『おかえり』
私の願いはかなえられた。
費やした時は長かったけれど、振り返ればちっとも足らない気がする。
私の願いは友の幸せ。私の願いは叶えられた。
だから始めよう。私の罰を。
かくして、彼女はそこにいた。
ここにいなければ、それこそお手上げだった。
自分の勘と運と日頃の行いに感謝しよう。
ここからでは彼女の顔が見えない。
………彼女は、今どんな顔をしているのだろう。
笑っているのだろうか。俺たちがいつも見ていた顔で。
泣いているのだろうか。俺たちが見たことのない顔で。
………いや、たとえ彼女がどんな顔をしていても、俺にできることは一つしかない。
アイツの為にも。彼女に近づこうと歩みを進め――――――
と、足が止まった。いや、止められたと言った方が正しいのかもしれない。
視界に入ってきた彼女の横顔に。自分の記憶を確かめる。
この人は―――本当に、俺がいつも一緒にいた人なのか。
優雅に風になびく長い髪が………信じられないほど煤けて。
彫像のように美しかった肌が………触れれば砂に帰ってしまうかのように脆く。
そして、いつも絶える事のなかった笑顔は、
アイツが、何よりも守ろうとした笑顔は、そこにはない。
泣いているわけではない。
人間として持っているはずのものが、ごっそりと失われている。
感情と言うものをなくしてしまったそれは、打ち捨てられた人形のように見えた。
俺の知るその人の全てが、失われている気がした。
右足が先に進むのを躊躇っている。本当はすぐにでも駆け寄りたい。
けれど、今までとはまるで違う彼女の姿が、それをさせてくれない。
でも、先にいかなけりゃならない。今は。
「それが………一弥君か」
驚いた。本当に驚いた。
こんなに驚いたのはいつぶりだろう。
振り返って、納得した。ああ、やっぱりこの人か。
私を驚かせるのは、いつだって舞かこの人だけだ。
そして、この人には見つかってしまうんじゃないかと心のどこかで覚悟していた。
「お祈り、させてもらっていいかな」
声を出さずに、首だけを縦に振った。祐一さんは私の横で静かに手を合わせた。
「キリスト教みたいだけど、お祈りの仕方ってこれでいいのかな」
目を開けた祐一さんは、いつもと変わらない笑顔で、私に尋ねてきた。
いつもは私を笑顔にさせてくれるそれが、今は酷く、痛い。
「………どうして、ここがわかったんですか」
「悪いとは思ったけど、佐祐理さんのいえに寄らせてもらってね。
爺やさんにここの場所を聞いたよ」
即答だった。きっと、何通りも私の言葉を考えていたんだろう。この人らしい…。
「いいところだなぁ」
そういって、祐一さんは岸壁の方を見た。ここからは海が見える。
とても綺麗で、静かな海が。
海は来たかった場所だから。一弥と一緒に、来たかった場所だから。
「………覚えていてくれるとは思いませんでした」
そうだ。ここは忘れられた場所。私以外、ここへやって来るものはいない。
父も………母も…。
「酷いな、忘れるわけないだろ。
佐祐理さんにとって、舞と同じくらい大切な人のことなんだから」
だから、一度話しただけのこの人が、一弥の事を覚えていてくれた事が、
とても嬉しくて、でも今は悲しかった。
「よしっ!」
祐一さんはパンッ!と手を打つと、本当に、本当に何もなかったように、
「墓参りは終わりだ、そろそろ帰ろう。佐祐理さん」
「………ごめんさい」
けれど私にはその手を掴む事はできなかった。
祐一さんの顔が変わった。いつものふざけた表情は何処にもない。
「………帰れない理由でもあるのか?」
「帰れないんじゃないんです。佐祐理はもう帰らないんです」
心に決めていた事だ。三週間前、アパートを出たときから。
もうここには戻らないって。
「………舞も待ってるのに?」
「…っ!」
嫌だった。それを言われるのが。怖かった。ずっと怖かった。
今でも思い出す。出掛けに見た、舞の笑顔が。
