先輩SSを見るまで次は南森にしようと思ってました。はい。
いつものように茜の学校に遊びに来ていたあたしは、体育館へと続く渡り廊下で奇妙な物体を見かけた。
青くて幅広で縦長のプラスチック容器。どこからどう見てもゴミ箱。
それが、独りでに歩いている。校舎裏に向かって。
「この学校ってロボットまでいるんだ。凄いね〜」
偶然横を通りかかった男子生徒に話しかけてみる。すると、驚いた顔をして立ち去ってしまった。
みんなノリが悪いなぁ。一言ぐらい突っ込んでくれてもいいのにね。例え知らない相手でも。
そうこうしているうちにそのゴミ箱は、バランスを崩したのかふらふらと蛇行し始めた。
さすがに見ている範囲で倒れられると寝覚めが悪いので、慌てて駆けよって支える。
「よいしょっと、大丈夫?」
あたしはゴミ箱―――もとい、それを抱えこんでいた小さな女子生徒に向かって声をかけた。
そして、衝撃が走った。
「……は、はい。ありがとうございます…」
その少女の微笑みに。
「それにしても酷いよね〜。女の子一人にこんな重いものもたせるなんて」
焼却炉にゴミを入れながら、ちょっと怒ったように話しかける。
そうしないと気づかれるから。真っ赤に染まったその顔に。細かく震える指先に。
「でも、私が勝手にやったことですから……」
遠慮がちに少女が答える。なんでもゴミが溢れかえってるのを見て、自主的に捨てに来たそうだ。
「それでも誰かが手伝うべきだよ。はいっ終りっと」
とどめとばかりに底部をぱかんと叩き、あたしは振りかえった。
「本当に…なにからなにまでありがとうございます…」
申し訳なさそうな表情に、またまた鼓動が高鳴る。このまま心臓が破裂しちゃうんじゃないか、と思えるぐらいに活発に。
「いいっていいって、詩子さんは良い子の味方だからね〜」
意識して軽い口調で返す。しかし、少し上ずってしまった。あたしはそれを隠すかのように声を張り上げ、一番聞きたかったことを尋ねる。