「ＮＡＵＩ」も金儲け主義？！　 　　　

最近の「ＮＡＵＩ」って腐ってませんか？
　一昔前は「ＰＡＤＩ」とは違う何かがあったはずですが、
今はどう？！
お金を払えばなれるインストラクター！
クロスオーバー組みのイントラも増えて、「ＰＡＤＩ」と一緒なのか？
　　金儲けの団体か？
「ＮＡＵＩ」のプライドはどこ行った！

>>1胴長短足ってＲＲ？

どうなが 【胴長】
（1）体の他の部分に比べて、胴が長いこと。「―短足」
（2）胸当て・ズボン・靴が一体となったつなぎ形のゴム製の衣服。釣り人などが着用。

たんそく 【短足】
足が短いこと。「胴長―」

４げっと

ここまで板違いの書き込みも初めて見た。

このスレの意味がわからない

NAUI、PADIはスクーバダイビングの指導団体。
口の悪い人からはPADIは金儲け主義とよくいわれてる。

ヤタ！あたいが8音だ！！お前等あたいにひれ伏せ！クソ共が！
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣∨￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　 　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　 　　 ヽ/＿_
　　　　　　　　　　　　　　　./ 　　　 ヽ　　
　　　　　　　　　　　　　　　|　 ﾉ ﾉ） ））⌒)
　　　　　　 　　　 /＼／＼(|ゝ ┬ イ|ゝ ''⌒)8⌒フ
　　　　　　　　　 / ／＼⊂エｧ--lﾌ" 　 ,,ノ"　`^"
　　　　　　 　（）)ノ___　　 　⊂エﾉ^⌒^"
　　　　　　 ／ ／||(二二)-く/_|ん>―几
　 　　Ｙ ⌒ ／|�V||彡Ｖミニﾆ〈〈二二ノl0
　　　l|　(◎).|l　|((||（(ﾟ )|| 　(⌒ )|三・） ||　　(´⌒(´
＿＿ ゝ_＿ノ　 　　￣￣￣￣￣ゝ＿_ノ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣(´⌒(´⌒;;

あたいは美女だぜ！あたいは美女だぜ！あたいは美女だぜ！
あたい IS SEXY！あたい IS SEXY！あたい IS SEXY！

>>1女へ　　粉吹くほど化粧しても意味ねーよ（ｳﾙｧ
>>2女へ 　　 その胸も無用の長物だな！（ﾍﾞｲﾍﾞｰ
>>3女へ 　 　部屋にばっか閉じこもってヒッキーかよ（ｳﾙｧ
>>51へ　　　 恐い話とかするんじゃねーよ（ｳﾙｧ

　　　　　　　

10

来栖川も金儲け主義。裏で汚いことやってるに違いません。

この板でダイビング業界の話をしようという画期的なスレか？

「葉鍵的にダイビングしようよ」のスレか？
葉鍵のゲームにダイビングのイベントはでてこないしなあ。
せいぜい、結花がダイビングも得意かも……ってくらいか。

ダイビングのイベントがあるとすれば、修学旅行とか？
綾香とかはやったことありそうだが。

「香里、今日は何人だ？」
「２人よ、相沢君、あなた自分のお客様も把握できないの？」
「そう言う、美坂インストラクターは何人でしょうか？」
「私は、ゼロ」
「んじゃ、１人送迎頼むわ、空港に１２時」
ほれっと車のキーを投げながら
「ちょっ、なんでよっ」

空港について５分、あちこち錆びた車の運転席で黒く灼けた肌を見ながら、ため息をつく
「肌、自信あったのにな…」
この南の島にきてから、2年。
雪の街から逃げ出して、2年。
「あの…」
突然、車の外から話し掛けられる
「あの、ダイビングショップの方ですよね」
「あっ、はい、えと…」
そういえば、お客さん名簿、見てなかったな
急いで確認しようとするが祐一から渡されたファイルフォルダには何もない。
「良く分かりましたね、この車だって」
とりあえず車を降り、荷物を受け取って後部ドアを開け積み込む。
「あっ、車の横に店の名前書いてありましたし、それに」
後部ドアを閉め、サイドのドアを開ける。
「どうぞ、車の中へ、私はスタッフの美坂で…」
名刺を渡そうと顔をあげた香里の動きが止まる
「見間違えるはず、ありませんから」
そこにいたのは、意外な人物

「ひさしぶりだね、お姉ちゃんっ」

盛り上がらないのでネタを振ってみる。
もし葉鍵キャラがみんなでダイビングしたら……。

志保：海の中でなにか見つけるたびに大手を振って人を呼び、しまいにはうざがられる。
マルチ：自分が何であるか忘れて、エアーがなくなったとあわてる。
セリオ：ダイバーのデータをダウンロードして完璧……と思いきや、海の中では
　電波が使えないので突然パニックに陥る。
詠美：どうしても機材セッティングの方法がわからず泣き出す。
玲子：コスプレっぽそうなウェットスーツを探して、いつまでも出てこない。
南：自分は潜らず、人の指導ばかりしている。
スフィー（レベル１）：はしゃいで海に向かって走り出すが、ボンベの重さで
　転んで起き上がれない。
結花：ボンベなど使わず、素もぐりでひょいひょい潜ってみんなのへまを笑う。

>>17
ネタを振ったらageないと。
誰にも気づかれないまま落ちる可能性だってあるし。

漏れはageないけど。

わたしは今の仕事が好き、ここの海が好き、ここの海の生物たちが好き
気まぐれな空も、天気を教えてくれる風も、少し湿った海の匂いも
島の人も、常連のお客さんも、先に居た祐一や社長の人柄もあったんだろうけど、
みんな、私に優しくしてくれた。
自分がインストラクターになるなんて思いもしなかった。
祐一を手伝ってるうちに海に潜るようになり、生き物達に興味を持った
人の世話をするのはそんなに嫌じゃなかったし何百本と同じポイントを潜るうち地形も覚えた。
どんな場所にどんな生き物がどう生活してるのか、潮流の変化がミクロな生態系にどんな影響を与えるのか
もっと、知りたくなった、知りたい事がどんどん増えた。
アシスタントインストラクターまで祐一に講習を受けた
意外だったのは祐一が教えるのが非常にうまい事、その人にすぐあわせて自然に教え方を変える。
始めて、祐一のアシスタントについた時、うまくできないスキルがあるお客さんに困ってしまった私に
「じゃあ、このやり方は？」っていってあっと言う間にできるようにしてしまった。
でも、私にはやり方も教え方も変わらないように思えた、何が違うのか分からない
あとで祐一に聞いたら
「できないのは伝え方がその人にあってないから、インストラクターは伝える事が大事だから」
「俺と香里の伝えたい事は同じだったけど伝える方法が違っただけ」
と教えてくれた。
いまなら分かる、教え方の違いも私に何が足りなかったのかも
「相沢君は教えるのうまいわよね」といったら
「俺の方が場数は踏んでるからな、香里ならすぐ俺より良くなるよ、それに…」
「それに？」
「俺は講習はあまり得意じゃないから」

私は良い生徒だったのかな？私は良い先生に出会えたのかな？
私は良いインストラクターになれるのかな？

私はここに居ても良いのかな？

インストラクターコースはここではできなかったので他の島で開催されたインストラクターコースを受けた
試験は拍子抜けする程簡単だったけど、でも独特の雰囲気は私を緊張させるには十分だった。

試験に合格し、私のインストラクターのカードが届いた日
祐一が珊瑚の産卵を見せてくれた
今日だけは特別だからと言って二人で満月の夜に潜った
しばらく動かなかった祐一がゆっくりと指差した先
目をこらしてもわからない
わからないとジェスチャーする自分をしょうがないなぁと言ったふうに手のひらを私のマスクの近くまで
持ってくる。
何かの卵？
祐一のグローブをしていない手のひらの上で柔らかそうなピンク色の球がふわっと浮上しようとしている
じっと珊瑚の表面を見ると、ぷつぷつと珊瑚から球形のものが出てくる。
さっき祐一に見せられたものと同じ
祐一の方を見ると水中スレートに

　　　　”今日は満月
　　　　　　　サンゴの産卵”

珊瑚が動物なのは知っている、けど海の中で見ても生きてるようには見えないし、まして産卵なんて
海の中で驚かされる事は前々からあったけど今日のは格別。

意外なプレゼントが嬉しくて、水の中なのに何か頬が熱くなってきて
少し照れくさくなった私はすぐ側にいる祐一に目をやった。

祐一は優しい目をしてた、まるで自分の子がそこにいるかのように
その子達が産まれた事、生きる事を喜びとして肯定してあげるように
ピンク色のちいさな命の珠は私には見えない流れに乗って
ここから、まだ見た事のない世界に広がってゆこうとしてる。
私には見えないそれが、祐一には見えてる様で
夜の海の中、満月に照らされたマスク越しのその目が私のココロに焼き付いている。


１年目は分からなかった、２年目を過ぎてようやく海の中に季節がある事を知った
また一つこの海を知る事ができてそれを肌で感じる事ができるようになって嬉しかった
でも、私はここに来たい訳じゃなかった


私は逃げたから、ここに来れば忘れられるから、そう思ったから

だから、私はここにいる

「よっ栞、相変わらずちっちゃいな」
「ひどいですっ開口一番それですか？私だっておっきくなりましたっ」
自分の妹と同僚の２年ぶりの挨拶、とてもそうは見えない二人とどこか懐かしく思っている自分
「一体…どこの話をしてるのよ」
免責同意書、スチューデントレコードとボールペンを栞の前に出す。
「まあ、それは水着になれば分かることだし、じゃあ明日はその成長した体をじっくりと…」
「祐一さん、えっちですっ、そんなこと言うひと嫌いですっ」

店に着くまでの車中、何を話していいか分からなかった
楽しそうに話し掛けてくる栞に相槌をうつのが精一杯だった。

「じゃあ、その書類に書き込んでね、分からないところは相沢君に聞いてちょうだい」
事務的にそう言うと自分は店の奥に入る。
少し寂しそうに香里の後ろ姿に目を向ける栞
「お姉ちゃん、怒ってませんか？」
「ん、そんなことないだろ、ひさしぶりに栞に会って照れてるだけさ」
「その、まだ、気にしてるんですか…あの事」
「わからん、でも香里自身がきめる事だしな」
「私、来ない方が」
「栞は香里に会えて嬉しくなかったか？」
「嬉しいに決まってるじゃないですか」
「香里も今頃、嬉しさの余り、床をごろごろ転がり回ってるかもしれんぞ」

栞をホテルまで送って店に帰って来た祐一に詰め寄る。
「どういうことか説明してくれるかしら相沢君？」
「ああ、栞がダイビングしたいって名雪から聞いてな」
「そうじゃなくて、なんで栞がくること黙ってたの？」
「感動的な出合いの演出だったんだが、気に入らなかったか？」
「そう言う問題じゃないわよっ」
「メディカルチェックはもう見たんだろ？、無理させなきゃ問題ない」
そう、一番気になっていた栞の身体
店の奥にいってまっ先に確認した栞の持ってきた医師の発行したメディカルチェック
「栞は香里に会いたがってる、香里も栞に会いたかった…違うか？」
「私は…」
「午前中の栞の学科は、香里に任せる、午後のプールは状況次第だな」
「ちょっ相沢君！」
「栞、楽しそうだったぞ」
「えっ」

「香里も」

心からは消えていない、忘れた思ってたのに。
夢に見る事も無くなってたのに、あの恐怖がまだ拭えない。
でも、気にしていてもしょうがない、栞がここに来てくれた。
なら、自分のできる限りの事をしよう、栞の為に

