日はまた昇る 新城沙織スレ3

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392学校帰り
「祐くん、いっしょに帰ろ。」
 学校から帰る途中、前を歩いていく祐くんを見つけて、あたしは声をかけた。
「・・・沙織ちゃん?」
 祐くんは何だか驚いたような顔をして、そんなことを言ってきた。
「そうよ、いったい誰だと思ったの?」
「ごめん、一瞬分からなくて・・・。」
「ひっどーい。あたしはすぐに祐くんだってわかったのに。」
「ごめんごめん。ほら、夕方で暗くなってきたから、それでさ。」
 祐くんの言う通りだった。夕日がもうすぐで沈んでいくところだ。
「そっか。たしかに東の空なんて、もう真っ暗だもんね。
 そうだ、夕方って言えばさ、祐くん、逢魔が時って知ってる?」
「逢魔が時?」
「うん、今みたいな夕方のことを言うの。
 昔おばあちゃんに教わったんだけどね、夕暮れ時にはお化けが出やすいんだって。
 ほら、夕方ってだんだん暗くなってきて、何だか怖いときない?
 そんなときはすぐ近くにお化けがいるんだって。」

 そう、小さい頃は遊びに行くたびにお婆ちゃんに言われたっけ。
 逢魔が時になる前に帰って来い。さもないと、お化けに会っちまうぞって。 
393学校帰り:02/09/17 01:26 ID:tM4JrX3H
「ねえ沙織ちゃん。その話、もし本当だったらどうする?」
 急に、祐くんがそんなことを言ってきた。
「やだなあ、祐くんたら。お化けなんて本当にいる訳無いじゃない。」
「そうかな。だって目の前にいるじゃないか。」
「えっ?」
「今ぐらいの時間が、出てくるのにちょうどいいんだ。
 人間達の中に紛れ込みやすいしね。」
「え・・・。祐くんなに言って・・・。」
「誰かに化けるのも簡単だよ。特にこの子はやりやすかったな。」
 ど、どういうこと?

 あたしは驚いて、祐くんの顔を見る。
 影になってよく見えない。けど、何だか笑っているようだった。
「うそ・・・。まさかホントに・・・。」
 急に怖くなってきた。
 化けるのは簡単って、じゃあ、ここにいる祐くんは・・・。
394学校帰り:02/09/17 01:49 ID:9gD1p/Wl
「なんてね。冗談だよ。」
「えっ!?」
「ごめんね、そんなに怖がるとは思わなかった。」
 そういって、祐くんは謝ってきた。さっきまでの怖い感じは全然しない。
 えっ、あの、えっと、つまりぃ・・・。
「っああー!ひっどーい!騙したわねー!!」
「いや、騙したっていうか・・・」
「ひどいひどいひどーい!本当に怖かったんだからっ。」
 そう、本当に怖かった。祐くんったら演技力抜群なんだもん。
「バカバカ、祐くんのバカ!」
 ホッとしたと同時に、怒りがこみ上げてきた。
 あたしは、祐くんの頭をポカポカ叩きだした。
「か弱い乙女を怖がらすなんて最低!祐くんのバカバカ!」
「本当にごめんっ。お詫びになんでもするから。」
 ピタッ。
 叩く手を止める。
「・・・なんでも?」
「うん。」
 そうして祐くんはもう一度、ごめんね、と言ってきた。

 ・・・まあ、それだったら。許してあげてもいいかな。
「じゃあね、ヤックでハンバーガーおごって。それで許してあげる。」