強烈に祐一の髄を麻痺させていきます。
そのまま生え際を舌で移動しつつ、胸への愛撫は忘れないようにします。
舌はやがて美汐の右耳へと達し、祐一は耳介を前歯で甘く噛みました。
「ひぅっ」
皮膚を駆け巡る快感は、知らずのうちに声になって表われます。
嬌声は祐一の鼓膜を叩きつけて、麻薬のような電流へと変わり脳髄を痺れさせていきます。
上から覗きこむようにして、祐一は美汐の体の前面を眺めました。
山のようになっている胸には自分の手があります。手を使って、祐一は左右にその山を広げました。
谷間の奥に見えるのは、小袖に隠された美汐の秘唇です。思わず祐一は唾を飲みこんでしまいます。
「祐一さん……」
「え、なに?」
「私も…、私もあなたに胸を預けてる時。私もあなたに抱かれたかったんです。その場で、あなたに押し倒されてしまいたかった」
とろりと、溶けているような美汐の瞳。口の端からはだらしなく涎が垂れていました。
熱い視線がぶつかると、祐一の理性は一片の雪よりも容易く溶け去ってしまいました。
乙〜
しかし、このスレやはり住人減ったのかな。
ちょっと目を離した隙にdat落ちしそうで不安だ。
がんがれ。俺もいずれ投下するよ。
あの……
世田谷城名残茜記
の続き、書いて良いでしょうか?
世田谷城名残茜記、まだ?
あぼーん
期待保守sage
禿げしく良スレ。今更ですが。
保守
結局SSの続きは……。
未完で止まっているのも幾つかあるし、俺も期待しているのだが・・・
一日一レスくらいのペースで誰かがまた書いてくれれば活気が出てくると思うんだけどねえ。
姫が世田谷城に入って二週間が経ったある日のこと、どこか気分のすぐれない姫に浩平は問いました。
「茜、どこか悪いのか?」
「いいえ。なんでもないです」
「…本当か?」
「本当です」
いつもならここで終わるはずだったのですが、城に入ってからというもの姫はずっとこの調子だったので、
浩平はさらに問い詰めました。
「もう二週間もこの調子だろ?どこか悪い訳ないだろう」
「本当に何でもないですから…少し一人にさせて下さい」
「茜っ…!」
「…お願いです」
「………。」
浩平は歯がゆい表情で茜を見つめていましたが、そのまま無言で立ち去っていきました。
明くる日の朝、城内は騒然としていました。
「浩平!浩平!」
「瑞佳…頼む、あと五寸……」
「そんな事言ってる場合じゃないよ!茜さんが…茜さんがいなくなっちゃったんだよ!」
その言葉は浩平の目を覚ますのには十分でした。
「な、何!?」
「今、総出で探してるんだけど見つからないみたい…」
「見当もつかないのか?」
「…うん。でも、空地守様に伝えたら向うでも捜索するって言ってるし、この雨じゃあまり遠くへは…」
「…雨?」
「うん、昨日の夜から雨降ってるじゃない」
その瞬間、浩平の脳裏にある光景がフラッシュバックしました。
「…六本松の方へは誰か向かってるのか?」
「六本松?ううん、その辺りまでは行けないだろうからまだ誰も行ってないよ」
「そうか…」
そう言うと、家来の中崎を呼びつけ馬を出すよう命じました。
「浩平、まさか」
「思い当たるフシがあるんだ。ちょっと行ってくる」
「ちょ、ちょっと浩平!?」
そう言うや否や、馬に飛び乗り六本松へと走り去っていきました。
書くといっておきながら、一週間以上遅れて申し訳ないです…
本文にかなり端折った部分がありますが、ご愛嬌というやつで勘弁して下さい(吊
応援してます。焦らずゆっくりと続けてください。
とてもイイッ!!
がんがれ
期待!
ほっといたら落ちそうで怖いな……。
まぁ、昔話らしくまーたり待ち。
マターリもいいが、とりあえず保守くらいはしとこうか…。
420 :
名無しさんだよもん:03/02/19 13:26 ID:j2mhxesQ
421 :
名無しさんだよもん:03/02/19 21:38 ID:fp81gSSh
がんばっ
保守
期待しているんだけど・・
ku
二人は寝室へと移動し、崩れるようにして互いの衣服を捨て去ると重なり合いました。
美汐は仰向けに倒れると祐一の首筋に腕をまわし、そのまま抱き寄せようとします。
「おいおい、布団敷こうぜ」
「いいじゃないですか……、このままでも」
美汐は瞳を潤ませながら祐一に甘く囁きました。
「そんなわけにもいかないって」
しかし、祐一はそんな美汐を引き離すと立ち上がりました。
裸のまま置かれた美汐は、少し不満そうに口を尖らせています。
たいする祐一は、そそり勃つ自らの男根を隠そうともせず、手早く布団を敷き終えました。
「さて、これでいいな」
「はぁ………」
意気揚揚とした祐一に対して、美汐は溜息をついてしまいます。
今すぐにでも抱きしめて欲しかったというのに、夫はそんな心も汲まずに体を離してしまう。
それは燃えている心に水を注す行為に他なりません。
少しずつ高まりつつあった美汐の欲情は、短い時間の間に冷えつつありました。
「よし、美汐」
そう言うと祐一は美汐を抱え上げて、布団の上に落とすようにして放り投げました。
「いたっ、な、何を…」
裸のまま投げられるなどということは、美汐にとって初めてのことであり、無様な姿を晒してしまったと思うとつい顔が赤くなってしまいます。
ところが祐一はそのまま美汐に覆い被さるようにすると、素早く唇を合わせました。
唐突な口付けに、美汐は目を丸くさせ、体を固くしてしまいましたが、やがて力も抜けていきます。
ぐちゅぐちゅ、という音をたてて舌は絡み、唾液は混ざり合っていきます。
二人は舌を尖らせて、相手の唇を舌を舐めていきました。上になっている祐一は屹立したものを美汐の腹で擦るようにして刺激しています。
それが保っている熱は、直に美汐の皮膚の性感を熱くたぎらせて行きます。
火傷を負ってしまうのではないかと危惧するほど、美汐はそれを熱く感じてしまいました。
祐一の手は、美汐の肌を舐めていき、やがてその手を胸に置くと幾分強く揉みしごきます。
一旦冷めてしまったはずの美汐の性欲は、以前より強くなっていきます。
おお、久々の投稿。
期待しているんで頑張ってくれ!
残念ながら連続物の投稿待ちだけに陥っているスレのようですね。
なんか葉鍵板でよく見るような気もするけど一応保守る。
待ち
前屈み
431 :
名無しさんだよもん :03/03/03 17:09 ID:FAL+IkaI
世田谷城のほうはまだこないのか…。
むか〜しむかし、あるところに浩之と雅史という
二人の若者がおりました。
二人は猟師を生業として生活しており、村では
並ぶものがないほどの腕前でした。
冬とは思えないほど暖かなその日、二人はいつものように
山へ狩をしに入っていきました。
浩之「しっかし、今日はあったけぇよなぁ〜」
雅史「うん、師走とは思えないよね」
浩之「それでか、まだ一匹も獲物に出会えないのは」
雅史「それは関係ないと思うよ。でも珍しいね」
適当なことを話しながら山を歩きまわりましたが
一向に獲物には出会えません。
そして日も大分傾いてきた頃、
浩之「あ〜、こりゃ今日はダメだな」
雅史「随分冷え込んできたし、もう村に戻ろうか?