私の為に

「今日、OWの学科講習を担当しますインストラクターの美坂です、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ…えうっ」

ごんっと机に頭をぶつけ、涙目になって見上げる妹を見ながら、他のお客さんが居なくて本当に良かったと思う。
「はあっ、じゃあまずこのビデオからね２０分くらいだから」
デッキの再生ボタンを押す。
「栞はなんでダイビングしようなんて思ったの？」
なにか目をきらきらさせながら画面に食い入る栞に何となく聞いてみた
「はい？」
ああ、そうだったこの子は気に入ったものに夢中になるんだったっけ
「なんでもないわ、はいビデオ終了、なんか質問はある？」
「あっあんなにお魚、いっぱいいるんですか？、あと、ビデオに出てた人みんなゴツいんですけど」
「この辺なら日本ではほとんど見られない生物もいるし大きな群れとかもみれるわよ、
あとゴツいのは気にしないで」
私もそう思うし

「むぅ〜、ずるいですこんな面白そうな事、教えてくれなかったなんて」
「じゃあ、次にいくわよ。あとで、学科でやった事のクイズやるから、しっかり見ておくのよ」
「えっクイズですか？」
「まあ、簡単なペーパーテストよ」
「テスト…なんですか？」
「ファイナルエグザムっていうの、マークシートの五択で７５点以上で合格だから」

「えぅ」

屋外のプールに器材を持ち出す、祐一から連絡が来ないので栞のプールは自分がやるんだろう。
とプールには先客がいた
「じゃあ、プール講習だっ栞の修行の成果をここで思う存分ぶつけるがいい」
「はいっもちろんですっ世界は私達のものですっ」
何かずれた二人が
「ちょっと、相沢君、あなたのお客さんはどうしたのよ？」
「ああ、なんか仕事の都合で明日帰らなきゃいけないらしくてな、今日はキャンセル」
「じゃあ、栞の講習はやってくれるのね？」
「いや、オーナーに呼ばれてるから」
「じゃ、何しに来たのよ」
「恥ずかしがり屋のかおりんが最愛の妹に」
「いいわよ、私がやるから」
「んじゃ、よろしくなっ」
元気よく去ってゆく祐一
プールサイドは走るなって習わなかったのかしら
淡いブルーの大人しめのワンピースをきた栞をつれて日陰になってる方に行く
ひさしぶりに会った栞、水着姿なんてほんとに何年ぶりかしら、でもなんか子供っぽいからおっきな麦わら帽子とか似合いそう、まっ白いミュールとかも可愛いだろうな

何か弛んでしまった自分を引き締めつつブリーフィングに入る
「じゃあ、今日やる事の説明するわ」
「はいっ」
「器材のセッティングと水中のスキル、後あんた泳げるの？」
「なにいってるんですか！ばっちりです」
「４００mよ？」

「えぅ」

「おーなー？」
古い木のドアをあける。クーラーの冷たい風が汗ばんだ肌に心地いい
「あっ祐一さん遅いですよ」
「すみません、オーナーが呼んでるってなんです？」
ここのダイビングサービスの社長（おそらくこの業界では世界最年少だろう）に聞く
ウチの制服であるアロハシャツと６ポケットの白いコットンの膝上の短カーゴ
ほっそりとしたなだらかな女性らしいラインを被う少し大きめの鮮やかなオレンジのアロハと
柄をあわせた大きなリボンが 可愛らしい

来たはいいのだが、
俺を呼んだはずのオーナーの姿が見えない
「祐一さんにしかできない事です」
いつも笑顔を欠かさない社長が珍しく真面目な顔で俺に言う。
それでも、どこかかわいらしい雰囲気があるんだけど
社長が無言で指差すのその先には

ダイビングサービスオーナー兼ドルフィンスイム担当の舞が部屋のすみでいじけていた。
「ぐしゅっぐしゅ」
取りあえず、舞のすぐ側に屈んで優しく頭を撫でる

「で、どうしたんだ、佐祐理さんも心配してるぞ？」
舞はすんっと鼻を啜ると
「いなくなった…」
「へっ？」
「帰ってこない…」
「誰が？」
「帰ってこない…ハンちゃん」

俺達の住む家のすぐ裏の小さな入り江に毎日のように遊びにくるハンドウイルカ
舞と佐裕理さんが卒業旅行でそいつと出会い、俺がここでダイビングサービスをやる事になった原因
あいつ、佐裕理さんや舞には異常に懐いてる癖に俺だけは差別するんだよな
こないだは、真上から乗りかかってくるし、死ぬかと思った。
しかも、初めて会った香里にはしっかりサービスしてやがった。
そいつがかれこれ一週間、姿を見せない。
「ほら、あいつも年頃だしさ、彼女ができても不思議じゃないだろ？」
「今頃どっかで新婚生活かも知れないじゃん？」
「なっ、ほらあいつならきっと嫁さんと子供つれて戻ってくるって」
もしそうならば習性上、おそらくこのまま戻ってこない可能性の方が高いのだが

あいつの元群はおそらくかなり大きく、かなり沖合いで生活してると思われる。
この入り江は群れが生活するには狭すぎるし、何より餌生物が少ない
この入り江で確認された個体はこの３年間でハンちゃんのみ。
「ハンドウイルカは…入り江で子育てをする…けど、この島の私の知ってる入り江のどこにも育児行動は…確認されたことはない。」
さすがだな、舞、ガイドの面目躍如だ。
この島の沿岸域にはいくつかの少数の群れと、少し離れた沖合いに大きな群れがある。
しかし、この島のほとんどの入り江で繁殖行動は確認されてない。
近くにいくつかの無人島もあるし未確認の入り江もある、おそらく、そこで繁殖が行われてるのだろう
沿岸の群れサイズと構成は頻繁に変化する事が確認されているが、
この一週間、 舞の担当するドルフィンスイムにおいてはいくつかのドルフィンポイントで識別された群れと個体の中にはハンちゃんはいなかった。
つまり、舞と俺の知ってる限りこの周辺海域においてハンちゃんの在すると思われる群れはなかったのだ。

もし、外洋型の形質を持つハンちゃんが”はぐれ”であり、元群に戻れたのならば、
成熟したオスであるハンちゃんがこの入り江に戻って定着する可能性は低い。

でも、あいつなら帰ってくる様な気がする。
なんせ、あいつは舞にベタ惚れだからな。
「舞、あいつはきっと帰ってくるよ、俺達がここに来てからずっと一緒だったろ？
あいつだってそれは分かってるはずだ。だから帰ってくる、絶対」
「絶対？」
「絶対」
「絶対の絶対？」
「絶対の絶対」
「絶対の絶対の絶対？」
「もちろんだ」
ぐすっと涙をブルーのアロハシャツの肩に擦り付ける。
「じゃあ…待つ」
舞を落ち着かせた後、佐裕理さんの入れてくれたオレンジジュースを飲んでから帰ろうとする
「ほいじゃ、俺、仕事に戻りますんで」
袖を何かに引っ張られる。その方に顔を向けると
泣き腫らした赤い目の舞が上目使いで俺のシャツの袖口を掴んでいた。
「な、なんだ、舞？」
俺が舞のこの表情に弱い事を知ってるのか、さらに追い討ちを駆けるようにか細い声で
「…祐一」
「え？」
「…今日は祐一」
「え」
「…今日は祐一がずっと慰めてくれる」

「じゃあ、あとでドラッグストア行ってきて下さいねー」
「は？」
「はい、祐一さんと舞がー」
「えと、なにがないんですか？」
「はぇ、祐一さんは女の子にそれを言わせる気なんですかー」
「…」
「今日の舞は寝かしてくれませんよー、覚悟して下さいねー」


それは貴女も一緒ですよね？

「じゃあ、器材のセッティングいくわよ？」
「はいっ、これで私もダイバーの仲間入りですっ」
まだそれは、ちょっと早いんじゃないかしら
「まあ良いわ、まずタンクこのタンクのすぐ横についてるのがタンクバルブよ
このバルブが自分の右側になるようにタンクの前に立ってみて」
「えと…こうですか？」
「そう、そしたら、このバルブをゆっくり手前に廻して」
「はい…、廻しづらいですね」
「たまに固いのもあるわ、それと廻す方向が分からなくなったらバルブの横を見て御覧なさい」
「はい、あっ矢印が書いてありますね」
「そうOPENの方に廻せば空気が出てくるわ、もちろんCLOSEの方に廻せば閉まるわよ」
「はい、じゃあ、んっ」
ぷしー
「あっ出てきました」
「じゃあそこで少し匂いを嗅いでみて最近はほとんどないけど変な匂いがしたりしたらタンクを変える事」
理由は分かるわね？と栞の方を見る
「はいっ油とか良くない空気が混じってる場合があるからですよね」
「よくできました」
褒められてえへへーと照れ笑いする栞が可愛い

「じゃあ、BCDのベルト…そう、それをタンクにかぶせて、そうそのまま」
んしょんしょと年齢のわりにまだかわいらしいおでこに汗をかきながら初めての器材に悪戦苦闘する栞
「BCDの襟のところを持ってタンクの頭とあわせるの、タンクが高すぎると水のなかで
頭をぶつけるかも知れないし
低すぎると抜けちゃうかも知れないわ」
「はい、この辺りですね」
「そうね、そしたらベルトを引っ張ってからこのバックルを…」
ばちんっ
「締める訳ね」
「バックル閉める時は指の位置に注意してね挟んじゃうと痛いわよ？」
「はいっそんな間抜けな美坂栞じゃありませんっ」
「栞っそこに手を置いたらっ」
ばみゅっ
「えぅっ！」

「器材のセッティングも終わったところで、いよいよプールに入るわけなんだけど…」
「…なんか疲れました」
「そう？」
バックルにお約束通り手を挟んだ後、ウェイトベルトを足に落とす、
屈もうとしてタンクにひざ蹴りをくらわす等、
アクシデントの見本市みたいな感じで何とか器材をセッティングできた。
自分の能力に問題を感じてしまい心のなかで大きな冷や汗をかきながらも、
タンクを背負ってると言うよりもタンクが歩いてるように見える栞をプールサイドに座らせ、
フィンを履かせる。
「ここの水深は浅いわ、大体腰ぐらいまでの深さ、そのままお尻をずらして入って」
栞のBCDにパワーインフレ−タ−で空気を入れ少し膨らませる、これで転んでも取りあえず水面に浮く。
栞の両手を先導するように持ってプールの方へ誘う
「よいしょっと」
じゃぶんっ
「わっなんかさっきよりも身体が軽いです」
「水の浮力よ、学科でやった事を実体験できたわね？」
「はいっなんかすごいです。でもなんか歩きづらいです」
「ほらっはしゃいでいるとっ」
つるん
「わっ」
香里の伸ばした手は栞の腕を捕らえはしたが、失われたバランスを回復するには一瞬遅く
フィンを履いて歩く事に慣れない栞は足を滑らせる。
BCDの浮力は十分栞と栞の器材の重量を支え、水面に仰向けで浮かぶ、栞のその姿は
「お姉ちゃんっラッコみたいできもち良いです」
「私にラッコの妹なんていないわ…」

