「和樹さん、銭湯に行きましょ!」
「(゚Д゚)ハァ?」
遊びに来た郁美ちゃん、家に上がるや突然こんなことを言いだした。
「だから、銭湯に行きませんか? あ、もしかして、銭湯知らないんですか?」
「いや銭湯は知ってるけど、なんでいきなり……」
「最近和樹さん、ずっと原稿にかかりっきりで、疲れてるみたいだし。リフレッシュにどうかなぁ、って」
「うーん……温泉ならともかく、銭湯だろ? リフレッシュなんて出来るかなぁ?」
そう言うと、郁美ちゃんはここぞとばかり畳みかけてくる。
「最近の銭湯って結構すごいんですよ。ジャグジーとかミストサウナとかジェットバスとか、
ちょっとしたクアハウスみたいな設備もあったり、マッサージとかもしてもらえたりしますし」
「へぇ、知らなかったよ。あまりそういうのって行かないしね」
「だったら取材も兼ねて、ってのはどうですか? これなら時間を費やす理由にもなりますよね」
うーん、確かにちょっと興味も引かれてきたし、行ってみてもいいかな。
「そだね。じゃあ行こうか」
「よかったぁ! あ、あたしよさそうなお店調べたんですよ。6駅ほど先なんですけど……」
こうしてオレと郁美ちゃんは銭湯に取材兼湯治に行くことになったんだけど……。
「……ここ?」
「はい、そうですけど?」
電車で6駅、さらに歩いて15分。そこにあったのは結構立派な建物。看板には「スーパー銭湯極楽亭」。
ただ、駐車場に車が一台も停まってないのはどういうことだろう?
「えっと……今日、実は定休日ってオチだったりする?」
「そんなことないですよぉ。さっ、行きましょ、和樹さん!」
「あ、うん……」
建物の中に入る。やっぱり他の客の姿はない。
「郁美ちゃん、なんで他に客はいないんだ?」
「えっと、今日一日ここを貸し切りにしたからですよ」
「ああ、なるほどね。貸し切りか。それなら当然他の客は……
って、ええええええっっっっ!!??」
「わっ、突然どうしたんですか?」
「貸し切りって、あの貸し切りのことか!?」
「多分その貸し切りのことです。今日のここはあたしと和樹さん、二人だけの場所なんですよ♥」
なんてこったい。
「タオルとかはぜーんぶ更衣室に用意してあると思います。それじゃ和樹さん、また後で」
「うん、また後でね」
『女湯』ののれんに向かう郁美ちゃんを見送って、オレも男湯に向かう。
更衣室で服脱いで、タオルを持って浴室に入る。おお、確かに広くて、なんかいろいろな風呂があるな。
とりあえず手近な檜風呂に入る。やや熱い湯が気持ちいい。
「はあぁぁぁ……最近シャワーで済ませることが多かったしなぁ。広い風呂っていいもんだ」
あとはビールがあれば最高だよなぁ、などとオヤジくさいことを考えてしまう。
しかしやっぱり気になるのは、これだけ広い風呂なのに客がオレ一人だってことだ。
「郁美ちゃん相変わらずすごいことするよなぁ。店一つ貸し切りかぁ……」
「大好きな和樹さんが喜んでくれるなら、なんだってやっちゃいますよ。ところでお背中流しましょうか?」
「あ、うん、ありがとう。それじゃあ頼も……
って、ええええええっっっっ!!??」
振り向いたそこに立っているのは、タオルを巻いた郁美ちゃん。って何でだよ!