・・・・・・・あっ、雪」
浩之「げっ、昼間は暖かかったのに。
ついてねえなぁ、ったく」
二人は足早に山を下っていきました。
浩之「あれ、おかしいな。いつもの道、だよな?」
雅史「間違えてはないはず・・・・
だけど・・・・」
浩・雅「「・・・・・・・・・」」
いつもの山を降りる道、なぜか途中で道が
なくなっていました。
雅史「どうする、浩之」
浩之「どうするって、道を探すしかないだろ」
そうして二人は道を探して歩き始めましたが
段々暗くなり、雪も強くなってきました。
寒さに震えながら歩きまわりましたが
ますます山奥に迷いこんでいるような
錯覚に陥ります。
体が重く、いつもは苦にならない銃の重さが
ズッシリと肩に食い込み始め、
浩之「・・・・(もうだめぽ)」
と思い始めたそのとき
雅史「浩之、あそこに・・・灯りが見えない?」
紫色になった唇を震わせながら言って来ました。
浩之「どこだ?」
雅史「ほら・・・・、あそこ」
確かに、吹雪に見え隠れしながらも灯りが見えました。
とりあえず、保守がわりに投下。
ss初心者なんで話の展開の拙さは
生暖かい目でみてやってください。
雨月さんだよもん氏並みの文才がホスィ
435 :
名無しさんだよもん :03/03/04 00:08 ID:8cGcbDjg
おお、新作登場。
技術的なことに関する応援はできないけど、頑張って。
>>432-433 『注文の多い料理店』だったら、バックアップするから、頑張ってくださいな。
技術よりも、やる気が一番のスレですからな。
義犬物語
山々から赤い炎が昇るようにして、朝が生まれようとしていた。
空を覆う青の天幕は、広がりを増し夜を終わらせようとしていた。
木々に射し込む白色の光が、枝葉に付着する朝露を輝かせていた。
森にも等しく朝が訪れ、霜が降り、しっとりと濡れた枯葉の残骸は土と同化し、柔らかな土壌へと変わっていた。
冬が近づいていた。
往人は猟を行うため、いつものように狩猟犬のポテトを連れて山の深いところへ向かった。
鬱蒼と茂る枝葉の間を、音を立てぬようにすり抜けてゆく。
朝の光が森を濡らし、薄く広がる霧の中に鳥の鳴き声が渡っていく。
静かだと言っていい。
多少の空腹感を感じながら、往人は歩みを進めた。
やがて日が昇ってくるのだが、往人はまだ獲物を見つけきれずにいた。
疲れも出てきたため、往人は腰に着けた包みから握り飯を取り出した。
妻の美凪が「日本人はお米族」などと言い、毎日包んでくれるのだった。
それを頬張りながら、往人は今後の算段を立てようとしていた。
ここ最近の猟は不調続きで、今では食うものに困る有様だった。
妻の美凪は口には出さないものの、少しやつれてきていた。
この握り飯も貴重な食料の残りだった。
「くそっ、このまま獲物が見つからなきゃどうしようもねぇ……」
呟きは中天に上る日の光に消されてゆく。
自分が空腹に耐えるのは特に問題が無いのだが、妻の美凪だけは違った。
夫としても、妻を空腹に晒すのは忍びなく思っていたのだ。
何より美凪は自分を差し置いて、往人を優先している。
往人は何度も美凪に、我慢する必要はないと言うのだが、首を横に振るばかり。
今日はきっと成功します。という美凪の言葉も、いつから聞き始めたか分からない。
「お前もちゃんと働けよな」
足元にいるポテトに言う。
「ぴこ」
分かったのか分からないのか、ポテトは返事をした。
空腹を癒すと、往人は立ち上がった。
「お前のためにも絶対成功させるからな……」
ここ最近、兎の一羽ですら捕らえられない自分を、往人は不甲斐なく思い拳を握り締めた。
背に負った猟銃も、ここ最近吼えることはない。なにせ獲物を見かけることもないのだ。
一旦銃を出し、一度丹念に調整を行った。
特に問題というものはなさそうであった。
それを終えると、往人は銃を立てる。
鉄でできた銃身を眺め、思案に耽った。
「落ちつけ…」
自分の道具を見つめる行為は、一般的に見られる集中法の一つである。
美汐と祐一のエロシーンが思いつかず、他に浮気してみたり。
妻の生活を保つために、往人は必ず猟を成功させなければいけなかった。
「よしっ」
決意を胸に往人は歩き出した。
獣道をゆき、足跡や糞がないかを調べていく。ポテトも匂いを獣の匂いを嗅ぎつけようとしていた。
往人は左腰に下げた山刀を取り出し、近くに生えている木に印をつけた。
猟師独特の文字で、これは猟師によって使い方も意味も違ってくる。
こうやって範囲を色々と変えて、往人は獲物を狭めていく。
この場所は、紀州から泉州にかけての山であった。
また、往人は弘法大師が建立した高野山の修験者をしていたものの子孫だった。
この山より奥へ進んだ場所にある高野山で、修行をしていた女性、それも数百年にひとりの逸材とまで呼ばれた女性の子孫であった。
しかし、それも数百年以上前の正歴時代であり、往人はおぼろげにしかその事を知らなかった。
その子孫は、高野山を離れ散り散りとなり、紀州へ行くものや大坂、京へ行くものなどが多かった。
森に落ちる木陰を縫い、往人は進んだ。
しばらく山を行くと、鹿を見つけることができた。
それも良いことに、大きく艶のある毛並みをしていた。
喜びの感情に包まれた往人だが、仕留めなければと思い、気を取り直した。
往人は気配を消し、銃を出すと鹿との間合を埋めた。
気配を察したポテトも、同じく意識をみなぎらせているようだ。
落ちつけ、これで成功すれば美凪に楽をさせてやれる。
往人は心の中で呟いた。
血の流れる音が、往人の耳をつく。
体の腑が上へ上り詰めるのを感じていた。
落ちつけ…
力を抜き、腑を落とす。
重心が上ずれば、何もうまくいくことはない。往人はそれを知っていた。
丹田に意識を置いて、背を伸ばす。
よし…
鹿は往人に気づくことはなく、少し急になった斜面の上にいる。
往人は全神経を鹿へと向けた。
世界からすべてを消して、鹿と二人になる。
集中できているのが自分でも分かった。
矢を構え、銃を構えた。
しっかりした重みを肩で感じながら、息を殺す。
細く長く息を吐き出す。
美凪を楽にさせてやれると思うと、嬉しくて仕方がなかった。
その時。
「ぴこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
唐突だった。
「なっ?!」
往人が声をあげた時にはもう遅い。
鹿というのは元来周囲によく気を遣うものだ。
その鹿が、これだけの大音声に気づかぬわけもなく、すぐさま駆け出した。
「くそっ!!」
往人は慌てて引きがねを絞ったが、弾は木に刺さっただけで、鹿に吸いこまれることはなかった。
轟音に鳥が飛び立ち、木々が騒めいた。
往人の脳裏に微笑みを浮かべる妻の姿がよぎった。
本当は辛いのに、そんな顔も見せることのない妻。
幸せにしてやりたい、そう思っていた。
今、できると思った。
何故できない、何故本当に笑わせてやれない。
往人は問うた。
答えは、足元に居た。
「この馬鹿犬っ!!!」
往人が一喝しても、ポテトはまだ吼えたてるばかりだ。
その態度に往人は全身の血液が頭に上るのを感じた。
否、血が昇っていることにも気づいてはいない。
山刀を取り出し、往人はそれを高く掲げた。そしてポテトへと振り下ろした。
白い毛並みに吸いこまれた銀の刀は、赤い血を吐き出す。
ポテトの白い毛に赤く染まる命の残骸。
首を切られたポテトだが、首だけが突然動き出した。
驚いた往人の上を、首だけが飛び越えていく。
飛んだ首は、そのまま近くに居た大蛇の首元に噛みついた。
なんと、往人のすぐ近くに見たこともないような大蛇がいたのだ。
顎を広げれば、往人をひと呑みしてしまうほど大きく、爛々紅々とした瞳を持つ大蛇。
蛇は噛まれたことに気づき、体をくねらせるがポテトの牙は、確実に蛇の体に致命傷を与えていた。
土の上で格闘が始まったが、結局ポテトは蛇から一度も歯を外さなかった。
やがて蛇は逃出し、藪の中へ消えていった。
しかし、死ぬだろう。
山に訪れた静寂の中。
そこには往人だけがいた。
ポテトは生き絶えていた。
「お前……、まさかこれに気づいて…」
往人は思い出していた。
自分とポテトが共に狩りに出ていたことを、そしてよき相棒としてやってきたことを。
よくよく考えれば、ここ最近の不調にもポテトは着いてきていた。
自分だってロクにものを食べていないのに、ご主人に付き添い仕事をこなしてきているのだ。
「俺は、なんてことをしてしまったんだ…」
考えていたのは妻のことばかり。
大事なのは、自分の狩猟犬であるポテトだってかわりありない。
なのに、ここ一番の大切な時、ポテトの心に気づいてやることはできなかった。
もう遅かった。
一度流れた血は二度と体に戻ることはない。
往人の視界がぐらつく。
膝をついて、動くことのないポテトを見下ろした。
長い間、一緒にやってきた。
俺は何故信じてやれなかった。
仲間だったのだろう。
双眸からこぼれる涙を拭おうともせず、往人は自分に問い掛けた。
涙もまた、心へ戻ることはない。
その後、往人はポテトを丁重に埋葬をした。
猟師の言語を用い、山の神に感謝するのと同じように心を込めておくった。
「すまなかった、お前を信じてやれなかった……」
最後に詫びた。
往人は今日あったことを、妻にすべて話した。
ポテトを誤解し、斬り殺したことも、埋葬したことも。
美凪は黙って頷き、最後に往人を胸に抱いた。
何も言うことはなく、ただ往人は涙で美凪の胸元を濡らした。
そして一ヶ月が経った。
往人は翌日から猟に出かけ、めざましい成果をあげていた。
しばらくは食べるものに困らないほどのお金を貯めた。
そのすべてを、美凪に渡した。
神妙な面持ちで、往人は妻と向かい合った。
「美凪、お前に言うことがある…」
「はい…」
「俺は高野山へ行こうと思う。俺が殺してしまった命の償いを、高野山での修行で供養したい」
「はい…」
「お前を連れていくことはできない…、だから」
往人は言わなければならない。信じてやれず殺してしまったポテトへの贖罪をするためにも。
「だから、お別れだ」
「……」
何も言葉を出さない美凪、首を振ることもしない。ただ、俯き黙っている。
そして唇が微かに動いた。
「…いやです」
「明日、出ようと思ってる」
「いやです」
「だから、明日の朝。最後に握り飯を作ってくれ」
「いやです」
「今日は、一晩中お前を抱いていたい」
「いやです、そんなことを…、出ていくだなんて」
美凪の瞳からぼろぼろと雫が流れ出た。うつむいたまま、頬を伝い落ちていく
「これだけの金があれば、山を降りてもやっていけるだろ」
言葉では答えず、美凪は首を横に振った。
「俺は、自分が許せない。あの時、怒りに任せて刀を振るってしまった」
「仕方が、なかったんです。あなたは悪く、ありません」
「ダメなんだ、それじゃ」
「私も連れていってください、高野山へ。こう見えても私、不思議な力とかあるんですよ」
「それはできない…」
「どうしてです。あなたのご先祖の女性も修行をしていたんじゃないんですか」
「大昔のことだ、今じゃ山に女は入れない」
沈黙がまとわりついていた。
「どうしても行くんですか…?」
わずかな時間を置いて、往人は言った。
「ああ」
たった一言に、別れの決意があった。
美凪はついに首を縦に振らなかった。ただ、横に振ることをやめただけで。
その晩、お互いの跡を残すために、夜の死に際まで抱き合った。
新しい朝が生まれるころになって、ようやく二人の体が離れた。
そして、日が昇ってしばらくしてから往人は身支度を整えた。本当は朝に出ようと思っていた。
腰には妻の握り飯。もう食べることはないのだろうそれは、いつもより重く感じられた。
「じゃあ、行ってくる」
往人は玄関に立ち、美凪に行った。
「はい」
「すまないな、こんな俺で」
「はい」
「そこは頷いてほしくなかったな…」
「だって、そうですし」
思わず笑みをこぼす往人。
「そうだな、本当に」
「私、がんばっちゃいます。ひとりでもやっていけるよう」
笑いながらそう言うが、目元が潤んでいた。
「あなたがいなくても、大丈夫です。凄いですね」
「ああ…、そうだな」
「えっへん」
「馬鹿、威張るなって」
再び見つめ合った。
美凪の目元は、泣き腫れていた。
往人は夜、泣きながら抱かれていた妻の姿を思い起こし、胸を締め付けられたが、どうしようもないことだった。
最後に、その頬に触れようと往人は手を動かしたが、途中で止める。
触れてしまえば、それだけで何かが壊れてしまいそうだった。
何が壊れるのか。
それは往人だったのかもしれないし、美凪だったのかもしれない。
もしかしたら二人ともだったのかもしれない。
美凪いいなあ・・・
保守っ!!
