165 :
竹紫:02/06/19 00:58 ID:dJPvc+De
「ウォリスッ! グラウッ!」
ひと声叫び、人影は駆け出した。
「リアナ!」
二人はその名を揃って口にする。
駆け寄るリアナは互いの表情が確認できる距離で立ち止まり、涙ぐむ瞳で
二人の姿を見比べた。数十年ぶりの親子の対面を想わせる。
「お前……、どうやってここに……?」
その言葉がきっかけで、ウォリスの胸にリアナは飛び込んだ。
「ごめんなさい……、ごめんなさいウォリス。わたしあなたに謝りたかった
の……」
グラウはリアナが無事であることを認めるや、二人に背を向けて歩き出し
た。
「おい、グラウ」
「グラウ……」
彼の足音に振り返りウォリスとリアナが呼び止めた。
対するグラウは立ち止まり、
「夜までにエンジン始動に邪魔な土をどけないとな……」そう言って歩き出
した。
「リアナ、それまでに気が変わったら来てくれ」
歩き去る彼の背中はどこか悲しげであった。ウォリスはその後ろ姿に右手
を上げて別れの挨拶を出し、
「グラウ……お前のパンチ、効いたぜ」
グラウは片手を上げて答え、
「プロジェクトは渡さんぞ……」
言い残し、彼は手近のエレカーに乗り込みやがて走り去った。
「おれたちも行こう……」
ウォリスの言葉にリアナはうなずいた。
166 :
竹紫:02/06/19 00:59 ID:dJPvc+De
二人が都市の外へ出たとき、火星の夕日は地平線に沈み始めていた。埃混
じりの風は不思議とないでいる。それでも冷たい空気にリアナは身を震わせ、
ウォリスはそっと彼女の肩を抱いた。赤い大地に横たわる機体向けて歩き出
す。
「わたし、ウォリスと死んだお友達に謝りたいの……」
リアナはマーナーを生き返らせる為に機密情報を盗み出した事をウォリス
に話した。発覚を恐れたグレファンスの言われるままにグースの機体に細工
を施したことも。
「何も言うな、生きることがあいつらにとって何よりのたむけだ」
「本当にごめんなさい……」
彼女の瞳に涙が溢れた。
機体表面のマーキングが読み取れる距離で、ウォリスは主翼先端のナヴィ
ゲーションランプのグリーンが異常な明滅を繰り返していることに気付いた。
点灯する状況でもなければあれほど激しく点滅することもない。すべてが異
常だった。
「……どうしたの?」
足を止めたウォリスの顔を不審そうな顔つきのリアナが見上げる。
やがて機体の陰からゆっくりと男が姿を現した。男に手にハンドガンが握
られていると気付き、ウォリスはリアナを背後に押しやった。
「よお、色男」
隻眼の男が口元に笑みを浮かべた。だが眼は笑っていない。
「オーテック……」
ウォリスが呟く。男は紛れもなくオーテック・バートランであった。
「約束とは場所がずれたな」
167 :
竹紫:02/06/19 01:00 ID:dJPvc+De
リアナを追った彼は先回りしていたのだ。
TH-32で待ち伏せたのは偶然か、それともウォリスとの約束を果たす為か。
「女から離れろ」
オーテックが指示を出す。トリガーに指がかかり、ウォリスは渋々脇へ退
いた。
「女はこっちへ来い。──おっと、奴がおれから見える位置を歩け」やがて
側に歩み寄ったリアナを左手で引き寄せ、
「おい、武器を捨てて両手を頭の後ろにつけろ」
とウォリスに指示する。
「何も持っていない!」
「その腰のパウチのもの全部だ」
そう言われ、ウォリスは内心舌打ちした。パウチには切り札の信号弾がし
まってある。 ウォリスはパウチをオーテックの足許へ放り投げた。
「ようし、奴に向かって歩け」オーテックは無防備のウォリスに向けてリア
ナを荒っぽく押し出した。
「本当はお前と空で決着を付けたかったが、事情が変わってな」
リアナは無言で歩きだし、オーテックはリアナごとウォリスを撃ち抜くつ
もりでトリガーの指に力を込めた。人体を分断せしめる彼の銃ならば容易。
──あと三歩でおさらばだ。
向かい合う二人の距離が一〇メートルを切ったあたりで彼は射撃のタイミ
ングを取り始めた。与えられた死の宣告を知ることなく、絞首台に赴く死刑
囚を想わせる足取りでリアナは絶望への一歩を踏み出す。
そして二歩……。
トリガーにかかる指に限界まで力が込もる。
そして、三歩……。
──死ね!
