「……ん」
「そう、アルルゥ。 気をつけるのよ」
「姉ちゃん心配させんじゃねえぞ、危なくなったら俺か姉ちゃん呼ぶんだぞ?」
「……ん」
森の奥に走っていくアルルゥ、二人、倒木に並んで腰掛ける。
「ヌワンギ、はい、水筒」
「お、さんきゅ。 くぴくぴっ……と、お、蜂蜜入りの果物汁か」
「うん、お祖母ちゃんから教えてもらったの」
「なーる、バアちゃんの作る食い物は美味いからなー。
全部飲んじまうとアルルゥが怒るしな、ほれ」
「ふふ、アルルゥのはここにあるから」
「あ、てめー、俺が全部飲んじまうって思ってたな?」
「そ、そんなこと無いよ。 ほら、わたしのだって……あ、あれ?」
「どうした? エルルゥ」
「わ、わたしのぶんが、無い……」
「し、しょーがねえな、ほれ」
「え、いいの?」
「ど、どーせお前も喉渇いてるんだろ?」
「うん……ありがと、ヌワンギっ」
こく、こく、こく……
「……(どきどきどきどきどきどき)」
「もう大丈夫、のど渇いてないから。 返すね、ヌワンギ」
「お……おぅ」
「……」
「……気持ちいい、風だね」
「お、おう」
「……あ、あのさ、エルルゥ」
「なに?」
「あ、あのさ、テオロの……」
「ああ、テオロさんとソポクさんね。 ふたり、ほんとに結婚しちゃうのかな?」
「……ああ、親父っさんもソポク姉ちゃんにベタ惚れだし、ソポク姉ちゃんもまんざらでもないみたいだしな」
「うん……幸せになるといいよね」
「……」
「……」
「……ね、ヌワンギ」
「んぁ?」
「もしかして、ヌワンギ、ソポクさんのこと、……好きだった、とか」
「う、ば、馬っ鹿言うんじゃねーよ。 あんな喧嘩っ早くて口が悪くて、」
「でも美人だし、それに……とっても優しいひと」
「ちぇっ、エルルゥにはお見通し、か」
「……うん、分かる、もん」
「……」
「……」
「……なあ、エルルゥ?」
「何?」
「……口吸い、って、知ってる、か?」
「う……うん」
「この間、親父っさんとソポク姉ちゃん、……やってた」
「……うん」
「……」
「……」
「……」
「……しようか」
「えっ?」
「口吸い、その」
「い……いいのか、俺、で?」
「う、うん……ヌワンギが、これで、元気になってくれるんだったら」
「う……お、俺、やるぞ。 本気でやるぞ。 あとで後悔すんなよ」
「どうして? ヌワンギ、ずっとこの村でみんなと一緒に暮らすんだよ。
年の近い子供は他にいないから、……」
「分かった、……いくぞ」
「う……うん」
どきどきどきどきどきどきどきどきどき……
どきどきどきどきどきどきどきどきどき……
「……ちゅー?」
「ぬ、ぬわわわあぁぁぁーっ!」「きゃあーっ! あ、アルルゥ、帰ってきたんだったら言ってよ!」
「ん……これ」
「あら、姉妹草。 これは?」
「ヌワンギに」
「は、は、へへ……ほれ、じゃあアルルゥにはこれ、エルルゥにはこれ、で、俺にはこれ、か」
「ん……みんな仲良し」