「えぅ」

「じゃあ、マスククリアーね」
「はいっビデオでやってた奴ですね」
「そう、今は良いけど、水の中に入ってからマスクが曇ったり、水が入ってきたりしたら困るでしょう」
「はいっ」
「これができるようになれば、水中でマスクに水が入ったり、曇ったりしても大丈夫よ」
「じゃあ、まず私がここでお手本を見せるから」
水深８０cmほどの浅いプールに器材を着けて少し不格好なウェット姿の栞の前に立つ
「はい、マスクの中に水が入りました」
「マスクの上側、この辺を、手のひらのこの辺で押さえるようにして」
慣れないマスク越しに私を見る栞によく分かるよう大きいジェスチャーでゆっくりデモストレートする
「ゆーっくり上を向きながら、鼻歌を歌うように鼻から息を出す」
んーーーーーー
「はい、マスクの水は無くなりました」

「わかった？じゃあ、やってみて」
「はいっ」
「えと、マスクに水が入ったとして」
「マスクを押さえて、ゆっくり上を向いて、鼻から息を出す…」
ごほっごほっ
「栞っ！！」
突然咳き込む栞に過去の嫌な思い出が私の胸に去来する


「大変ですっお姉ちゃんっ」
「ちょっあんた大丈夫なの！？」
「息が続きませんっ」
「途中で吸いなさい…」

水深５mのプールのふちに腰掛けて水中スキルの最後にもう一度マスククリアーを説明する。
「上を向く事でマスクのスカートの方に水がたまるわ、マスクの上側を押さえているから、
鼻から息を出せばマスクの下にたまった水を追い出せるわ」
「えぅ〜、すごいです。なんか東洋の神秘です。」
貴女のやってる事も器材も全て英語表記よ
「栞、寒くない？少し休憩する？」
「はいっでもまだやる事あるんですよね？」
「いえ、今日の分はもう終わりよ、後は自由と言うか水中に慣れる様に少し潜って遊ぶくらいかしら」
「あっじゃあもう少し水の中にいたいです。」
「今日やったところで何か分からない事や気になった事はある？」
「ぱーふぇくとですっ」
確かに理解は早いし、一度覚えた事はちゃんとできる。思ったより自分の妹が優秀な事にすこし驚きを感じる。
「そう、今日のおさらいしてから少し遊びましょうか？」
「はいっ」
「水中で私のする事をまねて御覧なさい」
今日プールで、学んだスキルを一通りおさらいした後、栞にジェスチャーする。
”私の、まね”

タンクを背負っているとは言えイルカのように水中を自在に泳ぐ、逆立ちしたり
身体を捻りながら泳いでみたり、前転してみたり、
後ろをまるで犬かきの様についてくる妹に気を配りながら。

最初は私もあんな感じだった
タンクの重さに後ろに引っ張られるような感覚
自分の重さも感じられないような浮遊感
地に足がつかない不安

栞を見ているとそんな事すら最初から楽しめるものの様に思えてくる。
恐怖がないのは危険だし、それこそが事故の原因となる事がある。
でも、栞は何かちがう、なんというか水に馴染んでいるような気がする
私より向いてるのかしら…？

まだバランスがうまくとれないのはしょうがない
慣れるしかないのだから

「はうー、お風呂気持ちよかったですぅ」
「気に入った？、檜風呂なんてここらじゃウチだけよ？」
「なんか、日本の旅館に来たみたいでした」
「冷たいもの、何、飲む？」
「えと」
顎に指を当ててこちらを少し上目使いで見る
「ん？」
「えと、バニラアイスは…」
ガムシロップがその容積の半分を占めるであろうアイスティーとバニラアイスを前にした栞は御満悦の御様子
「……さて、学科の最後よ、合格点は７５点、何度やっても良いけど、これが終わらなきゃ認定証は発行できないからがんばるのよ」
「はひゅぅい、ひゃんびゃりみゃす」
「…食べ終わってからでイイから…」

朝。
なぜか店に出てこない祐一に少し呆れながら、器材をスタークラフトに放り込み
ホテルまで栞を迎えに行く。
「おはよう栞、良く眠れた？」
「もー、ぐっすりです」
「そう、今日は海に行くわよ、やる事はプールと変わらないから、栞なら大丈夫よ」
「ついに海ですか、ここまでの道のりは長かったですぅ」
「長かったって、あんたここに来てからまだ三日目よ？」

その頃
佐裕理様、御満悦。
舞様、非常に御満悦。
祐一、非常に御衰弱。

「当たり前の事だけどプールと違ってしょっぱいし、少し冷たいからね」
「はいっ」
「じゃあ、今日の一本目、器材のセッティングから昨日、プールでやったスキルの
いくつかを実際に海の中でやるわ」
「スキルが終わったら、海中散歩するわよ、ここのハマクマノミは凶暴だからかじられない様注意しなさい」
「えっお魚、見てもいいんですか？」
「ええ、ここは7〜８mの浅い砂場よ、ところどころ転石やサンゴがあるけど、
その周辺にけっこういろいろいるわよ、スキルやった後、見に行きましょう」

「愉しみですっ」

「おうっ栞、ファイナルエグザム百点満点とはすごいじゃないか」
海洋実習の一日目が終わり、店に戻ってきた栞を祐一が出迎える。
「当たり前ですっ、私の辞書に不可能という文字はありませんっ」
「よしっ御褒美として今日は特別に香里の部屋にお泊まりする事を許可するっ」
「ほんとですかっ」
「何の話よ？」
器材を車からおろし店の横の洗い桶に沈めてから店に入ると相沢君と栞が踊っている。
「いや、姉妹水入らずというのも、いいかと思ってな」
「何がよ？」
「お姉ちゃんの部屋に今日お泊まりですっ」
「なっ、だってあんたホテルとってあるじゃない、それに私の部屋なんか来ても何もないわよ？」
「いいんですっ、お姉ちゃんの部屋に泊まりたいんですっ！」
「だっ、相沢君っ！そんな勝手に」
「話したい事とか…あるだろ？」
「それとも、お姉ちゃんは私を部屋には入れたくないんですか、秘密があるとか？」
「そんなことある訳ないでしょっ」
「「じゃあ、いいじゃん」」
「もうっ！分かったわよっ！」



ところで、相沢君
その目の下のクマは何？

私の部屋のちいさなテーブルのに魚の図鑑を広げて、栞が楽しそうに今日の事を話している。
お客さんがダイビングというレジャーを気に入ってくれる事、続けてくれる事、
自分と潜った事を思い出としてくれて、喜んでくれる事
「また来たよ」って毎年来てくれるひとがいて、”元気ですか？’って手紙を送ってきてくれる人がいる。
この海を好きになってくれる人がいて、自分がすきな海をすきになってくれる人がいる。
それはとても嬉しいこと。

子供のように瞳を輝かせて図鑑を見ている、栞の横顔を見ていると
自分がこれだけこの子に教えてあげたんだ、喜ばせてあげれたんだって、自惚れの気持ちが出てくる。

でも、
潜るために必要な知識と技術は私と一緒に苦労してきた教材とマニュアル達
綺麗で多彩な生き物達と魅了するようなブルーを見せてくれたのは自分がだいすきなこの海
ここに栞がいるのは、自分のたいせつな人のおかげ。

私はそのおかげで、栞の笑顔を見る事ができる

私は何もしてないのかも知れない

けど、
今だけは、自分がここでやってきた事が無駄じゃなかったと思えるから

あがっちゃえよ

「ねえ、まだ起きてる？」
「ああ、どうした？栞は？」
古臭いちゃぶ台の前にあぐらをかいて座る祐一のすぐ隣に座る
「あの子なら、もう寝たわ、さすがに少し疲れたみたいね」
「まあ、最初はけっこう疲れちまうもんだからな」
「それで、何これ？」
祐一がテーブルに広げてるノートと英語の文献を覗き込む。
「ああ、こいつの摂餌行動と口吻のつき方がどうもしっくりいかないような気がしてな、
ちょっと調べてみたんだが」
「が？」
自分で撮ったと思われる水中での映像をモニターに写し出す。
揺れもあるし、自然状態での摂食行動だから、少し遠くて細かいところが良く見えない
「分からんな、水ん中で観察してても早すぎるし良いアングルで摂餌してくれるとも限らんし」
「学校の授業の時は寝てた癖に、こういうのは真面目ね」
始めて祐一の講習を見た時は「まあ、真面目にやってるのね」位の認識しかなかったが
自分が講習する様になって祐一の講習のレベルの高さにやっと気付いた。
だが、祐一は講習は不得意だといい、自分はガイドの方が好きだからとツアーをメインに活動している。
「でも、通説通りだとすると餌の形状や摂餌方法から考えて、おかしいだろ？」
と、自分で書いたと思われる魚の顎部と口吻のスケッチとその魚の摂餌行動の論文集から
コピーしたと思われる水槽中での摂餌行動について述べた３枚の論文を目の前に広げる。
こういう事に夢中になっちゃうものなのかな男の子って
「でも、もう少し自然環境下での観察例が欲しいわね」
「そうなんだよなぁ、ま、もう少しデーターを集めてみるか」
ん〜と背筋をのばして両手をからだの少し後ろにつく
「んで、なんだ？」
「たまには、ね」
祐一の耳に自分の頬を擦り付けるように身体の向きをかえ抱き着く
「んっ、ありがとね…その、栞のこと」

すこし…、素直になってもいいかなって、思ったの

うなじに沿うように優しく、肩で切りそろえた髪を撫でてくれる、時折、耳朶に触れる手のひらが気持ち良い
「ねえ、髪、長い時の方が良かった？」
「ん、いま位でもすごく似合ってるぞ、まあ、始めて会った時のイメージがあるって言えばあるが」
横向きにだっこされるみたいに祐一のひざに座り込んで優しい愛撫に身体をまかせる。
「でも、撫でてくれる時の祐一の手、寂しそうだもん、もっと…撫でたいって」
すこし拗ねたように言ってみる、始めて会った頃の自分、ここに来たころの自分、今の自分
この人が一番愛してくれるのがどの自分なのかは分からない
全ての自分を好きになってほしいとは思わない、私の嫌いな自分もいるから
けど、もしかしたら
自分の全てを愛して、受け入れてくれるかも知れない

肩を支えてくれていた左手が腰まで降りてきて 腰を抱きかかえるようにして手を侵入させてくる
「下着、着けてないんだな」
まるで下着のラインをなぞるように下腹部から腿の付け根にかけて指が這う
「ぅんっ、相沢君だってはかないじゃないの」
肩の支えがなくなって少しバランスを崩し、首に手を廻すようにして
抱き着いてしまったのが少し悔しかったので首筋にキスをしてから首筋に柔らかく噛み付く
「まあ、洗濯もん増えるし、どうせ昼間はウェット着て海ん中入るしな、必要無い」
撫でていたのと反対側の耳を手のひらで包み込むようにして顔を向けさせられる。
「最初は違和感あったけど、もう慣れたわよ」
「ん」
唇が触れる程近くで囁いてから唇をあわせる。祐一の下唇を舌でなぞるようにしてキス
一度唇を離す、唇を繋ぐ粘液の橋はすぐに切れて唇にまとわりつく、くすぐったい。

