葉鍵陸軍

このエントリーをはてなブックマークに追加
821伏龍の丘(2/9):02/03/16 01:23 ID:N+nA/zR4
「ああーーーーっっっ! もう、出撃したい出撃したい出撃したい! RRの連中を踏み
つけて蹴散らして殴り飛ばして、あの出っ歯の口に……」
「たぶん、七瀬少佐」
「!!!!!」
 突然、足下から投げかけられた声に、七瀬は十センチばかり飛び上がっった。
「わ、な、な、な……」
「今日は随分元気だね。今の気合いは七十五点ってところかな」
 のんびりと投げかけられた声の方を見る。そこには、草の上に寝ころんで、瞳を閉じた、
七瀬とは顔見知りの士官の姿があった。
 川名みさき―――階級は七瀬と同じ少佐。配置も七瀬と同じONE連隊、職務も七瀬と
同じ大隊長。要するに、彼女にとっては最も近しい同僚だった。そして同時に、先日の月
姫勢力との戦いで肩を並べて戦った『戦友』である。

「な、……え、えーっと、何をなさってるんですか、川名少佐?」
 動揺のあまり、とっさに『よそ行き』用の言葉が出てしまう。
「お昼寝だよ〜」
 みさきの方は特に何も気付かなかったように、眼を閉じたまま緊張感のない声で答えた。
「……こほん、あんた、部隊の再編で忙しいんじゃないの?」
 落ち着きを取り戻した七瀬は、みさきの傍らに腰を下ろし、素の彼女に戻って尋ねる。
「うーん、そうなんだけどね。わたしがいても、雪ちゃんの邪魔になるんじゃないかな」
「そう?」
「うん、雪ちゃんに任せといた方が良いんだよ」
「ふーん……」
822伏龍の丘(3/9):02/03/16 01:24 ID:N+nA/zR4
 みさきの副官、深山雪見大尉の顔を思い出す。月姫勢力との戦いでは、次々に的確な作
戦を立案し、味方を一度は勝利に導いた。その手腕には七瀬も舌を巻いたものだった。
 たしかに、彼女なら……そう考えたとき、

「みさきーーーーーーーーっ!」

 風に乗って、遠くから声がする。
「……ねえ川名少佐。今なんか聞こえなかった?」
「気のせいだよ」
「みさきーーーーーっ! 川名みさき少佐! ここにいるんでしょ、出てきなさい!」
「……やっぱりあんたのこと呼んでるわよ」
「目の錯覚だよ」
「みさきーーっ! あんたは完全に包囲されたわ! 今なら間に合うから大人しく原隊に
復帰なさい! ご両親は泣いているわよ!」
「……ねえ、あんたの副官、いくつ?」
「うーん、戦前の生まれって事はないと思うよ」
 そう言ってみさきはようやく体を起こし、声のする方に手を振った。
「雪ちゃん、ここ、ここ」
「みさきっ! あんた、なに仕事サボって……」
 母親の如くみさきを叱りつけようとした深山大尉は、傍らの七瀬少佐に気付き、慌てて
背を伸ばし、頬を赤らめながら敬礼する。
「し、失礼しました、七瀬少佐」
「あー……いいわいいわ、気にしないで。それより、何か用があったんじゃないの?」
 ひらひらと手を振りながら、七瀬は二人を促した。彼女にとって、二人の関係は決して
不快なものではない。自分と副官の広瀬の関係がそうだからだ。
823伏龍の丘(4/9):02/03/16 01:24 ID:N+nA/zR4
「あ、はい。……柚木大尉から報告が」
「うん、なにかな?」
 雪見の後ろを見ると、二人の士官が立っていた。一人は見覚えがある。確か主計士官の
上月少尉といった。小柄な身体で陣地を駆け回り、骨惜しみすることなく働く姿が七瀬の
印象に残っている。
 もう一人は初めて見る顔だった。いや、どこかで見たような気もするが……少なくとも、
以前のみさき大隊には居なかった。

「七瀬少佐、こちらは……」
「このたび、みさき大隊第三中隊隊長に着任しました、柚木詩子大尉です」
 ああ。その名を聞いて、七瀬は自分の既視感に納得がいった。確かに自分は彼女の顔を、
直接ではないが知っている。

 柚木大尉。浸透戦の名手。敵戦線を誰も反応できぬ間にすり抜け、混乱させ、崩し、後
続部隊の進路を啓開する。そして気付いたときには、彼女は敵の中枢に直撃を与えている。
 エロゲ国境での小競り合いで幾度と無く戦果を挙げて武名を馳せ、下級士官ながら新聞
などにも取り上げられたことのある有名人だ。七瀬も顔写真ぐらいは見たことがあった。

「戦車大隊を預かってる七瀬よ。よろしく、柚木大尉」
 互いに敬礼を返す。そして手を下ろすと、お互いに感じるものがあったのだろう、どち
らからともなく顔をほころばせた。
 詩子は、真昼の太陽のような明るい笑顔。
 七瀬は、彼女の部下達が、『どんな男よりも漢惚れする』などと密かに評する(大声で
言って病院送りになった折原某なる士官がいるとかいないとか)、爽やかな笑顔だ
824伏龍の丘(6/9):02/03/16 01:25 ID:N+nA/zR4
「……ん? 詩子ちゃん、どうかした?」
 詩子は少しの間躊躇していたが、やがて口を開いた。

「あの……大隊長、ひとつ、質問があるのですが……」
「なにかな? あらたまって」
「私の中隊の、前の指揮官のことなんですけど……」
「えっと……ごめん、雪ちゃん、誰だっけ?」
「確か……里村茜中尉、です。空き地の町守備隊の」
「はい、その、茜は今はいったい……どうしてるんでしょう?」
「うーん、わたしたちも特になんとも聞かされてない……よね?」
「はい、『空き地の街』に残留しているとは耳にはさみましたが……その他は何も」

 雪見の元には、当然旧茜中隊の戦歴や前隊長の茜の経歴などが届けられていた。が、戦
力の再編で多忙を極めていた雪見にしてみれば、正直な所たいした戦歴も残していない前
隊長は、『どうでもいい』存在だった。すっかり臆病癖のついた新兵達を見渡し、彼らを
そのようにした茜を口の中で小さく罵った後は、ひたすら彼らが兵士として半人前程度に
は戦え、そして生き延びられる環境を作るべく腐心し続けてきた。その間に茜の存在など
忘れてしまっていたのだ。

「柚木大尉と里村中尉は……?」
「幼年学校からの同期です。士官学校も……」
「そっか、わたしと雪ちゃんと一緒だね」
「…………」
 雪見は、茜の存在を忘れてしまっていたことを、少し後ろめたく思った。
825伏龍の丘(7/9):02/03/16 01:26 ID:N+nA/zR4
「……兵士達に聞いた方が早いんじゃないの?」
 七瀬が横から口を挟む。
「……聞いてみたんですけど、彼らもあまり詳しくは知らないらしくって」

