葉鍵板最萌トーナメント!! 準決勝 Round161!!
『あなたと同じ風景を』
「みさき、来年のカレンダー買ってきたぞ」
霜月、夕暮れの時、アパートの一室、折原家、
浩平は大学の帰りに買ってきたカレンダーをみさきに渡す。
みさきはその形の感触に戸惑いながらも、全体をなでていった。
「どんなカレンダーなのかな?」
「ああ、みさきもびっくりするような綺麗なお姉さんのヌードだ」
「そうなんだ、なら、捨てちゃおうかな」
そのまま、ゴミ箱のある方向へと歩き出すみさき。
その左腕を浩平はあわててつかむ。
「や、やめてくれ」
「くすっ、ほんとはなんのカレンダーなのかな?」
「ああ、世界の風景が載ったカレンダーだ」
そういいながら、浩平はカレンダーの封を解き、
丸まるカレンダーを苦労しながら開いていく。
「そうなんだ、綺麗だろうね」
「ああ、とても綺麗だ」
有名な、世界各国の風景。
ノイスバンシュタイン城、バリ島、ヴェネツィア、そして、富士山など。
とても美しい風景が一月にひとつ、印刷されている。
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「みさきにはいろいろな世界を知ってほしいから買ってきた。
オレの説明じゃ、どれだけ綺麗かは伝わらないかもしれないけど、
でも、その1割でも知ってくれれば嬉しいな」
真摯な想い、真摯な声、みさきはそんな浩平の想いをしっかりと受け止め、
まっすぐ浩平の方向へと瞳を向けて口を開く。
「ありがとう、でも、浩平君、心配しないで」
「ん?」
「私は浩平君と同じものを感じたいんだよ。
だから、浩平君の目で見て、浩平君の心で考えて、
そして、浩平君の言葉で聞かせてくれる。
それで私も浩平君と同じ風景、感じられるから、
だから、私はとても嬉しいよ」
「あ、ああ、ありがとう、みさき」
「ううん、私のほうこそありがとう。
それじゃ、さっそくだけど、表紙絵のこと、教えてほしいな」
「ああ…」
穏やかな陽だまりの中、
ふたりの新しい世界が、今、ゆっくりと広がってゆく。
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