オーテックはトリガーを引き、閃光が走った。
168 :
竹紫:02/06/19 01:01 ID:dJPvc+De
衝撃が駆け抜け、オーテックの半身は仰向けに地面に落ちた。腰から下を
失ったオーテックが見たものは、自分を睨むTH-32キャノピー後部の旋回
式パルスビーム砲だった。
「無人だった筈──」
唖然とするオーテックの言葉を皆まで聞かず、斜め上から二撃目のパルス
ビームが残る半身を土煙と共に蒸発させた。
二人は呆然と白銀の機体に見入った。ビーム砲のバレルは役目を終えゆっ
くりと旋回し元の位置に戻る。──ウォリスは気付いた、グラウとの交戦中、
人知れず機体を都市へ運ぶ微調整を行ってくれた事、地表への激突を胴体着
陸で防いだ事。
「あいつは三人目の存在を見抜けなかったのさ……」
ウォリスは振り返ったリアナにウインクを送った。
「AIが助けてくれたのね……」
彼女の言葉にウォリスは咳払いで答え、
「ひとこと言わせてくれ──、
迎えに来たぜ、リアナ」
と両手を広げる。彼は一一年前の約束を果たしたのだ。
至福の表情で彼女はウォリスの胸に飛び込んだ。
[サンダーボルト人類への希望篇・おわり]
169 :
竹紫:02/06/19 01:01 ID:dJPvc+De
あとがき
長かった。実に長かった……。八ヶ月半、計三六六時間の偉業である。
「マクロスプラスを自分の手で」などといった一見ミーハーで無謀とも言え
る計画を完遂できたのは、ひとえに私のサンダーボルトに対する思いと読者
諸氏の励ましのおかげである。
この八ヶ月、色々なことがあった。航空機専門誌を購入したり、太陽系惑
星のデータ参照に生まれてはじめて自発的に図書館に足を運んだりもした。
その、すべての結晶がこの原稿用紙五六〇枚の物語である。
サンダーボルトは今を遡る事八年前、「よこすかウォーズ」にて作られた
シューティングゲームだった。自分の作り出したキャラや世界観をしつこく
流用したがる私は、マクロスプラスもどきを描くに至って真っ先にこの作品
名が浮かんだ。当時はシューティングゲームには大層なストーリーが付き物
だったから、幸いサンダーボルトにも大掛かりなストーリーや設定が存在し
た。友人に描いてもらったオープニングストーリーもあった(そこで活躍す
るのがファルとフィーリア、そしてレトラー)。稚拙な設定も現在の知識で
増強してよりリアルな世界観となり、以後の展開は皆さん御承知の通り。と
にかく今は偉業を成し遂げた充実感で一杯である。
果たして私の戦闘機は、皆さんの心の空を飛んでくれたでしょうか?
170 :
竹紫:02/06/19 01:02 ID:dJPvc+De
平成八年一月某日
FireBomber「HOLY LONELY LIGHT」を聴きながら
青紫
171 :
竹紫:02/06/19 01:03 ID:dJPvc+De
サンダーボルト裏話
<ほっと一息>
遂にできましたサンダーボルト! 凄く嬉しいです。飽きっぽい私がこれ
だけの大仕事を成し遂げたのは、奇跡に近いものがあります。
何だか初期のあらすじと違う展開になってしまいました。でも初めはあれ
くらいしか考えてなかったのです。
8ヶ月も書いていると、発展途上の私、はじめと終わりでは何やら文体に
変化があるようです。アニメを意識した表現技法も既存のスタイルを捨てき
れず中途半端です。
しかも最後は駆け足で終わってしまった感がありますね。リサやオーテッ
クは一体何だったのでしょうか?(笑) 本当は太陽系に行ってから長篇1
本分は伸ばせたのですが、4話で何とか完結させようと焦ってしまいました。
意志に目覚めたAIがリアナと恋のバトルを繰り広げるというマクロスプ
ラスばりの話も考えていたのですが収まりきれませんでした。AIが「あな
たに譲る」とか意味深な台詞を語っているのもそのなごりです。
他にも意味ありげに登場した無人戦闘機ヴァルキュリアの活躍も、ページ
バランスの兼ね合いから断念しました。エピソード4−3からまるっきりマ
クロスプラスと同じ展開なんかも考えてましたから(グラウがヴァルキュリ
アと相打ちになったり…)。
でも一応終わりました。
172 :
竹紫:02/06/19 01:03 ID:dJPvc+De
さて、あなたはこの作品を読んでどんな印象を持たれたでしょうか?