深くキスできる様、首を傾げ、歯茎をなぞる祐一の舌の感触を楽しみながら自らの舌を絡ませる。
少し祐一の邪魔をしてみる
「んあっ」
唇に気をとられてたら、祐一の右手に乳房に強く押し付けられていた。
とっさに祐一の手に自分の手を重ねて抵抗するけど、もっと強く押さえ付けてくる
自分の身体に密着するように私とのスキマが無くなるように
背中越しに感じる祐一の胸
かたく尖った乳首を根元から押し上げるように手のひらで押さえ付けられて少し痛いくらい、
けど、あぅふっ、んっ、おっぱいが…溶けちゃうみたいに、いっ…気持ちイイ。
ショートパンツの中の祐一に手はもうすっかり私に塗れていて
「んむぅ…、んっ」
十分に潤ったそこに男にしては繊細な指が壁をなぞるように入ってきていた
「…ぅん」
柔らかさを楽しむような祐一の手と重ねられた自分の手を見る
「…香里？」
ふいに名前を呼ばれて振り向いたそこにある祐一の唇をひな鳥が餌を請うように啄み、
キスの時、目を開けてるのはどうかと思うな。と手のひらで祐一のまぶたを閉じさせる

足をずらして祐一の腰に乗りかかるようにして抱き着く、少しの間、Tシャツ越しの肌の感触を
味わってから両手で祐一の顔を自分の正面を向くようにして、額と額をあわせて

相手の感じている事がこれで分かれば良いのに…
不思議な、落ち着いた気持ちになりながらそのまま静かに問いかける。



「ねえ、わたしのこと、すき？」

嫌いだね。
嫌いになるのに理由なんかいるかい？

いや、敵だな。
戦場において敵を判断できない事、それは
死に直結している。
一瞬が命取りだ、気をつけろ。

私がここに来た理由、私がここにいる理由
でも、そんなのはもう関係ない
私は私が許せなかった、恐い事から逃げ出した。
理由なんかいらない、私はここがすきだから。

「終わっちゃいましたね」
「そうね…」
最後の海洋実習が終わってからもう３時間、
ずっと栞と真っ白な砂浜がオレンジ色に染まっていくのを眺めていた。
「これで、私も晴れてダイバーですねっ」
「そうね…」
明後日、栞は帰ってしまう。
「これも、お姉ちゃんのおかげですっ、あっ私の認定証、お姉ちゃんの名前も入るんですよね？」
「宝物になりますぅ〜、、あっでもでも祐一さんの名前の入ったカードもいいかもっ」
また、栞がここに来た時のように、私は相槌をうつ事しかできない

理由なんかいらない、それに逃げてしまう自分が嫌だから
だから、栞が帰ってしまうまでに私はその理由となった事を精算しなければならない

だから…今、私は栞に言わなくちゃいけない

逃げ出したからここにいるんじゃなくて
私は、ううん…
　
　　私がここにいたいから

「ごめんね、栞」
「お姉ちゃん？」
「でもっ本当に死ぬかと思ったのよっ、あの時とっさにめりーさん（右）を取り出さなければ、私はっ！…」
「お姉ちゃんっ、もういいんですっ、もう…」
「でも、あれは、あなたが精魂込めて作ったものよ、あなたの夢だったじゃない」
「あれはまた作ればいいんです、でも私のお姉ちゃんは一人しか居ません」
「栞っ」
ひしっと抱き合う姉妹のいる海岸の上、
集音マイクとスコープで海岸の二人を監視する怪し気なアロハ３人組
「ぐじゅぐじゅ、佐祐理、すごく良い話」
「そうだね〜舞〜、佐祐理も感動ですよーっ」
「いや、そんな良い話とは思えんのだが」
「めりけんさっくのめりーさん、かなり嫌いじゃない」
「そうだねーっ、舞〜、かわいいよね〜」
「なんでそんな物騒な物を携帯していたのかが気になるが」
「祐一は鈍感」
「そうだねーっ、舞〜、祐一さんは実は冷血漢だったんですね〜」
「いや、だって妹が作ってた雪だるまが倒れて下敷きになりかけたからそれを壊して助かったって話だろ？」
「祐一は香里の気持ちを分かってない」
「そうだねーっ、舞〜、祐一さんひどいよね〜」
レジャーシートを広げ、良く冷えたお茶を飲みながら舞と佐裕理さんはスコープを覗いている。
お肌に悪いですからと広げられたパラソルの固定用具として先ほどから腕の疲れに耐えている
いたいけな社員にそれはないと思います。
「そういやあいつここに来たばかりの頃はたまに雪だるまに押しつぶされる夢みるってたな」
「はぇ〜、そんなに恐かったんですか〜」
「かなり恐かったらしい、栞特製の６m級だったって話だからな」
「だから、ここに？」

「ここなら雪は降らないからな」

翌日。

「今日からお世話になりますっ。見習いの美坂栞ですっよろしくお願いします」

「どう言う事か説明してもらいましょうか？相沢君？」
「いや、俺も何がなんだか」


「佐裕理、祐一達に栞のこと言うの忘れてる…」
「あははー大丈夫ですよ、佐裕理と祐一さんは”つーかー”の中ですから佐裕理の考えも分かってくれます」
「…ぐじゅぐじゅ、わたし、仲間はずれ…」
「そ、そんな事ないよ、舞」
「…本当？」


「いや、あんまり仕事ないしな」
「あなた、学校はどうするの、それにお父さん達には…」
「大丈夫ですっここにきたのはワーキングホリデーですから、それにもう了承済みですっ」
「まさか、…あの人か？」
「はいっお願いしたら一秒でしたよ？」
「相沢君？」
「あ？」
「他に、…何をあげたらいいのよっ」
「ま、まて、落ち着け、香里、混乱するな」


「可愛い看板娘誕生ですっ」

「ただいま戻りました、主任」
「ご苦労様、セリオ、排水するよ」
トランク内の海水が加圧空気により排水された。
頭部を覆っていた潜水装備をはずし、耐圧扉を開け、減圧室に入る。
浮上が近いためこの船の気圧は第一減圧圧力まで下げられており、周囲の圧力よりも低い。
減圧ランプが緑に点灯し減圧が終了した事を伝える。

長期間に渡る深海作業に於いて行われる飽和潜水。
複雑で長時間の減圧が必要である事、中枢神経系症状、塞栓症等の危険等の理由により
徐々に人間による深海作業は潜水ロボットに移行していた。
その中でもセリオタイプは、深海作業機器メーカーにより設計されたフレームに来栖川製のメインシステムを搭載し、人の作業の代替がそのままできる。
身体の主要部分に２つの耐圧殻が使用されていて、全身も耐圧設計がなされている。
主に浅水域で使用される"Submariner"と深海用の"Sea Dweller"の２タイプあり、
アンビリカルにより作業船とコンタクトをとるためサテライトシステムは搭載されておらず、
作業の際、邪魔になるため髪は短い。
基本的に通常型のセリオと同じシステムを使用する"Submariner"に対して"Sea Dweller"は
メインシステムの他に専用のサブシステムを搭載している。
変化の大きい過酷な環境下において柔軟な判断をある程度まで単独で行う必要があり、
そのような現場での適応性を高め、確実な状況の把握と認識能力のほかに
作業上、人間で言う経験や勘の様なものを要求されるからである。
このシステムは作業だけではなく通常の人間との対応にも適用され成長することができるため、
十分な経験と教育を受けた"Sea Dweller"は"Submariner"よりも適切で自然な対応をする事ができる。

「浮上支援は？」
「少々、お待ちください」
海上の支援船と連絡をとる。
「先ほどど同じです、支援船からは待機と」
「のんびりしたもんだな」
「はい、物資は十分ありますし、緊急と言う訳でもありません」

先程、船外に出て仮設基地から船に付け替えたアンビリカルを通しての４時間振りの通信は
私達にこの暗く寒い深度９８０mの海底での待機を伝えてきた。
仮設基地の放棄はまだ先なのだが、昨日の地震により岩盤が崩壊し、基地の基部ごと沈み始めてしまった。
すでに設置された場所からは大きく離れていて、海底の斜面を今も徐々に滑っている。
３日前に基地の職員のほとんどは退去していた、今頃、海上支援船の減圧室の中だろう。
地震の起きたとき、基地に残っていたのは主任１人と私だけだった。
当初の予定では２日後に実験船を基地から移動させた後、浮上支援船とランデブーし
３日をかけて浮上する予定だったのだが、基地が沈みはじめてしまった為、私達は予定を繰り上げて
実験船に必要な物資を移動させ浮上支援船による引き上げを待つ事にした。

「では私は、スリープモードに移行します。私の充電にも酸素は必要ですから」
私の充電には発電機を廻す必要がある、それは船内に供給される酸素を使用する。
先ほどの船外活動により私のバッテリーはかなり消耗している
まだ豊富にあるとはいえこの閉鎖された空間では燃料も酸素も電源も、すべてが貴重である事に変わりはない。

「セリオ？」
スリープモードを解除する。

「はい、浮上支援はまだの様ですが？」
「ほら、あれ見て御覧よ」
主任の指差す先
厚いポリカーボネートの覗き窓から見えるのは船外ライトの照らし出すダークブルーの海底湖
通常の海水よりも塩分濃度が高い等の理由で周りの海水と混じりあわず、
比重が高い為、海底のくぼみにたまり、屈折率の違いから海底に湖があるように見えるためそう呼ばれる。
船は先ほどより移動していた
アンビリカルで海上支援船と繋がっているとは言え、ある程度の移動はできる。
「待機命令は解除されたのですか？」
船が移動していたことと私のスリープを解除した事から状況の変化があったのかと訪ねると

「いや…セリオにも見せたかったから」

主任は悪戯を責められてる子供のようにばつの悪そうな顔をしながら、頭をかいていた。

「では、スリープモードに戻ります」
「ああ、起こしてごめんね」

体外環境の異常による強制起動信号により私はスリープモードを解除された
私の温度知覚センサは摂氏３度を示している、船内温度が異常に低下している

私がスリープしてから２８時間がたっていた。

「主任」

コンソールの前に倒れ込んでいる主任をベッドに運ぶ。
既に主任の体温はかなり低下しており、意識はなく、ひどく震えている。
防寒具を主任に着せ、船内にあるだけの毛布やタオルで主任の身体を包んだ
おそらく、睡眠中に室温が低下し、気付いた時には体温低下がかなり進んでいて
暖房機能を回復させようとコンソールまで辿り着いたもの、動けなくなったのだろう。
船内管制システムの確認をする。
暖房の温水ボイラーが停止している、サブシステムも点火しない。
ボイラー制御システムの不具合のようだ。
部品の交換が必要だろうがその部品は船にはない、修理は不可能だ
既に非常事態を海上の支援船に連絡している、救難チームが来るまで後８時間
暖房システムを失った船は急速にその室温を下げている
船内圧力を上昇させれば、室温が一時的に上昇するが、
これ以上の加圧は浮上した際の減圧手順が増えてしまうし、高圧神経症を起こしかねない、
人間は自分程、圧力に適応してないのだ。
この船が自力で移動できるとは言え浮上ができる訳ではない。
主任の震えは先程より減少し間欠的になっている、体内中心温度の低下が進んだ証拠だ。
もう、時間がない。

「自力浮上…しかありませんね」

ディーゼル発電機を起動する
船と自らのバッテリーを充電しながら、地図を検索し、船を移動させる
この船に乗り込んだ場所。
岩盤崩壊により、沈んでしまった仮設基地。
私が主任と初めて出会い、仕事をした場所
観測機器から得られた情報では仮設基地の現在深度は１７２７m
私の最大稼動深度が１１５０m

でも、

ハビタートには浮上デバイスがある


仮設基地には緊急避難用のブロックがありこのブロックは単独で浮上する事ができる
この深度では主任を緊急避難ブロックに移送する事は不可能だが、
緊急避難ブロックの浮上デバイスを使用すれば研究船を浮上させる事は可能なはずだ

