西暦200X年 秋
それは、平和で大した事件など何もない、いつもの夜に起こった。
「祐一、祐一〜っ」
ドタドタドタッ。
いつものように学校から帰ってきてから、相沢祐一が居候先の水瀬家の自室でくつろいでいると、祐一と同じく、水瀬家に居候してい
る沢渡真琴がノックもせずに、祐一の部屋へと駆け込んできた。
「こら、ノックぐらいしろっていつも言ってるだろ」
ベッドに寝転んで雑誌を読んでいた祐一は上半身をベッドから起こすと、突然の侵入者に対して、子供を叱る親のような口調で返事を
返す。
「そんなことより、これ見てこれっ!!」
そう言って、真琴は手に持っていた漫画雑誌のページを開いて祐一に見せる。
「なんなんだよ、いったい・・・人がせっかくくつろいでるってぇのに・・・」
祐一はぶつぶつと文句を言いながら真琴から漫画雑誌を受け取って真琴が指し示すページに目を
通す。
「・・・ん、これって・・・」
「そうなのよう!!」
祐一の言葉を遮って、真琴が嬉しそうに語りだす。
「『恋はいつだって唐突だ』がテレビアニメになるんだって!!」
「真琴、もう嬉しくって嬉しくって!」
真琴はにこにこと満面の笑顔を浮かべながら、祐一に話しかける。
「ねぇ、祐一・・・」
「・・・アニメが始まったら・・・その、一緒に見ようねっ」
真琴は少し頬を染めながら、漫画雑誌の記事に目を通している祐一に話しかける。
「・・・・・・・・・」
1999年の冬、ものみの丘の妖狐であった真琴は、一度はこの世界から消えた存在であった。
だが、仲間である他の妖狐達と奇跡を信じる相沢祐一によって、人間としてこの世界へと帰ってきたのだ。
・・・以前よりも少し素直に・・・そして、少し・・・甘えん坊になって・・・。
こうして、帰ってきた真琴は再び水瀬家に引き取られ、祐一と共に水瀬家の一員になったのであった。
「・・・それは無理だな」
祐一は真琴の願いに対して、ぽつりと呟くように答える。
「どうしてよう!」
てっきり、一緒に見てくれるとばかり思っていた真琴は不満を露わにして祐一に食ってかかる。
「・・・だって、このアニメ、関東と関西だけの放送だぜ」
「だから、俺達の住んでるこの地域じゃ見れないぞ」
「えぇ〜っ!!だって、テレビでやるアニメなんでしょ〜っ!!なんでなのようっ!!」
「そんなこと、俺が知るかよ。まあ、地方だとこういう番組を放映したって、視聴率が取れないからだろ」
「そんなあぁ〜っ・・・」
「あう〜、祐一と一緒に見たかったのにぃ・・・」」
真琴は悲しそうな顔でそう呟くと、とぼとぼと部屋を出て行った。
「・・・少し、かわいそうかな・・・。でも、こればっかりはどうしようもないしなぁ・・・」
祐一は真琴が出て行ってから、ぽつりと呟いた。
「・・・はあ」
「どうしたの?真琴。なにかあったの?」
夕食時、ため息ばかりつく真琴を心配して秋子が尋ねる。
「ううん、なんでもない・・・」
「そうなの?」
「・・・うん、ごちそうさま・・・」
真琴は夕飯を半分ほど残して、とぼとぼと自分の部屋へと戻っていく。
「・・・真琴、どうしちゃったのかなぁ?」
名雪が真琴の後姿を見送りながら、隣で食事を取っている祐一に話しかける。
「あいつはな、好きな漫画がテレビアニメになるって喜んでたんだけどさ、そのアニメってのが関東と関西だけの放送で見られないから、
落ち込んでるんだよ」
「あらあら、そうだったの?」
「そうだったんだ。それで元気がなかったんだね」
「ああ、けどさ、こればっかりはどうしようもないだろ」
祐一が大げさに肩をすくめてみせると、名雪が首を振って祐一に話しかける。
「ううん、そんなことないよ〜。方法はあるよ〜」
「・・例えばどんな?」
「祐一がね、前住んでた所の友達に頼んで、ビデオに撮って送ってもらえばいいんだよ〜」
「あら、それはいいアイディアね」
秋子が頬に手を当てながら名雪のアイディアに賛同する。
「えへへ、いい考えでしょ」
名雪が得意気に胸を張る。
「・・・残念だが、それは無理だ」
「なんで?」
