葉鍵大戦記2 Red Key Black Leaf
警察軍の戦列を突き破った、AFの兵士達にとって葉鍵国民は非戦闘員ではなく
文字どうりの獲物であった。軍規の有名無実でえろげ国からも忌み嫌われているAF
軍は葉鍵国民間人に対しても暴虐の限りを尽くしていた。
この小さな村落も例外ではなく、略奪、暴行、放火、殺人。警察軍の武装警官達が
命がけで守る筈だった、少女が犯され子供達が炎の中に投げ込まれ殺されていった。
まだ若い、一人の武装警官は守る筈だった者が犯され殺されていく、その光景を肺
を打ち抜かれ、絶望と自分自身の血に溺れながら眺めていた。
「タ―ニャお前は早くお逃げ!」
「いやだ、ママと一緒じゃなきゃ!」
泣きすがる娘を説得しようとした母親の頭が弾けとぶ。娘には何が起こったのか、
理解できなかった。AFの兵士が娘の頭上で黒星拳銃の銃口から出る煙を吹き消し
ながら言う。
「可哀想になあ、お嬢ちゃん。すぐにママのとこに送ってあげるからなあ」
そして、再び銃声が響く。しかし、頭を吹き飛ばされたのは少女ではなく兵士の
方であった。この兵士同様に頭を吹き飛ばされたAFの兵士の死体が周囲に散乱し
ている。
「狙撃だ!まだ警察軍の残党が残っていたのか?」
「馬鹿な、ここらの警察軍は駆逐しきった筈だぞ」
虐殺に夢中になっていた、AFの兵士達が突然の襲撃にその手を止め慌てふためく。
特徴的な爆音が何処か遠くから響く。そして、それは次第にAFの兵士に近づい
て来る。AF兵達の心拍数が徐々に上昇していく。
そして、それは彼らの前方の茂みから飛び出してきた。
RR親衛隊陸軍第34ヘリコプター大隊所属のMi−28ハボックが発射する30
m機関砲の砲弾は瞬時にYW531を蜂の巣にし、その2秒後に火達磨に変えた。
同時刻内務省庁舎
「久瀬内務尚書、葉鍵本営から入電!機動演習中のテネレッツア軍RR親衛隊陸軍
第2師団所属第2戦車連隊及び、第3歩兵連隊、RR親衛隊陸軍第34ヘリコプター
大隊が救援に向かったそうです」
司令室に安堵の声が上がる。
「そうか、これで親衛隊に借りができたな」
出来れば、国民を殺した償いは警察軍の手で行いたかったが、やむえないな。
下らない縄張り争いで苦しむのは民衆だからな。引き下がるべき場面では素直に
引き下がってやるさ。
「我が国民を虐殺した蛮族を一匹たりとも生かして葉鍵領から出すな!」
指揮官の怒声と共に無数のハボック攻撃ヘリがAF軍の戦列に襲い掛かる。ロケット
ポッドから発射される、ロケット弾は次々にAF軍兵士の吹き飛ばし、肉片に変えてい
く。応戦する装甲車両も次々に対戦車ミサイルと30m機関砲の餌食となり鉄屑へと代
えられていく。
葉鍵国北部ウメダシティに設けられたテネレッツア軍基地は未だ建設中であり、プレ
ハブを臨時作戦司令室としていた。
「第3歩兵連隊より入電、民間人の避難は完了しました」
「じゃあ、第3歩兵連隊、第2戦車連隊の地上戦力も加わって本格的な掃討戦や。っと
第34ヘリコプター大隊には、AF軍の退路を塞ぐよう、命令しといてな」
テネレッツア軍総司令官、河田中将はのほほんとした口調で指示を与える。
空き地の町戦役終結後、葉鍵黒国家元帥下川直哉は鍵攻略戦と平行して新たに正統リーフ
討伐軍を編成していた。
それが、河田優陸軍中将を総司令官とする、通称テネレッツア軍である。
2個師団と1個ヘリコプター大隊からなるこの軍はしかし、今はまだ編成中で現在かろう
じて、1個戦車連隊と歩兵連隊、ヘリコプター大隊が機動演習を行える程度である。
練度の面からも、旧国防軍からなる装甲軍、空軍降下猟兵師団「シモカワ・シェンムー」
に比べれば見劣りは免れない。
「でも、それはいまのうちや」河田中将は相変わらずの口調で呟く。僕はこの軍を葉鍵国最強の
軍に育ててみせる。そして、見てろや原田君。君の首は僕が取ってやるさかい。
リベンジャーは、静かにそう己に誓いをたてた。
正統リーフ討伐軍「テネレッツア軍」
総司令官河田優陸軍中将
編成
RR親衛隊陸軍第2師団
RR親衛隊陸軍第4師団
RR親衛隊陸軍第34ヘリコプター大隊
現在編成中の為、書類上のみ存在。
武装
戦車 T84−120
装甲車MT−LB
装輪装甲車BTR−90
小銃AK103
武装ヘリMi−28 ハボック
206 :
鮫牙:02/06/03 02:44 ID:V4vltpDg
投稿終了。自治州戦も書かないとなア…。
■■■■■国民よ立ち上がれ!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
Leaf・Key板は我々葉鍵の民が血を流し、汗を流し築き上げた板である。
それをage厨月厨どもを筆頭とする板違いの移民どもは、
我々の地をあたかも自分たちの物であるがのごとく振る舞い、
板違いスレッドを建て、我々の権利を不当に侵害している。
隙あれば葉鍵の文化を破壊し、異文化を我々の土地にうち立てようと企てている。
さらに、荒らし目的の糞スレ建てage荒らしといったテロ活動によって、
我々の板は治安悪化の一途を辿っている。
諸君!、このままでよいのか? 奴らの思うがごとく侵略されるだけでよいのか?
今こそ現状を問いただし、葉鍵板に未来のために行動するときである。
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面白いコピペがあったので貼っておく。
208 :
鮫牙:02/06/03 18:08 ID:Owt13hEk
ついに、親衛隊の戦力が出てくるあたり、しぇんむー軍にも限界が出てきたかな?
自らを戒める為にコテハン装備。頑張れ漏れ。
>>208 こうなるとどうあっても気になるのが正葉だなぁと思う今日この頃。
今のところは腑抜司令官の烙印を押された流れになってる
水無月&高橋だけど、どんな隠し球持ってるかわかったもんじゃないからな。
まあ、そうでなければこんなに急いで
テネレッツァ軍を組織する事もなかったんだろうけどな。
正統リーフの隠し玉ってHMX-13列車砲だけか?
つか、河田俄然張り切りそうやね。
何しろ彼の向かう先には原田・超先生という二大宿敵がいる上に、目の上のたんこぶ水無月もいるわけで……。
不安要素となると、あんまないね。
超先生がアビスボート召集し、さらに下川リーフの潜在超先生派隊員に寝返り活動でもしたとして……うう、やはりリニューアル痕の成果如何なのかなー?
