神奈様のパソコン自作日記 The 3rd Summer ───
83 :
ななし:
神奈「……(むー).」
柳也「何を難しい顔をしている?」
神奈「重要なのは『れーてんし』」
柳也「? ああ,レイテンシか? なんの話だ?」
神奈「柳也どのと裏葉は『巨大なキャッシュ=高性能』『メモリが速ければキャッシュは要らない』といっておったな」
神奈「だが,書物にはきゃっしゅは容量よりも『ひっと率』と『れーてんし』が重要だ書いてあるのだ」
柳也「……(じー)」
神奈「な,なんだ. 余はべつに,その,柳也どのを,その,うたぐったりしているわけではないぞ!」
神奈「(ただ,裏葉と柳也どのが余をのけ者にして二人で楽しげに……)」
柳也「なるほどな.」
裏葉「どうかされましたか?」
柳也「お,ちょうど良いところに.神奈にキャッシュを説明するから手伝ってくれ」
84 :
ななし:02/09/03 19:46 ID:IUiEvyO+
神奈「で,いったいこれはなんなのだ?」
柳也「夕餉」
神奈「では,なぜ余は,こ〜〜〜〜んなに離れた場所に座らねばならん」
裏葉「神奈様は,食べたいものをおっしゃってください,柳也様が"神奈様のため"に給仕をしてくださいますから(にこ」
神奈「う,うむ.そういうことであれば仕方ないの」
柳也「……(苦笑)」
神奈「で,では,あの焼き魚……」
柳也「よし……(てけてけてけてけてけてけ)……とってきたぞ」
裏葉「では,失礼して,神奈様.あーん」
神奈「じ,自分で食べられるぞ」
柳也「まあ,そういうな.今日は特別だ」
神奈「…….うー…….ぱくっ(もぐもぐもぐ)」
裏葉「あーん」
神奈「ぱく」
裏葉「あーん」
神奈「まだやるのか?」
裏葉「うふふふ.食べづらいですわね.神奈様,お皿をどうぞ」
神奈「うむ.ぱくぱく(あぐあぐ)ぱくぱく(もぐもぐ)」
柳也&裏葉「……(じー)」
裏葉「(微笑ましいものがありますわね)」
柳也「(ああ……危うく当初の目的を忘れるところだった)」
85 :
ななし:02/09/03 19:47 ID:IUiEvyO+
神奈「柳也どの,ご飯とおつけ物を」
柳也「わかった……(てけてけてけてけてけてけ)……ほら」
神奈「むぅ,なぜ茶碗だけなのだ?」
柳也「漬け物か,まってろ……(てけてけてけてけてけてけ)……よし」
神奈「? 毎回 行ったり来たりでは面倒であろ?」
柳也「裏葉」
裏葉「はい,卓をご用意させていただきました」
柳也「よし,おいて置くぞ」
神奈「うむ,(はぐはぐ)」
柳也「(てけてけ)……っと(机の上に碗物をおく)……(てけてけ)……っと(机の上にレンコンの煮物をおく)……っと(机の上にクサヤをおく)」
神奈「……さっきから柳也どのは何をしているのだ?」
裏葉「神奈さまが好みそうな物を向こうの卓から運んでいるのです」
神奈「……何をたくらんでおるのだ.二人とも」
柳也「そうだな,そろそろ説明しようか」
(こんこんと目の前の卓を叩く)
柳也「これが2次キャッシュだ」
神奈「?」
柳也「で,神奈の持っている皿が1次キャッシュだな」
裏葉「あちらの卓はメモリにございます」
86 :
ななし:02/09/03 19:51 ID:IUiEvyO+
柳也「最初,裏葉が食べさせてくれたとき,どう思った?」
神奈「は,はずかしかったぞ……(照」
柳也「ぐあ,そうきたか!」
裏葉「食べづらくはございませんでしたか?」
神奈「うむ,食べづらかった」
柳也「裏葉が食べさせてくれるまで,待たなければならないしな」
神奈「……」
柳也「皿があると自分のペースで食べられるな? でも皿の上の魚を食べきったら今度は俺が次の食べ物を運んでくるのを待たなければならない」
柳也「これがレイテンシ(遅れ)だ.」
神奈「!」
柳也「もう わかったな? 神奈はプロセッサの役だ,ほしいときほしいデータ――この場合は食べ物だな――をすぐ取り出せるかどうかが重要なんだ」
裏葉「柳也さまがどれだけの食べ物を運べるか――つまり『帯域』ですね――は,実はあまり重要ではないのです」
神奈「つまり,余が食べたいと思ったときに食べ物が無いのだな?」
裏葉「はい,帯域がいくら広くともレイテンシが遅くては,意味がありません.
さんざん待たされた挙げ句に食べきれないほどの量を運んでくる益体無しにございます」
柳也「神奈が目にするプロセッサのほとんどはFullSpeedのキャッシュを内蔵しているからな.
レイテンシで言えば待たされることはない.帯域も必要十分だな.他方,ビデオチップなどが利用しているメモリは並列化して帯域を稼いではいるがレイテンシは遅い.
しかしビデオのようにデータを連続的に処理する事がわかっている場合は,レイテンシを見ため上隠せるからな.
まあ難しいことはともかくレイテンシより帯域が広い方が重要なんだ.
これは,どちらかが優れているとかそういう訳ではなく,適材適所だな」
神奈「……???」
裏葉「帯域はプロセッサの処理速度に見合っただけあればいいということです.
神奈さまが食べる調子に合わせて持ってこられるならばそれ以上は要らないのです.」
柳也「メモリの帯域が十分広く,またレイテンシが十分小さい…というか無いならキャッシュはその意味を失うんだ」
裏葉「AMDのHammerは,メモリコントローラを内蔵することでメモリアクセスの
レイテンシを非常に小さくできます.柳也様や私がHammerに期待するのはそのためでございます」
87 :
ななし:02/09/03 19:52 ID:IUiEvyO+
神奈「ふむ,では『ひっと率』というのはなんなのだ?」
柳也「卓の上で嫌いな物はあるか?」
神奈「この強烈なにおいの焼き魚は食べたくないぞ」
裏葉「くさやでございますね,においは少々気になりますが美味しゅうございますよ」
柳也「ミスヒットしたな.取り替えてこよう……(てけてけ)」
裏葉「つまりこういう事でございます」
神奈「ふむ,裏葉が『巨大なキャッシュ=高性能』と行っていたのは卓の上にたくさん並べられるからなのだな?」
裏葉「はい,広い卓(巨大なキャッシュ)にあらかじめ食べ物(データ)をならべて置けば,
あちらの卓(メモリ)に柳也様が食べ物を取りに行かなければならない回数が減ります.
つまり,神奈様(CPU)が待たされにくくなります」
柳也「ただいま,桃はどうだ?」
裏葉「そして,卓の食物(データ)は食べたいものが多い(高ヒット率)ほど,卓の広さを有効に使えるのです.
嫌いな物ばかり並んでいてはせっかくの広い卓が台無しでございますから」
柳也「逆に言えば必ずヒットするならキャッシュは巨大化しても意味がない」
神奈「……♪(はぐはぐ)ということは,余の好物を選んで持ってきてくれる柳也どのは優秀な……優秀な……キャッシュ?? (なにかイメージが)」
柳也「キャッシュアルゴリズムだ.キャッシュの性能――曳いてはプロセッサの性能を左右する重要な要素だな.
まあこの辺は,別の話になるから今日はやめておこう.」
裏葉「はい,では食事にいたしましょうか」
柳也&裏葉「もぐもぐ(満足げ)」
神奈「……(やっぱり二人で楽しげではないか.泣)」