 詩子は兵士たちに話を聞く際、茜が自分の幼馴染だということを隠したりはしなかった。
そんな事をする理由も無い。
 だが聞かれた兵士たちにしてみれば、茜が中隊の指揮も訓練も放り出して顧問団の本部
に入り浸り、『夜毎、違う男を戦車に引っ張り込んで・・・・・・』いた、などという話を、そ
の幼馴染に向かって出来る筈が無い。自然、当たり障りのない答えに終始する。

 そしてもう一つ、彼女達の知り得ない事情があった。お花畑電波国顧問団が正統リーフ
に送った同盟受け入れ文書。それは情報部を通じてKeyも入手していたのだが、そこに
里村茜の名があったことが上層部を混乱させていた。
 いや、混乱の理由は彼女の名ではなく、その後に続いた『所有』の二文字である。字義
通りに受け取れば、「里村茜は顧問団の奴隷として『物』扱いされている」と受け取れる。
これが事実であれば、彼女の人権を保障すべき政府として、Keyは断固たる対応をとら
ねばならない。それこそお花畑電波国に対する宣戦布告も辞さぬほどに。
 もっとも、「これは『所属』の誤記ではないか?」という穏当な推測が大勢を占めてお
り、即座に強硬姿勢に出るのも大人げないと思われた。しかしそれはそれで軍人の亡命と
いう問題になるわけで、軍機に触れる機会の無かった下級士官とはいえ、座視するわけに
もいかない。
 さらに旧茜中隊の兵士に事情を聞いたところ、茜が『ひらひらの妙な衣装を身につけさ
せられていた』だの、『どこへ行くにも顧問団の護衛がついていた』だの、『夜毎顧問団
の士官達の慰み者にされていた』だの、『いや、里村中尉の方から誘っていた』だのと証
言が乱れ飛び、最早何がなんだか分からない。
 そんなわけで、上層部は顧問団の文書について箝口令をしいた上で、顧問団に対し里村
中尉の処遇について簡単な問い合わせを行うに留めた。第一、下川対高橋の戦闘が始まろ
うかという時に、一介の中尉の問題に長く関わっていられなかったのだ。
826伏龍の丘(8/9):02/03/16 01:26 ID:N+nA/zR4
 そんなわけで、みさきや七瀬も茜の現状については知り得ない。
「うん、とりあえずわたしも気を配ってみるよ。上の人に聞けば分かるかも知れないし」
「はい……」
 詩子としても、それで満足するほか無かった。
「ほら、元気出しなさいよ。そのうちきっと―――」
 七瀬が詩子の肩を叩き、励まそうとした、その時。

「みさき、あれっ!」
「なに?」
 雪見が地平線の彼方を指し、声を上げた。
「あそこ……何か見える。……土煙?」
「なによ、それってまさか、敵襲?」
 雪見と七瀬の声を聞くや、みさきはすかさず地面にぴったりと身を伏せ、眼を閉じる。
「なにを……」
「しっ、黙って」
 問いかけようとした詩子をすかさず雪見が制した。澪と二人、呼吸さえも殺してみさ
きを見守っている。

(そういえば……)
 七瀬は、みさきの経歴について思い当たることがあった。彼女は少女の頃事故で失明し、
士官学校入学直前に手術を受けて回復するまでずっと、闇の中に閉ざされていたという。
(そっか、だから耳がいいんだ)
 納得して、七瀬も息を止めてみさきの結論を待った。
「……多いね……一個師団に届かないくらい。鍵自治区の方からこっちに真っ直ぐ向かっ
てくる」
「援軍?」
「退路を断たれたの?」
 詩子と雪見が正反対の推測を口にする。
827伏龍の丘(9/9):02/03/16 01:27 ID:N+nA/zR4
伏龍の丘(9/9)


「この音は……」
 息をのみ、みさきのさらなる観測を待つ一同。

「……うん、間違いない。味方だよ!」
「よっしゃーーーーーっ!!」
 七瀬がガッツポーズをとり、歓声を上げる。
「早く陣地に戻りましょう。援軍が来たなら、すぐに動きがあるかも知れない」
「うん、そうだね」

 みさきは身を起こし、丘の上へと駆け出した。
 彼女の戦友達が、そのすぐそばを共に駆けていく。



 雌伏の時は終わった。もうすぐ、鉄血の季節がやってくる。
828伏龍の丘(あとあがき):02/03/16 01:28 ID:N+nA/zR4
このスレにSSでは初参加させていただきました。

>792で描かれた、鍵軍団の出撃について肉付けしてみようとおもいます。このところ
スタッフ話ばかりだったので、久々のみさき&七瀬両大隊長にご出勤願いました。
これまでのみさき話を書いて下さった方、割り込み失敬。そちらの予定をぶちこわして
いなければいいのですが。
あと、軍事顧問殿。揚げ足取りのような内容を書いてしまってごめんなさい。端から見ると
あまりにも美味しい単語だったもので(w とりあえず鍵としてそちらに対しては「何だこ
りゃ」という戸惑いが先に立っている……といった感じです。問い合わせについては『所有』
云々は触れてません。文書を入手したとおおっぴらにするわけにはいきませんから。

それから、>792と微妙に食い違ってしまいますが、一個旅団では心許ないので鍵に援軍付け
ます。合わせて鍵の戦力はおよそ一個師団になる予定。柳川、高橋とちょうど三竦みになり
うる体制を作ってみようかと。