一番印象に残っているシーンはどこでしょうか?
私はエピソード4チャプター4でのウォリス達が倉庫に監禁されたシーン
です。ウォリスが大好きな圭子は、遠回しに愛の告白をします。描くにあた
り、圭子の心境になると言いたい事が次々と溢れてくる。そのけなげな仕草
に、「圭子って可愛い奴!」なんて思いながら描いてました。
そこから彼女は死んでしまうんですねぇ。結構悲しかったです。何だかヒ
ロインのリアナよりも目立ってしまいました。
次に来るのが、配属早々ウォリスがAF02を盗み出す所。M+と類似し
た展開だとTH-32は当分登場しない。戦闘機を飛ばせたい、でもダメ。し
かしウォリスの心境で基地内をうろつくとあるじゃないですか、いい戦闘機
が。このネタを思い付いたとき思わずほくそ笑んでしまいました。
あってないようなストーリーを支えていたのが「謎」だったわけですが、
私が用意した謎は全て解明されたと思います。どうでしょうか? 「アノ事
はどーなったの?」ってのがありましたらメール下さい。
173 :
竹紫:02/06/19 01:04 ID:dJPvc+De
<ネタばらし>
お次はネタばらしです。
この作品には、固有名詞や数字などにお遊びが多く含まれています。
まずはフォース、これはずばり沙羅曼蛇です。惑星生命体って設定も同じ
です。8年前ちょうど流行ってたゲームです。
ウォリス君、イメージキャラクターはもちろんM+のイサム君です。彼の
性格+私のアレンジが加わってます。名前は主人公らしくて男らしい?語呂で
考えました。
リアナちゃん、彼女はM+のミュンがモデル。名前は、私「り」とか「な」
といった響きが好きで(笑)、女性の名前にはよく含まれています。
圭子ちゃん、これはM+でのヤンとケイトを兼ねた役割になってます。太
陽系に向かう所で同乗者が必要になった為登場となりました。後席に野郎が
乗ってるのはやるせなかったので女の子にしました(笑)。名前は友人の名
字をもじったものです。私の別の作品(漫画)で同名のキャラがいます。
グラウ君、これはもちろんガルドです。濁音を混ぜてイメージを近付けま
した。
グース&ケイス君、M+で彼等に相当するキャラはいません。すなわちや
られキャラなんですね(笑)。これといった人格も活躍シーンも与えられなかっ
たので、死んでも痛くもかゆくもありませんでした(要反省)。名前は特に
意識していませんが、グースはバイクの名前、ケイスはダライアス外伝の1
Pのパイロットの名です。
ファル&フィーリア&レトラー。彼等は8年前のゲームから存在します。
主役級のキャラなので扱いに苦労しました。(でもちょい役)
174 :
竹紫:02/06/19 01:04 ID:dJPvc+De
α星系の惑星も当時の星系図を参照しました。
宇宙戦艦のムーンクレスタやテラクレスタはゲームの名前です。戦艦の名
前はアーケードゲームから流用する事は最初から決めていました。
リサは別の物語でのキャラクターです。私が好んで使用する名前です。
オーテックはマクロスでのバルキリー開発に携わるメーカーのひとつです。
TH-11B、M+において主人公イサムの愛機は初めVF-11Bです。
いわゆるひとつのパロディですね。偶然ですがVF-11は通称サンダーボル
トと呼ばれています。
他にも有名なものから流用した名前も多くあります。アレはアレかな?
