203 :
名無しさんだよもん:
真紀子「さ、甘い汁も吸ったし、コイツはもう用ナシね」
その言葉を聞いて、俺は呆れる他ない。
純一郎「おまえ、酷いこと言うよな」
真紀子「酷いこと?」
純一郎「そこまで搾り取っておいて、よくそんなこと言えるな、ってことだよ」
真紀子「そんなことって…純一郎はそうは思わないの?」
純一郎「なにがだよ」
真紀子「秘書なんて、結局要らなくなったら解雇って」
純一郎「そりゃそういうご時世ではあるけどさ、俺はそこまでは思わないよ」
真紀子「うそだぁ」
純一郎「ほんとだって。そいつも、政倫審に連れていけばいいよ」
純一郎「他に会社があるんだったら、出ていくだろう。なかったら雇ってやればいい」
純一郎「どうせ山崎さんも文句言わないよ」
真紀子「そんなの可哀想」
真紀子「なまじ週刊誌に言われて手記で告白をするよりは、このまま罪をかぶるべきよ」
純一郎「罪ってな、おまえ…」
純一郎「それにこいつ、単独犯じゃないぞ」
その代議士に対する従順さ、怯え方は、雇われた時から真紀子に脅されていた証拠だ。
純一郎「解雇したほうが、よっぽど危険だ」
真紀子「………」
純一郎「おまえが面倒見ればいいじゃないか。な」
真紀子「………」
真紀子が俺のほうをちらりと見た。
そしてふっと、真紀子の手の内から秘書が切られた。
純一郎「あ、おいッ!」
手を伸ばすが遅い。
秘書は事務所前で待ち構える報道陣の群れにポイッと放り込まれると…
秘書「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ……」
悲鳴と共に瞬く間に遠ざかっていった。
204 :
名無しさんだよもん:02/07/10 03:34 ID:vDl1wZkx
紀子「捕まっちゃった」
純一郎「捕まっちゃった…」
純一郎「…だってぇっ!? なにやってんだよ、おまえはぁっ!」
俺は憤りに任せて、真紀子の胸倉をひっ掴む。
純一郎「あいつっ…あのままマスコミどころか、日本海にでも浮いてたりしたらどうすんだよっ!」
真紀子「…」
純一郎「そんな無責任な話があるか、ばかっ!」
純一郎「おまえ、あれだけのことをしておいて、どうして冷静でいれるんだよっ!」
真紀子「な、なによ、あれだけのことって、大したことじゃないわよっ!」
真紀子「無責任も何も関係ないっ!」
真紀子「最初からそんなお金なんてもらってないもんっ!」
純一郎「このぅ…」
俺は片腕を上げる。そして…
純一郎「ばかぁっ!!」
殴る代わりに、出せる限りの大声をあげて蔑んでやった。
今、腕を振り下ろしていたなら、
本気で議員辞職勧告決議案を出してしまっていただろう。
真紀子「は…ぅぐっ…」
純一郎「泣いたって、取り返しつかないんだからなっ」
真紀子「いいもん…もう純一郎のことはわかったから…」
純一郎「なにがだよ」
真紀子「もぅ、純一郎となんか構造改革しないっ!」
どんっ!と質疑応答で突き上げられ、不意をつかれた俺は、そのまま後ろ向きに倒れる。
純一郎「おい、真紀子っ!」
尻餅をついたまま顔をあげたときには、真紀子のリムジンの後ろ姿しか見えなくなっていた。