空き地の町への出撃自体はこの続きで書きます。今夜中……に書けたら良いなあ。

しかし、長いなあ……ごめんなさい。しかもこれでも半分ってのが……。


<おまけ>
 みさきは七瀬と並んで駆けながら、ぽつりと呟いた。
「ところで、七瀬少佐」
「なに?」
「最初の罵詈雑言は、ちょっとオリジナリティに欠けたね。五十八点ってところだよ」
「やかましいっ!」
829魔王の悩み:02/03/16 01:51 ID:CyikBlkB
 静かに、静かに、海底を進む黒い影がある。
 涙滴型の細長い胴体に、それとは不釣合いな小さな二本の翼をつけたその存在は、まさしく
海底に潜む魔鯨そのものである。
 攻撃型原子力潜水艦。この艦種は、50年近くにおよんだ東西冷戦のその期間の中、
世界を恐怖を支配する魔王のような存在だった。
 原子力機関の生み出す膨大なエネルギーは、この悪魔にほぼ永遠と同義語とも言える
潜行時間を与え、またその抵抗を極力軽減させる水中高速型船体ともあいまって、30ノット
以上の速力をこの艦に与えていた。
 世界の海のどこにでも出没し、世界を破滅に導く核弾頭を搭載したその存在は、魔王以外の
なにものでもい。
 リーフ海軍RR海底艦隊所属攻撃型原子力潜水艦「アビスボート」。それがこの魔王の名前である。
 そして今、この魔王の胎内では、その頭脳ともいうべき艦長が延々と悩み続けていた。
「……どうすればいいんだ」
 50代半ばの肩にRR大佐の階級章をつけた艦長は、不動の態勢で腕を組み、その頭皮の
目立ち始めてた頭をフル回転させながら何時間もの間、唸り続けていた。
 潜水艦の猫の額ほどしかない指令所では、彼を中心として、士官、下士官達が忙しく動き回っている。
 艦長は、部下達のの動きにまったく気を配ろうとする気配すらない。それほど彼の悩みは深いのだ。
 前回の定時連絡を行った際、それと同時に受信された葉鍵国の内情、艦長の悩みの元凶は、その
通信の内容だった。
 同志青紫大佐の戦死。それが彼を悩ます元凶だった。
 元々、「アビスボート」建造は青紫大佐が推し進めてきたプロジェクトであり、下川国家元帥が
進めてきた「ピース」プロジェクトとは対立状態にあったのである。結局は下川国家元帥が強行した
増税により、両プロジェクトはめでたく同時に進行することとなったが、それでもその間に起こった
対立は両者間に深い溝をつくっていた。
 それは両者が実戦配備された後も続き、現在までの間、双方は静かな戦い繰り広げていた。
830魔王の悩み:02/03/16 01:51 ID:CyikBlkB
 いや、「静かな」という表現は過ちかもしれない。時に両者の争いは音響魚雷の応酬にまで
発展したことすらあったのである。
 そのような関係であるからこそ、当然の如く「アビスボート」は下川派と呼ばれるグループからは
ある程度の距離をとっており、高橋上級大将の決起と同時に自らも下川国家元帥に対して反旗を
翻そうとする青紫大佐の提案は魅力的なものですらあった。
 しかし、それも高橋上級大将が決起ではなく独立という道を歩んだ為、完全に頓挫する形となり、
今まで通り表面上は下川国家元帥に従う素振りを見せている。
 それでも、まだ完全に諦めたわけではなく、青紫大佐とは定期的に連絡をとりあっていた。
 状況次第では、下川国家元帥に反旗を翻すチャンスはまだあると信じていたのである。
 しかし、それも青紫大佐の戦死という報により、完全に潰えることとなった。
 いや、それだけではない。今まで有形無形の下川派嫌がらせ、妨害工作に対して、「アビスボート」
をかばっていてくれた青紫大佐が死んだのである。中央の後ろ盾を失った非主流派将校達が
どうなるか、想像に難くない。
「……どうすればいいんだ」
 もう何度目になるかわからない艦長の虚しい響きを乗せたまま、「アビスボート」は静かに海底を
進み続けた。

 続く
831狗威 ◆inui/iEQ :02/03/16 01:55 ID:CyikBlkB
>>829-830 「魔王の悩み」

青紫大佐にチャンスを与えてみたりする(w
ていうか、空母を出したり、ヴァルキリーを出したりで
さっきから引っ掻き回してばかりですね、自分。ホント、申し訳ありません。
次はもっとおとなし目の話にしようかと思います。

>>816
たしかに地図はほしぃかも。
だれかサポートサイトを作ってくれたらありがたいな、と言ってみるテスト。
832名無しさんだよもん:02/03/16 02:02 ID:m/KhDoJR
そういえば阿鼻様のキャラって、ビル様しか知らないや。
どうすればいいんだ(w
833名無しさんだよもん:02/03/16 02:13 ID:lDFpAnS3
     ∧_∧ 
    < `ш´>    そういえば蝉丸君、さっきから前歯が疼くのだが
     (    )    誰か私の噂話でもしているのだろうか?
     |  |  |     ふむ、もてる男はつらいねー。
     (__.)_)
834軍事顧問:02/03/16 02:13 ID:Jx+GTqv8
>828 いつか柚木詩子がくるとは覚悟してました・・・でも茜を奴隷にしたわけでは無いので(汗)
しかし、リアリティーありますね。一般兵士の噂とは・・・

『茜の軍籍』の所有とキチンと表記しておけばよかったと後悔・・・と誤解を解かなきゃ為らない・・・ジーザース!
せっかく茜を過去の呪縛から解き放ったのに・・・中年と茜じゃつりあわないのか(泣)
地獄の戦場を見、傷つき戦争後遺症に苦しむ兵士達を優しく癒す天使としての茜・・・戦場に舞い降りた天使は再び奪い去られるのだろうか?

超先生助けて〜  泣いてばかりでも駄目だ・・・電撃作戦に切り替えようかな・・・
835青紫超参謀:02/03/16 02:27 ID:lDFpAnS3
         ∧_∧
         < `ш´>   微妙な立場だ。
       _φ___⊂)    葉にも鍵にも正統葉にもつけない微妙な立場
      /旦/三/ /|   ならば虚報で欺くのみ。RRの同士に伝達、ただし極秘で。
    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |   一般RR公安情報部より信憑性のある報告として、エロゲ国の一軍がリリーフ国国境に集結、
    | RR参謀  |/   近日中に侵攻の恐れあり……、これを中上大将を通じて国家元帥に知らせるのだ。
836青紫超参謀:02/03/16 02:34 ID:lDFpAnS3
リリーフ国って何だ……( ;´Д`)ハァハァ

