>>574-575のやり取りがあった一方……
「ふぅ……」
朝練が終わった。
後輩を引き連れて部室に戻り、Tシャツを脱ぎ捨て、容赦なく
体から温もりを奪う汗をタオルで拭い取る。
「蔵谷先輩、すみませーん! HR遅れるとまずいんで、お先に
上がりますねーっ!」
「うん、急ぎすぎて転ばないようにね」
「はい!」
嵐のように去っていったのは、つい先日、自分と乃逢の“試合”
を見て、長距離走に興味を持ったという1年生だ。以前、乃逢が
入部する以前にいたあの後輩のような、ある種のミーハー感覚で
の入部ではないかと危惧したが、なかなかどうして骨がある。
並の人間(素人)なら音を上げるであろう練習課題にも積極的に、
精力的に取り組んでいるし、朝練を含む毎日の練習にも必ず出て
くる。
乃逢がいなくなったことで、この部活も以前のように寂しく
なってしまうかとも思ったけど、それは杞憂だったらしい。
「っとと、急がないと私も遅刻しちゃうじゃない」
さっとブラウスに腕を通してボタンを留め、スカートをはいて
ファスナーをしめ、上着のブレザーをはおる。
……うん、最速記録更新……って何を考えてるんだか。