葉鍵板最萌トーナメント!! 準々決勝 Round158!!
789 :
琉一:
「どうだね、佐藤君?」
「あ、長瀬さん。そうですね、マルチは楽しそうだし、セリオは動きが丁寧で……。
でも少しずつ、マルチは正確さを、セリオは楽しむって事を覚え始めたみたいです」
今二人は、浩之を相手に鬼ごっこをしている。
二人の間でパスをして、ボールを鬼役の浩之に奪われないようにするというやつだ。
マルチは目線でパスの方向が分かるので、あっさりと奪われたりもするけど、不正確な蹴りで浩之を翻弄する。
セリオは逆に完全なポーカーフェイス。おまけに目線でのフェイントまで覚え、そこに正確さが加わったら手が付けられない。
違った意味での黄金コンビだと思う。
「うんうん。いい感じだ。ああいう風に、二人で仲良く、成長していって欲しいものだ」
「そうですね。でも……セリオはサテライトサービスで、いろんなデータをダウンロードできるんですよね?」
「ああ。やろうと思えば、世界最高のプレイヤーにもなれるよ。
だけど実際にやってみないと、体にかかる負担や、動きを再現したときのデータは取れないし、
それに、サッカーの楽しさを学ぶこともできない。
あと、『上手くできない』ということは、きっとセリオにとって、いい経験になるよ」
「……はい。上手くできないから、上手くなろうとするんですよね」
「そういうところは、マルチの方が合格点なんだが……」
べし。
セリオがうっかり強めに蹴ったボールが、マルチの顔面に直撃した。
「はわ……顔面ブロックは危険ですぅ〜〜」
慌ててセリオがマルチに駆け寄る。
「すみません。浩之さんが鬼気迫る表情でやってきたので、少々強く蹴りすぎてしまいました」
「俺か!? 俺のせいなのか!?」
「そうは申してませんが」
「マルチ、大丈夫か?」
「ボールは友達、恐くないですぅ……」
目をくるくる回しているマルチを見下ろして、セリオが言う。
「友達なら、ゴールまで一緒に吹っ飛んでしまえ」
「あう……またセリフを取られました……」
「すみません。一度言ってみたかったんです」
おいおい。
790 :
琉一:02/03/01 09:59 ID:8rGx0hGx
「佐藤さん。今日はありがとうございました」
「とても楽しかったです! また一緒にキャプ翼ごっこしましょう!」
「あはは……うん。また今度ね」
「楽しみにしています」
……夕陽に照らされて、表情がよく見えなかったけれど、セリオは少し、微笑んでいるように見えた。
「うん。僕も楽しみにしてる」
「それまで二人とも、ちゃんと特訓しておけよ」
「了解しました。次までにはマルチさんとのツインシュートをマスターしておきます」
「若島津ごとき、ちょちょいのちょいです!」
「残念ながら、キック力が違うので、マルチさんの方に曲がりますが」
「はぅ! 私、タケシ君に格下げですか!?」
「……あはは。頑張ってね」
そして僕たちはいつまでも手を振るマルチと、セリオに見送られ、バスに乗った。
「わりぃな。今日はつきあわせちまって」
「ううん。いいよ。僕も楽しかった」
そういえば、昔、ロボットによるサッカー大会っていうのがあったけど、
いつか、セリオ達みたいなロボットが、僕たちに混じってサッカーをする日が来るんだろうか。
それこそ、キャプ翼見たいなスーパーアーツが飛び交う、無茶苦茶だけど、すごいサッカーが見られるかも知れない。
うん……ちょっと身が持ちそうにないので、やっぱりロボット限定大会にしよう。
でも、見てみたいな。
翌日。
「ええぇえっ!? 佐藤君と、なんでっ!?」
「マルチさんのご学友の、浩之さんが連れてまいられたのですが」
「私も、私もサッカーやる! 次の時は呼んでねっ!」
「それはかまいませんが……」
こうして次回、キャプ翼に感化されたセリオ・マルチ・田沢圭子連合軍が、雅史を待ち受けるのであるが……
そんな事態が起ころうとは、神ならぬ身の佐藤雅史には、予想もつかなかった。
〜 FIN 〜