「そんな事を頼める奴なんか知り合いにいないし、第一、いい年こいてアニメの録画なんて頼めるかよ」
祐一はぶっきらぼうにそう答えるとぷいっと横を向く。
「祐一、恥ずかしいかもしれないけど、真琴の為だよ」
「そうですよ、祐一さん。こんな簡単な事で真琴が笑ってくれるならお安い物でしょ」
名雪と秋子はそっぽを向いてる祐一をなんとか説得しようとする。
「・・・・・・・・・」
祐一は黙ったまま、答えない。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
しばらくの間、三人の間に沈黙が走る。
「・・・祐一、まさかとは思うけど、向こうに友達居ないとか?」
「!」
名雪が不意に放った呟きに、あからさまに祐一の様子が変わった。
「そういえば、祐一さんがこっちに来てから、一度も向こうのほうからは誰からも手紙はおろか電話すらかかって来た事ないわね・・・」
「・・・・・・うぐぅ」
秋子の鋭い指摘に、祐一は思わず月宮あゆの口癖を呟く。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・祐一、ふぁいとっだよっ」
「祐一さん、強く生きてくださいね」
哀しい者を見る目で、名雪と秋子が祐一をに声をかける。
「う・・・うわあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
ドタドタドタドタッ・・・!!
いたたまれなくなった祐一は泣きながら自室へと逃げ出した。
「祐一さん、家の中を走ったらいけませんよ」
祐一の走り去る音と秋子のずれた言葉だけが秋の夜長に響いた・・・。
・・・それから数ヵ月後。
祐一が学校から帰ってくると真琴が新聞を真剣な眼差しで読んでいた。
「あう〜」
新聞のテレビ欄とにらめっこをしている真琴を祐一はただ黙って見つめる。
「あう・・・やっぱりないよぅ・・・」
真琴は悲しそうに呟く。
(真琴・・・そんなに見たいのか・・・)
祐一は真琴が不憫でならなかった。
どうにかして、元気づけてやりたい。
そう考えた祐一は真琴に話し掛けた。
「真琴」
「わあっ、祐一帰ってたの?」
「・・・真琴、そんなに見たかったのか?」
「えっ?なにを?」
「とぼけなくてもいい。あのアニメのことだよ」
「あう〜」
「・・・ふう」
「・・・いいか、真琴。もうさ、あんなアニメの事なんか忘れちまえよ」
「・・・えっ?」
「あのな、真琴。俺、あれからインターネットとかで真琴が見たがってたアニメの事調べたんだ」
「そしたらさ、真琴の見たがってたアニメだけどな、アレ、テレビ放映が終わったらすぐビデオとDVDが発売されるんだってさ」
「・・・えっ、ホント?」
「ああ。だけどな、1巻目は一話入りで2800円(税抜き)で2巻から7巻は各二話入りで各5800円(税抜き)だってさ」
「・・・あう〜、高いよぅ〜」
「だろ?放映してる地域じゃタダなのにな。随分とふざけた話だと思わないか?」
「うん。思う思う!」
「だろ。それにさ、普通、関東と関西だけの放送なんてまずありえないのに、こんな放送の仕方してるのはなんでだか、わかるか?」
「こうやって、狭い範囲にだけ放送する事でな・・・」
「見られない地域のファンの飢餓感を煽って、ビデオやDVDを売りつけようって魂胆なのさ!!」
「わかるか?真琴。こんな、ファンを馬鹿にしたやり方を許せると思うか?」
「あう〜許せないっ!!」
「だろ?こんな金儲けの事しか考えてないカス達の作ったアニメになんか金を出す価値なんかないんだ!!」
「こんな物、俺達の貴重な時間を割いてまでわざわざ見る価値なんてないんだよ!!」
「それにな、このアニメの原作ってさ、元々はエロゲーだったんだ。それが人気が出て、家庭用ゲーム機のソフトに移植されて漫画にな
ったんだ」
「このアニメを作ってる連中はな、ただ単に金をぽんぽん出してくれる馬鹿なオタクから金をどうやって巻き上げるかって事だけを考え
て、これっぽっちの愛情もないくせに、この作品をアニメ化したんだよ!!」