>>212 100まで読んだが、厨房が暴れてるだけにしかみえない。
>>211 超先生の温厚な性格から推測して、アビスボートは政治兵器で使わないと推測され・・・
せいぜい黒マルチ艦隊が迫ってきたら通常魚雷で攻撃する程度かと思われ・・・
>>175-177 ここではこんなこと言ってるけど、馬場はそう簡単に己の手のうちを明かすようなタイプではないと思われ。
エロゲ、ネギ、葉鍵の3大エロゲ国家を牛耳る怪物政商の目的は謎の方が面白いんじゃないか。
217 :
鮫牙:02/06/05 21:48 ID:dQmGbxHO
最近よいやく、狗法使い氏のホームページをハッケンしました。
いや、何か狗法使い氏に萌えてしまいそう。壊れぷっり爽やかすぎ。
218 :
名無しさんだよもん:02/06/06 02:41 ID:kMOw6FJf
age
>>207の続きみたいのがあったので貼っておく。
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宣 戦 布 告
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Leaf・Key板は我々葉鍵の民が血を流し、汗を流し築き上げた板である。
それをage厨月厨どもを筆頭とする板違いの移民どもは、
我々の地をあたかも自分たちの物であるがのごとく振る舞い、
板違いスレッドを建て、我々の権利を不当に侵害している。
隙あれば葉鍵の文化を破壊し、異文化を我々の土地にうち立てようと企てている。
さらに、荒らし目的の糞スレ建てage荒らしといったテロ活動によって、
我々の板は治安悪化の一途を辿っている。
我々はこのような現状を打破するために行動に出る事となった。
一、移民は徹底的に排斥する
一、板違いスレッドは確実に潰す
一、月厨揚厨は見つけ次第その場で処刑する
我らの葉鍵板に勝利を!そしてテロリスト共には確実な氏を!
葉鍵国民党
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“バトル・オブ・キィ”こと鍵自治州領本土決戦は、RR装甲軍の攻勢により幕が開いた。
鍵自治州領に突き刺さった矢は2本。1本目は柳川裕也大将が直率する第13RR義勇装甲擲弾兵師団“ヨーク”。
この矢はけろぴーシティを発起点とし、自治州領深くに突き刺さる。その後、鍵が決戦を目論んで繰り出してくる
主力野戦軍を誘引し、柳川が決戦場と目論んでいるAirシティ−Kanonシティ間の平原で決戦を挑む予定となっている。
もう1本は 第1RR装甲師団“ライプスタンダルテ・シモカワ・ナオヤー”と第2RR装甲師団“ダス・リーフ”の
2個師団からなる。こちらの矢はけろぴーシティ郊外から一旦下葉領内をイナ河に沿って北上、
アクアプラスシティ−Airシティ−ものみの丘を繋ぐ鉄道幹線と高速道路が通る交通の要衝・カンスースクまで進撃する。
そこから鉄道橋、道路橋、河川舟艇を用いてイナ河を渡河し鍵自治州領に突入、そのままAirシティまで進撃し同市を包囲する。
60時間以内でAirシティを陥とした後はAirシティ−Kanonシティ間に進出し、
“ヨーク”と協同して主力野戦軍を包囲殲滅する予定となっている。
既に“ヨーク”は自治州領の小都市を次々に陥落させ、残り2個師団もカンスースクに到達していた。
現在、両師団の砲兵隊が対岸への制圧射撃を行っている。この方面に同行したハクオロたち東葉観戦武官団は、
その様子を双眼鏡を使って観戦していた。
「現在、鉄道橋1本と高速道路橋1本、一般道路橋2本は自治州軍が爆破している。しかし――」
観戦武官団の案内役を買って出てくれた“ダス・リーフ”師団長はそう言ってイナ河の真ん中あたりを指さした。
短躯のがっしりした体つきに、傷跡と貫禄ある口髭が印象的な、いかにも武人然とした感じの将軍だった。
下川リーフ軍には珍しいタイプといえる。
「自治州軍の奴ら、念入りには爆破できなかったようだな。中央部と右岸寄りの橋桁を爆破しただけで、
完全破壊にはほど遠い。橋脚に至っては手つかずだ。よほど慌てていたようだな」
「しかし、空爆で破壊するなりなんなり、やりようはあったと思いますが」
双眼鏡をおろして、ハクオロが尋ねる。
「多分、奴らもそのつもりだったんだろう。しかしAIR航空隊は大損害を出した挙げ句、
本領の制空権絶対確保も崩れている。その辺で手違いが出たんだろうな。
絶好の阻止線であるここに有効な兵力を配置できないのも、それが原因のはずだ」
ニヤリと凄みをきかせて笑うと、師団長は説明を続けた。
「というわけで、我々は奴らの失敗を最大限活用させてもらう。制圧射撃のあとに舟艇で先鋒を渡河させ、
右岸の橋梁取り付け部を制圧する。あとは工兵を出して橋梁を仮設してしまえば、一気に渡河できる
――本来なら、航空支援を要請して万全を期したいんだがな」
元々この侵攻作戦は、中尾大佐率いる空軍部隊による万全の航空支援態勢が前提となっている。
しかし先頃発生したAF師団のロイハイト地方突入により、全てが狂い始めていた。
彼らを叩くための攻撃機を確保するために、鍵自治州方面に振り向ける攻撃機がほとんどなくなってしまった。
制空権確保のための、戦闘機によるエアカバーはそれでも維持されていたが、こちらも投入機数が3割減となっている。
このため鍵自治州上空の航空戦は両軍とも決定的な優勢を確保するに至らず、
どちらも「一進一退」といった状況となっていた。
戦力激減となったAIR航空隊が全面崩壊にいたらなかった理由はここにある。とはいえこちらも、
戦闘機による制空戦闘が精一杯で、とてもではないが攻撃機を繰り出す余裕はなかった。
B-70“ヴァルキリー”はそれでも出撃可能ではあったが、これは麻枝元帥直々の戦力温存命令により禁じ手となっている。
「さて、ハクオロ大佐。何だったら仮設橋梁の設営を間近で見学するかね? 敵弾飛び交う中での作業はなかなか――」
そこまで師団長が言いかけたときだった。伝令が慌てて駆け寄ってくる。
「師団長! 柳川司令官より連絡が入っております!」