なんて考えてみるのも面白いかも…。
175 :
竹紫:02/06/19 01:05 ID:dJPvc+De
<最後に>
この作品中には相対性理論に関する現象がさり気なく?登場します。描かれ
ている科学技術もある程度の考証の元に表現されています。サンダーボルト
を読んで宇宙の不思議や戦闘機に興味を持って下さると嬉しいです。(マク
ロスプラスにも)
さらにこの作品はビデオ版M+を意識して描かれました。4話に分けて連
載されているあたり、いわばOVA版なわけです(お徳用版は5話)。
あくまでM+にこだわるとなると最後にもうひとつ大仕事があります。ムー
ビーエディションです。M+はOVA完結後、映画化されています。ってこ
とはサンダーボルト人類への希望篇ムービーエディションがあるわけです。
作品をはじめから読みなおし、加筆修正&伏線の強化を目標としておりま
す(理想を言えば、グース&ケイスに個性をつけて太陽系でロクに活躍しな
かったキャラの出番の追加)。
近日登場予定です。御期待下さい! ってもう読みたくなですよね…
----------------------------------------------------------------------
176 :
竹紫:02/06/19 01:05 ID:dJPvc+De
今、読み返すと
この作品は、私が手がけた小説の中でもっとも長いものです。思えば、初
めて小説を書いた頃からこのような長編が夢だったので、ここに来てその夢
がようやく叶ったということになります。
さて、ここではまず、自慢したいことがあります。
それはAGLのことです。AGL=アンチグラビティリキッドは宇宙戦闘
機の高Gを克服するために考え出された私オリジナルのSF設定です。
エヴァのLCLと似ていますが、コンセプトが違います。
私は当初、その設定を元に執筆を開始しました。
すると、その数ヶ月後にエヴァの本放送が始まり(ちなみに、地元では未
放映。最近再放送)、1話を完成後、そうとは知らず読ませた大阪の友人か
ら「これってエヴァみたい」と言われ、驚きました。
コックピットに水を入れるアイデアは元より、三文字に略する呼び方まで
同じだったんですから。
というわけで、あれは決してエヴァの影響ではありません。エヘン。
まあ、そんなことはさておき、このムービーエディションは実は未完成な
のです。
エピソード3辺りまでは修正したのですが、それ以降は以前のままです。
本当は火星に行ってから長編一本分は引っ張れそうなノリはあったのですが、
当時は連載していたので、時間に追われるように焦って終わらせてしまいま
した。
リサやオーテック、ヴァルキュリアがそれらしい活躍をしていないのがそ
の証拠です。
AI(DIL)が一体なんだったのかも、説明不足です。(M+を知って
いれば、大体解りますが)
本当はDILとリアナがウォリスを奪い合ったり、グラウVSヴァルキュ
リアとかウォリスVSオーテックのバトルに加え、量産フォースの胎児の登
場などいろいろ構想はあったんですが……。
177 :
竹紫:02/06/19 01:06 ID:dJPvc+De
お話的にはメカ物ですから、こんなものかな? と思うのですが、VNシ
リーズをやっていると、もっと盛り上がってもいいよなとか思ってしまう今
日この頃です(笑)。
作品テーマが曖昧なのも気になります。
文体の方は、見ていてリズムが悪いと思える部分が多いです。
ところで、私の(現在も)試行錯誤を繰り返している文章表現手法に「ア
オムラ式映像主体法(笑)」があります。
シーンを書く前にまず、物語を映像化(アニメ化)して考えます。すると、
カットとか構図とかが浮かんでくるのでそれにあわせて文章で描写する……
といった手法です。
具体的に私の文章でいえば、各章の間や行が空いている場所は確実にシー
ン(カット)が変わっている場所といえます。
単にカメラの切り替えといったカットは、従来の小説の手法を踏襲してい
ますけど。
注意して読んでいれば、カメラがパンしたりする様子やその他の演出を描
写しているような部分も見られますよ(はっきりそうだとは書いてありませ
んが)。
その他に気になる点は、SF検証の部分で間違ってるところがあるのも気
になります。
原子番号107の物質とか、アンアポトーシスとか……。
今後も精進するしかありませんね。
次回は皆さんにもっと簡単にSF楽しんでもらえる作品を書いてみたいと
思います。
1997/11/30 青紫
178 :
竹紫:02/06/19 01:08 ID:dJPvc+De
あとがきの方が面白いと思うのは間違っているだろうか?
本文以上にあとがきが、
あとがき以上に本人の生きざまが面白い。
それが超先生ですから問題ありません。
ツマンネ
>物語を映像化(アニメ化)して考えます。すると、カットとか構図とかが
>浮かんでくるのでそれにあわせて文章で描写する……といった手法です。
そうか!だからあの「どうすればいいんだ」の場面が
非常にシュールかつエキサイティングなんだ!
超先生最高
ここまでのまとめ
【誰彼】超先生キモイ【以下】
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1023866313/ 覇王学園 第二部 「激闘学園魔戦」
はじめに 26
主要キャラ紹介 28,29
特殊用語解説 31
第一部のあらすじ 32
1・胎動 33,34,37‐38,41‐53
2・敵 59−77
3・攻撃 82−97
4・変化 98−111
5・最終決戦 112−128
あとがき、読み返し 129−130
覇王学園外伝 「邪星鬼」
1・覚醒 171−188
2・謎 189−208
3・襲撃 209−238
ここまでのあとがき 239
今読み返すと 240
4・米国へ 264−281
5・ブラストオフ 282−284,290−291,293−315
ここまでのあとがき 316
今読み返すと 317
【誰彼】超先生キモイ【以下】
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1023866313/ THUNDERBoLT 人類への希望編
登場人物 329−330
用語解説 331−335
まえふり? 336−337
CHAPTER 1
1 339−344
2 345−347
3 348−357
4 358−368
CHAPTER 2
エピソード2の特殊用語補足説明 390−391
1 392−401
2 402−405
3 406−419
4 420−428
5 429−436
CHAPTER 3
SF用語辞典エピソード3用 440−441
1 443−464
2 465−471
3 472−480
4 481−486
超先生、どうしたら面白い?
