「うぅ…」
さわたしの口から嗚咽声が呟き出される。
心に浮かぶのは愛しき人。初めて本気で好きになった人。
でも、素直になれない。どうしても思いを伝える事ができない。
どうして自分はこんなに捻くれているのだろう?
どうして自分は正直になる事が出来ないのだろうか?
本当は仲良くなりたい。素直な気持ちをキーボードに叩き付けて、彼と心の交流を
深めたい。
だが、書き込まれるのは彼を罵倒する言葉だけ。
心にも無い誹謗中傷の言葉だけ。
こんな不毛な事を繰り返して最後に何が残るのだろう?
一体どんな末路が待ち受けているのだろう?
ただ嫌われるだけではないのか? うざがられているだけではないのか?
さわたしの脳裏にそんな恐怖が駆け巡って行く。
いやだ。嫌われたくない。本当は好きで居て欲しい。罵倒の言葉でもいい。
ただ、私の相手をしてくれるだけでもいい。
でも…でも…。そんな私に愛想を尽かして、取り合ってくれなくなったら…。
断腸の思いで書き込んだ煽り言葉ですら無視されるようになったら…。
「そんなの…そんなの嫌だよう…」
さわたしが頬に涙を伝らせながら、そううめくように声をあげる。
脳裏に浮かび上がるのは想像上の彼の姿。彼女が初めて見つけた白馬の王子様。
「セガサターン…くん…」
頬を真っ赤に染め上げたさわたしの口から呟かれるそんな一言。
暗闇に包まれた部屋の中。唯一光を灯すディスプレイだけがさわたしの小さな身体を
明々と照らしていた…。