「おぅ、わかった。すぐ戻る」
師団長は頷くと、申し訳なさそうな顔でハクオロに向き直った。
「すまんな大佐。私はこれで戻る。ああ、観戦したいところがあったら自由に見てまわり給え。私から連絡は行っている」
「いえ、申し訳有りません」
恐縮しながらハクオロは答えた。この師団長にあってまだ日は経っていないが、
ごつい外見に似合わず面倒見のいい人物だということはよくわかっていた。
「はっはっはっ、かまわんよ。柳川閣下からは『支障なく観戦させよ』と命令が出ているしな」
豪快に笑うと、師団長は司令部へと戻っていった。ハクオロも高機動車に戻り、車内に乗り込む。
「……ふぅ」
「溜息なんかついて、どうしたんです、ハクオロさん?」
車内に残っていた郁美が尋ねる。
「いや、あの人の良さそうな師団長の顔を見てると、私たちの本当の任務が申し訳なく思えてくる」
いみじくも東部方面総監部で由宇が指摘したように、東葉観戦武官団の真の目的は『下葉実働軍事力の機密、内情等を精査する』点にあった。そしてその真の目的に関しては、ハクオロではなく郁美に全権が任されていた。
「ハクオロさん、その点は割り切ってもらわないと」
少し苦笑気味に、郁美が笑う。
「それにハクオロさんの場合は、本来の意味での観戦武官なんですから、あまり気にしないでください」
「まぁ、そう言うことならこっちは観戦に集中するんだが――本当に連中、気づいていないのかな」
「ほとんどは大丈夫でしょう。特にあの師団長は、本気で信じてくれているようです。
でも、柳川大将は、確実に気づいていると思います」
「それで私たちを自由に行動させているのか。あの優男、顔に似合わずずいぶんと剛胆だな」
「そ、それは、余裕をかましてると、お、思うんだな」
巨体を揺らして、蔕麿が意見を挟んだ。
「余裕というと、横蔵院少佐?」
「か、観戦武官に全てを見せた程度で、じ、自分たちの戦力価値が減るわけがないと、お、思ってるんだな」
「それは、自信の表れと受け取るべきなんだろうな……」
柳川の怜悧な風貌を思い浮かべながら、ハクオロは唸った。内戦勃発以来の彼の活躍、
そしてRR装甲軍のもつ戦略的価値がバックにあればこその、強烈な自信だと言える。
「私たちに隠さなければならない情報は、直接柳川大将が握っているというのもあると思いますけど」
郁美が感嘆するように声を上げる。そして、声のトーンを落として付け加える。
「問題は、その柳川大将の自信が生む隙に、相手側がつけ込めるかどうかです――」
同時刻、AIR航空隊基地。
葉鍵中央回廊西側出口地区、いわゆる「ものみの丘地方」は鍵自治州における地政学的重心に
位置する戦略的要衝である。そしてこのあたりで一番充実した通信設備を持つのがこの基地であり、
内戦勃発後は鍵軍首脳部が詰める、事実上の最高司令部として機能していた。
そして今日も今日とて、麻枝准元帥をはじめとする首脳部が作戦会議を開いている。
「――我が軍の基本方針に変更はありません。いわゆる『後の先』です。ある程度敵軍に先手を取らせておき、
その後一気に反撃に出ます。それまでは、敵の攻撃には基本的に放置で臨みます」」
涼元悠一大将はそう言うと、プロジェクターが映し出した地図画像に指示棒を這わせた。
「反撃の主力は、集成師団および第4師団“ドリームキャスト”。そして改編OHP師団です。
2個師団はものみの丘を発起点にKanonシティまで進撃、事後は敵の動向をふまえ、
デジフェスタウンにて待機中のOHP師団と協同で、敵3個師団の包囲殲滅を目指します。
この3個師団――というより、空き地の街から帰還中の集成師団が決戦場に到達するまで、
あと1週間かかります。その間敵3個師団に行動の自由を与えないためにも、“EREL”集成旅団の
Airシティ死守は絶対に必要です。ここのみは抵抗しなければなりません」
「涼元さん、敵――柳川大将がAirシティを放置する可能性はないかな? 二線級のRR親衛隊を監視として配置し、
主力3個師団でKanonシティに殺到する戦術をとるのでは? 州都に生産拠点としての価値がないのは、
向こうもよく承知しているはずだが」
麻枝が尋ねる。
「確かにその可能性はありますが、柳川大将はまずその作戦を実行しないでしょう」
涼元の指示棒が、カンスースクからAirシティを経由してものみの丘まで動く。
「3個装甲師団を動かす補給物資ともなれば、かなりの量となります。その輸送には、
どうしても同時・大量・高速の鉄道輸送力が必要になります。
そして彼らの利用する鉄道は、どの経路を取ろうとも必ずAirシティを経由しなければなりません。
ここを取らない限り、彼らは鉄道補給線を自治州内部――東側に伸ばすことができないのです。
確かにけろぴーシティからのびる鉄道を利用する手段もありますが、この路線は支線規格の
37キロレールを使用した脆弱な道床であり、しかも単線です。とても3個師団をまかない切れません。
つまり、“EREL”がAirシティに張り付いている限り、3個装甲師団にさしたる行動の自由はありません。
どんなに頑張っても、Kanonシティからこちらには入ってこれないでしょう。もし入ってきた場合、
こちらが叩くまでもなく補給切れで自滅します」
「わかった――制空権の方はどうなっている?」
出席者の中では一番階級が下の、神尾晴子大佐が答える。
「とにかく、連日限界ギリギリ1の出撃を繰り返しとるわ。敵もAFの迎撃に戦闘機割いとるさかい、
何とか互角に持ち込んどるけどな、正直むっちゃきつい」
「今、F-16の新規調達を急がせてましゅ。もうちょっと持ちこたえてくだしゃい」
技術開発本部長のみらくる☆みきぽん中将が慰めるように言うが、晴子は首を横に振った。
「いや、機体の方は別に心配しとらん。それよりも、先の戦いで熟練パイロットをぎょうさん亡くしたのが痛いわ。
はっきり言うて、戦闘機よりも航空傭兵のほうがなんぼかありがたい」
「この状況で、例えば“EREL”旅団に対する近接航空支援はできるかな?」
折戸大将が尋ねる。
「1回の出撃で攻撃機全部喰われてええ言うんなら、出せるで」