「インターネットで放映地域の奴らの感想とか調べてみたらさ、確信が持てた」
「本来、右利きのキャラが左利きになってたり、登場人物の口の位置が毎回とんでもないとこにあったり、メインヒロイン以外の扱いが
ひどかったり・・・」
「こんな金儲けのことしか考えてないくせに、いっぱしのクリエイター気取りのカス集団に、真琴が期待しているような内容のアニメが
出来ると思うか? 出来る訳ねえだろ!!」
「どうせ、ラストだって全員陳腐な友情で結ばれて、みんなハッピーでよかったね、よかったね、で終わるに決まってんだ」
「それこそ、三流の同人作家が描いたシナリオみたいにな!」
「そんな、カス共の作った駄ニメのことなんて、忘れちまえよ。今度、もっといいアニメを借りてきてやるから」
「・・・うん。わかった」
祐一は真琴にそれだけ力説すると、真琴を元気づけるために買ってきた肉まんを袋ごと真琴に差し出した。
「・・・よし。それじゃ、肉まんでも食うか」
「わーい、肉まーん」
「ははは、いっぱいあるからな」
「わあい、ありがとう祐一っ」
・・・そして、瞬く間に時は過ぎ、季節は春。
大学への進学を果たした祐一は、春休み最後の日に真琴と遊びに行こうと思い立ち、真琴を呼びに真琴の部屋へと向かった。
コンコン・・・。
「真琴、ちょっといいか?」
・・・シーン。
「あれ?どっか出かけてんのかな?」
「しょうがない。下に降りて秋子さんにでも真琴がどこ行ったのか聞いてみよう」
「秋子さん、真琴は・・・」
「ただいまー」
祐一が1階に降りて真琴の行き先を秋子に聞こうとすると、丁度真琴が帰ってきた。
「おかえり、真琴。探してたんだぞ」
祐一は真琴がリビングに入ってくると真琴に声をかける。
「あ・・・祐一・・・」
真琴は祐一の顔を見るや否や、手に持った袋を隠すようにして、祐一から目を逸らした。
「ん?何を持ってるんだ?」
「あう、何でもないわよう・・・」
「何でもないって・・・。思いっきり怪しいぞ」
「別に何でもないったらぁっ」
真琴はそう祐一に言うと慌てて自分の部屋に駆け込もうとする。
「あ、おい。ちょっと待てって」
「あうーっ」
祐一は何故か逃げようとする真琴の腕を掴んで引き止める。
「あうーっ、離してよぅ!」
真琴は何とか逃れようとじたばたと暴れ出す。
「わ、こら、暴れるな!」
「あうーっ、離してったらぁっ!」
じたばたじたばた。
がささっ、ぼとっ。
「あうーっ!」
暴れたせいで真琴の持っていた袋から、中身が床に落ちた。
「な・・・真琴、これは・・・」
「・・・あう〜」
真琴が必死に隠そうとしていた物、それはテレビアニメ『恋はいつだって唐突だ』のDVD第一巻であった・・・。
「ま、真琴。お前・・・」
「あう〜」
真琴は気まずそうに祐一から視線を逸らした。
おそらく、真琴は結局アニメを諦められずに、秋子にねだってDVDを買ってもらったのであろう。
「・・・真琴」
「・・・あう」
真琴は祐一に何て言われるのかが怖くてきゅっと目を閉じる。
「・・・まったく、しょうがない奴だな。これ、秋子さんにねだって買ってもらったんだろ?」
「・・・あう」
「あれだけ、どうせ最低レベルの駄ニメだから、やめとけって言ったのにな」
「あう〜」
祐一はそれだけ言うと、ふうっと溜息をつくと優しい口調で縮こまっている真琴に話し掛けた。
「・・・でもまあ、買ってきちまった物は仕方ないよな」
「真琴、一緒に見ようぜ」
「・・・えっ?いいの祐一?怒ってないの?」
「別に怒ってなんてないさ。真琴は好奇心が強いんだなって思っただけだ」
「えっ・・・そうかなぁ?」
「そうさ。・・・なあ真琴、人間ってのはさ、ホント、好奇心が強い生き物だと思わないか?」
「えっ?」
「ほら、例えば道端とかにさ、犬の糞とかよっぱらいのゲロとか、猫や犬の死体とかがさ、よく落ちてるだろ」
「・・・うん」
「こんなもん、見たくない見たくないって思っててもさ、つい怖いもの見たさでついつい見ちゃうじゃないか」
「うん。あるある」