それの顔が、涙に濡れるのが怖かった。
けど、あの笑顔があったから、私は一人になることを選んだんだ。
「………何で、急にいなくなったりしたんだ?」
きっと、私の顔を見たときからそれを聞きたかったんだろう。
…やっぱり、祐一さんは優しい。こんなときにだって、
こんな事をした時だって、私の事を気遣ってくれるのだから。
けれど、今はその優しさが痛かった。
「いつでしたっけ………佐祐理が一弥のことを話したの」
「俺が高二の時だな。もう四年になる」
「そんなに………足ったんですね」
なんだか懐かしくなった。こんな時なのに、あの頃の事が酷く懐かしく思えた。
「舞と、そして祐一さんと暮らしたこの四年間。佐祐理はとても幸せでした」
そう、私は幸せだった。からっぽだった私に、舞の存在は光のように見えた。
舞といれば、私は佐祐理に戻ることができた。それが全てだった。
祐一さんと会った。祐一さんは舞の失われた何かを取り戻してくれた。
それが私にも、嬉しかった。
高校を卒業して、一緒に暮らして、私達の関係が別の物になっても、
それは変わらなかった。
むしろそれは、加速しているように感じられた。
私は、幸せの中にいた。
自分の犯した罪も忘れて。
297 :
おかえり(4/8):02/03/09 22:41 ID:BMZe0wB/
「あの時、話しましたよね。佐祐理は決めたんだって。
一弥にしてあげられなかった事を、舞にしてあげるんだって。
この子を幸せにしてみようって、決めたって」
祐一さんはすぐに思い出してくれたようだ。私があの時話した事を。
「舞と出会って、祐一さんに出会って、一緒に暮らして………。
舞は、どんどん変わっていきました。
時間はかかったけど、舞は私の知らない素顔を、本当の笑顔を取り戻してくれた。
それが嬉しかった。そして幸せだった」
でも、
「でも、佐祐理は間違っていたんです。私がしたことなんて何もなかった………。
舞が笑ってくれたのは私の力じゃないんです。
みんな………みんな祐一さんのおかげなんです」
「それは違う!」
祐一さんが一際大きく叫んでいた。あたりの空気が震えるほどに。
でもそれは、私の心には響いてこなかった。
「違いませんよ、祐一さん」
今はただ、その想いが虚しく、憎らしくも思える。
「佐祐理は、二年間も一緒にいたのに、
舞の背負っているものに気付いてあげられなかった。
舞を笑わせてあげることができなかった」
思えば、私はこの人を憎んでいたのかもしれない。
「けど、祐一さんは私の気付かなかったことを、
舞の忘れてしまった心を取り戻してくれた」
私のできなかったことを簡単にして見せたこの人を。
憎みながら、舞と同じくらい好きに。
「舞が心を忘れたのは、俺のせいだ!
舞の事を知っていながら忘れてしまった、俺のせいだ!」
前に聞いた、昔話。舞と祐一さんの昔話。
綺麗で、とても悲しいその話を思い出す。けれど。
「でも、祐一さんは取り戻す事ができたじゃないですか。
なくしてしまった物を、取り戻す事ができたじゃないですか。
………けれど、私にはそれができなかった」
取り戻す事ができない物。たった一人の弟。
失ったものを埋めるため、舞を見た。それは、なんてあさましい行為なのだろう。
「それに気付いた時、思い出しました。やっぱり佐祐理は、頭の悪い子だって」
舞は知っていたかもしれない。私の思いに。
「なんて悪い子なんでしょうね。自分のした事を忘れようとして。
自分の罪を忘れようとして。罪から………逃れようとして」
それでも、舞はそこにいてくれた。私の勝手な想いを受け入れてくれた。
結局、舞を救おうとして、救われていたのは私なのだ。なんて滑稽なのだろう。
「………なんで佐祐理さんが悪いんだよ」
押し殺したような声が聞えた。罪にまみれた私を、悲しむ声が聞えた。
「もう、もう、佐祐理さんに罪なんかない筈だ!