「……なるほど」
「まあ無理すれば、通天閣騎兵隊は出せるわ。戦闘機いうてもヘリには手ぇ出しづらいよってな」
意外に知られていないが、制空戦闘機と攻撃ヘリでは、あまりにも活動空域が違いすぎて
逆に空戦が発生しにくい。制空戦闘機が攻撃ヘリを撃墜しようとすれば低高度まで降りてこねばならず、
そうなると地対空ミサイルの脅威に身をさらすことになる。また速度も違いすぎる。
ただし、相手がヘリと同程度の高機動性を誇るVTOL機を出してきた場合は、また話は違う。
現に空き地の町では、軍事顧問団のハリアー攻撃機がハボック攻撃ヘリを大量に喰らっている。
だが現在のところ、下葉は鍵自治州方面には制空戦闘機しか繰り出していない。
「ウチの個人的意見やけど、通天閣騎兵隊は積極的に出した方がええ思う。
そうでないとAirシティ、保つもんも保たんで」
「その意見には賛成です」
折戸も同調する。
「確かに主力3個師団の反撃に備えて航空戦力の温存は必要ですが、“EREL”にもある程度保って
もらわなければなりません。通天閣騎兵隊を出す程度なら、保険としても十分許容できます。
もちろん、大損害が出ないならという条件付ですが」
「わかった。通天閣騎兵隊と防空大隊については積極出撃を許可する。損害軽減に留意し、
直ちに準備にかかってほしい」
麻枝の決断は早かった。あるいは、Airシティを見捨てることへの罪悪感があったのかもしれない。
「それと、空き地の町に駐留している倉田連隊からですが」
中央情報局長官のしのり〜中将が口を挟んだ。
「先ほど、裏葉連隊長代理から連絡が入りました。現地住民の代表が『空き地の町暫定自治政府』
を名乗り接触してきたそうです。彼らは、正葉寄り中立での独立自治権を求めており、
その交渉の仲介をこちらに求めてきています」
「何故、こちらに仲介を求めてきたのだ? 正葉に直接交渉を持ちかければ早いだろうに」
折戸の疑問に、しのり〜は苦笑を浮かべつつ答える。
「多分、自治政府代表の名を聞けば納得できますよ――元RR親衛隊大佐・青紫が自治政府暫定主席です」
声にならない驚愕が部屋に満ちた。もちろん彼らも、青紫の過去の悪行は知りすぎるほどに知っている。
「裏葉君に命令を出そう」
衝撃からいち早く立ち直った麻枝が即断した。脳裏では、空き地の町の戦略的価値や
正葉首脳部と青紫の因縁などの事実関係が、高速で渦巻いている。
「可及的速やかに、自治政府の構成員、目的、保有兵力を把握するよう。特に青紫の意図は重点的に洗い出すこと。
あの男の考えが判らん限り、うかつに動けん――これを最優先命令で出すが、いいかな?」
「それと、裏葉中佐に政治交渉に関する全権を与えるべきだと考えます」
涼元が進言する。
「今後の見込まれる情勢の変化と、空き地の町の戦略的重要性を勘案すれば、あの地に大使的な人物を
置いておくことが肝要です。幸い裏葉中佐なら、能力的にまったく問題ありません」
「わかった。その点も了承しよう。なんなら階級を上げて向こう側と釣り合いを取らせてもいい。
涼元さん、その点もお願いする」
「――麻枝君、ちょっと」
会議が終わり麻枝が息抜きに外に出ようとするところを、しのり〜が呼び止めた。
そのまま麻枝を格納庫裏に連れ出す。
「どうしたんだ、一体」
「麻枝君だけに知らせておきたい情報があって」
そっとまわりを伺ってから、しのり〜は切り出した。
「その情報は、折戸さんや涼元さんに知られたらまずいような話なのか?」
「いや、そうじゃないんだけど……まだ確証のない情報なんだけど、事実だとしたら大変なことだから、
一応麻枝君の耳には入れておこうと思って」
「なるほど……で、内容は」
今まさに出撃しようとしているF-16を遠くに見ながら、麻枝は尋ねた。
「昨晩から今朝未明にかけて、“EREL”旅団司令部に国外から何度か不審な通信波が
着信したらしいの。そのことについて」
「ちょっと待て。確かあの旅団に関する通信はすべて戸越君が管制しているはずだ。
内容がわかっているんなら、不審でも何でもないだろう?」
「ところがそうでもないの。戸越君の与り知らない暗号が掛けられていて、内容がわからないの。
戸越君、そのことでかなりお冠みたい」
「何だって?」
はじめて、麻枝の声に緊張が入り始めた。
「つまり、JRレギオン少将が戸越君に隠れて何か画策している――そう言いたいのか?」
「少なくとも、状況証拠だけなら十分ね。そしてその内容は、私たちに知られてはまずいような、
かなり際どいモノと考えていい」
「……」
麻枝はしばし考え込んだ。あの旅団長が独断で何か企んでいる? そんなことがあり得るのか……?
いや、あり得るか。彼はすぐにそう思い直した。上層部からは死守命令。増援のあては全くなし。
そして迫り来る下葉最強の装甲部隊。そんな状況下に決して上層部に従順とは言えない指揮官が放り込まれたら、
まず何か策謀を巡らす筈だ。何よりもまず、自分自身が生き残るために。
「その通信がどこから発信されたかわかるかな?」
「駄目。どれも特定はできなかった――ただ、1回だけ割り出しかけたんだけど、どうやら気づかれたみたい。
旅団から大出力の通信波を叩き付けられて、傍受機器が昇天したわ」
「そこまでするか、普通?」
黒マルチ艦隊とアビスボートでもあるまいし、とても味方同士がやることとは思えない。
「その時のデータから一応の発信地の推測はできるんだけど、はっきりとは特定できない」
「それでもいい。どこだったんだ?」
麻枝の問いに、しばらく躊躇してからしのり〜は答えた。
「一番可能性の高いのは、エロゲ国北方総督領トヨハラ――WINTERS師団司令部所在地よ」
230 :
旅団長:02/06/06 21:08 ID:z4QWvAu7
>>220-229「自治州領突入」投下完了です。ちぃと長すぎたか……
とりあえず、両軍の現時点での戦略を出してみました。
>>219 どうしてこう、このスレ的にお誂え向きなんだか(w
231 :
名無しさんだよもん:02/06/08 02:41 ID:xd4bHD/I
あげめんて
で、何桁目を縦読みするんですか?
