や、やっと出来た…
ちょっと苦しいかも知れませんが、また2レス構成です。
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ぴんぽんぱんぽーん。
『只今をもちまして、こみっくパーティーを終了いたします…』
「終わったか…今回も楽しませてもろたわ」
「あの、由宇さん」
「なんや、理緒っち」
「いつもの事だと思いますけれど、人の波が凄いですね…」
「せやな。いつもこうやさかい、改めて言われんと気付かんけど」
「一番凄い時なんて、通路にいたら《窒息》しそうな勢いでしたよね?」
「おしくらまんじゅう、おされて逝くな、ってな」
「あはは…冗談になっていませんよ、それ」
「んで、その大群が今は、すーっと退場しよる。万単位の人が、やで」
「なんか《ゲルマン民族大移動》って言葉を思い出しちゃいました」
「となると…牧やんたちスタッフは、さしずめアッティラ率いる騎馬民族やろか」
「牧…あ、開場前にお会いした綺麗な方ですね」
「まぁ、牧やんをアッティラに例えるんは皮肉か知らんけど」
「?」
「その辺は、趣味で勉強した時に知っとき。…さてと、旨いモン喰って帰ろか」
「すみません。私、日の暮れないうちに家へ帰らないと…」
「…そっか。家族優先のワガママや、ええねん。ほな、テイクアウトきく店でオゴるわ」
「いえ、そこまでして───」
「前にも似たコト言うたやろ、これはアンタの仕事に対する報酬の一部や。堂々と受け取り」
「は、はい、ありがとうございます!」
「こっちもこっちで、土産を持ってかなアカンのがおるけどな…」
「…あ、千堂さんにも、よろしくお伝え下さい」
「気遣い無用や、あーんな朴念仁」
「ぶぇっくしょい!」
「たっだいまーっと」
お土産を片手にした由宇が帰宅するのは、例によって和樹の家である。
「…由宇、俺の悪い噂してなかったか?」
「ようさんな」
ちょっと鼻をすすった和樹、由宇の返答を聞き憮然とした表情に。
「…ま、今回もお疲れさん」
「アンタもな。風邪ひいたりするなや」
「へいへい」
「ぶっ倒れてみ。こみパほかして、付きっ切りで看病したる」
「後で恨まれそうな展開だな…」
「なんせ未来の『猪ノ坊旅館』若旦那やさかい」
そこまでで会話が途切れた。和樹も由宇も、顔が赤い。
「…あのなぁ。俺なんか、漫画ぐらいが取り柄の奴なんだぜ?」
「足りんトコは、ウチらがサポートしたる。経営も、芸事も」
「………」
口数が少ないままの和樹に対し、照れ隠しなのか喋り続ける由宇。
「こう見えてもウチ、小さい頃から踊りやら《三味線》やら習っとってな」
「へぇ、そりゃ…」
「意外に思たか? まぁそれなりやっとって、『さすが未来の女将』なんて言われとった」
「ははっ、そりゃ分かる気がする」
「もっとも、そんくらいで宿泊代に色付けるマネはせぇへんかったな」
「だろな」
由宇に合わせる形の和樹だったが、笑顔で応じるなど調子は戻ってきたようだ。
「今度また、実家に行こな。アンタの知らんウチの事、もっと教えたる」
「ああ。…でも、とりあえず今日は…」
「ん。お休み、な」
将来を漠然と考え始める時期かも知れない二人だが、当分は『今を楽しもう』としている。
さて、今度はどのような物語が二人を待ち受けている事やら…