はじめから佐祐理さんが背負わなきゃならない罪なんてなかった筈だ!」
ああ、まただ。またこの人は私の事を思ってくれている。
「これ以上苦しむ事なんてない筈だ!」
私の罪を悲しんでくれている。今は何よりそれが辛いのに。
「祐一さん、佐祐理はもう戻れません」
あそこには、舞がいるから。祐一さんがいるから。
二人ががいれば私はまた逃げるから。
一弥の事を忘れて、幸せに、溺れてしまいそうだから。
「心配しないでくださいね!佐祐理は死んだりしませんよ」
そして生きる事が、私の変わらぬ罰だから。それは、あの時に知ったことだ。
「………さようなら。祐一君」
ずっと言いたかったその言葉を言って、祐一君の横を通り過ぎた。
酷く、腹が立った。
こんな理不尽な事があるだろうか。
こんなにも、こんなにも人を想う人が、何故こんなに苦しまなきゃならないのか。
人を想うからこそ、苦しむのか。
だったらこんなにも酷い仕打ちはない。
そして同時に憎く思えた。
佐祐理さんがこんなに苦しんでいるのに、どうしてこいつは何も言わないのか。
どうして佐祐理さんを許そうとしないのか。
どうしてこいつはここにいないのか。
悲しむよりも、大きく、怒りが俺の心に溢れていた。
そして、気付けば。
ガッ!
「!」
墓石に自分のこぶしを打ちつけていた。許せなかった。
誰にも罪がないのが解っていても許せなかった。
躊躇うことなく、何度も、何度も殴りつけていた。
「やめてっ!」
佐祐理さんの叫ぶ声が聞えた。それでも手を止めはしない。
「やめて下さい祐一さん!」
佐祐理さんが俺にしがみついてきた。それでも俺はやめない。
「お願いです!やめて!やめて下さい!」
手の皮が裂け、鋭く痛みが襲ってきた。それでも。
「おねがい!やめて!やめてぇ!」
佐祐理さんの声は一際大きくなる。それでも。
「やめてぇ!祐一君やめてぇ!」
手を止めた。「祐一君」と呼ばれ、我に返った。
「おねがい……祐…一君…やめて…」
佐祐理さんの声には、何時の間にか涙が混じっていた。
かすれるような声で、俺にしがみついていた。
俺はしばらく、そのまま立ち尽くすことしかできなかった
「舞が………起きないんだ」
俺は唐突にそう告げた。ビクッと、佐祐理さんの肩が震えた。
最後まで言うまいと思っていたけど、この人には解ってもらわなきゃいけない。
佐祐理さんが、気付かなかった事。俺達に必要な、大切な事。
「三日前から、急に起きなくなったんだ。
佐祐理さんがいなくなって、舞はずっと探し回ったんだ。
ずっと眠らなかった。何も食べなかった。
佐祐理さんがいなくなってから、ずっと休まず探し続けたんだ」
佐祐理さんが顔を上げた。その顔は、ただ驚きに支配されている。
「俺は、何もできなかった。ただ舞の横で、座っていることしかできなかった」
徐々に佐祐理さんの顔が崩れてきた。悲しみ、戸惑い、恐怖。
いろんな感情が混ざって、心のうちを読み取ることはできなかった。
「佐祐理さんは、なにもできなかったって言ったけど、違うよ。
舞は、佐祐理さんがいたから舞でいられたんだ」
佐祐理さんが泣いている。声もあげずに泣いている。
「俺達は三人だ。三人だから幸せでいられる。
誰か一人が欠けたって、幸せになることなんてできない」
ほんとはこんなことは言いたくない。佐祐理さんに涙を流させたくない。
「舞は佐祐理さんからいろんなものをもらった。
それは舞だけじゃない。俺も同じだ」
そして、それはきっと佐祐理さんも同じ筈だ」
けど、言わないと、前に進めないから。一緒にいられないから。
「俺達は、きっと何かが欠けている。
前はそれでも一人で生きていけたかもしれない。けれど、知ってしまったから。
幸せのなかで生きることを知ってしまったから。
………誰かの笑顔と共にありたいとおもったから。
だから、舞も、佐祐理さんも、そして俺も」
一緒にいたいから。
「俺達は一緒にいなきゃいけないんだ」
暗い、ずっと暗い。
ここはいや。一人だから。
でも外はもっといや。悲しみが、溢れているから。
お母さんがいなくなって、私には何もなくなった。悲しかった。
けれど、あの子がいてくれた。あの子といると幸せでいられた。
でも、あの子もいなくなった。
また悲しかった。悲しすぎて、笑い方を忘れてしまった。
でも、また会えた。大切な人に、また会えた。
お母さんの匂いのする、大切な人に。あの子も帰ってきてくれた。
三人でいられれば、私はもう何もいらなかった。
けど、それももう壊れてしまった。あとは深い深い悲しみだけ。
前よりもずっと深い悲しみだけ。なら、それなら。私は一人でここにいる。