「わっ、お風呂って声響くんですよ。そんなに大きな声出さなくても」
「そうじゃなくてっ! 一体どこから入ってきたの!?」
「あそこです」
指さす先には開いた扉。向こうに浴槽が見えるってことは、男湯と女湯を繋ぐ扉ってことか。
「貸し切りですから、扉の鍵も借りちゃったんです。えへへっ」
そう言って郁美ちゃんはペロッと舌を出して、にっこりと笑った。
で、勢いに乗せられて、オレは背中を流してもらってたりするのだが。
「んしょ、んしょ……和樹さん、かゆいとことかないですかぁ?」
「はい、ないです」
思わず敬語で答えてしまう。
しかし……女の子に背中を流してもらうのが、こんなに嬉しいものだとは知らなかったよ。
「あれ? どうしたんですか、和樹さん? そんなにニヤニヤしちゃって」
おっと、顔に出てたらしい。
「いや、郁美ちゃんに背中を洗ってもらえて嬉しいなぁ、って思ってただけだよ」
「あたしも和樹さんの背中を流せて、すっごく嬉しいですよ♥」
背後だから見えないけど、きっと今、郁美ちゃんはすごくいい笑顔してるんだろうなぁ、と思う。
ザバァーーーッと熱い湯がかけられる。ちょっと背中が軽くなったような気分だ。
「はい、お背中終わりです。次は前の方を流しますね」
マテ。
「あーーーっ! いい! 前はいい! 自分でやるからいいっ!!」
「えーっ? せっかくですからあたしに流させてくださいよぉ」
ダメだ、ダメだダメだそれだけはダメだ。
「いいからっ! ホントにいいからっ! ていうかお願いだからやめてくれっ!!」
「残念……。あ、じゃあ、背中のマッサージとかしちゃいますね」
「うんそれ! それお願い! っていうか是非お願いっ!」
ふぅ……どうやら千堂和樹本日最大の危機は逃れられたらしい。
「それじゃ、マッサージオイルかけますね。ちょっと冷たいかも知れないですけど」
その声の後に、背中にピチャッ、ピチャッと液体がかけられる。うおっ、確かに冷たい。
でも心地いい冷たさかも。それにほのかにハーブの匂いもするな。なんか効きそうだ。
「じゃ、マッサージしまーす。リラックスしててくださいね」
オイルが塗り広げられて、すごく柔らかいスポンジか何かで背中全体をマッサージされる。
なんって言うか、赤ちゃんの手とかほっぺみたいな、触れてるだけで気持ちいい何か。
「っっああぁーーーーーー…………気持ちいいぃーーーーーー…………」
思わず声が漏れてしまう。
「んっ……よ、喜んで…もらえて……嬉しい…………です……」
その郁美ちゃんの声を聞いて、何かがひっかかる。おかしい。何かがおかしい。
一つ。今の郁美ちゃんの、妙に鼻にかかったような声は何なんだ?
一つ。今、オレの肩に郁美ちゃんの手がかかっている。じゃあスポンジ(?)をどう使ってるんだ?
一つ。スポンジ(?)が二つ、等間隔に、しかも同時に、平行に動いてて、
しかも両方とも先っぽにちっちゃな突起があるっていうのはどういうことだ?
その答えに辿り着いた瞬間、オレは銭湯とは違う場所に立っていた。
無限に広がるなにもない空間。修羅場の時などにたまに見える、オレの心象風景ってヤツだ。
オレの右側に飛んできた、オレの心の天使は囁く。
「児ポ法とか世間体とか考えたら、ちうがくせいに手を出すわけにはいかないだろ?」
オレの左側に飛んできた、オレの心の悪魔は囁く。
「お前、自分の立場わかってるか? 同人作家だろ。同人に児ポ法も世間体も関係ねえよな」
オレはつぶやく。
「どうしたらいいんだ」
その声を合図に、天使と悪魔は河内音頭を踊りながら戦い始める。決断を迫られた時の、いつもの光景だ。
やがて戦いは終わった。今回は天使が勝ったようだ。白い翼をなびかせて、さわやかな表情でオレに告げる。
「郁美ちゃんがあれだけ勇気を出してるんだ。女の子に恥をかかせちゃいけないよ」
おい。お前天使じゃないのか。ツッコむ間もなく、オレは瞬時に現実に引き戻された。
よし、とりあえず肩にかかってる手を取って、ぎゅっと抱きしめよう。
そう考えて振り向こうとして、オレは事態が急変していることを知る。そんなに長くオレはdでいたのか。
まず、オレの肩に郁美ちゃんの手はかかっていない。そこには何もない。
次に、オレの手が後ろ手に縛られている。きつい縛り方ではないが、自力で解くのは骨だろう。
そしてなにより、腰に置いていたオレのタオルがなくなっていて、代わりにそこに郁美ちゃんの頭があって……
「って郁美ちゃん! 何やってるの!?」
思わずオレは叫ぶ。郁美ちゃんは「それ」をくわえたまま答えた。
「え? まへのほーをはらっれいるんれふけろ」
「くわえたまましゃべるな! っていうかそもそもそんなもんくわえるな!」
