●私は魔物を狩るものだから(1/8)
3人で帰宅中…
「あははー、祐一さんったら。それはミルクボックスじゃなくてミルクタンクと訳すんです」
「そうだったんですか…?」
「…馬鹿」
などと朗らかにおっぱいの英語の翻訳談義をしていると突然舞が剣を抜き後ろに向き直った!
「なんだ、どうした舞」
遅れて祐一と佐祐理も後ろを向くと中国の人民服を着た女の子が手にヌンチャクを持って立っていた。
「さすが、魔物を狩るものあるね。気配を消して近づいたつもりあったが…」
「…誰?」
「自己紹介する前にその得物をしまうよろし。私は襲ったりしないある」
殺気が消えたので、舞は剣を鞘に収める。
●私は魔物を狩るものだから(2/8)
「私は中国から来たミンミンという物である。日本に巨大な魔の気が感じられたので来たある」
「中国から来た〜?」
祐一が思わず声を出す。
「中国人って本当に語尾にあるをつけるんですね」
佐祐理がその言葉を発するとミンミンの目が一気に怒気を含んだものになった。
「おまえはイチイチ突っ込んじゃいけないところを言うね。現実無視してでも短い字数でキャラを立てようという作者の努力がわからんのか!」
再びミンミンが殺気を発すると舞が再び剣を抜いた。
「ま、まあまあ。とにかくそれで俺らに何か用があるのか?」
「用があるのはその剣を持った女だけある。私1人では少しきついので誰かに助けを頼もうと思ったらその女を見つけたある」
「…ようするに舞に魔物退治を助けろと」
「そういうことね」
「それが人に物を頼む態度かよ…。なあ、舞」
「私は魔物を狩るものだから…」
そう言って舞はミンミンに近づいていく。
「物分りがいいある。それではこれから裏山へいくある」
2人はそのまま去っていった。
「い、行っちゃいましたね」
「あはは〜。なんか変なことになっちゃいましたね…」
祐一と佐祐理は呆然と2人の去った方向を見つめる。
「…帰りましょうか」
「そうですね」
●私は魔物を狩るものだから(3/8)
それから1週間…。
「祐一、帰りにイチゴサンデー食べていこうよ」
「おまえは、クラブが無い日といえば必ずそれだな」
なんてなことを話しながら祐一と名雪が歩いていると、目の前に見覚えのある女性が1人で歩いていた。
「あ、あれって佐祐理さんだよね?」
「あ、本当だ、佐祐理さーん」
佐祐理が笑顔でクルッ振り向いた。
「祐一さんと名雪さん」
「今日も舞は裏山ですか?」
「ええ、なんか一向に減らないらしくて…」
「あいつ、昼休みも学校抜けて裏山に行ってるし、いったいどんなものと戦っているんだ?」
「え、祐一何のこと?」
「おまえは知らなくていい」
「ブーッ」
「この前差し入れでも届けようかと思ったのですけど、危険だから来ちゃだめだって…」
「しょがない奴だな〜。あ、それじゃあ、これから一緒に喫茶店に行きませんか?」
「行きましょうよ、佐祐理さん」
名雪も同調する。
「ええ。お誘いはありがたいのですけど今日は用がありますので…」
「あ、そうですか。それじゃあ家まで送りますよ」
「いいです、いいです。全然道の方向違いますし。じゃあ、さよなら」
笑顔で手を振る佐祐理だがその顔は心なしか曇って見えた。
「佐祐理さん、寂しそうだったね」
「ああ…。」
(舞を怒らないといけないな…)
●私は魔物を狩るものだから(4/8)
翌日の放課後、舞が裏山に向かおうとする道中で祐一が待ち構えていた。
「………………」
「今日も狩りに行くのか?」
舞は黙って頷く。
「魔物を狩らないと何がどう具体的に危なくなるんだ?」
「わからない…」
「わからない!?」
「でも私は…」
「魔物を狩るものだからって言うんだろ? それも大事なことかもしれないけど、おまえ最近佐祐理さんの寂しそうな顔を見たのか?」
「佐祐理が?」
舞の目を大きく開ける。
「そうだよ。おまえが構ってやらないから佐祐理さんは一人ぼっちだ。おまえがかつてそうだったようにな」
