葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round143!!

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789ふたりのオフ
 とある日の午後。理奈と英二は珍しく一緒にオフだった。
あいにくの雨で、理奈は本を読むともなく手に取り、英二は先日放映された
音楽番組を撮ったビデオで理奈の歌をチェックしていた。
「おっ理奈見てみろよ、ちょっとしたセクシーショットだな」
 いつものように仕事に対する真摯さを疑われかねない発言。
「やめてよ兄さん」
 これまたいつものようにうんざりした表情で理奈。
「少しくらい色気を見せたほうがいいさ。やりすぎは良くないが」
「そんなことを言ってるんじゃないの。兄さんにそんなこと言われるのが
イヤなのよ」
 英二は少し肩をすくめ、視線をモニターに戻す。
「あーあ、一人暮らしようかな」
「ダメだ」
「兄さんに私生活まで干渉される謂れはないわよ」
「オフが少ない。俺と一緒のオフはもっと少ない。金の無駄だ」
「……」
 今度は理奈が肩をすくめ、視線を活字に落とす。が、目から入った言葉は
頭を素通りし、空中で拡散していく。
「冬弥君、どうしてるかな」
「彼なら今日は局だと言っていたぞ」
 ここでやめておけばいいようなものだが、英二は常に一言多い。
「理奈もいないことだし、由綺とよろしくやってるんじゃないか」
「兄さん!」
「怒るなよ。由綺と一緒なら俺もあまりいい気はしない」
 英二は少し考えるようなそぶりを見せ、車のキーを取った。
「ちょっと行ってみるか?」
 理奈は特に考えるそぶりも見せず、コートを取った。

 こうして彼らの短いオフはさらに短縮された。