斜面の棚になっているところに研究船を停船させ作業準備をおこなう。
ライトに照らされた海底斜面はなんの変化もなく平胆に続いている。
船外に出ると強制認識のコールがかかった。
安全装置からの深度警告が発令されている、これ以上の深度には私の判断ではすすめない
でも、船からのアンビリカルを使用し船内の通信命令システムを経由すれば
主任の特権命令で警告を解除できる。
基準違反であるのにごく当たり前のように主任が私に教えてくれたパスワードを使用し
特権モードに変更した後、深度設定を変更し、私自身に命令を送信する。
「命令受信、設定変更完了」

私の限界深度の安全マージンはそれほど余裕がなかったらしい。
基地に着く手前で脚部ユニットの動力系に負荷警告が出たため、
安定歩行の為に装備しているウェイトブーツを脱いだ
これでしばらくは移動する事ができる。
”右椀浸水警告”
腕部ももちろん耐圧設計だが、耐圧殻が使用されている胴体の主要部居と頭部にくらべれば限界圧力は低い
”右椀パワーコントロールパイロット信号途絶”
おそらく肩関節の継ぎ目からの浸水だろう腕部外装は一体成形されているが胴体との取付部は弱い
四肢は耐圧と浸水対策の為、流動性のある樹脂が充填されているが、それとて完全ではない。
残った左腕で浮上デバイスを引きずり、研究船まで辿り着く
既に各部で浸水と異常が発生している。
浮上デバイスを基部に仮置きし、固定を始める。
ロッキングボルトを掴み、回転させる
バズッ…、シュゥッ
回転時の負荷の為か左腕にも浸水が起き
ロッキングボルトを掴んだ手のフィードバックもなくなり腕の制御もきかない
私は上体を捻り、だらりと垂れ下がる自らの左手をロッキングボルトから外す
私の両腕は既に作業できる状態ではない
先ほどの特権命令系統から私自身に命令する
私の頭部を被うマスク
頭部のセンシングデバイスを守るために着用している私の外部装備の一つ
これをはずせば

私の顔面の皮膚感覚に海水の冷たさを感じる

警報が鳴り続けている。

ひざまづく、ぶらぶらしている両腕が邪魔でバランスが上手くとれない
先ほどから左目のフォーカスがずれており、距離感に誤差を生じている
何度か失敗した後ようやくロッキングボルトを喰わえ、固定位置に
ガゴンッ
しかし、固定位置までロッキングボルトはまだ降りてない
見ると白い破片のような物が目の前に落ちてくる。
下顎部が損傷し歯が何本か折れている、顎関節は既に破損して、ボルトを喰わえる事は不可能だ
わたしは上体を起こし、自分の頭部をボルトに打ち付ける。
頭部の耐圧殻は限り無く真球に近いステンレス製、ハステロイとFRPの保護カバーと衝撃吸収剤に囲まれて
チタン外殻の頭蓋骨の中に納まっている。
この程度の衝撃では私の中枢に異常を起こすことはない
ゴグッ
ロッキングボルトは固定位置に納まる、さすが外部構造物だ。
少なくともわたしの頭部を覆う外皮と外殻よりは頑丈らしく歪みすら生じてない
私の表皮構造はもうぼろぼろで、センサーのほとんどが使用不能だというのに。
頭部側面を使いボルトの安全カバーをおろす
命令ラインを使用して取り付けたデバイスのチェックをする
オールグリーン、問題はない。そのまま、浮上命令を出す。

私を接続したまま浮上するのは困難であると予測される、浮上したとして私の修理が可能かどうかも
私自身の緊急浮上デバイスを私のシステムは既に認識していない
おそらく、浸水によるラインの切断。
それに、この深度でバルーンが私を浮上させられるだけの浮力を持てるかは疑問だ
バルーン使用可能深度まで自力で上がる事も無理だろう
今の私は立ち上がる事すらできないのだから。

私は私に接続されているアンビリカルを切断した

太陽の光の届かない暗い海底に横たわって、ゆっくり浮上してゆく船の明かりを見る。
外部ライトの電源はアンビリカルから供給されていたので既に消灯している。
私の電源も既にバックアップに切り替わっている。
まだ生きている方のカメラを切り替え暗視モードにし、船底をじっと見つめる。

船の明かりが見えなくなり
真っ暗な海底の静寂
不思議な事にあんなにうるさかった様々な警告音はもう聞こえない

私が最後に認識したものは、
管制システムが受信した、
私ではない誰かが発した無線による強制急速浮上コマンド
視界に入ったのは、
四肢を切断し、それを押し退けるように出てきた水圧により開ききらないバルーンだった。


「主任…」

夢…なのでしょうか、
データバンクの整理をすると朧げに認識する深い海での出来事。

私がこの島に漂着した時
構造から私が深海作業に使用されている事はすぐに分かったものの、
残念な事に漂着した際の破損で頭部と胴体内の耐圧殻の表面カバーが破壊されていて製造ナンバーが
視認できなかったことから私を特定する事はできなかった。
しかし、この島の人はぼろぼろだった私を修理して下さった。
起動した私に、
「ごめんなさい、助けてあげれませんでした」
「？」
私を拾ってくれた人、この島でダイビングサービスの社長をしていると言う
大きなリボンをした若い女性はそういって私の両手を包むように握りしめ、涙をこぼした
冷たい海水の記憶しかない私の皮膚感覚に認識されるその暖かかさは
なぜか、懐かしかった。
女性は私のハードウェアシステムには浸水による重大な損傷が起きていた為
私の学習データと記録の一部を修復できなかった事を謝罪していた。
教えられた漂着時の身体損傷は確かにかなりひどく、
これ程激しく損傷した機体は、廃棄処分か必要なデーターだけバックアップして、
システムの入れ替えを通常はするのだが、私にはそれは行われず、
修復不能な一部のハードウェアを交換しただけで、より高度な技術が必要な回復修理が行われていた。
ただ、私に搭載されていた学習システムが特別な上、
ハードウェアもソフトウェアもユーザーの手による変更がされているため、
詳細な解析を行わなければ完全な修復は不可能との事だった。

基本情報は覚えている、自分がなんの為に製作されたかも
しかし、自分がどこにいたか、何をしていたか、
誰のものだったかを私は自分自身の記憶バンクから検索する事ができなかった。
基本的に生産数の少なく、通常型よりも遥かに高価な私を使用しているところは限られている。
とはいえ世界各国に輸出されている私の同型機は様々な用途に使用されているはずだ、
稼動寿命を超えそのまま海底に廃棄される事もあるだろうし、 軍事作戦の際のロストもあるだろう。
私もその様な機体の一つであるかもしれない
修理と同時に私のユーザーを探してくれていたが、
私の修理が終わってから３ヶ月、漂着してから４ヶ月、私のユーザーからの連絡はまだ来ない

だから、私はここにいる

回復修理が行われたとは言え、完全復元は失敗し、認識できないデーターがかなりの領域にある
このため記憶バンクに重大な問題を生じており、パフォーマンスに問題が生じている事、
このデーターが回復する事は多分ないだろうと言う事を、ダイビングサービスの店長だと言う人に伝えた。
しかしその人は

「だって、お前のマスターがお前を探しに来た時、思い出とか全部なかったら悲しいだろ？
　…無くなっちまった訳じゃないんだ、なんとかなるさ、それにさ…」

そういって

「お前は愛されてたみたいだからな」

からかうように笑った。


だから、私は夢を見る

深海潜水作業用であるため、サテライトシステムを装備していない私では、
お手伝いできる事に限りがあると伝えたところ
「かまわない、第一この島はサテライトの範囲外だしな」
「そうですよ−っ、私の事務を手伝ってくださるだけでも大助かりですよーっ」
「…セリオは迎えが来るまで、ここにいる」
　そういって店のオーナーだと言う長い黒髪の人は私を優しく撫でてくれた

それ以来、私の仕事はお店番。

お客様の送迎のため空港にいっていた店長が帰ってきた。
「セリオー、お前にお客さんだぞ」
「私にですか？」
店のドアをくぐり、入ってきた男性
その時、私が認識した視覚情報と人物データーの整合は
最後に残った私の壊れてしまった部分をすごい早さで修復していく。
認識できなかった領域を開く鍵を私は手に入れ
欠損した記憶を取り戻し、新しく装備された私のメモリーに、二度と消去できないよう情報を書き込む。

もう忘れてしまわないように

「ひさしぶりだね、セリオ」

わたしは

その日から

その日からわたしは夢を見なくなった

「もうすぐ着陸です、主任」
「そうか、相沢君たちに会うのもひさしぶりだな」
「はい、５ヶ月振りです」
「忙しかったからな、ここんとこ」
「休日も海に入られるんですね、主任は」
「はは、遊びで潜るようになるとは思わなかったよ」

無趣味な主任に趣味ができたが、それはやはり海に潜る事だった。
長い休日になるたびに私を連れて、この南の島に来る。

「それにね…セリオ」
「はい」
「これはセリオの里帰りみたいなもんだからね」


だから、私達はこの島に来る。


私が、夢を見るようになったこの島に

私が、夢を見なくなったこの島に

瑞佳と二人で旅行に行こうって事になって
せっかくだから、南の島って事になって
じゃあ、体験ダイビングってやってみようか？って事になった。

「七瀬さんっ、やどかりだよっ、やどかりっ」
「瑞佳っ、スカートびしょびしょになってるわよっ！」
真っ白い砂浜の波打ち際で、これまた真っ白いワンピースで踊るようにはしゃいでいる瑞佳
そのあまりの乙女っぷりにすこし嫉妬するわ。
「えーっ、だってこんなに可愛いんだよっ」
七瀬さんには分からないんだよ、こんなに可愛いのにとかいいながらしゃがみ込んで
やどかりをつついていなければだけど。
「ほらほら、みてみて」
巨大なやどかりを両手で持ち上げ私の顔の前に差し出す瑞佳
「だから見せなくてもいいからっ」
じつは…すこし苦手なのよ、そういうの。


明日はついにはじめてのダイビング

「この書類に目を通して、サインをここと、ここにお願いします。」
予約していたダイビングショップのスタッフの美坂さん。
さっぱりした髪型と綺麗に灼けた肌が格好いい、なんか…美人だし。
「はい、じゃあ今日の体験ダイビングのスケジュールを」
私達の書き込んだ書類をバインダーに挟みながら美坂さんが言う。
「まず、簡単な説明をプールサイドで行います、その後プールで潜るために必要なスキルを練習した後、
海にでます。」
「後、お二人とも髪が長いので何かでまとめた方がいいですよ、何かに引っ掛けちゃったりすると痛いですし、ゴムとか持ってきてます？」
「あっはい大丈夫です。」
「あたしも平気です。」
「説明とプールは１時間程で終わるので昼食を挟んで海に行く事になります。
　昼食はこちらで用意しますけど、何か御要望はありますか？」
「牛乳」
あんた、こんなところまで来て…

美坂さんの説明にふんふんとうなづいてる瑞佳
すると店のドアが突然、開いた
「遅刻よ、相沢君」
「すまんっ」
「もうっ一体何やってたのよ」
「いやっ、おばあちゃんに道を聞かれて」
「この島の人で道分からなくなるのはあなたくらいよ」
ばか言ってないで仕事しなさいとかいわれてる男の人
私達の方に来て、微笑みながら右手を差し出してくる。
「インストラクターの相沢です、よろしくお願いします」
なんか初めて会った気がしない