とりあえず、脅威の優先順位で下川が何を恐れるかですな。
青紫は椎原のリーフ攻撃を知らないけど、嘘から出た真。本当に国境に集結していて
とるに足らない某軍事顧問にかまってられなくなったとか。
せめて旅団規模が張り付いてるだけなら、殲滅の危機はあるまい
837航空戦開始ー頼もしい味方:02/03/16 03:10 ID:Jx+GTqv8
砲兵射撃準備完了。ハボックによる空襲無し。麓のTOWU発射機もOKだ。山中にも使い捨て戦法のTOWUを設置・・・
ハリアーUの第一陣が敵陣へ切り込み攻撃をかけ、ハボック2機を撃墜しノーダメージ
AV8BことハリアーU+の性能はたいしたものだ・・・
既に第二陣が出撃・・・
準備は既に整っている・・・道端に埋められたサッチェル爆薬とC4・・・金属探知機では探知が難しい・・・ 
 敵前衛上空 ハリアーU攻撃機第二編隊
「フォード・スリー、レーダー上に敵機を確認・・・」
「オーケィボーイズ!ぶっ潰せ!」
  管制塔からの返答は一言・・・要するに全力で叩き潰せの一言だ。
「オーケー、イッツ・ショータイム!」
 攻撃機の空戦レーダーには敵航空機が映し出されている・・速度からしてヘリだろう。その距離30km攻撃開始にしてはまずまず・・・
「フォード・スリ-ー、フォックス・スリー」
「フォード・フォー、フォックス・スリー」
 ずんぐりとしたハリアーから白い航跡を引きながらAIM120通称アムラーム中射程AAMが発射される・・・最大射程は50kmだが、低速の航空機を狙う場合はこの距離でも十分命中する・・・
ハリアーU2機は一回の射撃で2発のアムラームを僅かな感覚で発射する・・・緊張した面持ちでパイロットはミサイルと目標の距離を見定め旋回を繰り返す・・・距離をある程度保てばまず撃墜されない・・・・
正し、超低空飛行の場合や、岩場、ビルの陰等に攻撃ヘリが待ち伏せている可能性があるので敵師団には近づかない・・・
838航空戦開始ー頼もしい味方:02/03/16 03:11 ID:Jx+GTqv8
「フォード・スリースプラッシュ!」
「フォード・フォー・・・外した畜生!第二撃に移る。」
 アムラーム4発で一機撃墜・・・効率は非常に悪いが兵器は豊富に存在する・・・我々は追い詰められており戦わざるを得ない・・第二撃が敢行され1機始末した。
「フォード・スリー・・・ミッション終了!補給の為帰還する。」
 全て陸上基地で運用は危険と判断され半数は揚陸艦艇からの出撃である・・・以後、反復攻撃が為されて行くだろう・・・敵SAMの射程には絶対に近づいては為らない。
 4機1編成の編隊を作成し、2機が空戦、2機が地上攻撃担当という案も計画中である・・・前衛を飛び越し移動中の本隊に対してアウトレンジからマーヴェリックで始末する・・・
だがこの方法を用いると『敵師団の進撃は遅れ』、敵空母艦隊が接近するのを許しかねない・・・だが連中はどうあがいても『1週間』時間が掛かる・・・それに空軍機の問題もある・・・
 だから速戦即決で敵航空兵力のを殲滅しなければならない・・
 車長は司令部の地図に目をやった・・・道は一本で防ぐ事は出来るが、第二撃がきた場合援軍が無ければ滅びてしまう・・・そこへ最悪の一報が入る・・・
報告!偵察写真より鍵軍団がアクアプラスを進発・・・当方面へ向かっております!」
 ついにその時が来た・・・招かれざる客だ・・・高橋正統リーフと鍵が直接戦えばファシストを喜ばせるだけだ・・・なら目的は一つしかない・・・
「鍵か・・・茜の故郷であるタクティスと呼ばれた地域を見捨て鍵国を設立した・・・タクティスの現状を見よ・・・そこは最前線とされ誰も・・・一兵も援軍を寄越さなかったじゃないか!」
 そう、この空き地の町は茜中隊により守られていた・・・装備は新品でも新兵ばかり・・・窮地に陥っても本国は兵を寄越さなかった・・・そしてそこで戦う指揮官は・・・
「茜を見殺しにしておきながらいまさら俺達顧問団を叩き潰そうと言うのか・・・」
 だが事実は事実・・・遠野財団軍の猛攻の前に置き去りにされた茜中隊・・・それを救ったのは俺たち顧問団だ・・・基地外は精神病院へ行けと・・・
「でも一理あるだろうな・・・俺は何処から見ても基地外だ。だが、折原大隊長は援軍さえ寄越さなかったじゃないか!再三の援軍要請にも・・・」
839航空戦開始ー頼もしい味方:02/03/16 03:14 ID:Jx+GTqv8
 次の瞬間車長は45口径を抜きテーブルを用いたバリケード・スタイルの射撃姿勢を取る・・・砲手はM4カービンを構え、偵察員も同じく・・・
「ならば、戦わずに済ませれば良いのではないかな?」
  全く知らない声だった・・・
「撃つな車長・・・彼等は味方だ。」
 だが、次の声は知っている・・・作戦地域へ赴いた筈の大佐が妙なモノを連れて現れた・・・ニダーにも似ているが口元を見れば誰でもわかる・・・
「青紫だな・・・超先生こと100円参謀・・・」
 みさき大隊を見殺しにしようとした張本人・・・ファシストの先兵・・・だが撃てなかった。
 ・・・だってソイツも同じ目をしていたんだ・・・俺たちと・・・戦場に翻弄され傷ついた・・・納得した車長は銃を降ろした、それに皆が続く・・・
 少しの間の後・・・
「岩切だ、正直驚ろいている。基地外集団との噂もあったからな。」
 特殊部隊の接近に気付き即座に銃撃体制を取れる輩・・・軍事顧問団の噂とはズレがありすぎる・・・岩切自身少し驚いていた。
「基地外結構・・・ところで、君達が亡命を申請していた?」
「そうだ。あともう一人いるんだが」
  超先生が窓の外を指差す・・・そこには揚陸艦へ運ばれようとしている担架に乗せられた男と数人の女性兵士が従っている。
「坂上蝉丸・・・今重傷を負って手当てを受けている。」
 そうだ・・・ロディマスで人悶着やったらしく、しかも偽自由主義者とも仲が悪い連中・・・
「OK・・・過去のことは忘れちまおう・・・君達は此処では階級は抜きだ。同じ戦場で傷ついた者を見捨てる事は俺達は出来ないからな。」
「それより・・・聞いて欲しい・・・現在RR装甲師団が接近中で我々顧問団は先ほど制空作戦を発動した・・・だが我々にとって悪い事に鍵軍団が接近し始めた・・・」
「里村茜のことだね・・・」
  ニヤリと笑みを浮かべて超先生が車長を見据える・・・
「車長と読んでくれ・・・少将の階級は飾り・・・茜は・・・見捨てられた彼女を誰が守るんだ?」
「ムキにならんでくれたまえ・・・それより作戦会議ではないのかな?」
 さらりと超先生は非難をかわし、地図と部隊配置状況を見渡す・・・
840頼もしい味方ー情報戦開始:02/03/16 03:20 ID:Jx+GTqv8
 ニヤリと笑みを浮かべて超先生が車長を見据える・・・
「車長と読んでくれ・・・少将の階級は飾り・・・茜は・・・見捨てられた彼女を誰が守るんだ?」
「ムキにならんでくれたまえ・・・それより作戦会議ではないのかな?」
 さらりと超先生は交わすと地図と部隊配置状況を見渡す・・・
「これじゃあ一度敵を撃退したら厳しいのではないのかね?」
「判るのか?100円参謀が?」
「馬鹿にしてもらっては困る・・・デキスギ師団のことはあれは作戦だったのだからな・・・シンパを抹殺するという意味での。」
「オ−ケィ・・・で・・・超先生・・・・アンタならどうする?」
「参謀と呼んでくれたまえ・・・もっとも今は・・・いややめた。とにかく鍵が迫っているのならRRと鍵を戦わせたらどうかね?仲の悪さは天下一品だよ。」
 超先生はトンでも無い事を言う・・・でも一理あることは判っていた・・・
「でも正統リーフと同盟したんだろ・・・私達の身柄は?」
「問題ない・・・俺たちと同じように戦場で傷ついた者を俺達は守ってみせる。」
 車長の回答に男装の麗人は黙り込んだ・・・鍵が接近している以上立場は非常に怪しい・・・そんな時だった・・・AIR航空隊が空母艦隊と戦うべく出撃中との報告は・・・

 当面は航空機の運用体制は変えずに済みそう・・・車長はそれでも安心できなかった・・・援軍である乾戦車隊がまだ来ない事を・・・

そして超先生による情報戦も同時に行われる・・・それが >835 の内容である。
上手くいけば鍵軍団と和解できるチャンスもあるかもしれないし、RR師団と鍵軍団が鉢合わせを起し、その間に乾戦車隊が到着すれば十分・・・
 かくして強力な援軍の元戦闘は続いて行く・・・