三人でいられないのなら、私は一人でいる。
悲しいのはもう、嫌だから。
声がした。懐かしい声が。もうずっと忘れていた気がする。
光の向こうに、大切な声がした。あの子の声と、お母さんの匂いのする声。
私は向こうへ行きたかった。でも、いけない。
向こうは怖いから。光の向こうはきっと怖い。
また失うのは嫌だから、失えば悲しいから、私は行かない。
私は気付いた。二人が泣いている。大切な人が泣いている。
泣かないで、欲しい。二人が悲しむのは嫌だから。ここにいても悲しいから。
笑って欲しい。笑っていられれば、私達は幸せだから。
笑っていて欲しい。
笑っていて欲しいよ、佐祐理。
私は目を開く。一緒にいるために。私達が一緒にいられるために。
―――――――――――――――――――お帰りなさい、佐祐理。
>>294-301 全てが終ってからのカキコでござる。
もう少し早くあげられればなぁと。
けれど、悔いはない。
様々な形で最萌に支援を送り続けてきた
支援者の一人に加われて、それを誇りに思う。
そしてこの戦いを人々の心に刻むために。
全ての支援者に。
感謝を。
コノスレモウチドメカナ.....
イママデゴクロウサマデシタ to コノスレトスベテノSSシエンシャ
304 :
名無しさんだよもん:02/03/10 16:58 ID:DI0TSYoe
トーナメントが終わったんだからとっとと削除依頼だせよ。
UZEEE!!
↑
といいつつ、ageる奴がいる罠。
ほっとけば、さがりきって、勝手に倉庫行きになるのに・・・・。
というわけで、
−−−−−−−−−−終了ですぅ−−−−−−−−−−−−−
>>304は両方で煽ってる。
放置よろ。
>54 :名無しさんだよもん :02/03/10 16:57 ID:DI0TSYoe
>トーナメント厨がいなくなって清々したと思ったが・・・・・・
>結局は寂れてるのね(;´Д`)
307 :
69:02/03/10 20:07 ID:dA08FiNZ
>>230 遅レスですいません。
感想ありがとうございました。
そう言って戴けると冥利に尽きます。ホントに。
俺は例のトーナメントから支援目的でSS書き始めたので、
「他の作品」と言って紹介できるモノはあんまりないのです。
支援SSの場合はプロットを練るより、
未プレイの方の目を引くような短いシチュが多いですし(長いの書く時間もないw)。
他の人の二次創作のこともあんまり知らないです。
トーナメント系スレで“<続く“で繋いで“<FIN”で締めてるレスを拾うと、
だいたいそれで全部かな(同じ書式で書いてる人は居るかも)。
東鳩だと、前スレでひとつ短いセリ綾があるくらい。
基本的にホワルバ-&千鶴モノなので…。
役に立たないレスで申し訳ない。
329 :名無しさんだよもん :02/03/10 22:46 ID:iWgRk0+M
あと、自称「職人」厨房。
ヘタレな奴ほど饒舌ですげー萎えた。
いい職人は、さっと現われて、ぽっと作品落として去っていく。
ヘタレは投稿する前に「書こうかな〜」「今、書いてます」などとのたまい。
投稿した後には「〇〇な思いをこめて書きました」などとのたまったり、言い訳をヅラヅラと書き連ねる。
そして、ヘタレ「職人」同士での傷を舐めあうような馴れ合い。正直、吐き気がする。
最萌が終わっても、ネタがあると字を書いちゃう罠。
なにがしだよもんさんへの二次小説、
『緑の絨毯』 全4レスです。
「あ、なにがしさ〜〜〜〜ん!」
すっかり片づけが済んだ最萌会場。
残すのは、真ん中のリングと、このピアノのみ。
最後に上ってきたこの高台。
そこで、リングのそばを歩いているなにがしさんを見つけた。
頭を左右に振って声の主を探すなにがしさん。
「こっちこっち〜!」
あたしの呼びかけにこちらを向いて、にっこりと微笑み、
その笑顔のまま、なにがしさんはこの高台へとやってきた。
1/4
「なにがしさん、おつかれさまでした」
「詩子さん、おつかれさまです」
小さく下げる頭、
それとともに柔らかに舞う金の髪、
そして漂う花の香り。
なにがしさんの趣味のよさをうかがわせる。
あたしはその香りに包まれたまま口を開く。
「なにがしさん、本当におつかれさまでした。
いつも感想、楽しみにしてました」
「ありがとうございます」
そう、なにがしさんは最萌の間ずっとがんばっていた。
支援物資へ感想、ネタふり、スレ建てお手伝い、
その名前を見ない日は全くなかった。
「でも、これでしばらくはゆっくりできますね」
二次小説を見てしまうとどうしても感想を書きたくなる、
