葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round141!!
「ふあ……もうこんな時間」
綾香様があくびをひとつ。
もう深夜といってよい時間。もう寝る時間だろう。
「−−そろそろお休みになられた方が良いかと思います。明日に障りますので」
「そうね……そろそろ寝ましょっか」
「はい。でしたらベッドの準備をいたします」
綾香様にパジャマをお渡しし、ベッドメイクをする。
「−−準備ができました。お休みなさいませ」
さて、私は充電に……
「あ、待ってセリオ」
「−−なんでしょう」
「一緒に、寝よ」
一緒に……というのは、私に、綾香様と一緒に、このベッドで寝ろ、というのでしょうか。
「−−私はベッドで寝る必要はないのですが」
「んー……なんか一人だと寂しいのよねー」
「−−ですが、マスターのベッドで寝るというのはロボットとしての本分に……」
「もう、セリオ。固いことはいいっこなし。お・ね・が・い、セリオ」
このようにお願いされると、結局私は断れない。
さすがに平常服でベッドに入るわけにも行かない。綾香様にパジャマを借りて、着替える。
(私たちはベッドで寝ないのでパジャマは持っていないのだ)
「んー、結構似合ってるじゃない」
「−−…そうでしょうか」
綾香様が、ベッドに潜る。
「ほら、おいでよセリオ」
「−−失礼します」
私も促されて、布団に入る。
「やっぱり一人より二人のほうがいいよねー」
「−−そうでしょうか?」
「そういうもんよ」
そもそもベッドで寝ること自体めったにないので、私にはよくわからないが。
ただ、メンテナンスベッドで充電する時とは何か違う−−私には説明できないのだが−−感じがする。
「えいっ」
きゅっ
綾香様が私に抱きつく。
体が、温かい。
「−−綾香様?」
「えへへ、セリオって、あったかい」
「−−はい。内部の廃熱を皮膚を通して排出して…」
「うん。そういう温かさもあるんだけど……こうしてるとすごく、心が温かくなるの」
「−−心が……?」
私には分からない概念。
「そ。それでね、すごく落ち着くの……もうちょっとこのままでいて、いい?」
そういう綾香様はすごく嬉しそうだ。私には分からないけれど…きっと、それはいいことなんだろう。
しばらくして。
「すー…すー…」
綾香様は私に抱きついたまま寝入られたようだ。
パジャマ越しに感じる、綾香様の体温。鼓動音。規則正しい寝息。
そういうものに包まれて……私は、不思議と落ち着く。
……これが、「心が温かい」ということなんだろうか。
さて、私もスリープモードに移行しよう。
ロボットの分際でこのようなことをいうのは変かも知れないが……綾香様と一緒なら、いい夢を見そうな気がする。
おやすみなさい、綾香様。