葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round147!!
月下。
冷たい鉄の門の向こうに、つまらないコンクリートの建物が鎮座している。
県立八重坂高校。ありふれた高校の一つに過ぎない。
「…ふふ」
その門に手を添え、校舎を見上げて、千鶴は小さく笑った。
――そうね…ここがいいわ、少し休めそう。
…それに。
すっと目を細める。唇を引き上げる。
形作られた笑みは月光の鏡の様だ。
「それに、これだけ大きな建物なら地図でも探しやすいわよね♪」
――千鶴は道に迷っていた。
「なんであたしらより早く出た千鶴姉が来てないんだよ!」
梓の怒気が控え室の鏡を震わせる。
そろそろ会場入りしていないと危険な時間だが、控え室に千鶴の姿はなかった。
「ちょっと遅いけど、まだ時間はあるだろ。『一本道だから大丈夫』って言ってたから…」
「甘いよ耕一。あの女の『大丈夫』が大丈夫だったことなんて一度もないんだぞ」
口の悪さは責任感の表れでもある。
とはいえ、それで状況が良くなるわけでもなかった。
「やっぱり、迷子になってるのかなあ…」
気遣わしげな初音の声に被さるようにして、控え室に携帯電話の電子音が鳴り響く。
『人が大勢歩いてるのに着いていったら、違うイベントだったみたいなのよ』
「“なのよ”じゃないだろ! いまどこに居るんだ?」
<続く 1/2>