続く
841軍事顧問:02/03/16 03:28 ID:Jx+GTqv8
投稿ミスで>845の最初の4行は重複してました、すいません。

茜問題・・・和解できるか?それとも鍵と一戦交える事に?RRをあわせて三つ巴?
超先生の作戦成功を祈る・・・

鍵の進軍は折原少佐の陰謀かッ? 茜が思い通りにならないからって・・・嘘です。

>835 参謀殿
進言サンクス! 超先生の作戦を取り入れつつ戦闘を続行・・・
正統リーフとは同盟を打診しましたので少々修正しました・・・でも身柄引渡しだけは絶対に応じない所存です。


コソコソまた始めます・・・
842軍事顧問:02/03/16 03:33 ID:Jx+GTqv8
>840でした・・・投稿ミスは・・・

ジーザス・・・最悪の場合も想定してまたコソコソ始めます・・・

状況
1、鍵空軍は空母艦隊に向け出撃準備中
2、空母艦隊は空き地の街まで一週間かかる
3、RR師団の航空戦力に打撃を与えつつ、情報戦により戦闘を回避する事。
4、正統リーフと同盟関係は持つが、超先生や岩切、蝉丸の身柄引渡しは絶対に応じない
5、鍵軍団とは正直戦いたくない、里村茜に関する誤解を解くべきか、一戦交えて追い払った上で交渉するかを検討。
6、超先生達をかくまった事で正統リーフとの関係がマズイ物になることも想定しておく。
7、顧問団に領土的野心は無い事を再確認すること。
843名無しさんだよもん:02/03/16 03:38 ID:m/KhDoJR
ところで>>621さんの作品はいつ出るんだろ。
844名無しさんだよもん:02/03/16 03:45 ID:lDFpAnS3
超先生の生存がばれたら、正統リーフよりもむしろシェンムーの方が躍起になって攻めてきそうだ。
つか、もとより下川シンパのデキスギ大隊に配属された青村早紀ちゃんピンチだ( ;´Д`)ハァハァ
845名無しさんだよもん:02/03/16 03:52 ID:lT3iSGua
欺瞞情報が看破され、久瀬たんにいろんな拷問を受けちゃう青村早紀たんハァハァ……(;´Д`)
846名無しさんだよもん:02/03/16 03:54 ID:lDFpAnS3
>>844
軍事顧問団を攻撃じゃなくて、超先生のことね
847名無しさんだよもん:02/03/16 04:03 ID:lDFpAnS3
ショートカットつり目で気の強そうな美人だけど実は泣き虫な早紀タン( ;´Д`)ハァハァ
中上ーっ! 助けろーっ!
って、うわ、2・14事件の再来かっ!? 
848名無しさんだよもん:02/03/16 04:09 ID:lT3iSGua
って、そうか。
なんか違和感あると思ってたら、軍事顧問団は麻枝が空き地の街
救援のために兵を進めてることを知りうる立場にないんだな。
茶々入れる前に読み直してよかたーヨ(藁
849魔王の軍勢1:02/03/16 11:00 ID:/sPHBYwu
 正統リーフ総帥高橋龍也は正直焦っていた。当初のプランは下川を挑発して彼の軍をお
びき出して、無理やり仲間に引き込んだ鍵と軍事顧問団と共同で圧倒的な戦力でマッタリと
叩き潰す筈であった。がしかし、まさかアビスボートとピースそして護衛艦隊群まで引っ張
り出してくるとは思わなかった。急きょ戦略の書き直しに迫られた彼は、後に琥珀大佐に、
こう独白したという。
レポート期日前日に、真っ白なレポート用紙に泣きながら文字を埋めるアホ学生のような
気持ちが分かった。
 そしてその時彼が下した判断は以下の通りである。
 軍事顧問団の要求は全面的に受け入れる。
 ホワイトアルバム級強襲揚陸艦の母港、フキフキ港への軍事顧問団の艦艇の入港許可。
 HMX−13を同港に向かわせる。
 乾戦車大隊を空き地の町へ救援に向かわせる。
 同時に以下の兵器を軍事顧問団へ貸し与える。
 多連装ロケットシステムMLRS
 96式多目的誘導弾システム 誘導方式 : 光ファイバTVM(Track Via Missile)赤外線誘導方式
 地対空誘導弾改良ホーク 誘導方式 : セミアクティブ・レーダ・ホーミング方式
 葉鍵軍の艦隊が到着するまに、なんとか装甲師団を潰滅させなければ、勝ち目はないな…。
 そう考えているとき、部屋に彼の参謀が入ってきた。
「総帥、装甲師団の名称が分かりました。サテライト・システムの捉えた映像の中の戦車に、エ
ンブレムが移ってました。敵は、第10RR装甲師団トゥーハートです」
850魔王の軍勢2:02/03/16 11:01 ID:/sPHBYwu
 山荘要塞、シェンムーズガーデン。その王座には下川が魔王のように座し、そしてその傍には
彼の側近である、久瀬警察少将が控えていた。
 その王の間に、もう一人の側近、第13RR師団司令官柳川裕也中将が入っていく。
 ダークスーツに長身、眼鏡の奥の端正な顔に光る紅い眼。さながら魔界の軍団長のようである。
「閣下、俺の師団の出撃準備は完了した。これより、空き地の町の取り戻しに向かう」
「すまんのう、柳川お前には別に仕事が出来た。空き地の町には、高槻中将の第10RR装甲師団
トゥーハートを向かわせるわ」
 下川のその言葉に柳川はホンの少し、眉を動かした程度で、口を開く。
「で、俺の新しい仕事は何だ。時間は無いんだ。もう変更はきかんぞ」
下川は首を少し上に向けながら、もう一人の彼の側近の名を呼ぶ。
「久瀬」
「エロゲ国との国境争いで防衛網の一部が破られ、エロゲ軍1個師団に進入されました。中将閣下
には、その蛮軍1個師団を叩き出して頂きたい」
「違うで、久瀬。やのうて、皆殺しや、一匹たりとも葉鍵国から出すな」
「は、訂正します。殲滅して頂きたい」 
「国境警備の任務は東部方面と鍵の連中の仕事ではないのか?」
「それがのう、柳川。東部の連中、侵入された際手ひどくやられて、このままでは、今後警備を行
う事は不可能だから、一旦ビックサイト平原まで撤退さして、戦力を立て直さしてくれと泣きつい
てきよった。鍵の連中は敵の本体と睨み合いが続いていて、進入してきた連中を叩けば、自分達が
後背から叩かれるから動けない。どいつもこいつも情けないやちゃでホンマ」
851魔王の軍勢3:02/03/16 11:03 ID:/sPHBYwu
 エロゲ国がその日とった戦術は以下のものであった。先ず、本体が鍵の国境警備軍と小規模な戦闘
を行う。そして、即座に退却し睨み合いを続ける。それを見た東部方面の警備軍が迎撃(救援ではな
い)に向かう。それを迂回したエロゲ国の別働隊1個師団が、側面から切り付けてきた。
 あとは東部方面の警備軍は熱したナイフで切り裂さかれるバターのように戦列を崩壊させていった。
 そして、この作戦を指揮した男の名を聞いた時、下川は微かな驚きを感じた。
 椎原旬。元葉鍵国仕官である。
「あのガキャ、ズンパン戦線の敗北を粛清ではなく、追放だけで勘弁してやったのに、恩を仇で返し
よってからに…。にしても、これだけの才能があるんなら、あんとき見せんかい」
 下川が苦虫を噛み潰したような顔で言う。と其処に久瀬が口を挟む。 
「いえ、この迂回戦術は久弥直樹大将のものとよく似ています。実際に指揮したのは久弥直樹大将で
しょうそれに、あの男にこんな大規模戦闘を行えるだけの器量があるとは思えません」
「そうやあの男、以前お前が大佐扱いでメイビウス軍の総参謀長になっとるというてたな。そうか、
あの男までわしに牙を剥くか。こらあ、高橋と鍵潰した後はメビウスやな」
「しかし、後半は椎原の独断ですね。久弥大将なら、この後葉鍵国に侵入しようとはせず、迂回させ
た戦力を鍵の国境警備軍の後背につかせ挟撃する筈です。恐らく、呆れは果てもう直ぐしたら、見捨
てて、撤退を始めるでしょう」
「一気にわしの首を取る気か?相変わらずのボンボンやのう。まあええわ。そう言う訳や、柳川いっ
てこいや」
 先程から黙って壁に、背をもたれていた柳川に言う。
「了解した。反逆者の首を剣に掲げて、閣下に献上しよう」  
 後世の歴史家に3人の下川の部下こう呼ばれることになる。 
 柳川は魔王の剣
 久瀬は魔王の盾
 黒マルチは魔王の軍馬
 自分達が後の歴史化に魔王下川の暗黒神話と呼ばれる、幾重もの戦歴を築き上げることになる
ことを、まだこの三者は知る由も無かった。
852名無しさんだよもん:02/03/16 11:07 ID:/sPHBYwu
 誰か久弥、椎原サイドの話書いてくれないかな〜
853昇龍の丘(1/7):02/03/16 13:38 ID:C/0ucPyD
 ものみの丘に、歓声と怒号、そして重く唸るエンジン音が響き渡る。