age nascatur potio amoris
保守
振りかえり、視界から妻の姿を消した往人は、言った。
「じゃあな」
「…はい」
愛別離苦を立て続けに味わうのは、往人にとっても辛いことだった。
辛いせいか、往人は幻を見ていた。
「ぴこっ♪」
「フ……、よほどお前別れたくないのか、ポテトの幽霊が見える。
それとも、俺を恨んで出てきたのか」
「いえ、違うと思いますが…、私にも見えますし」
「……」
「……」
「ありえないって」
そう往人が言葉を出した瞬間、木々の茂みから5,6匹のポテトが出現した。
ぴこぴこ言いながら、彼らは走りだし往人のもとへと来る。
「な、なんなんだ一体?!」
「なんなんでしょうか」
すると突然ポテトたちは走りだし、森のほうへと行く。
そしてついて来いと言わんばかりに、ぴこぴこ鳴いて往人を見つめていた。
夢か現か幻か、いずれか知らぬが往人はその後を追った。
それが何なのかは分からない、黄泉の国へ連れていこうというのなら行ってやろう。
そういう気持ちもあった。
やがて森の奥へとつくと、ポテトの墓へと辿り着いた。
そこで往人が見たものは、頭を軽く破壊してくれる奇怪な光景だった。
ポテトを埋めた場所から、ポテトが何匹も生まれてきた。
わらわらと増え続け、今では20匹を越えているようだ。
「一体これはどういう…」
「はぁ、やはり芋(ポテト)ですから埋めれば増えるのでは」
「いきなり現れて、必死で積み上げたものを一瞬で壊すようなツッコミはやめてくれ…」
「酷いです。愛する人を追ってついて来た可愛い妻なのに……」
「ああ、かわいいな」
増え続けるポテトの大群を眺めながら、無表情に往人は呟いた。
「ぽ……」
ひと照れしたところで、混乱気味の往人に美凪は切出した。
「これはきっと、ポテトの分身。この子たちを育てることが、あのポテトにとって最大の供養です」
「本当か…?」
「はい、そうです」
美凪は口からでまかせを言い、なんとか往人を引きとめようとしていた。
「ほら見てください。この子たちを、ポテトの生き写しです。生きているもののために生きることが、やはり尊いですよ」
「そうか……、そうだよな」
「はい、一緒に育てましょう」
往人は心に巣食う、どろどろとした雲が晴れるのを感じた。
自分の過ちを、新しい命をもって償おう。
それが自分の贖罪だ。
「よし!! お前ら、今日から俺が世話をしてやるぞ」
その声を聞いたポテトたちは、一斉にぴこぴこ鳴き出した。
あまりの数と大音声に、山という山が震えて鳥たちが飛び立っていく。
往人の肌が音でびりびりと痺れた。
「ぐあっ、うるさい…」
直接聞いてしまった往人に対して、美凪はちゃっかり耳を塞いでいた。
それから数ヶ月。
「てめーらあぁぁ!!!」
往人の怒号が響くが、ポテトたちの鳴き声にはかなわない。
「ぴこっ」「ぴこぴこ」「ぴっこり」
結局、すべてのポテト引き取ったのだが、彼らは手間がかかりすぎて仕方がない。
毎日彼らの世話に時間をあてなければやっていけないほどである。
しかも、以前のポテトのように訓練されているわけでもないので、猟に連れていくことはできない。
それどころか吼えたてるため、足手まといにしかならなかった。
毎日山からぴこぴこと鳴き声が聞こえてくるので、泉州の平野に住む農民たちは怪訝に思うこともあった。
やがて往人は猟師をやめ、興業の旅にでることになった。
何故か直視できないほど怪しい踊りをする犬と、人形を自在に操る男はそれなりに評判になった。
もちろん妻の美凪を連れての興業だ。
やがて二人の子孫も、おなじように興業で身をたて、法術とよばれる力を遣い各地をまわるようになった。
こんな話を聞いた帝は、犬の忠義にいたく感動し、山の名前を「犬鳴山」と改めたそうな。
義犬物語、終。
うい、義犬物語終了です。
HDが死ぬとか色々ありましたが、ようやく終わりました。
本当は息抜き程度に書き始めたのに (つД`)
そんなわけで、長々とお目汚しすんませんでした。
ついでにいうと、元ネタは「犬鳴山」と理由とか由来とかでググればわかります。
ホントは妻と別れるんですが、なんか美凪が可愛そうなのでやめに…。
(・∀・)b ナイース
(・∀・)イイ!!
ほっしゅー。
名スレ保守
464 :
名無しさんだよもん:03/03/22 08:08 ID:lwcwmIle
保守
保
守
。
と、いうか他の方の続きは……。
めでたしめでたし。
さて
4月11日まで、このスレが保守されていたら俺が投下しよう。
471 :
名無しさんだよもん?:03/04/01 22:57 ID:Jx7/FkDx
保守
二人は助かったと思い、必死で小屋まで辿り着きました。
中に入り、囲炉裏に薪を放り込んで火をつけました。
そうして暖を取り、ようやく一息つくと今度は
腹が減っていることに気づきます。
浩之「そういや、昼飯食ったきりだったな・・」
雅史「ここには何もないみたいだね、
それより勝手に上がりこんじゃったけど
よかったのかな?」
浩之「良いも悪いもこうしなきゃ、二人して凍死だぜ?
ここに住んでる奴がきたら訳を話しゃいいこった」
そういって、もう一本薪を放り込みます。
薪のはぜる音
ごうごうとなる吹雪の音
それ以外なにも聞こえません。
朝まで我慢するしかねぇか、と浩之が考えていると
雅史「浩之、子供の頃聞いたおばあさんの話、
覚えてる?」
浩之「あん?」
雅史「ほら、雪の日に山に入ると・・・」
浩之「ああ、もののけに取り殺されるってやつか」
みると雅史は薄ら寒そうな顔で浩之の方をみています。
浩之「なんだ、お前あんな話信じてるのか?
あの話の6割がガゼネタの栗頭ババァの」
雅史「そう言うわけじゃないんだけど・・・
なんとなく思い出しちゃって。
浩之はあの話どう思ってるの?」
浩之「俺は・・・」
1.そんなもん信用できるか!
2.なんだかなぁ
続き(・∀・)ハケーン!!
分岐式ですか?
475 :
名無しさんだよもん:03/04/03 18:18 ID:AWO7HOeH
保保保保
昔、むかし在るところにお爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんは山へ芝刈りに、
お婆さんは……寝てました。
名雪「く〜、く〜」
だがいつまでも寝ているわけにはいかないので川へ洗濯をしに行きました。
すると川上からどんぶらこ、どんぶらこを大きな桃と……それにしがみついている男の子がいました。
名雪…もといお婆さんは急いでその桃を引き上げました。
苺だと直ぐに食べられてしまう可能性があるので、この時点で桃という選択は正解です。
祐一「寒いっ!裸のまま2時間も流されたぞ。出てみたらまだ川を流れてるし、どういうことだ?」
名雪「わあ…びっくり。まだ2時ぐらいかと思ってた」
祐一「それでも1時間の遅刻だ」
名雪「7年ぐらい流されても良かったんじゃない?」
祐一「うっ……」
この2人には7年前に何かあったようです。
ただこの場では明かさないことにしましょう。
名雪「これ、あげる」
お婆さんは男の子に缶コーヒーを渡しました。
せめて脱脂粉乳の方が良いと思います。
名雪「名前はねぇ……次郎」
祐一「違うっ!」
名雪「花子」
祐一「俺は男だっ!」
名雪「じゃあ行こうか」
祐一「結局、名前はどうしたっ!」
見よう見まねで書いてみました。
478 :
名無しさんだよもん:03/04/07 14:32 ID:L9QyKWO7
ほしゅ
480 :
名無しさんだよもん?:03/04/10 20:14 ID:ybsIzcrE
超先生保守
保守
むかーしむかし、キプロスとか言う島国に、長瀬源五郎という王様がおりました。
「発明は爆発だッ!!」
あぼーん
この王様は王であると同時にマッドなサイエンティストでもありました。
女には目もくれず、毎日毎日訳の分からない発明を爆発させる王様を民はとても心配していました。
そして民は神に祈りました。
『どうか王様が女性にも興味を示すようにして下さい。国の跡取りが心配です』
『つーか毎日毎日あんなに爆発してたら某国が大量破壊兵器があるとか因縁をつけて戦争をs』
「でぃすいずながせげんごろおぉッ!!」
あぼーん
王様は今日も絶好調。
国民の血税で作り上げた発明品を気前よくあぼーんしていると、民の祈りが天に通じたのか、王様の頭に天恵が降り注ぎます。
「めっ、めいどさんッ!キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!」
王様はそのまま研究室に逝ってしまいました。
―そのままおにぎりでおまちください―
「めいどろーぼ、めいどろーぼー♪」
狂喜乱舞する王様の前には、この世の物とも思えない美女が立っておりました。
「ご命令を、ご主人様」
栗色の髪、すらりと伸びた足、豊かな胸、無表情な顔、とんがった耳。
王様はそのメイドロボを『セリオ』と名付けました。
「せ〜りおさぁ〜ん」
王様はどこぞの三世のようにセリオさんの胸に飛び込みます。
「・・・複雑です」
王様はすっかりセリオさんの虜でした。
そんなある日――
「神よ、どうかセリオさんを人間にして下さい」
王様は跪いて神に祈ります。何があったのでしょう?