そんな事よりちょいと聞いてくれよ。結構関係あるんだけどさ。
さっき、下葉北部攻め込んだんです。下葉北部。
そしたらなんか戦車がめちゃくちゃいっぱいで進撃できないんです。
で、よく見たらなんかテネレッツァ師団とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、新師団如きで普段来てない下葉北部に来てんじゃねーよ、ボケが。
新師団だよ、新師団。
なんかヘリコプターとかもいるし。ヘリと戦車でエアランドバトルか。おめでてーな。
よーしパパ機関砲撃っちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、スティンガーぶち込んでやるから地獄に落ちろと。
戦場ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
いつ敵に見つかって蜂の巣にされてもおかしくない、
やるかやられるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。枯葉どもは、すっこんでろ。
で、やっと布陣したと思ったら、敵の隊長が、世界一のまじかる魔法ウィッチ、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、世界一なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、世界一、だ。
お前は本当に世界一なのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、RRに感染してるだけちゃうんかと。
ゲリラ通の俺から言わせてもらえば今、ゲリラ通の間での最新流行はやっぱり、
AT−4、これだね。
AT−4。これが通の武器。
AT−4ってのはRPG−7より威力が高い。そん代わりちょっと高め。これ。
で、そいつで戦車あぼーん。これ最強。
しかしこれをやると次から敵兵にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前ら素人は、装甲車でも狙ってなさいってこった。
それもいいけどこっちも聞いてくれよ。本筋とちょっと外れるけどな。
さっきゲットーの警備命じられたんですよ。月厨の。
そしたら増援がめちゃくちゃ態度悪い奴で命令聞かないんです。
で、よく見たら耳が人間じゃないんです。
もうね、アホかと。銃殺だぞと。
お前らな、いくら漏れがキティGUYだからってこんなのよこすんじゃねーよ、旅団長。
ヌワンギだよ、ヌワンギ。
なんか武器が刀とかだし、このご時世にチャンバラごっこか。おめでてーな。
お前折れの命令きけねーのか、とか逝ってるの。もう見てらんない。
お前な、このカスールの銃剣でティムポぶったぎってやるからとっとと史ねと。
ゲットー警備ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
いつ両方の住民から投石始まってもおかしくない、
両方ぶっ頃すか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。チンピラ風情は、皆殺しにしたるぞ。
で、ティムポぶった切ったと思ったら、市にぞこないが、史にたくない、とか言ってるんです。
そこでまたブチ切れですよ。
あのな、命乞いなんで今日日はやんねーんだよ、ボケが。
真っ青な顔して何が、医者はどこだ、だ。
お前本当に俺が助けると思うんかと問いたい。問い詰めたい。肉削ぎながら問いつめたい。
お前、原作よりマシな死に方出来ると思うなよ、と。
虐殺通の俺から言わせてもらえば今、虐殺通の間での最新流行はやっぱり、
火焔放射器、これだね。
火焔放射器。これが通の武器。
火焔放射器ってのは銃器より射程が短い。そん代わり長く燃える。これ。
で、追加で黄燐手榴弾。これ最強。
しかしこれをやると翌日黒襟に呼び出されるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らゲリラは、北部下葉でも進軍しなさいってこった。
「この問題はいずれ解決しなければならないものだったからな。きみのプランは実験的で有意義
だと思う」
鍵自治州州都目前の小都市に設けられた、装甲軍臨時司令室で装甲軍総司令官と第13RR義勇
装甲擲弾兵師団を兼任する、柳川裕也大将は提出された計画書に淡々と感想を述べる。
「では」
釣り目のショートカットに少女の面影を残した未だ若い女性士官の顔に期待と不安が浮かぶ。
「好きなだけやってみろ。その間君の大隊は副官の雨宮君に任せる」
「は、はい!ありがとうございます」
女性士官の顔が明るくなる。
青村早紀少佐
その風貌と性格はおよそ士官に似つかわしくなく、大学に入りたての女子大生のような印象
を第三者に抱かせる。が、これでもリーフ軍大学校を常に10番以内の成績で卒業し、模擬戦
での統率力の優秀さに一一(にのまえはじめ)学長に「風貌能力ともに超大佐に反比例した姪」
と言わしめている。
大学卒業後も順調に出世を重ね、現在は第13RR義勇装甲擲弾兵師団ヨークの大隊指揮官と
いう地位についている。実力主義の装甲軍において大隊指揮官となったことからも彼女が単な
る秀才型指揮官でわないことが解る。
そして、今回彼女はある計画を携えて、彼女の上司である、柳川大将に承認を受ける為に
司令室に足を運んだ。
事の発端は陥落させた鍵自治州の小都市でゲリラと市民を区別し、兵の『予期せぬ犠牲』
と民間人の『不本意な虐殺』を防ぐ為、保護票を発行している際に民衆に暴行を受けてる
月姫難民を装甲軍の憲兵が発見したことである。
両者に話を聞いた所、保護票を受け取る為に並んでいる民間人の列から月姫難民を締め出
そうとし、それに暴行を受けた青年が抵抗したのが原因という理不尽極まりないものであった。
この事件は暴行に参加した民間人の30日間の逮捕拘禁という刑罰で幕を引いたが、この事件
に興味を持った青村早紀少佐は、月姫難民の現状を調査し彼らの鍵市民からの差別と死と隣り
合わせの現状に驚き、解決を図る為の知恵を絞ることとなる。
居住区を廃止し、鍵自治区内を自由に出入り出来るようになっても、彼らを雇おうとする人間
は皆無に等しい。それ以前に命すら危うい。結局彼らが最も安心出来る場所は居住区だけとなる。
そこで彼女は月姫難民からなる部隊の結成を計画し、柳川大将に具申する。
教官は彼女の指揮下にある大隊から熟練下士官20名と憲兵隊から30名を工面することに成功
し、演習基地も廃校した学校校舎見つけることが出来た。
2000名の生徒の他に作業員も月姫難民から雇い入れる。
要するに彼女は予備戦力の構築と月姫難民の衣食住と職の解決を同時に図ったのだ。
一通りの準備を一応は終えた、早紀は自室の部屋から窓の外の月明かりを眺めながら呟いた。
「ふう、でも本当に上手くいくかなあ」ため息と少しの間の後言葉を続ける「泣きそうだよお」
その後、結果としてこの計画は久弥派鍵系、葉系で構成される装甲軍をより多民族化させること
になる。
そしてしばらく俯いた後、早紀は月を見上げ、強い口調でつぶやいた。
「でも、やるしかないよね」
237 :
鮫牙:02/06/08 22:51 ID:a2tvweat
投稿終わりますた。という訳で旅団長、Airシティ戦では早紀たんの指揮して
いた大隊は副官の雨宮大尉が指揮しています。多少のハンデになればいいなあっと。
__________________
___ /
/´∀`;::::\< 何やら難しいお話です、はい。
/ メ /::::::::::| \__________________
| ./| /:::::|::::::|
| ||/::::::::|::::::|
239 :
分断 1:02/06/09 16:55 ID:Kh1ZdRoJ
『――おい。kagami! kagami!』
司令部付隊配備のジープの中で仮眠を取っていたkagami中尉は、無線機ががなり立てるその声で
たたき起こされた。
「は、はい! 我が身の全てをあなた様方に捧げます、しおり姫、さおり姫……」
『だぁあっ、寝ぼけてるんじゃねぇ!』
「――なんだ、ヌワンギか」
ようやく頭が覚めたkagamiが、交代でゲットー警備の指揮を執っている妖狐兵団ゲットー分遣隊の
ヌワンギ隊長相手に毒づく。