「おお、こりゃまた豪勢な援軍だなあ……」
 第一連隊に属するONE大隊を率いる少佐、折原浩平は、丘の下に展開する部隊を見下
ろしながら、思わず歓声を上げていた。
 つい先日まで、麾下の部隊を虫喰いのように多方面に引き抜かれた上、エロ同人国と結
んだ身内の裏切り者達との激戦区に配備され、泥沼のようなゲリラ戦を這い回っていた頃
には想像もできなかった光景だ。

 戦車、自走砲、歩兵戦闘車……それらには一様に「Key」の三文字があしらわれ、そ
の下に白く書き込まれた数字が所属部隊を示す。ざっと見渡す限りでも、その所属がバラ
バラであることはすぐに分かった。

(第一と第二師団の混成……国内警備から、大隊……大きくても連隊単位で強引に引き抜
いてきたのか。国境の部隊は動かさない、ってのは確からしいな)

「しかし、こんな寄せ集めで大丈夫なのかね……?」
 誰にも聞こえないほどの声で、思わずそう呟いていた。
854昇龍の丘(2/7):02/03/16 13:38 ID:C/0ucPyD
 ものみの丘駐屯部隊の、幹部会議室として割り当てられた一際大きなテントの中。麻枝
元帥、涼元総参謀長、水瀬旅団参謀長の三人が待つそこに、古風な軍服に身を包んだ二人
の男女が現れたのは、援軍の到着から間もなくのことであった。

「ああ、良く来てくれたね」
「第一師団長、中将、柳也。お召しにより、ただいま参上つかまつった」

 柳也中将。義勇軍きっての『武人』として知られる。かの葉鍵師団創設の際には、葉の
ルミラ中将と師団長の席を争った剛の者である。

「裏葉さん、ご苦労様でしたね」
「いえ、これしきの事、どうと言うことはありませぬ」

 葉鍵師団に参謀として属していた裏葉中佐は、師団の解体と同時に水瀬参謀長の指示を
受けて本国へ戻り、増援部隊の編成を行っていた。
 マコピスト教会での会議の推移を受け、国境の部隊を動かさない方針をとったため、国
内警備に当たる二個師団から兵力を引き抜き、第一師団長の柳也が率いてここまで駆けつ
けたのだ。兵站の整備を本国に残る部隊に任せ、部隊編成も行軍の間に行うという強引な
出撃だったが、おかげでどうにか事態に乗り遅れずに済んだようだ。
「第一、第二師団から、合わせて二個旅団ほど。どうにかかき集めてまいりました」
「合わせて一個師団強、か。うん、それだけあれば、当面の事態の推移には対応できるだ
ろう。良くやってくれたね、みんな」
 柳也、秋子、裏葉といった幹部達に、麻枝は軽く頭を下げた。
 幹部達も、それぞれに威儀を正し、黙礼をもって答える。

「……では、さっそくですが今後のことについて打ち合わせをはじめましょう」
「はい。まずは高橋、下川両派の現状から……」
 涼元参謀長が切り出し、すかさず水瀬大佐が説明に入る。会話はすぐに実務的な内容に
移っていった。
855昇龍の丘(3/7):02/03/16 13:39 ID:C/0ucPyD
「……しかし、やはり国境警備の師団は動かさぬのですか?」
「一両日中には、第四、第七の両師団が出撃準備を完了いたします。その後はご命令さえ
あれば直ちに国境を突破し、こちらに合流できますが」
 柳也と裏葉には、やはりその点が気になった。とりあえず数はそろえたが、寄せ集めの
部隊ではいささか心許なくもある。正規の師団を投入できるならそれに越したことはない。
「いや、やはり国境警備の手は減らしたくない。エロゲ国の動きが活発になっている。外
部勢力の介入は何としても阻止しなくてはならないから」

 この時点で、彼らは椎原軍の侵入を知らない。

「それに、あまり数を増やすと補給にも負担が掛かります。こちらは敵地に乗り込んで戦
う事になりますし、高橋さんや下川の動き次第でどこに飛んでいくことになるか分かりま
せん。ならば、最小限の部隊で機動力を維持した方が得策かと考えます」
「なるほど……」
 麻枝と涼元の説明に、柳也は深く肯いた。
「主力の投入は機を見て行うよ。その二個師団に、戸越君のOHP師団、それと出来れば
あとひとつかふたつぐらい……一気に投入して戦線全体を制圧する。総力戦は長期化させ
ない。絶対にね」
「…………」
「まあ、その辺のタイミングは、こちらを信頼してくれ。涼元君や折戸さんもいることだ
しね。ちゃんと仕事はするよ」
「はっ、了解いたしました」
856昇龍の丘(4/7):02/03/16 13:41 ID:C/0ucPyD
 一夜明けて、増援到着の翌日。その報告が届いた時、麻枝元帥は柳也中将を招いて打ち
合わせを行っていた。同席は、義勇軍司令官の折戸大将のみである。

