葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round143!!

このエントリーをはてなブックマークに追加
600琉一
『星霊の降る夜に(2/2)』

 でも――。
「ちょっと、疲れちゃったな」
 誰もいないと分かっているから、そんなことも言える。
 でも、誰にも言えないのが、ひどく寂しい。
 疲れたときに、羽を休める場所。私を包んでくれる人。癒してくれる時間。
 時にどうしようもなく安らぎが恋しくて、たまらなくなる。
 私たちの孤独は、輝きに目を奪われている人には、けして分からないだろう。

 ああ、時間だ――。
 今頃マネージャーが、大慌てで私を捜していることだろう。
 頼りない人だけど、あの人にはあの人の責任があるし、私にも自分の責任がある。
 だから、歌わなくちゃいけない。
 輝きが永遠に続くように。人々が輝きに見惚れるように。
 私は、アイドルとしてしか、生きていけないのだから。
 星の降り注ぐ空に別れを告げ、私を待ってくれている人達のところへ戻ろう。
 星の代わりに、灼熱のようなライトの群が飾る、あのステージへ。
 歌を届けるために。

 だけど、もしも――。
 もしも私が、他に生きていける道があるのなら。
 そういう運命に出会えたなら、私はきっと……。
『今ひとつだけ決めたことがある あなたとは離れない……』

                             FIN