「ん〜」
瑞佳はさっきからプールサイドに座り込んでウェットスーツに足を通そうと唸っている。
「ウェットスーツは少しきつめかも知れませんが、水に入ると少し楽になるので」
初めて着るウェットスーツに悪戦苦闘する私達。
「足は取りあえずくるぶしの上まで、はいちゃって…そう、それから上に引っ張りあげるような感じで」
この日の為にダイエットしたしねっ
これこそ、まさに乙女ねっ
「よっ」
ウェットスーツを一気に引き上げると、
べべべリッッ
腿の切り替えのところから裂けるウェットスーツ
「あっ、あのっごめんなさい、そのっ」
「あっいいんですよ、いま別の持ってきますから」
いやー古かったのかなーと顔を引きつらせながら、別のウェットスーツをとりに行く相沢さん。
瑞佳はこんな大事件にも気付かず、
ぅにゅ〜とかいいながら背中のかゆい猫みたいに転げまわってまだウェットと格闘している。
穴があったら入りたい…

「水の中、入って着ると楽ですよ」
余りにも苦労している私達を見兼ねたのか相沢さんが言う
言われた通り、プールの中に入ると、水ですべるので、すごく着やすい
「ふぅっ、やっと着れたよ」
いつの間に瑞佳はウェットスーツを着てしまったらしい
でも、あれ？、同じデザインだったのに瑞佳のウェットスーツ…前にチャックがある
プールサイドに屈んで私に教えてくれてた相沢さんが振り返る、
瑞佳を視界に入れた瞬間、動きが止まる。
「長森さん…前後逆です」


「そいやーっ」
先ほどの失態を払拭するように勢い良く器材を背負いさっそうと立つ
あうっ腰が…
「七瀬さん…せっかく長森さんってバディがいるんだから背負わせてもらってもいいんですよ？
それに僕もいるんだから…」
瑞佳にタンクを背負わせながら言う。
「あっ、ごめんなさい」
「いや、別にいいんですけど、体験のお客さんでいきなりタンクを一人で背負う人は余り居ないから……しかも女性で」

なんか少し困ったようにわらってる、後半が聞こえなかったけど

「今やったのがレギュレータークリアです」
プールの水面に出てから再度、自分達のやった事の説明を受ける。
この口にくわえる拳よりちょっと大きいくらいの空気の出てくるやつの事をレギュレータと言うんだそうだ
今やったのは、そのなかに入った水を追い出すスキル。
「じゃあ次、水中で外れちゃったレギュレーターを探す方法です」
そういってポーンとレギュレーターを後ろに放る
「水中でレギュレ−タ−が口にない時はどうするんでしたっけ、長森さん？」
突然、質問されて目が泳ぐ瑞佳
「あ、えと、呼吸し続けなければいけないから口笛を吹くみたいに少しずつ息を出します。」
「はい、その通りです、先ほどのレギュレ−タ−クリアの時と同じです」
流石ですねと説明を続ける相沢さん
「そしたら、レギュレ−タ−のホースの出ている方の肩、右肩ですね、これを下げます」
「すると、レギュレーターの重みでホースが真下にぶら下がります」
「そしたら右手を前に出します」
ビッと手を前に出す、なんかいちいちオーバーアクションなのが面白い
「右腕を自分の腿を触れるように大きく円を描くように廻します」
廻した腕にホースが引っ掛かる
「そのまま廻すと自分の右肩にホースがかかったみたいになるのでそのまま右手でレギュレーターをつかんで」
「くわえます」
「で、このままだとレギュレーターのなかには水が入っているのでいきなり吸うと水を吸い込んでむせちゃいます。」
まあ、日本人は蕎麦とかで啜るの慣れてるからけっこう平気なんですけどねなんていいながら
「先程やったスキルのレギュレータークリアを使って」
フッ
くわえたレギュレーターに息を吹き込む
「レギュレーターの中の水を排水してから、呼吸を始めます。これをレギュレータ−リカバリ−って言います」
とりあえず、相沢さんのまねをしてみる。
「よっ」
なるほど、首の真後ろがホースの根元で身体を傾けるとレギュレ−タ−の重さのせいでホースが
ぶら下がるから、廻した腕にかかるのか

葉鍵的海洋ネタスレ。

スレタイをみて去年マリンスポーツ板に立った奴のコピぺだし、ただの荒らしかと思ったんだが、
ネタふりのレスもあったし葉鍵っぽく海洋ネタができたらいいなと。

「じゃあ、プールの講習はここまでです、海には午後に行きますんで、取りあえず昼食にしましょう。
お疲れ様でした。」

プールから上がった時、ズシッて感じでタンクの重さを感じた。
やっぱり、少し重いわよね…
瑞佳はなんか膝が笑って立てないみたいだけど。
タンクをおろすのを手伝ってもらう、そんな長い時間着けてた訳じゃないのに、身体が軽くなった気分。
講習って聞いたからもっと堅苦しいかと思ったら全然そんな事はなくて
なんか、あっという間に全部終わってしまった。

「暑いですよね、ウェット脱いじゃってもいいですよ、シャワーはこちらです、いま冷たい飲みもの、用意しますね」
そういいながら、コップに麦茶を注いでくれる。
「あれ、なんだこの牛乳？」
それ、ここにいる猫のです。
「ウェット、脱いでるとあっという間に日焼けしますからなんか羽織って日陰にいる方がいいですよ」
大きなパラソルを開き、椅子を用意してくれる。
なんか、至れり尽せりね。

ウェットスーツを脱ぐ、肌に当たる空気と日ざしが気持ちいい。
でも、まさかウェットスーツ着るだけでこんな苦労するとは思わなかった、確かに水の中に入ったら楽になったけど。
それに水着！！、ちっちゃいビキニなんかだったらウェットと一緒に脱いじゃうわね
今回もストラップレスの水着だから脱ぐ時、注意しないと大変なんだけど
ふと気がつくと相沢さんと目があう。
「いや、なんと言うか、ごちそうさまです」
視線の先を辿ると私の胸元。
ウェットを脱いだ拍子に水着が胸の部分がずり落ちていた。
ばごっ
「はぶぅっ」
「なっ、七瀬さんっだめだよっ」
慌ててプールに落ちそうになる相沢さんを支える瑞佳。
「あっ、つい殴っちゃった…」

そうか、折原に雰囲気がにてるんだ…



お客さんに殴らたのは初めてです。しかも女性に
こういう時ってなんて言うんだったけな…
え〜と、そうそう


血の味

「だって、だって家のネコと同じ柄なんだよっ」
だって可愛かったんだもんと拗ねる瑞佳
まあ人それぞれですしと苦笑する相沢さん
あんなでかいナマコのこと、可愛いなんて思えないわよっ

始めての海、やっぱりあっという間に終わっちゃって、今はお店のなかでお茶を飲んでる。
こんな南の島なのに和練り菓子と冷茶でおやつ
「それ、ウチのスタッフが作ったんですよ、おいしいでしょ」
私達が見た生き物について、説明してくれていた相沢さんがそういってつまんだお菓子を一口で食べる。
「相沢君、行儀悪いわよ？」
「そうなんですか〜、あっ美坂さんが作られたんですか？」
自分でも作りたくなったのか、美坂さんに聞く瑞佳
「私じゃないんです、昨日まで居たんですけどウチの非常勤の娘」
「昨日まで？」
「あっいえ、学生さんだから一度帰っただけ、休みになったらまた来ますよ」
すごいなー、教えてほしかったなーと少し残念そう

おかわりいります？と慣れた手付きでお茶を注いでくれる相沢さん
異常に恐縮しながらお茶を注いでもらう瑞佳
まだありますからといって冷蔵庫からお菓子を出してくれる美坂さん
瑞佳は折原の世話をいつも焼いてるから、今日みたいに至れり尽せりで世話されるのが、
なんかくすぐったいみたい、こういうの職業病って言うのかしら。
そんな瑞佳を大変ねぇとか思いながら私の前のテーブルを見る。
さっきとは違うデザインの食べるのが勿体無いくらい綺麗な和菓子

和菓子はカロリー低いって言うし…

「もう一個…たべちゃお」

「疲れた−っ」
ホテルに戻り、ベッドに飛び込む。
瑞佳も枕に顔を埋めて、まったりしている。
「おもしろかったー」
「うん、あんないっぱい、魚いるとは思わなかったよ」

「でも、七瀬さん、相沢さんに抱き着いちゃうんだもん」
「あっあれは瑞佳がいきなりあんなグロテスクなもん見せるからじゃないっ」
海に潜った時、何かに興味を引かれたらしく瑞佳が何かを見つめているので
近くに行くと突然振り返った瑞佳は私の顔に巨大なナマコを押し付けた。
私のマスクのガラスに吸い付くようにうねうねとうごめくナマコ
水の中だって事も忘れて、悲鳴をあげながら近くにいた相沢さんにしがみついた。
すぐに相沢さんがレギュレ−タ−をくわえさせてくれて、溺れずにはすんだけど、
マスクに水は入るわ、レギュレ−タ−とれるわで大変だったのよ？
まさかプールでやったスキル、こんな早く全て使うとはおもわなかったわ
「グロテスクじゃないもん、可愛いもん」
「だからって、顔に押し付ける事ないじゃないのよっ」
「押し付けた訳じゃないもん、七瀬さんが近くに来すぎるからだよっ」
にゅ〜、と私を睨む瑞佳。でもすぐにふたりしてにへらっと笑って
「「おもしろかったね〜」」

まだ、身体がふわふわして水の中にいるみたい
その日の夜はずっと海の話をしながら眠った

楽しかった時間はすぐ過ぎて
いま、私達は空港にいる
「じゃ、荷物これとこれですね、お土産屋さんは小さいですけどあそこにあります、機内持ち込み荷物はもう持ってます？」
車から私達の荷物を運んできた美坂さんが荷物をおろしながら言う。
「あっ私これだけです」
「私もこれだけ」
じゃあ荷物預けちゃいますねと 二人分の荷物をもって受け付けに行く
見た目より力あるのね…

「また来て下さいね」
笑顔で私達を送ってくれる美坂さん
やっぱり、かっこいいな…

「七瀬さん、やけたね」
「瑞佳も結構、黒いわよ？」
飛行機の窓から見える風景は空と雲ばかり
「折原の事だから、”長森が遊び人になってしまった〜”とか言い出すわよ」
「はあっ、いくら浩平でもそんな事言わないもん」
「ほんとにそう思ってる？」
「…言うかも」

「「ねえ…」」
「先にいいよ」
「瑞佳が先でいいわよ」
「七瀬さんが先でいいよ」
「まあ、何となく言いたい事は分かるんだけど」
「むっ、私だって分かるもんっ」
「じゃあ、一緒に言うわよ」
「「せーの」」
「「今度は折原（浩平）も誘ってこよっ」」

きっと

もっと楽しいと思うから

・・・

・・・

こんな所に名スレ発見。>1からは想像も出来ない展開。

セリオ篇、ちょっとしみじみしてしまいました。
続く七瀬篇の対照的なほのぼのぶりもｲｲ。

じゃあ、もう少し続けてみよか。
取りあえず>>74はなんかネタない？

　

あの人から来た知らない住所からの手紙
高校の時の一つ上の先輩だった人、大学の研究室の先輩だった人
何故か気になってしまう人、同じ悲しみを共有できる人
私にできなかった事をできる人、私にできなかった事をできるようにしてしまう人
はやる気持ちを押さえて便せんをあけると、
明日の日付けの入った航空券と最近の日付けの入ったあのころと変わらない微笑みを見せるあなたの写真…

