飲み会ですから当然酒が入って、宴は次第に盛り上がっていきました。
携帯のカメラで2ショット撮ってる人とか、メルアドをゲットしてる
人もいました。まさに宴もたけなわ、よくあるコンパの光景でした。
友人が「沢渡真琴って知ってる?」と、向かいの席の女の子に言うまでは。
アルコールが彼のリミッターを崩壊させたのでしょう。
?マークを浮かべる女の子に友人が取り出したのは、携帯電話。
液晶の画面には、『まこぴー』の姿が!
「かわいいでしょ? でも話もいいんだ。泣ける。すごく泣ける」(ママ)
次々と切り替わる画像。流れ出すどこかで聞いた曲。
「これ主題歌なんだけど。いい曲でしょ?」(ママ)
ハイテク万歳! 技術立国ニッポン万歳!! 怨みます。
友人はノリノリで話します。Kanonの素晴らしさを。
みんな明らかに引いてました。いや、引くなんて生ぬるいです。
例えるなら全力でバックしていく4トントラックのような雰囲気。
あれほど盛り上がっていた空気が、一気に氷点下に。
気まずそうに顔を見合わせる女の子達と、呆然とする男達。
僕はあの時ほど無力という言葉を噛み締めたことはありません。
そして、友人が話しかけていた女の子が席を立ち「帰るね」と。
すると雪崩をうったかのように女の子全員退場。
その後は修羅場でした。呆けた場に取り残された男達が
しらけたり怒ったのは言うまでもありませんが、
友人の「いいものをいいと言って何が悪い!」という開き直りに
幹事ブチギレ。もう思い出すのも憚られる不毛な言い争いのうちに
宴はお開きとなったのでした。
この収拾は、いまだについていません。
というか、もう無理です。彼らの間にはグランドキャニオンが
横たわっています。