確か、昼間に股間を負傷して病院にかつぎ込まれたとか言っていたが、とふと思う。
それなのに良くもまぁこんなに元気な声が出せるもんだ。さすが獣耳、体の強靱さが違う。
「私の至福の夢を無粋にも邪魔したからには、よほどの重大事態なんだろうな?」
『至福の夢の中身は聞かないでおいてやるよ』
「聞けよ! いいか、この世を統べる4人の幼き女神たちは……」
『――難民どもの中で、義勇兵志願の動きが広がっている』
賢明にも、ヌワンギは一方的に用件を伝えることでkagamiのオルグを断ち切った。さすがのkagamiも、
一瞬で事態の深刻さを悟る。
「何だと? 志願者はどれくらいいる?」
『今、門のところに100人は集まっている。まだまだ増えそうだぜ。この調子じゃ、
難民全員が志願してきそうな勢いだな』
「莫迦な……大人しくしていれば、柳川大将相手に大人しく降伏できるのに」
そのまま大人しくしていれば、月姫難民は戦時法において保護の対象になりうる。
柳川大将や久瀬内務尚書の「刃向かわなければ悪いようにはしない」方針を信じるならば、
少なくとも殺されることはない。
しかし義勇兵といえども銃を取って抵抗してしまったら、彼らはあくまでも「敵」として
難民を扱うだろう。その先に何が待っているか、特に説明の必要もない。
「わかった、私もすぐそっちに行く!」
240 :
分断 2:02/06/09 16:56 ID:Kh1ZdRoJ
日雇いSS軍曹の運転するジープでゲットー入口に急行したkagamiをヌワンギは駆け寄って出迎えた――が、日雇いの姿を見ると顔色を変えて、股間を押さえつつ後ずさる。
「? どうした、ヌワンギ?」
「な、な、な、なんでもねぇ!」
本人は粋がっているつもりなのだろうが、真っ青な顔で((((゚Д゚)))ガクガクブルブル していては、
ちっとも説得力がない。
「……まあいい。とにかく、状況を説明しろ」
「あ、ああ、わかった」
気を取り直して、ヌワンギは説明をはじめた――しっかりと、kagamiを日雇いの楯にできる位置に移動してからだが。
「1時間くらい前から、こいつらが集まりはじめやがった。事情を聞いたら『集成旅団に志願したい』
とか抜かしやがる。解散するよう言ったんだが、ちっとも言うこと聞きやがらなねぇ。
それどころか、さっきからまた人数が増えてきた。内部の様子からすると、
どうもみんなこぞって志願したいようだぜ」
「ふぅむ……」
毒づくヌワンギの言葉に頷いてから、kagamiは門を潜って群衆の前へと歩み寄った。
慌ててkagamiに付いていく……というより日雇いから必死に離れるヌワンギ。
「君たち――自分たちが何をやろうとしているのか、判っているのか!?」
kagamiの怒鳴り声に応えるように、群衆の中から一人の少女が歩み出てきた。
あのときの、花売りの少女だった。
「君は……」
「中尉さん、お願いします。私たちも戦わせてください」
241 :
分断 3:02/06/09 16:57 ID:Kh1ZdRoJ
「いや、しかし……」
kagamiは言いよどんだ。自分の胸ほどの背丈しかない少女の真摯な瞳に射すくめられ、
思うように説得の言葉が出てこない。
「何故……何故そんな、むざむざ死ぬような真似を」
それだけ言うのが、精一杯だった。いつもの調子が全く出ない。
「中尉さん、私たち月姫の民は、受けた恩義は決して忘れません」
そう言うと、花売りの少女は両手を胸の前で組み合わせて言葉を続けた。
「私たちは、辛いことばかり味わってきた民です。だから受けた恩は、特にそれが異なる民から受けた恩ならば、
何物にも代え難い宝物なんです。その恩に報いるのに、自分の命を賭けるのは当然です。
みんなそう考えています」
「だからといって……」
「中尉さんは、身を張って私たちを護ってくれました。なぶりものにされるところを、救ってくれました。
だったら今度は、私たちが身を張る番です。『異邦の友人の恩は、身を捨てて報いよ』。
それが、私たちの教えであり、信念です」
「……」
「お願いします!」「頼みます、中尉さん!」「俺だって昔はゲリラ兵だったんだ。ちっとは役に立つはずだぜ!」
口々に言い募る難民たち。そんな彼らの叫びを聞いて、kagamiの脳裏に様々な思惑が去来した。
旅団の戦力、迫り来る敵軍、懲罰大隊の動向、旅団長の意向、自分の信念、そして目前の少女の眼差し――
それらをどうにか一つの考えにまとめ、口にしようとしたときだった。
242 :
分断 4:02/06/09 16:58 ID:Kh1ZdRoJ
「kagami中尉!」
彼の背後から怒号が降ってくる。振り返ると、紅茶すらいむ中佐が駆け寄ってくるところだった。
おそらく、急を聞いて駆けつけてきたのだろう。
「これは中佐」
敬礼するkagamiの前まで駆け寄ると、紅茶すらいむは肩で息をしつつ尋ねた。
「事情は、こちらでも、聞いた。彼らが、志願、者か?」
「ええ。現在はこれだけですが、志願を希望するのはほぼ全員でしょう。私は、彼らの志願を
受け入れるべきと判断します」
「……何だとぉ!?」
思わずkagamiの胸倉を掴んで、紅茶すらいむは怒鳴った。kagamiの方がやや背が高いのだが、それには構わず捲し立てる。
「貴様、正気か!? 志願を認めるなど、むざむざ難民に死ねと言ってるも同然じゃないか!」
『月厨を味方になぞできるか!』と言わないあたりが紅茶すらいむらしいのだが、
kagamiは冷めた声で反論した。
「しかし、彼らは全く自発的に志願しています。ここで我々が断っても、個々人のレベルで
RR装甲軍への抵抗を試みるでしょう」
その言葉にやや怯む紅茶すらいむに構わず、言葉を続ける。
「そうなっては、志願を受けようが受けまいが一緒で、どっちみち殺されます。ならば、志願を
受け入れて旅団が彼らの抵抗を管制した方が、まだしも犠牲が少なくて済むんじゃないですか、中佐」
「……そうは言っても、ろくに軍事教練も受けていない難民を志願兵にする莫迦がどこにいる?
それに、難民の大半は老人や女子供だぞ」
「何も最前線に投入しろなんて言っていません。後方支援任務に就かせればいい。大体、
そっちを担当するはずの自治州軍や動員兵の士気ががた落ちの現状では、そうでもしないと
戦線を維持できませんが、何か?」
243 :
分断 5:02/06/09 16:58 ID:Kh1ZdRoJ
「その士気をどん底に叩き落としたのは、一体どこの誰だったかな?」
皮肉を吐いて胸倉を話すと、紅茶すらいむは忌々しげにため息を吐いた。
「まぁ確かに、中尉の言うことにも一理ある。しかし司令部が納得……」
その時、携帯無線機が彼を呼びだした。慌てて回線を開く。
「はい、紅茶すらいむ中佐――旅団長!?」
背筋を伸ばして、彼は無線越しに上官に対し襟を正した。
「はい――はい、そうです。その件ですが、kagami中尉が――はい、はい――え? いやしかし!
――は、はぁ了解しました」
何とも言えない表情で通信を切ると、紅茶すらいむは半ば呆れたような口調でkagamiに尋ねた。
「なぁ中尉……旅団長に、一体どんな鼻薬をかがせている? ロリビデオか?」
「我がZEROの素晴らしき教えなら毎回唱えていますが、それが一体?」
「『kagami中尉がそう判断したのなら、それで間違いはなかろう』だと。一体どこをどうすれば、
貴様をそこまで信用できるんだろうな」
納得できないという風に天を仰ぐ。思わず苦笑してから、kagamiは群衆に向き直った。
まぁ確かに、あの何を考えているかわからない指揮官に何故そこまで信頼されているかは、
自分もわからないところなんだが。
「淑女のみなさま並びに野郎ども! 聞いてのとおり、君たちは志願兵として認められた。
これからは旅団長の指揮命令系統に入って、こちらに命を預けてもらう!」
歓声が爆発した。肩を叩き合う難民たち。一斉に紅茶すらいむとkagami(とその側にいたヌワンギ)
に駆け寄る群衆。そして、kagamiに抱きつく花売りの少女。
四方からもみくちゃにされ、胸に少女の心地よい体温を感じながら、kagamiはポツリと呟いた。
「ま、腹を括りますか」
244 :
分断 6:02/06/09 16:59 ID:Kh1ZdRoJ
さて、kagamiが志願を認める気になった直接の理由が、「花売りの少女が身長130cmの、
大人びた言動の割にはロリロリな外見だったから」だと知ったなら、果たして彼女はどう思ったであろうか?