そんなこと言っていたなにがしさん。
最萌のときは数が多くて追いつくのに大変そうだった。
でも、それも終わった今、ゆっくりと見ることができると思っての言葉。
「そうなると思っていたのですけど…」
ちょっとうつむいてつぶやくなにがしさん。
あたしはその顔を覗き込む。
2/4
「実は3月いっぱいで来られなくなってまうんですよ」
「ええっ!?」
その言葉にあたしはちょっとショックを受ける。
昔から、いつも二次小説あるところに現れて、
的確な感想を残していくなにがしさん。
その、なにがしさんが3月末で来られなくなる。
「ど、どうしてですか?」
「私の所属する『勝手に感想委員会』の代表として、
4月から英国へ研究のため留学することになったんです」
「留学!?」
「はい。二次小説などの感想を自分流で書いていたのですが、
やはりそろそろ限界を感じていたのです。
そんな時、英国の本部から連絡がありまして、
こちらで少し研究をしてみないか、と言われまして」
「それってすごいじゃないですかっ!」
思わず出てしまう大きな声、
びっくりして目を見開くなにがしさん。
あたしは頭を下げてあやまる。
「いいえ、だいじょうぶですよ」
でも、なにがしさんはたおやかに答えてくれた。
3/4
「いつかは戻ってくるんですか?」
あたしは一番気になることを聞いてみる。
けれども、なにがしさんはあいまいに微笑みを返すだけ。
「そう…ですか…」
聞こえないように小さく呟いてから、
あたしもなにがしさんに微笑みかける。
悲しくならないように、気にさせないように、少し無理な微笑み。
そして、それをごまかすようにピアノへ向かい、座りなおす。
「なにがしさんへ一曲…」
「ありがとうございます」
「いいえ、今までお世話になったお礼にしては安すぎますけど…」
「そんなこと、気にしないでください」
優しい、なにがしさんの言葉を受けながら、
あたしはピアノを弾き始めた。
遠い国の、緑色の絨毯を浮かべながら。
音楽はこちら。
イギリス民謡『グリーンスリーブス』です。
http://ichigo.sakura.ne.jp/~go/img/img-box/img20020311113538.jpg 4/4
313 :
230:02/03/11 11:50 ID:KNTc880s
>>307レスどうもです。
この作風好きだな〜ってプリントアウトしたのをパラパラ捲っていたら
やはり弥生さん支援<Waiting for her>の方でしたか。
御久しぶりです、共に千鶴戦を戦った弥生支援です。なんか妙な運命を感じてしまいました。
このセリオSSや弥生さんSSのように貴方の作品は妙にココロに残るものがあってとても好きです。
トーナメントは終ってしまいましたけど、これからも書き続けてください。ではでは〜
後会スレにあった、
霞さんとどじっこさんの画像から、
二次小説を書いてみました。
『がんばれ、どじっこ!』 全3レス。
「ふえ〜ん、また失敗しちゃいましたぁっ!」
最萌会場リングのあたり、
少し大きめな泣き声が響き渡る。
午後11時から始まる集計の時間の風物詩、
どじっこが集計マシンの操作に失敗して泣き叫ぶ声だ。
「ほらほらっ! 泣き叫ばずにきりきりやる!」
「ふえっ? 霞さん、ごめんなさ〜い!」
しかし、泣き声があがるのも一瞬のこと。
再び集計マシンを操作してゆくどじっこ。
やがて集計は無事終わり、ファイナルアンサーを出して、
今日の仕事は終わりを迎えた。
今日も平和な試合、審議になることもなく、
ほかの集計人たちは笑顔で控室へと戻ってゆくけれど、
ただひとり、どじっこだけは浮かない顔をして歩いていた。
胸には集計マシンを抱えて。
1/3
「それじゃ、おさき!」
「おつかれ〜!」
控室に戻り、軽く挨拶を済ませると、
みんながみんな、それぞれの行動へ移る。
早々に自宅へと戻る者。
次の試合の様子を見に再び会場の中へと戻る者。
そして、表の整理のために控室に残る者など。
いまや、控室に残るのは、最後のまとめをする霞と、
まだ、集計マシンを胸に抱えるどじっこだけだ。
2/3
「霞さん、今日もご迷惑をおかけしてごめんなさい…」
突っ立ったまま、胸にマシンを抱え、小さな声で呟く。
「ん? あぁ、そのことか。気にするな。もう慣れた」
「ええっ!?」
さらりと言う割りにきつい言葉、
どじっこはショックで大きい声を出してしまう。
霞は慣れたように耳をふさいでやり過ごす。
どじっこは落ち着くと、小さな声で呟きだした。
「やっぱりあたしって、どじですよね? どじっこですよね?