舞は祐一のその言葉を聞いてうつむく。
「まあ、俺がいえるのはそれだけだ。邪魔したな」
そう言って祐一は裏山と逆方向に歩き出した。
「佐祐理が1人・・・」
舞は祐一の後姿をジッと身ながら呟いた。
●私は魔物を狩るものだから(5/8)
「あははー」
「佐祐理さん、今日はいつもよりも明るいですね?」
例によって弁当を食べているのは二人だけだが、佐祐理は機嫌よさそうだ。
「ええ、舞が日曜日映画に行かないかって誘ってくれたんです」
「え、舞のほうからですか?」
「ええ。こんなこと初めてです」
(あいつ…)
「よかったら、祐一さんも一緒にきますか?」
「あ、いいです、いいです。2人だけで楽しんできてください」
(行きたいけどそんな野暮なマネはできないよな…それに…)
目の前にある佐祐理の幸せそうな顔を見れば祐一はそれだけで満足だった。
●私は魔物を狩るものだから(6/8)
「プルルル…」
「祐一、電話だよ」
「誰から?」
「佐祐理さんから」
「え?」
今日は映画にいってるだけだったはずだけど…。訝しげに祐一が受話器を耳に当てる。
「もしもし、電話変わりました…」
「祐一さん、舞が来ないんです…」
「え?」
「自宅の方にも電話したのですけど昨日の夜からいないって…」
「昨日から!?」
「どうしよう。私、舞いに何かあったら…」
「わ、わかりましたから落ち着いてください。とにかく今すぐ舞を探しに行きますので佐祐理さんは自宅で待機していてください。連絡があるかもしれないので」
「わかりました…」
(あいつ…)
●私は魔物を狩るものだから(7/8)
祐一が例の裏山に猛ダッシュで向かうと、そこには案の定、剣を振り回した舞がいた。
「舞、どういうつもりだ!」
「…待って、これで終わる!」
舞が最後の力を振り絞って思いっきり剣を振るう。すると、何かが光だし瞬いて消えた。
「…終わった」
「終わったじゃない!」
そのまま祐一が舞の胸ぐらをつかむ。舞は何の抵抗もしない。
「おまえ、佐祐理さんの気持ちを何処まで踏みにじれば気が済むんだ!」
「…ごめん。どうしても抜け出せなくて」
「ごめんじゃない!」
「……………」
「もう、いいよ。おまえは良くわからない魔物を狩る方を取った。それだけだ」
「あ…」
祐一はそう言って去っていった。
「私は…」
「舞、助かったある」
近寄ってきたミンミンに振り向こうともしない。
「舞…?」
「私はただ…。偽物じゃなく本物の魔物を狩れば…あの時のことも無駄にならないと…。祐一も認めてくれると…」
「舞…」
●私は魔物を狩るものだから(8/8)
翌日の昼休み…。
祐一は複雑な気持でいつもの踊り場にたどり着いた。
「佐祐理さん…」
佐祐理は1人たたずんでいた。
あの日、そのあと祐一は佐祐理の下に向かい舞のことを話した。
佐祐理はただ1人寂しく「でも、舞がやりがいのあることを見つけたから…」としか言わなかった。
「佐祐理さん、あのお弁当…」
「ごめんなさい」
「え?」
「今日は作ってこなかったんです」
(そこまで追い詰めたのか?)
「クソ、舞め!」
祐一はそう叫んで壁を叩いた。
「あ、ちがうんです祐一さん。作ってこなかったのは…」
「…祐一」
階段の下から声が聞こえたので振り向いてみると俯いて舞が立っていた。
「その手…」
祐一が振り向くと舞が自分で作ってきたらしいお弁当を入れた重箱を持って表れた。その手は切り傷で一杯だ。
「私…、料理とかできないから、包丁も上手くいかなくて…。それでも、ミンミンが仲直りできるよう秘伝の味を教えてくれるというから、それで…」
「あはは、舞ったら…」
佐祐利は目に涙を溜めながら舞に近づいた。
「祐一…」
不機嫌そうな顔で自分を睨んでいた祐一の目をソット見る。
「腹壊さなきゃいいけどな」
「祐一…」
舞はそのまま祐一に近づき、軽いチョップを食らわしたのだった。
その後…
(。Д。⊂>>さゆり`つ(。Д。⊂>>祐一 `つ