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1024113313/ CHAPTER 4
SF用語解説 エピソード4 10−11
1 12−55
2 56−70
3 71−78
CHAPTER 5
SF用語解説 エピソード5 93−94
1 95−99
2 100−103
3 104−118
4 119−134
CHAPTER 6
SF用語解説 エピソード6 137
1 138−150
2 151−168
あとがき 169−170
サンダーボルト裏話
<ほっと一息> 171−172
<ネタばらし> 173−174
<最後に> 175
今読み返すと 176−177
186 :
竹紫:02/06/21 00:39 ID:cnFjKqhR
他に超同人はあっただろうか?
・タイトルが省略されていて判らないですが、
雨宮理奈もので、リュウとかケンとかサクラと言う名前が出てくるのが
手元にあります。
・琴音と祭りに行ったのが要求スレのどこかに
・感感俺俺を見たら、志保ED完全版というのが
多分これくらいかと思います
>・タイトルが省略されていて判らないですが、
>雨宮理奈もので、リュウとかケンとかサクラと言う名前が出てくるのが
>手元にあります。
とても読みたい。
>188氏
判りました。今日中にUPします。
でも続くとなっていて、その続きは手元にありませんのでご了承を。
>187 一番上のSSです。
放課後、一人の少女が家路についていた。6月の日差しはなおもきつく、夏の訪
れを無愛想に告げている。
雨宮リナは今日一日を振り返り小さく溜息をもらした。
「ハァ……、なんだか今日は疲れちゃった……」
そうつぶやいてから、何の変哲もない平凡な授業を受けた記憶と帰宅部である現
在の自分の姿を思いだし、彼女は吹き出しそうになった。
『なんだかおばさんにちゃったみたい……』
一息つく度に身体の疲労を訴えるのは近所のおばさん連中の常套手段である。級
友に見られれば「リナおばさん」と称されるのは必至だ。
右手の鞄をブンブン振り回し、
「元気、元気!」
と自分自身に取り繕った。
フォ〜〜ン フォォォォ〜〜〜〜ン
不意に遥か後方からオートバイのエグゾーストノートが背を叩き、彼女はギクリ
と肩をすくめた。同時に知った男の姿が脳裏をよぎる。
おそるおそる振り返るが、音からしてまだ視界に収まる距離ではない。
「まさかね……」
このサウンドの奏者が彼女の良く知る人物であるならば非常に厄介だ。横道にそ
れようと辺りを見回すも、住宅地を抜ける狭く長い路地だ。次の交差点までは百メー
トル以上ある。彼女の足では走り抜ける前にバイクに追いつかれる。遭遇を回避す
るには周囲の民家に飛び込むぐらいしかない。
『あいつは確かあたしより先に帰ったから……きっと別人よね!』
そう言い聞かせてリナは平静を装って歩き出した。
フォォォォォォォォ!!
