神奈「柳也どの、何をやっておるのだ?」
柳也「ああ、裏葉に頼まれて相性チェックをな」
神奈「相性ちぇっく? …男女の仲を占いや心理てすととやらで量る、あれか?
(ひょっとして、余との仲を…?)」
柳也「(また裏葉の奴、何かを吹き込んだな)違う、パソコンのパーツは特定の
組み合わせで異常動作することがあってな、正確には製造元の不具合なん
だが、一般に相性と呼ばれている」
神奈「そうなのか…」
柳也「(うっ、何故そこで照れて俯く? …何か気まずいな)あのな、神奈。
暇だったら見てくか?」
神奈「う、うむ。そこまで言うなら仕方が無い、世も付き合ってやるぞ」
柳也「(またずいぶんと偉そうに… ま、そういうところも可愛いな)」
神奈「ところで柳也どの、何をやっておるのだ?」
柳也「ん? CPUクーラーの粘着シートを剥がしているのさ。専用グリスの
方がよく冷えるからな」
神奈「ふーん。で、これがその“専用ぐりす”とやらか。『銀80%配合』とは、
これまた贅沢な品よのう」
柳也「まあな。雷鳥900には過ぎたシロモノかも知れぬが、このCPUは裏葉
からの借り物だし、万が一のことを考えてだ」
裏葉「神奈さま、こちらですか?」
神奈「あっ、裏葉」
柳也「おぅ、ちょうど良いところに来たな。済まんが、CPUの装着を手伝って
くれないか? 神奈がやりたそうな顔をしてるから」
神奈「柳也どの、それは余では不安という意味か?」
裏葉「まあまあ、神奈さま、二人でやりましょう。そけっとの取っ手を持ち上げて…」
神奈「あれ? 挿さらぬぞ? よもや足が曲がっておるのではあるまいな?」
裏葉「神奈さま、しーぴーゆーの向きが逆でございます」
柳也「(…初っ端からやってくれる)」
神奈「うむ、あすろんが挿さったぞ。次はぐりすを…」
柳也「うわっ! まるでハブラシに付いた練り歯磨き粉のようにベッタリと!」
神奈「何か拙いのか?」
柳也「グリスってのは綿棒なんかで薄く塗り広げるんだ。ブ厚く塗っても熱伝導
率が良くなるわけではない」
神奈「裏葉はこれで何も言わなかったぞ?」
裏葉「ふぁんを装着するときに少しでもこあ欠けを防止する意味で、神奈さまに
はたっぷり塗っていただきました」
柳也「(そうか、神奈は不器用だからな)」
裏葉「(あすろんは特にこあ欠けしやすいですし)」
神奈「二人とも、何を目で会話をしておるのだ?」
裏葉「いえいえ、何でもありません」
柳也「VGAはオンボードだから、CPUとメモリだけで起動してみるか」
裏葉「念のため、しーもすくりあをやっておきましょう」
スイッチオン
柳也「DELキーを連打して… OK、BIOS画面が出てきたぞ。雷鳥
900だから100*9のVcoreを1.75Vにして、とりあ
えず再起動、と」
裏葉「柳也どの、私の渡したあすろんは雷鳥800のはずですが?」
柳也「何ぃ?! もうキー押しちまった! …あれ、900で無事に再起
動しているぞ?」
裏葉「おかしいですわね? L1くろーず品では無いのですが」
神奈「のう、二人とも、ちゃんと起動したのに何が問題なのだ?」
柳也「なぁ、裏葉。もしかするとこのシルバーグリス、通電するんじゃ?」
裏葉「ベッタリ塗ったのが、なちゅらるにL1をくろーずしていると?
…あり得る話ですね」
神奈「余か? 余が悪いのか?」
裏葉「いいえ、神奈さまは悪くありません。今回は怪我の功名ですね」
友人の雷鳥1000(だったかな?)での実話です。
グリスは薄く塗るもの、と教えられてきた私は、べったり塗布するのを
見てショックを受けた覚えがあります。
今回のオチ
神奈「うむ、次からはぐりすを薄く塗るぞ。ところで、どれくらい薄くすれ
ば良いのだ?」
裏葉「“すきん”と同じくらいで構いません、神奈さま」
神奈「すきん?」
柳也「こら、裏葉。また余計なことを吹き込むんじゃない!」