「ふふ……」
女は艶然と笑うと、ジーッという音を立ててジーンズのジッパーを下ろした。
「や、やめ……」
既に痛い程に勃起していた男性器が、窮屈なジーンズの中から飛び出してきた。途端、鼻をつくのは性臭。
女はその細く白い指を竿に絡めると、つつ、となぞるように触れた。
「あっ」
青年の表情が、変わる。
「気持ちいいかしら。……何処の誰かも分からない女に犯されるのって、どんな気持ち? ねえ、柏木梓くん……?」
長い黒髪を垂らし、眼鏡の奥の切れ長の瞳が淫猥に、そして邪悪に歪む。
梓は後ろ手にかけられた手錠をガチャガチャと言わせながら、女から離れようともがいていた。だが先程飲まされた薬のせいか、身体が思うように動かせずにいるのだ。
「や、やめ……」
「熱いわぁ……それに大きい。ねえ、これでどれくらいの女を泣かせてきたのかしら」
つつ、と指先が陰嚢に触れる。
「この精液を、どれくらいぶち撒けてきたの? ねえ、教えてよ」
「っく、お、俺は……」
「私には言えない? じゃあ、こっちのお嬢さんになら、言えるかしら」
「っ! は、はじめに触るなっ」
梓の表情が必死なものに変わる。彼の視線の先では、彼と同じように手錠で拘束された柏木はじめの姿があった。
豊かな胸を強調するように、鎖が上半身を縛っている上に、右手と右足、左手と左足を手錠で繋がれているのだ。
自然、股を開いた状態で寝ころぶ事になる。
普段から薄着で無防備といっても良い格好をしているはじめである。その様子は、未だ童貞の梓には刺激が強すぎた。
「ふふ。こっちのお嬢さんもエッチな身体をしてるわよね……。ねえ、教えてよ。あなた、どれくらいの男をくわえてきたの?」
はじめの髪を無造作に掴み、屈辱的な問いかけをする女を、梓は睨み付けた。
「やめろ! そいつには触るんじゃねえ!!」
「うるさいわね」
女は不機嫌そうに呟くと、あずさの露出したままの男性器を踏みつけた。
「あああっ!」
「何よ。汚いち○ぽを出しっぱなしで、おまけのおっ立てたまんまで。なに? 精液を出したいの? 自分でしごきたい?」
クスクスと笑いながら、女がグリグリと梓のモノを踏みつける。
その痛みに、梓の目に涙が浮かんだ。
唇を噛みしめ、それに耐える。
「やだ。何よ。踏まれて感じてるの? あははっ、なーんだ。柏木本家の次男はマゾだったんだ」
「な、なにを言ってっ!」
女の言葉に梓が声を荒げる。だが、女の言う通り、梓のそれは踏みつけられた時から、さらに硬く宙を貫くように充血を強めていた。
無論、これは梓が先に飲まされた薬のせいであるのだが、女の言い回しはまるで梓自身にそのような性癖があるかのように、錯覚を起こさせていた。
「お、俺は、そんなっ」
「ふーん。じゃあ、これは何? この勃起してるこれはさぁ」
無造作に梓の物を握りしめると、しごき始めた。
「や、やめろぉっ!」
「ほら、出しちゃいなさいよ。どこの誰ともわかんない女にしごかれて、馬鹿みたいにどぴゅどぴゅ出しちゃうの。情けないわねぇ、ほら、我慢しないで出しちゃいなさいよ。ほらぁっ!」
激しさを増しながら、男の性感のツボを押さえた刺激に、梓の我慢は簡単に臨界を超えてしまった。元より、眼前のはじめの扇情的な姿に興奮していた事もあったし、薬による催淫効果もあった。
「あ、ああああっ、や、やめっ、で、出ちゃうっ」
「……ふふ。だったら、ほらっ! 好きなんでしょ? この女が!」
女は片手で、はじめの身体を拘束する鎖を握りしめて、引き寄せた。はじめが女性である事を考えても、その腕力は異常だった。何より、女自身が華奢な体つきをした、決して腕力があるようなタイプには見えないのだ。
だが、はじめは鎖に引っ張られて、梓の眼前に転がされる。
ギャグをかまされたまま、はじめが涙目になって梓を見上げていた。
その瞳に、梓の限界が近付く。
「い、イクっ、や、やだっ!」
「かけちゃいなさいよ。ほら。目の前にいる好きな女にっ!」
しごく力を加えながら、先端を転がるはじめに向ける。
女のされるがままに、梓の背筋がゾクゾクと震える。
「あ、あああああああっ!!!」
ついに我慢の限界がきた。
先端から弾け飛ぶように、白いゼリー状の精液がはじめに降り注ぐ。
はじめの髪も、頬も、額も、鼻も、くちびるも。
梓の汁で、汚れていく。
「は、はじめぇっ、ご、ごめん……っ」
ギャグの下で、呻くような声をあげているはじめに、梓が陶然としたまま呟いた。
「あははははははは! 綺麗になったじゃない! ねえ?!」
未だ止まらない射精が、はじめの上半身にまで降り注ぐ中、女の狂ったような笑い声が部屋中に響いていた。