>>81 観鈴は学校から帰ってきて冷蔵庫を開けた。
「あれ、わたしのジュースがない…」
しかし買い置きしていたお気に入りのどろり濃厚ジュースは入っていなかった。
「ねえ、往人さん、わたしのジュース知らない?」
観鈴は居間でごろごろしている往人に聞いた。
「子供にやった」
往人は寝たまま観鈴に答えた。今日も稼げなくて不貞寝していたのだ。
「ひどい、楽しみにしてたのに」
大好物のジュースが飲めなくて観鈴はがっかりしていた。
「すまん。代わりに俺のどろり濃厚で我慢してくれ」
そう言って往人は立ち上がると、モノを観鈴の眼前に出した。
「わ、ゆ、往人さん、何してるの!?」
いきなりモノを見せつけられて観鈴は動転していた。
「くわえると、どろり濃厚ジュースが出てくるぞ」
ここ数日のどたばたで抜く暇がなかったので濃厚なのが出ることは確実であった。
「うん」
往人の意図を理解していなかった観鈴は取り敢えず目の前にあるものをくわえてみることにした。
「出てこない」
観鈴はストローを吸うみたいにちゅうちゅうと吸ってみたがジュースは出てこなかった。
「普通に吸っても出てこないぞ。もっと頭を使え」
「難しいな」
観鈴は往人のそれを持ったまま考えていた。
しばらく考えて、あるジュースの飲み方が脳裏に浮かんだ。それはどろり濃厚ジュースと同じ自動販売機で売られているジュースで、吸っても吸っても出てこない謎のジュースだった。
「往人さん、分かった」
「よし、それを試してみろ」
往人はこれから自分の下半身を襲う官能の快感を待ち受けていた。
「ギャーーーーーーッ!!!」
しかし次の瞬間、往人は痛さのあまり絶叫していた。
「あれ、どうしたの、往人さん?」
観鈴は悶絶している往人を見て不思議がっていた。
「お、お前、な、何するんだ……」
往人は袋を押さえて畳の上を悶えながらのた打ち回っていた。
「え? 吸っても出てこなかったから、ゲルルンジュースみたいにパックの部分を押しつぶしてみたんだけど」
観鈴はさらりと言ってのけた。そう、性に疎い観鈴は漢の痛みについて全く理解していなかったのである。
(おわり)