残念そうに……本当に残念そうに、「それ」から口をはなす。
「ですから、前の方を洗っているんですけど」
「洗ってないっ! それになんでオレは縛られてるんだよ!」
「なんか和樹さんがボーっとしてた時に、縛ってもいいですか、って聞いたら、了承してくれたじゃないですか」
なんだって? オレにはそんなケはないはずだが。
「ほ……本当に?」
「はいっ。無言の了承ってヤツですけど」
「それは断じて了承じゃなーいっ!」
いかん。完全に郁美ちゃんのペースに呑まれている。とりあえず現状を何とかせねば。
「で、オレを縛ってまで何をしたいんだよ?」
「そんなの、決まってるじゃないですか……」
たった今気付いたんだけど、さっきまで郁美ちゃんの身体を覆っていたタオルはもうなくなっている。
一糸纏わぬ姿の郁美ちゃんは、元気になっているオレのナニをいとおしげに触れながら答えた。
「き・せ・い・じ・じ・つ♥」
「やっぱりかーーーーっっ!!」
「だって和樹さん、あたしがどんなに誘惑しても応えてくれないんだもん。だったら実力行使しか」
「だってそれはほら、郁美ちゃんはまだ子供だし……」
「もう立派な大人ですっ! ちょっと胸はちっちゃいけど……でも同人誌とかでちゃんと勉強したし」
ネタはネタであると見抜ける人でないと、(同人誌を読むのは)難しい。
「それに……どうせ和樹さんは逃げられないんですよ」
そう言うと郁美ちゃんは、オレの首に手をかけて、オレに口づける。
互いに舌を絡め合う、熱い熱いキス。郁美ちゃんを抱きしめることができないのがもどかしい。
どれくらい時間が経っただろうか。郁美ちゃんの方から口を離した。
「なあ……せめて手のこれは解いてくれないか?」
「ダメです……逃げられちゃうかもしれないし」
この状態で逃げる男が、この世のどこに存在するというのか?
「それに……あたしがリードしちゃいますから……大丈夫ですよ」
恍惚としたような、怯えているような、でも勇気と決意がいっぱい見えるその表情を見てしまっては、
(いや郁美ちゃんも初めてじゃん)とはツッコめなくなってしまう。
オレのモノを口でしている間にそうなっていたのだろうか。わずかに濡れた秘裂にオレのモノをあてがい、
少しずつ……本当に少しずつ、郁美ちゃんは腰を沈めていく。
だが、すぐに壁に突き当たる。それは少女と女を隔てる壁。子供と大人の境目の壁。
「こ、ここは……一気にした方が……い、いいって確か……せ、せえのっ……」
うわごとのようにつぶやいて、一息に腰を沈めきろうとする。
オレはほとんど動けないけど、そのタイミングに合わせて、ちょっとだけ腰を突き上げた。
「……っっ!!」
郁美ちゃんの目から涙が零れ落ちる。オレのナニは全て、郁美ちゃんの中に吸い込まれてしまっている。
「大丈夫? 郁美ちゃん、痛くない?」
聞くだけ無駄だとわかってる。破瓜の痛みは、男にはわからないものだし。だけど。
「ぜ……全然大丈夫…ですよ……あ、あたし……弱い子じゃ…ないですから……」
涙をぽろぽろ流しつつ、それでも微笑む郁美ちゃんは、この世の何よりも綺麗だった。
「ねえ、郁美ちゃん……オレ、またキスしたいな」
「ま……またですか? ……え、えっちですね、和樹…さんは……」
そう言って郁美ちゃんは、オレと結びついたままキスしてくれた。また首に腕を回して。
互いの味を互いに感じながら、オレは思った。気持ちよくなるとか、そんなのはどうでもいい。
ただ、この時が。互いに時間と身体と心を共有できる時が、ずっとずっと続けばいいな、と。
やがて、互いに唇を合わせたままで、郁美ちゃんが少しずつ腰を動かし始める。
ほんのちょっとずつ身体が上下する。その度に、郁美ちゃんの舌はオレの舌を求めてくる。
まるで下で感じる痛みを、上の快感で打ち消すかのように。
椅子に座ったままで後ろ手に縛られた状態のオレは、ただ郁美ちゃんに身を任せるだけで、何もできない。
手を縛る紐を解こうとするが、舌とナニの両方で感じる郁美ちゃんの味に酔ってしまい、作業は進まない。
それでも少しずつ、少しずつ、手首が自由になってゆく。
ザーーーーー……と、風呂場特有の、湯が流れていく音が響く中。
クチュ…クチュ…と、二人が舌を絡め合う音が微かに聞こえる。
クチャ…クチャ…と、二人が腰を寄せ合う音が微かに聞こえる。
慣れてきたのか、濡れてきたのか、郁美ちゃんの腰のストロークが少しずつ大きくなってくる。
正直言って、狭くて熱い郁美ちゃんの中はすごく気持ちいい。もう耐えられなくなってきそうな程に。
でも郁美ちゃんより先に達するわけにはいかない。男の意地だけを頼りに、後ろ手の紐を……っ!解けた!