”来い”
　　　相沢祐一

とだけ書かれた手紙。
相沢さん…そのネタは古いと思います。

「で、私は何故、ここに呼ばれたのか教えていただけますか？」
「いや、可愛い後輩の天野がな、夏休みにひとり寂しくしているのも優しい先輩としては心苦しく…」
「いえ、言い訳はいいですから、わざわざ私をここに呼んだ訳を仰っていただきたいだけです」
あんな手紙でここに来てしまう自分も自分だが
「ん、そりゃ天野の顔を見たくなったからだけど？」
「なっ、なっ、そんなことだけのわけないでしょう」
冗談だって分かってるのに赤面してしまう、この人は私を戸惑わせるのが嬉しいらしい。

「でだ、生態研一の才女にウチの店の手伝いをしてもらいたい訳だ」
「私は、潜った事なんかありませんよ？」
しばらく、音信不通だったこの人が
南の島でダイビングサービスをやってる事を聞かされたのはほんの少し前
「インタープリテ−ション、知ってるな？」
「周囲の自然や文化的環境への感心、理解を高め興味を刺激、啓発し生活に新しい視点を与え、その場所を大切にする人を育てたり、
適正な利用を促したりレクリエーションの場を提供する事。ネイチャ−ガイド等の自然を対象にした活動です。」
「さっすが、天野」
「でも私の専門は植物ですし」
「いや、海の中じゃなくて入り江とか山とか
ここのガキどもにさ、教えてやりたいんだよ、自分達が毎日見ている、触れているものがどんなふうに繋がってるのかをさ」
なにか、楽しい夢を語るように私に話しかけるこの人を見ていたら私も何か力になれたらいいなと思ってしまう
「必要なものは言ってくれ、できる限り用意するから」
「まだやるとは言ってませんよ？」
「天野が帰るまでに一回できればいい、頼む」
「分かりました、まずこの島の地図と用意できるすべての資料をお願いします」
その日から島をまわった、自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の肌で感じる、教授と相沢さんに最初に教えてもらった事。
写真やビデオでは分からない自分の鼻で嗅ぐ事のできる匂い、自分の耳で聞くことのできる音、
わたしは、あなたの後ろ姿を見ながら感じる、薫る草の匂いがすきで、あなたの横に座った時に感じる、草の音が好きでした。

それ程広い島ではないと言ってもフィールドワークのできる範囲は限られている。
「俺もここに来てから、日が浅いから」と渡されたA3のノートにはまるで何年も観察したかの様に
沿岸部や海域の状況がびっしりと書き込まれていた。
このデーター自体には私自身は非常に興味があったのだが、残念ながら他の場所の資料になるようなデーターはほとんどなく、
私は短期間のうちに自分でそれを把握しなければならなかったが、相沢さんは仕事で出ている時以外の時間は私に同行してくれた。
大学の研究室を思い出す。あの時はもっとたくさんいて、いつもわたしはあなたと同じグループで
でも今は二人っきりで、自分の事を自慢するようにこの島を紹介するあなたの横顔を見ながら
わたしはあなたを遠くにつれていってしまったこの島をほんの少しだけ、好きになれるような気がしました。
ホテルをとってくれていたけどそれは悪い気がしたので相沢さんの会社の寮に泊まる事にした、寮と言っても普通の家だったけど
「本当にいいのか、こんな狭いところで」という相沢さんの声を聞きながら、相沢さんの匂いのするシャツと
相沢さんの匂いのする枕と相沢さんの匂いのするベッドで私ははじめての南の島の一日目を終わる事ができた。
…さすがに一緒には、…眠れませんでしたけど。

朝。
こんがり焼けたトーストとコーンスープ、山盛りのコールスローとベーコンエッグ
目の前はホテルの朝食のよう
「あははーっ、まだまだありますからたくさん食べて下さいねー」
「…祐一、醤油」
「ほい、天野も一日歩き回るんだ、しっかり食え」
綺麗な女性二人に囲まれて食事する相沢さんに嫉妬してしまいます。
でも、こんなところでハロッズのアールグレイが飲めるなんて… 私はミルクを入れないと飲めませんけど。
てっきり…魚介類ばかりかと思ってました。

新パートｷﾀ━━(ﾟ∀ﾟ)━( ﾟ∀)━( 　ﾟ)━(　　)━(　　)━(ﾟ 　)━(∀ﾟ )━(ﾟ∀ﾟ)━━!!!!!

待ってました♪
とは言っても、その辺の知識がないので雰囲気を楽しむぐらいしかできてませんけど・・・
ガンガッテください。

>75
自分も80氏と同様海洋関係そのものに縁があるわけではないので……
海洋系の研究施設に勤めている後輩と、淡水魚の研究している
友人がいるけど、ネタにできるような話は聞いてないなぁ。
自分の専門はむしろ美汐に近いんで。あ、もちろん美汐篇も期待してます〜。

>>80
すまん、ほんとは背景とか状況描写をきちんとした方がいいんだろうけど
まあ、所詮SSもどきの駄文だし、あくまでもネタ振りなんで笑って許して。
>>81
ん〜、もっと身近な海水浴とか潮干狩りとかでもネタにはなるかと。
部屋にある水槽を見ながらしみじみと一言とか
変わり者の職人さんが来るのを待つか…
>>79
PDAだったんで改行めちゃめちゃなの気付かなかった、読みづらい。
ま、いいか

「相沢さん昼間の…」
「ああ、やっぱり気が付いたか」
「この島に移動するメリットがあるのでしょうか？」
「あれが、もし繁殖の為の回遊をしていて、この島が中継点だとしたらどうだ？」
「回遊という言葉は適切ではないかもしれませんが、同意はします、もしこれが過渡期で移行が早いものであるならば」
「ああ、面白いもんが見れるかもな」
この人が研究者に向いてるなんて思えなかった。
けど実際は努力しなければついていけなかった私なんかとは違って
私達をどんどん引っ張っていってくれた。
でも、あなたは研究の道には進まなかった
先生は助手に欲しがっていたし、私もそのまま進むものと思っていたのに
あなたは突然どこかにいってしまった。
先生、しばらく落ち込んでましたよ？

ずっと、一緒にいれると思ってた。
でも、現実は違って

また…

私は…取り残されてしまった様な気がした。

でも、また会えた。
わたしを呼んでくれた。
わたしを必要としてくれている。

わたしが必要だって。

わたしは、期待してもいいんですか？

野外の集会所に人が集まってくる。
私は今日のプログラムに目を通した後、
目をつぶって、呪文を唱えるように自分自身に言い聞かせる

私はよそもので
この島の事を一番知らないのは私
でも、私はこの島を
この島を一番、魅力的に演出する事ができる
自然のままの姿の、けれどもふだんは見ることのできない部分を私は見る事ができる
それらを繋ぐ見えない糸を
いつも見ている人たちにとっては、ありふれた日常の出来事を
見えているけど、気付く事はない繋がりを
知ってほしいと思う
もっと
もっと
だって、あなた達を取り巻く環境は、世界は
こんなにも興味深く、美しいものなんですから

私がそれを気付かせてあげる
あの人が愛した島を
あの人が私にしかできないと言ったから
あの人が教えてくれた全て、私が学んだ全ては
あの人に近づく為に
あの人の側にいる為に

私のことを信じてくれたのだから
私はそのためにここに呼ばれたのだから

その日
天野が行ったネイチャ−ガイドは大成功だった
天野の丁寧で柔らかい口調と優しそうな物腰は集まった人達を引き込み、魅了する。
自然の、生物達の、それらのつながりに参加した人が気付き理解できるように
日常の身の回りも事から、遠く離れた国の文化まで豊富な知識を使って
参加した人たちの興味を刺激し、啓発する。
それが綿密に計画されたものである事を、参加した人たちに気付かせることはない
事実事象の一部から全体を把握させ、全体からその一部を見い出させる。
今まで見ていたものの別の姿と見えなかった新しい姿。
美しい声と響きには魔力があると思う、人を引き付け捕らえて離さない声
しかし天野のは何か違うような、それだけじゃないような気がする。
凛とした響くような感じではなく全てを優しく包み込むような感じでもない
穏やかに心に侵入し、最初からそうであるように、まるでそうであるのが当たり前のように
風に飛ばされ消えていくように、水に溶けて消えていくように
天野によってもたらされたものであるとすら気付かない
天野によってもたらされたものがあるとすら気付かない
残ったのは知覚できない静かな熱狂と世界を認識する力を与えられた人たち。

そして、少し物静かな普通の女の子。

ついでに言えば、前日に手作りして配ったお菓子が
参加する事のできなかったおじいちゃん、おばあちゃんの心を捕らえたらしく
天野は一日にしてこの小さな島の有名人になっていた。

「いや、天野のおかげだよ、島の人たちも喜んでくれてたし」
「相沢さんのおかげです」
「俺なんにもしてないぞ？」
「いえ、私のやりやすいようにしっかりバックアップしてくれました昔に戻ったみたいで楽しかったです。」
「それに俺ではあそこまで上手くはできん」
「そんな事ありませんよ、それに私を教えたのは相沢さんですよ？」
自分の天性の才能に気付いてないんだこいつは
「ほら、天野のなんか、こう、雰囲気というか、優しさと言うかそう言うのがさ、」
どういっていいかわからない、じつは途中から自分も夢中になっていて何をしていたかをあまり覚えてない
ただ、素晴らしいものだったとは言える
「俺は好きだよ」
「えっ」
「今日の天野のプログラム」
それと
「私のした事が、ですか？」
「ああ」
それをなし得た天野が

私がしたことは私があなたに教えてもらった事で、
できるようになったのはあなたに近付きたいからで
できる様にしてくれたのはやっぱりあなたで
この南の島で私はあなたに近付けたのだろうか？

あれから３年、私は一年の１／4をここで過ごしている。
「また、学校休みの時は手伝いに来てくれよな」
スタッフの一人として
「もう、お前もこの島の人間なんだから」
そして、大好きなこの島の住人の一人として

ほほほっ　あたしが岩切>>87枝だ！　ひれ伏せ男ども！

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣∨￣￣￣￣￣￣￣
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　　│多摩川│
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⌒〜⌒〜⌒〜⌒　ヽ Ｖ┬ イ|ｖ⌒〜⌒〜⌒〜
〜⌒〜⌒〜⌒〜⌒　ゞ--lﾌ"〜⌒〜⌒〜⌒〜
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あたしは強い！　あたしは美しい！　あたしは人魚だ！
敵性語など使わないからな！

>>3か神へ　　あたしは強い男が好きだ、仲間になれっ
>>32岡へ　　せめて人魚とでも言えんのか
>>310へ　　そんな豆鉄砲一挺で戦おうというのが気にくわん
>>294へ　　小娘め、>>3か神は貴様などに見向きもせんわっ
>>14原へ　　奇怪な女だ
>>9わ島へ　　そういえば会ったことがないな
き>>43へ　　>>3か神の昔の女だと…　だ、だからどうしたっ
>>砧夕霧へ　　許せ、当てはまる数字が無い

超>>1000生へ　　貴様さえいなければっ…！（ｻﾞｼｭ

「ほらセリオ、これ観てごらん」
海岸を歩いていて急に渡されたのは、真っ白な小さいサンゴの骨格

くさびらいし
クサビライシ科のサンゴの仲間、草片石、石芝
石灰質の骨格に多くのひだを持ち、群体は形成しない。
キノコの傘の裏側に似ているため、きのこの様な石、 きのこの古語くさびらの石。