 双方の参謀達は部隊編成の為に飛び回っており、ここにはいない。この会談は作戦会議
というより、後方の司令官と前線指揮官の認識のすり合わせが目的だった。
 とはいえ、この段階ではKeyの戦略も確定していない。打ち合わせは簡単な確認で終
わっってしまった。

 そんなわけで、三人は麻枝が自ら入れた茶をすすり、雑談混じりの会話に移っていた。
「編成のほうはうまくいってるかい?」
 折戸が柳也に尋ねる。折戸としては実戦部隊の状況がやはり気に掛かるのだ。
「まあ書類上は。秋子殿と裏葉がいますからな、間違いの起こり様がありません」
「そうか……で、実際に使うには厳しいかね?」
「なにしろ強引に編成しましたからな……。せめて一週間は訓練に欲しいところですが、
そうも言ってられぬのでしょう?」
「ああ、下川と高橋さんが動き出している。数日中にはぶつかるだろう」
 そこにどのように介入するにせよ、あるいはしないにせよ、事態に即応できる戦力が無
くては話にならない。
「まあ、なんとかしますよ」
「そうか」
 それだけ言って、折戸は沈黙した。それは、目の前の武人に対する信頼の現れだろう。
「それで、何か他に不満は無いかい? 出来る限り何とかするが」
 次に麻枝が柳也に問いを発する。
「不満ですか? ……そうですなあ、参謀人事に少々」
「秋子さんと裏葉君で不満なのかい? 彼女ら以上に優秀な参謀はうちに居ないよ?」
「いや、能力の事じゃないんですが……なんというか、その」
「泣く子も黙る柳也将軍も、かの女傑二人に手玉に取られまるで益体無し、という訳じゃ」
 テントの入り口から、皮肉な声がかけられた。
 振り向いた三人の目に映ったのは、若い―――幼い、と評した方が似合うほどの―――
女性士官の姿だった。
857昇龍の丘(5/7):02/03/16 13:42 ID:C/0ucPyD
「神奈! お前が何故ここにいる!」
 士官の名はは神奈中尉。柳也中将の副官を務めている。
「なにを言うておる。私はお主の副官だろうが」
「俺は今元帥閣下と会議中だぞ。急ぎの用でないならいくらお前でも……」
「だからお主は益体無しだと言うのじゃ。緊急かつ重大な用でもないのに、私がわざわざ
将軍と元帥殿との会話を妨げると思うか。そこの守衛共が私をあっさり通すとでも思って
いるのか」
「ぐぐ……」
 立て板に水の如き神奈にすっかりやりこめられ、柳也は呻き声しか上げられない。
「柳也殿、副官人事にも不満を唱えるかい?」
 吹き出しそうになるのを堪えながら、麻枝が混ぜっ返す。
「いや……もういいです。いいですとも……何の不満もございません」
 柳也は俯いて、力無く首を振るばかりだった。この男、とことん女運がないらしい。

「それで神奈中尉。緊急の報告というのは一体なんだい?」
「うむ、正統リーフから面白い物を送ってきた。これをご覧じあれ」
 折戸に問われ、神奈は片手に抱えたノートパソコンを開いた。
「……これは……」
「……空母、ですね」
 そこにはぼんやりとだが、確かに巨大な船舶……それも、艦上で航空機を離発着させる
ためのものに特有な機構を備えた艦艇が写っている。
「うむ、秋子殿もそうおっしゃった。なんでもおろしや国の物にずいぶんと手を入れた
ものだとか」
「いよいよ、か……」
「下川の外道めも、味なものを持ち出してきたものよ」
858昇龍の丘(6/7):02/03/16 13:42 ID:C/0ucPyD
 一人沈黙を守ったままその画像に見入っていた麻枝は、顔を上げると鋭い視線を柳也に
投げかける。
「柳也殿」
「はっ!」
「直ちに部隊の主立ったものを会議室へ!」
「御意! 神奈、行くぞ」
「うむ」
 副官を従え、柳也は颯爽と身をひるがえす。

「柳也殿」
 その背に、もう一度麻枝が声をかけた。

「今すぐ出撃、と言われて……行けるかい?」
 援軍の到着から一日。部隊編成もまだ机上のものでしかない状態だ。

「……何とかします。そう、お約束しましたな」
 柳也は、不敵に笑って答えた。
 それはまさに、戦場にこそ生き甲斐を見いだす狼の笑いだった。
859昇龍の丘(7/7):02/03/16 13:43 ID:C/0ucPyD
「ご苦労様、みんな」
 麻枝以下、Keyの最高幹部達が入ってくると、待っていた士官達は一斉に敬礼をもって
出迎えた。麻枝は答礼もそこそこに、涼元を促して事態の説明に入らせる。
「皆さんも噂ぐらいは聞いていると思いますが、リーフの下川軍と高橋軍が間もなく戦闘状
態に入ります。戦力は双方ほぼ一個師団。場所は空き地の町。ただ下川の方には『おまけ』
があります」
 『おまけ』の一言に、指揮官達の興味が涼元に集中する。そんな中、末座近くに座る二人
の少佐だけが少し早く……『空き地の町』に反応し、一瞬身体を強ばらせた。
 だが、他の誰もそんなことに気付かないまま、涼元参謀長の解説は続く。
「空母が一隻。当然艦載機も込みでしょう。大体30機弱といった所でしょうか」
「で、青くなった高橋さん達がこっちに泣きついてきた。向こうが下手に出てくれるなら、
高橋さんと組むのに否やはない。よって正統リーフと結んで下川を撃つ」
 涼元の解説を引き継いで、麻枝が政治状況を語る。
「諸君の最初の目標は空き地の町へ侵攻してくる敵部隊の撃破。ただし無理はしないこと。
その辺の加減は……」
 居並ぶ士官達を見回し、麻枝は笑顔で、
「君達に任せるよ。よろしくやってくれ」
「はっ!」
 士官達は一斉に席を立ち、背を伸ばして敬礼する。

 それを受け、麻枝達も席を立つ。折戸大将が一枚の辞令を片手に一歩前へ進んだ。
「柳也中将!」
「はっ!!」
 折戸に名を呼ばれた柳也はその前へと進み、両手を地について頭を下げた。
「貴官にこの臨時集成師団の全指揮権、及び対リーフ戦線の全権を委任する。最善を尽くし
て事に当たってくれ」
「ご命令、謹んでお受けつかまつる」
 柳也は深く頭を下げ、辞令を受領した。士官達が再び一斉に敬礼する。

 この瞬間、龍は丘から解き放たれた。
860鍵軍編成表1:02/03/16 13:44 ID:C/0ucPyD
鍵っ子義勇軍・リーフ方面軍編成
(大隊以下は主だったもののみ)
(※は>>604編成表から昇進)