みなさんにご迷惑をかけてますよね…」
だんだんとその声は涙声へと変わってゆく。
霞は、やれやれと言う顔をしてどじっこへと近づいてゆく。
「たしかにどじっこだけど、きちんと毎回結果を出しているじゃないか。
更に言えば、そのどじの回数も減っている。みんなも期待してるぞ」
少しの微笑みで霞はどじっこの肩を叩く。
「は、はいっ! がんばりますっ!」
そして、どじっこは集計マシンを所定の場所に戻し、
かばんをかかえて控室の扉を開けた。
「それでは、霞さん、おつかれさまで〜す!」
「あぁ、おつかれ。転ぶなよ」
「は〜い、気をつけま〜す!」
パタン、と言う扉の音とともに、元気な声は遠くなってゆく。
霞はその扉をずっと見続けていた。
優しさにあふれた、その瞳で。
敬称略、ご了承ください
それと、いろいろな意味でごめんなさい。
3/3
317 :
名無しさんだよもん:02/03/11 19:49 ID:Wg3kIf2m
>312
堂々と馴れ合いSSを書いてる馬鹿。
氏ね。
詩子さん氏
>317のような事を言う気はない、と前振りをしておいて。
諫言。
書きたい気持ちは分からなくもない、けれど
流石に感想スレ見ないと訳判らないものは感想スレに投下した方がよいかと・・・。
まぁ、もう流石に書かないだろうけど。
319 :
307:02/03/12 01:02 ID:h5tcEweS
SS雑談許容スレとはいえ、
終了後にやってるとウザがられてしまいそうなので短めに…。
でも、チョトだけ真顔で戯れ言吐かせてつかーさい。
>313
あのときの方でしたか…。
マイナーキャラの良さを引き出せるというのは、支援SSの本懐だと思います。
俺は文章支援の取りまとめをしてましたけど、
あの日の23時間は異常な密度がありました。
個人的にですが、あの試合は特に思い入れが深いです。
試合中はある意味酔ってました(w。酔えた。
こういう二次創作があるんだなってあのときに知りました。
俺もこれでお暇します。あと、このスレに感謝を――。
んでは、どこかのスレでまた。
落ちると困るのでメンテ
321 :
名無しさんだよもん:02/03/14 01:45 ID:5rKaPGmg
>>312 あの〜、確かこの人の茜の小説って浩平との絡みを書いたやつってありましたっけ?
>>321 対みさきさん戦で短いシチュなら書いたけど、小説はないよ。
325 :
321:02/03/16 01:23 ID:XEr9eD18
>>324 ご本人ですか。どうもありがとうございました。
ところで、
>>317の書き込みについてどう思われます?
「氏ね」とまでは言いませんが、あのSSはちょっと・・・と思いました。
いきなりこんな事を書くのは不躾だと思いますが。
サロンウザ
>>325 そーゆーもんかな……
っつーかさ、このスレどーすんの?