しろ
全てを含む色、何も含まない色
全てが終わってしまった後の色、死の色、純粋で冷たく清浄な色。
まだ何も始まっていない色、始の色、全てを受け入れる色。

動物なのに今は生物的な働きも何もない、命の抜け殻
消えてしまった生物としての証
生きるために作り上げたものだけを残して
今はただの炭酸カルシウムの固まり
削ぎ落とされて無機物だけが残った
消えてしまったもの、無くなってしまったもの
真っ白い固まり

私が失ってしまうかも知れないもの
私が消してしまおうとしたもの
今の私は何なのだろう
私の身体を構成する全て
無機物も有機物も情報も他の何かも
私にも消えてしまうものがあるのだろうか
「セリオ？」

私だけにしかないものが

会いたいです
私を大切にしてくれたという人に
取り戻したいです
今の私を作り上げるに至ったその人との思い出を

私は待ちます。

この南の島で
夢を見ながら

「私の不要なデーターの消去とシステムの入れ替えを提案します」
「その方がいいのか？」
「はい、データーが回復する事はおそらくありませんし、 パフォーマンスの問題は看過できるレベルではありません」
「それに私がマスターに回収されるかも不明です。」
そういうと店長たちは顔を見合わせた。

私の修理が終わってから３ヶ月、漂着してから４ヶ月、私のユーザーからの連絡はまだ来ない
所有権は既に破棄されているかもしれない
ならば私はこの場所でなんらかの労働に就くことが適当だ

「怖がらなくていいんですよ」
　恐怖
「セリオは本当にマスターが迎えに来てくれるか不安なのでしょう？」
　不安
「大丈夫ですから、それにセリオはそのままでもいいんですよ」
私には恐怖も不安もないのに
社長は怖がっていると言う
私が不安になっていると言う
「その時は正しいと思ってやった事が、あとで取り返しの付かなくなる事だってあるんです」
社長は私を抱き締める。
「あなたは自分でよく考えて結論を出さなければなりません」
「あなたが後悔しないように」
　後悔
先ほどより少し強く抱き締められる。提案をするまでの判断過程を再検討する。
いまの私にとってデーターの消去、システムの入れ替えは私の学習システムを初期化すると同義だ。
現在の私のデータを全てバックアップしたとしても認識できない領域のデーターは二度と戻らない。
ならば、何故私のシステムはデーター保護規範によりシステム入れ替えの提案を却下しなかったのだろう。

"Sea Dweller"は自分の経験と持っているデータから起こり得る事を予測し、
少ない情報から確実に事態を把握して状況を判断し、
長い演算をせずとも従事する作業を速やかに、より適切に行えるようにシステムを構築されている。
"Sea Dweller"にとって判断する為に必要な自分の経験と成長した学習システムは
自己保全において最優先に保護されるべきものだ。
システムを入れ替えればデーターだけではなく学習したその全てを失う事になる。
消去の提案にいたるまでの私の判断に使用したデーターとルーチンを再確認する。
しかし、明確な判断材料は見つからない、ルーチンにも不自然な点と矛盾が見られる。
何故、推論演算の途中で問題を発見できなかったのか。
私のシステムには他にも何か重大な問題があるのだろうか。
「セリオ、忘れてしまえば、楽になれるってのもあるんだよ」
「どう言う事でしょうか」
「辛い事から逃げるためにな」
「逃げる。ですか」
「そうだ、悲しいことを忘れようとする。
　それに心が押しつぶされないように、悲しみで心が一杯にならないように」
「そういうものなのですか」
私には感情も心もない、悲しいと言う感情がどのようなものか分からない
「俺もそうだったからな、とても悲しい事があってそれに耐え切れなくて、それで…」
店長は少しうつむいて肩を震わす。顔をあげると私をじっと見つめて
「お前もおなじだよ」
「私はハードウェアの浸水による…」
「そうじゃない、お前は気付いてないかも知れないが、自分のマスターが迎えに来てくれるかどうか
　分からなくて不安になっている、自分が捨てられたんじゃないかと怖がって、焦っている。
　だから自分の中にあるデータを消去すれば、その不安からも恐怖からも逃げる事ができると思って、
　俺達にデーターの消去を提案したんだ」
「"Sea Dweller"のシステムがそのような判断をする事はありません」
しかし、私が不明確な理由でデーター消去の提案に至ったのは事実だ
「そうじゃない、お前のシステムがだ」
私のシステム とは "Sea Dweller"のシステムの事ではないのでしょうか

「お前がそう言う判断をしたと言う事は、そういう判断をできるようになるまでお前と過ごした
　お前を育てた、お前のマスターがいたからだ。ただ、仕事するだけではそうまではならん。」
私のシステム
「お前がその人に捨てられたくないって、一緒にいたいって思うようになるまでさ」
私のマスター
「お前のシステムはその人とその人とのつながりを優先するから」
私のなくしてしまったもの
「その人との記憶を修復しようとしてるんだよ、お前は」
私が見る夢
「お前にとって大事な人だから」
大切な人
「だからお前はそのままでいいんだ」
夢を見る私

「セリオが夢を見るのはセリオが忘れたくないからだと思う」
「重要で、より優先度の高い情報を保護しようとし、それを復元しようとしていると言う事でしょうか」
「難しい事は分からない、でも普通そうなる事はないと思う」
「わかりません」
「その人はセリオをすごく大切にしてくれて、セリオがその人の夢を見たり、いなくなったら不安になったり
　するくらい一緒にいる事が大切で…」
シャツの裾を握りしめながらぽろぽろと涙をこぼすオーナー
「セリオはその人のことが好きで、そばにいたくて…でも側にいれないから悲しくて…」
「セリオが…こんなにいい子になったのはその人の、おかげ」
「はい」
「だから、そんな悲しい事言っちゃダメ」
「はい」

問題解決において、効率が良く目的に適合したアルゴリズムが存在する問題領域を特定することは重要だが、
私の推論エンジンはより多くの予測したデーターによる推測を同時に行い領域範囲を狭めることなく解決する事ができる。
しかし、必ずしも人が解ける問題について同じ能力とアルゴリズムで問題解決をしなくてはならないと言う事はない。
もし、私のマスターと私を取り巻く環境が、私に人と同じような行動表現をする事が適当であるとして、
そのような教育を行ったのならば私のシステムは当然そのように成長するだろう。
サブシステムはその時点で私に可能である限り、人と同じ反応を行動に表現させるようになり、
その表現の為に必要かつ最適であると私のシステムが判断するならば私の知的機構の構成が
人の持つ情動と同じ働きをする演算を必要とするようになる可能性もある。
しかしそのようなものを模倣する事が可能なのだろうか。
そしてそれは私の活動に必要なものなのか。
「私はこのままでいいのでしょうか」
「だって、お前のマスターがお前を探しに来た時、思い出とか全部なかったら悲しいだろ？
　…無くなっちまった訳じゃないんだ、なんとかなるさ、それにさ…お前は愛されてたみたいだからな」
情報処理の混乱、行動決定の異常を不安や恐怖からの逃避と言うのでしょうか
私の行動決定規則に私の理解できない何かが既に発生していると言うのでしょうか
それなら、先ほどのルーチン異常や私の行動は…私のマスターとの接触により成長したシステムのせいなのでしょうか
そもそも私が不安や恐怖と言うものを認識できるものなのでしょうか
システムに不具合の起きている状態が”悲しい”と言う事なのでしょうか
そして、私はマスターの側にいることができない事を悲しんでいるのでしょうか
私が…悲しむ

「もう一度聞く。良く考えろ、お前はどうしたい？　俺は絶対探してると思うけど」
「絶対、来ます。佐裕理が保証しますっ、だからそれまでここにいればいいんですよ−っ」
「私も大丈夫だと思う…」

もう一度、私の持てる能力の全てをつかって推論する。
私がどうすればいいかを
私が決めなくてはいけない
私がマスターに頂いた私のシステムを使って。

答えは出た。異常は見つからない、これは私の出した正しい結論だ


「私が悲しいかどうかについては分かりません」
「不安や恐怖についても判断できません」
「ですが」

「私は」
会いたいです
「マスターを待ちます」
私を大切にしてくれたという人に

　この南の島で

「データーを」
取り戻したいです
「消去したくありません」
今の私を作り上げるに至ったその人との思い出を

　夢を見ながら

"Blind watch maker"



「セリオっ」
抱き締められた。
「やっぱりセリオはいい子」
撫でられる
良く分かりません。
「消去したくありません…か」
「何かおかしいでしょうか」
「”消去する事が適当ではありません”でも”消去しない方が適切です”でもないんだな？」
何を言おうとしているかが理解できません
「はい、消去したくありません」

この目の前にいる人工知能は自分自身が理解できないのに十分ほどの会話から自分自身の欲求を表現した。
いまセリオが置かれている状況において最適な処置だとシステムが判断したからとかじゃなくて、
今、ここにいる”セリオ”がそうしたいから
それは、欲求と呼べるものなんだと思う。自分のマスターを忘れたくないって事は。

どんな判断ルーチンかは分からない、でも少なくとも俺はこれがセリオの感情の発露だと信じたい。
不安も恐怖も悲しみも、寂しさもセリオの”心”だって

会いたくなったな、俺も、お前を育てた人に。

会えたらきっと喜びますねーっ、セリオ

怒るかも知れないぞ、「遅いです」って

そんなことない…「哀しかったんですよ」って言うと思う


やっぱりあなたと一緒にいるのが楽しいって
あなたと共にある事が、嬉しいって


「少し、嫉妬するよ。お前のマスターに」

どう言う意味なのでしょう。

「セリオに手を出すのは許しませんよーっ」
「浮気はダメ」

やっぱり良く分かりません。

おお、進んでますね。

>美汐篇
野外講義って難しいですよね。相手を乗せられなければサッパリ。
まあ、普通の講義でも一緒と言えば一緒なんですが、外は気を
散らされやすいので、ますます困難。嗚呼、美汐たんのような技が欲すぃ。

>セリオ補完篇
･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･　セリオ……ええですなぁ。
彼女が「二次創作の女王」と呼ばれる所以を思い知らされますた。

>>97
美汐編
全く持って同意、あんな技が欲しい。
セリオ編
ひさしぶりに来てみたらまさかセリオがあんな事に…
セリオスレの人にはなんと言って慰めていいのやら…
次は誰で行こうか思案中、今週は美汐もセリオも海入ってないし（汗
というか、良く残ってたなこのスレ。

南の島に遊びに行ってた七瀬と長森が土産を持って家に来た

「ほらっこんなに可愛いんだよっ」
長森の土産はぬいぐるみらしい、だが俺にはグロテスクなソーセージにしか見えん
「これは何だ？」
「オオイカリナマコ」
「で、なぜ俺に？」
「えっ、だってだって可愛いし、こーへーの部屋に似合うかなって思ったんだもん」
「とりあえず、もらってはおく」
「むっなんか不満げだよ」
夜中に動きださんだろうな
「ほらっあたしのお土産もすごいのよっ」
大きな紙袋に入った土産をもらう
「おお、すごいなって…」
お前はこれを俺にどうしろと？
ぼいっ
「無言で捨てるなッこの阿呆っ」
喚く七瀬にアイアンクロー
「何でよっマカダミアナッツっていえば南の島土産の基本じゃないのよっ」
「殻付きの生マカダミアナッツを４kgもらって喜ぶのは中華料理屋位だ」

おまえらほんとは俺の事が嫌いだろ

>>99
確かに嫌われてるな（ｗ

ほ

続編切に期待保守