ともあれ民はその傾向を喜んではいました。
「(・・・メイドロボでは・・・孕ませて(;´Д`)ハァハァできんじゃないかッ!!)」
王様は鬼畜でした。
『・・・・・・』
王様の頭に天からの言葉が響き渡ります。
「え?おっけーです?」
しゃらんら〜
不思議な光が辺りを包み込みました。
『・・・・・・』
「え?これでもうセリオさんは人間です。って?」
王様は叫びながらセリオさんの元に駆け出しました。
「妊婦縛り!母乳プレイ!あ(以下検閲削除)」
『・・・・・・』(汗
え?失敗だったかもしれません。って?
「すぅぇ〜っりおすわぁぁぁん!!!」
王様は例のジャンプで振り向きざまのセリオさんに飛び込みます。
べいん!
と、王様の顔面にフライパンがヒットしました。
「私はもうメイドロボではなくなりました。よってあなたに仕える理由はありません。」
セリオさんは吐き捨てるように言います。
「むしろ今前のセクハラのお礼参りをさせて貰います」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリーヴェデルチッ!!(さようならッ!!)」
「では。もう二度と会うこともないでしょう」
「せぇーりおー!かんばぁーーっくっ!!」
セリオさんを追いかけた王様は、そのままどこか遠くに行ってしまいました。
その後この国は見事に栄えたそうです。
ギャフン。
駄文スマソ。
もとはギリシャ神話のピグマリオン。
ピグマリオンという王が自分の作った彫刻に恋をして、女神アフロディーテにその彫刻を人間にして貰って、それをガラテアと名付けて嫁さんにする。そんな話。
ヨーロッパ、クレタ島。
浩之@旅人「ここが鍛冶の神ヘファイストスの作った青銅の人造人間が守護する島か」
浩之が目の前の火山を見上げると、火口からよろよろと女の子が這い出してくるのが見えた。
浩之「!?」
緑色の髪と尖った耳の女の子は「はわわ〜」と声を上げながら斜面を転がり落ちてくる。
浩之はとっさに身を乗り出し、女の子を受け止めた。
ジュー
浩之「ギャアアアアアアアアッッ!!!」
火山の中で加熱された少女の身体は、容赦なく浩之の身を焼く。
マルチ「はわわ〜」
哀れ浩之はそのまま焼け死んでしまいました。
マルチ「後は死体をお掃除です〜マルチはりっぱな番人です〜」
ギャフン。
二発目。またもやギリシャ神話。
元はクレタ島の番人、青銅の人造人間タロスです。
攻撃方法が「石を投げる」or「火山の中で自分を加熱して相手に抱きつき焼き殺」と言うバイオレンスぶり。
踵の栓が弱点だったらしい。
・・・連投スマソ。もう書きません。
>482-487
ワラタ
たまに、大作の間にこういうのがくると、グッド!
>・・・連投スマソ。もう書きません。
そんなこと言うなよ、漏れはイイとおもたよ。
グッド。
(・∀・)イイね。
良スレですな。
491 :
山崎渉:03/04/17 15:51 ID:POPg0HZN
(^^)
24.237.68.63 , 63-68-237-24.gci.net , ?
うん
しゅっぽっぽ
ふむ、そろそろ書いてみようかな…
ここって編集サイトは立てないの?
編集ではないが、自分がここで書いたSSは、自分のサイトにひっそり置いてたり…。
正式なSSとして置いてるわけじゃないですけど。
またそのうち新しいの書こうかな。
今度は海外の童話あたりで。(嘘つくと頭の毛が伸びる北川ピノキオとか)
人魚姫の涙
海に一条の光に似た歌声が響き渡りました。
青く、深い海の底にある岩に、一人の少女が腰掛けています。
闇に似た黒い髪と、光より眩しく光る白い肌。そして海に似た青く澄んだ瞳。
美麗な少女でしたが、腰から下は魚と同じように鱗やひれを持っています。
少女は人魚でした。名を舞といいます。
静かな夜が降り注ぐ日は、こうやって空に浮かぶ月を眺めて歌を歌うのです。
彼女の歌は千里を越え、どの魚にも、どの人魚にも聞こえました。
静かな夜。それは彼女の歌によっても支えられていて、その歌声を聞いて争うという心を起こすものはいませんでした。
たった一人を除いて。
しんしんと夜は深みを増し、すべての命に等しく静かな眠りを与える中、舞は空を眺め続けていました。
海から望む空は、波のうねりに滲んだ世界だけを写しています。
それが舞にとっては不満でした。すぐにでも、海の上に顔を出し空を眺めたかったのです。
人魚は、若いうちに外の世界へ行くことはできません。ただ、約束の日がくれば外へ出ることが許されます。
舞にとって、その約束の日は二日後でした。
早く空へ。
その想いをのせて、舞は歌い続けました。
空を飛ぶように、綺麗で流れるような旋律と、荒れ狂う海のような情熱を込めて。
海底に広がる洞窟のひとつで、一人呟く女がいました。
「なんて忌々しい……」
舞の歌声を聞いても、彼女の心は苛立ちに溢れるばかりでした。
彼女は舞の歌声が羨ましかったのです。それは妬みに代わり、いつか彼女の声を奪ってやりたいと考えていました。
魔女。そう呼ばれる女は、すでに老齢でした。元々人間でしたが、魔法を使い海の底で隠棲しています。
自らの顔にある皺を、またひとつ深みを増すようにして彼女は悲痛な表情を作りました。
あの美しい声は、自分が持つしゃがれ、潰れたような声とはまったく違いました。
澄みきった海よりも綺麗な音。それこそ、乾いた喉へと水が染みこむように、聞く者の耳へと収まるのです。
「ああ、なんという声の持ち主だろう」
彼女は歌い続ける舞の声を聞くまいと、耳を塞ぎました。
魔法で彼女の声を奪ってやる。そう決意を胸に秘めました。
翌日。海から陽が登るはずでしたが、それも見えません。
空を覆うのは、黒い塊のような雲たちだけです。
嵐。それは海に覆い被さり、雨を垂れ流し、雷を打ち続けました。
その海に、一隻の船が乗り出していました。大きな船でしたが、波は船ごと壊してしまいそうな勢いです。
やがて船は海に飲まれ、乗組員はすべて強暴な海の喉へと流しこまれていきました。
船には、一人の王子も乗っていました。
すぐ近くの国の王子で、今回は船上パーティに呼ばれていたのです。
王子は海へと投げ出され、しばらくは泳ぎつづけました。
水は口に入ってきて、呼吸を止めます。何度も水を吐き、腕を動かし続けました。
けれど、体は海の底へと不思議な力で飲まれるようです。
「くそっ、剣が邪魔だ」
空と海の間に、雨という梯子が延々と続き、黒く輝く雲を切り裂くように雷は落ちていきます。
もがき続ける王子は、剣を外しました。そして泳ぎつづけました。
いけどもいけども、海は果てを示すことはなく。やがて王子は力も尽きてきます。
波のうねりに遊ばれ、体は何度も上下を繰り返し、もはや天と地がどちらにあるかも分かりません。
もうだめだ…。
王子はそう思うと、海へと沈んでいきます。
暗い海の底へ。
舞は明日から外へ行けるということで、心を静かに鳴らせていました。
外は嵐でしたが、やがて収まるだろうと舞は思っていました。この季節、こうやって嵐が来ることは知っていました。
嵐よりも、舞は海の外へ顔を出して、空を、月を見られるということが、何よりも楽しみでした。
胸は大きく音をたて、舞の耳へと届きます。
この鼓動に合わせて、歌いだそうと思った時です。
「人……」
海面より、人が降りてきます。外は嵐なのに、一体何故。
そう思い、舞は人へと近づきました。その人とは、王子に他なりません。
海に沈みゆくなかで、王子は一人の少女を見ました。
薄れ行く意識のなか、海と同じ色の瞳の少女が近づいてくるのです。
天の迎えか。そう思うのも仕方ないほどに、少女は人並みはずれた美しさの持ち主でした。
少女と目が合う。王子はにこりと笑い、何処にでも連れてってくれ、と目を閉じました。
嵐はやがて異国へと旅立っていき、翌日には穏やかな空が広がっていました。
一人の少女が砂浜を歩いていました。
少女は白いワンピースに身を包み、隣に侍女を連れていました。
侍女は赤い髪を、肩の上でカールさせています。背はさほど高くありませが、不思議な気品を感じさせています。
落ちついた様子で、隣を歩く少女に声をかけました。
「姫、今日はいい天気ですね」
「はい。昨日は嵐で、外には出られませんでした。今日はゆっくりと海を眺めたいと思います」
少女、佐祐理は海が好きでした。毎日のように海を見つめ、海と語り合いました。
その色合いや、海に生きる魚たち。そのすべてが大きく偉大に見え、佐祐理はみずからの小ささを知るのでした。
この海のような、広く美しい心を持ちたい。佐祐理はそう願っていました。
佐祐理はこの国の王女であり、姫でした。
長く伸びた金の髪に、白い肌。誰もが美しいと言って憚らない少女です。
何をやらせても一流でありましたが、それを自慢することもなく、優しい心を忘れてはいません。
ただ、海へ行くことだけは、誰にも反対されても止めることはありませんでした。
佐祐理は周りより優れすぎているがゆえに、友達という友達もいません。
侍女は立場が違うと言いますし、同じ年頃の女の子でも佐祐理には、友達というより尊敬の眼差しを向けるだけでした。
一人であることを、佐祐理は悟られることもなく、ただ笑顔を浮かべていました。
海だけに、佐祐理は心を許すことができたのです。
ふっ、と佐祐理は海へと目を向けます。
潮の香りが漂い、涼しい風が吹き渡って髪を薙いでいきます。
足元の砂は、昨日の嵐の影響で水を沢山含み、重たくなっていて、歩きづらいようです。
それでも佐祐理は、一歩一歩進んでいきます。
「あれは……?」
佐祐理は砂浜の先に、倒れている人を見つけました。
すぐさま昨日の嵐で海に投げ出された人だと思い、佐祐理は駈け寄りました。
肩をゆすり、声をかけました。
「大丈夫ですか! 美汐さん、人を呼んでください」
美汐と呼ばれた侍女は、短く返事をすると、スカートの裾を持ち上げて走っていきました。
「大丈夫ですか」
「う………」
青年は目をうっすらと開け、今自分がどういった状況にあるのかを、把握しようとしました。
しかし、頭は働かず、全身は油の切れた機械のように軋むばかりです。