いよいよ背後のサウンドが勢いを増した。単なる偶然かオートバイの通り道も彼
女と同じようだ。
「別人別人……」
口では否定しつつも不安は募る一方だ。
フォン フォォォォ〜〜ン……
こういう場合、悪い予感に限って正確である。オートバイはシフトダウンしなが
ら減速しはじめたのだ。バイクに関して知識のない彼女でも、音だけでバイクの加
減速くらいは区別が付く。
こうなったら間違いなく彼の駆るオートバイだ。リナは開き直って無関心を決め
込んだ。
その間にバイクは彼女と併走をはじめた。
「ひ〜めぇ〜」
程なくしてライダーからお呼びが掛かる。とりあえず彼女は無視した。
「……」
呼び掛けを無視されたライダーは、呆れた風な面もちでアクセルをひねり、車体
を彼女の進路に割り込ませた。
「何すんのよっ!」
たまらずリナは声を上げた。
「姫ぇ〜、つれないじゃん」
ヘルメットの向こうで、男は猫なで声で応じた。
「学校帰りに見たくもない顔を見たからよっ」
「こんなハンサムつかまえて、ご挨拶だな?」
「何のつもり? あたしをナンパしたいの? ケン」
これ以上のやりとりは会話を長引かせるだけなので、リナは一気に話を進めた。
「それもいいんだが----」ケンと呼ばれた男はメットを脱いで腕に通し、
「リュウの奴知らないか?」
と訊いた。
「知らないわよ。彼もあんたの顔を見たくないクチでしょ?」
とりつく島もないリナの口調に、ケンは頭を掻き、
「なんか御機嫌ななめだよなぁ……。そぉ〜か!」
突然両手を打ち鳴らし何度もうなずきはじめた。全てを理解したような口調に混
迷するはリナの番だ。
「な、なによぉ?」
「おれとお前、特に喧嘩した覚えはないよな? それなのに何故か相手に無愛想な
態度をとる……。
子供とおんなじだ。照れ隠しってやつだろ?」
その言葉を聞いたリナの感情は、波動となってケンに届いた。
「やばっ!」
怒りで頬をプウと膨らませ、両手で鞄を振り上げたリナを見る前に、ケンはアク
セルを荒々しくひねった。
「ケンのバカッ!!」
声と同時に振り下ろされた鞄は、しかし空を切った。
鞄攻撃を急発進で鮮やかにかわしたケンは、さながら暴れ馬にまたがるカウボー
イの様相で走り去った。
バイクとは思えないフットワークで攻撃をかわされたリナは鞄の重みで数歩よろ
めいた。
「バァ〜カ」
悪態をつく彼女の周囲には焦げたゴムの香り、足下にうねるスリップ痕が残され
た。
2
人目に付きやすい大通りを避けて裏道を行く学生の姿がある。
学生服姿に白いはちまき、がっしりとした体格----はた目には応援団員とも取れ
る彼が、ケンの尋ね人、リュウである。
『捕まらずに済んだが、飛んだ道草だ……』
師、剛拳の都合で今日の稽古は休みだ。月に一度あるかないかの休息日でもある
が、リュウ個人は修行を怠る気はなかった。むしろ自分自身の技を磨くいい機会で
ある。が、ケンは休日をいい事にゲーセンに自分を誘うのだ。
かくして、ケンの誘惑から逃れる為にリュウは必要以上に遠回りをして帰宅して
いたのであった。
『ケン……お前が遊んでいる間におれはもっと強くなってやるからな』
そう決意を新たに歩みを進める彼が、右手に口を開けた老ビル同士の間隙の前を
通り過ぎたときだった。
「やめてくださいっ!」
若い女性の声にリュウは足を止め、声の聞こえた間隙の奥に眼を凝らした。
薄暗いビルの隙間で、白い影に数人の黒い影が群がっている。白はセーラー服の
色、黒いのはリュウと同じ色----彼等が学生服姿であるせいだ。
「そう無下にするなよぉ。おれたちと一緒に遊ばない?」
群がる影のひとつが訊く。相手の反応を楽しんでいるようにも思える。
「いやですっ!」
パーン
声をかけた影----男の頬が鳴った。
「いって〜なっ! 手の早いネーチャンだなあっ!」
「近頃の不良は金じゃなくて裸撮るんだぜ?」
すでに使い捨てカメラ片手の男も気を荒げている。
「面倒だ、ここでやっちまえ!」
眼を覆いかねない状況に、リュウはむしろ落ち着いた面持ちで成り行きを見守っ
ていた。
……どこか女性の様子がおかしい、彼はそう見ていた。様子ではない、気配が不
可思議なのである。
男達は気が立っている。見た目はもとより、気配----波動が告げている。だが対
する女性の波動はどうか? かえってリラックスしている風に感じられる。
しかし、眼前の光景は彼の思いとはかけ離れている。この状況からはあまりに突
飛な意見であった。
「何だァてめえ! 見せモンじゃねえぞ!」
ひとりがリュウに気付いた。
「……」
女性の余裕のわけが知りたかった彼は、思わぬ失態に内心舌を出した。
