葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round147!!

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「あっ……雨か……洗濯物を」
 脳裏に柏木本家での生活がフラッシュバックする。たまの休日なのだから休めば良いのに、パタパタと家事に
梓の手伝いに忙しい千鶴さんの姿。拭き掃除に没頭しスカートがまくれているのを、どう報せようかと
悩んで、しばらく揺れる腰つきに惚け、あげく"耕一さんのエッチ"とふくれられ……ははっ、自分のパンツ握りしめて、何を思い出してるのやら。
 ふと気がつくと、千鶴さんのことを想うのが常になった。
いま何をしているのだろうか、仕事で失敗してないだろうか、またぞろ素頓狂なことをして妹たちに呆れられてないか……
いやいや、マイナス思考になってはいけないな。これまで、千鶴さんはちゃんとやってきたし、これからも……たぶん。
 こっちで"元の生活"に戻ってから、千鶴さんのことを想い続けている。
大学を卒業して、一人前の人間になって千鶴さんを迎えに、支えにゆく……そう決意してみたが、こんな風に気を散らしてばかりでは
それもままならないな……

「柏木ぃ、いるか?」ノックして入ってきたのは、下宿の連れの後藤だった。
「お客さんだよ……ではでは、ごゆっくり」
「えっ……あっ、千鶴さん?」
 あちらでもみていた仕事着姿、流れる黒髪を今日は後ろで緩く束ねて、ほんのり薄化粧
……普段、嗅ぎ慣れていない化粧水の粒子に刺激され思わず鼓動が高まった。

「あの研修会で、こちらに寄りまして……後藤さん、道案内ありがとうございました」
「そ、それはお疲れです……後藤ありがとうな……っと、ちょちょっと待って」
 手にしたパンツを開きっぱなしの押し入れに投げ込み、ばたばたと部屋を片付ける。ケタケタ笑いながら後藤が部屋へ戻ってゆく。後で何を聞かれるやら…雑誌を部屋の隅にかため、万年床をあげる……いやーん、曲がった毛がっ…
「ちょっとしたお手伝いと」
オレの狂態に動じず、荷物を戸口に、するりと靴を脱ぎ……戸がパタンと閉まる。後ろ手で施錠する。
「あなたに逢いたくて…」
(つづく)
 体重を感じさせない、そんなふわりとした足取りで、千鶴さんが近づき、オレの胸に顔を埋めた。これまで
何度か夢に描いた光景が現実のものになって……彼女の形がこんなにも近い。
「あぁ……さびしかったぁ……」
 しぼりだすような吐息は、オレも同じだった。
 歯止めが効かなくなってくる。千鶴さんの髪の匂いに、そのやわらかな香りに、衣ごしだけどはっきりとわかる熱に……
「あれから、二月ほどですね……おかわりないようで……」
 胸に伝わる息に、背中にまわされた腕に、ベルトの辺りにすべりおりる掌に、オレの歯止めが効かなくなる。
「あぁ……千鶴さんだ」
「ふふっ、千鶴です」

 深く差し込まれる舌に応えながら、手探りでホック留めのスカートを落とす。つぃと息継ぎ…
「千鶴さん……スーツがしわになるよ」
「そんなこと……気にしない」
 ふたたび、深く口を寄せあったまま、もどかしげに互いの服を解きあう。開かれた胸をさらし、少し焦れて、
千鶴さんは、名残りおしげに口を離した。すぃっと腰を落として、頭をオレの腹におしつけつつベルトを解きにかかる。
黒髪の向こうにストッキングと下着に包まれた彼女の臀部が揺れている。彼女が解放してくれた滾りが…潤った暖かさに包まれた。

 腰に廻された彼女の腕が下方に力をかける。膝がかくんと崩れて後方に倒れこんだ。千鶴さんが口を離し、オレを見ている。
「……いっぱい、話したいことが……あったのに、ごめんなさい。言葉がでてこないんです」
 あの日、血腥い一夜を過ごし、生まれ変わったオレが最初に見た表情がそこにあった。
「なんで……でてこないのかな……梓やっ…楓やっ……初音のこととか」
 笑うことに慣れていない…その不器用で自嘲を想わせる笑顔にオレは応えようと、意を込めて千鶴さんに触れる。
「耕一さん……なぜでしょうね」
「千鶴さんが、そうしたいからだよ。千鶴さんがオレと……こうなりたいからなんだ……オレもこうなりたかったよ」
(つづく)