最萌が終わっても、ネタがあると字を書いちゃう罠。
なにがしだよもんさんへの二次小説、
『緑の絨毯』 全4レスです。
「あ、なにがしさ〜〜〜〜ん!」
すっかり片づけが済んだ最萌会場。
残すのは、真ん中のリングと、このピアノのみ。
最後に上ってきたこの高台。
そこで、リングのそばを歩いているなにがしさんを見つけた。
頭を左右に振って声の主を探すなにがしさん。
「こっちこっち〜!」
あたしの呼びかけにこちらを向いて、にっこりと微笑み、
その笑顔のまま、なにがしさんはこの高台へとやってきた。
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「なにがしさん、おつかれさまでした」
「詩子さん、おつかれさまです」
小さく下げる頭、
それとともに柔らかに舞う金の髪、
そして漂う花の香り。
なにがしさんの趣味のよさをうかがわせる。
あたしはその香りに包まれたまま口を開く。
「なにがしさん、本当におつかれさまでした。
いつも感想、楽しみにしてました」
「ありがとうございます」
そう、なにがしさんは最萌の間ずっとがんばっていた。
支援物資へ感想、ネタふり、スレ建てお手伝い、
その名前を見ない日は全くなかった。
「でも、これでしばらくはゆっくりできますね」
二次小説を見てしまうとどうしても感想を書きたくなる、
そんなこと言っていたなにがしさん。
最萌のときは数が多くて追いつくのに大変そうだった。
でも、それも終わった今、ゆっくりと見ることができると思っての言葉。
「そうなると思っていたのですけど…」
ちょっとうつむいてつぶやくなにがしさん。
あたしはその顔を覗き込む。
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「実は3月いっぱいで来られなくなってまうんですよ」
「ええっ!?」
その言葉にあたしはちょっとショックを受ける。
昔から、いつも二次小説あるところに現れて、
的確な感想を残していくなにがしさん。
その、なにがしさんが3月末で来られなくなる。
「ど、どうしてですか?」
「私の所属する『勝手に感想委員会』の代表として、
4月から英国へ研究のため留学することになったんです」
「留学!?」
「はい。二次小説などの感想を自分流で書いていたのですが、
やはりそろそろ限界を感じていたのです。
そんな時、英国の本部から連絡がありまして、
こちらで少し研究をしてみないか、と言われまして」
「それってすごいじゃないですかっ!」
思わず出てしまう大きな声、
びっくりして目を見開くなにがしさん。
あたしは頭を下げてあやまる。
「いいえ、だいじょうぶですよ」
でも、なにがしさんはたおやかに答えてくれた。
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「いつかは戻ってくるんですか?」
あたしは一番気になることを聞いてみる。
けれども、なにがしさんはあいまいに微笑みを返すだけ。
「そう…ですか…」
聞こえないように小さく呟いてから、
あたしもなにがしさんに微笑みかける。
悲しくならないように、気にさせないように、少し無理な微笑み。
そして、それをごまかすようにピアノへ向かい、座りなおす。
「なにがしさんへ一曲…」
「ありがとうございます」
「いいえ、今までお世話になったお礼にしては安すぎますけど…」
「そんなこと、気にしないでください」
優しい、なにがしさんの言葉を受けながら、
あたしはピアノを弾き始めた。
遠い国の、緑色の絨毯を浮かべながら。
音楽はこちら。
イギリス民謡『グリーンスリーブス』です。
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