「それでさ、見た後に後悔するんだよな。やっぱ見なきゃよかったーってな」
「それと一緒なんだよ。今の真琴の気持ちは・・・」
「あう・・・」
「ほらほら、せっかく高い金を払って買ってきたんだろ。早く見ようぜ」
「・・・うんっ!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・つまらなかったな」
「あうーつまんなかったー」
祐一と真琴はエンディングテーマが流れているテレビ画面を見ながらぽつりと呟いた。
「・・・これ、本当に販売戦略で放映地域が狭かったのか?」
「あまりにもクソすぎて、東海や北海道とかのテレビ局が放映を拒否したんじゃないのか?」
「あう・・・でも、いっくら偽者のバッグとか売ったり、バカの一つ覚えのドラマ再放送しか脳のないテレビ局が、せっかくの新番組を
放送しないなんてあるのかなあ・・・」
「美汐に調べてもらったんだけど、ほんの数ヶ月前まではこれらのテレビ局もヘブンシングとかいうオタク向けの深夜アニメを放映して
たんだって」
「それでね、今度からは、愛より証とかいう一生恋愛も結婚も出来そうもない可愛そうなオタク野郎向けのアニメをやるらしいよ」
「・・・ふ〜ん、しっかし、実際のとこはどうなんだろうな?」
「真琴はそんな事、もうどうでもいいわよ。それより、こんなつまんない物に期待してお金使ったのかと思うとすっごくムカツクの!」
「そうだな。俺も真琴の気持ちは良くわかる。本当に金と時間の無駄だったよな」
「まったくよう!金返せーって感じ!!」
真琴は頬を膨らませてぶーぶーと文句を言う。
そんな真琴を尻目に、祐一はDVDのパッケージから封入物を取り出すと、真琴に一枚の白い紙を見せていたずらっぽく話し掛ける。
「お、真琴。アンケートハガキが入ってるぞ。これに苦情を書いて送ってやろうぜ」
「さんせーいっ!祐一、一緒に書こっ!」
「ああ、お安い御用だ!」
(こんな恥知らずな商売をやってるようなカス共だ。どうせ、物事を正しく見極める力もない単純なバカオタクの良かったですーとか、
感動しました。これで泣かない奴は人間じゃないっ!とかのくだらねぇうえに何の役にも立たねぇ賛美のハガキしか読まねぇんだろう
な・・・)
(だけど、これで真琴の気が済むなら・・・いいか)
「よーし、書くぞっ、真琴っ」
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郵便はがき
〒1XX−xxxx
東京都XXXX−xxビル
(株)投影
アニメ製作部 行
購入作品 恋はいつだって唐突だ 第一巻
ご住所 2ちゃんねる 市葉鍵板町
電話番号 1919−0721
氏名 木目沢ネ右一
年齢19 大学生 男
E−mailアドレス
お買い上げの店名 獅子の穴
この度は小社のビデオソフトをお買い求め頂き、誠にありがとうございます。
今後もよりよい作品をリリースしていくため、ぜひアンケートにご協力ください。
●アニメ「恋はいつだって唐突だ」で好きなキャラクター名ををお書き下さい。(三名まで)
(口の位置が変すぎて)(原作と同じキャラには) (到底見えないからい・な・いっ!)
●ビデオソフトに入れて欲しい特典(映像等)がございましたら、お教えください。
このアニメを作った無能なスタッフ共のインタビュー。
こんな恥知らずな商売をどうどうと出来るクリエイター気取りのカス共のツラをぜひ一度拝んで見たい。
●お手持ちのDVDプレイヤーをお教え下さい。
PS2
●DVD化して欲しい作品(新作、旧作)がございましたら、お教え下さい。
この駄ニメの製作、放映、販売に関わった連中全てが関わってない物なら何でもいい。
露骨な商業主義見え見えの放映地域の狭さや二話入り5800円で残り六巻を売るなど、よくもまあこんな恥知らずな真似が出来ま
すね。
本当のアニメクリエイターならば、普通は自分達の作った作品を少しでも多くの人に見てもらいたいと思うと思うのですが。
貴方達にはプロとしてのプライドという物がないのでしょうか?