鍵っ子義勇軍・臨時集成師団(通称募集中)
師団長・柳也中将
参謀長・水瀬秋子大佐
参謀・裏葉中佐 高槻涼少佐
司令部付・鹿沼葉子大尉 神奈中尉

  第一旅団(相沢祐一少将)
    第一連隊(倉田佐祐理中佐)(※)
     美坂大隊(美坂香里少佐)
    第二連隊(川澄舞中佐)
      水瀬大隊(水瀬名雪少佐)

  第二旅団(天沢郁未少将)(※)
    第一連隊(名無しの中佐)(※)
    第二連隊(名倉友里大佐)

  第三旅団(小坂由起子少将)
    第一連隊(折原浩平中佐)(※)
      みさき大隊(川名みさき少佐)
        柚木中隊(柚木詩子大尉)
     七瀬戦車大隊(七瀬留美少佐)
    第二連隊(長森瑞佳大佐)

  砲兵大隊(巳間晴香少佐)
    弾(名倉由依少尉)(笑)
  工兵大隊(住井護少佐)(※)
861鍵軍編成表2:02/03/16 13:45 ID:C/0ucPyD
(以下は麻枝元帥麾下義勇軍総司令部に直属)

AIR航空隊
  司令・神尾晴子大佐
    第一飛行中隊(国崎往人中佐)
    第二飛行中隊(神尾観鈴大尉)
    第三飛行中隊(霧島佳乃大尉)
    通天閣騎兵隊(霧島聖中佐)
    防空大隊(遠野美凪少佐)

特殊部隊MOON.(巳間良祐少佐)
862昇龍の丘:02/03/16 13:48 ID:C/0ucPyD
>>820-828の続き、Key師団出撃編です。

 Keyの臨時師団は装備、兵の練度、指揮官の質とも一級ですが、急造師団のため指揮系統
に難があります。空き地の町までの行軍中に再編を済ませますが、初期の戦闘では苦労するで
しょう。
 あと、師団の通称募集中です。臨時師団では格好が付かないので。

>軍事顧問殿
 鍵としては、茜についてさしたる関心を持っていません。柳也は出撃の時点で、茜について
何も知りません(説明を受けている時間がなかったため)。師団幹部で茜のことを知っている
のは秋子参謀長と相沢少将の二人だけですし、どちらも重大事とは思っていません。。
 そんなわけで、こちらはそっちが鍵の接近に殺気立っているなどとは想像もしていません。
 この方面の問題については柳也が全権を帯びていますので、彼や秋子さん、裏葉との交渉次
第。この面子が相手なら、そう酷いことにはならないはずなのですが……さて?

 あと、折原ONE大隊長(現連隊長)についても少しだけ触れておきました。彼は陰謀巡らす
タイプとも思えないので、こういう形にしましたが……。この辺、書き手の意識差が出るところ
ですかね。


 それにしても、やっぱり長いなあ……。しかも私が>862を書き込んだとたんにサイズ制限が……(汗)
863名無しさんだよもん:02/03/16 13:49 ID:AEgA36sp
投稿おつか〜。
でも、高槻って直前に下川派RR師団の師団長として名前出てない?
>>850
>高槻中将の第10RR装甲師団トゥーハート
とあるので、参謀長の人選に変更の要ありかと。
864名無しさんだよもん:02/03/16 13:51 ID:AEgA36sp
あと新スレ……(汗
葉鍵空軍スレに移動するか、新スレ立てるか、どうします?
このスレの余命14kbちょっと。
865853:02/03/16 13:59 ID:tvlbnpdd
>>>850
>>高槻中将の第10RR装甲師団トゥーハート
うぐぅ……>>73で高槻は葉鍵師団の参謀だったんですが……いつの間に寝返った。
まあ、こっちも高槻は惰性で入れてただけなので。その辺は次に書く人に
任せますわ。

で、新スレ……どうしましょうか。私、スレ立てしたこと無いので(汗)できれば
熟練の士にお任せしたいところですが。
866名無しさんだよもん:02/03/16 14:05 ID:WkgFe30m
 新スレ立てましょう。あそこはコメディやるみたいだし。
867名無しさんだよもん:02/03/16 14:26 ID:AEgA36sp
あー……そいやそうだったね。
>>73で高槻参謀出てたのか……存在忘れてたよ(w
>>159からずっと名前も出てなかったんだね……哀れな。

>新スレ
あっちが本当にコメディで独り立ちできるのか、ちょい疑問が残るけど……
やはり新スレが妥当なのかな?
漏れは立てられない(スレ立て規制に引っかかる……)ので、他の人よろ。
868名無しさんだよもん:02/03/16 14:28 ID:WkgFe30m
 73、ああ本当だ!気がつかなかった。どうしよう…。「あいつ悪党だから、
下川陣営にぴったりだなあと」入れたんだけど…。どっち陣営がぴったり来る
んだろう。
869853:02/03/16 14:50 ID:acHopANK
>73
……まあ、そこにあんまり拘られると、実は>>74で柳也の名が出ていたりも
するので、私自身が吊らねばならない罠が待っていたり。
ここまで出てなかったんだから、間に何かあったんだろう……ということで
>850のままで良いんじゃないでしょうか。

鍵が「いい人」ばっかりになってしまうのもどうかなー、とは思うのです
けどね。まあ今のところ生かす当てもないですし……。
870VN旅団
その日は第T連隊・第U連隊揃っての合同訓練が行われた。
正統リーフ国に属する兵士たちは確かに総司令官である高橋を、旅団長へと昇進した耕一を慕う者達ではあったが、
それでも…「日が浅い」というのは、拭えぬ事実だった。
戦場では、何が致命傷になるか解らない。
だが、日々の訓練は予防になる。健康な軍を維持できれば、痛手にも耐えられる。
編成されたVN旅団を自らの手足にする。
それが、彼ら将校の役目であり、義務であり…何より。
生き残る為の術であった。

「…第U連隊が押されていますね。…どうかしたのでしょうか…祐介さん」

ロディマスから少し離れた、野外訓練場。その、少し小高い丘から、耕一と楓、そして浩之が戦局を見守っていた。
確かに、少女の言うとおり、第U連隊は少しずつだが退がりはじめている。
いや、はからずとも退がらされていると言うべきか。
第T連隊を束ねる柏木千鶴は、正統リーフ国軍において恐らく随一を担う名将である。
だが、それにしても…。

「千鶴さんの部隊の動きが迅速なのは当然としても…祐介の野郎、調子悪いのかねぇ。…むぅ」

浩之はそう呟き、呻いた。
同年代で、同じ階級。ライバル視するな、というほうがムリな相談なのだろう。

「…藤田大佐。君は、第T連隊へと合流してくれ。
俺達は第U連隊へ合流する」
「お、耕一さん自らが指揮するんすか?こりゃいいや。
全力で行きますからね」

不敵な笑みを浮かべる自分よりもさらに若い将校に、微かに口の端を上げ。
耕一は楓を伴い丘を降りた。