もっとも幸いなことに、彼女が真相を知ることはなかったが。
こうして、「州都において、JRレギオン子飼い部隊以外では最も士気の高かった部隊」
として知られる月姫義勇隊がようやく登場する。
そして、彼女らは知らない。RR装甲軍隷下に月姫RR義勇兵部隊が編成されつつあることを。
同胞相撃に至る悲劇の引き金を、自らの手で引いてしまったことを。
245 :
旅団長:02/06/09 17:01 ID:Kh1ZdRoJ
246 :
岐路:02/06/09 19:44 ID:7bdUajHK
葉鍵国北部に突き刺さった田所の頚木は四本。
二本はドートンヴォリ川の流れより発し、ロイハイト地方の州都ロイハイト市へと突き刺さる。
AF師団と『歌月十夜』師団がその矛先。
AF師団は言うに及ばず、田所広成が直接支配する山賊紛いの武装集団である。
規律はともかく、指揮官・兵の能力と装備の面では侵攻軍最強を誇る。
完全装備の一個装甲師団規模の兵力は、90式U型MBT、YW309ICVを主軸とする中国最新鋭の装甲車輛で固められていた。
参謀長に馬羽龍馬少将を迎え、君島大佐、灰田大佐らの残忍さと攻撃性では他に累を見ない指揮官達を擁するこの師団だからこそ、河田中将のテレネッツァ軍の放った横合いからの第一撃を持ち応え、がっちり組み合う形に持ち込めたと言える。
では、エロゲ国の全面支援(AF師団だけではない!)のもと、エロゲ国内に拠点を持つ月姫ゲリラにより編成された『歌月十夜』師団はどうか。
確かにこれも、完全装甲化された装甲師団である。しかしその装備はAF師団のお下がり、旧式この上ない。
59式や69式戦車、63式軽戦車、77式兵員輸送車などが大半で、85式U型などは数えるほどしかない。
弾薬も潤沢とはいえない。離反を警戒する田所は、彼らに必要とするだけの補給しか与えないのだ。
兵の能力も高いとは言えない。兵士の多くは北葉とエロゲ国内で活動していたゲリラ出身。
加えて、AF(そしてエロゲ国)が国内の月厨を一掃するために月姫主義反葉鍵義勇軍を計画した時に、募兵に応じた義勇兵たち。
正規軍としての部隊行動も満足に行なえないならず者の集団だ。
しかし、その迫害の歴史、確固たる信念を行動の背景とするだけに、彼らの士気は天を衝くほどに高い。
……時に、溜め込まれた憎悪が暴走する嫌いはあったのだが。
いずれにしても、幾多の新たな憎悪の火種を振りまきながら、今『歌月十夜』師団は最もロイハイトに迫る位置に兵を進めている。
両師団の予備兵力として、CODEPINK旅団がこれに続く。
田所の本来の支配地、STONRHEADS集団軍に属する新編部隊であった。
247 :
岐路:02/06/09 19:44 ID:7bdUajHK
ともに西方海岸沿いより発する残り二本のくびき。
一本はまっすぐ海岸沿いに南へ向かい、ボスニア港を窺がう姿勢を示している。
この集団の基幹部隊はももグミ師団。
残り一本は、最初ももグミ師団とともに南進を続け、テネレッツァ軍の登場に対応する形で同軍の南方に回り込む運動を示していた。
これがSTONEHEADS師団とPIL師団、NEOPIL旅団の三個師団である。
この内、NEOPIL旅団に関しては、訓練未完で定数不足のまったく帳簿上だけでの旅団であった。
残りの二個師団も、葉鍵国の正規部隊に比べれば決して精強な師団とは言えない。
しかし、これらを指揮するのは『女郎蜘蛛』の名将として知られる丸谷秀人大将だった。
凋落著しいエロゲ国田所派、恐らくはその最良の将軍の一人であろう彼の存在は、戦力的な劣勢をカバーしうるものだ。
フェーネル山麓、国境から南方25キロ地点、アノル。
田所地上軍侵攻直後、下葉警察軍との間で五日間の攻防戦が繰り広げられたこの渓谷は、かつて風の町と呼ばれ人口八万人ほどの葉系住民が生活していた。
絨毯爆撃、無差別砲撃、略奪、虐殺、仕上げの放火。
住民は既に一人も残っていない。
都市から脱出する難民の車列は、その多くが蜂起した月姫ゲリラによって襲撃され、殺害された。
都市に残った住民の多くは、激しい戦火とその後のAF師団兵、月姫兵の蛮行に晒され、命を落とした。
下葉兵員の死者・行方不明者、4216名。
非戦闘員の死者・行方不明者、34562名。
248 :
岐路:02/06/09 19:47 ID:7bdUajHK
後に確定されたその被害の多くは、田所軍が住宅街中心を制圧した四日目から、戦闘が終結した翌日の六日目にかけて発生した。
後の世に『アノル虐殺事件』として名高い戦争犯罪の顛末である。
戦火の果て、業の後。
人工物のほとんどが瓦礫か灰燼と化して、まともな建造物が何一つ残らないアノル市街。
焼け跡の中に、ただ一つ大きな施設が残っている。
アノル第一小学校。
熱され炙られ融解しかけたそのプレートから、辛うじてそう読み取れた。
遊具も残らぬ校庭には、主たるべき子供はいない。
屯するのは迷彩服の集団。兵士とも呼べないならず者ども。
頭の中身は、子供より幼稚かもしれない。
略奪した戦利品を見せ合い、どれだけの女を強姦したかを自慢する―――剥き出しの残虐性。幼児性が溢れている。
彼らを引率すべき教師たちは、それぞれ校舎の中を塒にしていた。
兵たちが外気の寒さに晒される中、彼らを使って校舎内を整理・修復させ、やはり戦利品の暖房を持ち込んで自己の生活環境の改善に勤しんでいた。
一部の部屋など、本当にここが教室だったのかとあっけに取られるほどの内装の変わりようを見せている。
将校は何処の軍でも特権階級。
しかし、この田所軍でのそれは常軌を逸している。
その常軌を逸した軍の常軌を逸した総帥は、校長室を己が個室として使用していた。
もちろん、内装は丸一日費やして変更してある。彼好みの派手で悪趣味なものに。
ごてごてと奇異なもので飾り立てたその室内は、もちろん馬羽龍馬少将にとって驚きに値するものではない。
249 :
岐路:02/06/09 19:47 ID:7bdUajHK
彼が驚愕に顔を強張らせることがあるとすれば、むしろこの逆。田所大将の個室があまりにシンプルで機能的なものに変貌していた場合だろう。