本当のプロならば、少しでも多くの人達にテレビで見てもらって、それでソフトを買ってもらおうとするものだと思います。
また、劇中の設定が明らかに原作と違うのもどうかと思います。
所詮、金儲けの為だけに作られた作品なんて、こんな手抜きで良いということですか?
まあ、この程度の作品しか作れない貴方達がこんな恥知らずな商売の仕方をするのは仕方ないことなのかもしれませんが。
どうせ、貴方達はこれからもこういういやらしい商売をしていくのでしょうね。
貴方達のような金儲けの事しか考えてないうえに、こんな恥知らずな真似しか出来ない人達が偉そうにアニメクリエイターを気取ら
ないでください。
今後も貴方達のようなアニメ製作者が現れると、きっとこの業界は駄目になってしまうでしょう。
貴方達のような恥知らずのクリエイター気取りのカスにはどうせ一生かかったって、ガンドムやエバンゲリヲンや満と宮嵜アニメの
ような名作は作れやしないのだから、ぜひ、この業界から消えてください。
絶対、有り得ないでしょうが、もしも万が一、こんな恥知らずな商売が成功して、真似をするバカが出てくると大変迷惑ですので。
貴方がたの商売の失敗を心の底より祈らせていただきます。
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「どうだ、真琴こんなもんでいいか?」
「うんっ。真琴これでいいっ」
「よーし、あとで一緒にポストに入れにいこうな」
「うんっ。あ、そうだ。そういえばこの駄ニメ買ったお店に張ってあったチラシに書いてあったんだけどね・・・」
「この駄ニメシリーズ全巻揃えると非売品新作アニメがもらえるんだって。もうどうでもいいけど」
「へぇー。まぁ、どうせ今までの映像の再編集ばっかの手抜き駄ニメか、2等身キャラがくっだらねぇギャグを延々と続けるだけのクソ
だぜ、きっと」
「あはは、きっとそうに違いないねっ」
「いや・・・待てよ・・・」
「こんな恥知らずな真似を堂々と平気でやるような奴らだ。いきなり最終巻あたりで諸般の事情により、新作アニメの製作は中止になり
ました、とか言い出してさ、この最悪の絵でポスターとかタペストリーとかに特典を変更とかしそうだよな」
「まっさかぁ。いくらなんでもそこまで・・・こいつらならやりそうだよね・・・祐一」
「だよな。よし、真琴。これからふたりでこのカス共を徹底的に2ちゃんで叩いてやろうぜ」
「うんっ。叩こ、叩こっ!」
「よし、さっそく俺の部屋にいこうぜっ」
「うんっ!」
・・・そして、時は流れて・・・。
「おはよう、おとうさん、おかあさん」
「ああ、おはよう」
「おはよう、あゆ」
奇跡的に昏睡状態から目覚め、養父母と共によその街に引っ越した月宮あゆは養父母との間にあった垣根もすっかり消え、幸せな毎日
を送っていた。
「学校はどうだい、あゆ?」
「うん!すっごく楽しいよっ」
「そうかそうか」
「ほらほら、二人とも。早く朝ご飯食べて出かけないと遅刻しますよ」
「はーい」
あゆが養父母とそんなやり取りをしていると、リビングの方から付けっ放しになっていたテレビから新しいニュースが食堂に流れてき
た。
『それでは、次のニュースです』
『インターネットを通じてアニメ製作会社投影に対し、コンピューターウイルスを送りつけた大学生と無職の少女が昨夜逮捕されました
・・・』
『この大学生と少女は、以前からインターネット上の掲示板等で投影に対する誹謗中傷を書き込んでおり・・・』
「もぐもぐもぐ・・・ごちそうさまっ」
あゆは朝食を取り終わると、鞄を手に持って元気よく家を出る。
「いってきまーす」
「・・・ふう、もうすっかり夏だね・・・」
あゆは学校への通学路を歩きながらひとり呟く。
「・・・そういえば、祐一君達は元気にしてるかな・・・」
「夏休みになったら、会いに行ってみようかなぁ・・・」
そんな風にひとり呟いていると、あゆと同じ学校の同級生があゆの隣に元気に駆け寄ってきた。
「おはよう、あゆちゃん」
「あ、佳乃ちゃんおはようっ」
「今日も暑くなりそうだねぇ〜」
「うんっ。そうだね〜」
西暦200X年初夏
今日も平和な一日が始まるのであった・・・。
完