自分的には最萌も終わったんだし、このまま放置でええんかと思うけど。
あの程度のSSで噛みつく所をみると、
コテ叩きしたいのか?とかESPしたくなっちまうんだけどw
どうここを利用したいのかサパーリだ…
当たり前だけど上げる奴いるんで一応
答えはsage進行でよろしく〜(というとageる奴……消防みたいだからやめれw
>>325 ほかの人が感謝の言葉を述べているのを見て、
あたしなりの方法で感謝の言葉を述べたまでだけど、
ものがものなだけに、色々言われても仕方ないと思ってるよ。
つか、あんなので喜ぶ奴いるのかね?
俺だったら自分が出演しているSSなんて痛すぎて直視できない。
>>329 止めとき、言うだけムダだよ。
自分の歪んだ愛が必ず受け入れて貰えると信じてるストーカーみたいなものだから。
しかし送られた方も困惑しただろうね。
なまじ最萌で一緒だっただけに無下にも出来ないし。
あたりさわりの無いお礼レスだけ付けとけばいいか…とか思われてたのではと憶測。
SSスレで馴れ合いが問題となり、分裂した時よりも酷い馴れ合いだ。
こりゃたしかに分裂もするわな(藁
a
実質的最下層記念カキコその2
335 :
名無しさんだよもん:02/03/18 03:08 ID:qVHHNMIm
>317
馴れ合い馴れ合いといいながら何もかけない愚か者、春中はお家へカエレ
そういう人が春季限定でしか出没しないんだったら、SSスレは分裂してません。
まあ、馴れ合いの方もほどほどに。
馴れ合い馴れ合いうるさい人々はもしかして、駄スレメンテマンの人々?
もう存在意義の消滅したスレなんだから、書き込まないで天寿を全うさせたれや。
馴れ合う勇気も無くて構ってもらいたいのはよくわかるけどさぁ。(w
>338
オマエモオレモナー
馴れ合うためにはに勇気がいるんだね・・・(w
しずかなこかげで
いまかいまかと
ことりのかえりをまちわびる
さんざん気をもませられ
さあ帰ろうかと思ったそのときに
りりしくもやさしく
さがしもとめていたあの声が
さとの谷にこだまする
そうしゅんの空にこだまする
>340
邦画スレでそのID出せませんかねぇ(w
更に言うなら映画化を望むギャラクシーエンジェルスキーの前とか。
よく見ると下一行が訳分からん発言だ……(;´д`)
あと少しだけ、メンテ
まだ見ていない人のために、メンテ。
>>187-196 緒方理奈引退から2年後の物語。幾つもの終わりと始まりとが、複雑に絡み合ったお話。
計算されたプロットがとても興味深い作品だった。
久しぶりの再会は、和解ではなく、兄妹としての関係の終わり。
ビジネスパートナーとしての再出発を告げるものだった…というものだが、この物語は
それだけではない。
新しい関係に向かおうと決めた二人は、別れ際、ふと思い出の欠片につまずいて、
兄妹の間柄に戻ってしまう。
そして、かくも長き断絶を生む原因となった冬弥…二人にとってはタブーなのだろう…
のことを話題にするのだ。
「冬弥に逢ってみる?」と提案する理奈に、「彼は面白い」と不器用に肯定する英二。
二年の月日がもたらした変化に今更ながら気付いた二人の戸惑いがよく伝わってくる。
ここからがとても素敵で、技術を感じるのだ。
目と目で意志疎通出来る二人は、かつてのように、歌い手と演奏者になる。
でもそれは、兄妹としてではなく、プロ同士のドライな関係を証明するためのテスト。
しかし…そこで英二が選んだのは、兄妹の絆そのものの曲。
離れ行く理奈を音楽で抱擁しようとする英二の気持ちに、理奈は妹として涙を流す…。
この、突き放しては引き戻し、振り解こうとして抱き留め、振り切ったかにみえて振り返り…
という一連の描写が味わい深い。
締めくくりも良い。緒方兄妹の関係は、結局元に戻らないのだ。
ラストの一言は、見交わしただけで通じる親しさを介して目で告げられた、永遠の決別の言葉。
涙にくれながらも、兄のためにではなく、冬弥と自分のために歌うと独立宣言した理奈。
いま、彼女の中心にいるのは、英二ではない。それは、見交わした瞬間、英二にも分かった筈だ。
この再会と別れをミックスにした技ありの構成に、うーん、しびれたにょーっ!
そろそろ、しばしのお別れでしょうか?
思い出をありがとう