「痛い目に遭わねえうちに----」
「そうは行かないな」リュウの言葉に男達が揃って身構える。
「その子は嫌がってる」
リュウはそう続けた。
一方、少女は声もなく男達の背を見守っていた。リュウの姿はまったく見えない。
『ええっ! 余計な事しないでよぉ〜』
「その子が無事帰るまでおれは帰らない」
「何ィ!?」
男達は一斉にリュウの方へと足を向けた。
『ちょっとぉ〜、あたしの相手してよぉ』
この機に少女は逃げるどころか、不謹慎な思考を巡らせていた。やはりリュウの
見立ては正しかったと言える。
『三対一、すんごい不利よ。し〜らない!』少女は冷静に哀れなナイトの末路を想
起した。
が、新たな着想が閃いた。
『あたしが彼を助ければいいんだ!』
少女はわくわくしながら成り行きを見守った。ついでに助ける予定の男の顔を見
ようと伸び上がった----
「ああ〜っ!!」
少女の素っ頓狂な声に、その場の全員が振り向いた。しかし、そのときには少女
は何事もなかったかのようにそっぽを向いている。
不良どもはその声の意味を詮索しようとはせず、再びリュウ撃退に移った。
やがて距離は1メートル。三方からリュウをねめつける男達の眼は「逃げるなら
今のうちだ」と告げている。
「一つ忠告するが----」リュウが口を開く。
「おれは試合以外に拳法を使うなと言いつけられている」
不良達は薄く笑った。
「へたなハッタリだ」
「だがやむを得ない場合もある」
「だったらその拳法とやらを使えよ? ジャッキー」
笑みは一層濃くなった。だが眼は笑っていない。
「……仕方ないな」
リュウは鞄を放った。
「仕方ない? いい加減にしろっ!」
正面の男の右ストレートが走った。
『あ〜あ、何あのパンチ。腕だけで腰が入ってないわよ、あの人なら当たったとし
ても全然平気ね』
彼女がそう思ったとき、殴りかかった男がすでに宙に舞っていた。右手をキメら
れての鮮やかな払い腰であった。
受け身も知らず、男はきれいに肩から路上に叩き付けられた。
「野郎!」
二人目が殴りかかった。
『あれもダメ。振りかぶって狙ってる場所だけを睨んでる……。「今から右手で顔
面狙いますよ」って言ってるみたいじゃない』
二人目の攻撃もあっさりと腕を取られた。間接をキメられて悲鳴を上げる。
「折るのは簡単だ……」
背中越しに言われ、男は総毛立った。
「ほ、本物だぁ〜!!」
戦意喪失の波動を受けたリュウは二人目を三人目に向けて突き飛ばした。
声もなく二人は一目散に逃げ出した。路上で肩を押さえうめいていた男もよろよ
ろと後を追う。
「フゥ……」
リュウはほっと息をついた。
「ねえ、あなた、リュウ……さんでしょ?」
駆け寄るなり、上目遣いの少女が訊いた。
「君は……、毎朝見掛ける……」
リュウにも覚えがあった。毎朝修行を盗み見ている者の正体が、よもや女子学生
だとは、彼にも驚きである。
「あれ? バレてたの? 驚かそうと思ったのにぃ」
さも口惜しそうに少女はこぼした。
3
「あたしサクラ。春日野サクラ、よろしくね」
「……おれは河崎リュウ」差し出された右手にリュウは困った表情で右手を返し、
「君は、一体何の為に絡まれていたんだ? おれにはわざと相手を挑発しているよ
うに思えたが……」
と訊いた。
「もう、みんなバレバレね」
クスクスと嬉しそうに言う。
「どんな魂胆があったにせよ、あまり感心しないな」
不機嫌そうなリュウの口調に、サクラの笑顔が少し曇ったが、ちょっと胸を張り、
「あたし、自分の技を試したかったんだ」
「技……?」
初めてリュウの口調に好奇の色が灯り、気を良くしたサクラは飛び上がらんばか
りの勢いでリュウの手を引き、
「ねえ、あたしの技、見て!」
と両掌を脇腹に添えた。
その構えは彼もよく知っているものだった。
さらにその掌に相当な量の波動が集中する……。
「まさか……」
リュウが眼を剥いた。
「波動拳!」
突き出された少女の掌から青白い流線型の波動が放出された。
それはビルの隙間を十数メートルほど飛翔して消失した。
「信じられん……」
唖然とするリュウを尻目に、
「あたしも初めて撃てたときはびっくりしちゃったんだ」
と頭を掻いた。
「しかし、この技は普通の----」
後に続く言葉は、目の前の現実に否定された。見よう見まねで使えるような技で
はないことは、彼も熟知している。いや、使い手である彼故の驚きであった。
「----リュウさん、あれは何が飛び出しているの? 教えて」
サクラの言葉にリュウは我に返った。
「あれは『波動』だ」
「ハ・ド・ウ?」