「凄い熱…」
佐祐理は顔を青くしながら言いました。
やがて、侍女が呼んだ男たちが男を城へと運んでいきました。
その運ばれた青年は、隣の国の王子、祐一でした。
空だ。
舞が感じたのは、それだけでした。
嵐の海から降りる青年に近づいた舞。青年は目を開き、舞を一瞬見つめたのです。
舞はその瞳に、空を見ました。遠く、何処までも続く空。
青年は一度だけ笑い、そのまま目を閉じました。
まるで、嵐によって空が落ちてきたよう。
一度だけ見せた笑み。
それは今まで舞が見たことのない笑みでした。ただ一度の笑みは、舞の心をとらえてしまいます。
心はいつまでも鳴り続け、青年を思い出す度にぎゅっ、と胸が苦しくなるのです。
あの後、舞は密に近くの砂浜へと青年を連れて行き、そこへ横たわらせたのです。
本当はもう少し待たなければ、外へと出ることは許されなかったのですが、舞は青年を救うために砂浜へ行きました。
海面に顔を出してやり、息をしているかどうか確認をしました。
人は海の中で息ができないということを、舞は知っていたからです。
そのまま、波打ち際まで行くと、波の流れに乗せるようにして砂浜へ横たわらせました。
もうすぐ潮が引くということは、舞には分かっていました。
じきに来る満月に向け、潮は大きく動いているのです。
hoshu
海の底へ戻った舞。心は苦しみの腕に掴まれたまま。
舞は体を鳴らすようにして歌い続けました。
悲しい旋律は海すらも涙してしまいそうです。
恋を歌い続けました。たとえ、自分自身で恋だと気づいていなくても、聞くものすべては恋の心を感じていました。
胸が苦しくて、張り裂けそうな想いは歌へと滲み、何処までも伝わっていきます。
あの人に会いたい。触れていたい。想いは言葉になり、旋律になり、何処までも流れていきました。
海の魚や人魚たちは、舞が一体誰に恋をしたのかという話で持ちきりでした。
舞は美しいものの、誰にも恋心をしめしたことはありませんでした。
その舞が、これほどまでに激しい想いを込めて歌っているのです。
明日、外へ行ける。
舞はそう思い、歌い続けました。
自由へ、空へと近づけるのだと。
いいね
祐一はうっすらと目が開きました。
「ここは、何処だ…?」
祐一は起きあがると、そう呟きました。
石造りの部屋には、天井からランプが吊るされているだけです。
まわりを見渡すと、金属製の医療用具のようなものが見えました。
ベッドに寝ていることを知ると、祐一は体を起こします。
真っ白いシーツと、知らない服を着た自分。
「そうか…、俺は船から落ちて、それから…」
祐一が記憶への旅に進みかけたその時。
「あ、気づいたんですね」
美しい。祐一は一目でそう思った。そういえば、少し前に同じようなことを思ったような気がする。
ああ、そうか。あの海で、つまりあの後死んでしまったのか。祐一はそう考え、目の前の少女をこう結論づけました。
「天使様?」
「あははーっ、佐祐理は天使じゃないですよ。ただの人です」
そういうと、佐祐理はからからと笑います。
「そうか…。ここは何処なんだ」
「ここは医療室です。あなたは砂浜で見つけられて、ここに運ばれてきたんです」
「思い出した。俺は君を砂浜で見た覚えがある。助けてくれたのか」
祐一がそういって、立ちあがろうとすると、急に眩暈がして再びベッドに倒れてしまいました。
「ダメですよ。まだ熱があるんですから…」
「そうなのか…」
それは自分の体が証明しているので、疑うことはできませんでした。
「はい、だからしばらくは佐祐理が看病させていただきます」
「佐祐理、っていう名前なのか。俺は祐一」
「祐一さんですねー。分かりました。あと数日すれば治ると思いますから、安静にしていてくださいね」
「佐祐理さん、ひとつ聞きたい」
「なんですか?」
無邪気に笑みを浮かべる佐祐理。それにたいして、祐一の顔は真剣だった。
「俺のほかに、助けられた人はいないのか……」
途端に佐祐理は、今までの笑顔を嘘にするかのように、顔を歪めました。
「はい……。あの後、城のものに探させましたが、結局誰も……、ただ遺体はいくつかあがって、もう埋葬を済ませたそうです」
「そうか…、俺だけか。俺だけが助かったのか、なんてことだ…」
祐一は頭を抱えて、静かに泣きはじめました。
佐祐理はそんな祐一を胸に抱いて、泣き止むまで一緒にいました。
「大丈夫です。今はゆっくりと休んで、それから家に帰ればいいんですから」
「家?」
ああそうか。と祐一は思いました。
自分が王子であることなど、分かるはずがありません。
祐一はそのことを黙っておこうと思いました。
まさか、黙っておこうと思った相手が、隣の国の王女だとは考えもしませんでした。
「困った……」
舞は空に呟きました。
折角外へ出られるようになったものの、足はありません。
足がなければ、陸をゆくことはできません。
舞はもう一度でもいいから、あの空色の目をした青年に会いたかったのです。
こんな日々を、舞は数日過ごしていました。
あの嵐の日から、もう何日経ったことか。すぐにでも会いたいというのに……。
ただ海面から空を眺めているだけでは、あの青年に会うことはできません。
そんな折、舞は人間の足をくれるという人の情報を知り、急いでそこを訪れました。
海の底、洞窟の一室。
「足が欲しい」
「おやおや、急だねぇ」
「ここにくれば、足が貰えると聞いた」
「ああ、可能だとも」
舞の話し相手は、魔女でした。黒いローブを被ったその魔女は、人魚にも魚にも嫌われていて、誰も近づくことはありませんでした。
けれど、ここ最近魔女は外に出てきては、人魚に足を与える薬があると言い触らしていたのでした。
それは、舞が歌う歌に、外への意志と人間への恋心を感じた魔女が、舞の歌声を奪うために考えたことでした。
「足はやれる。ただし、お前さんは声を失う。永遠にね」
「……それでもいい。私に足をくれるのなら」
「ああ、いいだろう。ただし、三日間しか人間にはなれない」
舞はあからさまに不機嫌な顔をして、魔女を睨みつけました。
「なに、永遠に人になる方法はある。ただ、それは2日目の夜に教える」
「……わかった」
不明なところは多かったものの、舞が青年に会いたいという気持ちは押さえきれませんでした。
魔女の顔が、醜い笑みへ歪んだことに、舞は気づきませんでした。
結局、舞は魔女から受け取った薬を、砂浜の近くで飲みました。
すぐさま、ひれは足へと変りました。
人になった! そう叫んでも、声は出てきませんでした。
あっ、と思い、声が消えたことを自覚しました。声を無くしたことは悲しかったけれど、早く王子に会いたいと思う心が出てきて、悲しみはよそへ追いやられました。
さて、どうしようか。舞は悩みました。よく考えれば、どこの誰だということもよくわかっていないのです。
舞はもってきた布だけを体に巻き、砂浜を歩きました。
516 :
名無しさんだよもん:03/05/18 12:25 ID:LV4Mv/B8
(´ー`)
ほしゅー
まとめサイト無いならデスクトップ復活後にやっちゃおっかな…
これは、わたしが小さいときに、村の美汐という語り部から聞いたお話です。
昔は、わたしたちの街の近くに、ものみの丘という丘があって、たくさんの狐が住んでいたそうです。
その丘から少しはなれた場所に、「かわずみ まい」というまものがいました。
まいは、ひとりぼっちの子供のまもので、しだのいっぱいしげった森の中の、ほらあなに住んでいました。
そして、夜でも昼でも、村に来て、ひとりであそんでいました。
麦畑へ入っていつまでもかくれんぼをしたり、
さわさわと麦穂を撫でながら通り抜ける風とかけっこしたり、
麦穂でわっかを作って頭にかけたり、いろんなことをしました。
けれども、ほんとうは、まいは、すごくさびしかったのでした。
久々の新話キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
と、いうわけでヒッソリと期待。
ある冬のことでした。雪がふり続いたその間、まいは、
外へも出られなくて、あなの中でしゃがんでいました。
ようやく雪が止むと、まいはじっとしていられず、あなからとび出ました。
空はからっと晴れていて、空気はつやつや澄んでいました。
まいは、村の小川のつつみまで出てきました。
辺りいちめんで、雪が日の光をあびてきらきら光っていました。
川には、いつもはたくさん水が流れているのですが、数日分の雪で、川は埋まっていました。
ただのときは行くことのできない、川のまんなかあたりまでもが、
蒼くすきとおった氷におおわれています。
まいは、川下の方へと川べりを歩いていきました。
ふと見ると、川の中に人がいて、何かやっています。
まいは、見つからないように、そうっと草の深い所へ歩きよって、
そこからじっとのぞいてみました。
「女の子だ。」と、まいは思いました。
女の子は、ぼろぼろの青い着物をまくし上げて、氷の上をすべってあそんでいました。
わらっている顔のほっぺたが、寒さでほおずきみたいに赤くそまっていました。
しばらくすると、女の子は、川の向こう側へあらわれた男の子のところへ、
ついっとすべっていきました。
男の子は、もうすぐお昼になるからかえってきて。といいましたが、女の子は、
もうすこし遊んでいたいと言って、お迎えにきた男の子を追い返しました。
男の子は、しぶしぶ土手を上がり、川上の方へかけていきました。
男の子がいなくなると、まいはぴょいと草の中から飛び出して、女の子のそばへかけつけました。
どうしても、お話がしたくなったのです。
まいは、どきどきしながら、女の子に話しかけました。
ところが、まいの、お友達になりたいという思いは、
女の子を地面にたたきふせました。
まるで、けわしい斜面をころげおちてきた岩のように。
おもいきりふりかぶってから、ふりおろした丸太のように。
まいは、なにがおこっているのかわかりませんでした。
あわててたおれた女の子のそばにかけよって、抱き起こそうとしましたが、
思いを伝えようとするたびに、血飛沫があがり、雪をあかく染めました。