その瞬間、ガバッと郁美ちゃんを抱きしめる。びっくりしてずっとキスしてた口を離す郁美ちゃん。
「…ほ……ほどい…ちゃった……ん…ですか……?」
「い、郁美ちゃんを、この手でぎゅっと抱きしめたかったからね」
そう言ってオレは、もう一度、郁美ちゃんを抱きしめた。
「ちょっとゴツゴツしてると思うけど、我慢してね」
そう言ってオレは、ナニを一旦抜いて、抱きしめた郁美ちゃんを床に横たえる。
「今度はオレの番だよ。郁美ちゃんを気持ちよくしたげる」
そのまま、郁美ちゃんの乳房を手で愛撫しながら、乳首を舌で転がす。
「あ……っ! か……かずきさぁん……」
さっきまでの少し辛そうな表情もなく、郁美ちゃんは顔を赤らめている。
そのまま舌を下に這わそうとして気付く。乳房の下にある、大きな傷痕。
それは心臓の手術跡。郁美ちゃんが頑張り抜いた証。その痕をゆったりと優しく指で、そして舌でなぞる。
愛おしい。彼女が。郁美ちゃんの全てが。
反対の手を、郁美ちゃんの下の口に延ばす。
クリトリスを指でやさしく刺激すると、すでに熱く濡れそぼっていたそこはさらに潤いを増す。
「かっ……かず…きさぁん……あっ!……かずきさんっ……」
そろそろいいだろうか。いや、オレも初めてだからよく分からんが。
愛撫を一旦止め、郁美ちゃんのそこにオレのアレをあてがう。
「まだちょっと痛いかも知れないけど、我慢してね」
「あ、あたし……和樹さんのだったら……あああっっ!!」
一息にグッと一番奥まで埋め込む。
さっきまでと変わらない、狭くて熱い郁美ちゃんの中。オレは彼女を傷つけないように、ゆっくりと優しく動く。
っていうか早く動いたらオレが速攻でイっちまいそうだし。
「あっ……ああん……ん、んんっ……あ、あぁ……あぁん……」
郁美ちゃんは、小さな身体で一所懸命感じているように見える。
オレが動けば動くほどに、だんだんスムーズになってくる。愛液の量が増えてきているのがわかる。
それにつられるかのように、少しずつ、少しずつオレの動きも大きく、早くなってくる。
「かずきさぁん……あっ……か、かずき、さん……あ、あたし…あたし、もう……き、きちゃい…そう……」
目線もうつろに、息も絶え絶えに、郁美ちゃんがつぶやく。
「お、オレも……一緒に、いこう?」
オレの言葉に反応して、郁美ちゃんは微かにうなずいた。オレは腰の動きを早める。
「い、いっしょに……かずき…さん……あぁ……あっあっ……あああっ、ああああああああああんっっ!!」
郁美ちゃんが達すると、膣内がさらにギュッと狭くなる。耐えきれずオレも、郁美ちゃんの中に全てを放った。
二人の身体が落ち着いてから、一緒に露天風呂に入る。西の空は紅に染まり、鴉の鳴き声も聞こえる。
何も言わず二人で寄り添って、ぼーーっと空を眺める。東に向かって赤から紺へ、コントラストが美しい。
ただ二人でそばにいる、それだけで温かくなる。確かに今日、二人の距離はさらに近付いたのだから。
「ねぇ、和樹さん」
先に口を開いたのは、郁美ちゃんの方だった。
「ん、なんだい?」
「今日、ここに来てよかったです」
「ああ、オレも」
「初めてが、和樹さんでよかったです」
「え? あ、えっとあの、その……」
「ねぇ、和樹さん」
「え、あ、うん、なに?」
「ずっと、一緒にいてくださいね」
少し涙声だったかもしれない。オレの気のせいかも知れない。
オレは何も言わず、ただ、郁美ちゃんの肩を抱いて、自分の方に引き寄せた。
その時、郁美ちゃんが軽く、ほんの軽く、オレの頬にキスした。
そのまま頭をオレの肩に預けてくる。
オレはその時、今のキスをずっと忘れることはないだろうな、と思った。
ほんの一瞬だったけど、そう思えるような、あたたかいキスだった。
夕闇が押し迫り、空の色はだんだん暗くなってくる。夜風が吹き始め、外の空気は冷たくなってくる。
だけど二人は、あたたかいままだった。心も身体も。きっとこれからも、ずっとずっと。