「そろそろ時間です」
セリオの声が後ろで響いた。無言で頷いた後、ぼくはトーナメント会場を見回す。
静まりかえった観客席、集計団が居たコンクリートボックス、闇に薄らぐマウンド。
ほんの三週間前まで、ぼくらはここで、夢の競演に酔いしれて居た。
最後の試合が終わり、エンディングフラッシュが流れたとき、ぼくは、不覚にも涙を流した。
手にしたプリントアウトされた観戦記をめくる。川名みさきと倉田佐祐理の試合を記したものだ。
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http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1015/10156/1015693672.html (873〜892)
良く出来ていると思った。あの場所にいた人間は、当時の熱気を思い出すだろう。
3/3という日は彼女と浩平の卒業式の日と重なる、というくだりには、胸にこみ上げるものがあった。
読むうち、ぼくは、試合の日を思い出していた。
「この試合でね、点字をやってみたんだよ。難しいんだ、これは。なんでこんなに不便なんだろうって。
もっと技術が発展して、彼女みたいな人に光をプレゼント出来たらなって思った」
ぼくは、もう一つの観戦記を開く。決勝戦を扱ったものだが、この前読んだシュバルツブルーだー氏の作品とは違う。
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http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1015/10156/1015693672.html (704〜744)
上のものとは作風が変わっていて、実況中継風だ。読んでいると、あの壮絶な…終わったあと廃人になってしまうほどの…
戦いが、テンポ良く再現されているのに気付く。
ぼくはあの怒濤に呑み込まれて殆ど何も出来なかったけれど…名前を出してくださって感謝致します。本当は本スレと
感想スレの2段構えで対応するはずだったんですが…飽和してしまいました。
「723などで参加者の発言をうまく切り取ってきているあたりはさすがだと思った。この技術、勿体ないなぁ。何かに活かして貰えないだろうか」
「はい」
「それと、728にある"万感の思い"ってコメント…そうだね、まさに、その通りだね」
試合が終わったとき、心を埋め尽くしたもの…それはまさに、万感の思いとしか言えないものだった。