「人間の……全ての生命の魂の源----」
リュウの脳裏に師、剛拳との会話が甦る。
「すなわち心だ」
「心……」
まだあどけなさの残るリュウとケン、二人は剛拳の言葉に揃ってそう口にした。
「人の喜怒哀楽も全ては波動の織りなす色彩ぢゃ」
「リュウはハートを弾丸にして撃ち出したんですか?」
興奮冷めやらぬ面もちでケンが問う。剛拳に首肯され、歓喜の表情で自分もリュ
ウに次ぐとはしゃいでいる。
「波動は世の全ての力を統べる----。この意味が解るか?」
「最強の力ということですか?」
首を傾げるケンの横でリュウが答えた。
剛拳はうなずき、
「波動はその使いどころを誤れば容易に人をあやめることができる。
よいか、我らが『真波動流』の源流は暗殺拳。波動・昇竜・竜巻、学ぶことは許
されても我ら以外の前で使うことは叶わん」
リュウの体験談を聞かされたサクラは、
「ってことは、波動拳は人に向けて撃っちゃだめってことなの?」
半信半疑といった面もちで訊いた。
「そうだ。絶対にだめだ」
リュウは力強くうなずいた。
「ちょっと残念だなぁ」
ものほしそうなサクラの眼に、重ねて首を振って自重を促すリュウ。
「ねえリュウさん」
「?」
「そんな危険な技がどうしてあたしにも使えるの?」
「判らない……だが、恐らく君には波動を操る天賦の才があるようだ」
「ふ〜ん」サクラはちょっと困った風な顔をし、
「そうだ、あたしの師匠になってよ」
「え?」
「リュウさんの前なら波動拳を使えるんでしょ?」
「お、おれは修行中の身だ。それに弟子をとる柄じゃない」
突然の申し出に、リュウはただただ困惑した。
「そんなぁ、お願い! あたしもっといろんな技とか覚えたいんです」
サクラの真摯な口調に、自分自身の姿を見た思いのリュウであった。
「だめだ。今後おれ達には関らない方がいい、修行を覗くのも禁止だ」
だが、情けは禁物とばかり憮然と言い放ち、リュウは踵を返した。
「そんなぁ……」
玩具を取り上げられた子供のようなサクラであったが、相手が相手だけに駄々を
こねた所で無駄である。その点は彼女も心得ているようだ、それ以上無駄あがきを
することもなくリュウの背中を見守っていた。
『ちょー残念……、せっかくのチャンスだったのにぃ』
弟子入りを泣く泣く断念することにしたサクラであったが、視線を落とすと路上
に不似合いな物が残されている事に気付いた。……使い捨てカメラである。あの不
良が落とした物であろう。
「せっかくだから貰っとくわ」
ロクでもない物が写されていると思ったが、予想に反して未使用である。
『ラッキー、新品だぁ』
思わぬ収穫に歓喜するや、新たなる思考が彼女の脳裏を染めた。
「リュウさ〜ん!」
大声で呼び止められ、リュウは足を止めた。その傍らにサクラが立つまで、さほ
どの時間も必要なかった。
「なんだい? おれの気は変わらないが……」
にべもないリュウの言葉に、かなりの全力疾走にもかかわらず息一つ乱していな
いサクラは、
「そうじゃなくってさ。写真、撮らせて」
と、カメラをちらつかせた。奇妙な申し出に、リュウは返答に窮した。
「何故だい?」
「記念よ、記念」
「……」
距離を取ってファインダーを覗くサクラの前で、リュウはとりあえず姿勢を正す。
「そんな恐い顔しないでぇ」
言われてから、女の子に写真を撮られることにひどく緊張している自分に気づき、
リュウは苦笑した。
「オッケーその顔!」
何度目かのフラッシュの後、サクラはにっこり微笑み、
「ありがとうございましたぁ。またね〜」
ちょこんと頭を下げて走り去った。
「またね……?」
自分の言い付けを守ろうとしない少女に、不満そうな視線を浴びせるリュウ。
しかし、再会の約束に、悪い気はしないのであった。
つづく
これの漫画版を見てみたいのだが、持っている者はいないのか?
ツマンネ
堪能した。
今日もぐっすり眠れそうだ。
リクエストに応えてくれてありがとう。
>202
そんなのあるの?
>205
ページ数自体は少ないらしいが存在した
信じれないなら辞めろスレにある青村ファンクラブを覗いてみたまえ
>206 竹紫氏
感感俺俺の5/9のコラムですか?
あれ一枚絵だと思ってた
うが……青村ファンクラブのキャッシュデータが消されている……
いつまでも
あると思うな
キャッシュとマネー
字余り
サムネイルなら保存してあるんだけど >HSB
っつーか、大きい画像は以前から見られなかったような気が…
sage
>>208 ちょっと前から消えてたよ。
超シナリオだけは落とせるんだけどね。
どうしようもねぇ
朝鮮製は歯をやめたそうです