まいは、なにがおこっているのかわかりませんでした。
うまく考えがまとまりません。
まるで、あたまのなかで、何かわっかのようなものが、ぐるぐるまわっているようでした。
だいぶ長い間、ぼぅっとしていました。
さっきの男の子がまたやってきて、悲鳴をあげるまで。
まいはびっくりして飛び上がりました。
まいは、倒れた女の子をそのままにして、一生けんめいににげていきました。
ほらあな近くのはんの木の下でふり返ってみましたが、男の子は追っかけては来ませんでした。
まいはまだどきどき音をたてている心臓をしずめようとして、血で汚れたところを葉っぱでふいて、
真っ暗なほらあなにもぐりこみました。
次の日も、また次の日も、まいは自分が傷つけた女の子が気になって仕方がありませんでした。
そこで、様子を見るために、そっと村までいってみることにしました。
なんと言って謝ればいいんだろう。いや、そもそもじぶんに謝ることができるのだろうか。
こんなことを考えながらやってきますと、いつのまにか、村のはずれにある家の前へ来ました。
その家の中には、大ぜいの人が集まっていました。
よそ行きの着物を着てこしに手ぬぐいを下げたりした女たちが、
表のかまどで火をたいています。
大きななべの中では、何かぐずぐずにえていました。
「ああ、そう式だ。」と、まいは思いました。
「このうちのだれが死んだんだろう。」
どうか、あの女の子のそう式ではありませんように。まいはそう思いました。
元ネタ知らんからなんか怖ぇー
お昼がすぎると、まいは、村の墓地(ぼち)へ行って、六地蔵(ろくじぞう)さんのかげにかくれていました。
いいお天気で、遠く向こうには、ものみのが見えます。墓地も、白い雪で、一面おおわれていました。
と、村の方から、カーン、カーンと、そう式の出る合図です。
やがて、白い着物を着たそう列の者たちがやってくるのが、ちらちら見え始めました。
話し声も近くなりました。
そう列は、墓地へ入ってきました。
人々が通ったあとには、雪の上にいくつもの足跡が残りました。
まいは、のび上がって見ました。すると、あの日女の子を迎えに来た男の子が、
泣いているのが見えました。
その瞬間、まいはこのそう式がだれのそう式なのか、はっきりわかりました。
「ごめんなさい。」まいは、そうつぶやくと逃げるようにほらあなに戻りました。
そのばん、まいは、あなの中でずっと泣いていました。
泣きながら、どうしたらつぐないができるのか、いっしょうけんめい考えました。
珍しくレスが進んでると思ったら…
続きが気になる。マジで。
次の日の朝早く、まいは、女の子のお墓の前でおいのりをしていました。
男の子は、ずっと女の子と住んでいたもので、
女の子が死んでしまっては、もうひとりぼっちでした。
「わたしと同じ、ひとりぼっちか。」まいは、そう思いました。
そして、お墓に野の花で作った花束を置いて帰りました。
次の日も、その次の日も、まいは、花束をお墓にささげに行きました。
その次の日には、花束だけでなく、手を赤くして作った、ゆきうさぎも、持っていきました。
月のいいばんでした。まいは、村に出かけました。
ものみの丘を通って、少し行くと、細い道の向こうから、だれか来るようです。話し声が聞こえます。
まいは、道のかた側にかくれて、じっとしていました。
話し声は、だんだん近くなりました。それは、あの男の子と、その友達でした。
「そういえば。」
と、男の子が言いました。
「ん?」
「おれな、このごろ、とても不思議なことがあるんだ。」
「何が。」
「だれだか知らんが、あいつの墓に、毎日毎日花束をくれるんだよ。」
「ふうん、だれが。」
「それが分からないんだよ。おれの知らないうちに置いていくんだ。」
まいは、二人の後をつけていきました。
「ほんとかい。」
「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。その花束を見せてやるよ。」
「へえ、変なこともあるもんだなあ。」
それなり、二人はだまって歩いていきました。
男の子がひょいと後ろを見ました。
まいはびくっとして、小さくなって立ち止まりました。
男の子は、まいには気がつかないで、そのままさっさと歩きました。
村のお寺まで来ると、二人はそこへ入っていきました。
ポンポンポンポンと、木魚の音がしています。
まどのしょうじに明かりが差していて、大きなぼうず頭がうつって、動いていました。
まいは、いどのへりに座っていました。
しばらくすると、また、三人ほど人が連れ立って、お寺へ入っていきました。
まいは、男の子が出てくるまで、いどのそばにしゃがんでいました。
二人は、またいっしょに帰っていきます。
まいは、話を聞こうと思って、ついていきました。
男の子のかげぼうしをふみふみ行きました。
ものみの丘まで来たとき、男の子の友達が言いだしました。
「さっきの話は、きっと、そりゃ、神様のしわざだぞ。」
「えっ。」
と、男の子はびっくりして、友達の顔を見ました。
「おれはあれからずっと考えていたが、どうもそりゃ、人間じゃない、神様だ。
神様が、おまえがたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、
花束をくださるんだよ。」
「そうかなあ。」
「そうだとも。だから、毎日、神様にお礼を言うがいいよ。」
「うん。」
まいは、少し寂しいな、と思いました。
その明くる日も、まいは花束を持って、女の子の墓へ出かけました。
しかしその日は、男の子も墓参りに来ていたのです。
男の子の方が、先に気づきました。
あの子を殺したまものが墓の前にいるではありませんか。
「ようし。」
男の子は、墓場のすみにおいてあった鎌を取り、、足音をしのばせて近よって、
ふり返ろうとするまいに、ざんと斬りつけました。
まいの姿が、ふっと消えました。。
男の子はかけよってきました。墓を見ると、墓にはあたらしい花束がささげられていました。
「おまえだったのか、いつも、花束をくれていたのは。」
男の子は、鎌をたん、と取り落としました。
また、そらからゆきが、しんしんとふりはじめました。
まいが人前に姿をあらわすことは、二度とありませんでした。
でも、良く晴れた、月が綺麗な夜には、
風もないのに、麦の穂が、ざざーっと揺れることがあるそうです。
いまでも、まいはひとりで、麦畑であそんでいるのでしょうか…。
はじまりには、あいさつを。そして、やくそくを。
美汐は、呪文のようにそう言って、話を切り上げました。
遠い遠い昔の、お話です…。
これで「ごんぎつね」はおしまいです。
最後まで読んでくださった方、本当に感謝です。
原作の雰囲気を残すため、あえて平仮名にしたところが沢山ありますが、
読みやすさをだいぶ損ねたようで、申し訳ありません。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
次回作があれば、また書かせて頂きます。
それでは。
(つД`)
ごんぎつねかぁ。
小学校の教科書に載っていたような気がするよ。
なんか切なく微妙にいい話しだったのは覚えてる。
しかし、上手い表現が多いなぁ、と。
風とかけっこなんて、そう思いつくものではないと思うし。
なるほどなぁ。そういや最後殺しちゃうんだよねぇ。
よかったっすよ。
保守?
胸にきますた
543 :
名無しさんだよもん:03/06/01 22:04 ID:qk7DNwx6
卍
544 :
名無しさんだよもん:03/06/01 22:40 ID:QjycPwa/
545 :
名無しさんだよもん:03/06/02 00:28 ID:zd79FNam
良スレだから保守
ところで、コメディーものを書いてもよろしいでしょうか?
了承
承認
552 :
名無しさんだよもん:03/06/09 17:09 ID:yE+SSKfV
七瀬の家で生まれた子は、みんな早死にしてしまい、
母はこんどこそと毎日弁財天に願をかけていた。
そんなある日、犬に乗った女神が現れ、不思議な光る珠を手渡した。
その後、母は子を宿し、元気な漢の子を産んだ。
この地方では、願をかけて産まれた漢の子は、乙女として育てると元気に育つ、
という言い伝えがあり、
七瀬の家もその言い伝えに従い、「留美」と名付けた。
555 :
554:03/06/10 22:17 ID:xaMvcvtU
「女として育てられた信乃」で
これが直感で思いついたんだけど、このキャストで続けるのは無理ぽ…
556 :
名無しさんだよもん:03/06/13 00:33 ID:VfLLYuCA
ほしゅ
物書きさんお待ちしてます
じゃあ俺も保守
「一人は、淋しい…」
昔々、或る所に女の子が一人、住んでいました。名前は、川澄 舞。彼女はいつも無表情
で、自分から人と話す事もせず、また誰も話しかけてくる人はいませんでした。皆、彼女
が持っている剣が怖かったのです。それに舞には頭がおかしいという噂がありました。い
つも舞以外には見えない魔物と闘っていると言うのです。おかげで、色々な人から馬鹿に
されていました。
「淋しい…」
自分の家の中で、舞はまた呟きました。一生こんな風に生きていくのだろうか?魔物がい
る限り?
友達でなくてもいい。話相手が、欲しい。
舞はその願いを声に出さず、剣を取って家を出ていきました。実際に、魔物はいるのです。
ただ舞以外には見えないだけで。
夜の森に、魔物はいました。舞にだけ見える、その外見は小さな女の子。爪も牙も無いの
に、手で触れられると何故か痛いのです。いつも何も言わず、悲しそうな顔をしていまし
た。
魔物に一撃を食わせた時、「彼女」が呟く様に問うたのを舞は聞きました。
「ねえ?」と。
舞は気のせいだと思い再び剣を振るいましたが、魔物には当たりません。魔物が口をきい
た事に内心驚いているのです。心なしか、魔物の声が、自分の声みたいだと思いました。
それも、泣きそうな時の。
「友達が、欲しいんでしょ?」
舞は答えません。しかし剣を振るうのを止めました。何で、急に喋りだした?
