葉鍵板最萌えトーナメント!!準決勝 Round165!!

このエントリーをはてなブックマークに追加
721漢たちの誰彼 ◆801ATCDM
●寝取られアイドルデビュー? 中篇(1/6)

「ああ、自分から約束していて遅れてしまった。理奈ちゃん怒っているんだろうなあ」
 ただでさえ今日は他の女性とあんなに密着しているところを見られたのだ。
 誤解とはいえその怒りは頂点に達しているのが容易に想像できた。
「はあ、ドアを開けるのが憂鬱だ」
 エコーズのドアの前に冬弥は思わず立ち尽くしてしまった。
「いや、しかし誤解は早めに解かないといけない!」
 思いきってドアを開ける冬弥。しかし、店内に理奈はいなかった。
(はあ、まだ来てないか)
 心なしか少しホッとする冬弥。
(いや、すっぽかすのかもしれない)
 そうも思いながら店に入って店長に会釈する。
「今日は彰来てないんですか?」
 店長は黙って頷く。
(助かった。こんなところ見られたら一気に弱みを握られる)
 ましてや、はるかなどに見られたら…想像しただけでゾッとする冬弥。
「藤井くーん」
 後ろから聞き覚えのある声がした。
「あ、ニコさん」
 さすが芸能人御用達の店だなと冬弥は思った。
「遅いわよ、藤井くん。女の子をこんなに待たして!」
「へ?」
 冬弥は後ろに視線を回し店長を見る。店長は肩をすくめるだけだった。
「それにしても弁当に紙をはさむとはなかなか洒落た真似するじゃない」
「へ?」
「でも、運命感じるわよね。私って普段テレビ局でお弁当食べないのよ。
 今日はたまたまお腹がすいちゃって食べたのよ。そうしたらあんな紙があるんですもの」
「い、いやそれは」
(弁当を食べないと分かっていたからこそあそこにいれといたんですよ、とは冬弥はいえなかった)
722漢たちの誰彼 ◆801ATCDM :02/03/05 15:17 ID:5l1d50sx
●寝取られアイドルデビュー? 中篇(2/6)

 冬弥の前にはいつものとおりノアールのブラックが置かれている。そして、ニコの目の前にも同じ物が。
「藤井くんもブラックで飲むのね」
「ええ、まあ」
「フフフ。私もそうなの。気が合うわね」
 そう言ってコーヒーカップに唇を近づけるニコ。カップにはルージュの跡がついている。
「この店にはよく来るの?」
「…ええ」
「ふーん、私は初めて。本当に良い店ね」
「そうですか…」
「コーヒーもおいしいし、雰囲気もシックでいいし」
 ニコはそのままうっとりと目を瞑って店内に流れるジャズを楽しむ。その姿に思わず見惚れる冬弥。
(め、メチャクチャ綺麗だ…)
 冬弥はイカンイカンとその考えを頭から追い払う。
(早く、本当のこと言わなきゃ)
「あ、あの…」
「ねえ、藤井くん?」
 二人の声が重なってしまい冬弥は口をつぐむ。
「何か?」
「い、いえ、そちらからどうぞ」
「えーと、冬弥くんと呼んでいい?」
「どうぞどうぞ」
「思いきって呼び捨てにしあおうか」
「どうぞどうぞ」
 早く自分の意見を言おうという考えが強すぎて、相手の話を碌に聞いてなかった冬弥は
思いっきり無茶なことを聞き入れてしまったのだった…。
723漢たちの誰彼 ◆801ATCDM :02/03/05 15:17 ID:5l1d50sx
●寝取られアイドルデビュー? 中篇(3/6)

「冬弥ってどんな音楽聞くの?」
「何でも聞きますよ」
 何だかどんどん泥沼にはまっていっているような気がすると思いつつ質問に答えるしかない冬弥。
「私はアメリカのロックとか好きなんだ」
「へえ、例えばだれがすきなのですか?」
「KISSとかね、やっぱり」
「ああ、KISSはいいですね」
「ええ。芸能界の人間がこんなこと言うとあれだけどKISSなんか見ていると日本のビジュアル系なんて
 本当につまらないわよね」
「ええ。KISSほど良いものは無いです」
「ねえ、KISSってとても興奮するわ」
(な、何を気投合してんだ、俺)
724漢たちの誰彼 ◆801ATCDM :02/03/05 15:18 ID:5l1d50sx
●寝取られアイドルデビュー? 中篇(4/6)

「あと、漫画はよく読む?」
「ええ、読みますよ」
「私も地方に営業する時なんか移動の電車の中でよく読むの。それでどうしても先が気になる漫画があるのよ。
上條先生の『SEX』」
「ああ、あれって完結はしているんだけど単行本が出ないのですよね」
「そう。私の世代じゃリアルタイムで読んでるわけ無いしね。あの中に出てくる体温計いっぱい持った女の子に
 感情移入しちゃって」
「自殺するためにでしょ? でも体温計の水銀は安全なんですよね」
「そう言ってたわね。私も体温計携帯しているのよ」
「女性の人なんか毎日量ったりするんですか」
「ええ、安全日の確認ために」
(ブッ!)
「ははは、冬弥ったらウブ〜」
「ニコさんが…」
「呼び捨て!」
「に、ニコが突然そんなこと言うから…」
725漢たちの誰彼 ◆801ATCDM :02/03/05 15:18 ID:5l1d50sx
●寝取られアイドルデビュー? 中篇(5/6)

「汚いよ、冬弥」
(え?)
聞き覚えのある声がして慌てて後ろを振り向くと、はるかがいた。顔面蒼白になる冬弥。
「あら、知り合い?」
「お、幼馴染です」
「こんばんわ、はるかさん」
「…こんばんわ」
「いつからここにいた」
「ずっといたよ。お手洗いから出たら冬弥がいた」
「そ、そうなんだ。こっち来て一緒に飲むか?」
「…ん。でも、用があるからそろそろ帰る」
「あ、ああ、そうか。じゃあな」
「さよなら、はるかさん」
「…ん」
726漢たちの誰彼 ◆801ATCDM :02/03/05 15:19 ID:5l1d50sx
●寝取られアイドルデビュー? 中篇(6/6)

 はるかが外に出ると電柱の影から誰かの呼び声がした。
「はるかちゃん」
 理奈である。自分のところに手招きしている。
「中に、冬弥くんいた?」
「…ん、いた」
「女の人も一緒にいた?」
「…ん、すごく綺麗だった」
「そ、そう。どんなこと話してたかしら?」
「えーと、キスほど良いものは無いって」
「え?」
「女の人はキスはとても興奮する」
「…………」
「それと、SEXが安全日でなんとか…。あと、ニコって呼び捨てしてた」
(ドカーン!)
 あまり擬音を文章に入れるのは良くないが、この時の理奈の感情を表現するのに
こういう形でしか私の筆力では表現できない(笑)。
「…じゃあ、私は帰るね」
「と〜う〜や〜く〜ん〜」
 もはや理奈の理性のたが外れていた。

(後編に続く)