「丸谷軍の存在は、敵増援後方に圧迫を加えつつあります。前線からの報告によると、敵軍の正面火力は前日に比して40%減少しました」
「ロイハイトをいつ落せるかが勝負になるな、こりゃ」
ソファに身を投げだし、天井を見上げて田所が呟く。
北部の要衝ロイハイトを包囲して四日。市街外周での戦闘は激化する一方で、まだどちらが優勢とも知れぬ戦況だ。
「馬羽ちゃん。実際、ロイハイトを落せると思うかい?」
「航空優勢はこちらが掌握しています。火力でも圧倒しておりますし、陥落は時間の問題かと」
ただ、と一言付け加える。
「その時間が最大の問題、となりますね」
「それだ」
そこが問題なんだ、と田所は頷いて眉を顰めた。
ロイハイトを守るのは、国境での戦いで撃滅し損ねた警察残存部隊3000名ほどと、郷土防衛隊6000の一万にも満たない貧弱な兵力だ。
本来なら問題なく攻め潰せる敵。
解囲部隊に対応するため、兵力を割いていなければ問題なく攻め潰せるはずの。
「手間取れば下川に反撃の機会を与えちまうな……」
「いっそのこと、この段階で月厨どもに全て任せて我々は引き上げますか?」
「それか、敵の増援に一撃加えて逃げるかだな」
今退くか、一戦して退くか。
退くのは規定事項。
ただ、その引き際が問題だ。
敵増援が出て来たからと言ってケツをまくるのではただの火事場泥棒。
下葉に一定の打撃を与えた事実は誹謗中傷に相殺され、名声を取り戻す事は叶わないだろう。
その上、フリーになった敵兵力が鍵自治州に投入される可能性がある。
250 :
岐路:02/06/09 19:50 ID:7bdUajHK
これは拙い。今度の介入には、下葉兵力を誘引し、葉鍵国内戦長期化を謀る意図も込められているのだ。
では決戦を挑めばどうか?
勝っても負けても名声は手に入る。
そして負けはまずあるまい。兵力ではこちらが優勢なのだ。
しかし、やはり勝っても負けても出血は大きいものになる。
……今後のエロゲ国での勢力争いに、マイナスになってもプラスにはならない結果も予期される。
そして万が一敗北するような事があれば、自分の政治的生命は完全に絶たれるだろう。
「ち……増援の投入が早かったな。下川の決断力ってのを見誤ってたか」
一転、自身が窮地に立たされた事を自覚して、田所は立て続けに何度か鋭い舌打ちを漏らす。
そして軽く瞑目した。今日まで自身の生存を託してきたその直感、それに今度の選択肢も委ねてみようとこころに決める。
どちらを選ぶにしても、そのリスクは極めて高い。
結局どちらのリスクを選ぶか、だ。質量が同じなら、あとは好みの問題じゃないのか?
それに大都市(つまりはロイハイトだ)を一つ消せば、国内の評価も変わる可能性だってある。
何にしても、ロイハイトだ。ここを落さないとそれから後のステップには進まない。
ならその戦闘の帰趨に賭けてみると良い。
落せたらテネレッツァに決戦強要。落せなければ、あとは月姫どもに後を委ねるだけの話だ。
がばっとソファから身を起こし、参謀長の顔を見上げた田所の顔に笑みが浮んだ。
明日の遠足の予定を話す子供のように、日の変わるのが待ちきれないその様子。
「よし。明日、ロイハイトに総攻撃をかける。勝てば良し、それでダメならケツを捲くるぞ」
251 :
岐路:02/06/09 19:50 ID:7bdUajHK
轟音を立てて、殲轟7型戦闘爆撃機の編隊がロイハイト目掛けて飛んでゆく。
その上空を守るのは、殲撃8UM戦闘機の群れ。殲撃11型(つまりはフランカー)の姿もある。
田所軍最良の航空兵力と言って過言ではないだろう。
ようやく再編成が整い、北部戦線に投入されはじめているMiG23/27フロッガー主体の下葉防空軍に決して引けをとらない陣容だ。
そのエアカバーのもと、『歌月十夜』師団は前進する。
師団長のOKSG大佐は遙任――遠く正統リーフの地から離れられずにいる。
代わって指揮をとるのはもう一人のシキ。
AFの将帥たちに勝るとも劣らぬ狂人、師団長代行:遠野四季大佐。
「総攻撃か……くくく、面白くなってきたじゃないか」
総攻撃を含めた全ての状況。
それらを一まとめにして彼は「面白い」と表現する。
遠野志貴とアルクェイド。シェルも含めておいたほうが良いかもしれない。
あの忌々しい連中を除けばすべては彼にとって余興に過ぎない。
ああ、もちろん愛する秋葉を幸せにしてやるというのは全てに優先する至上命題なのだが―――
「ロイハイトを地上から消せば―――」
「遠野が怒るんじゃないか。顔も見たくないって言われるかもね」
月姫蒼香大佐が言う遠野とは、無論四季がライバル視する遠野志貴大佐ではなく、最愛(一方通行だが)の妹である遠野秋葉大佐のことだ。
「うぐっ……しかたない。大人しく行くか。せっかくの状況なのに……」
容赦のない蒼香の指摘に、うなだれてぶつぶつと不平を呟く四季大佐。
秋葉に嫌われる事をなによりも嫌うシスコンであった。
252 :
岐路:
やれやれとその後姿に肩を竦め、月姫大佐は部屋を退出しようとする。
やることはいくらもある。急遽決定した総攻撃を翌日に控えているともなれば、この頼りのない師団長代行の指示を待つ間にもさまざまな準備を整えなければならないのだ。
と、その背中に、四季大佐の呼び声がかかった。
「とは言ってもな。連中、手綱を絞れる状況じゃないような気がするんだが」
振り帰った月姫大佐の眼差しの先。
窓の外、兵たちが熱唱する愛国歌を耳にして四季大佐は面差しを曇らせる。
「パッケーだな、まるで。狂熱に酔いしれ、」
難しい顔をしながら、それは表層だけの事だ。
四季大佐の声音には愉しげな色が隠しようもない。
漠然……明確な形がないから、漠然としたままの不安。
その不安がどう具現化するかはわからない。ただ、それが実際のものになるという確信だけは、月姫大佐の胸中に生まれた。
鋭い視線が突き刺さる、それは彼にとってはむしろ痛快ですらある反応だった。
もはや表情にも狂喜を隠そうともせず、四季大佐は腕を大きく広げて歌うように言う。
「さぁて、本当の戦争をはじめようじゃないか。
オレたち迫害されし流浪の民が、真の解放を手にするための栄光の戦争をな?」
<糸冬>