「あなたは、私だから…」
舞には、意味が分かりません。いや、分かっているのかもしれないと思いました。今、一
番、淋しくて怖いと思っているのは…。
「欲しいんでしょ?友達」
舞は頷きました。
「私が友達を作ってあげたら、あなたは私を認めてくれる?」
何を言うのだろう?何の関係が?それに、認められるわけが…。
「…嫌だ」
「私が、淋しいの。あなたが一人だから」
「…お前のせいだ…」
「私を認めてくれないから。でも、私は」
「…私は、一人でいい…」
その言葉を聞いた魔物は、苦しそうに胸を押さえた後、
「じゃあ、じゃあね…」
と呟いて森の奥へ消えて行きました。いつもなら追えるだけ追ってみようとする舞ですが、
今日はもう何もかもが嫌になって、剣を収め、家に帰っていきました。
次の日。舞が起きると、外がとても慌しく、村の大人達が何か騒いでいる様子でした。舞
は外に出て、辺りを見回しました。すると、例の魔物がクルクル飛んだり跳ねたりしなが
ら、手当たり次第に村の人達を襲っていました。ただ、手を触れているだけなのですが、
それが物凄く痛いのです。襲われた人達は、特に左胸の辺りが痛い様子で、そこを必死に
押さえていました。
舞は咄嗟に剣を携え、魔物に向かっていきました。魔物はそれに気付くと、動くのを止め、
その場にじっと立ちました。少し、怖さを隠す様に、微笑んでいます。舞は剣を構えて
「…何で、今になって関係ない人を襲う」
怒りを抑えている様な表情と声色で訊きました。魔物はそれに答えず、
「私の事、認めてくれる?」
と訊き返しました。やはり微笑んでいる様な、しかし今にも泣きそうな表情で。舞は我慢
しきれず、
「…認めない…!…」
呟いて、魔物を叩き斬りました。魔物は刃が当たると、それだけで霧散する様に消えてい
きました。
舞は疲れて座り込みました。自分でも何故疲れているのか分かりません。
「おい…」
しばらくして、痛みが引いてきたらしい村の男の一人が話しかけてきました。
「魔物っていうのが、ああしたのか?お前が、やっつけたのか?」
舞は注意しないと分からないくらい小さく頷いて、何故か湧き出した虚無感とこれからへ
の期待感を味わっていました。
(どうして、あの子は…?)
心の声に答えられる者は、もういません。
魔物はどこにも、もう二度と出ませんでした。舞は少しだけ明るくなりましたが、しかし
時折、後悔を噛み締めている様な表情をしていたそうです。
これで終わりです。元ネタは泣いた赤鬼ですが、私は内容をあまり知らないので、
余り忠実ではないかもしれません。観鈴ちんの方が赤鬼に向いていた気もしますが、
舞萌えなのと、なんとなくスレの流れとしては舞かな、と思いまして。
私も職人さんをお待ちしております。それと、このスレでまともに読んだのは雨月
さんだよもん氏のお話だけなので、既出だったらスマソ。
寂しくて面白いな。
すげく良い。
全然既出じゃないよ。
567 :
名無しさんだよもん:03/06/19 22:04 ID:gt9jjcDk
保守あげ。というか職人降臨期待あげ。
569 :
名無しさんだよもん:03/06/19 23:08 ID:XEdx8D5X
570 :
名無しさんだよもん:03/06/19 23:09 ID:coE5SLun
ホシュ
シュ
ユ
シュラシュシュシュ
保
守
577 :
564:03/06/26 21:07 ID:ylRjlslN
舌切り雀ベースで舞の話を書いていますが、どんどんそれから離れていく感じです。
舞も飽きたでしょうし、長いし、上記の事もあるしで、書き終わってもUPしない
方がよろしいでしょうか。
ところでこのスレには今どのくらい人がいるのでしょう。
誰かどうです、やってみては。保守してくれている方もいますし。
>>577 別に良いんじゃないでしょうか、多少の逸脱くらい。
まんま再現したって意味ないですし。同じキャラが続くのもあなたの責任でもないでしょう。
気楽にすぽーんと落としちゃってくださいな、すぽーんと。
そうそう、がんばって。
漏れなんか、18禁の昔話でもなんでもないもの書いてたし……。
昔々、或る村に、対照的な二人の男が住んでいました。
一人は、相沢祐一。気性はどちらかというと激しい方でしたが、困った人がいるとつい
助けてしまうという様な、心根は優しい青年でした。
もう一人は久瀬。祐一に比べると静かな性格ではありました。しかし、人の行為を冷や
かに見ていて、どうすれば自分が得をするかという計算をし、それから行動をする癖があ
りました。祐一とは家が隣同士なのにも関わらず、交流はあまり持ちませんでした。ただ、
自分の家に比べ貧相な祐一の家に、たまに少し「汚らわしい」という様な眼差しを向ける
事があるくらいです。
…ある時、祐一が柴刈りをする為山に行くと、歳の頃八つくらいと思われる女の子が一
人、うっそうと茂る木々の間に腰掛けているのを見つけました。何だろうと思い、話しか
けてみますと、彼女は迷子になったというのです。名前は、舞といいました。口数が少な
く、お腹も空いていたのでしょうか、祐一が昼飯に持ってきたおむすびを黙々と食べてい
ます。
…舞が本来なら祐一の昼飯になる筈だったものを全部食べ終わったのを見てから、彼は
問いました。
「なあ、どうして迷ったんだ?誰かと一緒だったのか?」
舞はそれに対しうつむいて、悲しそうに答えます。
「…私、本当は、迷ったんじゃないの」
「ん?」
「お姉ちゃんが虐めるから、逃げてきたの」
良く見ると、舞の体には小さな切り傷や打撲傷が沢山ありました。
「そう、お姉ちゃんが虐めるから、逃げて来たんだな」
鸚鵡の様に答えてから、ああ、この子は可哀想なんだな、と祐一はぼやっとした風に思い、
「なあ、とりあえず村に下りないか?少なくとも、ここに打ち身に効く薬は無いと思うし」
と言ってみました。女の子は「こくん」と頷きます。祐一は柴刈りに使う鎌を後で取りに
来る事が出来る様に分かり易い所へ置き、女の子をおぶって山を降りて行きました。途中、
「ああ…、ガキに惚れる様な趣味は無い筈なんだがなあ…」
と自嘲する振りをしながら。その言葉を聞いた舞は、ペチッと祐一の頭を叩いて抗議しま
した。
舞の傷はいずれも浅く、すぐに外を駆け回る事が出来る様になりました。でも、時々夜
に「お姉ちゃんが来るの!」と叫びだし、泣いてしまう事があります。そういう時、祐一
は、そっと舞の頭を撫でてやるのでした。祐一はいきなり小さな女の子を連れて来た事で
周りから色々と言われたのですが、それもすぐに止み、村の女衆に舞を預かって貰ったり
しながら、親代わりになってこの子を育てていく事にしました。
一方、隣人の久瀬は面白くありません。久瀬は子供が嫌いでした。なにしろ煩いし悪戯
はするし、この前など数えで八つの癖に夜泣きをして、それが久瀬の家まで聞こえてきた
のです。文句を言っても「この子はお姉さん、まあ実の姉かは知らないけど、とにかく身
近な人に虐められて生きてきたのだから、大目に見て下さいよ」と返されるのです。「たま
ったものではない」と思いました。だから、皆の見ていない時に、舞に厳しく「静かにし
ろ」だの「お前の家に帰れ」だのと言います。それで舞が泣くと、頭を打ったりします。
でも、舞は誰にもその事を言いませんでした。
ある時、家でふと、祐一が訊きました。
「なあ、舞。また、あざが出来てないか?」
気付かれた、と思いました。舞は壁の方を向きながら、
「え、なんともないよ…?」
と答えますが、
「なんともあるぜ。誰がやったんだ?」
「転んだんだよ…」
涙目になりながらも、舞は久瀬に打たれたとは言いません。しかし、祐一は、「誰がやった
のか、見ている奴がいる筈だ」と言い、立ち上がって家を出て行きました。舞はどうしよ
うどうしようとしばらく迷っていましたが、久瀬と祐一が言い争う様な声を聞いて、それ
がいたたまれずに家を飛び出し、森の方に走って行きました。久瀬の家の入り口では、本
人から事情を聞いた祐一が久瀬を思い切り殴っている所でした。祐一は舞に気付きました
が、追おうとした瞬間久瀬に思い切り殴り返され気を失い、気付いた時には一人で自分の
家の入り口の前で倒れていました。舞の行方は、分かりません。舞と出会ってから、一月
しか経っていませんでした。
「どうすれば、良かったのだろう…」
舞がどこかに消えてから何日も何日も、祐一はずっと考えていました。しかし、分かり
ません。久瀬もだが、何より自分の所為だと思いました。「俺すらも信じられなかったから
逃げたんだ」と考えたのです。柴刈りにも精が出ませんでした。ごろりと寝転がりながら、
舞が今どうしているか、それだけを考えていました。すると、
「すみません」
戸口から声が聞こえました。女性の声です。村でこんな声を聞いた事は無いので、おかし
いなと思いながらも戸を開けると、自分と同じぐらいの歳だろうと思われる女性が一人、
立っていました。その女性は祐一の顔を見ると、「あははーっ」と笑いました。
「…あなたが、祐一さんですか?」
「…ええ……?」
訝しげに返事をする祐一に、女性は言いました。
「舞を世話してくれて、有難う御座いました」
ぺこりと頭を下げる女性。祐一は(こいつが、『お姉ちゃん』なのか?)と一時思いました
が、とても誰かを虐める様な人には見えません。名前を訊くと、佐祐理だと答えました。
舞の友人だと言います。
「ここが分かったのは、舞に聞いたからなんだろう?」
「はい、そうです。…あの子、可愛かったでしょう?」
