Key新作 CLANNAD - クラナド - part15
朋也 「…早かったんだな、仕事」
直幸 「切り上げてきたよ、まだ幾分残っていたんだが… 明日のことがあるしな」
朋也 「明日のこと? ああ、母さんの…」
直幸 「久々に行くか、朋也 母さん、喜ぶぞ」
朋也 「いや、俺は…」
直幸 「うむ、朋也 お前、料理が巧くなった」
朋也 「な、なんだよ、急に 何時も食べてるのと同じだろ 今更、何言い出すんだよ」
直幸 「それもそうだが…」
直幸 「なぁ、朋也 明日で丁度、十五年目 母さんが死んでもう十五年の年月が経つ お前には色々迷惑をかけた」
直幸 「そんな父さんを恨んでいるか?」
朋也 「恨んでないよ、俺 別に、父さんのことは…」
恨んでいるのは、たぶん… 母さんのことだろうか?
幼心に覚えている、父さんとした墓参り…
人目もはばからずに泣きじゃくっていた墓前の父の後ろ姿が弱々しくて…
大切な何かが壊れるようなそんな切ない思いがした…
だから、母さんの墓参りは嫌いだった。
『かあさんは、どうして… どうして、とうさんのこといじめるの?』
朋也 「…寝るよ、俺 明日は高校なんだ 遅刻すると怒るしな、あいつ」
直幸 「恋人でもこしらえたか、朋也」
朋也 「そんなんじゃない 食器、浸けてくれれば、朝洗うから」
直幸 「うむ、済まんな」
直幸 「朋也」
朋也 「ん?」
直幸 「家のことはあまり気にせんでいいぞ 今は自分の出来る、出来る限りのことをしなさい」
直幸 「父さんがお前に言ってあげられるのはこんなことぐらいだが もし、母さんが生きていたなら…」
杏 『ちょっとは真面目に自分の将来考えなさいっ!』
朋也 「えっ?」
陽平 『こう毎回口うるさく言ってると、あいつ…』
直幸 「今日の後始末は父さんやっとこうか 旨い飯、作ってくれる日頃のお礼も含めてな」
朋也 「………ああ」
陽平 『あいつ、朋也の母ちゃんみてぇだなぁ』
ガシャン!!!
朋也 「!」
直幸 「いかんな、馴れんことはするもんじゃない」
朋也 「そう気を遣いなさんな、父さん それに…」
それに、何時もの料理はただのレトルト ただ、機械で暖めただけの ただ、それだけの…
俺は母親の料理というものを知らずに育った気がする。 忘れているだけなのかもしれない。
そんな俺があいつのくれる弁当に懐かしさと温もりを感じている …なぜなんだろう?
『藤林 杏』
俺はあいつに何を想い、何を求めようとしているのだろうか?
ただ、確かに一つ言えること。
朋也 「今日の晩飯、味気なかった…」
布団の中で呟いていた。