「まあ、うん…。で、用件はこれだけなのか?」
佐祐理は、「忘れていた」という風な表情をしてから、
「ああ、舞が家に、招待して欲しいって言ったんです」
「やっぱり、お姉さんと一緒に暮らすのか?」
心配そうに祐一は聞きます。すると、
「……とりあえず、舞の家に行ってあげて下さい。…舞が心配でしたらね?」
と誘拐犯めいた事を言うので、祐一は舞をかなり心配しながら佐祐理について、舞の家に
行く事にしました。その家は、祐一が暮らす村の近くの町中に建っていました。
舞の家は、「普通より少し大きいくらい」と言う事が出来る規模の屋敷でした。舞はこ
こで、佐祐理と、もう一人の違う女性と一緒に暮らしているという事です。祐一はお金持
ちのものらしい屋敷の珍しさと、舞がそこらで遊んでないか探す目的もあって、きょろき
ょろと周りを見渡しながら屋敷の門をくぐりました。そして中に入り、応接間らしき整っ
た部屋に通されました。祐一は驚きます。そこにはもう一人、自分と同い歳くらいの女性
が座っていたのですが、その顔が舞にあまりにも似過ぎていたのです。
「……あんたが、舞のお姉さん?」
「………」
舞に似ている女性は祐一をじっと見つめますが、何も反応を返しません。佐祐理に「舞と
この人はどういう関係なの?」と聞いても、「姉妹みたいなものですよ」としか言ってく
れませんでした。みたいなものというのが祐一には良く分かりませんが、まあ本人に訊け
ば良いだろうと思い、舞の帰りを待ちました。
しばらくして、舞が帰ってきました。祐一は全く無事な様子の舞を見て、嬉しく思いま
した。舞は、祐一以上に嬉しさを感じた為か、びくりと動きが止まっていましたが、それ
からゆっくり二つ数えられる程の時を経て、その間にみるみる顔を真っ赤にさせながら、
「ごめんなさい……」
と呟く様に言いました。佐祐理がなだめる様に「可愛いですねーっ、よしよし」と舞の頭
を撫でて、その後、「じゃあ、夕ご飯持って来ますから、四人で一緒に食べましょうね」と
言いながら台所の方に駆けて行きました。佐祐理が応接間からいなくなった後、祐一は舞
をゆっくり撫でました。舞に似た女性は、わずかに、わずかに羨ましそうな目で舞を見て
いましたが、祐一は彼女の前にいたのでそれに気付きません。舞は喜んでいいのか哀しん
でいいのか分からずに、「お姉ちゃん」の視線を感じていました。
ご飯を食べ、夜が更け、客間にも祐一の為に布団が敷かれました。祐一は行灯の明かり
の中、天井を見ながら布団の上に寝転んでいます。舞に無理矢理「お姉ちゃん」の事を話
させるべきか、それとも、もう虐められなくなったのなら話などさせないでこのまま忘れ
させるべきか迷いながら。
「ねえ?」
考えているうちに眠っていたのでしょう。祐一は、舞が部屋に入ってきた事に気付きませ
んでした。
「…う、ん?何だ、舞。八つの子供は大体寝てるぞ、今頃は」
寝ながら返事をし、舞にも寝るように促しました。しかし
「私はいいの、そういう八歳だから。…ところで、あのね、訊きたい事があるの」
舞らしくなく、もじもじしながら言い出します。
「何?」
「お姉ちゃんと、佐祐理さん、どっちが好き?」
「は?……」
いきなりの質問に対し、祐一はちょっとの間だけ、しかし真面目に考えてから、
「両方初対面みたいなもんだから、分からない。……舞は?」
舞は、寝ている祐一には分かりませんでしたが、まるで相手と斬り合う前の侍の様な、そ
んな思いつめた表情をしていました。そして、
「お姉ちゃんが、好き」
と呟きました。
「お姉ちゃんが、か?」
「信じられないでしょ?お姉ちゃんが嫌でここを逃げ出して来たのにね。でも、お姉ちゃ
んに幸せになって欲しいの、私」
祐一はそういう気持ちが良く分かりませんでしたが、でも、舞が幸せになればいいなと思
って、
「そうだな、お姉ちゃんが幸せになればいいな」
と言ってあげました。舞はまた言います。
「お姉ちゃんは、無口で無愛想で食いしん坊で面倒臭がり屋だけど、貰って欲しいの。祐
一のお嫁さんにして」
舞がさっきから何を言いたいのか祐一には分かりません。
「おい、舞。何でそんな事を言うんだ?確かにお前に似て美人だけどさ、まだ俺はお姉ち
ゃんとは口もきいてないぞ?」
「……お姉ちゃんが、寂しがっているの。私は、お姉ちゃんの本心みたいなものだから、
分かるの。本当に寂しい時に祐一が優しくしてくれたでしょ?それだから、一緒になれた
らいいなって……」
舞は、自分とお姉ちゃんを混同して話しているのだな、と祐一は思いました。舞は祐一が
返事をするのを待っています。祐一はちょっと考えて、舞を説得しようとしました。
「あのな、舞。結婚てのは、まあ武家や公家の方々は政略結婚なんて事をするらしいが、
本当は好きな奴同士がするもんなんだ。俺はお前のお姉ちゃんをあんまり知らないし……」
「それじゃあ、私の事、嫌い?」
「最後まで言わせろって……、まあ、嫌いじゃない、好きだ」
「じゃあ、大丈夫」
舞は微笑して、「じゃあもう寝るから」と言い応接間を出て行きました。祐一は「まあ所詮
子供の言う事さ」と思い直し、そのまま眠りにつきました。
次の日。村に帰ろうとする祐一に、「お姉ちゃん」が一緒についていくと言い出しました。
舞の差し金だな、と直感した祐一はどうしようかと考えましたが、嫌いな人間と一緒にい
ようとは思わない筈なので、しばらく一緒に暮らしてみる事にしました。舞は、来ません。
佐祐理と一緒に残ると言いました。
「じゃあな、舞。また会いに来るからな」
「うん、祐一も元気でね」
舞の家を離れて少ししてから、祐一は自分の隣を歩く女性を「あんた」としか呼んだ事が
無いのに気付き、「そういえば、名前は?」と訊きました。「お姉ちゃん」はこう答えます。
「…舞…、私の名前も、舞って、言う……」
祐一と舞が見えなくなってから、もう一人の小さい舞は佐祐理に謝りました。
「佐祐理、御免なさい。これからは一人で暮らす事になっちゃうね」
「大丈夫ですよ、私は舞があなたに、舞自身に辛く当たる方が嫌なんです。それに、また、
会いに来るでしょうしね」
「うん、ありがとう。……じゃあ、私も、もう行くから」
小さい舞は、そう言うと、しゅうっと夢みたいに消えていきました。それを見届けた佐祐
理は、目に浮かんだ涙を拭いて、これからも自分が住む、大きな家を眺めたのです。
一方、久瀬は、小さな舞を裏で虐めていた事がばれて、一時村八分の様な状態になり、
信用を失ってしばらく淋しく暮らしたそうです。しかし、欲を出して大きなつづらを求め
に行くよりは、いい結末じゃありませんか。ねえ?
593 :
名無しさんだよもん:03/06/29 23:50 ID:IJ7CUD4s
これでお終いです。出来とかは気にしないで。
元ネタは舌切り雀。しかし舌は切られない。ここらへん特に気にしないで。
舞は小さいつづら、佐祐理さんは大きいつづらのつもりです、一応。
御目汚し、本当にすみませんでした。
そして職人降臨期待あげ。誰か頼みます。
594 :
名無しさんだよもん:03/06/30 00:01 ID:idI3QyBZ
>>593 途中まで元ネタがなにか思い出せなかったよ(w
小さいつづら、大きいつづら、か……うまいね。面白かった。
保守しとくな
ほにゅ。
七夕ね
うん
こく
ふるふる
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歌音物語 〜門にてをみなを待ちゐたること
今は昔、摂津守久弥某の任遷り侍りしをりに、其の従者の相沢某なる者同行す。相沢某
が嫡子祐一、かの地に縁ありてとどまりたるに、従七位水瀬某が妻秋子なる者の屋敷に向
かふ。
故知らぬ地ゆえに秋子が娘に案内を頼まむと南大門にて待ちておりしが、日傾けども来
ず。一時ほど雪を衣に待ちてをりしに、手習いのよそほひのまゝ来たるをみなあり。祐一
、雪の衣の冷たきに立つことあたはざればをみなを見ず。「雪ぞ積もりける」をみなが答
へしに祐一応へていはく「一時を待てばこそ」と。をみなたをやめぶる仕草にて「あなや
」と振り返りていはく「半時を遅れ侍りしと思ひたればこそ」と。祐一かぶりを振りてい
はく「さりとて待ちゐたるは同じ」と。日の傾きて疾く屋敷へと心の急ぎたれば案内を頼
みしが、をみないはく「我が名ぞとどめおきたるか。」と言ひて動かず。祐一覚えてをり
たるが待ちたるをりの冷たさを覚えればすぐには答えず。をみな深き面持ちにて走りて戻
らんとするに祐一「な行きそ」と叫びぬ。そのをみなが名を名雪となむ言ひければ「侍り。
」となむ明るき声色にて答へり。
あげ
>>603激しく面白かったYO!
言い回しがすごくイイ
よく書けるな。
>>603 古文が苦手な頭を振り絞って読んでみたが、なるほど……
確かに最後の言い回し方は神だ。
ハッキリ言ってアメリカなどの多民族国家では黒人の方がアジア人よりもずっと立場は上だよ。
貧弱で弱弱しく、アグレッシブさに欠け、醜いアジア人は黒人のストレス解消のいい的。
黒人は有名スポーツ選手、ミュージシャンを多数輩出してるし、アジア人はかなり彼らに見下されている。
(黒人は白人には頭があがらないため日系料理天などの日本人店員相手に威張り散らしてストレス解消する。
また、日本女はすぐヤラせてくれる肉便器としてとおっている。
「○ドルでどうだ?(俺を買え)」と逆売春を持ちかける黒人男性も多い。)
彼らの見ていないところでこそこそ陰口しか叩けない日本人は滑稽。
強調か